(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】波長変換シートの製造方法、蛍光体保護フィルム及び剥離フィルム付き波長変換シート
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240806BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20240806BHJP
【FI】
G02B5/20
B32B7/06
(21)【出願番号】P 2020552612
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(86)【国際出願番号】 JP2019041802
(87)【国際公開番号】W WO2020085466
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】P 2018201688
(32)【優先日】2018-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】市塲 宏輝
(72)【発明者】
【氏名】丸山 敏
(72)【発明者】
【氏名】黒川 真登
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 靖彦
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043058(JP,A)
【文献】特開2017-016134(JP,A)
【文献】特開2005-315786(JP,A)
【文献】特開2005-195571(JP,A)
【文献】特開平10-319231(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079495(WO,A1)
【文献】特開2016-182744(JP,A)
【文献】特開2018-109706(JP,A)
【文献】特開2017-181900(JP,A)
【文献】特開2015-185685(JP,A)
【文献】特開2010-237648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20 - 5/28
B32B 7/06
H01L 33/50
G03B 21/14
G02F 1/13357
H01S 5/00 - 5/50
C09K 11/08
F21S 2/00
F21V 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアフィルム基材を含むバリアフィルムを有する積層フィルムと、前記積層フィルムから剥離可能な剥離フィルムとを貼り合せた蛍光体保護フィルムを得る貼り合わせ工程と、
前記蛍光体保護フィルムの前記積層フィルム側の面上に、蛍光体を含む蛍光体層を形成し、剥離フィルム付き波長変換シートを得る蛍光体層形成工程と、
前記剥離フィルム付き波長変換シートから前記剥離フィルムを剥離する剥離工程と、
を備え
、
前記積層フィルムが、前記バリアフィルムと前記剥離フィルムとの間に配置された支持体フィルムを有する、波長変換シートの製造方法。
【請求項2】
前記貼り合わせ工程において、前記積層フィルムのシワを伸ばした状態で前記積層フィルムと前記剥離フィルムとを貼り合わせる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記蛍光体層形成工程において、2枚の前記蛍光体保護フィルムの間に前記蛍光体層を形成する、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記支持体フィルムと前記剥離フィルムとの合計の厚さが、前記蛍光体保護フィルムの総厚の60%以上を占める、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記バリアフィルム基材の厚さが9~25μmである、請求項1~
4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記バリアフィルムは、
前記バリアフィルム基材と、該バリアフィルム基材上に設けられた無機薄膜層とを有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記積層フィルムが、前記剥離フィルム側の表面に機能層を備えており、
前記機能層が、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を発揮する層である、請求項1~
6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記積層フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.5μm以上であり、且つ、前記機能層表面の動摩擦係数が0.4以下である、請求項
7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.0μm以下である、請求項1~
8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記積層フィルムと前記剥離フィルムとの間の、JIS K6854-3に基づく剥離強度が0.05~1.0N/25mmである、請求項1~
9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
支持体フィルムを含む本体部と、前記本体部から剥離可能な剥離フィルムとを貼り合せた蛍光体保護フィルムを得る貼り合わせ工程と、
前記蛍光体保護フィルムの前記本体部側の面上に、蛍光体を含む蛍光体層を形成し、剥離フィルム付き波長変換シートを得る蛍光体層形成工程と、
前記剥離フィルム付き波長変換シートから前記剥離フィルムを剥離する剥離工程と、
を備え、
前記剥離フィルムの厚さが、前記蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上を占め
、
前記蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.0μm以下である、波長変換シートの製造方法。
【請求項12】
前記貼り合わせ工程において、前記本体部のシワを伸ばした状態で前記本体部と前記剥離フィルムとを貼り合わせる、請求項
11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記蛍光体層形成工程において、2枚の前記蛍光体保護フィルムの間に前記蛍光体層を形成する、請求項
11又は
12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記支持体フィルムの厚さが12~50μmである、請求項
11~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記剥離フィルムの厚さが25~150μmである、請求項
11~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
前記本体部が、前記剥離フィルム側の表面に機能層を備えており、
前記機能層が、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を発揮する層である、請求項
11~15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
バリアフィルム基材を含むバリアフィルムを有する積層フィルムと、前記積層フィルムの一方の面上に設けられた、前記積層フィルムから剥離可能な剥離フィルムと、を備え
、
前記積層フィルムが、前記バリアフィルムと前記剥離フィルムとの間に配置された支持体フィルムを有する、蛍光体保護フィルム。
【請求項18】
前記支持体フィルムと前記剥離フィルムとの合計の厚さが、前記蛍光体保護フィルムの総厚の60%以上を占める、請求項
17に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項19】
前記バリアフィルム基材の厚さが9~25μmである、請求項
17又は18に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項20】
前記バリアフィルムは、
前記バリアフィルム基材と、該バリアフィルム基材上に設けられた無機薄膜層とを有する、請求項
17~19のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項21】
前記積層フィルムが、前記剥離フィルム側の表面に機能層を備えており、
前記機能層が、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を発揮する層である、請求項
17~20のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項22】
前記積層フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.5μm以上であり、且つ、前記機能層表面の動摩擦係数が0.4以下である、請求項
21に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項23】
前記蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.0μm以下である、請求項
17~22のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項24】
前記積層フィルムと前記剥離フィルムとの間の、JIS K6854-3に基づく剥離強度が0.05~1.0N/25mmである、請求項
17~23のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項25】
支持体フィルムを含む本体部と、前記本体部の一方の面上に設けられた、前記本体部から剥離可能な剥離フィルムと、を備え、
前記剥離フィルムの厚さが、蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上を占め
、
蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.0μm以下である、蛍光体保護フィルム。
【請求項26】
前記支持体フィルムの厚さが12~50μmである、請求項
25に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項27】
前記剥離フィルムの厚さが25~150μmである、請求項
25又は26に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項28】
前記本体部が、前記剥離フィルム側の表面に機能層を備えており、
前記機能層が、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を発揮する層である、請求項
25~27のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルム。
【請求項29】
請求項
