(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】イムノクロマト試験片およびそれを用いた測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/543 20060101AFI20240806BHJP
G01N 33/548 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01N33/543 521
G01N33/543 581C
G01N33/548 B
(21)【出願番号】P 2020572334
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2020005780
(87)【国際公開番号】W WO2020166699
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019025496
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】岡本 淳
(72)【発明者】
【氏名】松尾 美穂
(72)【発明者】
【氏名】米田 圭三
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/094825(WO,A1)
【文献】特開2008-164403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
G01N 33/548
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料中に含まれる測定対象物質を定量するためのイムノクロマト試験片であって、前記イムノクロマト試験片は、サンプルパッド、コンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドが順に連接配置された構成を有し、前記メンブレンは、抗原抗体反応により発色するテストラインおよびコントロールラインを具備し、前記コントロールラインは、前記テストラインより上流に位置し、かつ前記テストラインに捕捉される検出粒子Aの平均粒子径と前記コントロールラインに捕捉される検出粒子Bの平均粒子径の比が3:1~100:1であ
り、前記検出粒子Aはセルロース粒子またはラテックス粒子であり、前記検出粒子Bは金微粒子であり、かつ検出粒子Aと検出粒子Bは同一色である、イムノクロマト試験片。
【請求項2】
前記検出粒子Aが赤色のセルロー
ス粒子であり、前記検出粒子Bが赤色の球状金微粒子である、請求項
1に記載のイムノクロマト試験片。
【請求項3】
前記検出粒子Aが青色のセルロー
ス粒子であり、前記検出粒子Bが青色のプレート状金微粒子である、請求項
1に記載のイムノクロマト試験片。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載のイムノクロマト試験片を用い、下記(i)から(iii)の工程を順に経て、測定試料中に含まれる測定対象物質を定量する方法。
工程(i):測定試料と希釈液とを混合する工程
工程(ii):工程(i)の混合液を、サンプルパッドに点着させる工程
工程(iii):テストラインおよびコントロールラインの発色強度から測定対象物質を定量する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イムノクロマト法により測定試料中に含まれる測定対象物質を迅速に測定するためのイムノクロマト試験片およびそれを用いた測定方法に関する。詳しくは、迅速かつ測定感度の高いイムノクロマト試験片およびそれを用いた測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場ではPOCTという言葉が注目を集めている。POCTとはPoint Of Care Testingの略であり、医療従事者が被験者の傍らで行う臨床検査のことをいう。POCTは大規模病院の中央検査室等で行う臨床検査とは異なり、その場で瞬時に検査結果が得られることから、幅広い検査項目においてPOCTが広まりつつある。
【0003】
POCTの代表例としてイムノクロマト法が挙げられる。イムノクロマト法とは、測定試料中に含まれる測定対象物質と特異的に結合する抗体を固定化した多孔質体の一端から、測定試料が毛細管現象によって多孔質体内を展開し、その過程で標識された測定対象物質と抗体とが抗原抗体反応によって結合することによって時間経過に伴って集積し、局所的に発色することで測定試料中の測定対象物質の有無を判定する免疫測定法である。
【0004】
イムノクロマト法の利点としては、迅速に結果が得られること、操作が簡便であること、および安価であること等が挙げられる。これらの利点を利用した妊娠検査薬やインフルエンザ診断薬等の体外診断薬が世界的に普及している。従来のイムノクロマト法は目視判定(定性評価)が一般的であったが、近年、発色強度を測定するイムノクロマトリーダー等の分析装置を利用して測定試料中に含まれる測定対象物質の量を定量化する技術が開発されつつある。
【0005】
イムノクロマト法を用いて測定対象物質の量を定量する手法の一つとしては、抗原抗体反応を利用したサンドイッチ法が挙げられる。サンドイッチ法では測定対象物質に対してエピトープの異なる2種類の抗体を利用する。一方の抗体は、多孔質体の表面に線状に固定化した捕捉抗体としてテストラインを形成する。他方の抗体は、前記テストラインを検出するため、金コロイド、着色ラテックス粒子、蛍光粒子等の検出粒子と感作した検出抗体(以下、テストライン検出試薬と称することがある)として使用する。加えて、前記テストライン検出試薬を特異的に捕捉する抗体を多孔質体の表面の前記テストラインとは異なる位置に線状に固定化しコントロールラインを形成する。測定試料中の測定対象物質は、多孔質体の一端(上流側)から展開し、テストライン検出試薬と免疫複合体を形成しながら移動し、テストライン上で捕捉抗体と接触して捕捉され発色する。テストライン上で捕捉されなかった遊離のテストライン検出試薬は、コントロールラインの捕捉抗体に捕捉され発色する。これらの発色強度をイムノクロマトリーダー等の装置を利用することで測定対象物質の量を定量することができる。通常、テストラインをコントロールラインより上流側に配置し、下流側のコントロールラインの発色により検体が正常にテストラインを通過したことを担保するが、更に迅速性を高めるためにコントロールラインをテストラインより上流側に配す場合もある。後者は前者に比べコントロールラインの発色までの時間が短いため、測定時間の短縮に寄与する。
【0006】
従来のイムノクロマト法では、テストライン上で捕捉されなかった遊離のテストライン検出試薬をコントロールラインの捕捉抗体で捕捉する機構であるため、測定対象物質の濃度に影響してコントロールラインの発色強度が変化することが問題であった。例えば、測定試料中に高濃度の測定対象物質が存在した場合、多量のテストライン検出試薬が測定対象物質と免疫複合体を形成し、上流側のテストラインで捕捉されるためテストラインの発色強度は高くなる。つまり、遊離のテストライン検出試薬は少量になるためコントロールラインの発色強度は低くなるといった問題があった。一方、測定試料中に測定対象物質が低濃度しか存在しない場合、測定対象物質と免疫複合体を形成するテストライン検出試薬も少量になるため、遊離のテストライン検出試薬がコントロールラインで多量に捕捉される結果、コントロールラインの発色強度が高くなるといった問題があった。
