(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】水中浮遊式水流発電装置
(51)【国際特許分類】
F03B 13/10 20060101AFI20240806BHJP
F03B 15/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F03B13/10
F03B15/06
(21)【出願番号】P 2020215301
(22)【出願日】2020-12-24
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】藤田 穣
(72)【発明者】
【氏名】小西 信克
(72)【発明者】
【氏名】末福 久義
(72)【発明者】
【氏名】市口 雅裕
【審査官】西山 智宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-020420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0284932(US,A1)
【文献】特開2011-032994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03B 13/10
F03B 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に浮遊させられる浮体と、
前記浮体に回転可能に軸支され、前記水中の水流により回転するタービンと、
前記タービンの回転により発電する発電機と、
前記水流の流速、前記タービンの回転数及び前記タービンのタービン翼のピッチ角を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記流速、前記回転数及び前記ピッチ角に基づいて、前記流速、前記流速と前記タービンの周速との比である周速比及び前記ピッチ角に対する前記発電機により発電された電力の特性を取得する特性取得部と、
前記検出部により検出された前記流速に対して前記回転数及び前記ピッチ角をそれぞれ異なる複数の値に変更する特性取得動作制御部と、
前記特性取得部により各年における所定の期間ごとに取得された前記特性のそれぞれを記録する特性記録部と、
を備え
、
前記特性は、前記発電機により発電された電力の値、及び前記発電機の発電の効率を示すパワー係数を含む、水中浮遊式水流発電装置。
【請求項2】
前記特性取得部により取得された前記特性に基づいて
、前記タービン及び前記発電機のいずれかの動作を制御する発電動作制御部をさらに備えた、請求項1に記載の水中浮遊式水流発電装置。
【請求項3】
前記特性取得部は、特性取得動作制御部によって前記検出部により検出された前記流速に対して前記回転数及び前記ピッチ角がそれぞれ異なる複数の値に変更され
た場合に、前記検出部により検出された前記流速、前記回転数及び前記ピッチ角に基づいて、前記流速、前記流速に対してそれぞれ異なる複数の前記周速比及び前記流速に対してそれぞれ異なる複数の前記ピッチ角に対する前記電力の特性を取得する、請求項1又は2に記載の水中浮遊式水流発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中浮遊式水流発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力によりタービンを回転させることにより発電する技術が知られている。例えば、特許文献1には、設計条件等に基づいて、風速に対して風車発電装置が発電する電力の特性が予め設定されることが開示されている。当該特性は、性能曲線、出力カーブ又はパワーカーブと呼ばれる。特許文献1には、過去の所定の期間に測定された風速と当該パワーカーブとに基づいて風車発電装置の本来発電可能である発電量が求められ、求められた発電量の平均値を制御目標値として動作が制御される風車発電システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、水中に浮遊させられた浮体に軸支されたタービンを海流等の水流により回転させることによって発電する水中浮遊式水流発電装置が知られている。水中浮遊式発電装置においても、設計条件に基づいて、水流の流速に対して水中浮遊式水流発電装置が発電する電力等の特性を予め設定し、当該特性に基づいて水中浮遊式水流発電装置の動作を制御することが考えられる。しかし、水中浮遊式水流発電装置では、設計条件に基づいて設定された当該発電の特性が実際の特性と異なることがある。また、経年劣化等により当該発電の特性が変化することがある。設定された発電の特性が実際の特性と異なる場合には、適切な制御が行われずに発電の効率が低下することがある。
【0005】
そこで本発明は、実際の発電の特性により合致した特性を取得することができる水中浮遊式水流発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、水中に浮遊させられる浮体と、浮体に回転可能に軸支され、水中の水流により回転するタービンと、タービンの回転により発電する発電機と、水流の流速、タービンの回転数及びタービンのタービン翼のピッチ角を検出する検出部と、検出部により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速とタービンの周速との比である周速比及びピッチ角に対する発電機により発電された電力の特性を取得する特性取得部とを備えた水中浮遊式水流発電装置である。
