(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】放射線撮影システム、放射線撮影方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 6/42 20240101AFI20240806BHJP
A61B 6/46 20240101ALI20240806BHJP
G01T 7/00 20060101ALI20240806BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240806BHJP
【FI】
A61B6/42 500S
A61B6/46 500
G01T7/00 A
A61B6/00 530Z
(21)【出願番号】P 2020206390
(22)【出願日】2020-12-14
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】三宅 信之
(72)【発明者】
【氏名】駒坂 友則
(72)【発明者】
【氏名】深津 幸助
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-023915(JP,A)
【文献】特開2007-037837(JP,A)
【文献】特表2014-507247(JP,A)
【文献】特表2013-523396(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0249793(US,A1)
【文献】特開2015-196073(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0230473(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を発生させる管球と、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は前記管球の向きに対する前記放射線検出器の傾きを示す傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了する表示部と、
前記表示部の表示制御を行う表示制御手段と、を備え
、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記表示制御手段は、前記放射線検出器が前記センサー部を備えたものである場合に、前記傾き情報の表示を許可する放射線撮影システム。
【請求項2】
放射線を発生させる管球と、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は前記管球の向きに対する前記放射線検出器の傾きを示す傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了する表示部と、を備え
、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記センサー部が、所定時間経過する度に複数回検出することにより得られた複数の角度情報に基づいて、前記傾き情報を算出する算出手段を備える放射線撮影システム。
【請求項3】
前記表示部は、撮影の開始を指示するコンソールにおいて撮影オーダーが選択されること、前記放射線検出器が格納場所から取り出されること、前記放射線検出器がケーブルから外されること、前記管球が備えるコリメーターの所定ボタンが操作されること、及び前記放射線検出器の傾きの大きさが基準範囲内であること、のうちの少なくともいずれかの表示開始条件が成立した後に、前記傾き情報を表示する、請求項1
又は請求項2に記載の放射線撮影システム。
【請求項4】
前記表示部は、前記コンソールから撮影の開始の指示を受けている前記放射線検出器の前記傾き情報を表示する、請求項
3に記載の放射線撮影システム。
【請求項5】
被検者を撮影したときの前記傾き情報を、当該被検者に関する情報と共に保存させる保存手段を備える、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項6】
1回の撮影操作につき複数の放射線画像を生成する撮影を行った場合に、放射線画像毎に保存された複数の前記傾き情報に基づいて、前記撮影を代表する傾き情報を決定する決定手段を備える、請求項
5に記載の放射線撮影システム。
【請求項7】
前記表示部は、被検者を撮影する前に前記傾き情報を表示する際に、当該被検者を過去に撮影したときの傾き情報を併せて表示する、請求項1から請求項
6のいずれか一項に記載の放射線撮影システム。
【請求項8】
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は放射線を発生させる管球の向きに対する前記放射線検出器の傾き情報を算出する算出手段と、
前記傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了する表示部と、
前記表示部の表示制御を行う表示制御手段と、を備え、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記表示制御手段は、前記放射線検出器が前記センサー部を備えたものである場合に、前記傾き情報の表示を許可し、
前記算出手段は、水平面と前記放射線検出器の放射線入射面とがなす角の大きさを、前記傾き情報として算出する放射線撮影システム。
【請求項9】
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は放射線を発生させる管球の向きに対する前記放射線検出器の傾き情報を算出する算出手段と、を備え、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記算出手段は、水平面と前記放射線検出器の放射線入射面とがなす角の大きさを、前記傾き情報として算出
し、
前記センサー部が、所定時間経過する度に検出することにより得られた複数の角度情報に基づいて、前記傾き情報を算出する放射線撮影システム。
【請求項10】
管球により放射線を発生させるステップと、
放射線検出器により、受けた放射線に応じた放射線画像を生成するステップと、
前記放射線検出器が、水平面又は前記管球の向きに対する前記放射線検出器の傾きを示す傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備えたものである場合に、前記傾き情報の表示を許可するステップと、
表示部における、
前記傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了するステップと、を含む放射線撮影方法。
【請求項11】
管球により放射線を発生させるステップと、
水平面又は前記管球の向きに対する放射線検出器の傾きを示す傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備える放射線検出器により、受けた放射線に応じた放射線画像を生成するステップと、
前記センサー部が、所定時間経過する度に検出することにより得られた複数の角度情報に基づいて、前記傾き情報を算出するステップと、
表示部における、
前記傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了するステップと、を含む放射線撮影方法。
【請求項12】
請求項
10に記載の放射線撮影方法をコンピューターに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影システム、放射線撮影方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
回診車と呼ばれる移動型の放射線撮影システムを用い、例えば、病棟のベッド上等で被検者の放射線撮影を行うことがある。
ベッド上の撮影においては、被検者の背中とベッドとの間に配置される可搬型(パネル状)の放射線検出器の撮像面が、必ずしも水平面と並行又は直交しない(傾斜する)ことがある。
このような場合であっても、放射線入射面に取り付けられたグリッドのカットオフにより放射線画像に濃度差が発生したり、放射線検出器に写る被検者の体内構造物の位置関係の変化が診断に影響を与えたりすることを防ぐため、放射線検出器の撮像面に対し放射線の照射軸が直交するよう放射線検出器に対する管球の向きを調節する必要がある。
そこで、従来、ユーザーによる管球の向きの調整をサポートするため、放射線検出器に対する管球の傾きを示す傾き情報を表示するための各種技術が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、管球に結合され、第1の磁界を生成するように通電可能である第1のエミッタ装置と、第1のエミッタ装置を通電する制御回路と、画像受信器の周辺に位置する複数のセンサ要素を備える感知装置と、複数のセンサ要素からの複数のセンサ信号に従って、エミッタ装置に対する感知装置の位置および配向を示す出力信号を生成する信号生成回路と、を備える装置について記載されている。
