(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】バッテリパックの振動抑制構造
(51)【国際特許分類】
B60K 11/06 20060101AFI20240806BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240806BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240806BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240806BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240806BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240806BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240806BHJP
【FI】
B60K11/06
B60K1/04 Z
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6563
H01M50/249
(21)【出願番号】P 2020218175
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水鳥 将希
(72)【発明者】
【氏名】渡部 綱一郎
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼井 一成
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-111466(JP,A)
【文献】特開2014-075181(JP,A)
【文献】特開2016-197502(JP,A)
【文献】特開2011-235761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060168(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/06
B60K 1/04
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/6556
H01M 10/6563
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリモジュールと、
送風ファンに接続され、前記送風ファンから前記バッテリモジュールに空気を送る送風ダクトと、
前記送風ファン、前記バッテリモジュールおよび前記送風ダクトを収納し、車両に搭載されるバッテリケースと、を備えるバッテリパックの振動抑制構造であって、
前記バッテリケースの下面よりも上方に配置され、前記送風ファンが載置される載置部材と、前記載置部材と前記バッテリケースの下面とに接続され、前記載置部材を支持する脚部材とを有する台座部を備え、
前記脚部材は、車両上下方向および車両前後方向に延びる本体部を有し、
前記送風ダクトは、前記バッテリケースに固定されるバッテリケース取付部を有し、
前記バッテリケース取付部は、車両前後方向で前記載置部材に隣り合う前記バッテリモジュールの、車両前後方向で前記載置部材から遠い側の端部よりも前記載置部材側の位置で
あって、車両幅方向における前記載置部材の端部よりも中央側の位置で、前記バッテリケースに固定されていることを特徴とするバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項2】
バッテリモジュールと、
送風ファンに接続され、前記送風ファンから前記バッテリモジュールに空気を送る送風ダクトと、
前記送風ファン、前記バッテリモジュールおよび前記送風ダクトを収納し、車両に搭載されるバッテリケースと、を備えるバッテリパックの振動抑制構造であって、
前記バッテリケースの下面よりも上方に配置され、前記送風ファンが載置される載置部材と、前記載置部材と前記バッテリケースの下面とに接続され、前記載置部材を支持する脚部材とを有する台座部を備え、
前記脚部材は、車両上下方向および車両前後方向に延びる本体部を有し、
前記送風ダクトは、前記バッテリケースに固定されるバッテリケース取付部と、車両幅方向の少なくとも一方に延びる第1ダクト部材と、を有し、
前記バッテリケース取付部は、車両前後方向で前記載置部材に隣り合う前記バッテリモジュールの、車両前後方向で前記載置部材から遠い側の端部よりも前記載置部材側の位置で、前記バッテリケースに固定され、
前記第1ダクト部材は、車両幅方向の両方に延びていることを特徴とするバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項3】
前記バッテリケース取付部は、車両幅方向における前記載置部材の端部よりも外側の位置で、前記バッテリケースに固定されていることを特徴とする
請求項2に記載のバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項4】