【0007】
この構成によれば、水中に浮遊させられる浮体と、浮体に回転可能に軸支されて水中の水流により回転するタービンと、タービンの回転により発電する発電機とを備えた水中浮遊式水流発電装置において、検出部により、水流の流速、タービンの回転数及びタービンのタービン翼のピッチ角が検出され、特性取得部により、検出部により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速とタービンの周速との比である周速比及びピッチ角に対する発電機により発電された電力の特性が取得されるため、実際の発電の特性により合致した特性を取得することができる。
【0008】
この場合、特性取得部により取得された特性に基づいて、浮体、タービン及び発電機のいずれかの動作を制御する発電動作制御部をさらに備えてもよい。
【0009】
この構成によれば、発電動作制御部により、特性取得部により取得された特性に基づいて、浮体、タービン及び発電機のいずれかの動作が制御されるため、実際の発電の特性により合致した特性に基づいた制御により発電の効率の低下を低減することができる。
【0010】
また、検出部により検出された流速に対して回転数及びピッチ角をそれぞれ異なる複数の値に変更する特性取得動作制御部をさらに備え、特性取得部は、特性取得動作制御部によって検出部により検出された流速に対して回転数及びピッチ角がそれぞれ異なる複数の値に変更されているときに、検出部により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速に対してそれぞれ異なる複数の周速比及び流速に対してそれぞれ異なる複数のピッチ角に対する電力の特性を取得してもよい。
【0011】
この構成によれば、特性取得動作制御部により、検出部により検出された流速に対して回転数及びピッチ角がそれぞれ異なる複数の値に変更され、特性取得部により、特性取得動作制御部によって検出部により検出された流速に対して回転数及びピッチ角がそれぞれ異なる複数の値に変更されているときに、検出部により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速に対してそれぞれ異なる複数の周速比及び流速に対してそれぞれ異なる複数のピッチ角に対する電力の特性が取得される。このため、水流の流速がある値である場合に、同じ流速についてそれぞれ異なる複数の周速比及びピッチ角に対する電力の特性を効率良く取得することができる。
【0012】
また、特性取得部により異なる時期に取得された特性のそれぞれを記録する特性記録部をさらに備えてもよい。
【0013】
この構成によれば、特性記録部により、特性取得部により異なる時期に取得された特性のそれぞれが記録される。このため、特性記録部に記録された異なる時期の特性のそれぞれを比較することにより、特性の変動の傾向が得られ、故障の予兆等の特性の変動を予測することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面の水中浮遊式水流発電装置によれば、実際の特性により合致した特性を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る水中浮遊式水流発電装置を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る水中浮遊式水流発電装置の制御部の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る水中浮遊式水流発電装置の流速、周速比及びピッチ角に対する電力の特性を取得する動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図3のデータ処理プロセスの詳細を示すフローチャートである。
【
図5】流速、周速比及びピッチ角の各パラメータの同定条件を示す表である。
【
図6】流速、周速比及びピッチ角に対する電力の特性の格納用構造体と対応格納番号の概念を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。以下の説明において、「上流」又は「下流」との語は、水流の流れを基準として用いられる。「前」との語は、水流の流れの上流側を意味し、「後」との語は、水流の流れの下流側を意味する。「側」との語は、水流の流れに対して垂直で、かつ水平な方向を意味する。「右」又は「左」との語は、水流の流れに対して垂直で、かつ水平な方向を意味し、後方すなわち下流側からみた場合を基準として用いられる。「上」又は「下」との語は、後述の浮体が水中で安定した状態における鉛直方向線を基準として用いられる。
【0017】
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る水中浮遊式水流発電装置1は、浮体100と係留部200とを備える。浮体100は、海中等の水中Wに浮遊させられる。係留部200は、海底等の水底Bに配置され、係留索201により浮体100を係留する。浮体100は、中央ポッド101、左ポッド102、右ポッド103、タービン104、発電機105、連結部106及び制御部110を備える。浮体100の全長及び全幅は、例えば、10m~100mである。
【0018】
