(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 10/08 20060101AFI20240806BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20240806BHJP
B60K 6/52 20071001ALI20240806BHJP
B60W 20/15 20160101ALI20240806BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240806BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240806BHJP
B60L 50/61 20190101ALI20240806BHJP
【FI】
B60W10/08 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/52
B60W20/15
B60L50/16
B60L15/20 J
B60L50/61
(21)【出願番号】P 2021003459
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大士
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸治
(72)【発明者】
【氏名】森口 龍太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 崇志
(72)【発明者】
【氏名】冨田 健
(72)【発明者】
【氏名】松元 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】神崎 謙太郎
(72)【発明者】
【氏名】河井 孝吉
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/116586(WO,A1)
【文献】特開2020-163914(JP,A)
【文献】特開2014-201251(JP,A)
【文献】特開2014-201249(JP,A)
【文献】特開2011-168133(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0354492(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0111912(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109849894(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/08
B60K 6/48
B60K 6/52
B60W 20/15
B60L 50/16
B60L 15/20
B60L 50/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、回生トルクを出力することにより前記エンジンから入力された動力の一部を電力に変換することができるとともに、駆動トルクを駆動輪に伝達できるモータとを備え、前記エンジンから出力された動力の一部を前記モータによって電力に変換するとともに、前記エンジンから出力された動力の他の一部を前記駆動輪に伝達し、または前記エンジンおよび前記モータから出力された動力を前記駆動輪に伝達して走行するパラレル走行モードを設定することができ、かつ前記パラレル走行モードでの走行時における前記モータによる発電量を予め定めた所定発電量にすることのチャージ要求を運転者が行うことができるハイブリッド車両の制御装
置であって、
前記エンジンと前記モータとのトルクを制御するコントローラを備え、
前記コントローラは、
前記チャージ要求があるか否かを判断するチャージ判断部と、
前記ハイブリッド車両の要求駆動力を検出する駆動力検出部とを備え、
前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が予め定められた第1所定駆動力以上である場合に、駆動力を前記第1所定駆動力に制限して、前記所定発電量を前記モータによって発電するように構成さ
れ、
前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第1所定駆動力よりも大きい予め定められた第2所定駆動力以上である場合に、前記要求駆動力に応じた駆動力を出力するとともに、前記モータによる発電量を前記所定発電量未満に制限するように構成されている
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装
置であって、
前記コントローラは、
前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第1所定駆動力未満である場合に、前記要求駆動力に応じた駆動力を出力するとともに、前記所定発電量を前記モータによって発電するように構成されている
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装
置であって、
前記コントローラは、
前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断されている状態で、前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第1所定駆動力未満から前記第1所定駆動力以上に増加した場合に、前記要求駆動力に応じた駆動力を出力するとともに、前記モータによる発電量を前記所定発電量未満に制限するように構成されている
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装
置であって、
前記第1所定駆動力は、前記エンジンから出力可能な最大トルクを前記エンジンから出力するとともに、前記モータによって前記所定発電量を発電した場合に前記ハイブリッド車両から出力できる駆動力である
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求
項1ないし4のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装
置であって、
前記第2所定駆動力は、前記モータを停止した状態で、前記エンジンから出力可能な最大トルクを前記エンジンから出力した場合に前記ハイブリッド車両から出力できる駆動力である
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求
項1ないし5のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装
置であって、
前記コントローラは、
前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第2所定駆動力以上である場合に、前記ハイブリッド車両から出力可能な駆動力が前記第2所定駆動力に制限されているときには、前記駆動力を前記第1所定駆動力に制限して、前記所定発電量を前記モータによって発電するように構成されている
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
請求
項6に記載のハイブリッド車両の制御装
置であって、
前記モータとの間で電力の授受を行う蓄電装置を更に備え、
前記蓄電装置の充電残量が予め定められた所定残量以下または車速が予め定められた所定車速未満の場合には、前記ハイブリッド車両から出力可能な駆動力が前記第2所定駆動力に制限されるように構成されている
