(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】足漕ぎ運動機器
(51)【国際特許分類】
A63B 23/04 20060101AFI20240806BHJP
A63B 21/02 20060101ALI20240806BHJP
A61H 1/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A63B23/04 C
A63B21/02
A61H1/02 N
(21)【出願番号】P 2020212178
(22)【出願日】2020-12-22
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】青木 英祐
【審査官】亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0046902(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0274622(US,A1)
【文献】中国実用新案第211934769(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第111530022(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0207474(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0031175(US,A1)
【文献】登録実用新案第3168418(JP,U)
【文献】特開2004-201755(JP,A)
【文献】特開2002-306629(JP,A)
【文献】登録実用新案第3086197(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 23/00 -23/16
A63B 21/00 -21/28
A63B 69/00 -69/40
A61H 1/00 - 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座位の利用者が足を乗せるペダル本体と、
前記ペダル本体が足長方向に沿って所定の範囲内で移動自在となるように前記ペダル本体を支持するペダル支持部と、
一端が前記ペダル支持部のつま先側の端部に固定され、他端が前記ペダル支持部の踵側の端部に固定され、引き伸ばされた状態で前記ペダル支持部に張られた弾性体と、
前記ペダル支持部が所定の循環軌道に沿って循環移動するように前記ペダル支持部を案内する案内機構と、
を含
み、
前記ペダル本体は、前記ペダル本体が前記ペダル支持部に対して移動する方向に応じて前記弾性体による抵抗力を変えるために、前記弾性体の任意の位置に着脱自在となっている、
足漕ぎ運動機器。
【請求項2】
前記弾性体は、ゴムチューブ又はゴムバンドである、
請求項1に記載の足漕ぎ運動機器。
【請求項3】
前記ペダル本体は、前記利用者が足を乗せるステップと、前記ステップを前記弾性体の任意の位置に連結するための連結手段と、を含む、
請求項1又は2に記載の足漕ぎ運動機器。
【請求項4】
前記連結手段は、前記ステップに固定された受け部と、前記受け部と対向するカバー部と、前記受け部と前記カバー部で前記弾性体を挟んだ状態で前記カバー部を前記受け部に押し付けてクランプ力を発揮させるネジ機構と、を含む、
請求項3に記載の足漕ぎ運動機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足漕ぎ運動機器に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、ユーザが座ったまま、上下肢連動運動を行うことができる運動機器が開示されている。非特許文献1の運動機器では、ユーザがペダルを踏み込むことで、楕円軌道による運動を行うことができる。特許文献1には、ユーザが立った状態で足踏み動作を行うための運動機器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】https://www.sakaimed.co.jp/rehabilitation/exercise-therapy/care_prevention/pre-step/[令和2年12月9日検索]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば脳卒中片麻痺や変形性膝関節症を患うことにより特定の関節の可動域が狭くなる場合がある。非特許文献1の足漕ぎ運動機器では上記関節の可動域を外れて痛みを伴うことがある。関節の狭くなった可動域内で足漕ぎ運動機器を利用したいという要望がある。
【0006】