また、特許文献2には、加速度センサからの信号に基づいてX線管の照射方向とX線検出器のX線入射面の傾きを検出する加速度センサー部と、磁気センサからの信号に基づいてX線管の照射方向とX線検出器のX線入射面の傾きを検出する磁気センサー部と、加速度センサー部又は磁気センサー部の検出結果に基づいてX線検出器とX線管の対向状態を判定する判定手段と、X線撮影装置の特定の動作期間では、判定手段による磁気センサー部の検出結果の使用を禁止する禁止手段と、を備えるX線撮影装置について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2014-507247号公報
【文献】特開2015-023915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回診車を用いた放射線撮影は、一般に、回診車をベッドサイドに停止させる→ベッド角度を調整し被検者を座位にさせる→管球のおおよその位置を調整する→放射線検出器を回診車の格納場所から取り出す→被検者の背中とベッドとの間に放射線検出器を配置する→管球の向き及び照射野を微調整する→撮影する、という流れで行われる。つまり、回診車を用いた放射線撮影では、管球の向きを、大まかに調整した後更に微調整している(2回調整している)。これは、被検者とベッドとの間に硬い放射線検出器が挟み込まれる時間を可能な限り短くすることで、被検者が受ける苦痛を低減させるためである。
しかしながら、特許文献1,2に記載されたような従来の装置は、傾き情報を表示するタイミングの検討が十分になされていなかった。このため、これらの装置を用いて上記のような流れで放射線撮影を行おうとすると、ベッドと被検者との間に放射線検出器が配置される前の段階から装置が傾き情報を表示してしまい、ユーザーに混乱を与えてしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、水平面又は管球の向きに対する放射線検出器の傾きを示す傾き情報を、ユーザーが必要とするタイミングで確認できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る放射線撮影システムは、
放射線を発生させる管球と、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は前記管球の向きに対する前記放射線検出器の傾きを示す傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了する表示部と、
前記表示部の表示制御を行う表示制御手段と、を備え、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記表示制御手段は、前記放射線検出器が前記センサー部を備えたものである場合に、前記傾き情報の表示を許可する。
また、本発明に係る放射線撮影システムは、
放射線を発生させる管球と、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は前記管球の向きに対する前記放射線検出器の傾きを示す傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了する表示部と、を備え、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記センサー部が、時間をおきながら複数回検出することにより得られた複数の角度情報に基づいて、前記傾き情報を算出する算出手段を備える。
また、本発明に係る放射線撮影システムは、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は放射線を発生させる管球の向きに対する前記放射線検出器の傾き情報を算出する算出手段と、
前記傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了する表示部と、
前記表示部の表示制御を行う表示制御手段と、を備え、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記表示制御手段は、前記放射線検出器が前記センサー部を備えたものである場合に、前記傾き情報の表示を許可し、
前記算出手段は、水平面と前記放射線検出器の放射線入射面とがなす角の大きさを、前記傾き情報として算出する。
また、本発明に係る放射線撮影システムは、
受けた放射線に応じた放射線画像を生成する放射線検出器と、
水平面又は放射線を発生させる管球の向きに対する前記放射線検出器の傾き情報を算出する算出手段と、を備え、
前記放射線検出器は、前記傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備え、
前記算出手段は、水平面と前記放射線検出器の放射線入射面とがなす角の大きさを、前記傾き情報として算出し、
前記センサー部が、所定時間経過する度に検出することにより得られた複数の角度情報に基づいて、前記傾き情報を算出する。
また、本発明に係る放射線撮影方法は、
管球により放射線を発生させるステップと、
放射線検出器により、受けた放射線に応じた放射線画像を生成するステップと、
前記放射線検出器が、水平面又は前記管球の向きに対する前記放射線検出器の傾きを示す傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備えたものである場合に、前記傾き情報の表示を許可するステップと、
表示部における、前記傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了するステップと、を含む。
また、本発明に係る放射線撮影方法は、
管球により放射線を発生させるステップと、
水平面又は前記管球の向きに対する放射線検出器の傾きを示す傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するセンサー部を備える放射線検出器により、受けた放射線に応じた放射線画像を生成するステップと、
前記センサー部が、所定時間経過する度に検出することにより得られた複数の角度情報に基づいて、前記傾き情報を算出するステップと、
表示部における、前記傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了するステップと、を含む。
また、本発明に係るプログラムは、
上記放射線撮影方法をコンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、傾き情報を、ユーザーが必要とするタイミングで確認することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る放射線撮影システムの一例を示す側面図である。
【
図2】
図1の放射線撮影システムが示す放射線検出器を示す斜視図である。
【
図3】
図2の放射線検出器を示すブロック図である。
【
図4】
図1の放射線撮影システムが備える放射線発生装置及びコンソールを示すブロック図である。
【
図5】
図4の放射線発生装置が実行する傾き情報準備処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】放射線検出器1の配置とその時の傾き情報を示す図である。
【
図7】
図4の放射線発生装置が実行する表示制御処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図4の放射線発生装置又はコンソールが表示する画面の一例を示す図である。
【
図9】
図4の放射線発生装置又はコンソールが表示する画面の一例を示す図である。
【
図10】
図4の放射線発生装置又はコンソールが表示する画面の一例を示す図である。
【
図11】
図4の放射線発生装置又はコンソールが表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、以下の実施形態及び図示例に限定されるものではない。
【0011】
<1.放射線撮影システム>
はじめに、本実施形態に係る放射線撮影システム(以下、システム100)の概略構成について、システム100で回診車を構成した場合を例に説明する。
図1はシステム100を表すブロック図、
図2はシステム100が備える放射線検出器1を示す斜視図である。
【0012】
システム100は、例えば
図1に示すように、放射線検出器(以下、検出器1)と、放射線発生装置(以下、発生装置2)と、コンソール3と、を備えている。
各装置1~3は、例えば通信ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット等)を介して互いに通信可能となっている。
【0013】
なお、システム100は、図示しない病院情報システム(Hospital Information System:HIS)や、放射線科情報システム(Radiology Information System:RIS)、画像保存通信システム(Picture Archiving and Communication System:PACS)、動態解析装置等と通信することが可能となっていてもよい。
また、通信ネットワークは、有線であってもよいし、無線であってもよい。
【0014】
[1-1.放射線検出器]
検出器1は、発生装置2から受けた放射線Rに応じた放射線画像を生成する。
本実施形態に係る検出器1は、
図1,2に示すように、パネル状に構成されていて、持ち運ぶことが可能となっている。