17~28のいずれか一項に記載の蛍光体保護フィルムを2枚有し、この2枚の蛍光体保護フィルムの間に蛍光体を含む蛍光体層を挟んで構成されており、2枚の前記蛍光体保護フィルムはいずれも、前記剥離フィルムが最外層となるように配置されている、剥離フィルム付き波長変換シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換シートの製造方法、蛍光体保護フィルム、剥離フィルム付き波長変換シート及び波長変換シートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイのバックライトユニット及びエレクトロルミネッセンス発光ユニット等の発光ユニットには、LEDから発生したレーザー光を蛍光体に入射させ、そのレーザー光の波長を変化させるものがある。波長の変化によってその色彩が変化することから、さまざまな波長、すなわち、さまざまな色彩に変化した光を表示光として、カラーの画面を表示することができる。
【0003】
ところで、この蛍光体は酸素又は水蒸気等と接触して長時間が経過することにより性能が低下することがある。このような性能の低下を防ぐため、蛍光体を含む蛍光体層に保護フィルムを重ね、あるいはこの保護フィルムで蛍光体層を挟んで、波長変換シートを形成している。保護フィルムとしては、例えば、樹脂フィルムに無機薄膜層を真空蒸着して、この無機薄膜層によって酸素や水蒸気の透過を遮断したものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した蛍光体保護フィルムには、その製造工程中で樹脂フィルムに加わる熱及び張力を主たる原因として、シワが発生することがある。このようにシワが発生した保護フィルムに蛍光体層を積層すると、十分に均一な厚さの蛍光体層を形成することが困難となる。そのため、得られる波長変換シートには、蛍光体の発光にムラが生じるなどの不具合が生じやすくなる。このようなシワの発生を抑制する方法として、保護フィルムを構成する支持体フィルムの厚さを厚くする方法が挙げられる。
【0006】
一方で、スマートフォン等のモバイル機器やモニタの薄型化に伴い、それらに使用する波長変換シートにも薄膜化が要求されつつある。波長変換シートの薄膜化が進むと、保護フィルムの薄膜化が必要となるため、支持体フィルムの厚さを十分に確保できず、蛍光体保護フィルムにシワがより発生しやすくなり、蛍光体の発光ムラがより顕著となるおそれがある。
【0007】
本開示は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、波長変換シートの薄膜化が可能でありながら、蛍光体保護フィルムにシワが発生することを抑制でき、このシワに起因した蛍光体の発光ムラを抑制できる波長変換シートの製造方法、蛍光体保護フィルム、剥離フィルム付き波長変換シート、及び、波長変換シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示は、バリアフィルムを有する積層フィルムと、上記積層フィルムから剥離可能な剥離フィルムとを貼り合わせて蛍光体保護フィルムを得る貼り合わせ工程と、上記蛍光体保護フィルムの上記積層フィルム側の面上に、蛍光体を含む蛍光体層を形成し、剥離フィルム付き波長変換シートを得る蛍光体層形成工程と、上記剥離フィルム付き波長変換シートから上記剥離フィルムを剥離する剥離工程と、を備える波長変換シートの製造方法を提供する。
【0009】
上記製造方法によれば、蛍光体層形成工程まで蛍光体保護フィルムに剥離フィルムを設けておくことで、この剥離フィルムの存在によって蛍光体保護フィルムにシワが発生することを十分に抑制できる。この剥離フィルムは剥離工程において剥離され、得られる波長変換シートには残らないため、シワを改善するのに十分な厚さを確保することができる。そして、剥離工程を経て得られる波長変換シートは、十分に薄膜化することができる。
【0010】
上記製造方法では、上記貼り合わせ工程において、上記積層フィルムのシワを伸ばした状態で上記積層フィルムと上記剥離フィルムとを貼り合わせてもよい。これにより、蛍光体保護フィルムにシワが発生することをより十分に抑制することができる。
【0011】
上記製造方法では、上記蛍光体層形成工程において、2枚の上記蛍光体保護フィルムの間に上記蛍光体層を形成してもよい。これにより、蛍光体層は酸素及び水蒸気等からより十分に保護され、性能の低下がより十分に抑制される。
【0012】
上記製造方法において、上記積層フィルムが、上記バリアフィルムと上記剥離フィルムとの間に配置された支持体フィルムを有し、上記支持体フィルムと上記剥離フィルムとの合計の厚さが、上記蛍光体保護フィルムの総厚の60%以上を占めていてもよい。上記支持体フィルムは、剥離フィルムと共にシワを改善する機能を有する。そして、これら支持体フィルムと剥離フィルムとの合計の厚さが蛍光体保護フィルムの総厚の60%以上であることで、蛍光体保護フィルムにシワが発生することをより十分に抑制することができる。
【0013】
上記製造方法において、上記積層フィルムが、上記バリアフィルムと上記剥離フィルムとの間に支持体フィルムを有さず、上記剥離フィルムの厚さが、上記蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上を占めていてもよい。この場合、支持体フィルムを有さないことで、波長変換シートをより薄膜化することができる。そして、剥離フィルムの厚さが蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上であることで、蛍光体保護フィルムにシワが発生することをより十分に抑制することができる。
【0014】
上記製造方法において、上記バリアフィルムがバリアフィルム基材を有し、該バリアフィルム基材の厚さが9~25μmであってもよい。
【0015】
上記製造方法において、上記バリアフィルムは、バリアフィルム基材と、該バリアフィルム基材上に設けられた無機薄膜層とを有していてもよい。
【0016】
上記製造方法において、上記積層フィルムが、上記剥離フィルム側の表面に機能層を備えており、上記機能層が、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を発揮する層であってもよい。
【0017】
上記製造方法において、上記積層フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.5μm以上であり、且つ、上記機能層表面の動摩擦係数が0.4以下であってもよい。機能層を含む積層フィルムの総厚のばらつき(3σ)を1.5μm以上とし、且つ、機能層表面の動摩擦係数を0.4以下とすることで、波長変換シートがディスプレイに組み込まれた際に、波長変換シートと接する導光板への傷つけを防止することができる。
【0018】
上記製造方法において、上記蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)が1.0μm以下であってもよい。本実施形態の製造方法によれば、積層フィルムが機能層を備えている場合であっても、剥離フィルムを機能層表面に貼り付けることによって、蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)を1.0μm以下に低減することができる。そして、蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)を1.0μm以下とすることで、波長変換シートを作製する際に、蛍光体層の厚さのばらつきを低減することができる。その結果、蛍光体層の厚さのばらつきに起因した発色の変化を抑制することができ、均一な発色を得ることができる。
【0019】
上記製造方法において、上記積層フィルムと上記剥離フィルムとの間の、JIS K6854-3に基づく剥離強度が0.05~1.0N/25mmであってもよい。上記剥離強度が上記範囲内であることで、剥離フィルムの存在によって蛍光体保護フィルムにシワが発生することをより十分に抑制できると共に、剥離工程において積層フィルムから剥離フィルムをスムーズに剥離することができる。
【0020】
本開示はまた、支持体フィルムを含む本体部と、上記本体部から剥離可能な剥離フィルムとを貼り合せた蛍光体保護フィルムを得る貼り合わせ工程と、上記蛍光体保護フィルムの上記本体部側の面上に、蛍光体を含む蛍光体層を形成し、剥離フィルム付き波長変換シートを得る蛍光体層形成工程と、上記剥離フィルム付き波長変換シートから上記剥離フィルムを剥離する剥離工程と、を備え、上記剥離フィルムの厚さが、上記蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上を占める、波長変換シートの製造方法を提供する。
【0021】
上記製造方法によれば、蛍光体層形成工程まで蛍光体保護フィルムに剥離フィルムを設けておくことで、この剥離フィルムの存在によって蛍光体保護フィルムにシワが発生することを十分に抑制できる。この剥離フィルムは剥離工程において剥離され、得られる波長変換シートには残らないため、シワを改善するのに十分な厚さを確保することができる。特に、剥離フィルムの厚さが蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上であることで、蛍光体保護フィルムにシワが発生することを抑制する効果を十分に得ることができる。そして、剥離工程を経て得られる波長変換シートは、十分に薄膜化することができる。
【0022】
上記製造方法では、上記貼り合わせ工程において、上記本体部のシワを伸ばした状態で上記本体部と上記剥離フィルムとを貼り合わせてもよい。これにより、蛍光体保護フィルムにシワが発生することをより十分に抑制することができる。
【0023】
上記製造方法では、上記蛍光体層形成工程において、2枚の上記蛍光体保護フィルムの間に上記蛍光体層を形成してもよい。これにより、蛍光体層は酸素及び水蒸気等からより十分に保護され、性能の低下がより十分に抑制される。
【0024】
上記製造方法において、上記支持体フィルムの厚さが12~50μmであってもよい。これにより、十分な強度を有し且つ十分に薄膜化された波長変換シートを得ることができる。
【0025】
上記製造方法において、上記剥離フィルムの厚さが25~150μmであってもよい。これにより、蛍光体保護フィルムの総厚が過剰に厚くなることを抑制しつつ、蛍光体保護フィルムにシワが発生することを抑制する効果を十分に得ることができる。
【0026】
上記製造方法において、上記積層フィルムが、上記剥離フィルム側の表面に機能層を備えており、上記機能層が、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を発揮する層であってもよい。
【0027】
本開示はまた、バリアフィルムを有する積層フィルムと、上記積層フィルムの一方の面上に設けられた、上記積層フィルムから剥離可能な剥離フィルムと、を備える蛍光体保護フィルムを提供する。上記蛍光体保護フィルムによれば、剥離可能な剥離フィルムを備えることで、蛍光体保護フィルムにシワが発生することを十分に抑制できる。この剥離フィルムは波長変換シートの製造時に剥離することで、得られる波長変換シートには残らないため、シワを改善するのに十分な厚さを確保することができる。そして、上記蛍光体保護フィルムを用いて得られる波長変換シートは、十分に薄膜化することができる。
【0028】
上記蛍光体保護フィルムにおいて、上記積層フィルムが、上記バリアフィルムと上記剥離フィルムとの間に配置された支持体フィルムを有し、上記支持体フィルムと上記剥離フィルムとの合計の厚さが、上記蛍光体保護フィルムの総厚の60%以上を占めていてもよい。