前記脚部材は、車両上下方向で、前記第1ダクト部材の下方に配置されていることを特徴とする
請求項2または請求項3に記載のバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項5】
前記送風ダクトは、車両前後方向に延びる第2ダクト部材と、前記第1ダクト部材と前記第2ダクト部材とに接続される中間ダクト部材とを有し、
前記第2ダクト部材は、前記バッテリケース取付部を有し、
前記脚部材と前記中間ダクト部材とが車両幅方向で対向して配置されていることを特徴とする請求項4に記載のバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項6】
前記バッテリケースを車体に支持する車体マウント部を備え、
前記バッテリケース取付部と前記車体マウント部とが車両幅方向で対向して配置されていることを特徴とする請求項2から請求項5の何れか1項に記載のバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項7】
前記中間ダクト部材は、車両幅方向に延びて前記第1ダクト部材に接続される車両幅方向延伸部と、車両前後方向に延びて前記第2ダクト部材に連結される車両前後方向延伸部と、前記車両幅方向延伸部と前記車両前後方向延伸部とに連通するように屈曲する屈曲部と、を有し、
前記屈曲部の車両幅方向の内側の曲率は、前記屈曲部の車両幅方向の外側の曲率よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載のバッテリパックの振動抑制構造。
【請求項8】
前記第1ダクト部材および前記第2ダクト部材は、車両前後方向における前記載置部材の中央よりも一端部側に配置されていることを特徴とする請求項5または請求項7に記載のバッテリパックの振動抑制構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックの振動抑制構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両にあっては、複数のバッテリモジュールを備えるバッテリパックを搭載し、このバッテリパックの電力を走行用のモータに供給することがある。従来のバッテリパックとして、特許文献1に記載されるものが知られている。特許文献1に記載のバッテリパックは、バッテリパックの外部から空気を取り込むファンユニットと、このファンユニットを支持する支持フレームとを備えており、ファンユニットは支持フレームによってバッテリモジュールの上部を架橋するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、ファンユニットは、バッテリパックの構成部品の中でも重量が大きいため、車両の走行に伴って振動が発生しやすい部品である。そのため、ファンユニットの振動を抑制するために、ファンユニットを剛性の高い補強部材等によって強固に支持することが好ましい。
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバッテリパックにおいて、ファンユニットを支持する支持フレームの剛性を高めるために、支持フレームに補強部材を一体または別体で設けるようにした場合、新たに追加する補強部材によってバッテリパックの重量が増加してしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記のような事情に着目してなされたものであり、バッテリパックの重量を増加させることなく送風ファンの振動を抑制できるバッテリパックの振動抑制構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バッテリモジュールと、送風ファンに接続され、前記送風ファンから前記バッテリモジュールに空気を送る送風ダクトと、前記送風ファン、前記バッテリモジュールおよび前記送風ダクトを収納し、車両に搭載されるバッテリケースと、を備えるバッテリパックの振動抑制構造であって、前記バッテリケースの下面よりも上方に配置され、前記送風ファンが載置される載置部材と、前記載置部材と前記バッテリケースの下面とに接続され、前記載置部材を支持する脚部材とを有する台座部を備え、前記脚部材は、車両上下方向および車両前後方向に延びる本体部を有し、前記送風ダクトは、前記バッテリケースに固定されるバッテリケース取付部を有し、前記バッテリケース取付部は、車両前後方向で前記載置部材に隣り合う前記バッテリモジュールの、車両前後方向で前記載置部材から遠い側の端部よりも前記載置部材側の位置であって、車両幅方向における前記載置部材の端部よりも中央側の位置で、前記バッテリケースに固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