このため、本実施形態に係る検出器1は、撮影台に装填して用いることができるのは勿論、ベッドBの上で臥位の姿勢をとっている被検者SとベッドBとの間に検出器1を水平に配置して用いたり、
図1に示したように、一部を立てたベッドB又は車椅子で座位の姿勢をとっている被検者Sと背もたれ部との間に検出器1を立てて配置して用いたりすることも可能である。
【0015】
なお、撮影台に装填された検出器1の放射線入射面1a(被検者Sと対向する面)は、水平面に対し平行又は直交した状態となるが、撮影台を用いない(ベッドBや車椅子での)撮影においては、放射線入射面1aが、必ずしも水平面に対し平行又は直交した状態とならない(傾斜する)ことがある。
また、検出器1は、ベッドB等の柔らかい器具と被検者Sとの間に介在する状態では、被検者Sの動きに伴って動くことがある。
この検出器1の詳細については後述する。
【0016】
[1-2.放射線発生装置]
発生装置2は、
図1に示したように、発生装置本体21と、照射指示スイッチ22と、管球23と、を備えている。
また、本実施形態に係る発生装置2は、管球支持部24と、コリメーター25と、検出器格納部26と、を更に備えている。
また、本実施形態に係る発生装置2は、筐体に備えられた車輪により移動可能となっている。
なお、発生装置本体21の詳細については後述する。
【0017】
〔1-2-1.照射指示スイッチ〕
照射指示スイッチ22は、ユーザーUにより操作(押下)されたことを契機として、操作信号を発生装置本体21へ出力するようになっている。
なお、
図1には、照射指示スイッチ22が有線で発生装置本体21と接続された状態を例示したが、照射指示スイッチ22と発生装置本体21とは、無線で接続されていてもよい。
【0018】
〔1-2-2.管球〕
管球23は、照射指示スイッチ22が操作されたことを契機として、予め設定された撮影条件に応じた線量の放射線R(例えばX線等)を撮影条件に応じた態様で発生させ、照射口から照射するようになっている。
【0019】
〔1-2-3.管球支持部〕
管球支持部24は、管球23を支持するものである。
本実施形態に係る管球支持部24は、発生装置本体21から上方の先端に延びる第一支持部241と、第一支持部241の上部から前方に延びる第二支持部242と、を有する。
第二支持部242の先端部は、管球23を支持している。
また、管球支持部24は、図示しない関節機構を有することにより、管球23を、X軸方向(発生装置2の前後方向(
図1の左右方向))、X軸と直交するY軸方向(発生装置2の幅方向(
図1の紙面と直交する方向))、及びX軸及びY軸と直交するZ軸方向(鉛直方向(
図1の上下方向)に移動させることが可能となっている。
また、管球支持部24は、図示しない関節機構により、管球23を、X軸、Y軸、及びZ軸と平行な回転軸を中心に回転させて放射線Rの照射口の向きを変えることが可能となっている。
【0020】
〔1-2-4.コリメーター〕
コリメーター25は、管球23の照射口に取り付けられ、照射口から照射された放射線Rの照射野が予め設定された矩形状となるよう放射線Rを絞るようになっている。
また、コリメーター25は、図示しないランプボタンを備えている。
そして、ユーザーによりランプボタンが操作されたことを契機として、放射線Rの照射野となる範囲に可視光を照射するようになっている。
【0021】
〔1-2-5.検出器格納部〕
検出器格納部26は、不使用時の検出器1を格納しておくものである。
本実施形態に係る検出器格納部26は、発生装置本体21の側面に設けられている。
また、本実施形態に係る検出器格納部26は、複数の検出器1を格納することが可能となっている。
検出器格納部26の中には、図示しないコネクターが設けられており、検出器1が格納されると検出器1のコネクター16aと接続されるようになっている。
【0022】
[1-3.コンソール]
コンソール3は、PCや携帯端末、あるいは専用の装置によって構成されている。
本実施形態に係るコンソール3は、
図1に示したように、発生装置2の上に搭載されている。
また、コンソール3は、他のシステム(HIS、RIS等)から取得した撮影オーダー、又はユーザーU(例えば放射線技師)によって操作部32になされた操作に基づいて、検出器1及び発生装置2のうちの少なくとも一方の装置に、撮影条件(管電圧、管電流と照射時間又は電流時間積(mAs値)、撮影部位、撮影方向等)を設定することが可能となっている。
また、コンソール3は、検出器1が生成した放射線画像の画像データを取得し、それを自身に保存したり、他の装置(PACS、動態解析装置等)へ送信したりすることが可能となっている。
【0023】
[1-4.放射線撮影システムを用いた放射線撮影の概要]
このように構成されたシステム100(回診車)を用いた放射線撮影(座位撮影)は、以下のように行われる。
まず、システム100を被検者Sの近傍(ベッドBや車椅子)の脇に配置する。
次に、被検者Sに座位の姿勢をとらせる。被検者Sが角度調整可能な器具(一部を立てられるベッドB等)に座っている場合には、背もたれ部の角度を適宜調整する。
次に、管球23の照射口が被検者Sの撮影対象部位の方を向くように、管球23のおおよその位置及び向きを調整する。
次に、検出器格納部26から検出器1を取り出し、検出器1を被検者Sの背中と背もたれ部との間に配置する。
次に、傾き情報(詳細後述)を参照しながら、放射線Rの照射軸が放射線入射面1aと直交するよう、管球23の向き及び照射野を微調整する。
次に、撮影する(被検者Sの診断対象部位に放射線Rを照射し、検出器1に診断対象部位が写った放射線画像(静止画像、動態画像)を生成させる)。
動態画像を撮影した場合には、必要に応じて、動態画像の画像データを動態解析装置へ送信し、撮影対象部位の動態(肺の換気機能/血流状態や、関節の屈伸等)の解析を行う。
【0024】
[1-5.放射線撮影システムその他]
なお、発生装置本体21とコンソール3は、一体になっていてもよい(一の筐体に格納されていてもよい)。
また、発生装置2は、車輪以外の手段によって移動可能となっていてもよい。例えば、発生装置2は、人が持ち運べる程度、あるいは市販の台車等に搭載可能な程度に軽量化されていてもよいし、底面が滑らかで床面に対し摺動するようになっていてもよい。
また、システム100は、検出器1及び発生装置2のうちの一方の装置が、医療施設の撮影室内等に据え付けられたもの(他方の装置は自由に移動可能なもの)であってもよい。
【0025】
<2.放射線検出器の詳細>
次に、上記システム100が備える検出器1の詳細について説明する。
図3は検出器1の電気的構成を示すブロック図である。
【0026】
[2-1.放射線検出器の具体的構成]
検出器1は、
図3に示すように、放射線検出部11と、走査駆動部12と、読み出し部13と、第一制御部14と、第一記憶部15と、第一通信部16と、第一センサー部17と、を備えている。
各部11~17は、電気的に接続されている。
【0027】
〔2-1-1.センサー部〕
放射線検出部11は、図示しないシンチレーターと、光電変換パネル111と、を備えている。
【0028】
シンチレーターは、例えばCsIの柱状結晶等で平板状に形成されている。
そして、シンチレーターは、放射線を受けることで、放射線よりも波長の長い電磁波(例えば可視光等)を、受けた放射線の線量(mAs)に応じた強度で発するようになっている。
また、シンチレーターは、筐体の放射線入射面1a(
図2参照)と平行に広がるよう配置されている。
【0029】
光電変換パネル111は、シンチレーターにおける放射線入射面1aと対向する面と反対側に、シンチレーターと平行に広がるよう配置されている。
光電変換パネル111は、基板111aと、複数の電荷蓄積部111bと、を有している。
複数の電荷蓄積部111bは、基板におけるシンチレーターと対向する面に、放射線画像の各画素に対応する二次元状(例えば行列状)に配列されている。
各電荷蓄積部111bは、シンチレーターが発生させた電磁波の強度に応じた量の電荷を生成する半導体素子と、各半導体素子と読み出し部13に接続された配線との間に設けられたスイッチ素子と、をそれぞれ有している。
各半導体素子には、図示しない電源回路からバイアス電圧が印加されている。
そして、各電荷蓄積部は、スイッチ素子のオン状態/オフ状態を切り替えることにより、受けた放射線に応じて信号値として読み出すための電荷を蓄積して放出するようになっている。
【0030】
〔2-1-2.走査駆動部〕
走査駆動部12は、放射線検出部11の各走査線111cにオン電圧又はオフ電圧を印加することにより、各スイッチ素子をオン状態又はオフ状態に切り替えることが可能となっている。
【0031】
〔2-1-3.読み出し部〕
読み出し部13は、放射線検出部11の各信号線111dを介して電荷蓄積部111bから流入してきた電荷の量を信号値として読み出すようになっている。
なお、読み出し部13は、信号値を読み出す際にビニングを行うようになっていてもよい。
【0032】
〔2-1-4.制御部〕
第一制御部14は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)を備えている。
そして、CPUが、第一記憶部15に記憶されている各種処理プログラムを読み出してRAMに展開し、当該処理プログラムに従って各種処理を実行することで、検出器1各部の動作を統括的に制御するようになっている。
