(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】樹脂ルーフ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/06 20060101AFI20240806BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B62D25/06 A
B62D29/04 A
(21)【出願番号】P 2020217814
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 幸一郎
(72)【発明者】
【氏名】嶺井 太一
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528296(JP,A)
【文献】特開2020-125069(JP,A)
【文献】特開2013-141888(JP,A)
【文献】特開2018-100068(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00-25/08、25/14-29/04
B60J 7/00- 7/22
B60R 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフパネルを構成する樹脂製のアウタ層と、
前記アウタ層の周縁部を除く所定の領域に設けられた発泡樹脂製のインナ層と、
を含むメインルーフと、
平面視で前記車両の左右一対のルーフサイドレールの間に設けられ、前記アウタ層の前記周縁部における接合部が接合されることで前記アウタ層と共に前記ルーフパネルを構成する車体側の樹脂製のサブルーフと、
を備え
、
前記アウタ層の前記接合部が接合される前記サブルーフの被接合部は、車体側の基材にリベットによって接合されており、
前記リベットの頭部を含む前記被接合部に前記アウタ層の前記接合部が接着剤を介して接合され、前記リベットの頭部の周囲と前記被接合部との隙間が前記接着剤によって埋められている樹脂ルーフ。
【請求項2】
前記サブルーフは、前記アウタ層よりも硬質な樹脂製とされている請求項1に記載の樹脂ルーフ。
【請求項3】
前記サブルーフは、フロントウインドシールドガラス及びリアウインドシールドガラスをそれぞれ支持するように、前記メインルーフの車両前方側及び車両後方側に設けられている請求項1又は請求項2に記載の樹脂ルーフ。
【請求項4】
前記
車体側の基材に前記インナ層の接合部が接合されている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の樹脂ルーフ。
【請求項5】
前記
アウタ層の前記周縁部における外形端末と前記サブルーフとの間がシールされている
請求項1~請求項4
の何れか1項に記載の樹脂ルーフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ルーフに関する。
【背景技術】
【0002】
車両のルーフパネルよりも車室内側において、車室内に面するように配設されたパネル状の基材の車室外側に、発泡成形体が一体に成形された車両用天井内装材は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。発泡成形体は、車室外側の形状がルーフパネルの車室内側の形状と略等しくされており、その車室外側がルーフパネルの車室内側に圧接した状態で、ルーフパネルに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、車両のルーフパネルと、そのルーフパネルよりも車室内側に配設されている基材との間には、発泡成形体等の樹脂製のインナ層が設けられている。ここで、そのインナ層が、ルーフパネルを構成する樹脂製のアウタ層に設けられている場合に、そのアウタ層とインナ層とを含むメインルーフを、アウタ層と共にルーフパネルを構成する車体側のサブルーフに組み付けることがある。しかしながら、そのメインルーフをサブルーフに組み付けるときの組付性を向上させる構造には、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、メインルーフをサブルーフに組み付ける際の組付性を向上できる樹脂ルーフを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の樹脂ルーフは、車両のルーフパネルを構成する樹脂製のアウタ層と、前記アウタ層の周縁部を除く所定の領域に設けられた発泡樹脂製のインナ層と、を含むメインルーフと、平面視で前記車両の左右一対のルーフサイドレールの間に設けられ、前記アウタ層の前記周縁部における接合部が接合されることで前記アウタ層と共に前記ルーフパネルを構成する車体側の樹脂製のサブルーフと、を備えている。