このように上記の本発明によれば、バッテリパックの重量を増加させることなく送風ファンの振動を抑制できるバッテリパックの振動抑制構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造を搭載する車両のフロアパネルおよびバッテリパックの底面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造を搭載する車両のバッテリパックの後部の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すバッテリパックのIV-IV方向の矢視断面図である。
【
図5】
図5は、
図2に示すバッテリパックのV-V方向の矢視断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造を搭載する車両のバッテリパックの内部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施の形態に係るバッテリパックの振動抑制構造は、バッテリモジュールと、送風ファンに接続され、送風ファンからバッテリモジュールに空気を送る送風ダクトと、送風ファン、バッテリモジュールおよび送風ダクトを収納し、車両に搭載されるバッテリケースと、を備えるバッテリパックの振動抑制構造であって、バッテリケースの下面よりも上方に配置され、送風ファンが載置される載置部材と、載置部材とバッテリケースの下面とに接続され、載置部材を支持する脚部材とを有する台座部を備え、脚部材は、車両上下方向および車両前後方向に延びる本体部を有し、送風ダクトは、バッテリケースに固定されるバッテリケース取付部を有し、バッテリケース取付部は、車両前後方向で載置部材に隣り合うバッテリモジュールの、車両前後方向で載置部材から遠い側の端部よりも載置部材側の位置で、バッテリケースに固定されていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係るバッテリパックの振動抑制構造は、バッテリパックの重量を増加させることなく送風ファンの振動を抑制できる。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造について、図面を用いて説明する。
図1から
図6において、上下前後左右方向は、車両に設置された状態のバッテリパックの上下前後左右方向とし、車両の前後方向に対して直交する方向が左右方向、バッテリパックの高さ方向が上下方向である。
【0012】
図1から
図6は、本発明の一実施例に係るバッテリパックの振動抑制構造を示す図である。
【0013】
まず、構成を説明する。
図1において、車両1は、車体2を備えている。車体2は、左右で一対のサイドメンバ11と、一対のサイドメンバ11に連結されたフロアパネル2Aとを有している。フロアパネル2Aの車両幅方向の中央部には、車両前後方向に延びるフロアトンネル2Bが形成されている。
【0014】
フロアパネル2Aの下側にはバッテリパック20が配置されている。バッテリパック20は、車両1の図示しないモータに電力を供給する。バッテリパック20は、一対のサイドメンバ11の間に配置されている。
【0015】
図2、
図3において、バッテリパック20は、車両前後方向および車両幅方向に並べられた複数のバッテリモジュール61からなるバッテリモジュール群60と、バッテリモジュール群60の後部の上方に配置された送風ファン55(
図2参照)とを備えている。
【0016】
バッテリモジュール群60の後方には、バッテリモジュール61と同様の構成を有するバッテリモジュール62(
図5参照)が設けられている。送風ファン55はバッテリモジュール62の上部に配置されている。
【0017】
また、バッテリパック20はバッテリケース21を備えている。バッテリケース21は、送風ダクト70と、バッテリモジュール61、62と、送風ファン55とを収納している。送風ダクト70は、送風ファン55に接続されており、送風ファン55からバッテリモジュール61に空気を送っている。送風ダクト70は、全体としてバッテリモジュール群60の外周に沿って延びている。
【0018】
図5において、バッテリケース21は、下側ケース40と上側ケース30とからなる。上側ケース30は
図5において破線で表されている。バッテリケース21は、下側ケース40の外縁部に形成されたフランジ部41と上側ケース30の外縁部に形成されたフランジ部31とを締結することにより一体化されている。
【0019】
下側ケース40には、複数のバッテリモジュール61が固定されている。下側ケース40は、複数のバッテリモジュール61の下面および側面を覆っている。上側ケース30は、下側ケース40を上方から塞いだ状態で、複数のバッテリモジュール61の上面を覆っている。
【0020】
図2において、送風ダクト70は、車両幅方向に延びる第1ダクト部材71と、車両前後方向に延びる第2ダクト部材73と、第1ダクト部材71と第2ダクト部材73とに接続される中間ダクト部材72と、を有している。このように、送風ダクト70は、複数の部材に分割された分割構造を有している。
【0021】
なお、本実施例では、バッテリケース21内の車両幅方向の両端部に空気を送る構造であるため、第1ダクト部材71は車両幅方向の両方に延びている。バッテリケース21内の車両幅方向の一端部に空気を送る構造を採用する場合、第1ダクト部材71は車両幅方向の一端部側に延びていればよい。したがって、第1ダクト部材71は車両幅方向の少なくとも一方に延びていればよい。