また、第一制御部14は、読み出し部13が読み出した複数の信号値に基づいて放射線画像の画像データを生成するようになっている。
【0033】
〔2-1-5.記憶部〕
第一記憶部15は、HDD(Hard Disk Drive)や半導体メモリー等により構成されている
。
また、第一記憶部15は、第一制御部14が実行する各種プログラムや、プログラムの実行に必要なパラメーター、ファイル等を記憶している。
なお、第一記憶部15は、放射線画像の画像データを記憶することが可能となっていてもよい。
【0034】
〔2-1-6.通信部〕
第一通信部16は、通信モジュール等で構成されている。
そして、第一通信部16は、通信ネットワークを介して有線又は無線で接続された他の装置(検出器1、コンソール3等)との間で各種信号や各種データを送受信することが可能となっている。
【0035】
〔2-1-7.第一センサー部〕
第一センサー部17は、傾き情報を算出するのに必要な情報を検出するものである。
本実施形態に係る第一センサー部17は、3軸加速度センサーとなっている。
3軸加速度センサーは、3軸(x軸、y軸及びz軸)方向に作用する加速度を、傾き情報を算出するのに必要な情報としてそれぞれ検出し、それを第一制御部14へ送信する。
静止状態の3軸加速度センサーには、重力加速度のみが作用する。このため、3軸加速度センサーは、静止状態においては、重力加速度の3軸方向成分をそれぞれ検出する。
【0036】
なお、第一センサー部17は、6軸センサー又は9軸センサーであってもよい。
6軸センサーは、上記3軸加速度センサーに、3軸の角速度(ジャイロ)をそれぞれ検出する機能が付加されたものである。
また、9軸センサーは、上記6軸センサーに、3軸の方位(東西南北)をそれぞれ検出する機能が付加されたものである。
【0037】
[2-2.放射線検出器の具体的動作]
このように構成された検出器1の第一制御部14は、以下のような動作をするようになっている。
【0038】
〔2-2-1.加速度検出・送信〕
例えば、第一制御部14は、所定条件が成立したことを契機として、第一センサー部17に、重力加速度の3軸方向成分を繰り返し検出させる。
所定条件には、例えば、検出器1の電源がオンにされたこと、他の装置(発生装置2、コンソール3等)から所定の制御信号を受信したこと、検出器1の操作部に所定操作がなされたこと等が含まれる。
そして、第一制御部14は、第一センサー部17が重力加速度の3軸方向成分を検出する度に、第一通信部16を介して、検出した重力加速度の3軸方向成分を発生装置2へ送信する。
【0039】
〔2-2-2.放射線画像生成・送信〕
また、第一制御部14は、発生装置2から放射線Rが照射されるタイミングと同期して、放射線検出部11での電荷の蓄積・放出を走査駆動部12に行わせる制御を実行する。
また、第一制御部14は、放射線検出部11が放出した電荷に基づく信号値の読み出しを読み出し部13に行わせる制御を実行する。
また、第一制御部14は、読み出し部13が読み出した信号値に基づいて、照射された放射線Rの線量分布に応じた放射線画像を生成する。
静止画像を生成する場合には、1回の照射指示スイッチ22の押下につき放射線画像の生成を1回だけ行う。
動態画像を生成する場合には、1回の照射指示スイッチ22の押下につき動態画像を構成するフレームの生成を所定時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す。
また、第一制御部14は、生成した放射線画像の画像データを、第一通信部16を介して他の装置(コンソール3、動態解析装置等)へ送信する。
【0040】
[2-3.放射線検出器その他1]
なお、検出器1の放射線検出部11は、シンチレーターを備えず、半導体素子が放射線を受けることで直接電荷を発生させるものとなっていてもよい。
また、検出器1は、生成した動態画像を、画像データの形にするのではなく、自身に接続された表示装置にリアルタイムで表示させる(例えば、透視する)ようになっていてもよい。
【0041】
[2-4.放射線検出器その他2]
また、検出器1の第一センサー部17(3軸加速度センサー)は、放射線検出部11の基板111a等への実装状態、放射線検出部11の検出器1内への取り付け状態、検出器1の筐体のゆがみ等の影響により、放射線入射面1aが理想的な水平面と平行になっているときであっても、出力値が僅かな傾きを示すことがある。
また、検出器1を持ち運ぶ際に検出器1に衝撃が加わる(例えば、落下させる等)ことで、出力値が傾きを示すようになる上記影響が新たに生じたり、上記影響の程度が変化したりすることがある。
そこで、第一制御部14は、発生装置2へ出力する第一センサー部17の検出値を補正する(キャリブレーションを行う)ようになっていてもよい。
具体的には、第一制御部14は、検出器1が理想的な水平面に載置されているとき、傾きがないことを示すように出力値を補正する。
又は、第一制御部14は、検出器1が理想的な水平面に対する傾斜角度が既知の場所(例えば、回診車の検出器格納部26の中)に格納されているとき、既知の傾斜角度で傾いていることを示すよう出力値を補正する。
そして、第一制御部14は、補正により得られた補正データを第一記憶部15に記憶させる。
補正は、例えば、検出器1の初期設置時、検出器1に衝撃を与えてしまった後、検出器1の第一記憶部15に補正データが記憶されていないとき等に行うようにする。
【0042】
なお、第一制御部14は、検出器1が検出器格納部26に格納されたことを検知したときに、補正を自動的に行うようになっていてもよい。
また、第一制御部14は、補正を行うことをユーザーUに促す(例えば、促す旨の文字を表示する等)ようになっていてもよい。また、その場合、第一制御部14は、検出器格納部26へ検出器1を格納したときの水平面に対する回転角の規定値に対する、算出した第一角度情報のずれの大きさが許容範囲を超えたと判断した場合のみ補正を促すようになっていてもよい。
【0043】
<3.放射線発生装置及びコンソールの詳細>
次に、上記システム100が備える発生装置2及びコンソール3の詳細について説明する。
図4は発生装置2及びコンソール3の電気的構成を示すブロック図、
図5は発生装置2が実行する傾き情報準備処理の流れを示すフローチャート、
図6は検出器1の配置とその時の傾き情報を示す図、
図7は発生装置2が実行する表示制御処理の流れを示すフローチャート、
図8~11
は発生装置2又はコンソール3が表示する画面の一例を示す図である。
【0044】
[3-1.放射線発生装置の具体的構成]
発生装置2は、上記発生装置本体21、照射指示スイッチ22、管球23、管球支持部24、コリメーター25及び検出器格納部26の他、例えば
図4に示すように、第二センサー部27と、サブ表示部28と、距離測定部29と、を備えている。
また、発生装置2の発生装置本体21は、第二制御部211と、第二記憶部212と、ジェネレーター213と、第二通信部214と、を備えている。
各部22,23,25,27,28,211~214は、バス等で電気的に接続されている。
【0045】
〔3-1-1.第二センサー部〕
本実施形態に係る第二センサー部27は、第一センサー部17と同様の3軸加速度センサーとなっている。
なお、第二センサー部27は、6軸センサー又は9軸センサーであってもよい。
また、第二センサー部27を構成するセンサーは、第一センサー部17を構成するセンサーと種類が異なっていてもよい。
【0046】
〔3-1-2.サブ表示部〕
サブ表示部28は、LCD(Liquid Crystal Display)やCRT(Cathode Ray Tube)等のモニターにより構成されている。
そして、サブ表示部28は、第二制御部211から入力される表示信号の指示に従って、各種画像や各種情報等を表示するようになっている。
本実施形態に係るサブ表示部28は、コリメーター25の筐体に設けられている。
なお、サブ表示部28は、管球23の筐体に設けられていてもよいし、管球支持部24に設けられていてもよい。
【0047】
〔3-1-3.距離測定部〕
距離測定部29は、SID又はSSDを測定するものである。
SID(source image distance)は、放射線Rの焦点Fと検出器1の撮像面11a(放射線検出部11における電荷蓄積部111bが設けられている面)との間の距離である。
また、SSD(source skin distance)は、放射線Rの焦点Fと被検者の体表との距離であり、SIDと被検者Sの体厚との差とほぼ等しい。
本実施形態に係る距離測定部29は、コリメーター25に設けられている。
【0048】
距離測定部29は、例えば、レーザー光を発する発光手段、反射してきたレーザー光を検知する検知手段、及びレーザー光を発してから反射してきたレーザー光を検知するまでの時間に基づいて発光手段から反射点までの距離を算出する算出手段で構成されたものであってもよいし、放射線の照射方向にある検出器1を撮影する光学カメラ、及び光学カメラが生成した検出器1の光学画像及び検出器1のサイズ情報に基づいてSIDを算出する算出手段で構成されたものであってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。