【0007】
第1の態様の発明によれば、サブルーフに、メインルーフのアウタ層の周縁部における接合部を接合している。つまり、メインルーフをサブルーフに組み付けて接合するときには、そのメインルーフがサブルーフによって支持される。したがって、メインルーフをサブルーフに組み付ける際の組付性が向上される。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様の樹脂ルーフは、第1の態様の樹脂ルーフであって、前記サブルーフは、前記アウタ層よりも硬質な樹脂製とされている。
【0009】
第2の態様の発明によれば、サブルーフが、アウタ層よりも硬質な樹脂製とされている。したがって、メインルーフをサブルーフに組み付けて接合するときに、そのメインルーフは、サブルーフによって安定的に支持される。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様の樹脂ルーフは、第1又は第2の態様の樹脂ルーフであって、前記サブルーフは、フロントウインドシールドガラス及びリアウインドシールドガラスをそれぞれ支持するように、前記メインルーフの車両前方側及び車両後方側に設けられている。
【0011】
第3の態様の発明によれば、サブルーフは、メインルーフの車両前方側及び車両後方側に設けられ、フロントウインドシールドガラス及びリアウインドシールドガラスをそれぞれ支持している。したがって、車両が軽量化されるとともに、フロントウインドシールドガラス及びリアウインドシールドガラスに対する支持剛性が確保される。なお、サブルーフがアウタ層よりも硬質な樹脂製とされていると、その支持剛性がより一層確保される。
【0012】
また、本発明に係る第4の態様の樹脂ルーフは、第1~第3の何れか1つの態様の樹脂ルーフであって、前記アウタ層の前記接合部が接合される前記サブルーフの被接合部は、車体側の基材にリベットによって接合されており、前記リベットを含む前記被接合部に前記アウタ層の前記接合部が接合されている。
【0013】
第4の態様の発明によれば、サブルーフの被接合部が、車体側の基材にリベットによって接合されており、そのリベットを含むサブルーフの被接合部にアウタ層の接合部が接合されている。したがって、リベットが挿入された貫通孔からの車室内への水の進入が防止される。
【0014】
また、本発明に係る第5の態様の樹脂ルーフは、第4の態様の樹脂ルーフであって、前記車体側の基材に前記インナ層の接合部が接合されている。
【0015】
第5の態様の発明によれば、サブルーフの被接合部が接合された車体側の基材にインナ層の接合部が接合されている。したがって、車体側の基材にインナ層の接合部が接合されない場合に比べて、メインルーフが安定化される。
【0016】
また、本発明に係る第6の態様の樹脂ルーフは、第1~第5の何れか1つの態様の樹脂ルーフであって、前記アウタ層の前記周縁部における外形端末と前記サブルーフとの間がシールされている。
【0017】
第6の態様の発明によれば、アウタ層の周縁部における外形端末とサブルーフとの間がシールされている。したがって、その外形端末とサブルーフとの間からの車室内への水の進入が防止される。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、メインルーフをサブルーフに組み付ける際の組付性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係る樹脂ルーフを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車両上方向、矢印FRを車両前方向、矢印LHを車両左方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両上下方向の上下、車両前後方向の前後、車両左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0021】
図1、
図2に示されるように、本実施形態に係る車両のルーフ12における車幅方向両端部には、前後方向に延在する左右一対の金属製のルーフサイドレール20が設けられている。ルーフサイドレール20は、車両前後方向から見た断面視で、略ハット型形状とされたアンダリインフォースメント22と、車両前後方向から見た断面視で、略平板形状とされたアッパリインフォースメント26と、が互いに接合されることで閉断面形状に形成されている。