【0029】
上記蛍光体保護フィルムにおいて、上記積層フィルムが、上記バリアフィルムと上記剥離フィルムとの間に支持体フィルムを有さず、上記剥離フィルムの厚さが、上記蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上を占めていてもよい。
【0030】
上記蛍光体保護フィルムにおいて、上記バリアフィルムがバリアフィルム基材を有し、該バリアフィルム基材の厚さが9~25μmであってもよい。
【0031】
上記蛍光体保護フィルムにおいて、上記バリアフィルムは、バリアフィルム基材と、該バリアフィルム基材上に設けられた無機薄膜層とを有していてもよい。
【0032】
上記蛍光体保護フィルムにおいて、上記積層フィルムが、上記剥離フィルム側の表面に機能層を備えており、上記機能層が、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を発揮する層であってもよい。
【0033】
本開示はまた、支持体フィルムを含む本体部と、上記本体部の一方の面上に設けられた、上記本体部から剥離可能な剥離フィルムと、を備え、上記剥離フィルムの厚さが、蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上を占める、蛍光体保護フィルムを提供する。上記蛍光体保護フィルムによれば、剥離可能な剥離フィルムを備えることで、蛍光体保護フィルムにシワが発生することを十分に抑制できる。この剥離フィルムは波長変換シートの製造時に剥離することで、得られる波長変換シートには残らないため、シワを改善するのに十分な厚さを確保することができる。特に、剥離フィルムの厚さが蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上であることで、蛍光体保護フィルムにシワが発生することを抑制する効果を十分に得ることができる。そして、上記蛍光体保護フィルムを用いて得られる波長変換シートは、十分に薄膜化することができる。
【0034】
本開示はまた、上記本開示の蛍光体保護フィルムを2枚有し、この2枚の蛍光体保護フィルムの間に蛍光体を含む蛍光体層を挟んで構成されており、2枚の上記蛍光体保護フィルムはいずれも、上記剥離フィルムが最外層となるように配置されている、剥離フィルム付き波長変換シートを提供する。
【0035】
本開示は更に、上記本開示の剥離フィルム付き波長変換シートから上記剥離フィルムを剥離してなる、波長変換シートを提供する。上記波長変換シートは、上記本開示の蛍光体保護フィルム及びそれを用いた剥離フィルム付き波長変換シートを用いて得られるため、十分な薄膜化を実現しつつ、シワの発生が十分に抑制されたものとなる。
【発明の効果】
【0036】
本開示によれば、波長変換シートの薄膜化が可能でありながら、蛍光体保護フィルムにシワが発生することを抑制でき、このシワに起因した蛍光体の発光ムラを抑制できる波長変換シートの製造方法、蛍光体保護フィルム、剥離フィルム付き波長変換シート、及び、波長変換シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本開示に係る蛍光体保護フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図2】本開示に係る蛍光体保護フィルムの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図3】本開示に係る剥離フィルム付き波長変換シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図4】本開示に係る剥離フィルム付き波長変換シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図5】本開示に係る波長変換シートの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図6】本開示に係る波長変換シートの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【
図7】本開示に係る発光ユニットの一実施形態を示す模式断面図である。
【
図8】本開示に係る蛍光体保護フィルムの他の一実施形態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、場合により図面を参照しつつ本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0039】
<蛍光体保護フィルム及びその製造方法>
本実施形態に係る蛍光体保護フィルムは、バリアフィルムを有する積層フィルムと、積層フィルムの一方の面上に設けられた、積層フィルムから剥離可能な剥離フィルムと、を備える。ここで、上記積層フィルムは、上記剥離フィルム側の表面に機能層を備えていてもよい。剥離フィルムは、粘着剤層を介して積層フィルムと貼り合わされていてもよい。バリアフィルムは、バリアフィルム基材上に無機薄膜層が形成された構造を有していてもよく、無機薄膜層上に更にガスバリア性被覆層が形成された構造を有していてもよい。
【0040】
図1は、蛍光体保護フィルムの一実施形態を示す模式断面図である。
図1に示すように、蛍光体保護フィルム100は、バリアフィルム10及び機能層40からなる積層フィルム50と、剥離フィルム70とが、粘着剤層60を介して貼り合わされた構造を有する。蛍光体保護フィルム100において積層フィルム50は、バリアフィルム10と剥離フィルム70との間に、機能層40のみを有し支持体フィルム(樹脂フィルム)を有さないものである。
【0041】
蛍光体保護フィルム100においてバリアフィルム10は、バリアフィルム基材11上に無機薄膜層12及びガスバリア性被覆層13が順次積層された構造を有する。
【0042】
また、蛍光体保護フィルム100において剥離フィルム70は、単層構造の樹脂フィルムで構成されている。なお、剥離フィルム70は、複数の樹脂フィルムを積層した多層構造のフィルムであってもよい。
【0043】
蛍光体保護フィルム100において機能層40は、バリアフィルム10に塗料を塗布することで、あるいはバリアフィルム10に蒸着膜を積層することで、形成することができる。塗料による塗布膜あるいは蒸着膜からなる機能層40によって、光学的あるいは機械的な機能を付与することができる。
【0044】
蛍光体保護フィルム100において剥離フィルム70は、その厚さが、蛍光体保護フィルム100の厚さ(総厚)の50%以上を占めることが好ましい。蛍光体保護フィルム100の総厚に占める剥離フィルム70の厚さの割合が50%以上であると、剥離フィルム70の影響が支配的になり、蛍光体保護フィルム100のシワの発生をより十分に防止することができる。蛍光体保護フィルム100の総厚に占める剥離フィルム70の厚さの割合は、蛍光体保護フィルム100のシワ改善効果をより十分に得る観点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。一方、剥離フィルム70の厚さの割合は、蛍光体保護フィルム100のシワ改善効果をより十分に得ると共に、蛍光体保護フィルム100の総厚が過剰に厚くなることを抑制する観点から、90%以下であることが好ましく、86%以下であることがより好ましい。なお、蛍光体保護フィルム100の厚さ(総厚)は50~300μmであってもよい。
【0045】
図2は、蛍光体保護フィルムの他の一実施形態を示す模式断面図である。
図2に示すように、蛍光体保護フィルム110は、バリアフィルム10、接着剤層20、支持体フィルム30及び機能層40からなる積層フィルム50と、剥離フィルム70とが、粘着剤層60を介して貼り合わされた構造を有する。蛍光体保護フィルム110は、積層フィルム50がバリアフィルム10と機能層40との間に、接着剤層20を介してバリアフィルム10と貼り合わされた支持体フィルム(樹脂フィルム)30を有する点で、蛍光体保護フィルム100とは層構成が異なる。
【0046】
蛍光体保護フィルム110において機能層40は、支持体フィルム30に塗料を塗布することで、あるいは支持体フィルム30に蒸着膜を積層することで、形成することができる。
【0047】
蛍光体保護フィルム110においては、支持体フィルム30と剥離フィルム70との合計の厚さが、蛍光体保護フィルム110の厚さ(総厚)の60%以上を占めることが好ましい。蛍光体保護フィルム110の総厚に占める支持体フィルム30及び剥離フィルム70の合計の厚さの割合が60%以上であると、シワの発生をより十分に防止することができる。蛍光体保護フィルム110の総厚に占める支持体フィルム30及び剥離フィルム70の合計の厚さの割合は、蛍光体保護フィルム110のシワ改善効果をより十分に得る観点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましい。一方、蛍光体保護フィルム110の総厚に占める支持体フィルム30及び剥離フィルム70の合計の厚さの割合は、蛍光体保護フィルム110のシワ改善効果をより十分に得ると共に、蛍光体保護フィルム110の総厚が過剰に厚くなることを抑制する観点から、90%以下であることが好ましく、86%以下であることがより好ましい。なお、蛍光体保護フィルム110の厚さ(総厚)は50~300μmであってもよい。
【0048】
以下、蛍光体保護フィルム100,110を構成する各層について詳細に説明する。
【0049】
バリアフィルム基材11としては、特に限定されるものではないが、全光線透過率が85%以上の基材が望ましい。例えば透明性が高く、耐熱性に優れた基材として、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどを用いることができる。その厚さは例えば9~50μmであり、好ましくは12~30μmであり、より好ましくは12~25μmである。バリアフィルム基材11の厚さが9μm以上であれば、バリアフィルム基材11の強度を十分に確保することができ、他方、50μm以下であれば、長いロールを効率的且つ経済的に製造することができる。
【0050】
次に、無機薄膜層12としては、特に限定されるものではないが、例えば、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウムあるいはそれらの混合物を用いることができる。これらの中でも、バリア性、生産性の観点から、酸化アルミニウム又は酸化珪素を用いることが望ましい。
【0051】
次に、無機薄膜層12の厚さ(膜厚)は5~500nmの範囲内とすることが好ましく、10~100nmの範囲内とすることがより好ましい。膜厚が5nm以上であると、均一な膜を形成しやすく、ガスバリア材としての機能をより十分に果たすことができる傾向がある。一方、膜厚が500nm以下であると、薄膜により十分なフレキシビリティを保持させることができ、成膜後に折り曲げ、引っ張りなどの外的要因により、薄膜に亀裂を生じることをより確実に防ぐことができる傾向がある。
【0052】
ガスバリア性被覆層13は後工程での二次的な各種損傷を防止するとともに、高いバリア性を付与するために設けられるものである。このガスバリア性被覆層13は、優れたバリア性を得る観点から、水酸基含有高分子化合物、金属アルコキシド、金属アルコキシド加水分解物及び金属アルコキシド重合物からなる群より選択される少なくとも1種を成分として含有していることが好ましい。また、ガスバリア性被覆層13は、シランカップリング剤を更に含有していてもよい。