レーザー光は被検者Sの体表で反射するため、レーザー光を用いた距離測定部29が測定する距離はSSDとなることが多い。この場合には、測定したSSDに被検者Sの体厚を加算した値をSIDとする。
体厚は、所定の基準値であってもよいし、ユーザーが入力した数値であってもよいし、被検者Sの情報から自動的に算出したものであってもよい。
【0049】
〔3-1-4.第二制御部〕
第二制御部211は、CPU、RAM等により構成されている。
そして、第二制御部211のCPUは、第二記憶部212に記憶されている各種プログラムを読出してRAM内に展開し、展開されたプログラムに従って各種処理を実行し、発生装置2各部の動作を集中制御するようになっている。
【0050】
〔3-1-5.第二記憶部〕
第二記憶部212は、不揮発性のメモリーやハードディスク等により構成されている。
また、第二記憶部212は、第二制御部211が実行する各種プログラムやプログラムの実行に必要なパラメーター、ファイル等を記憶している。
【0051】
〔3-1-6.ジェネレーター〕
ジェネレーター213は、第二制御部211から撮影指示信号を受信したことを契機として、予め設定された撮影条件に応じた電圧を管球23へ印加するとともに撮影条件に応じた電流を管球23へ通電するようになっている。
【0052】
〔3-1-7.第二通信部〕
第二通信部214は、通信モジュール等で構成されている。
そして、第二通信部214は、通信ネットワークを介して有線又は無線で接続された他の装置(検出器1、コンソール3等)との間で各種信号や各種データを送受信することが可能となっている。
【0053】
[3-2.コンソールの具体的構成]
コンソール3は、制御部と、記憶部と、通信部と、メイン表示部31と、操作部32と、を備えている。
本実施形態に係るコンソール3の制御部、記憶部及び通信部は、発生装置2の第二制御部211、第二記憶部212及び第二通信部214がそれぞれ兼ねている。
なお、コンソール3は、専用の制御部、記憶部及び通信部を備えていてもよい。
【0054】
〔3-2-1.メイン表示部〕
メイン表示部31は、LCDやCRT等のモニターにより構成されている。
そして、メイン表示部31は、第二制御部211から入力される表示信号の指示に従って、各種画像や各種情報等を表示するようになっている。
【0055】
〔3-2-2.操作部〕
操作部32は、ユーザーが操作可能に構成されている。
操作部32には、例えば、キーボード(カーソルキー、数字入力キー、各種機能キー等)、ポインティングデバイス(マウス等)、メイン表示部31の表面に積層されたタッチパネル等が含まれる。
そして、操作部32は、ユーザーによってなされた操作に応じた制御信号を第二制御部211に出力するようになっている。
【0056】
[3-3.放射線発生装置及びコンソールの具体的動作]
上記のように構成された発生装置2(コンソール3)の第二制御部211は、以下のような動作をする。
【0057】
〔3-3-1.傾き情報の算出〕
また、第二制御部211は、所定条件が成立したことを契機として、例えば
図5に示すような傾き情報準備処理を実行する。
所定条件には、例えば、発生装置2の電源がオンにされたこと、検出器1と通信可能となったこと、コンソール3の操作部32に所定操作がなされたこと等が含まれる。
【0058】
(第一確認処理)
この傾き情報準備処理において、第二制御部211は、まず、確認処理を実行する(ステップA1)。
この確認処理において、第二制御部211は、自身に接続されている(コンソール3に登録されている)検出器1の情報を判定する。
具体的には、第二制御部211は、検出器1が第一センサー部17を備えているか否かを確認する。
より具体的には、第二制御部211は、例えば、検出器1に記憶されている第一センサー部17の有無情報、検出器1に記憶されている検出器ID及び他の装置(コンソール3等)に記憶されている検出器1と第一センサー部17の有無の対照情報等を参照することにより検出器1が第一センサー部17を備えているか否か判断する。
【0059】
この確認処理において、検出器1が第一センサー部17を備えたものではないと判定した場合(ステップA1:No)、第二制御部211は、角度算出処理を終了する(傾き情報の表示を許可しない)。
一方、検出器1が第一センサー部17を備えたものであると判定した場合(ステップA1:Yes)、第二制御部211は、次の処理(ステップA2)に進む(傾き情報の表示を許可する)。
第二制御部211がこの確認処理を実行することにより、第一センサー部17を備えていない検出器を使用する際は傾き情報が表示されなくなるため、ユーザーUの誤認を防ぐことができる。
また、第一センサー部17を備えた検出器1を使用する際は傾き情報が表示されるため、ユーザーUは詳細なポジショニングを行うことが可能となる。
【0060】
・取得処理
上記条件判定処理において上記複数の条件のうちの少なくともいずれかの条件が成立したと判定した場合、第二制御部211は、取得処理を実行する(ステップA2)。
この取得処理において、第二制御部211は、検出器1から、第一センサー部17が検出した重力加速度の3軸方向成分を取得する。
また、この確認処理において、第二制御部211は、第二センサー部27から、当該第二センサー部27が検出した重力加速度の3軸方向成分を取得する。
【0061】
・算出処理
重力加速度の3軸方向成分を取得した後、第二制御部211は、算出処理を実行する(ステップA3)。
この算出処理において、第二制御部211は、第一,第二センサー部17,27が検出した重力加速度の3軸方向成分に基づいて、傾き情報を算出する。
「傾き情報」は、水平面又は管球23の向きに対する検出器1の傾きを示す情報である。
具体的には、第二制御部211は、水平面に対する検出器1の回転角(ロール角Ψ及びピッチ角θ)を第一角度情報として算出する。
また、第二制御部211は、第二センサー部27が検出した重力加速度の3軸方向成分に基づいて、水平面に対する管球23の回転角(ロール角Ψ及びピッチ角θ)を第二角度情報として算出する。
傾き情報を水平面に対する検出器1の傾きを示すものとする場合、第二制御部211は、算出した第一角度情報を傾き情報とする。
一方、傾き情報を管球の向きに対する検出器1の傾きを示すものとする場合、第二制御部211は、算出した第一角度情報と第二角度情報との差を算出し、その差を傾き情報とする。
【0062】
なお、第一角度情報の算出を、第一センサー部17又は第一制御部14が実行するようになっていてもよい。
また、第二角度情報の算出を、第二センサー部27が実行するようになっていてもよい。
【0063】
ところで、使用する検出器1が半切サイズ(14インチ×17インチ)である場合、通常は例えば
図6(a)に示すような状態で使用するところ、被検者Sの体格によっては、例えば
図6(b)に示すように、検出器1を90度回転させて撮影することがある。
また、検出器1は単純なパネル状をしているため、ユーザーUは、検出器1の上下を意識せず、例えば
図6(c)に示すように、上下を逆にしたまま(180度回転させて)撮影することもある(生成される放射線画像も上下が逆になるが、後から回転可能である)。
また、3軸加速度センサーを用いて検出器1の傾き情報を算出する場合、水平面に対するロール角Ψ及びピッチ角θを算出するのが一般的である。
このため、検出器1を上記の様に回転させて使用すると、ロール角Ψとピッチ角θの関係が逆になる、又はロール角Ψ又はピッチ角θが負の値として算出される。すると、管球23のロール角Ψ及びピッチ角θの微調整を行おうとする際に、支障が生じる可能性がある。
なお、検出器1のピッチ角θは、ほぼ0度となる条件で撮影を行うことが多い。
【0064】
そこで、この算出処理において、第二制御部211は、水平面と検出器1の放射線入射面とがなす角φの大きさを、傾き情報として算出するようになっていてもよい。
具体的には、第二制御部211は、重力加速度の3軸方向成分を、一般的な直交座標系から球面座標系への変換式を用いて、検出器1の放射線入射面1aと直交する直線と鉛直線(Z軸)とがなす角(水平面と放射線入射面1aとがなす角φ)に変換する。
このようにすれば、傾き情報を一つの指標で管理することができるため、管球23の向きの微調整を容易に行うことができる。具体的には、管球のピッチ角θを0度になるよう調整した後、検出器のロール角Ψと管球23のロール角Ψが一致するよう調整する。
また、検出器1を撮像面11aと直交する軸で回転させた場合であっても傾き情報が変化しないため、ユーザーUの感覚に近い表示を行うことが可能となる。その結果、検出器1の回転を意識することなく、管球23の位置や向きの微調整を容易に行うことができる。
【0065】
また、第二制御部211は、算出したロール角Ψ及びピッチ角θそれぞれの絶対値の最大値を傾き情報とするようになっていてもよい。
このようにすれば、上記なす角φをより簡易的な手法で算出することができる。
【0066】
また、第二制御部211は、上記算出処理において傾き情報又は水平面と放射線入射面1aとがなす角φを算出した後、検出器1の撮像面11aが上方を向いているか否かを判断するようになっていてもよい。
具体的には、第二制御部211は、傾き情報又はなす角φが90度未満である場合には撮像面11aが上を向いている(正常)と判断し、90度を超えている場合には裏面が上を向いている(異常)と判断する。