中央ポッド101、左ポッド102及び右ポッド103は、内部空間を有する円筒状の容器である。中央ポッド101は、左右方向において左ポッド102と右ポッド103との間に配置されており、左ポッド102及び右ポッド103よりも上方に配置されている。左ポッド102及び右ポッド103は、例えば互いに同一の構造を有している。中央ポッド101、左ポッド102及び右ポッド103の長手方向の中心軸線が互いに略平行となるように、中央ポッド101、左ポッド102及び右ポッド103は配置されている。中央ポッド101、左ポッド102及び右ポッド103は、連結部106により互いに連結されている。
【0019】
タービン104は、浮体100の左ポッド102及び右ポッド103のそれぞれに回転可能に軸支され、水中Wの水流Fにより回転する。タービン104は、タービン翼104wを有する。タービン翼104wは、ピッチ角を自在に変更される。発電機105は、浮体100の左ポッド102及び右ポッド103のそれぞれに収容され、タービン104の回転により発電する。
【0020】
つまり、本実施形態の水中浮遊式水流発電装置1は、双発式の水中浮遊式水流発電装置である。発電機105は、タービン104の回転数に対して発電機の回転数を増速する不図示の増速器を有する。発電機105のそれぞれの発電の電力は、例えば、1000kWである。また、2つのタービン104は左ポッド102及び右ポッド103のそれぞれの後部に配置されている。つまり、浮体100ではダウンウインド型タービンが採用されている。また、互いの回転によるトルクを相殺するために、左ポッド102及び右ポッド103のそれぞれのタービン104はピッチが互いに逆向きであり、水流Fを受けて互いに逆向きに回転する。発電機105が発電することで得られた電力は、例えば、係留索201及び水底Bに沿った不図示のケーブルによって外部の電力系統に送られる。
【0021】
制御部110は、中央ポッド101に収容されている。
図2に示されるように、制御部110は、検出部111、特性取得部112、発電動作制御部113、特性取得動作制御部114及び特性記録部115を有する。制御部110は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)及びハードディスク等を有するコンピュータ装置である。制御部110では、ROMに記憶されているプログラムがRAMにロードされ、CPUで実行されることで、上記の検出部111等の各部の動作が実行される。
【0022】
検出部111は、水流Fの流速、タービン104の回転数及びタービン104のタービン翼104wのピッチ角を検出する。検出部111は、浮体100の中央ポッド101、左ポッド102及び右ポッド103のいずれかに収容された流速センサ123により、水流Fの流速を検出する。検出部111は、浮体100の左ポッド102及び右ポッド103のそれぞれに収容された発電機軸インバータ122により、タービン104の回転数を検出する。検出部111は、浮体100の左ポッド102及び右ポッド103のそれぞれに収容されたタービン翼ピッチインバータ121により、タービン翼104wのピッチ角の現在値を検出する。
【0023】
検出部111は、不図示のセンサにより、水底Bに対するタービン104の回転軸(主軸)角度を検出してもよい。検出部111は、水底B又は水中Wに音波を放射し、水底B又は水中Wからの反射・散乱波のドップラーシフト量から対地速度、対水速度を計測するDVL(Doppler Velocity Log)により、浮体100の水底Bに対する対地速度又は水中Wに対する対水速度を検出してもよい。
【0024】
特性取得部112は、検出部111により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速とタービン104の周速との比である周速比及びピッチ角に対する発電機105により発電された電力の特性を取得する。流速V[m/s]、タービン104の直径D[m]及びタービン104の回転数N[s-1]に対して、周速比λは、λ=πDN/Vで算出される。発電機105により発電された電力の特性には、電力の値そのものに加えて、例えば、パワー係数等の発電機105の発電の効率を示す値が含まれる。発電機105により発電された電力Pe、水中Wの密度ρ[kg/m3]、タービン翼104wの掃過面積A[m2]及び流速V[m/s]に対して、パワー係数Cpは、Cp=Pe/{(1/2)・ρAV3}で算出される。
【0025】
発電動作制御部113は、特性取得部112により取得された特性に基づいて、浮体100、タービン104及び発電機105のいずれかの動作を制御する。本実施形態では、発電動作制御部113は、発電機105により発電される電力又はパワー係数が最大となるように、タービン翼ピッチインバータ121にピッチ角指令値を送信し、タービン翼104wのピッチ角を制御する。また、発電動作制御部113は、発電機105により発電される電力又はパワー係数が最大となるように、発電機軸インバータ122に回転数指令値を送信し、発電機105の回転数を制御する。
【0026】
特性取得動作制御部114は、検出部111により検出された流速に対して回転数及びピッチ角をそれぞれ異なる複数の値に変更する。特性取得動作制御部114は、発電機軸インバータ122に回転数指令値を送信し、発電機105の回転数を制御する。また、特性取得動作制御部114は、タービン翼ピッチインバータ121にピッチ角指令値を送信し、タービン翼104wのピッチ角を制御する。
【0027】