【0007】
イムノクロマト法により測定試料中に含まれる測定対象物質を精度よく測定するために、コントロールラインの発色強度が測定試料(または、テストライン検出試薬)の多孔質体への展開量を反映するイムノクロマト試験片を用い、前記コントロールラインの発色強度によりイムノクロマト試験片の個体差に起因する測定試料の多孔質体への展開量のバラツキを補正する場合がある。その場合、一定量の測定試料(または、テストライン検出試薬)を多孔質体に展開した場合、前記コントロールラインの発色強度は常に一定であることが望まれる。
【0008】
特許文献1、2には、低分子化合物を標識した検出粒子(以下、コントロールライン検出試薬と称することがある)と、前記低分子化合物を特異的に捕捉する抗体を多孔質体の表面に線状に固定化したコントロールラインを有するイムノクロマト試験片を使用することで、テストラインとコントロールラインとで独立した抗原抗体反応が進行するため、測定試料中の測定対象物質の濃度の影響を受けず、コントロールラインの発色強度を安定化できる技術が開示されている。前記発明は、コントロールラインが測定試料(または、テストライン検出試薬)の多孔質体への流入量をある程度反映するため、テストラインの発色強度をコントロールラインの発色強度で補正することで、測定試料中に含まれる測定対象物質をある程度精度よく測定できる。しかし、特許文献1ではテストラインをコントロールラインより上流側に配置しているため、コントロールラインが発色するまでに時間がかかる、つまり測定時間が長くなるという問題があった。また、テストライン検出試薬がテストラインに到達するまで時間が短いため、測定感度が若干低くなるという問題点もあった。一方、特許文献2ではコントロールラインをテストラインより上流側に配置しているため、測定感度の向上には一定の効果が見られるものの、測定時間の短縮は不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】WO2017/065213号公報
【文献】WO2017/094825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、イムノクロマト法により測定試料中に含まれる測定対象物質を迅速に測定するためのイムノクロマト試験片およびそれを用いた測定方法を提供することを課題とするものである。詳しくは、迅速かつ測定感度の高いイムノクロマト試験片およびそれを用いた測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、コントロールラインがテストラインより上流(サンプルパッド側)に位置し、かつ検出抗体と検出粒子Aから構成されるテストライン検出試薬における検出粒子Aの平均粒子径が、低分子化合物で標識した検出粒子Bから構成されるコントロールライン検出試薬における検出粒子Bの平均粒子径より大きいイムノクロマト試験片を使用することにより、迅速かつ従来技術よりも測定感度が向上することを見出した。これは、下流側に位置するテストラインで捕捉されるテストライン検出試薬における検出粒子Aの平均粒子径を、上流側に位置するコントロールラインで捕捉されるコントロールライン検出試薬における検出粒子Bの平均粒子径より大きくすることで、コントロールライン検出試薬がコントロールラインで捕捉されるまでの時間がより短く、かつテストライン検出試薬がテストラインで捕捉されるまでの時間がより長くなることで、迅速かつ高感度な測定が可能になったと推測している。さらに、本発明者は前記検出粒子Aと前記検出粒子Bとを同一色にすることで、イムノクロマトリーダーを小型化できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
すなわち、代表的な本発明は以下の通りである。
(1) 測定試料中に含まれる測定対象物質を定量するためのイムノクロマト試験片であって、前記イムノクロマト試験片は、サンプルパッド、コンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドが順に連接配置された構成を有し、前記メンブレンは、抗原抗体反応により発色するテストラインおよびコントロールラインを具備し、前記コントロールラインは、前記テストラインより上流に位置し、かつ前記テストラインに捕捉される検出粒子Aの平均粒子径と前記コントロールラインに捕捉される検出粒子Bの平均粒子径の比が3:1~100:1である、イムノクロマト試験片。
(2) 前記検出粒子Aと前記検出粒子Bとが着色粒子であり、かつ同一色である、(1)に記載のイムノクロマト試験片。
(3) 前記検出粒子Aが有機系粒子であり、前記検出粒子Bが無機系粒子である、(1)または(2)に記載のイムノクロマト試験片。
(4) 前記検出粒子Aが赤色系のセルロース系微粒子であり、前記検出粒子Bが赤色系の球状金微粒子である、(1)から(3)のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
(5) 前記検出粒子Aが青色系のセルロース系微粒子であり、前記検出粒子Bが青色系のプレート状金微粒子である、(1)から(3)のいずれかに記載のイムノクロマト試験片。
(6) (1)から(5)のいずれかに記載のイムノクロマト試験片を用い、下記(i)から(iii)の工程を順に経て、測定試料中に含まれる測定対象物質を定量する方法。
工程(i):測定試料と希釈液とを混合する工程
工程(ii):工程(i)の混合液を、サンプルパッドに点着させる工程
工程(iii):テストラインおよびコントロールラインの発色強度から測定対象物質を定量する工程
【発明の効果】
【0013】
本発明のイムノクロマト試験片およびそれを用いた測定方法は、テストラインとコントロールラインとで独立した抗原抗体反応が進行するためコントロールラインの発色強度が安定化し、かつコントロールライン検出試薬がコントロールラインで捕捉されるまでの時間がより短く、かつテストライン検出試薬がテストラインで捕捉されるまでの時間がより長くなることで、測定試料中に含まれる測定対象物質を迅速かつ高感度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】イムノクロマト試験片の一例を示す(上面)図である。
【
図2】イムノクロマト試験片の一例を示す(側面)図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明において、測定試料は、特に限定されないが、例えば、血液、リンパ液、髄液、汗、尿、涙液、唾液、皮膚、粘膜、毛髪等の生体試料が挙げられる。血液においては、全血のほか、血液を遠心分離して得られた血清、血球または血漿を試料とすることができる。また、測定試料はヒト由来に限らず、イヌ、ネコ、ウシ等の哺乳動物由来の生体試料も対象である。
【0016】
本発明において、測定項目は、特に限定されないが、例えば、HbA1c、C-peptide、Insulin、m-Alumin、Cys-C、NGAL、TriponinI、D-dimer、NT-proBNP、CK-MB、Myoglobin、h-FABP、hs-CRP、PSA、AFP、CEA、FOB、Ferritin、PCT、CRP、SAA、ASO、hCG、LH、TSH、FSH、T3、T4、VitaminD等や、influenza A/B、Dengue、HBV、HCV、HIV、Syphilis、Malaria、H.pylori、Rota、Chlamydia、StrepA、Adeno、Zika、Chikungunya、RSV等の感染症項目が挙げられる。