【0022】
バッテリケース21の外部の空気は、第1ダクト部材71、中間ダクト部材72、第2ダクト部材73を順次通過してバッテリモジュール群60に供給される。したがって、第1ダクト部材71は中間ダクト部材72に対して上流側のダクト部材であり、第2ダクト部材73は中間ダクト部材72に対して下流側のダクト部材である。
【0023】
第1ダクト部材71は全体として車両幅方向に延びている。第1ダクト部材71は、バッテリモジュール群60の後部の上方に配置されている。第1ダクト部材71には送風ファン接続部71Aが設けられており、送風ファン接続部71Aは後方向に延びており、その後端部で送風ファン55に接続されている。
【0024】
第1ダクト部材71は分岐部71Bを有しており、分岐部71Bは送風ファン接続部71Aの前端部に設けられており、車両幅方向に延びている。分岐部71Bは、車両幅方向の左方向と右方向にそれぞれ分岐し、バッテリモジュール群60の後部に沿って延びている。第1ダクト部材71の下流側端部(左端部)は左方を向いて開口している。
【0025】
中間ダクト部材72は、第1ダクト部材71の分岐部71Bの下流側端部に接続されている。中間ダクト部材72は、車両幅方向に延びて第1ダクト部材71に接続される車両幅方向延伸部72Aと、車両前後方向に延びて第2ダクト部材73に連結される車両前後方向延伸部72Cと、車両幅方向延伸部72Aと車両前後方向延伸部72Cとに連通するように屈曲する屈曲部72Bと、を有している。
【0026】
車両前後方向延伸部72Cは、バッテリモジュール61とバッテリケース21との間の隙間に配置されている。また、車両前後方向延伸部72Cは、バッテリケース21の側壁42に沿って前方に延びている。中間ダクト部材72の車両幅方向延伸部72Aの上流側端部(右端部)は、右方を向いて開口しており、第1ダクト部材71の下流側端部(左端部)に接続されている。
【0027】
第2ダクト部材73の上流側端部は、車両前後方向延伸部72Cの下流側端部に接続されている。第2ダクト部材73は、バッテリモジュール群60の側方を通るように配置され、バッテリモジュール群60とバッテリケース21との隙間に沿って延びている。
【0028】
第2ダクト部材73の図示しない下流側端部は、バッテリモジュール群60の内部まで延びており、複数のバッテリモジュール61に空気を供給している。
【0029】
図2において、バッテリパック20は、バッテリモジュール群60の後方にテーブル形状の台座部90を備えている。台座部90は、送風ファン55が載置される平板状の載置部材91と、載置部材91を支持する複数の脚部材92、93を有している。脚部材92、93は、載置部材91の車両幅方向端部の下面とバッテリケース21の下面とに接続されている。ここで、バッテリケース21の下面とは、バッテリモジュール61等が載置される底面をいう。載置部材91は、バッテリケース21の下面よりも上方に配置されている。したがって、送風ファン55は、バッテリケース21の下面よりも上方に配置されている。
【0030】
本実施例では、脚部材92、93は、平板をプレス加工により形成したものからなる。脚部材92、93は、車両上下方向および車両前後方向に延びる本体部92A、93Aを有している。本体部92A、93Aは、剛性確保のための曲げ加工が施されているが、全体として平板状の形状にされている。このため、脚部材92、93は、車両の走行に起因する車両前後方向への振動に対して変形しにくい。したがって、送風ファン55は、これを支持する台座部90の脚部材92、93の形状によって、車両前後方向には振動しにくい。
【0031】
送風ダクト70は、バッテリケース取付部80(
図2参照)、またはバッテリケース取付部100(
図6参照)を有しており、このバッテリケース取付部80、100はバッテリケース21に固定される。バッテリケース取付部80、100において送風ダクト70をバッテリケース21に固定することにより、送風ダクト70の振動を抑制し、かつ、この送風ダクト70に接続される送風ファン55の振動を抑制することができる。
【0032】
図2において、バッテリケース取付部80は第2ダクト部材73に設けられている。バッテリケース取付部80は、第2ダクト部材73から左方に延び、バッテリケース21の側壁42に固定されている。なお、バッテリケース21の側壁42には、図面に表れていない固定部が設けられており、この固定部は、バッテリケース取付部80の下面に固定されている。このように、第2ダクト部材73は、バッテリケース取付部80においてバッテリケース21に支持されている。
【0033】
バッテリケース取付部80は、車両前後方向で載置部材91に隣り合うバッテリモジュール61の、車両前後方向で載置部材91から遠い側の端部よりも載置部材91側の位置で、バッテリケース21に固定されている。
【0034】