なお、傾き情報又はなす角φが90度付近である場合、上を向いていると判断される面がふらつく可能性があるため、第二制御部211は、90度より大きい角度(例えば110度)を超えたら裏面が上を向いていると判断するようになっていてもよい。
【0067】
また、第二制御部211は、検出器1が裏表逆に配置されていると判定した場合、ユーザーUの注意を喚起する(警告を表示する等)ようになっていてもよい。
検出器1が被検者Sの下又は背後に配置された後は、撮影が終了するまで検出器1の裏表が逆になっているかどうかに気づくことはできない。しかし、このようにすれば、検出器1が被検者Sの下又は背後に配置されているときも検出器1の裏表が逆になっていないかどうかを確認することができるため、撮影に失敗して被検者Sが無駄に被曝してしまうのを防ぐことができる。
本実施形態に係る第二制御部211は、以上説明してきた算出処理を実行することにより算出手段をなす。
【0068】
本実施形態に係る傾き情報準備処理において、第二制御部211は、傾き情報を算出した後、終了判定処理を実行する(ステップA4)。
本実施形態に係る終了判定処理において、第二制御部211は、下記複数の終了条件(1)及び(2)のうちの少なくともいずれかの終了条件が成立したか否かを判定する。
(1)照射指示スイッチ22が操作されたこと
(2)放射線Rの照射が完了したこと
これは、放射線Rが照射された時点で生成される放射線画像が確定することから、その後も傾き情報準備処理や後述する表示制御処理を継続する必要性が低いためである。
【0069】
この終了判定処理において、終了条件が成立していないと判定した場合(ステップA4:No)、第二制御部211は、ステップA2の処理へ戻る。すなわち、第二制御部211は、終了条件が成立するまで第一角度情報の取得及び傾き情報の算出を繰り返す。
一方、終了条件が成立したと判定した場合(ステップA4:Yes)、第二制御部211は、傾き情報準備処理を終了する。
【0070】
(傾き情報準備処理その他1)
なお、上記傾き情報準備処理において傾き情報を算出した後、第二制御部211は、状態判定処理を実行するようになっていてもよい。
この状態判定処理において、第二制御部211は、第一角度情報と第二角度情報との差が所定の基準範囲内にあるか否かを判定する。
また、その場合、第二制御部211は、その判定結果を傾き情報とするようになっていてもよい。
また、第二制御部211は、距離測定部29が測定したSIDが所定の基準範囲内にあるか否かを判定するようになっていてもよい。
【0071】
また、状態判定処理を実行するようにした場合、第二制御部211は、当該状態判定処理を実行する前に、撮影オーダーに動態撮影が入っているか否かを判定するようになっていてもよい。
そして、撮影オーダーに動態撮影が入っていると判定した場合、第二制御部211は、その後の状態判定処理で用いる基準範囲を変更する(狭める)ようになっていてもよい。これは、動態撮影が、動態解析に用いられる関係上、静止画像を撮影する場合に比べて求められるアライメントの精度が高いためである。
【0072】
また、状態判定処理を実行するようにした場合、第二制御部211は、グリッドの有無やその種類に応じて基準範囲を変更するようになっていてもよい。
これは、グリッド比が大きくなると、放射線Rの斜入の影響を受けやすくなる(グリッドによるカットオフの影響で放射線画像に濃度差が生じる)ためである。
【0073】
(傾き情報準備処理その他2)
また、上記傾き情報準備処理において、第二制御部211は、第一センサー部17が、所定時間経過する度に重力加速度の3軸方向成分を複数回検出することにより得られた複数の第一,第二角度情報に基づいて、傾き情報を算出するようになっていてもよい。
具体的には、第二制御部211は、上記取得処理を複数回実行する毎に算出処理を1回実行し、算出処理において、複数の第一,第二角度情報の平均値、中央値等を傾き情報として算出する。
検出器1が被検者Sの下又は背後に配置された後、被検者Sの呼吸の影響等により角度表示が変動してしまう。しかし、このようにすれば、呼吸等による傾き情報の変動を低減することができる。
また、傾き情報の変動が低減することにより、管球23の向きの微調整を容易に行うことができる。
【0074】
〔3-3-2.傾き情報の表示制御〕
また、第二制御部211は、上記取得処理及び算出処理の繰り返しが開始されたことを契機として、例えば
図7に示すような表示制御処理を実行する。
第二制御部211は、この表示制御処理を、上記傾き情報準備処理と並行して実行する。
【0075】
(条件判定処理)
この表示制御処理において、第二制御部211は、まず、条件判定処理を実行する(ステップB1)。
本実施形態に係る条件判定処理において、第二制御部211は、下記複数の表示開始条件(1)~(5)のうちの少なくともいずれかの表示開始条件が成立したか否かを判定する。
(1)撮影の開始を指示するコンソールにおいて撮影オーダーが選択されること
(2)検出器1が格納場所(システム100が回診車である場合は検出器格納部26、システム100が撮影室に据え付けられたものである場合は充電クレードル等)から取り出されること
(3)検出器1がケーブルから外されること
(4)管球が備えるコリメーター25の所定ボタン(例えば、放射線Rの照射野となる範囲に可視光を照射するためのランプボタン)が操作されること
(5)検出器1の傾きの大きさが基準範囲内である(例えば、管球23と検出器1との角度差が所定角度よりも小さい等)こと
【0076】
この条件判定処理において、上記複数の表示開始条件がいずれも成立していないと判定した場合(ステップB1:No)、第二制御部211は、この条件判定処理を繰り返す(表示開始条件が成立するまで待機する)。
一方、条件判定処理において、上記複数の表示開始条件のうちの少なくともいずれかの表示開始条件が成立したと判定した場合(ステップB1:Yes)、第二制御部211は、次の処理(ステップB2)に進む。
【0077】
管球23の位置や向きの大まかな位置を調整している間は、検出器1がまだ被検者Sの下又は背後に配置されておらず、傾き情報が参考にならない場合がある。このようなタイミングで傾き情報を表示すると、ユーザーUに混乱を与えてしまう(例えば、まだ正確な位置調整がなされていない検出器1の角度に合わせて管球23の向きを調整してしまう等)可能性がある。しかし、第二制御部211がこの条件判定処理を実行することにより、メイン表示部31及びサブ表示部28のうちの少なくとも一方は、上記複数の表示開始条件のうちの少なくともいずれかの条件が成立した後に傾き情報を表示することになる。このため、ユーザーUに混乱を与えることを防ぐことができる。
また、コリメーター25が可視光を照射している間は、ポジショニング作業の最終段階にあるため、検出器1が被検者Sの下又は背後に配置されていることが多い。このため、表示開始条件(4)が成立した場合に次の処理(ステップB2)へ進むようにすれば、より適切なタイミングで有用な傾き情報をユーザーUに提供することができる。
【0078】
なお、この条件判定処理において、成立したか否かを判定する表示開始条件には、下記の表示開始条件(6)~(8)が含まれていてもよい。
(6)検出器1を検出器格納部26から取り出した(傾きが変化し始めた)後、再び検出器1の傾きが安定した(検出器1が被検者Sの下又は背後に配置され動かなくなった)こと
(7)検出器1が備える検出器1の筐体内の気圧を検出する気圧センサーの検出値が基準値を超えた(検出器1が被検者Sの下又は背後に配置され筐体が圧迫された)こと
(8)距離測定部29の光学カメラが生成した光学画像に検出器1が写り込んだこと
【0079】
表示開始条件(6)又は(7)が成立した場合に次の処理(ステップB2)へ進むようにすることで、第二制御部211は、検出器1が被検者Sの下又は背後に配置された後に表示部28,31に傾き情報を表示するようになるため、ユーザーUに混乱を与えることを防ぐことができる。
また、距離測定部29の光学カメラが撮影している領域に検出器1が写り込むということは、その直後に検出器1が被検者Sの下又は背後に配置されると考えられる。このため、表示開始条件(8)が成立した場合に次の処理へ進むようにすることで、第二制御部211は、表示開始条件(6)又は(7)が成立した場合に次の処理へ進むようにした場合とほぼ同様のタイミングで表示部28,31に傾き情報を表示するようになるため、ユーザーUに混乱を与えることを防ぐことができる。
【0080】
(表示処理)
条件判定処理において表示開始条件が成立したと判定した後、第二制御部211は、表示処理を実行する(ステップB2)。
この表示処理において、第二制御部211は、傾き情報準備処理の算出処理において算出した傾き情報をメイン表示部31及びサブ表示部28のうちの少なくとも一方の表示部に表示させる。
具体的には、例えば
図8に示すように、管球23を示すアイコンI
23、管球23のロール角Ψ及びピッチ角θ、検出器を示すアイコンI
1、検出器1のロール角Ψ及びピッチ角θをそれぞれ表示する。
傾き情報をサブ表示部28に表示するようにすれば、管球23の位置及び向きを微調整する際にユーザーUが傾き情報をその場で参照することができるため、微調整を容易に行うことができる。