【0017】
本発明において、イムノクロマト試験片の構成は、イムノクロマト試験片の測定試料溶液の添加部(滴下部)を上流側として、前記添加部を有するサンプルパッド、コンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドの順に連接配置されている必要がある。次いで、本発明のイムノクロマト試験片の一例を、図面を参照して説明するが、本発明を何ら限定するものではない。
図1および2において、1はサンプルパッド、2はコンジュゲーションパッド、3はメンブレン、4は吸収パッド、5はバッキングシート、6はコントロールライン、7はテストライン、8は粘着シートをそれぞれ示す。
【0018】
図1および2の例では、イムノクロマト試験片は、幅3~5mm(好ましくは、4mm程度)、長さ40~100mm(好ましくは60mm程度)の細長い短冊状の形態をしている。なお、イムノクロマト試験片のメンブレン3の上流側の端部から約15mmの位置には測定対象物質と特異的に結合する捕捉抗体を線状に固定化したテストライン7が形成される。また、前記端部から約10mmの位置に後述の低分子化合物と特異的に結合する捕捉抗体を線状に固定化したコントロールライン6が形成される。さらに、イムノクロマト試験片のコンジュゲーションパッド2には測定対象物質と特異的に結合する検出抗体と検出粒子Aから構成されるテストライン検出試薬、および低分子化合物で標識された検出粒子Bから構成されるコントロールライン検出試薬が担持されている。
【0019】
前記テストライン検出試薬における検出粒子Aの平均粒子径および前記コントロールライン検出試薬における検出粒子Bの平均粒子径は、特に限定されないが、10~1000nmが好ましく、10~500nmがより好ましい。検出粒子の平均粒子径が大きいと、下流への展開が遅くなり、測定時間が長くなる。また、メンブレン上に捕捉されやすくなり、バックグラウンド自体が発色してしまうことでテストラインおよびコントロールラインでの発色が不明瞭になる。一方、検出粒子の平均粒子径が小さいと、テストライン検出試薬の場合は、物理吸着または化学結合できる検出抗体量が低下し、測定感度が低下する。また、コントロールライン検出試薬の場合は、標識できる低分子化合物量が低下し、ライン上での発色が不明瞭となる。
【0020】
前記検出粒子Aの平均粒子径と前記検出粒子Bの平均粒子径の比は3:1~100:1であるのが好ましく、4:1~50:1がより好ましく、5:1~20:1がさらに好ましい。特に、多孔質体の吸水速度が75~180秒/4cmのとき、小さい検出粒子はより速く下流へ展開し、大きい検出粒子はより遅く下流へ展開する。そのため、前記検出粒子Aの平均粒子径と前記検出粒子Bの平均粒子径の比は3:1~100:1であれば、テストライン検出試薬(つまり検出粒子A)が下流側にあるテストラインに到達するまでの時間はより長くなる、つまり抗原抗体反応の時間が長くなることにより高感度な測定が可能となる。また、コントロールライン検出試薬(つまり検出粒子B)が上流側にあるコントロールラインに到達するまでの時間はより短くなる、つまりコントロールラインが発色するまでの時間が短くなることにより迅速な測定が可能となる。検出粒子Aの平均粒子径と検出粒子Bの平均粒子径の比が小さいと、テストライン検出試薬がテストラインで捕捉されるまでの時間が短くなるか、コントロールライン検出試薬がコントロールラインで捕捉されるまでの時間が長くなるため、高感度測定と迅速測定の両立が困難となる。なお、テストライン検出試薬は展開中に測定対象物質との抗原抗体反応が行われるため、滞留時間が長ければ長いほど高感度化に寄与するが、コントロールライン検出試薬は展開中には反応は行われないため、滞留時間が短ければ短いほど迅速化に寄与する。一方、検出粒子Aの平均粒子径と検出粒子Bの平均粒子径の比が大きいと、例えば、検出粒子Aが1000nmより大きいか検出粒子Bが10nmより小さくなり、前述の通り好ましくない。
【0021】
前記検出粒子Aおよび前記検出粒子Bは、特に限定されないが、着色粒子や蛍光粒子を用いることができる。着色粒子としては金属粒子、ラテックス粒子、セルロース粒子などを例示することができる。金属粒子としては金コロイド、銀コロイド、白金コロイド、パラジウムコロイド、金ナノロッド、金ナノプレート、銀ナノプレートなどを例示することができる。ラテックス粒子としてはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリル酸重合体などの材質からなるものを例示することができる。蛍光粒子としてはポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルトルエン、シリカなどの材質からなるものを例示することができ、蛍光色素としてはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、シアニンおよびその誘導体などを例示することができる。
【0022】
これらの中でも前記検出粒子Aおよび前記検出粒子Bは共に着色粒子であることが好ましく、前記検出粒子Aおよび前記検出粒子Bは同一色であることがより好ましい。ここで、同一色とは、最大吸光波長が±50nm以内であることを意味する。また、例えば、検出粒子Aと検出粒子Bの少なくとも一方が蛍光粒子であると、蛍光を検出するためにイムノクロマトリーダーが大型かつ高価になり、POCTの観点から好ましくない。また、検出粒子Aと検出粒子Bとが異なる色であると、例えば一般的な発光ダイオード(以下、LEDと略す場合がある)-フォトダイオード(以下、PDと略す場合がある)のイムノクロマトリーダーで測定する場合に、テストラインとコントロールラインの各色に対応する複数のLED-PDの組み合わせが必要となり、装置が大型かつ高価になり、POCTの観点から好ましくない。
【0023】
検出粒子Aの平均粒子径と検出粒子Bの平均粒子径の比が3:1~100:1で、かつ同一色にするには、前記検出粒子Aが有機系粒子であり、前記検出粒子Bが無機系粒子であることが好ましい。具体的には、検出粒子Aと検出粒子Bとが共に赤色の場合、検出粒子Aがセルロース粒子またはラテックス粒子であり、前記検出粒子Bが球状金微粒子であることが好ましく、高感度測定の観点から、検出粒子Aがセルロース粒子であり、前記検出粒子Bが球状金微粒子であることがより好ましい。一方、検出粒子Aと検出粒子Bとが共に青色の場合、検出粒子Aがセルロース粒子またはラテックス粒子であり、前記検出粒子Bがプレート状金微粒子であることが好ましい。高感度測定の観点から、検出粒子Aがセルロース粒子であり、前記検出粒子Bがプレート状金微粒子であることがより好ましい。なお、金微粒子は球状では赤色を、プレート状では青色を呈する。
【0024】
前記テストライン検出試薬における検出抗体は、測定対象物質と特異的に結合し得るものであれば特に限定されない。例えば、測定対象物質がhCGであれば抗hCG抗体を、測定対象物質がHbA1cであればば抗Hb抗体または抗HbA1c抗体を使用することができる。前記検出抗体は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、分子サイズも特に限定されない。