本実施例では、載置部材91の前方にバッテリモジュール61が配置されているため、バッテリケース取付部80は、バッテリモジュール61の前端よりも載置部材91側の位置で、バッテリケース21に固定されている。なお、載置部材91の後方にバッテリモジュール61が配置されている場合、バッテリケース取付部80は、バッテリモジュール61の後端よりも載置部材91側の位置で、バッテリケース21に固定されている。
【0035】
バッテリケース取付部80の固定部位であるバッテリケース21の側壁42は、車両幅方向における載置部材91の端部よりも外側に位置している。したがって、バッテリケース取付部80は、車両幅方向における載置部材91の端部よりも外側の位置で、バッテリケース21に固定されている。
【0036】
図6において、バッテリケース取付部100は中間ダクト部材72の車両幅方向延伸部72Aの前端に設けられている。バッテリケース取付部100は、車両幅方向延伸部72Aの前端から前方に延びる延伸部101と、この延伸部101の延伸方向先端から下方に延びる取付脚部102とを有している。
【0037】
取付脚部102の下端部は、車両幅方向で最も外側にあるバッテリモジュール61と、このバッテリモジュール61に車両幅方向で隣り合うバッテリモジュール61との間の位置で、バッテリケース21の下側ケース40の内面に固定されている。取付脚部102の下側ケース40への取り付け位置は、斜線で表された領域Bの範囲内に設定されている。領域Bは、載置部材91の前方に隣接してバッテリモジュール61が車両幅方向に並べられているバッテリモジュール群60が配置される領域である。
【0038】
ここで、領域Bの車両前後方向の境界位置B1、B2は、バッテリモジュール群60の前端位置および後端位置をそれぞれ示している。また、領域Bの車両幅方向の境界位置B3、B4は、載置部材91の右端位置および左端位置をそれぞれ示している。
【0039】
図2において、脚部材92は、左右で一対設けられており、載置部材91とバッテリケース21の下面とに接続されている。脚部材93は、車両前後方向で脚部材93の後方に左右で一対設けられており、載置部材91とバッテリケース21の下面とに接続されている。脚部材92、93は本発明における脚部材を構成する。本実施例では、脚部材92と中間ダクト部材72とは車両幅方向で対向して配置されている。また、車両平面視で、中間ダクト部材72の屈曲部72Bと脚部材92とは車両上下方向で対向して配置されている。また、脚部材92は、車両上下方向で、第1ダクト部材71の下方に配置されている。言い換えれば、脚部材92を車両幅方向から見た場合、脚部材92と第1ダクト部材71とは、車両上下方向に重なっている。
【0040】
本実施例では、第1ダクト部材71および第2ダクト部材73は、車両前後方向における載置部材91の中央よりも一端部側(前端部側)に配置されている。なお、車両へのバッテリパック20への取り付け姿勢を前後で逆にする場合は、第1ダクト部材71および第2ダクト部材73は、車両前後方向における載置部材91の中央よりも後端部側に配置されることになる。
【0041】
図1において、バッテリケース21の側面には、バッテリケース21を車体2に支持する複数の車体マウント部22、23、24が設けられている。車体マウント部22、23、24は、それぞれ左右で一対設けられている。
【0042】
図2において、バッテリケース取付部80と車体マウント部22とは車両幅方向で対向して配置されている。車体マウント部22は本発明における車体マウント部を構成する。一方、車体マウント部23は、バッテリモジュール群60の後方、かつ、車両前後方向で車体マウント部22の後方に配置されている。また、車体マウント部23は、送風ファン55と車両幅方向に対向する位置に配置されている。車体マウント部24(
図1参照)は、車両前後方向で車体マウント部22の前方に配置されている。
【0043】
図4、
図5において、中間ダクト部材72の屈曲部72Bは、車両前方側ほど車両上下方向で下方に向かうように傾斜している。したがって、車両上下方向で、中間ダクト部材72の下流側端部は、中間ダクト部材72の上流側端部よりも下方に配置されている。そのため、第2ダクト部材73は、第1ダクト部材71よりも車両上下方向で下方に配置されている。なお、屈曲部72Bは、平面視でL字状に屈曲しているだけでなく、側面視で傾斜しており、3次元的に曲げられた立体形状を有しているため、全方向に対して剛性が高くなっている。
【0044】
図5において、屈曲部72Bの車両幅方向の内側の曲率R1は、屈曲部72Bの車両幅方向の外側の曲率R2よりも小さく形成されている。言い換えれば、屈曲部72Bの車両幅方向の内側の部分の湾曲形状は、外側の部分の湾曲形状と比較して、曲率半径の大きな緩い湾曲形状である。
【0045】
図2において、中間ダクト部材72の下流側端部(前端部)と第2ダクト部材73の上流側端部(後端部)とは、車両幅方向に対向して開口している。詳しくは、中間ダクト部材72の車両前後方向延伸部72Cの下流側端部の開口部72Fは右方を向いて開口し、第2ダクト部材73の上流側端部の開口部73Bは左方を向いて開口している。
【0046】