【0022】
すなわち、ルーフサイドレール20は、アンダリインフォースメント22の車幅方向内側端部及び車幅方向外側端部に形成されているフランジ部24と、アッパリインフォースメント26の車幅方向内側端部及び車幅方向外側端部に形成されているフランジ部28とが、スポット溶接等によって互いに接合されることで閉断面形状に構成されている。なお、前後方向に延在するアッパリインフォースメント26の複数の所定位置には、円形状の貫通孔26Aが形成されている。
【0023】
そして、このアッパリインフォースメント26の上面にサイドメンバアウタパネル(以下「サイメンアウタ」という)14の車幅方向内側端部が接合されている。具体的に説明すると、サイメンアウタ14の車幅方向内側には、車両前後方向から見た断面視で、下方側へ略「L」字状に屈曲された段差部16が一体に形成されており、その段差部16の車幅方向内側端部には、車両前後方向から見た断面視で、下方側へ略「L」字状に屈曲された支持部18が一体に形成されている。
【0024】
そして、前後方向に延在する支持部18の複数の所定位置には、アッパリインフォースメント26の各貫通孔26Aと連通する円形状の貫通孔18Aが形成されている。したがって、車両上方側から複数のリベット60の軸部64が各貫通孔18A及び各貫通孔26Aに挿入されてかしめられることにより(仮想線で示される形状から実線で示される形状へ変形させられることにより)、サイメンアウタ14の車幅方向内側端部である支持部18が、アッパリインフォースメント26(ルーフサイドレール20)に取り付けられている。
【0025】
また、
図1に示されるように、左右一対のルーフサイドレール20の間には、車体側の基材として車幅方向に延在する金属製のルーフリインフォースメント30が、前後方向に間隔を空けて3本架設されている。なお、以下において、前側のルーフリインフォースメント30を「ルーフリインフォースメント30F」と称し、中央側のルーフリインフォースメント30を「ルーフリインフォースメント30C」と称し、後側のルーフリインフォースメント30を「ルーフリインフォースメント30B」と称する。
【0026】
平面視で、前側のルーフリインフォースメント30Fと左右一対のルーフサイドレール20とで囲まれた部位、及び後側のルーフリインフォースメント30Bと左右一対のルーフサイドレール20とで囲まれた部位には、それぞれルーフ12のルーフパネルを構成する前後一対の樹脂製のサブルーフ40が設けられている。なお、左右一対のルーフサイドレール20の間に予め設けられている各サブルーフ40も、車体側の基材である。
【0027】
また、平面視で、前側のルーフリインフォースメント30F(前側のサブルーフ40)と中央側のルーフリインフォースメント30Cと左右一対のルーフサイドレール20とで囲まれた部位、及び後側のルーフリインフォースメント30B(後側のサブルーフ40)と中央側のルーフリインフォースメント30Cと左右一対のルーフサイドレール20とで囲まれた部位には、それぞれメインルーフ50が前後に2個並んで設けられている。なお、メインルーフ50については、後述する。
【0028】
前後一対のサブルーフ40は、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)等の強度及び剛性の高い樹脂材料で略矩形平板状に形成されており、その板厚は、2.0mm以上とされている。そして、前後一対のサブルーフ40は、フロントウインドシールドガラス(図示省略)の上端部及びリアウインドシールドガラス(図示省略)の上端部をそれぞれ支持している。
【0029】
換言すれば、前後一対のサブルーフ40は、フロントウインドシールドガラスの上端部及びリアウインドシールドガラスの上端部をそれぞれ支持できるように、強度及び剛性の高いGFRP等の樹脂材料で形成されている。なお、前後一対のサブルーフ40は、同じ構成であるため、以下においては、前側のサブルーフ40についてのみ説明する。
【0030】
図3に示されるように、前側のサブルーフ40の後部には、車幅方向から見た断面視で、下方側へ略「L」字状に屈曲された段差部42が一体に形成されている。そして、その段差部42の後端部には、車幅方向から見た断面視で、下方側へ略「L」字状に屈曲された支持部44が一体に形成されている。
【0031】