【0025】
前記テストライン検出試薬における検出抗体と検出粒子との結合方法は、特に限定されないが、疎水結合による物理吸着または共有結合による化学結合で感作するのが好ましく、操作が簡便でありかつコストも安い物理吸着がより好ましい。なお、感作効率を向上させるため、検出粒子に反応性活性基を導入してもよい。反応性活性基としては、特に限定されないが、例えばカルボキシル基、アミノ基、アルデヒド基、チオール基、エポキシ基、水酸基が挙げられる。これらの中でも、カルボキシル基、アミノ基が好ましい。カルボキシル基の場合は、カルボジイミドを用いてリガンドのアミノ基と共有結合を形成することができる。
【0026】
前記コントロールライン検出試薬における低分子化合物は、特に限定されないが、比較的安価で、入手し易いことやタンパク質標識分野等で実績があることから、ビオチンまたはジゴキシゲニンが好ましく、ビオチンがより好ましい。
【0027】
前記テストライン検出試薬およびコントロールライン検出試薬は、ブロッキング用タンパク質によりブロッキングするのが好ましい。前記ブロッキング用タンパク質は、特に限定されず、微生物由来タンパク質のBlocking Peptide Fragment(以下、BPFと略す場合がある)、動物由来タンパク質のウシ血清アルブミン(以下、BSAと略す場合がある)、カゼインが好ましい。ブロッキング用タンパク質は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。なお、BPFは、東洋紡株式会社より市販されており容易に入手可能である。
【0028】
本発明で用いるメンブレン3上のテストライン7を形成する線状に固定化した捕捉抗体は、測定対象物質と特異的に結合し得るものであれば特に限定されない。例えば、測定対象物質がhCGであれば抗hCG抗体を、測定対象物質がHbA1cであれば抗Hb抗体または抗HbA1c抗体を使用することができる。なお、前記検出抗体と前記捕捉抗体とは、測定対象物質に対するエピトープが異なるものが好ましい。前記捕捉抗体は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよく、分子サイズも特に限定されない。
【0029】
本発明で用いるメンブレン3上のコントロールライン6を形成する線状に固定化した捕捉抗体は、コントロールライン検出試薬の低分子化合物と特異的に結合し得るものであれば特に限定されない。例えば、低分子化合物がビオチンの場合は抗ビオチン抗体であり、低分子化合物がジゴキシゲニンの場合は、抗ジゴキシゲニン抗体を使用することができる。前記捕捉抗体は、市販品を用いてもよいし、別途公知の方法で製造してもよい。また、モノクローナル抗体でもポリクローナル抗体でもよいし、分子サイズも特に限定されない。
【0030】
サンプルパッド1の材質は、測定試料を速やかに吸収した後、下流のコンジュゲーションパッド、メンブレン、吸収パッドへ展開できる材質のものであれば、特に限定されず、例えばセルロース製のろ紙または不織布、ガラス製のろ紙または不織布、ポリエステル製のろ紙または不織布、ポリエチレン製のろ紙または不織布が挙げられる。これらの中でも、セルロース製のろ紙が好ましい。また、前記サンプルパッド1の厚さは、0.1~2.0mmが好ましく、0.2~1.0mmがより好ましい。厚さが小さいと、下流での測定試料の流れが不均一となり測定精度が低下することがある。一方、厚さが大きいと、下流への展開が遅くなり測定時間が長くなることがある。また、下流への展開に必要となる測定試料量が多くなる。
【0031】
コンジュゲーションパッド2の材質は、テストライン検出試薬およびコントロールライン検出試薬を乾燥状態で保持でき、かつ測定試料の下流への展開と共に前記両検出試薬を速やかに放出することができる材質のものであれば、特に限定されず、例えばセルロース製のろ紙または不織布、ガラス製のろ紙または不織布、ポリエステル製のろ紙または不織布、ポリエチレン製のろ紙または不織布が挙げられる。これらの中でも、ガラス製のろ紙が好ましい。また、前記コンジュゲーションパッド2の厚さは、0.1~2.0mmが好ましく、0.2~1.0mmがより好ましい。厚さが小さいと、目的量のテストライン検出試薬およびコントロールライン検出試薬を乾燥状態で保持できないことがある。一方、厚さが大きいと、下流への展開が遅くなり測定時間が長くなることがある。また、下流への展開に必要となる測定試料量が多くなる。
【0032】
メンブレン3の材質は、測定試料を精度よく均一に展開できるものであれば、特に限定されず、例えばセルロース、セルロース誘導体、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、またはナイロン製のメンブレンが挙げられる。これらの中でも、ニトロセルロース製のメンブレンが好ましい。
【0033】
吸収パッド4の材質は、上流より展開してきた測定試料を速やかに吸収した後、逆流しないよう保持できるものであれば、特に限定されず、例えばセルロース製のろ紙または不織布、ガラス製のろ紙または不織布、ポリエステル製のろ紙または不織布、ポリエチレン製のろ紙または不織布が挙げられる。これらの中でも、セルロース製のろ紙が好ましい。また、前記吸収パッド4の厚さは、0.2mm~5.0mmが好ましく、0.5mm~2.0mmがより好ましい。厚さが小さいと、測定試料の滴下量によっては一度吸収パッドに吸収された測定試料がメンブレン側に逆流することがある。一方、厚さが大きいと、イムノクロマト試験片およびイムノクロマト試験片を覆うハウジングケースのサイズも大きくなり、POCTの観点から好ましくない。
【0034】
コンジュゲーションパッド2に前記テストライン検出試薬と前記コントロールライン検出試薬を担持させる方法は、特に限定されず、例えば前記テストライン検出試薬と前記コントロールライン検出試薬を一定比率で混合した後、前記混合液をコンジュゲーションパッドに均一に塗布、噴霧または含浸した後、恒温槽内で適当な温度で一定時間乾燥することで作製することができる。前記混合液の塗布量は、特に限定されないが、ライン長1cm辺り5μL~50μLが好ましい。次いで、前記塗布後に乾燥するのが好ましい。乾燥温度は、特に限定されないが、20℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましい。乾燥時間は乾燥温度によって異なるが、通常は5分~120分間である。
【0035】
メンブレン3に前記テストラインを形成する捕捉抗体と前記コントロールラインを形成する捕捉抗体を線状に固定化する方法は、特に限定されず、例えば前記テストラインを形成する捕捉抗体と前記コントロールラインを形成する捕捉抗体を、それぞれ線上に一定量を異なる位置に塗布した後、恒温槽内で適当な温度で一定時間乾燥することで作製することができる。前記両捕捉抗体の塗布量は、特に限定されないが、ライン長1cm辺り0.1μL~2μLが好ましい。次いで、前記塗布後に乾燥するのが好ましい。乾燥温度は、特に限定されないが、20℃~80℃が好ましく、20℃~60℃がより好ましい。乾燥時間は乾燥温度によって異なるが、通常は5分~120分間である。
【0036】