本発明は、関節の可動域外で当該関節が運動することを抑制する足漕ぎ運動機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の観点によれば、座位の利用者が足を乗せるペダル本体と、前記ペダル本体が足長方向に沿って所定の範囲内で移動自在となるように前記ペダル本体を支持するペダル支持部と、前記ペダル支持部が所定の循環軌道に沿って循環移動するように前記ペダル支持部を案内する案内機構と、を含む、足漕ぎ運動機器が提供される。以上の構成によれば、関節の可動域外で当該関節が運動することを抑制できる。
好ましくは、前記足漕ぎ運動機器は、前記ペダル支持部に対する前記ペダル本体の移動に抵抗する抵抗手段を更に含む。以上の構成によれば、前記ペダル支持部に対する前記ペダル本体の意図しない移動を抑制することができる。
好ましくは、前記抵抗手段は、前記ペダル支持部と前記ペダル本体を連結し、前記足長方向に沿って延びる弾性体である。以上の構成によれば、前記抵抗手段を安価に実現できる。
好ましくは、前記弾性体は、前記足長方向において異なる2つの位置で前記ペダル支持部に取り付けられており、前記ペダル本体は、前記2つの位置の間において前記弾性体に取り付けられている。以上の構成によれば、前記抵抗手段を安価に実現できる。
好ましくは、前記ペダル本体は、前記弾性体に対して着脱可能に取り付けられている。以上の構成によれば、前記ペダル本体を前記ペダル支持部に対して移動させる方向に応じて、前記抵抗手段による抵抗力を変えることができる。例えば、前記ペダル本体をつま先寄りに前記弾性体に対して固定すれば前記ペダル本体を前記ペダル支持部に対して相対的に踵側に移動させるときに強い抵抗が付与されるので、立脚時の地面を蹴る動きを模擬できる。また、この場合、踵側への移動可能量を大きく確保できるので、大きな歩幅での歩行を模擬できる。一方、前記ペダル本体を踵寄りに前記弾性体に固定すれば前記ペダル本体を前記ペダル支持部に対して相対的につま先側に移動させるときに強い抵抗が付与されるようになる。
好ましくは、前記弾性体は、ゴムチューブである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、関節の可動域外で当該関節が運動することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】運動機器の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】運動機器の構成を模式的に示す斜視図である。
【
図4】ペダルユニットの側面図であって、ユーザが足をペダル本体に乗せ、踵側にペダル本体をスライドさせた状態を示す図である。
【
図5】ペダルユニットの側面図であって、ユーザが足をペダル本体に乗せ、つま先側にペダル本体をスライドさせた状態を示す図である。
【
図6】ペダルユニットの側面図であって、ユーザが足をペダル本体に乗せた状態を示す図である。
【
図7】ペダルユニットの側面図であって、ペダル本体の取り付け位置をつま先側とした図である。
【
図8】ペダルユニットの側面図であって、ペダル本体の取り付け位置を踵側とした図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0011】
本実施の形態にかかる運動機器は、ユーザが足漕ぎ運動を行うための足漕ぎ運動機器である。本実施の形態にかかる運動機器100について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1,及び
図2は、運動機器100を側方から見た図である。なお、以下の説明では、説明の明確化のため、XYZ3次元直交座標系を用いて説明を行う。具体的には、+X方向が前方向、-X方向が後ろ方向、+Y方向が上方向、-Y方向が下方向、+Z方向は左方向、-Z方向が右方向となる。前後方向、左右方向、上下方向は、ユーザUの方向を基準とする方向である。
【0012】
運動機器100は、足関節の可動範囲を調整可能なものである。以下の説明において、足関節のZ軸周りの回転方向を底背屈方向とし、その角度を底背屈角度とする。より具体的には、足FTのつま先が下方に向かう方向を底屈方向とし、つま先が上方に向かう方向を背屈方向とする。
【0013】
図1に示すように、運動機器100は、本体部20、リンク30、ペダルユニット60、クランク40、及び傾斜台50を有している。運動機器100の後方には椅子10が設けられている。ユーザUは、椅子10に着座した状態で足漕ぎ運動を行う。従って、椅子10は、ユーザUが着座する着座部となる。なお、椅子10は、運動機器100と一体的に設けられていてもよく、別体として設けられていても良い。例えば、椅子10は、ユーザUがいる施設や自宅などにある椅子であってもよい。つまり、ユーザUや補助者が椅子10を運動機器100の後方に設置しても良い。
【0014】
なお、運動機器100において、本体部20に取り付けられた構成要素は、左右対称となっている。