中間ダクト部材72の下流側端部の開口部72Fと第2ダクト部材73の上流側端部の開口部73Bとの接続面であるダクト接続面97は、車両前後方向に延びている。ダクト接続面97において、開口部72Fと開口部73Bとは、凹凸の嵌め合わせにより互いに接続および結合されている。
【0047】
ダクト接続面97の車両前後方向の両端側には、一対の固定部としての上流側固定部82と下流側固定部81とが設けられている。そして、上流側固定部82と下流側固定部81とにおいて、中間ダクト部材72と第2ダクト部材73とが互いに固定されている。また、車両平面視で、一対の固定部を結ぶ線を仮想線Lとしたとき、この仮想線Lはダクト接続面97に交差している。
【0048】
上流側固定部82は、ダクト接続面97のバッテリケース取付部80から遠い側に設けられている。一方、下流側固定部81は、ダクト接続面97のバッテリケース取付部80に近い側に設けられている。下流側固定部81は、バッテリケース取付部80に接続されている。
【0049】
ここで、本実施例では、中間ダクト部材72の上流側端部と下流側端部とがともに右方を向いて開口している。これにより、バッテリケース21に分割構造の送風ダクト70を組付ける組付け工程において、先ず、送風ダクト70の第1ダクト部材71および第2ダクト部材73をバッテリケース21に組付けておき、次いで、中間ダクト部材72を、第1ダクト部材71および第2ダクト部材73に接続されるように、車両幅方向で右方に移動させることによりバッテリケース21に組付けることができる。このため、中間ダクト部材72を右方へ移動させるだけで、中間ダクト部材72が第1ダクト部材71および第2ダクト部材73に接続されるので、中間ダクト部材72の組付けを容易に効率的に行うことができる。
【0050】
また、中間ダクト部材72の上流側端部と下流側端部とがともに右方を向いて開口しているので、中間ダクト部材72の下流側端部が車両前方を向いて開口している場合と比較して、ダクト接続面97における中間ダクト部材72と第2ダクト部材73との接続面積および接続剛性を大きくすることができる。このため、中間ダクト部材72を第2ダクト部材73によって強固に支持することができるので、中間ダクト部材72の剛性を向上させることができ、中間ダクト部材72に支持される載置部材91および送風ファン55の振動を抑制できる。
【0051】
また、載置部材91が車両幅方向内側(右方)に変位したことに伴って中間ダクト部材72が車両幅方向内側に変位した場合であっても、中間ダクト部材72の下流側端部が、強固に接続されたダクト接続面97を介して、第2ダクト部材73の上流側端部によって車両幅方向外側(左方)に戻される。このため、中間ダクト部材72の車両幅方向の変位が抑制され、載置部材91および送風ファン55の振動を抑制できる。
【0052】
以上説明したように、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、バッテリパック20は、バッテリケース21の下面よりも上方に配置され、送風ファン55が載置される載置部材91と、載置部材91とバッテリケース21の下面とに接続され、載置部材91を支持する脚部材92、93とを有する台座部90を備えている。また、脚部材92、93は、車両上下方向および車両前後方向に延びる本体部92A、93Aを有している。そして、送風ダクト70は、バッテリケース21に固定されるバッテリケース取付部80を有しており、このバッテリケース取付部80は、車両前後方向で載置部材91に隣り合うバッテリモジュール61の、車両前後方向で載置部材91から遠い側の端部よりも載置部材91側の位置で、バッテリケース21に固定されている。
【0053】
このように、本実施例では、台座部90の脚部材92、93は車両前後方向に延びる本体部92A、93Aを有しているので、車両前後方向の振動を本体部92A、93Aが受け持つことができ、脚部材92、93が車両前後方向に振動して変形することを抑制できる。
【0054】
さらに、送風ダクト70のバッテリケース取付部80は、車両前後方向で載置部材91に隣り合うバッテリモジュール61の、車両前後方向で載置部材91から遠い側の端部よりも載置部材91側の位置で、バッテリケース21に固定されているので、載置部材91とバッテリケース取付部80との距離を短くでき、新たに補強部材を設けなくても台座部90および台座部90に固定される送風ファン55の振動を抑制できる。
【0055】
この結果、バッテリパック20の重量を増加させることなく送風ファン55の振動を抑制できる。
【0056】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、バッテリケース取付部100は、車両幅方向における載置部材91の端部よりも中央側の位置で、バッテリケース21に固定されている。
【0057】
このため、バッテリケース取付部100を車両幅方向で載置部材91に近い位置に配置でき、台座部90の振動を抑制しやすくできる。
【0058】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、バッテリケース取付部80は、車両幅方向における載置部材91の端部よりも外側の位置で、バッテリケース21に固定されている。