【0053】
水酸基含有高分子化合物としては、具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、デンプン等の水溶性高分子が挙げられるが、特にポリビニルアルコールを用いた場合にバリア性が最も優れる。
【0054】
金属アルコキシドは、一般式:M(OR)n(MはSi、Ti、Al、Zr等の金属原子を示し、Rは-CH3、-C2H5等のアルキル基を示し、nはMの価数に対応した整数を示す)で表される化合物である。具体的には、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O-iso-C3H7)3〕などが挙げられる。テトラエトキシシラン、トリイソプロポキシアルミニウムは、加水分解後、水系の溶媒中において比較的安定であるので好ましい。また、金属アルコキシドの加水分解物及び重合物としては、例えば、テトラエトキシシランの加水分解物や重合物としてケイ酸(Si(OH)4)などが、トリプロポキシアルミニウムの加水分解物や重合物として水酸化アルミニウム(Al(OH)3)などが挙げられる。また、シランカップリング剤としては、一般式:R1Si(OR2)n(R1:有機官能基、R2:CH3,C2H5等のアルキル基)で表せる化合物が挙げられる。具体的には、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等のシランカップリング剤等が挙げられる。更に、ガスバリア性被覆層13には、そのガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、あるいは、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて加えることも可能である。
【0055】
ガスバリア性被覆層13の厚さ(膜厚)は50~1000nmの範囲内とすることが好ましく、100~500nmの範囲内とすることがより好ましい。膜厚が50nm以上であると、より十分なガスバリア性を得ることができる傾向があり、1000nm以下であると、薄膜により、十分なフレキシビリティを保持できる傾向がある。
【0056】
支持体フィルム30としては、特に限定されるものではないが、全光線透過率が85%以上の樹脂フィルムが望ましい。例えば透明性が高く、耐熱性に優れた樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルムなどを用いることができる。
【0057】
支持体フィルム30の厚さは、蛍光体保護フィルム110の総厚に占める支持体フィルム30及び剥離フィルム70の合計の厚さの割合が60%以上となるように、バリアフィルム10の厚さや接着剤層20の厚さ、剥離フィルム70の厚さ等を考慮して決定することが好ましい。支持体フィルム30の厚さは、例えば12~150μmであり、好ましくは25~120μmであり、より好ましくは35~100μmである。支持体フィルム30及び剥離フィルム70の合計の厚さが蛍光体保護フィルム110の総厚の60%以上を占めることにより、蛍光体保護フィルム110のシワを改善する効果を得るための強度を十分に確保することができ、支持体フィルム30の厚さが150μm以下であることにより、蛍光体保護フィルム110の総厚が過剰に厚くなることを抑制しやすい。また、波長変換シートの薄膜化の観点から、支持体フィルム30の厚さは、剥離フィルム70の厚さ以下であることが好ましく、剥離フィルム70の厚さの2/3以下であることがより好ましい。
【0058】
機能層40としては、例えば、バインダー樹脂と、微粒子とを含んで構成された塗布膜を使用することができる。そして、機能層40の表面から微粒子の一部が露出するように微粒子がバインダー樹脂に埋め込まれることにより、機能層40の表面には微細な凹凸が生じていてもよい。このように機能層40を積層フィルム50の表面、すなわち、波長変換シートの表面に設けることにより、ニュートンリング等の干渉縞の発生をより十分に防止することができる。また、入射光を散乱して光拡散機能を発揮し、併せて、反射防止機能を発揮することもできる。
【0059】
バインダー樹脂としては、特に限定されるものではないが、光学的透明性に優れた樹脂を用いることができる。より具体的には、例えば、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂などの熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂などを用いることができる。これらの中でも耐光性や光学特性に優れるアクリル系樹脂を使用することが望ましい。これらは、一種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。また、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂などを用いることにより、傷付き防止機能を発揮することが可能である。
【0060】
微粒子としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、アルミナなどの無機微粒子の他、スチレン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂などの有機微粒子を用いることができる。これらは、一種だけでなく、複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0061】
微粒子の平均粒径は、0.1~30μmであることが好ましく、0.5~10μmであることがより好ましい。微粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、優れた干渉縞防止機能が得られる傾向があり、30μm以下であると、透明性がより向上する傾向がある。機能層40における微粒子の含有量は、機能層40全量を基準として0.5~30質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。微粒子の含有量が0.5質量%以上であると、光拡散機能と干渉縞の発生を防止する効果がより向上する傾向があり、30質量%以下であると、輝度の低減を十分に抑制できる傾向がある。
【0062】
機能層40の厚さは、0.1~20μmであることが好ましく、0.3~10μmであることがより好ましい。機能層40の厚さが0.1μm以上であることにより、均一な膜が得られやすく、干渉縞防止機能、反射防止機能、光拡散機能、帯電防止機能及び傷付き防止機能からなる群より選択される少なくとも1種の機能を十分に得やすくなる傾向がある。一方、機能層40の厚さが20μm以下であることにより、機能層40に微粒子を用いた場合、機能層40の表面へ微粒子が露出して、凹凸付与効果が得られやすくなる傾向がある。
【0063】
次に、接着剤層20を構成する接着剤又は粘着剤としては、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤等が挙げられる。接着剤はエポキシ樹脂を含むことが好ましい。接着剤がエポキシ樹脂を含むことにより、バリアフィルム10と支持体フィルム30との密着性を向上させることができる。粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、でんぷん糊系粘着剤等が挙げられる。接着剤層20の厚さは、0.5~50μmであることが好ましく、1~20μmであることがより好ましく、2~6μmであることが更に好ましい。接着剤層20の厚さが0.5μm以上であることにより、バリアフィルム10と支持体フィルム30との密着性が得られやすくなり、50μm以下であることにより、より優れたガスバリア性が得られやすくなる。
【0064】
なお、接着剤層20の酸素透過度は、厚さ5μmにおいて、厚さ方向に、例えば1000cm3/(m2・day・atm)以下である。上記酸素透過度は500cm3/(m2・day・atm)以下であることが好ましく、100cm3/(m2・day・atm)以下であることがより好ましく、50cm3/(m2・day・atm)以下であることが更に好ましく、10cm3/(m2・day・atm)以下であることが特に好ましい。接着剤層20の酸素透過度が1000cm3/(m2・day・atm)以下であることにより、無機薄膜層12やガスバリア性被覆層13が欠陥を有していたとしても、ダークスポットを抑制することが可能な蛍光体保護フィルム110を得ることができる。上記酸素透過度の下限値は特に制限されないが、例えば、0.1cm3/(m2・day・atm)である。
【0065】
剥離フィルム70は、バリアフィルム10の製造過程で生じたシワを伸ばすことができ、且つ、更なるシワの発生を抑制するのに十分な弾性率を有する樹脂フィルムであることが好ましい。このような観点から、剥離フィルム70としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム等を用いることができる。これらの中でも、シワの発生をより十分に抑制できることから、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。剥離フィルム70は、単層構造の樹脂フィルムで構成されていてもよく、複数の樹脂フィルムを積層した多層構造の樹脂フィルムで構成されていてもよい。また、剥離フィルム70は、積層フィルム50を傷等の損傷から保護する保護機能も有している。そのため、蛍光体保護フィルム100,110の使用時や波長変換シートの製造時において、積層フィルム50が損傷することを剥離フィルム70により防ぐことができる。
【0066】
剥離フィルム70は、着色されたものであってもよい。この場合、剥離フィルム70の視認性を高めることができ、波長変換シートを製造する際に剥離しやすくすることができると共に、剥がし忘れを防止することができる。剥離フィルム70は最終的に剥離除去されるものであり、透明である必要がないため、着色可能であるという利点がある。また、同様の観点から、剥離フィルム70は、不透明又は半透明なものであってもよく、印字されていたり、図柄や模様が描かれたものであってもよい。
【0067】
剥離フィルム70の厚さは、蛍光体保護フィルム100においては、その総厚に占める剥離フィルム70単独での厚さの割合が50%以上となるように調整されることが好ましい。蛍光体保護フィルム100における剥離フィルム70の厚さは、例えば25~250μmであり、好ましくは50~230μmであり、より好ましくは60~200μmであり、更に好ましくは75~180μmである。剥離フィルム70の厚さが蛍光体保護フィルム100の総厚の50%以上を占めることにより、蛍光体保護フィルム100のシワを改善する効果を得るための強度を十分に確保することができ、剥離フィルム70の厚さが250μm以下であることにより、蛍光体保護フィルム100の総厚が過剰に厚くなることを抑制しやすい。
【0068】
剥離フィルム70の厚さは、蛍光体保護フィルム110においては、その総厚に占める支持体フィルム30及び剥離フィルム70の合計の厚さの割合が60%以上となるように調整されることが好ましい。蛍光体保護フィルム110における剥離フィルム70の厚さは、例えば25~250μmであり、好ましくは30~230μmであり、より好ましくは40~200μmであり、更に好ましくは50~180μmである。支持体フィルム30及び剥離フィルム70の合計の厚さが蛍光体保護フィルム110の総厚の60%以上を占めることにより、蛍光体保護フィルム110のシワを改善する効果を得るための強度を十分に確保することができ、剥離フィルム70の厚さが250μm以下であることにより、蛍光体保護フィルム110の総厚が過剰に厚くなることを抑制しやすい。