一方、傾き情報をメイン表示部31に表示するようにすれば、照射指示スイッチ22を操作するときに、検出器1と管球23との位置関係が変化していないかどうかの最終確認を行うことができる。
なお、第二制御部211は、検出器1のロール角Ψ及びピッチ角θを、管球23のロール角Ψ及びピッチ角θとの差の形で表示するようになっていてもよい。
【0081】
なお、傾き情報を水平面と放射線入射面1aとがなす角φとした場合、第二制御部211は、例えば
図9に示すように、管球23のロール角Ψ及びピッチ角θ、水平面と放射線入射面1aとがなす角φをそれぞれ表示部28,31に表示させるようになっていてもよい。
【0082】
また、例えば
図10(a)に示すように、管球23を示すアイコンI
23と、検出器1を示すアイコンI
1を、実際の管球23及び検出器1を平面視したときのような配置で表示させるようになっていてもよい。その際、距離測定部29が測定したSID(SSD)を併せて表示させるようになっていてもよい。
また、サブ表示部28は、管球23の向きの変化に伴って向きを変える場合がある。このため、管球23を示すアイコンI
23及び検出器1を示すアイコンI
1をサブ表示部28で表示する場合、第二制御部211は、例えば
図10(b)に示すように、管球23の向きの変更に対応して、アイコンI
1の配置を変更するようになっていてもよい。
また、この場合、第二制御部211は、管球23のロール角Ψを絶対値で表示させるようになっていてもよい。このようにすれば、管球23を回転させた角度が正値となるため、数値を合わせやすくなる。
ロール角Ψの表示を絶対値としない場合には、管球23を回転させる方向と値の正負が一致するため分かりやすい。
【0083】
また、サブ表示部28は、管球23の回転に伴って回転し、横長から縦長になる場合がある。このため、第二制御部211は、例えば
図11(a)に示すような横長の状態で、管球23が所定角度(例えば45度超)回転し縦長になった場合には、
図11(b)に示すように表示画面も縦型に切り替えるようになっていてもよい。
なお、表示画面を切り替える所定角度は、例えば70度等であっても良い。45度で切り替える場合、座位の撮影においてベッドBの背もたれ部の角度が45度付近であると、管球23の向きを微調整するたびに表示画面の縦横が切替わり、表示内容を確認するのが煩雑になってしまうためである。立位撮影における管球23が角度は90度±10度、臥位撮影における角度が0度±10度、座位撮影における角度が40度±10度であることを想定すると、所定角度は、いずれの撮影時の角度からも離れている60~70度であることが好ましい。
また、その際、管球23を示すアイコンI
23及び検出器1を示すアイコンI
1の表示は変更しないようになっていてもよい。このようにすれば、ユーザーUに混乱を与えるのを防ぐことができる。
また、管球23と検出器1の角度差が所定範囲内である場合には、こうした表示画面の切り替えを規制するようになっていてもよい。これは、管球23の向きの微調整を行っているときに表示画面の縦横が切り替わると、ユーザーUは表示画面を見づらくなってしまうためである。
【0084】
第二制御部211は、傾き情報準備処理において算出処理を実行する度に、表示させる傾き情報を新しいものに更新する。
こうすることで、ユーザーUは、傾き情報をリアルタイムで確認することができる。
【0085】
なお、第二制御部211は、上記表示開始条件が成立する前に、傾き情報を表示部28,31に表示させるようになっていてもよい。
その場合、第二制御部211は、傾き情報の表示態様を、下記のように変更するようになっているのが望ましい。
・傾き情報の表示/非表示を切り替える代わりに、傾き情報の表示色を、検出器1を検出器格納部26から取り出す前後で変更する(例えば、検出器1を検出器格納部26から取り出す前はグレー(薄い色)で表示し、取り出した後はそれよりも濃い(通常の)色で表示する)
・傾き情報と共に、検出器1が検出器格納部26に格納されている、又はスリープ状態になっている旨を表示する
このようにすれば、表示開始条件が成立してから初めて傾き情報を表示する場合と同様に、ユーザーUに混乱を与えることを防ぐことができる。
【0086】
また、上記表示開始条件(4)以外の表示開始条件が成立した場合に次の処理(ステップB2)へ進むようにした(コリメーター25の所定ボタンの操作よりも前に傾き情報を表示させる)場合、第二制御部211は、コリメーター25が照射野となる範囲を可視光で照射している間、表示部28,31に表示させる傾き情報の表示態様を変更するようになっていてもよい。
具体的には、表示を大きくしたり、ポップアップ表示したりすることで、照射前よりも傾き情報を見やすくする。
【0087】
また、上記傾き情報準備処理において状態判定処理を実行するようにした場合、第二制御部211は、表示処理において、その判定結果を表示部28,31に表示させるようになっていてもよい。こうすることで、ユーザーUは管球23の位置や向きの微調整を容易に行うことができる。
なお、この場合、第二制御部211は、管球23と検出器1との対向状態が基準範囲内であった場合のみその旨を表示させ、基準範囲外であった場合には表示させないようになっていてもよい。管球23の位置や向きを大まかに調整した後に検出器1を被検者Sの下又は背後に配置する場合、管球23の位置や向きを大まかに調整している間、表示部28,31には基準範囲外である旨が表示され続け、ユーザーUに混乱を与えてしまうが、このようにすれば、ユーザーUに混乱を与えることを防ぐことができる。
また、第二制御部211は、表示部28,31に所定の色を表示させておき、管球23と検出器1の対向状態が基準範囲内に入ったら、表示部28,31に表示する色を他の色に変更させるようになっていてもよい。
また、第二制御部211は、管球23と検出器1の対向状態が基準範囲内に入ったら、図示しないスピーカーに所定の音声を出力させるようになっていてもよい。
【0088】
また、第二制御部211は、コリメーター25が照射野となる範囲を可視光で照射している間以外の期間は、判定結果を表示部28,31に表示させないようになっていてもよい。
コリメーター25が可視光を照射していない期間は、検出器1はまだ検出器格納部26や格納されていたり、机等の上に載置されていたりすることが多いのに対し、コリメーター25が可視光を照射している間は、ポジショニング作業の最終段階にあるため、このようにすれば、より適切なタイミングで判定結果をユーザーUに提供することができる。
また、以上説明してきた状態判定処理における判定結果の表示に関する制御は、SID(SSD)が基準範囲内であるか否かの判定結果についても適用可能である。
【0089】
本実施形態に係る表示制御処理において、第二制御部211は、傾き情報の表示を開始した後、終了判定処理を実行する(ステップB3)。
この終了判定処理において、第二制御部211は、下記複数の終了条件(1)~(3)のうちの少なくともいずれかの終了条件が成立したか否かを判定する。
(1)照射指示スイッチ22が操作されたこと
(2)放射線Rの照射が完了したこと
(3)傾き情報準備処理を終了したこと
【0090】
この終了判定処理において、終了条件が成立していないと判定した場合(ステップB3:No)、第二制御部211は、ステップB2の処理へ戻る。すなわち、第二制御部211は、終了条件が成立するまで傾き情報の表示を継続する。
一方、終了条件が成立したと判定した場合(ステップB3:Yes)、第二制御部211は、表示制御処理を終了する。
【0091】
第二制御部211が以上説明してきた表示制御処理(表示部28,31の表示制御)を実行することにより、表示部28,31は、水平面又は管球の向きに対する検出器1の傾きを示す傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了することになる。
すなわち、本実施形態に係る第二制御部211は、表示制御手段をなす。
【0092】
(表示制御処理その他1)
なお、上記表示制御処理において条件判定処理を開始する前、第二制御部211は、第二確認処理を実行するようになっていてもよい。
この第二条件判定処理において、第二制御部211は、検出器1がコンソール3から撮影の開始の指示を受けているか否かを判定する。
コンソール3に登録されている(検出器格納部26に格納されている)検出器1が複数ある場合、第二制御部211は、この第二確認処理を各検出器1についてそれぞれ実行する。
また、この場合、第二制御部211は、その後の表示処理において、コンソール3から撮影の開始の指示を受けている検出器1の傾き情報を表示部28,31に表示させる。
従来、回診車にサイズの異なる複数枚の検出器を搭載することが行われているが、使用しない複数の検出器1の傾き情報を同時に表示するとユーザーUに混乱を与えてしまう。しかし、第二制御部211がこの第二確認処理を実行するようにすれば、ユーザーUは、現在、複数ある検出器1のうちどの検出器1の傾き情報が表示されているのかを容易に知ることができる。
【0093】
(表示制御処理その他2)
また、上記表示制御処理において、第二制御部211は、被検者Sを撮影する前(準備中)に傾き情報を表示部28,31に表示させる際、当該被検者Sを過去に撮影したときの過去傾き情報を表示部28,31に併せて表示させるようになっていてもよい。