後述するように、特性取得部112は、特性取得動作制御部114によって検出部111により検出された流速に対して回転数及びピッチ角がそれぞれ異なる複数の値に変更されているときに、検出部111により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速に対してそれぞれ異なる複数の周速比及び流速に対してそれぞれ異なる複数のピッチ角に対するパワー係数等の電力の特性を取得する。
【0028】
つまり、水中Wの同じ位置及び時刻において浮体100の周囲の流速を変更することは不可能であるが、回転数及びピッチ角は任意に変更可能であるため、本実施形態では、流速に対して回転数及びピッチ角をそれぞれ異なる複数の値に変更することにより、同じ流速についてそれぞれ異なる複数の周速比及びピッチ角に対する電力の特性が効率良く取得される。
【0029】
特性記録部115は、特性取得部112により異なる時期に取得された特性のそれぞれを記録する。異なる時期に取得された特性とは、後述するように、例えば、各年における所定の期間ごとに取得された特性とできる。
【0030】
以下、本実施形態に係る水中浮遊式水流発電装置1の動作について説明する。水中浮遊式水流発電装置1の設計値を基に算出された流速、周速比及びピッチ角に対する電力の特性及び後述するようにして特性取得部112により取得された特性に基づいて、発電動作制御部113は、発電機105により発電される電力又はパワー係数が最大となるように、タービン翼104wのピッチ角及び発電機105の回転数を制御する。
【0031】
次に、本実施形態に係る水中浮遊式水流発電装置1の流速、周速比及びピッチ角に対する電力の特性を取得する動作について説明する。本実施形態では、例えば、各年に1ヵ月程度の期間が設けられ、当該期間に以下の動作が実行される。
図3に示されるように、押しボタンスイッチの押下等の手動により特性を取得する動作が開始された後に、手動により特性を取得する動作が中止されないときは(S1)、検出部111により流速が検出される(S2)。現在の流速で異なる複数の周速比及びピッチ角のそれぞれについて未取得の電力の特性についてのデータが無いときには(S3)、特性取得動作制御部114により処理が終了される。現在の流速で異なる複数の周速比及びピッチ角のそれぞれについて未取得の電力の特性についてのデータが有るときには(S3)、以下の処理が実行される。
【0032】
現在の周速比で未取得のデータが有り(S4)、現在のピッチ角で未取得のデータが有るときには(S5)、検出部111により回転数及びピッチ角が検出され、特性取得部112により発電機105の発電した電力が算出される(S6)。特性取得部112により、後述するデータ処理プロセスが実行される(S7)。現在の流速で異なる複数の周速比及びピッチ角のそれぞれについて未取得のデータがもう無いときには(S8)、特性取得動作制御部114により処理が終了される。現在の流速で異なる複数の周速比及びピッチ角のそれぞれについて未取得のデータがまだ有るときには(S8)、上記S1~S8の動作が繰り返し実行される。
【0033】
上記S4において、現在の周速比で未取得のデータが無いときには(S4)、特性取得動作制御部114により未取得のデータが有る周速比に変更され(S9)、上記S1~S8の動作が実行される。上記S5において、現在のピッチ角で未取得のデータが無いときには(S5)、特性取得動作制御部114により未取得のデータが有るピッチ角に変更され(S10)、上記S1~S8の動作が繰り返し実行される。つまり、現在の流速で異なる複数の周速比及びピッチ角のそれぞれについて未取得の電力の特性についてのデータが無くなるまで、上記S1~S10の動作が実行される。各年に1ヵ月程度の期間における流速がそれぞれ異なる時刻に上記のような動作がそれぞれ実行されることにより、それぞれ異なる複数の流速、周速比及びピッチ角に対する電力の特性が取得される。
【0034】
次にデータ処理プロセスの詳細について説明する。
図4に示されるように、特性取得部112によりパワー係数の計算が実行される(S91)。パワー係数の計算と並行して、特性取得部112により、検出部111によって検出された流速のデータが変換される(S92)。
図5に示されるように、流速V[m/s]のデータは、0.5及び0.8の他に、1.0~1.5の範囲で刻み幅Δ=0.1で同定される。例えば、計測された流速V[m/s]が0.35<V<0.65のときは流速V=0.5と同定される。例えば、計測された流速V[m/s]が0.70<V<0.90のときは流速V=0.8と同定される。例えば、計測された流速V[m/s]が0.95<V<1.05のときは流速V=1.0と同定される。V=1.0~1.5の範囲では同様であり、例えば、計測された流速V[m/s]が1.45<V<1.55のときは流速V=1.5と同定される。
【0035】
図4に示されるように、特性取得部112により、対応格納番号Xiが付与される(S93)。
図5に示されるように、上述した流速のデータの取得パターン数は合計で8である。例えば、周速比λのデータは4.0~9.0の範囲で刻み幅Δ=0.25で同定され、周速比の取得パターン数は合計で21である。例えば、ピッチ角[deg]のデータは-8~+2の範囲で刻み幅Δ=0.5で同定され、ピッチ角の取得パターン数は合計で21である。これにより、電力の特性の取得パターン総数は21×21×8=3528である。本実施形態では、