【0069】
剥離フィルム70の引張弾性率は、290MPa以上であることが好ましく、290~380MPaであることがより好ましい。引張弾性率が290MPa以上であることで、蛍光体保護フィルム100,110のシワを改善する効果をより十分に得ることができる。本明細書において、剥離フィルム70の引張弾性率は、剥離フィルム70を幅15mm、長さ100mmのサイズに打抜き、得られた試験片を用いて測定する。測定機器は、オートグラフAG-X(株式会社島津製作所製)を使用し、引張り速度300mm/min、温度25℃、湿度40%RHの条件下で測定する。
【0070】
剥離フィルム70は、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤及び滑り剤等の添加剤を含んでいてもよい。また、剥離フィルム70の少なくとも一方の表面は、コロナ処理、フレーム処理及びプラズマ処理等が施されていてもよい。
【0071】
粘着剤層60は、剥離フィルム70を積層フィルム50に貼り付けた状態で保持するために設けられる。積層フィルム50から剥離フィルム70を剥離する際には、粘着剤層60も剥離フィルム70と共に剥離される。なお、剥離フィルム70が自己粘着性を有するフィルムであるなど、粘着剤層60を介さずに積層フィルム50と密着可能なものである場合には、粘着剤層60は不要である。粘着剤層60を構成する粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤、でんぷん糊系粘着剤等が挙げられる。
【0072】
粘着剤層60の厚さは、0.5~20μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましく、1~5μmであることが更に好ましい。粘着剤層60の厚さが0.5μm以上であることにより、剥離フィルム70と積層フィルム50との密着性が得られやすくなり、20μm以下であることにより、蛍光体保護フィルム100,110のシワ改善効果が得られやすくなると共に、剥離フィルム70と共に粘着剤層60を積層フィルム50から剥離する際に粘着剤層60が積層フィルム50上に残存することを抑制しやすくなる。
【0073】
粘着剤層60と剥離フィルム70との間の接着力は、粘着剤層60と積層フィルム50との間の接着力よりも大きいことが好ましい。これにより、剥離フィルム70と共に粘着剤層60を積層フィルム50から剥離しやすくすることができる。粘着剤層60と剥離フィルム70との間の接着力を粘着剤層60と積層フィルム50との間の接着力よりも大きくする方法としては、剥離フィルム70の粘着剤塗布面にコロナ処理を施すこと等が挙げられる。
【0074】
本明細書において、剥離フィルム70が積層フィルム50から剥離可能であるとは、積層フィルム50を損傷することなく、剥離フィルム70を、粘着剤層60が存在する場合には当該粘着剤層60と共に、積層フィルム50から剥離可能であることを意味する。粘着剤層付き剥離フィルムを積層フィルム50から容易に剥離できるようにする観点から、粘着剤層付き剥離フィルムと積層フィルム50との間(本実施形態においては粘着剤層60と機能層40との間)の接着力は、1.0N/25mm以下であることが好ましく、0.7N/25mm以下であることがより好ましい。この接着力は、シワをより改善しやすくする観点から、0.05N/25mm以上であることが好ましく、0.1N/25mm以上であることがより好ましい。この接着力は、以下の方法で測定された値である。すなわち、蛍光体保護フィルムを所定のサイズ(例えば25mm×100mm)に切り出した試験サンプルにおいて、粘着剤層付き剥離フィルムと積層フィルム50とを剥離するのに要する剥離力を、オートグラフAG-X(株式会社島津製作所製)により測定する。測定条件は、T型剥離、引張速度300mm/min、25℃、40%RH雰囲気下とする。
【0075】
この蛍光体保護フィルム100,110は、ロール・to・ロール方式によって、次のような工程を経て製造することができる。すなわち、まず、バリアフィルム基材11のロールを用意し、このロールからバリアフィルム基材11を巻き出して走行させながら、その上に無機薄膜層12又はこれとガスバリア性被覆層13を順次積層して長尺状のバリアフィルム10を製造して巻取る。次に、支持体フィルム30を積層する場合には、このバリアフィルム10を巻き出して走行させながら、そのガスバリア性被覆層13上に接着剤を塗布して接着剤層20を形成し、この接着剤層20に支持体フィルム30を重ねて圧着することにより、支持体フィルム付きバリアフィルムを得ることができる。その後、バリアフィルム10のバリアフィルム基材11上、又は、支持体フィルム付きバリアフィルムの支持体フィルム30上に機能層40を形成し、積層フィルム50を得ることができる。
【0076】
次に、剥離フィルム70を巻き出して走行させながら、その上に粘着剤を塗布して粘着剤層60を形成し、この粘着剤層60に対して、ロール状に巻取った積層フィルム50を重ねて圧着することにより、蛍光体保護フィルム100,110を得ることができる。
【0077】
バリアフィルム基材11上に無機薄膜層12を形成するにあたり、その両者の密着性を高めるため、両者の間にアンカーコート層を設けてもよい。アンカーコート層として、水分や酸素の透過を防止するバリア性を有するものを採用してもよい。アンカーコート層は、例えば、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、オキサゾリン基含有樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコーン樹脂またはアルキルチタネート等から選択された樹脂を用いて形成することができる。アンカーコート層は、上述した樹脂を単独で用いて、または上述した樹脂を二種類以上組み合わせた複合樹脂を用いて、形成することができる。なお、無機薄膜層12を形成する方法としては、いわゆる気相堆積法を採用することができる。気相堆積法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。なお、この無機薄膜層12を形成する工程において、バリアフィルム基材11には張力が働き、また、熱がかかることもある。そして、この張力や熱に起因して、バリアフィルム基材11にシワが発生することがある。
【0078】
次に、ガスバリア性被覆層13は、例えば、金属アルコキシド、金属アルコキシド加水分解物及び金属アルコキシド重合物からなる群より選択される少なくとも1種の成分と、水酸基含有高分子化合物と、必要に応じてシランカップリング剤とを含む水溶液あるいは水/アルコール混合溶液を無機薄膜層12の表面上に塗布し、例えば80~250℃で加熱乾燥することで形成することができる。このガスバリア性被覆層13形成工程においても、バリアフィルム基材11には張力が働く。そして、この張力や加熱乾燥がバリアフィルム基材11のシワの原因となることもある。
【0079】
ガスバリア性被覆層13形成工程における加熱乾燥時の温度は、210℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましい。この温度を210℃以下とすることで、シワ係数αの値をより小さくすることができる。一方、上記加熱乾燥時の温度は、120℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましい。この温度を120℃以上とすることで、水蒸気バリア性をより向上することができる。
【0080】
次に、支持体フィルム30を積層する場合、バリアフィルム10と支持体フィルム30との接着は、ラミネート装置を使用して、ロール・to・ロール方式で行うことができる。すなわち、支持体フィルム30をそのロールから巻き出し、接着剤塗工装置によりこの支持体フィルム30上に接着剤(又は粘着剤)を塗布して接着剤層20を形成する。次に、接着剤層20を形成した支持体フィルム30をガイドロールによりオーブン内に導き、接着剤層20を乾燥する。オーブン内の温度は、複数のユニットを用いて段階的に温度を変えることができ、各々25~200℃とすることができる。乾燥後、支持体フィルム30をガイドロールによって導いてニップロールに搬送する。一方、バリアフィルム10をそのロールから巻き出してニップロールに搬送し、ニップロールで支持体フィルム30の接着剤が塗工された面に圧着して貼り合わせる。ニップロール間のラミネート圧力は、例えば0.05~0.2MPaとすることができる。その後、得られた支持体フィルム付きバリアフィルムをロール状に巻き取る。この方法によれば、バリアフィルム10に対して支持体フィルム30をラミネートすることにより、熱シワを低減することができる。
【0081】
支持体フィルム30とバリアフィルム10とを接着剤層20を介して貼り合わせる工程において、支持体フィルム30とバリアフィルム10とをニップロールで圧着する際に、シワが解消された状態のバリアフィルム10が支持体フィルム30に保持されるため、シワを低減することができる。
【0082】
次に、機能層40は、例えば、バインダー樹脂及び微粒子を含む塗布液を、バリアフィルム基材11、又は、支持体フィルム30の表面上に塗布し、乾燥硬化させることで形成することができる。塗布方法としては、グラビアコーター、ディップコーター、リバースコーター、ワイヤーバーコーター、及びダイコーター等による塗布方法が挙げられる。機能層40は、上述したように、バリアフィルム10と支持体フィルム30とを貼り合わせる前に、予め支持体フィルム30上に形成してもよい。
【0083】
次に、剥離フィルム70と積層フィルム50との貼り合わせは、ラミネート装置を使用して、ロール・to・ロール方式で行うことができる。すなわち、剥離フィルム70をそのロールから巻き出し、粘着剤塗工装置によりこの剥離フィルム70上に粘着剤を塗布して粘着剤層60を形成する。次に、粘着剤層60を形成した積層フィルム50をガイドロールによりオーブン内に導き、粘着剤層60を乾燥する。オーブン内の温度は、複数のユニットを用いて段階的に温度を変えることができ、各々25~200℃とすることができる。乾燥後、剥離フィルム70をガイドロールによって導いてニップロールに搬送する。一方、積層フィルム50をそのロールから巻き出してニップロールに搬送し、ニップロールで剥離フィルム70の粘着剤が塗工された面に圧着して貼り合わせる。ニップロール間のラミネート圧力は、例えば0.05~0.5MPaとすることができる。その後、得られた蛍光体保護フィルム100,110をロール状に巻き取る。この方法によれば、積層フィルム50に対して剥離フィルム70をラミネートすることにより、熱シワが十分に低減された蛍光体保護フィルム100,110を得ることができる。
【0084】
剥離フィルム70と積層フィルム50とを粘着剤層60を介して貼り合わせる工程において、剥離フィルム70と積層フィルム50とをニップロールで圧着する際に、シワが解消された状態の積層フィルム50が剥離フィルム70に保持されるため、シワを低減することができる。このシワを低減する効果は、剥離フィルム70の厚さ、又は、剥離フィルム70及び支持体フィルム30の合計の厚さが、それぞれ蛍光体保護フィルム100の総厚、又は、蛍光体保護フィルム110の総厚の60%以上であることにより、より十分に得ることができる。