具体的には、第二制御部211は、被検者SのIDに基づいて、過去傾き情報を呼び出し、表示部28,31に併せて表示させる。
なお、この場合、第二制御部211は、被検者SのID及び撮影部位(胸部、腹部等)に基づいて過去傾き情報を呼び出すようになっていることが望ましい。これは、撮影部位によって検出器1の傾け方が異なる場合があるためである。
撮影の度に管球23や被検者Sの傾きが変化すると、被検者Sの体内構造物の配置や、放射線画像の濃度に違いが生じてしまう。この変化は、経過観察の際に細かな変化を見落とす原因となり得る。しかし、過去傾き情報を表示するようにすれば、ポジショニングの再現性が向上するため、細かな変化を見落とすリスクを低減することができる。
【0094】
また、第二制御部211は、過去傾き情報やSID(SSD)を、放射線画像にオーバーレイ表示させるようになっていてもよい。このようにすれば、限られた表示スペースを有効に活用することができるし、撮影準備や診断を行う際に放射線画像と過去傾き情報等との間の視線の移動を少なくすることができる。
なお、現在準備中の撮影が臥位撮影又は立位撮影である場合、第二制御部211は、過去傾き情報を表示部28,31に表示させないようになっていてもよい。これは、臥位撮影及び立位撮影では、水平面と放射線入射面1aとがなす角φが0°及び90°となることが明白であり、表示すると却ってユーザーUに混乱を与えてしまう可能性があるためである。
【0095】
〔3-3-3.放射線の発生〕
また、第二制御部211は、照射指示スイッチ22から操作信号を受信したこと(照射指示スイッチ22が操作されたこと)を契機として、生成しようとする放射線画像の形態(静止画像、複数のフレームからなる動態画像)に応じた態様の放射線Rを発生させることを指示する照射指示信号をジェネレーター213へ送信する。
第二制御部211から照射指示信号を受信したジェネレーター213は、予め設定された撮影条件に応じた電圧を管球23へ印加するとともに撮影条件に応じた電流を管球23へ通電する。
ジェネレーター213から電圧の印加及び電流の通電を受けた管球23は、印加された電圧及び通電された電流に応じた線量の放射線Rを、印加された電圧及び通電された電流に応じた態様で発生させる。
静止画像の場合、管球23は、1回の照射指示スイッチ22の押下につき放射線Rの照射を1回だけ行う。
動態画像の場合、管球23は、1回の照射指示スイッチ22の押下につきパルス状の放射線Rの照射を所定時間当たり複数回(例えば1秒間に15回)繰り返す、又は放射線Rの照射を所定時間継続する。
【0096】
〔3-3-4.傾き情報の保存〕
放射線を発生させた(撮影した)後、第二制御部211は、保存処理を実行する。
この保存処理において、第二制御部211は、被検者Sを撮影したときの傾き情報を、当該被検者Sに関する情報と共に保存させる。
傾き情報の保存の仕方には、例えば、放射線画像のヘッダー部に書き込む方法、放射線画像と紐づけつつ第二記憶部212や他の装置(PACS等)の記憶部に記憶させる方法等が含まれる。
なお、この保存処理において、第二制御部211は、傾き情報だけでなく、被検者Sを撮影したときのSID(SSD)を併せて保存させるようになっていてもよい。このようにすれば、新たに撮影を行う際に、被検者Sを過去に撮影したときのSIDを確認することが可能になるため、新たな撮影を行うときの検出器1及び管球23の位置や向きを高い精度で再現することができる。
特に、傾き情報やSIDを放射線画像のヘッダー部に書き込むようにすれば(放射線画像と傾き情報とが紐付けされれば)、傾き情報をより効率的に管理することができるし、傾き情報をより診断に有用なものとすることができる(例えば、診断者が本来あるべき体内構造物の配置をイメージしやすくなる等)。
【0097】
なお、1回の撮影操作で複数枚の放射線画像を生成する撮影(例えば、動態撮影)を行った場合、この保存処理において、第二制御部211は、放射線画像(フレーム)毎に画像取得時の傾き情報を保存させるようになっていてもよい。
このようにすれば、ユーザーUや診断者は、複数の傾き情報を見比べることで、撮影の際に大きな体動があったか否かを確認することができる。
また、傾き情報を参照することで、複数の放射線画像の中から異常な放射線画像を自動的に削除したり、解析対象から除いたりすることを容易に行うことができる。
また、放射線画像と共に傾き情報を表示することで、診断者に対して注意喚起することができる。
【0098】
また、複数の放射線画像毎に画像取得時の傾き情報を保存させるようにした場合、第二制御部211は、上記保存処理において決定処理を実行するようになっていてもよい。
この決定処理において、第二制御部211は、放射線画像毎に保存された複数の傾き情報に基づいて、撮影を代表する代表傾き情報を決定する。
「撮影を代表する傾き情報」には、例えば、複数の放射線画像のうち所定数目(例えば、1枚目)の生成を行ったときの傾き情報、全ての傾き情報の平均値、全ての傾き情報の中の中央値、全ての傾き情報の中の一部(例えば最初の放射線画像の生成時と最後の放射線画像の生成時)の平均値等が含まれる。
【0099】
複数の傾き情報を扱う作業はユーザーUや診断者にとって煩雑なものである。しかし、このようにすれば、代表傾き情報のみをポジショニングや診断を行う際の参考することができるため、ユーザーUや診断者の手間を低減することができる。
また、平均値等を代表傾き情報とすれば、代表傾き情報を撮影状況がより正確に反映された情報とすることができる。
また、平均値、中央値等を代表傾き情報とすれば、ポジショニングや診断の参考とする際に、呼吸等による傾き情報の変動の影響を排除することができる。
本実施形態に係る第二制御部211は、以上説明してきた保存処理(決定処理)を実行することにより保存手段(決定手段)をなす。
【0100】
〔3-3-5.放射線発生装置の動作その他1〕
なお、上記実施形態に係る第二制御部211は、取得処理及び算出処理を繰り返し実行している間に表示開始条件が成立した場合に傾き情報を表示部28,31に表示させるようになっていたが、表示開始条件が成立したことを契機として取得処理及び算出処理を開始するようになっていてもよい。このようにすれば、表示開始条件が成立する前から取得処理及び算出処理を実行する場合に比べて、第二制御部211の消費電力を抑えることができる。
また、この場合、第二制御部211は、取得処理及び算出処理を開始した後も傾き情報を表示部28,31に表示させず、保存だけするようになっていてもよい。このようにすれば、メンテナンスのとき等に傾き情報を確認することで、撮影時の異常の有無等を確認することができる。
【0101】
〔3-3-6.放射線発生装置の動作その他2〕
同型の回診車が複数ある場合、各回診車が有する筐体のゆがみの個体差等により、各回診車の検出器格納部26の傾斜角度が僅かに異なる場合がある。
そこで、第二制御部211は、検出器格納部26へ格納されている検出器から受信した第一センサー部17の検出値を補正する(キャリブレーションを行う)ようになっていてもよい。
具体的には、各回診車の第二制御部211は、検出器1が検出器格納部26の中に格納されているときの、水平面に対する回転角が全て同一の傾斜角度となっていることを示すよう出力値を補正する。
【0102】
<4.効果>
以上説明してきたように、本実施形態に係るシステム100は、放射線Rを発生させる管球23と、受けた放射線Rに応じた放射線画像を生成する検出器1と、水平面又は管球23の向きに対する検出器1の傾きを示す傾き情報の表示を、所定タイミングで開始又は終了する表示部28,31と、を備える。
このため、システム100によれば、所定タイミングを調節する(例えば表示開始条件が成立した後にする)ことにより、傾き情報を、ユーザーが必要とするタイミングで確認することができるようになる。
【0103】
<5.その他>
なお、本発明は上記の実施形態等に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
【0104】
例えば、上記の説明では、本発明に係るプログラムのコンピューター読み取り可能な媒体としてハードディスクや半導体の不揮発性メモリー等を使用した例を開示したが、この例に限定されない。その他のコンピューター読み取り可能な媒体として、CD-ROM等の可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウエーブ(搬送波)も適用される。
【符号の説明】
【0105】
100 放射線撮影システム(回診車)
1 放射線検出器
1a 放射線入射面
11 放射線検出部
11a 撮像面
111 光電変換パネル
111a 基板
111b 電荷蓄積部
111c 走査線
111d 信号線
12 走査駆動部
13 読み出し部
14 第一制御部
15 第一記憶部
16 第一通信部
17 第一センサー部
2 放射線発生装置
21 発生装置本体
211 第二制御部
212 第二記憶部
213 ジェネレーター
214 第二通信部
22 照射指示スイッチ
23 管球
24 管球支持部
241 第一支持部
242 第二支持部
25 コリメーター
26 検出器格納部
27 第二センサー部
28 サブ表示部
29 距離測定部
3 コンソール
31 メイン表示部
32 操作部
B ベッド
F 焦点
R 放射線
S 被検者
U ユーザー