【0059】
このため、台座部90が振動して載置部材91が車両幅方向に変位した場合に、バッテリケース取付部80の周囲の送風ダクト70が引っ張りまたは圧縮方向に弾性変形し、その復元力が載置部材91を元の位置に戻すように作用するため、台座部90が大きく振動することを防止できる。
【0060】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、送風ダクト70は、車両幅方向の少なくとも一方に延びる第1ダクト部材71を有し、脚部材92は、車両上下方向で、第1ダクト部材71の下方に配置されている。
【0061】
これにより、第1ダクト部材71は、車両幅方向に延びることにより車両幅方向には変形しにくくなり、第1ダクト部材71に接続された送風ファン55の車両幅方向の変位を効果的に抑制できる。
【0062】
また、脚部材92が第1ダクト部材71の下方に配置されているため、脚部材92と第1ダクト部材71とが近接して配置されることになるので、脚部材92の車両幅方向の変形を効果的に抑制できる。
【0063】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、第1ダクト部材71は、車両幅方向の両方に延びている。
【0064】
これにより、車両幅方向の両方に延びる第1ダクト部材71の両端部側にそれぞれバッテリケース取付部80を配置することができる。このため、送風ファン55の車両幅方向への振動による荷重を第1ダクト部材71に対して圧縮荷重と引っ張り荷重として作用させることができるので、送風ファン55が車両幅方向に振動して変位することを更に規制できる。
【0065】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、送風ダクト70は、車両前後方向に延びる第2ダクト部材73と、第1ダクト部材71と第2ダクト部材73とに接続される中間ダクト部材72とを有しており、第2ダクト部材73がバッテリケース取付部80を有している。そして、脚部材92と中間ダクト部材72とが車両幅方向で対向して配置されている。
【0066】
これにより、互いに延伸方向が異なる第1ダクト部材71と第2ダクト部材73とに接続される中間ダクト部材72は、屈曲した形状であることにより、剛性が高くなる。そして、剛性が高い中間ダクト部材72が脚部材92とが車両幅方向で対向しているので、脚部材92の車両幅方向の振動を抑制でき、送風ファン55の車両幅方向の振動を抑制できる。
【0067】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、バッテリケース21を車体に支持する車体マウント部22を備え、バッテリケース取付部80と車体マウント部22とが車両幅方向で対向して配置されている。
【0068】
これにより、バッテリケース21を車体に取り付けるために剛性が高い車体マウント部22によってその部位のバッテリケース21が補強される。そして、その補強された部位に送風ダクト70のバッテリケース取付部80が固定されるので、送風ファン55の車両幅方向の振動をより抑制できる。
【0069】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、中間ダクト部材72は、車両幅方向に延びて第1ダクト部材71に接続される車両幅方向延伸部72Aと、車両前後方向に延びて第2ダクト部材73に連結される車両前後方向延伸部72Cと、車両幅方向延伸部72Aと車両前後方向延伸部72Cとに連通するように屈曲する屈曲部72Bと、を有している。また、屈曲部72Bの車両幅方向の内側の曲率R1は、屈曲部72Bの車両幅方向の外側の曲率R2よりも小さくされている。
【0070】
これにより、中間ダクト部材72を曲げにくくでき、より送風ファン55の振動を抑制できる。
【0071】
また、本実施例のバッテリパック20の振動抑制構造において、第1ダクト部材71および第2ダクト部材73は、車両前後方向における載置部材91の中央よりも一端部側に配置されている。
【0072】
これにより、車両前後方向における載置部材91の中央よりも一端部側において、第1ダクト部材71と第2ダクト部材73とを、互いに近づけて配置できる。このため、送風ファン55に接続される第1ダクト部材71と、バッテリケース取付部80を有する第2ダクト部材73とを、車両前後方向で近づけて配置でき、送風ファン55の振動をより抑制できる。
【0073】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0074】
1...車両、20...バッテリパック、21...バッテリケース、22...車体マウント部、55...送風ファン、61,62...バッテリモジュール、70...送風ダクト、71...第1ダクト部材、72...中間ダクト部材、72A...車両幅方向延伸部、72B...屈曲部、72C...車両前後方向延伸部、73...第2ダクト部材、80,100...バッテリケース取付部、90...台座部、91...載置部材、92,93...脚部材、92A,93A...本体部、R1,R2...曲率