図2では、左右の構成要素を区別するため、本体部20の左側の構成要素に対してLを付しており、右側の構成要素に対してRを付している。例えば、
図2において、左の傾斜台50が傾斜台50Lとして示され、右側の傾斜台50が傾斜台50Rとして示されている。同様に、左のペダルユニット60がペダルユニット60Lとなり、右のリンク30及びペダルユニット60がリンク30R及びペダルユニット60Rとなっている。同様に、左の足FTを左足FTLとし、右の足FTを右足FTRとする。尚、以下の説明において、左右の構成要素を区別しない場合、LとRを省略する。
【0015】
本体部20は、クランク40を回転可能に保持している。例えば、本体部20には、回転軸21が設けられている。回転軸21にクランク40が連結されている。クランク40は回転軸21周りに回転する。本体部20はクランク40の回転運動に対して負荷を与える負荷抵抗体を有していてもよい。なお。本体部20は、負荷を可変とするためのギアなどを有していてもよい。本体部20は床面に対して固定されていてもよい。
【0016】
リンク30は、滑走車輪35を有している。リンク30の前端にはクランク40が連結され、後端には滑走車輪35が連結されている。クランク40とリンク30とは回転可能に連結されている。例えば、リンク30は、軸受けなどを介して、クランク40に取り付けられている。リンク30には、ペダルユニット60が取り付けられている。
【0017】
図3には、リンク30に取り付けられたペダルユニット60を示している。
図3に示すように、ペダルユニット60は、ペダル本体61とペダル支持部62とゴムチューブ63を含む。
【0018】
ペダル本体61は、ユーザUが足FTを乗せるステップ64と、ステップ64をゴムチューブ63の任意の位置に連結するためのチューブクランプ65と、を含む。チューブクランプ65は、ステップ64の側面に固定されたチューブ受け部65aと、チューブ受け部65aとY方向で対向するチューブカバー部65bと、チューブ受け部65aとチューブカバー部65bでゴムチューブ63を挟んだ状態でチューブカバー部65bをチューブ受け部65aに押し付けてクランプ力を発揮させるネジ機構65cと、を含む。
【0019】
ペダル支持部62は、ペダル本体61が足長方向に沿って所定の範囲内で移動自在となるようにペダル本体61を支持する。具体的には、ペダル支持部62は、ペダル本体61がリンク30の長手方向に沿って移動自在となるようにペダル本体61を支持する。ペダル支持部62は、リンク30に固定されている。ペダル支持部62は、リンク30の長手方向に沿って延びている。リンク30の踵側の端部と、ペダル支持部62の踵側の端部62bは、リンク30の長手方向において位置が揃っている。ペダル支持部62のつま先側の端部62aは、リンク30のつま先側の端部よりも更につま先側に突出している。従って、リンク30は、ペダル支持部62よりも短い。本実施形態においてリンク30の長さは、ペダル支持部62の長さの概ね3分の2とされている。
【0020】
ゴムチューブ63は、一端がペダル支持部62のつま先側の端部62aに固定され、他端がペダル支持部62の踵側の端部62bに固定されている。即ち、ゴムチューブ63は、ペダル支持部62の端部62aから端部62bに至るまで延びている。ゴムチューブ63は、若干引き伸ばされた状態でペダル支持部62に張られている。しかし、これに代えて、ゴムチューブ63は、自然長のままペダル支持部62に張られていてもよい。ゴムチューブ63は、弾性体の一具体例である。弾性体として、ゴムチューブに代えてゴムバンドやコイルバネを採用してもよい。
【0021】
本実施形態において、ペダル本体61は、ペダル本体61に足FTを乗せていない状態で、ステップ64がペダル支持部62の端部62aと端部62bのちょうど中間に位置するように、ゴムチューブ63に連結されている。この中立状態で、ペダル本体61がペダル支持部62に対してつま先側に相対的に移動すると、ペダル本体61と端部62bの間においてゴムチューブ63が引き伸ばされ、ゴムチューブ63の弾性復元力により、ペダル本体61はペダル支持部62に対して踵側に相対的に引っ張られる。同様に、上記の中立状態で、ペダル本体61がペダル支持部62に対して踵側に相対的に移動すると、ペダル本体61と端部62aの間においてゴムチューブ63が引き伸ばされ、ゴムチューブ63の弾性復元力により、ペダル本体61はペダル支持部62に対してつま先側に相対的に引っ張られる。
【0022】
図1に戻り、滑走車輪35は、回転軸(車軸)を介して、リンク30に取り付けられている。つまり、リンク30は、滑走車輪35を回転可能に保持している。滑走車輪35は、傾斜台50の傾斜面51を滑走する滑走部材となる。
【0023】