なお、サブルーフ40の車幅方向に延在する支持部44が、後述する第1接合部54が接合される被接合部の1つとされており、支持部44における上面44Uが、後述する第1接着剤G1が接触する被接合面の1つとされている。
【0032】
前側のルーフリインフォースメント30Fは、車幅方向から見た断面視で、略ハット型形状とされたアンダリインフォースメント32Fと、車幅方向から見た断面視で、略平板形状とされたアッパリインフォースメント36Fと、が互いに接合されることで閉断面形状に形成されている。
【0033】
すなわち、前側のルーフリインフォースメント30Fは、アンダリインフォースメント32Fの前端部及び後端部に形成されているフランジ部34Fと、アッパリインフォースメント36Fの前端部及び後端部に形成されているフランジ部38Fとが、スポット溶接等によって互いに接合されることで閉断面形状に構成されている。
【0034】
そして、アッパリインフォースメント36Fの前側の上面には、車両前後方向から見た断面視で、上方側へ凸となる略ハット型形状の複数のブラケット46が、車幅方向に間隔を空けて一体的に取り付けられている。具体的には、各ブラケット46の下端部で車幅方向に張り出している各フランジ部48が、アッパリインフォースメント36Fの上面にスポット溶接等によって一体的に接合されている。
【0035】
なお、ブラケット46は、少なくとも車幅方向中央部と車幅方向両端部の計3個設けられることが好ましい。また、各ブラケット46の上壁47には、円形状の貫通孔47Aが形成されており、サブルーフ40の車幅方向に延在する支持部44の複数(少なくとも3個)の所定位置には、各貫通孔47Aと連通する円形状の貫通孔44Aが形成されている。
【0036】
したがって、車両上方側から複数(少なくとも3個)のリベット60の軸部64が各貫通孔44A及び各貫通孔47Aに挿入されてかしめられることにより(仮想線で示される形状から実線で示される形状へ変形させられることにより)、サブルーフ40の支持部44が、ブラケット46を介してアッパリインフォースメント36Fに取り付けられている。つまり、サブルーフ40の後端部が、ブラケット46を介して前側のルーフリインフォースメント30Fによって支持されている。
【0037】
また、前側のルーフリインフォースメント30Fにおけるアッパリインフォースメント36Fの前後方向略中央部が、後述する第2接合部58が接合される被接合部の1つとされており、その前後方向略中央部における上面が、後述する第2接着剤G2が接触する被接合面の1つとされている。
【0038】
図2、
図3に示されるように、本実施形態に係るメインルーフ50は、サブルーフ40と共にルーフ12のルーフパネルを構成する略矩形平板状のアウタ層52と、アウタ層52の周縁部52Aを除く所定の領域の下面に一体的に接合されたインナ層56と、を有している。なお、前後のメインルーフ50は、同じ構成であるため、以下においては、前側のメインルーフ50についてのみ説明する。
【0039】
アウタ層52は、例えばアクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン(AES)等の耐候性を有する樹脂材料で形成されており、その板厚は、1.0mm~2.5mmとされている。インナ層56は、発泡性の樹脂材料で成形された成形体(例えば発泡ウレタンフォーム等)で構成されており、アウタ層52よりも厚く形成されている。具体的には、インナ層56の板厚は、前後方向の部位によっても異なるが、10mm以上とされている。
【0040】
このように、メインルーフ50は、樹脂製のアウタ層52と樹脂製のインナ層56とを含んで構成され、サブルーフ40も樹脂製とされているため、メインルーフ50とサブルーフ40とで樹脂ルーフ10とされている。なお、アウタ層52は、インナ層56よりも硬質かつ高密度な樹脂材料(AES)で成形されており、サブルーフ40は、アウタ層52よりも硬質な樹脂材料(GFRP)で成形されている。
【0041】
また、アウタ層52の周縁部52Aの下面には、第1接着剤G1が環状に設けられており、その第1接着剤G1が設けられている部分が、アウタ層52の接合部としての第1接合部54とされている。そして、
図3に示されるように、前側の第1接合部54が、サブルーフ40のリベット60の頭部62及びその周囲を含む支持部44(上面44U)に第1接着剤G1を介して接合されている。
【0042】
また、