【0085】
本実施形態に係る蛍光体保護フィルムは、支持体フィルムを含む本体部と、上記本体部の一方の面上に設けられた、上記本体部から剥離可能な剥離フィルムと、を備えるものであってもよい。ここで、上記本体部は、上記剥離フィルム側の表面に機能層を備えていてもよい。剥離フィルムは、粘着剤層を介して本体部と貼り合わされていてもよい。本体部は、蛍光体層との密着性を向上させるためのプライマー層を備えていてもよい。本実施形態において、上記本体部は、バリアフィルムを有していなくてよい。かかる構成の蛍光体保護フィルムでは、上記剥離フィルムの厚さが、蛍光体保護フィルムの総厚の50%以上とされる。かかる構成の蛍光体保護フィルムは、蛍光体層自体が高い耐久性を有する場合に有用であり、バリアフィルムを必要としないことから、より一層の薄膜化が可能である。
【0086】
図8は、蛍光体保護フィルムの他の一実施形態を示す模式断面図である。に示すように、蛍光体保護フィルム120は、支持体フィルム30、機能層40及びプライマー層80からなる本体部55と、剥離フィルム70とが、粘着剤層60を介して貼り合わされた構造を有する。
【0087】
蛍光体保護フィルム120における支持体フィルム30、機能層40及び剥離フィルム70としては、蛍光体保護フィルム100,110における支持体フィルム30、機能層40及び剥離フィルム70と同様のものを使用することができる。
【0088】
蛍光体保護フィルム120において、支持体フィルム30の厚さは、好ましくは12~50μmであり、より好ましくは12~25μmであり、更に好ましくは12~15μmである。支持体フィルム30の厚さが50μm以下であることにより、波長変換シートのより一層の薄膜化を実現することができる。また、支持体フィルム30の厚さが12μm以上であることにより、支持体フィルム30の強度を十分に確保することができる。
【0089】
蛍光体保護フィルム120において、剥離フィルム70の厚さは、蛍光体保護フィルム120の総厚に占める剥離フィルム70の厚さの割合が50%以上となるように、蛍光体保護フィルム120を構成する各層の厚さを考慮して決定することが好ましい。剥離フィルム70の厚さは、例えば25~150μmであり、好ましくは50~150μmであり、更に好ましくは75~150μmである。剥離フィルム70の厚さが蛍光体保護フィルム120の総厚の50%以上を占めることにより、蛍光体保護フィルム120のシワを改善する効果を得るための強度を十分に確保することができ、剥離フィルム70の厚さが150μm以下であることにより、蛍光体保護フィルム120の総厚が過剰に厚くなることを抑制しやすい。
【0090】
蛍光体保護フィルム120において、剥離フィルム70の厚さは、蛍光体保護フィルム120の厚さ(総厚)の60%以上を占めることが好ましい。蛍光体保護フィルム120の総厚に占める剥離フィルム70の厚さの割合が60%以上であると、シワの発生をより十分に防止することができる。蛍光体保護フィルム120の総厚に占める剥離フィルム70の厚さの割合は、蛍光体保護フィルム120のシワ改善効果をより十分に得る観点から、70%以上であることがより好ましい。一方、蛍光体保護フィルム120の総厚に占める剥離フィルム70の厚さの割合は、蛍光体保護フィルム120のシワ改善効果をより十分に得ると共に、蛍光体保護フィルム120の総厚が過剰に厚くなることを抑制する観点から、90%以下であることが好ましく、86%以下であることがより好ましい。なお、蛍光体保護フィルム120の厚さ(総厚)は40~170μmであってもよい。
【0091】
プライマー層80は、本体部55と蛍光体層との密着性を向上させるための層であり、例えば、シランカップリング剤を含有するプライマー層形成用組成物を用いて形成することができる。プライマー層80の厚さは、例えば0.001~1μmである。
【0092】
蛍光体保護フィルム120は、積層フィルム50を本体部55に置き換えた以外は、蛍光体保護フィルム100,110を製造する場合と同様の方法で製造することができる。
【0093】
蛍光体保護フィルム100,110,120において、積層フィルム50又は本体部55の総厚のばらつき(3σ)が1.5μm以上であり、且つ、機能層40表面の動摩擦係数が0.4以下であってもよい。機能層を含む積層フィルム50又は本体部55の総厚のばらつき(3σ)を1.5μm以上とし、且つ、機能層40表面の動摩擦係数を0.4以下とすることで、波長変換シートがディスプレイに組み込まれた際に、波長変換シートと接する導光板への傷つけを防止することができる。積層フィルム50又は本体部55の総厚のばらつき(3σ)は、導光板への傷つけを防止する効果をより十分に得る観点から、1.7μm以上、又は、2.0μm以上であってもよい。
【0094】
また、蛍光体保護フィルム100,110,120の総厚のばらつき(3σ)は、1.0μm以下であってもよい。蛍光体保護フィルム100,110,120の総厚のばらつき(3σ)が1.0μm以下であることで、蛍光体層の厚さのばらつきが低減された波長変換シートを製造することができる。これにより、蛍光体層の厚さのばらつきに起因した発色ムラの発生を抑制することができる。かかる効果をより十分に得る観点から、蛍光体保護フィルム100,110,120の総厚のばらつき(3σ)は、0.8μm以下、又は、0.5μm以下であってもよい。
【0095】
積層フィルム50又は本体部55の総厚のばらつき(3σ)、及び、蛍光体保護フィルム100,110,120の総厚のばらつき(3σ)は、例えば、接触式膜厚計を用いて測定することができる。また、機能層40表面の動摩擦係数は、例えば、オートグラフAG-X(株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。
【0096】
蛍光体保護フィルム100,110,120において、積層フィルム50又は本体部55と、剥離フィルム70との間の、JIS K6854-3に基づく剥離強度は、0.05~1.5N/25mmであってもよく、0.05~1.0N/25mmであってもよい。上記剥離強度が上記範囲内であることで、剥離フィルム70の存在によって蛍光体保護フィルム100,110,120にシワが発生することをより十分に抑制できると共に、剥離工程において積層フィルム50又は本体部55から剥離フィルム70をスムーズに剥離することができる。また、剥離フィルム70は、粘着剤層60を介して積層フィルム50又は本体部55に貼り付けられるが、上記剥離強度が0.05N/25mm以上であることで、剥離工程後に粘着剤層60の一部が積層フィルム50又は本体部55に残存することを抑制することができる。また、上記剥離強度が1.0N/25mm以下であることで、剥離フィルム70を剥離する際に、粘着剤層60に接する機能層40の一部が剥離フィルム70と共に剥離することを抑制することができる。剥離強度は、機能層40に使用される樹脂や硬化剤等の種類及び配合量、並びに、粘着剤層60に使用される粘着剤の種類などを適宜調整することにより、上記範囲内に調整することができる。
【0097】
<波長変換シート及びその製造方法、並びに、発光ユニット>
蛍光体保護フィルム100,110,120は波長変換シートの部品として使用することができ、こうして製造された波長変換シートは、液晶ディスプレイのバックライトユニット及びエレクトロルミネッセンス発光ユニット等の発光ユニットの部品として使用することができる。
図3は蛍光体保護フィルム100を用いた剥離フィルム付き波長変換シート500を模式的に示す断面図であり、
図5はこの剥離フィルム付き波長変換シート500から剥離フィルム70及び粘着剤層60を剥離して得られた波長変換シート700を模式的に示す断面図である。また、
図4は蛍光体保護フィルム110を用いた剥離フィルム付き波長変換シート600を模式的に示す断面図であり、
図6はこの剥離フィルム付き波長変換シート600から剥離フィルム70及び粘着剤層60を剥離して得られた波長変換シート800を模式的に示す断面図である。更に、
図7は発光ユニットの具体例を模式的に示す断面図である。また、剥離フィルム付き波長変換シート及び波長変換シートは、蛍光体保護フィルム120を用いて形成されたものであってもよい。
【0098】
図3に示すように、剥離フィルム付き波長変換シート500は、蛍光体層200と、蛍光体層200の両面にそれぞれ設けられた蛍光体保護フィルム100,100とを備える。こうして、剥離フィルム付き波長変換シート500は、一対の蛍光体保護フィルム100,100の間に蛍光体層200が包み込まれた(すなわち、封止された)構造となっている。そして、
図5に示すように、剥離フィルム付き波長変換シート500から剥離フィルム70及び粘着剤層60を剥離することで、目的の波長変換シート700を得ることができる。また、
図4に示す剥離フィルム付き波長変換シート600は、
図3に示す剥離フィルム付き波長変換シート500の蛍光体保護フィルム100を、
図2に示す蛍光体保護フィルム110に変更したものである。そして、
図6に示すように、剥離フィルム付き波長変換シート600から剥離フィルム70及び粘着剤層60を剥離することで、目的の波長変換シート800を得ることができる。このように、得られる波長変換シート700,800には剥離フィルム70及び粘着剤層60が存在しないため、シワの発生を十分に抑制しながら十分な薄膜化が実現可能となる。
【0099】
剥離フィルム付き波長変換シート500,600及び波長変換シート700,800において、蛍光体層200と積層フィルム50との間には、それらの密着性を向上させるための層(以下、「プライマー層」という)が設けられていてもよい。プライマー層の厚さは、例えば0.001~1μmである。プライマー層は、例えば、シランカップリング剤を含有するプライマー層形成用組成物を用いて形成することができる。
【0100】
蛍光体層200は、厚さ数十~数百μmの薄膜であり、
図3~
図6に示すように封止樹脂202と蛍光体201とを含む。封止樹脂202の内部には、蛍光体201が一種以上混合された状態で封止されている。封止樹脂202は、蛍光体層200と一対の蛍光体保護フィルム100,100又は一対の蛍光体保護フィルム110,110とを積層する際に、これらを接合するとともに、これらの空隙を埋める役割を果たす。蛍光体層200は、一種類の蛍光体201のみが封止された蛍光体層が二層以上積層されたものであってもよい。それら一層又は二層以上の蛍光体層に用いられる二種類以上の蛍光体201は、励起波長が同一のものが選択される。この励起波長は、光源が照射する光の波長に基づいて選択される。二種類以上の蛍光体201の蛍光色は相互に異なる。使用する蛍光体201が二種類の場合、各蛍光色は、好ましくは、赤色、緑色である。各蛍光の波長、及び光源が照射する光の波長は、カラーフィルタの分光特性に基づき選択される。蛍光のピーク波長は、例えば赤色が610nm、緑色が550nmである。
【0101】