図6に示されるように、8パターンの流速、21パターンの周速比及び21パターンのピッチ角に対して、合計で3528パターンのパワー係数の格納用構造体が設定される。格納用構造体は、データが取得された時期と関連付けられて特性記録部115に記録される。
【0036】
なお、例えば、ピッチ角の範囲は、水面での試験で測定済みのデータが使用される。また、
図5に示される同定条件はあくまでも暫定的なものであり、周速比、ピッチ角及び流速における刻み幅Δ及び上下限値は任意に変更可能である。
【0037】
図4に示されるように、特性取得部112により、
図6に示されるような格納用構造体に対して、対応格納番号Xiの要素に上記S91で計算されたパワー係数の値が格納される(S94)。データ取得数が所定数に満たない等の場合には(S95)、特性取得部112により処理が中断される。データ取得数が所定数を満たす等の場合には(S95)、特性取得部112によりデータ取得完了フラグが設定される(S96)。特性取得部112により、
図6に示されるような格納用構造体の塗りつぶし等の格納用構造体の完了処理が実行される(S97)。
【0038】
なお、本実施形態では、対応格納番号について流速、周速比、ピッチ角及びパワー係数のそれぞれが格納されるが、例えば、検出部111により主軸角度、対地速度及び対水速度が検出される場合には、これらが関連付けられて記録又は出力されてもよい。さらに、これらのデータについて性能曲線がプロットされてもよい。また、適宜、特性記録部115に記録された各時期の特性が比較されてもよい。例えば、各時期におけるパワー係数の極大値の近傍の曲線が比較されることにより、水中浮遊式水流発電装置1の経年劣化による特性の変化の傾向が把握される。
【0039】
本実施形態によれば、水中Wに浮遊させられる浮体100と、浮体100に回転可能に軸支されて水中Wの水流Fにより回転するタービン104と、タービン104の回転により発電する発電機105とを備えた水中浮遊式水流発電装置1において、検出部111により、水流Fの流速、タービン104の回転数及びタービン104のタービン翼104wのピッチ角が検出され、特性取得部112により、検出部111により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速とタービンの周速との比である周速比及びピッチ角に対する発電機105により発電された電力の特性が取得されるため、実際の発電の特性により合致した特性を取得することができる。実際の発電環境下でパワーカーブ計算用のデータを取得することで、正確なパワーカーブを取得することができ、結果として発電量の最大化を実現できる。
【0040】
また、本実施形態によれば、発電動作制御部113により、特性取得部112により取得された特性に基づいて、浮体100、タービン104及び発電機105のいずれかの動作が制御されるため、実際の発電の特性により合致した特性に基づいた制御により発電の効率の低下を低減することができる。つまり、長期運用で特性変化した場合に、水中浮遊式水流発電装置1のチューニングが可能である。
【0041】
また、本実施形態によれば、特性取得動作制御部114により、検出部111により検出された流速に対して回転数及びピッチ角がそれぞれ異なる複数の値に変更され、特性取得部112により、特性取得動作制御部114によって検出部111により検出された流速に対して回転数及びピッチ角がそれぞれ異なる複数の値に変更されているときに、検出部111により検出された流速、回転数及びピッチ角に基づいて、流速、流速に対してそれぞれ異なる複数の周速比及び流速に対してそれぞれ異なる複数のピッチ角に対する電力の特性が取得される。このため、水流の流速がある値である場合に、同じ流速についてそれぞれ異なる複数の周速比及びピッチ角に対する電力の特性を効率良く取得することができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、特性記録部115により、特性取得部112により異なる時期に取得された特性のそれぞれが記録される。このため、特性記録部115に記録された異なる時期のパワーカーブ等の特性のそれぞれを比較することにより、特性の変動の傾向が得られ、経年劣化による故障の予兆等の特性の変動を予測することが可能になる。
【0043】
このように、本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SustainableDevelopment Goals:SDGs)の目標14.海の豊かさを守ろう「海洋と海洋資源を持続可能な開発に向けて保全し、持続可能な形で利用する。」に貢献することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の流速、周速比及びピッチ角に対する発電機105により発電された電力の特性のパラメータ及び格納構造体の形式は、適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0045】
1 水中浮遊式水流発電装置
100 浮体
101 中央ポッド
102 左ポッド
103 右ポッド
104 タービン
104w タービン翼
105 発電機
106 連結部
110 制御部
111 検出部
112 特性取得部
113 発電動作制御部
114 特性取得動作制御部
115 特性記録部
121 タービン翼ピッチインバータ
122 発電機軸インバータ
123 流速センサ
200 係留部
201 係留索
B 水底
W 水中
F 水流