本発明において、イムノクロマト試験片は、前記作製したメンブレン3を粘着シート8の中央付近に貼り付け、次いでコンジュゲーションパッド2をメンブレン3の一方の末端上に一部重ね合わせて貼り付け、次いでサンプルパッド1をコンジュゲーションパッド2のメンブレン3との重なりとは逆の末端上に一部重ね合わせて貼り付け、次いで吸収パッド4をメンブレン3の他方の末端上に一部重ね合わせて貼り付けた後、一定幅の短冊状に切断することで作製することができる。なお、テストライン7およびコントロールライン6は試験片を作製した後に調製してもよいし、試験片を作製する前に調製してもよい。
【0037】
前記イムノクロマト試験片は、少なくともサンプルパッド1上に測定試料を滴下するための第一の開口部、メンブレン3上にテストライン7とコントロールライン6を測定するための第二の開口部を有する適当なプラスチック製のハウジングケースに収容されたものでも良い。
【0038】
本発明において、測定対象物質の濃度は測定試料の展開斑を考慮し、テストラインの発色強度をコントロールラインの発色強度で割り算した補正値から測定するのがより好ましい。
【0039】
本発明において、イムノクロマト試験片のテストラインおよびコントロールラインの測定方法は、特に限定されず、市販のイムノクロマトリーダーを用いてもよいし、別途公知の方法でイムノクロマトリーダーを製造してもよい。検出系としては、特に限定されないが、例えばLED-FD、LED-CMOS、LED-CCDを使用することができる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、明細書中の評価法は以下の通りである。
【0041】
<1.検出粒子の形状>
各検出粒子を走査型電子顕微鏡(SEM、日立社製S-4800)で観察し、[1]球、長球、また楕円体である球状[2]角柱であるプレート状に分類した。
【0042】
<2.検出粒子の平均粒子径>
各粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、形状が[1]球状の場合は100個の粒子の直径を測定し、平均直径(平均粒子径)を算出した。形状が[2]プレート状の場合は100個の粒子の平面部分の最大長さを測定し、平均長さ(平均粒子径)を算出した。
【0043】
(実施例1)
1.hCG測定用テストライン検出試薬の調製
5.0mg/mLの抗hCG-βモノクローナル抗体(5014、Medix Biochemica社製)を蒸留水(大塚蒸留水、大塚製薬社製)で1.0mg/mLに調製した。次いで、1.0wt%のセルロース粒子(NanoAct(登録商標)、RE2:Dark Red、赤色、平均粒子径340nm、旭化成社製)100μL、10mMのトリス緩衝液(204-07885、和光純薬工業社製)(pH7.0)900μL、および前記1.0mg/mL(0.1wt%)の抗hCG-βモノクローナル抗体100μLを15mLの遠沈管に加え、ボルテックスで撹拌した。次いで、37℃に調整した低温インキュベーター(IN604、ヤマト科学社製)に入れ120分間静置した。次いで、1.0wt%のカゼイン(030-01505、和光純薬工業社製)、100mMのホウ酸緩衝液(021-02195、和光純薬工業社製)からなるブロッキング液(pH8.0)12mLを加え、さらに37℃に調整した低温インキュベーターで60分間静置した。次いで、遠心分離機(MX-307、トミー精工社製)とラックインローター(TMA-300、トミー精工社製)とラック(AR510-04、トミー精工社製)を用い、13,000Gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作セルロース粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、50mMのホウ酸緩衝液からなる洗浄液(pH10.0)12mLを加え、超音波分散機(UH-50、エスエムテー社製)で10秒間処理した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、13,000Gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作セルロース粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、15wt%のスクロース(196-00015、和光純薬工業社製)、0.2wt%のカゼイン、62mMのホウ酸緩衝液からなる塗布液(pH9.2)2.0mLを加え、超音波分散機で10秒間処理し、hCG測定用テストライン検出試薬1を得た。
【0044】
(2)コントロールライン検出試薬の調製
Dビオチン(04822-91、ナカライテスク社製)16mg、およびジメチルスルホキシド:DMSO(08904-14、ナカライテスク社製)1,000μLを5mLのマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、Dビオチン溶液を得た。次いで、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩:EDC(15022-86、ナカライテスク社製)200mg、N-ヒドロキシスクシンイミド:NHS(18948-02、ナカライテスク社製)200mg、および蒸留水1,000μLを5mLのマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、EDC/NHS溶液を得た。次いで、前記Dビオチン溶液1,000μLおよび前記EDC/NHS溶液1,000μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ15分間静置し、Dビオチン/EDC/NHS溶液を得た。次いで、Bovine serum albumin:BSA(A7906、Sigma-Aldrich社製)100mg、および蒸留水1,000μLを5mLのマイクロチューブに加え、ボルテックスで撹拌し、BSA溶液を得た。次いで、前記Dビオチン/EDC/NHS溶液1,000μLと前記BSA溶液1,000μLを混合した後、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ30分間静置し、Dビオチン-BSA溶液を得た。次いで、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC40、赤色、平均粒子径=40nm、BBI Solutions社製)13.5mL、および50mMのリン酸二水素カリウム(28736-75、ナカライテスク社製)(pH7.0)1.5mLを50mLの遠沈管に加え、軽く撹拌した。次いで、前記Dビオチン-BSA溶液1.5mLを加え、軽く撹拌した後、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ10分間静置した。次いで、1.0wt%のPEG20,000(168-11285、和光純薬工業社製)500μLを加え、軽く撹拌した後、10wt%のBSA1,000μLを加え、軽く撹拌した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作金コロイドを沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、0.05wt%のPEG20,000、150mMの塩化ナトリウム(198-01675、和光純薬工業社製)、1.0wt%のBSA、20mMのトリス緩衝液からなる金コロイド保存液(pH8.2)30mLを加え、超音波分散機で10秒間処理した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作金コロイドを沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、0.05wt%のPEG20,000、37.5mMの塩化ナトリウム、0.25wt%のBSA、2.5wt%のスクロース、20mMのトリス緩衝液からなる金コロイド塗布液(pH8.2)をOD520が3.75になるよう加え、超音波分散機で10秒間処理し、コントロールライン検出試薬1を得た。