封止樹脂202としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、及び紫外線硬化型樹脂等を使用することができる。これらの樹脂は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース及びメチルセルロース等のセルロース誘導体;酢酸ビニルとその共重合体、塩化ビニルとその共重合体、及び塩化ビニリデンとその共重合体等のビニル系樹脂;ポリビニルホルマール及びポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;アクリル樹脂とその共重合体、メタアクリル樹脂とその共重合体等のアクリル系樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアミド樹脂;線状ポリエステル樹脂;フッ素樹脂;並びに、ポリカーボネート樹脂等を用いることができる。
【0103】
熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0104】
紫外線硬化型樹脂としては、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、及びポリエステルアクリレート等の光重合性プレポリマーが挙げられる。また、これら光重合性プレポリマーを主成分とし、希釈剤として単官能や多官能のモノマーを使用することもできる。
【0105】
蛍光体201としては、量子ドットが好ましく用いられる。量子ドットとしては、例えば、発光部としてのコアが保護膜としてのシェルにより被膜されたものが挙げられる。コアとしては、例えば、セレン化カドミウム(CdSe)等が挙げられ、シェルとしては、例えば、硫化亜鉛(ZnS)等が挙げられる。CdSeの粒子の表面欠陥がバンドギャップの大きいZnSにより被覆されることで量子効率が向上する。また、蛍光体201は、コアが第1シェル及び第2シェルにより二重に被覆されたものであってもよい。この場合、コアにはCdSe、第1シェルにはセレン化亜鉛(ZnSe)、第2シェルにはZnSが使用できる。また、量子ドット以外の蛍光体201として、YAG:Ce等を用いることもできる。
【0106】
蛍光体201の平均粒子径は、好ましくは1~20nmである。蛍光体層200の厚さは、好ましくは1~500μmである。蛍光体層200における蛍光体201の含有量は、蛍光体層200全量を基準として、1~20質量%であることが好ましく、3~10質量%であることがより好ましい。
【0107】
本実施形態に係る波長変換シートは、例えば以下の方法で製造することができる。まず、第1の蛍光体保護フィルム100,110の剥離フィルム70とは反対側の表面(ガスバリア性被覆層13上又はバリアフィルム基材11上)に、封止樹脂202と蛍光体201とを含む蛍光体層形成用組成物を塗布し、加熱、紫外線照射等による硬化処理を施すことにより、蛍光体層200を形成する。蛍光体層形成用組成物を塗布したのち、第2の蛍光体保護フィルム100,110を用意し、蛍光体層形成用組成物の塗膜又は蛍光体層200の表面と第2の蛍光体保護フィルム100,110の剥離フィルム70とは反対側の表面とを接触させた状態で加圧することで、接着剤層なしに第1の蛍光体保護フィルム100,110と、蛍光体層200と、第2の蛍光体保護フィルム100,110とを積層することができる。加熱、紫外線照射等による硬化処理は第2の蛍光体保護フィルム100,110の積層前に行ってもよいし、第2の蛍光体保護フィルム100,110の積層後に行ってもよい。
【0108】
剥離フィルム付き波長変換シート500,600から剥離フィルム70及び粘着剤層60を剥離するタイミングは特に制限はないが、例えばディスプレイパネルサイズに合わせて裁断を行ったのち、後述の発光ユニットに組み込む段階で剥離してもよい。波長変換シートの製造工程や剥離フィルム付き波長変換シート500,600の裁断時においても剥離フィルム70を最表面に配置しておくことにより、製造工程における波長変換シートの損傷を防ぐことができる。
【0109】
前述のように、この波長変換シート700,800は発光ユニット900の部品として使用することができる。
【0110】
発光ユニット900は、
図7に示すように、光源330と、導光板310と、波長変換シート700とを備える。詳細には、発光ユニット900は、一方の積層フィルム50側の表面上に導光板310及び反射板320がこの順で配置され、光源330は導光板310の側方に配置される。導光板310の厚さは、例えば、100~1000μmである。
【0111】
導光板310及び反射板320は、光源330から照射された光を効率的に反射し、蛍光体層200へと導くものである。導光板310としては、例えば、アクリル、ポリカーボネート、及びシクロオレフィンフィルム等が使用される。光源330には、例えば、青色発光ダイオード素子が複数個設けられている。この発光ダイオード素子は、紫色発光ダイオード、又は更に低波長の発光ダイオードであってもよい。光源330から照射された光は、導光板310に入射した後、反射及び屈折等を伴って蛍光体層200に入射する。
【0112】
蛍光体層200を通過した光は、蛍光体層200を通過する前の光に蛍光体層200で発生した黄色光が混ざることで、白色光となる。蛍光体層200は、酸素又は水蒸気等と接触して長時間が経過することにより性能が低下することがあることから、
図7に示すように、一対の積層フィルム50,50によって保護されている。また、
図7において、波長変換シート700は、波長変換シート800に置き換えてもよく、蛍光体保護フィルム120を用いて形成された波長変換シートに置き換えてもよい。
【実施例】
【0113】
以下、実施例及び比較例に基づいて本開示をより具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。また、実施例で作製した粘着剤層付き剥離フィルムのマット層との剥離強度は、以下の方法で測定したものである。
【0114】
<粘着剤層付き剥離フィルムとマット層との剥離強度(接着力)の測定>
粘着剤層付き剥離フィルムとマット層を積層した積層フィルムとを、マット層と粘着剤層とが対向するように重ね、ヒートラミネーター(ラミネート温度40℃、搬送速度1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)で圧着した。この圧着した2枚の試験サンプルを剥離するのに要する接着力を、オートグラフAG-X(株式会社島津製作所製)により測定した。測定条件は、T型剥離、引張速度300mm/min、25℃、40%RH雰囲気下とした。
【0115】
(実施例1)
バリアフィルムを以下のようにして作製した。まず、バリアフィルム基材としてのPETフィルムの片面に、無機薄膜層として酸化珪素を真空蒸着法により設け、更に、無機薄膜層上にガスバリア性被覆層を形成した。このガスバリア性被覆層は、テトラエトキシシランとポリビニルアルコールとを質量比1:1で混合した塗液をウエットコーティング法により塗工した後、180℃で1分間加熱乾燥することによって形成した。これにより、基材の一方の面上に無機薄膜層及びガスバリア性被覆層が設けられたバリアフィルムを得た。なお、このバリアフィルムの厚さは12.5μmであり、バリアフィルム基材の厚さは12μmであり、無機薄膜層の厚さは30nmであり、ガスバリア性被覆層の厚さは0.5μmである。
【0116】
次に、上記バリアフィルムのバリアフィルム基材上に、アクリル系ポリオール樹脂(DIC社製、商品名:OPM調整ニス)100質量部、イソシアネート系硬化剤(DIC社製、商品名:OPM用硬化剤)8.5質量部、微粒子(ポリウレタン、平均粒径2μm)10質量部、溶剤(酢酸エチル)70質量部からなるマット層形成用組成物を塗布し、80℃で1分間加熱乾燥させて硬化させ、厚さ3μmのマット層を形成した。これにより、バリアフィルムとマット層とが積層された積層フィルムを得た。
【0117】
一方、剥離フィルムとしての厚さ50μmのPETフィルムの片面に、アクリル系粘着剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールMS-3999)100質量部、イソシアネート系硬化剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールK-315)5質量部、安定剤(アセチルアセトン)2質量部、及び、溶剤(酢酸エチル)221質量部からなる粘着剤層形成用組成物を塗布した後、80℃で1分間加熱乾燥することによって厚さ3.5μmの粘着剤層を形成した。これにより、粘着剤層付き剥離フィルム(マット層との剥離強度:0.50N/25mm)を得た。
【0118】
積層フィルムと粘着剤層付き剥離フィルムとを、マット層と粘着剤層とが接する向きで重ね、ヒートラミネーター(ラミネート温度40℃、搬送速度1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)で圧着して蛍光体保護フィルムを得た。得られた蛍光体保護フィルムは、バリアフィルムと剥離フィルムとの間に支持体フィルムを有しておらず、剥離フィルムの厚さが蛍光体保護フィルムの総厚の72%である。
【0119】
(実施例2~6)
バリアフィルムの厚さ、及び、剥離フィルムの厚さを、それぞれ表1に示す厚さに変更したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~6の蛍光体保護フィルムを得た。ここで、バリアフィルムの厚さを23.5μmとする場合、無機薄膜層及びガスバリア性被覆層の厚さは変更せず、バリアフィルム基材の厚さを23μmとした。
【0120】
(実施例7)
バリアフィルムを以下のようにして作製した。まず、バリアフィルム基材としてのPETフィルムの片面に、無機薄膜層として酸化珪素を真空蒸着法により設け、更に、無機薄膜層上にガスバリア性被覆層を形成した。このガスバリア性被覆層は、テトラエトキシシランとポリビニルアルコールとを質量比1:1で混合した塗液をウエットコーティング法により塗工した後、180℃で1分間加熱乾燥することによって形成した。これにより、基材の一方の面上に無機薄膜層及びガスバリア性被覆層が設けられたバリアフィルムを得た。なお、このバリアフィルムの厚さは12.5μmである。
【0121】
次に、上記バリアフィルムのガスバリア性被覆層上にアクリル系粘着剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールOC-3405)100質量部、イソシアネート系硬化剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールK-341)1質量部、及び、溶剤(トルエン)219質量部からなる接着剤層形成用組成物を塗布し、80℃で1分間加熱乾燥して接着剤層を形成した。この接着剤層上に、支持体フィルムとしての厚さ25μmのPETフィルムを重ね、ヒートラミネーター(ラミネート温度40℃、搬送速度1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)で圧着した。圧着は、ニップしてバリアフィルムのシワを伸ばした状態で行った。その後、上記支持体フィルム上に、アクリル系ポリオール樹脂(DIC社製、商品名:OPM調整ニス)100質量部、イソシアネート系硬化剤(DIC社製、商品名:OPM用硬化剤)8.5質量部、微粒子(ポリウレタン、平均粒径2μm)10質量部、溶剤(酢酸エチル)70質量部からなるマット層形成用組成物を塗布し加熱乾燥させて硬化させ、厚さ3μmのマット層を形成した。これにより、バリアフィルムと接着剤層と支持体フィルムとマット層とがこの順で積層された積層フィルムを得た。得られた積層フィルムにおいて、接着剤層の厚さは5μmであった。
【0122】