ユーザUは足FTをペダルユニット60のペダル本体61のステップ64に載せて足漕ぎ運動を行う。つまり、ユーザUが足FTを踏み込むように、膝関節や股関節を動かす。これにより、クランク40が回転軸21周りに回転する。さらに、クランク40の回転に応じて、リンク30とクランク40との間の角度が変化する。つまり、クランク40の回転角度(クランク角度ともいう)に応じて、クランク40に対するリンク30の相対角度が変化する。また、滑走車輪35は傾斜台50の傾斜面51に接触した状態で、前後方向に移動する。これにより、足漕ぎ運動に応じて、ペダルユニット60のペダル支持部62が楕円軌道を描くように、クランク40及びリンク30が回転動作する。楕円軌道は、循環軌道の一具体例である。循環軌道として円軌道を採用してもよい。
【0024】
本体部20、リンク30、クランク40、及び傾斜台50は、ペダル支持部62が所定の循環軌道に沿って循環移動するようにペダル支持部62を案内する案内機構を構成している。
【0025】
なお、ペダルユニット60、滑走車輪35、リンク30、クランク40、傾斜台50は、ユーザUの左右の足FTに対してそれぞれ設けられている。つまり、本体部20の左右それぞれに、ペダルユニット60、滑走車輪35、リンク30、クランク40、傾斜台50が設けられている。本体部20の右側に設けられたペダルユニット60R、滑走車輪35R、リンク30R、傾斜台50R等がユーザUの右足FTRに対応している。本体部20の左側に設けられたペダルユニット60L、滑走車輪35L、リンク30L、傾斜台50LがユーザUの左足FTLに対応している。
【0026】
クランク40は、左右の足FTに対して逆位相となるように、本体部20の回転軸21に取り付けられている。つまり、左足用のクランク40と右足用のクランク40は回転角度が180°ずれている。ユーザUが左脚及び右脚を交互に伸縮させて、足漕ぎ運動を行う。
【0027】
リンク30の下端には、滑走車輪35が取り付けられている。滑走車輪35は、傾斜台50の傾斜面51を滑走する車輪を有している。傾斜台50は後方に行くほど高くなっていくような傾斜面51を有している。滑走車輪35は、リンク30の回転運動に応じて、X方向(前後方向)に往復移動する。
図1のように、ユーザUが右脚を伸ばして、かつ左脚を曲げる方向に足漕ぎ運動している間、右側の滑走車輪35が前方に移動し、左側の滑走車輪35が後方に移動する。
図2のように、ユーザUが左脚を伸ばして、かつ右脚を曲げる方向に足漕ぎ運動している間、左側の滑走車輪35が前方に移動し、右側の滑走車輪35が後方に移動する。
【0028】
滑走車輪35は、傾斜台50の傾斜面51に沿って高さが変化する。傾斜台50は、後方に行くほど傾斜面51の高さが高くなっている。つまり、傾斜台50は、後方に移動する滑走車輪35に対して上り坂となっている。よって、滑走車輪35が後方に進んでいる間、滑走車輪35が徐々に高くなっていく。反対に、滑走車輪35が前方に進んでいる間、滑走車輪35が徐々に低くなっていく。滑走車輪35の高さに応じて、リンク30の角度が規定される。
【0029】
ここで、滑走車輪35の高さに応じて、リンク30に設けられたペダルユニット60の角度が制限される。つまり、滑走車輪35が高くなると、ペダルユニット60が底屈方向に回転する。滑走車輪35が低くなると、ペダルユニット60が背屈方向に回転する。したがって、傾斜台50の傾斜角度に応じて、足関節の底背屈角度の可動範囲を調整することができる。クランク40の回転角度に応じて、足関節の底背屈角度の可動範囲を調整することができる。
【0030】
図4には、ペダル本体61のステップ64にユーザUが足FTを乗せた状態を示している。
図5には、ペダル本体61がペダル支持部62に対して相対的に後方に移動した様子を示している。
図6には、ペダル本体61がペダル支持部62に対して相対的に前方に移動した様子を示している。
【0031】
このように、ペダル本体61がペダル支持部62に対して足長方向で移動自在となったことで、運動機器100を用いた足漕ぎ運動中に、各関節の関節角度が各関節の可動域外となることを抑制できる。
【0032】
例えば、足首関節の関節角度の底屈方向への限界を超えて足首関節が底屈方向へ伸展しようとした場合は、ペダル本体61がペダル支持部62に対して相対的に踵側に移動することで、足首関節の底屈方向への伸展を阻止することができる。
【0033】
同様に、例えば、足首関節の関節角度の背屈方向への限界を超えて足首関節が背屈方向へ屈曲しようとした場合は、ペダル本体61がペダル支持部62に対して相対的につま先側に移動することで、足首関節の背屈方向への屈曲を阻止することができる。
【0034】
従って、足首関節の関節角度の可動範囲が健常な場合と比較して狭くなっていても、無理なく運動機器100を用いて足漕ぎ運動を実施することができる。膝関節や股関節の関節角度の可動範囲が健常な場合と比較して狭くなっている場合も同様である。
【0035】