図2に示されるように、右側の第1接合部54は、サイメンアウタ14のリベット60の頭部62及びその周囲を含む支持部18(上面18U)に第1接着剤G1を介して接合されている。なお、左側の第1接合部54も同様である。また、図示は省略するが、後側の第1接合部54は、中央側のルーフリインフォースメント30Cにおけるアッパリインフォースメントに第1接着剤G1を介して接合されている。
【0043】
また、
図2、
図3に示されるように、インナ層56の下面における外周部には、第2接着剤G2が環状に設けられており、その第2接着剤G2が設けられている部分が、インナ層56の接合部としての第2接合部58とされている。そして、
図3に示されるように、前側の第2接合部58が、前側のルーフリインフォースメント30Fにおけるアッパリインフォースメント36Fの前後方向略中央部に第2接着剤G2を介して接合されている。
【0044】
また、
図2に示されるように、右側の第2接合部58は、ルーフサイドレール20の車幅方向内側のフランジ部28に第2接着剤G2を介して接合されている。なお、左側の第2接合部58も同様である。また、図示は省略するが、後側の第2接合部58は、中央側のルーフリインフォースメント30Cにおけるアッパリインフォースメントの前端部に形成されているフランジ部に第2接着剤G2を介して接合されている。
【0045】
また、
図2、
図3に示されるように、アウタ層52の周縁部52Aにおける外形端末52Bは、耐候性を有する柔らかいシーラSによって覆われている。すなわち、前側の外形端末52Bは、サブルーフ40の段差部42の上面の一部と共にシーラSによってシールされ、右側の外形端末52Bは、サイメンアウタ14の段差部16の上面の一部と共にシーラSによってシールされている。なお、左側の外形端末52Bも同様である。また、図示は省略するが、後側の外形端末52Bは、中央側のルーフリインフォースメント30Cのアッパリインフォースメントの上面の一部と共にシーラSによってシールされている。
【0046】
以上のような構成とされた本実施形態に係る樹脂ルーフ10(メインルーフ50及びサブルーフ40)において、次にその作用について説明する。
【0047】
車両には、予めサブルーフ40が設けられている。サブルーフ40は、メインルーフ50の車両前方側及び車両後方側に設けられており、フロントウインドシールドガラス及びリアウインドシールドガラスをそれぞれ支持している。ここで、サブルーフ40は、メインルーフ50のアウタ層52よりも硬質な樹脂材料で形成されている。したがって、車両を軽量化することができるとともに、フロントウインドシールドガラス及びリアウインドシールドガラスに対する支持剛性も確保することができる。
【0048】
このようなサブルーフ40が予め設けられている車両のルーフ12にメインルーフ50を配置する。すなわち、メインルーフ50のアウタ層52の周縁部52Aにおける第1接合部54(第1接着剤G1)及びインナ層56における第2接合部58(第2接着剤G2)を、それぞれ被接合部(被接合面)に接合する。
【0049】
具体的には、第1接着剤G1を介して、第1接合部54を支持部44の上面44U(リベット60の頭部62及びその周囲を含む)、左右の支持部18の上面18U(リベット60の頭部62及びその周囲を含む)及び中央側のルーフリインフォースメント30Cにおけるアッパリインフォースメントの上面に接合する。
【0050】
そして、第2接着剤G2を介して、第2接合部58を前側のルーフリインフォースメント30Fにおけるアッパリインフォースメント36Fの上面、左右のルーフサイドレール20におけるフランジ部28の上面及び中央側のルーフリインフォースメント30Cにおけるフランジ部の上面に接合する。
【0051】
ここで、サブルーフ40(支持部44も含む)は、メインルーフ50のアウタ層52よりも硬質な樹脂材料で成形されている。つまり、メインルーフ50のアウタ層52よりも硬度の高いサブルーフ40の支持部44に、そのアウタ層52の第1接合部54(周縁部52A)を接合している。
【0052】
したがって、メインルーフ50の第1接合部54(周縁部52A)をサブルーフ40の支持部44に接合するときに、メインルーフ50の第1接合部54(周縁部52A)は、そのサブルーフ40の支持部44によって安定的に支持される。よって、メインルーフ50をサブルーフ40に組み付ける際の組付性を向上させることができる。
【0053】
また、インナ層56が予め設けられているメインルーフ50をサブルーフ40に組み付けるため、メインルーフ50とサブルーフ40とが一体に形成されているものにインナ層56を設ける場合に比べて、インナ層56を設け易い(インナ層56を設けるための作業性を向上させることができる)。
【0054】