一方、剥離フィルムとしての厚さ25μmのPETフィルムの片面に、アクリル系粘着剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールMS-3999)100質量部、イソシアネート系硬化剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールK-315)5質量部、安定剤(アセチルアセトン)2質量部、及び、溶剤(酢酸エチル)221質量部からなる粘着剤層形成用組成物を塗布した後、80℃で1分間加熱乾燥することによって厚さ3.5μmの粘着剤層を形成した。これにより、粘着剤層付き剥離フィルム(マット層との剥離強度:0.50N/25mm)を得た。
【0123】
積層フィルムと粘着剤層付き剥離フィルムとを、マット層と粘着剤層とが接する向きで重ね、ヒートラミネーター(ラミネート温度40℃、搬送速度1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)で圧着して蛍光体保護フィルムを得た。得られた蛍光体保護フィルムは、バリアフィルムと剥離フィルムとの間に支持体フィルムを有しており、支持体フィルム及び剥離フィルムの合計の厚さが蛍光体保護フィルムの総厚の68%である。
【0124】
(実施例8~13)
バリアフィルムの厚さ、及び、剥離フィルムの厚さを、それぞれ表1に示す厚さに変更したこと以外は実施例7と同様にして、実施例8~13の蛍光体保護フィルムを得た。ここで、バリアフィルムの厚さを23.5μmとする場合、無機薄膜層及びガスバリア性被覆層の厚さは変更せず、バリアフィルム基材の厚さを23μmとした。
【0125】
(実施例14)
剥離フィルムとして、厚さ75μmのPENフィルムを用いたこと以外は実施例9と同様にして、蛍光体保護フィルムを得た。なお、粘着剤層付き剥離フィルムのマット層との剥離強度は0.16N/25mmであった。
【0126】
(実施例15)
剥離フィルムとして、厚さ100μmのPENフィルムを用いたこと以外は実施例10と同様にして、蛍光体保護フィルムを得た。
【0127】
(比較例1)
粘着剤層付き剥離フィルムを積層しなかったこと以外は実施例1と同様にして、比較例1の蛍光体保護フィルムを得た。
【0128】
(比較例2)
粘着剤層付き剥離フィルムを積層しなかったこと以外は実施例4と同様にして、比較例1の蛍光体保護フィルムを得た。
【0129】
(比較例3)
粘着剤層付き剥離フィルムを積層しなかったこと以外は実施例7と同様にして、比較例1の蛍光体保護フィルムを得た。
【0130】
(比較例4)
粘着剤層付き剥離フィルムを積層しなかったこと以外は実施例11と同様にして、比較例1の蛍光体保護フィルムを得た。
【0131】
<シワの程度の評価>
実施例及び比較例で得られた蛍光体保護フィルムについて、シワの有無及びその程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいてシワの程度を評価した。評価が「D」である場合、不合格である。結果を表1に示す。
A:シワの発生が観察できなかった。
B:浅く小さなシワが僅かに観察された。
C:中程度のシワが観察された。
D:深く大きなシワが観察された。
【0132】
【0133】
(実施例16)
支持体フィルムとしての厚さ12.5μmのPETフィルム上に、アクリル系ポリオール樹脂(DIC社製、商品名:OPM調整ニス)100質量部、イソシアネート系硬化剤(DIC社製、商品名:OPM用硬化剤)8.5質量部、微粒子(ポリウレタン、平均粒径2μm)10質量部、溶剤(酢酸エチル)70質量部からなるマット層形成用組成物を塗布し、80℃で1分間加熱乾燥させて硬化させ、厚さ3μmのマット層を形成した。さらにマット層と反対面の支持体フィルム上に、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(アミン系シランカップリング剤、信越化学工業株式会社製、商品名:KBE-903)を酢酸エチルを用いて固形分1.5質量%に希釈したプライマー層形成用組成物をワイヤーバー#3を用いて塗布し、120℃で1分間乾燥することによって、厚さ30nmのプライマー層を形成した。この支持体フィルム、マット層及びプライマー層を本体部とした。一方、剥離フィルムとしての厚さ25μmのPETフィルムの片面に、アクリル系粘着剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールMS-3999)100質量部、イソシアネート系硬化剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールK-315)5質量部、安定剤(アセチルアセトン)2質量部、及び、溶剤(酢酸エチル)221質量部からなる粘着剤層形成用組成物を塗布した後、80℃で1分間加熱乾燥することによって厚さ5μmの粘着剤層を形成した。これにより、粘着剤層付き剥離フィルム(支持体フィルムとの剥離強度:0.08N/25mm)を得た。
【0134】
本体部と粘着剤層付き剥離フィルムとを、支持体フィルムと粘着剤層とが接する向きで重ね、ヒートラミネーター(ラミネート温度40℃、搬送速度1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)で圧着して蛍光体保護フィルムを得た。得られた蛍光体保護フィルムにおいて、剥離フィルムの厚さは、蛍光体保護フィルムの総厚(支持体フィルム、マット層、プライマー層、粘着剤層及び剥離フィルムの合計の厚さ)の55%である。
【0135】
(実施例17~29及び比較例5~8)
支持体フィルム及び/又は剥離フィルムの厚さを、表2に示す厚さに変更したこと以外は実施例16と同様にして、実施例17~29及び比較例5~8の蛍光体保護フィルムを得た。
【0136】
<シワの程度の評価>
実施例及び比較例で得られた蛍光体保護フィルムについて、シワの有無及びその程度を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいてシワの程度を評価した。結果を表2に示す。
A:シワの発生が観察できなかった。
B:浅く小さなシワが僅かに観察された。
C:中程度のシワが観察された。
D:深く大きなシワが観察された。
【0137】
【0138】
(実施例30)
バリアフィルムを以下のようにして作製した。まず、バリアフィルム基材としてのPETフィルムの片面に、無機薄膜層として酸化珪素を真空蒸着法により設け、更に、無機薄膜層上にガスバリア性被覆層を形成した。このガスバリア性被覆層は、テトラエトキシシランとポリビニルアルコールとを質量比1:1で混合した塗液をウエットコーティング法により塗工した後、180℃で1分間加熱乾燥することによって形成した。これにより、基材の一方の面上に無機薄膜層及びガスバリア性被覆層が設けられたバリアフィルムを得た。なお、このバリアフィルムの厚さは23.5μmであり、バリアフィルム基材の厚さは23μmであり、無機薄膜層の厚さは30nmであり、ガスバリア性被覆層の厚さは0.5μmである。
【0139】
次に、上記バリアフィルムのバリアフィルム基材上に、アクリル系ポリオール樹脂(DIC社製、商品名:OPM調整ニス)100質量部、イソシアネート系硬化剤(DIC社製、商品名:OPM用硬化剤)8.5質量部、微粒子(ポリウレタン、平均粒径2μm)10質量部、溶剤(酢酸エチル)70質量部からなるマット層形成用組成物を塗布し、80℃で1分間加熱乾燥させて硬化させ、厚さ3μmのマット層を形成した。これにより、バリアフィルムとマット層とが積層された積層フィルムを得た。
【0140】
一方、剥離フィルムとしての厚さ75μmのPETフィルムの片面に、アクリル系粘着剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールMS-3999)100質量部、イソシアネート系硬化剤(サイデン化学社製、商品名:サイビノールK-315)5質量部、安定剤(アセチルアセトン)2質量部、及び、溶剤(酢酸エチル)221質量部からなる粘着剤層形成用組成物を塗布した後、80℃で1分間加熱乾燥することによって厚さ3.5μmの粘着剤層を形成した。これにより、粘着剤層付き剥離フィルム(マット層との剥離強度:0.50N/25mm)を得た。
【0141】
積層フィルムと粘着剤層付き剥離フィルムとを、マット層と粘着剤層とが接する向きで重ね、ヒートラミネーター(ラミネート温度40℃、搬送速度1m/min、ラミネート圧力0.5MPa)で圧着して蛍光体保護フィルムを得た。得られた蛍光体保護フィルムは、バリアフィルムと剥離フィルムとの間に支持体フィルムを有しておらず、剥離フィルムの厚さが蛍光体保護フィルムの総厚の71%である。
【0142】
(比較例9)
実施例30と同様の方法で積層フィルムを作製し、それを蛍光体保護フィルムとした。この蛍光体保護フィルムは、剥離フィルムを備えていないものである。
【0143】
<積層フィルム及び蛍光体保護フィルムの総厚のばらつき(3σ)の測定>
実施例30及び比較例9で得られた積層フィルム及び蛍光体保護フィルムの膜厚(総厚)を、ランダムに50点測定し、平均値、最大値、最小値及びばらつき(3σ)を求めた。膜厚の測定は、接触式膜厚計(型番:LGF-0110L-B、株式会社ミツトヨ製)を用いて行った。結果を表3に示す。
【0144】
<マット層表面の動摩擦係数の測定>
実施例30及び比較例9で得られた積層フィルムにおけるマット層表面の動摩擦係数を、以下の方法で測定した。オートグラフAG-X(株式会社島津製作所製)を用い、JIS K7125に準じて測定を実施した。結果を表3に示す。
【0145】
<蛍光体層の発光ムラの評価>
(波長変換シートの作製)
実施例30及び比較例9で得られた蛍光体保護フィルムをそれぞれ2枚用意し、以下の手順で波長変換シートを作製した。まず、一方の蛍光体保護フィルムのガスバリア性被覆層上に、コアがセレン化カドミウム(CdSe)、シェルが硫化亜鉛(ZnS)、粒子径6nmの量子ドット発光体と、主鎖あるいは側鎖の末端にアクリロイル基を有するアクリル系光硬化性樹脂(荒川化学製、商品名:AP6501)と、光重合開始剤(BASF社製、商品名:Lucirin TPO)とを含む蛍光体層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、そこに他方の蛍光体保護フィルムを、ガスバリア性被覆層を塗膜に向けて貼り合わせ、ロール同士でニップすることで圧着した。上記塗膜に対し、紫外線照射装置を用いて300mJ/cm2の露光量で露光して硬化させ、波長変換機能を有する蛍光体層(厚さ100μm)を形成した。その後、実施例30では剥離フィルムをマット層から剥離した。これにより、波長変換シートを得た。
【0146】
(発光ムラの評価)
得られた波長変換シートにおける蛍光体層の発光ムラの有無を目視にて観察し、評価した。結果を表3に示す。
【0147】
【符号の説明】
【0148】
10…バリアフィルム、11…バリアフィルム基材、12…無機薄膜層、13…ガスバリア性被覆層、20…接着剤層、30…支持体フィルム、40…機能層、50…積層フィルム、55…本体部、60…粘着剤層、70…剥離フィルム、80…プライマー層、100,110,120…蛍光体保護フィルム、200…蛍光体層、201…蛍光体、202…封止樹脂、310…導光板、320…反射板、330…光源、500,600…剥離フィルム付き波長変換シート、700,800…波長変換シート、900…発光ユニット。