【0045】
(3)hCG測定用メンブレンカードの作製
5.0mg/mLの抗hCG-αモノクローナル抗体(6601、MedixBiochemica社製)を蒸留水で0.5mg/mLに調製した。次いで、1.0mg/mLの抗ビオチンポリクローナル抗体(A150-111A、BETHYL社製)を蒸留水で0.5mg/mLに調製した。次いで、上流側に20mm×300mmの粘着テープ部、中央に25mm×300mmのメンブレン部、下流側に15mm×300mmの粘着テープ部から構成される60mm×300mmのメンブレンカード(Hi-Flow Plus 120 Membrane Cards、吸水速度120秒/4cm、HF120、Millipore社製)のメンブレン部の上流側から15mmの位置に、分注プラットフォーム(XYZ3060、BIODOT社製)と、Bio Jetノズル(BHQHR-XYZ、BIODOT社製)を用い、前記0.5mg/mLの抗hCG-αモノクローナル抗体を1.0μL/cmの塗布量で塗布した後、45℃に調整した乾燥機(WFO-510、東京理化器械社製)で30分間乾燥し、ライン幅約1mmのテストラインを形成した。さらに、前記テストラインを形成したメンブレンカードのメンブレン部の上流側から10mmの位置に、分注プラットフォームと、Bio Jetノズルを用い、前記0.5mg/mLの抗ビオチンポリクローナル抗体を1.0μL/cmの塗布量で塗布した後、45℃に調整した乾燥機で30分間乾燥し、ライン幅約1mmのコントロールラインを形成することで、hCG測定用メンブレンカード1を得た。
【0046】
(4)hCG測定用コンジュゲーションパッドの作製
前記hCG測定用テストライン検出試薬および前記コントロールライン検出試薬を、1:1の割合(体積比)で混合した。次いで、10mm×300mmのコンジュゲーションパッド(GLASSFIBER DIAGNOSTIC PAD、GFDX001050、Millipore社製)の全面に、分注プラットフォームと、Air Jetノズル(AJQHR-XYZ、BIODOT社製)を用い、前記混合液を15μL/cmの塗布量で2回均一に塗布した後、45℃に調整した乾燥機で30分間乾燥し、hCG測定用コンジュゲーションパッド1を得た。
【0047】
(5)hCG測定用イムノクロマト試験片の作製
前記hCG測定用メンブレンカードの上流側の20mm×300mmの粘着テープ部に、メンブレン部と5mm重なるよう前記hCG測定用コンジュゲーションパッドを貼り合わせた。次いで、さらに上流側に前記コンジュゲーションパッドと5mm重なるよう20mm×300mmのサンプルパッド(CELLULOSE FIBER SAMPLE PADS、CFSP002000、Millipore社製)を貼り合わせた。次いで、前記hCG測定用メンブレンカードの下流側の15mm×300mmの粘着テープ部に、メンブレン部と5mm重なるよう20mm×300mmの吸収パッド(CELLULOSE FIBER SAMPLE PADS、CFSP002000、Millipore社製)を貼り合わせた。次いで、ギロチン式カッティングモジュール(CM5000、BIODOT社製)を用い、幅4mm、長さ60mmの短冊状にカットすることで、hCG測定用イムノクロマト試験片1を得た。
【0048】
(6)希釈hCG試料の調製
市販のhCG抗原(30-1132、Fitzgerald社製)を、50mMのリン酸二水素カリウム、1.0wt%のBSAからなる希釈液(pH7.0)で希釈し、1IU/Lおよび100IU/Lの希釈hCG試料を調整した。
【0049】
(7)hCG測定用イムノクロマト試験片の評価:迅速性の評価
前記hCG測定用イムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次いで、前記50mMのリン酸二水素カリウム、1.0wt%のBSAからなる希釈液(pH7.0)100μLを、マイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下した時点を0秒として25℃で静置し、メンブレン上のコントロールラインの反射吸光度(mAbs)をイムノクロマトリーダー(C10060-10、測定モード:Gold Colloid、Line、浜松ホトニクス社製)を用いて0秒~10分まで経時的に測定した。迅速性の指標として、コントロールラインが視認できるレベルである反射吸光度≧50mAbsとなる時点の測定時間:t(秒)を算出し、t≦60秒を◎(excellent)、60秒<t≦90秒を○(good)、90秒<tを×(bad)と評価した。実施例1のhCG測定用イムノクロマト試験片の迅速性はt=50秒で◎と、迅速な測定が可能であった。得られた評価結果を表1に示す。
【0050】
(8)hCG測定用イムノクロマト試験片の評価:感度の評価
前記hCG測定用イムノクロマト試験片を水平な台に設置した。次いで、前記希釈hCG試料(1IU/L、100IU/L)100μLを、マイクロピペットで分取し、サンプルパッドに緩やかに滴下した時点を0秒として25℃で静置し、メンブレン上のコントロールラインおよびテストラインの反射吸光度(mAbs)をイムノクロマトリーダーを用いて0秒~10分まで経時的に測定し、前記コントロールラインの反射吸光度が50mAbsを超えた時点の測定時間:t(秒)から5分後のコントロールラインおよびテストラインの反射吸光度を測定値とした。前記実験操作を前記希釈hCG試料(1IU/L、100IU/L)に対してそれぞれN=10で行った。感度の指標として、前記希釈hCG試料(100IU/L)のテストラインの反射吸光度(mAbs)のN=10平均値と、前記希釈hCG試料(1IU/L)のテストラインの反射吸光度(mAbs)のN=10平均値との差:Δ(mAbs)を算出し、300Abs≦Δを◎(excellent)、200≦Δ<300mAbsを○(good)、Δ<200mAbsを×(bad)と評価した。実施例1のhCG測定用イムノクロマト試験片の感度はΔ=320mAbsで◎と、高感度な測定が可能であった。得られた評価結果を表1に示す。
【0051】
(実施例2~7)