また、ペダル本体61をペダル支持部62に対して足長方向で移動自在としたことで、ペダル本体61が描く楕円軌道、典型的には楕円軌道の長軸を大きくすることができる。ここで、楕円軌道の長軸の寸法は、足漕ぎ運動中の膝関節の関節角度の変動幅に正比例する。従って、ペダル本体61をペダル支持部62に対して足長方向で移動自在としたことで、膝関節の関節角度の様々な変動幅に柔軟に対応できるようになる。
【0036】
なお、典型的には、
図1のように、ユーザUが右脚を伸ばして、かつ左脚を曲げる方向に足漕ぎ運動している間、右側のペダル本体61は
図6に示すように右側のペダル支持部62に対して相対的に前方に移動し、左側のペダル本体61は
図5に示すように左側のペダル支持部62に対して相対的に後方に移動する。
図2のように、ユーザUが左脚を伸ばして、かつ右脚を曲げる方向に足漕ぎ運動している間、右側のペダル本体61は
図5に示すように右側のペダル支持部62に対して相対的に後方に移動し、左側のペダル本体61は
図6に示すように左側のペダル支持部62に対して相対的に前方に移動する。
【0037】
また、運動機器100は、大腿四頭筋及び腸腰筋を同時に鍛えられる運動機器である。足漕ぎ運動中にペダル本体61が前後にスライドことから、足漕ぎするだけで膝関節の可動域を伸展側でも屈曲側でも拡張する運動効果が得られる。運動機器100は、拮抗筋の収縮を抑制し、二次的な関節可動域制限、または関節角度域改善の遅延を防ぐことが重要であることを考慮している。膝関節の伸展時では
図6に示すように足首関節が底屈位となり、膝関節の屈曲時では
図5に示すように足首関節が背屈位となるので、足漕ぎ運動中の足首関節の関節角度の変動幅を大きく確保することができる。
【0038】
以上に、本発明の好適な実施形態を説明したが、上記実施形態は以下の特徴を有する。
【0039】
運動機器100は、座位のユーザU(利用者)が足を乗せるペダル本体61と、ペダル本体61が足長方向(foot length direction)に沿って所定の範囲内で移動自在となるようにペダル本体61を支持するペダル支持部62と、ペダル支持部62が所定の循環軌道に沿って循環移動するようにペダル支持部62を案内する案内機構と、を含む。以上の構成によれば、股関節、膝関節、足首関節などの各関節の可動域外で当該関節が運動することを抑制できる。上記実施形態において、案内機構は、本体部20、リンク30、クランク40、及び傾斜台50によって構成されている。
【0040】
また、ペダル支持部62に対するペダル本体61の移動に抵抗するゴムチューブ63(抵抗手段)を更に含む。以上の構成によれば、ペダル支持部62に対するペダル本体61の意図しない移動を抑制することができるので、スムーズな足漕ぎ運動が実現される。
【0041】
また、ゴムチューブ63(抵抗手段)は、ペダル支持部62とペダル本体61を連結し、足長方向に沿って延びる弾性体である。以上の構成によれば、抵抗手段を安価に実現できる。
【0042】
また、ゴムチューブ63は、足長方向において異なる2つの位置(端部62a、端部62b)でペダル支持部62に取り付けられている。ペダル本体61は、2つの位置の間(端部62a、端部62b)において弾性体に取り付けられている。以上の構成によれば、抵抗手段を安価に実現できる。
【0043】
ペダル本体61は、ゴムチューブ63に対して着脱可能に取り付けられている。以上の構成によれば、ペダル本体61をペダル支持部62に対して移動させる方向に応じて、ゴムチューブ63による抵抗力を変えることができる。例えば、
図7に示すように、ペダル本体61を端部62aに近い位置でゴムチューブ63に対して固定すればペダル本体61をペダル支持部62に対して相対的に踵側に移動させるときに強い抵抗が付与されるので、立脚時の地面を蹴る動きを模擬できる。また、この場合、踵側への移動可能量を大きく確保できるので、大きな歩幅での歩行を模擬でき、関節可動域を拡張する運動効果が期待できる。一方、
図8に示すように、ペダル本体61を端部62bに近い位置でゴムチューブ63に固定すればペダル本体61をペダル支持部62に対して相対的につま先側に移動させるときに強い抵抗が付与されるようになる。
【0044】
なお、
図1及び
図2に示す傾斜台50及び滑走車輪35は省略可能である。上記実施形態において、案内機構は、本体部20、リンク30、クランク40、及び傾斜台50によって構成されている。しかし、これに代えて、案内機構は、本体部20、リンク30、クランク40、によって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10 椅子
20 本体部
21 回転軸
30 リンク
35 滑走車輪
40 クランク
50 傾斜台
51 傾斜面
60 ペダルユニット
61 ペダル本体
62 ペダル支持部
62b 端部
62a 端部
63 ゴムチューブ
64 ステップ
65 チューブクランプ
65a チューブ受け部
65b チューブカバー部
65c ネジ機構
100 運動機器