また、サブルーフ40の支持部44がリベット60及びブラケット46を介して接合されているルーフリインフォースメント30Fのアッパリインフォースメント36Fに、インナ層56の第2接合部58が接合されている。したがって、ルーフリインフォースメント30Fのアッパリインフォースメント36Fにインナ層56の第2接合部58が接合されない場合に比べて、車両のルーフ12に配置したメインルーフ50を安定化させることができる(安定した状態で固定することができる)。
【0055】
また、サブルーフ40の支持部44が、ルーフリインフォースメント30Fのアッパリインフォースメント36Fの上面に一体的に取り付けられたブラケット46に、リベット60によって接合されており、そのリベット60の頭部62及びその周囲を含むサブルーフ40の支持部44に、アウタ層52の第1接合部54が接合されている。
【0056】
つまり、リベット60の頭部62の周囲と支持部44の上面との隙間が、第1接着剤G1によって埋められている。したがって、その第1接着剤G1により、リベット60の軸部64が挿入された貫通孔44A、47Aからの車室内への水の進入を防止することができる。
【0057】
また、アウタ層52の周縁部52Aにおける外形端末52Bと、サブルーフ40の段差部42の上面、左右のサイメンアウタ14の段差部16の上面及び中央側のルーフリインフォースメント30Cのアッパリインフォースメントの上面との間が、それぞれシーラSによってシールされている。
【0058】
つまり、シーラSは、外形端末52Bに沿って環状に設けられており、伸び率が高いため、例えば温度変化による線膨張率の差で外形端末52Bが前方側及び後方側へ熱伸びした場合でも、その伸びに追従可能になっている。したがって、例えば外形端末52Bとサブルーフ40の段差部42の上面との隙間からの車室内への水の進入を防止することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るメインルーフ50のアウタ層52は、樹脂製とされているため、アウタ層52が、金属製とされている場合に比べて、車両を軽量化することができる。また、本実施形態に係るメインルーフ50のインナ層56は、発泡成形体であり、アウタ層52よりも厚く形成されているため、車室内への騒音の進入を効果的に抑制することができ、かつ断熱効果を高めることができる。
【0060】
また、本実施形態に係るメインルーフ50は、ルーフパネルを構成するアウタ層52にインナ層56を一体的に設けて構成しているため、ルーフヘッドライニングにインナ層を一体的に設けてルーフパネルに取り付ける構成に比べて、組み付け時の基準となる基準部(図示省略)を容易に設定することができる。
【0061】
すなわち、ルーフヘッドライニングにインナ層を一体的に設けてルーフパネルに取り付ける構成の場合、その基準部は、目視のために外周部に設けなければならないという制約を受ける。しかしながら、本実施形態では、そのような制約を受けることがない。また、ルーフパネルとルーフヘッドライニングとの間に配策されるワイヤーハーネス(図示省略)等を交換する際にも、メインルーフ50を取り外して交換することができるため、ルーフヘッドライニングを取り外して交換する場合に比べて、その交換費用が低減される。
【0062】
以上、本実施形態に係る樹脂ルーフ10(メインルーフ50及びサブルーフ40)について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る樹脂ルーフ10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、サブルーフ40の支持部44は、リベット60ではなく、接着剤によってブラケット46の上壁47に接合されていてもよい。
【0063】
また、サブルーフ40は、メインルーフ50のアウタ層52よりも硬質な樹脂製とされていなくてもよい。すなわち、上記した作用効果が得られるならば、例えばサブルーフ40は、メインルーフ50のアウタ層52と同じ樹脂材料(本実施形態の場合では、一例としてAES等)で形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10 樹脂ルーフ
20 ルーフサイドレール
30 ルーフリインフォースメント(基材)
40 サブルーフ
44 支持部(被接合部)
50 メインルーフ
52 アウタ層
52A 周縁部
52B 外形端末
54 第1接合部(アウタ層の接合部)
56 インナ層
58 第2接合部(インナ層の接合部)
60 リベット