コントロールライン検出試薬における検出粒子を球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC40、赤色、平均粒子径=40nm、BBI Solutions社製)の代わりに、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC5、赤色、平均粒子径=5nm、BBI Solutions社製)(実施例2)、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC10、赤色、平均粒子径=10nm、BBI Solutions社製)(実施例3)、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC20、赤色、平均粒子径=20nm、BBI Solutions社製)(実施例4)、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC60、赤色、平均粒子径=60nm、BBI Solutions社製)(実施例5)、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC80、赤色、平均粒子径=80nm、BBI Solutions社製)(実施例6)、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC100、赤色、平均粒子径=100nm、BBI Solutions社製)(実施例7)を用いる以外は実施例1と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片2~7を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0052】
(実施例8)
(1)hCG測定用テストライン検出試薬の調製
テストライン検出試薬における検出粒子をセルロース粒子(NanoAct(登録商標)、RE2:Dark Red、赤色、平均粒子径340nm、旭化成社製)の代わりに、セルロース粒子(NanoAct(登録商標)、BL2:Dark Navy、青色、平均粒子径365nm、旭化成社製)を用いる以外は実施例1と同様にして、hCG測定用テストライン検出試薬8を調製した。
【0053】
(2)コントロールライン検出試薬の調製
実施例1と同様にしてDビオチン-BSA溶液を得た。次いで、プレート状の金コロイド液(OD610=1.0)(Au-WPPLC1-C、青色、平均粒子径=45nm、大日本塗料社製)14.7mL、および50mMのリン酸二水素カリウム(pH7.5)300μLを50mLの遠沈管に加え、軽く撹拌した。次いで、前記Dビオチン-BSA溶液1.5mLを加え、軽く撹拌した後、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ1時間静置した。次いで、0.5wt%のPEG6,000(169-09125、和光純薬工業社製)750μLを加え、軽く撹拌した後、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ10分間静置した。次いで、2.0wt%のBSA1,500μLを加え、軽く撹拌した後、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ10分間静置した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で10分間行い、Dビオチン感作金コロイドを沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、0.05wt%のPEG6,000、150mMの塩化ナトリウム、1.0wt%のBSA、20mMのトリス緩衝液からなる金コロイド保存液(pH8.2)15mLを加え、超音波分散機で10秒間処理した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で10分間行い、Dビオチン感作金コロイドを沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、0.05wt%のPEG6,000、37.5mMの塩化ナトリウム、0.25wt%のBSA、2.5wt%のスクロース、20mMのトリス緩衝液からなる金コロイド塗布液(pH8.2)をOD610が3.75になるよう加え、超音波分散機で10秒間処理し、コントロールライン検出試薬8を得た。
【0054】
hCG測定用テストライン検出試薬1の代わりにhCG測定用テストライン検出試薬8を、コントロールライン検出試薬1の代わりにコントロールライン検出試薬8を用いる以外は実施例1と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片8を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。なお、検出粒子の赤から青への変更に伴い、イムノクロマトリーダーの測定モードもGold ColloidからLatexへ変更した。
【0055】
(実施例9)
コントロールライン検出試薬における検出粒子をプレート状の金コロイド液(OD610=1.0)(Au-WPPLC1-C、青色、平均粒子径=45nm、大日本塗料社製)の代わりに、プレート状の金コロイド液(OD660=1.0)(Au-WPPLC3-C、青色、平均粒子径=100nm、大日本塗料社製)(実施例9)を用いる以外は実施例8と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片9を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0056】
(実施例10)
(1)hCG測定用テストライン検出試薬の調製
5.0mg/mLの抗hCG-βモノクローナル抗体を50mMのリン酸二水素カリウム(166-04255、和光純薬工業社製)(pH7.0)で1.0mg/mLに、10wt%ラテックス粒子(Estapor(登録商標)K030、赤色、平均粒子径=300nm、Merk millipore社製)を50mMのリン酸二水素カリウム(pH7.0)で1.0wt%に、それぞれ調製した。次いで、前記1.0wt%のラテックス粒子100μL、および前記1.0mg/mLの抗hCG-βモノクローナル抗体100μLを15mLの遠沈管に加え、ボルテックスで撹拌した。次いで、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ60分間静置した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSAからなるブロッキング液12mLを加え、さらに25℃に調整した低温インキュベーターで60分間静置した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA、50mMのリン酸二水素カリウムからなる洗浄液(pH7.0)12mLを加え、超音波分散機で10秒間処理した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で15分間行い、抗体感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA、50mMのリン酸二水素カリウムからなる塗布液(pH7.0)2mLを加え、超音波分散機で10秒間処理し、hCG測定用テストライン検出試薬10を得た。
【0057】
hCG測定用テストライン検出試薬1の代わりにhCG測定用テストライン検出試薬10を用いる以外は実施例1と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片10を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例11、12)
メンブレンカード(Hi-Flow Plus 120 Membrane Cards、吸水速度120秒/4cm、HF120、Millipore社製)の代わりに、メンブレンカード(Hi-Flow Plus 75 Membrane Cards、吸水速度75秒/4cm、HF75、Millipore社製)(実施例11)、メンブレンカード(Hi-Flow Plus 180 Membrane Cards、吸水速度180秒/4cm、HF180、Millipore社製)(実施例12)を用いる以外は実施例1と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片11、12を作製し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0059】
(実施例13)
テストライン検出試薬における検出抗体を5.0mg/mLの抗hCG-βモノクローナル抗体の代わりに、8.57mg/mLの抗HbA1cモノクローナル抗体(HbA1c Antibody、OAMA02329、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を、テストラインを形成する捕捉抗体を5.0mg/mLの抗hCG-αモノクローナル抗体の代わりに、3.6mg/mLの抗Hbモノクローナル抗体(HBA1 Antibody、OAMA02326、AVIVA SYSTEM BIOLOGY社製)を用いる以外は実施例1と同様にして、HbA1c測定用イムノクロマト試験片13を作製した。
【0060】
次いで、市販のHbA1c標準物質であるHbA1c測定性能評価用試料(QRM HbA1c 2007-1、検査医学標準物質機構社製、L1、L5)を50mMのPBS(162-19321、和光純薬工業社製)、1.0wt%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート:Tween(登録商標)20(166-21213、和光純薬工業社製)、1.0wt%のポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル:TritonX(登録商標)-100(160-24751、和光純薬工業社製)からなる希釈液(pH7.4)にて1,000倍に希釈することで、HbA1c(%)がL1=5.01%、L5=11.26%の希釈HbA1c試料(L1、L5)を得た。希釈hCG試料(1IU/L、100IU/L)の代わりに、希釈HbA1c試料(L1、L5)を使用する以外は実施例1と同様にして、HbA1c測定用イムノクロマト試験片13を評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0061】
【0062】
(比較例1、2)
コントロールライン検出試薬における検出粒子を球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC40、赤色、平均粒子径=40nm、BBI Solutions社製)の代わりに、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC2、赤色、平均粒子径=2nm、BBI Solutions社製)(比較例1)、球状の金コロイド液(OD520=1.0)(EMGC200、赤色、平均粒子径=200nm、BBI Solutions社製)(比較例2)を用いる以外は実施例1と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片14、15を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。
【0063】
(比較例3)
(2)コントロールライン検出試薬の調製
実施例1と同様にしてDビオチン-BSA溶液を得た。次いで、次いで、10wt%ラテックス粒子(Estapor(登録商標)K030、赤色、平均粒子径=300nm、Merk millipore社製)を50mMのリン酸二水素カリウム(pH7.0)で1.0wt%に調製した。次いで、前記1.0wt%のラテックス粒子100μL、および前記Dビオチン-BSA溶液100μLを15mLの遠沈管に加え、ボルテックスで撹拌した。次いで、25℃に調整した低温インキュベーターに入れ60分間静置した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSAからなるブロッキング液12mLを加え、さらに25℃に調整した低温インキュベーターで60分間静置した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA、50mMのリン酸二水素カリウムからなる洗浄液(pH7.0)12mLを加え、超音波分散機で10秒間処理した。次いで、遠心分離機とラックインローターとラックを用い、8,000Gの遠心を25℃で15分間行い、Dビオチン感作ラテックス粒子を沈降させた後に上澄みを除去した。次いで、1.0wt%のBovine serum albumin:BSA、50mMのリン酸二水素カリウムからなる塗布液(pH7.0)2mLを加え、超音波分散機で10秒間処理しコントロールライン検出試薬16を得た。
【0064】
コントロールライン検出試薬1の代わりにコントロールライン検出試薬16を用いる以外は実施例1と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片16を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。
【0065】
(比較例4)
hCG測定用テストライン検出試薬1の代わりにhCG測定用テストライン検出試薬10を用いる以外は比較例3と同様にして、hCG測定用イムノクロマト試験片17を作製し評価した。得られた評価結果を表2に示す。
【0066】
比較例1、3および4で示されるように、テストラインに捕捉される検出粒子Aの平均粒子径と前記コントロールラインに捕捉される検出粒子Bの平均粒子径の比が3:1より小さいと、コントロールライン検出試薬がコントロールラインで捕捉されるまでの時間が長くなるため、迅速性の指標であるコントロールラインが視認できるレベルである反射吸光度≧50mAbsとなるまでの時間:t(秒)が長くなり、測定時間も長くなった。実際、本発明のように前記コントロールラインの反射吸光度が50mAbsを超えた時点の測定時間:t(秒)から5分後に測定を行う設定の場合は、測定時間が約1分間遅くなった。
【0067】
また、比較例2で示されるように、テストラインに捕捉される検出粒子Aの平均粒子径と前記コントロールラインに捕捉される検出粒子Bの平均粒子径の比が100:1より大きいと、検出粒子Bの平均粒子径が2nmと小さいため、標識できる低分子化合物量が低下した結果、コントロールラインが不明瞭となり、迅速性の指標であるコントロールラインが視認できるレベルである反射吸光度≧50mAbsとなるまでの時間:t(秒)の判別が困難であった。従って、感度の評価は未実施である。
【0068】
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明のイムノクロマト試験片を私用することで、測定試料中に含まれる測定対象物質を迅速・簡便・安価でかつ測定感度よく測定できるので、産業に寄与することが大である。
【符号の説明】
【0070】
1:サンプルパッド
2:コンジュゲーションパッド
3:メンブレン
4:吸収パッド
5:バッキングシート
6:コントロールライン
7:テストライン
8:粘着シート