ことを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駆動力源としてのエンジンとモータとを備え、エンジンから出力されたトルクにモータから出力されたトルクを付加して駆動輪に伝達することができるハイブリッド車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの動力を発電機で電力に変換し、その変換された電力を駆動モータや蓄電装置に供給するように構成されたハイブリッド車両の制御装置が記載されている。この特許文献1に記載されたハイブリッド車両は、運転者や乗員によるスイッチ操作に応じて、通常モード、マナーモード、およびチャージモードを設定することができるように構成されている。上記の通常モードは、蓄電装置の充電残量が予め定められた第1下限値と第1上限値との間となるように発電機による発電制御を行うように構成され、チャージモードは、上記充電残量が第1下限値よりも大きい第2下限値と、第1上限値よりも小さい第2上限値との間となるように発電機による発電制御を行うように構成されている。すなわち、チャージモードが設定されている場合には、蓄電装置の充電残量が、通常モードが設定されている場合よりも高い状態を維持するように構成されている。
【0003】
特許文献2には、エンジンと、エンジンから出力された動力の一部を電力に変換するジェネレータと、エンジンと駆動輪との間のトルクの伝達経路に連結されたモータとを備え、エンジンおよびモータから駆動輪にトルクを伝達しつつ、エンジンから出力された動力の一部をジェネレータによって電力に変換して走行するパラレル走行モードを設定できるハイブリッド車両の制御装置が記載されている。このハイブリッド車両には、運転者によって操作される操作部が更に設けられていて、制御装置は、その操作部の操作量に応じてジェネレータによって変換する発電電力の大きさを変更できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/116586号
【文献】特開2020-163914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたハイブリッド車両は、モータのみから駆動トルクを出力するように構成されていて、発電機による発電電力は任意に設定することができる。したがって、ハイブリッド車両から出力可能な最大駆動力は、モータの特性に応じて定まり、エンジンの動作状態によって変化することがない。すなわち、通常モードを設定されている場合とチャージモードが設定されている場合とにおけるハイブリッド車両から出力可能な最大駆動力に相違がない。そのため、チャージモードの設定時に、蓄電装置の充電残量をパラメータとして、発電の要否を切り替えるように構成しても、要求駆動力を常時充足することができる。
【0006】
しかしながら、エンジンと駆動輪との間のトルクの伝達経路に発電機能を有するモータを備えたいわゆるパラレル式のハイブリッド車両では、モータを発電機として機能させた場合における出力可能な最大駆動力が、そのモータを電動機として機能させた場合における出力可能な最大駆動力よりも小さくなる。そのため、特許文献1に記載された制御装置のように、チャージモードを設定している時点の発電電力を蓄電装置の充電残量に応じて定めると、要求駆動力と実際に出力される駆動力とが大きく乖離する可能性がある。
【0007】
また、特許文献2に記載されたハイブリッド車両の制御装置は、パラレル走行モードでの発電量を変更可能に構成されている。しかしながら、特許文献2に記載されたハイブリッド車両は、発電量が大きくなることにより出力可能な最大駆動力が低下する。そのため、ジェネレータによって変換する発電量を、運転者による操作部の操作量に応じて定めると、要求駆動力と実際に出力される駆動力とが大きく乖離する可能性がある。
【0008】
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであって、エンジンの動力を走行と発電とに使用することができるハイブリッド車両において、チャージ要求されている場合であっても、要求駆動力と実際に出力される駆動力とが大きく乖離することを抑制できるハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明は、エンジンと、回生トルクを出力することにより前記エンジンから入力された動力の一部を電力に変換することができるとともに、駆動トルクを駆動輪に伝達できるモータとを備え、前記エンジンから出力された動力の一部を前記モータによって電力に変換するとともに、前記エンジンから出力された動力の他の一部を前記駆動輪に伝達し、または前記エンジンおよび前記モータから出力された動力を前記駆動輪に伝達して走行するパラレル走行モードを設定することができ、かつ前記パラレル走行モードでの走行時における前記モータによる発電量を予め定めた所定発電量にすることのチャージ要求を運転者が行うことができるハイブリッド車両の制御装置であって、前記エンジンと前記モータとのトルクを制御するコントローラを備え、前記コントローラは、前記チャージ要求があるか否かを判断するチャージ判断部と、前記ハイブリッド車両の要求駆動力を検出する駆動力検出部とを備え、前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が予め定められた第1所定駆動力以上である場合に、駆動力を前記第1所定駆動力に制限して、前記所定発電量を前記モータによって発電するように構成され、前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第1所定駆動力よりも大きい予め定められた第2所定駆動力以上である場合に、前記要求駆動力に応じた駆動力を出力するとともに、前記モータによる発電量を前記所定発電量未満に制限するように構成されていることを特徴とするものである。
【0010】
また、この発明では、前記コントローラは、前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第1所定駆動力未満である場合に、前記要求駆動力に応じた駆動力を出力するとともに、前記所定発電量を前記モータによって発電するように構成されていてよい。
【0011】
また、この発明では、前記コントローラは、前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断されている状態で、前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第1所定駆動力未満から前記第1所定駆動力以上に増加した場合に、前記要求駆動力に応じた駆動力を出力するとともに、前記モータによる発電量を前記所定発電量未満に制限するように構成されていてよい。
【0012】
また、この発明では、前記第1所定駆動力は、前記エンジンから出力可能な最大トルクを前記エンジンから出力するとともに、前記モータによって前記所定発電量を発電した場合に前記ハイブリッド車両から出力できる駆動力であってよい。
【0014】
また、この発明では、前記第2所定駆動力は、前記モータを停止した状態で、前記エンジンから出力可能な最大トルクを前記エンジンから出力した場合に前記ハイブリッド車両から出力できる駆動力であってよい。
【0015】
また、この発明では、前記コントローラは、前記チャージ要求があることが前記チャージ判断部によって判断され、かつ前記駆動力検出部により検出された前記要求駆動力が前記第2所定駆動力以上である場合に、前記ハイブリッド車両から出力可能な駆動力が前記第2所定駆動力に制限されているときには、前記駆動力を前記第1所定駆動力に制限して、前記所定発電量を前記モータによって発電するように構成されていてよい。
【0016】
そして、この発明では、前記モータとの間で電力の授受を行う蓄電装置を更に備え、前記蓄電装置の充電残量が予め定められた所定残量以下または車速が予め定められた所定車速未満の場合には、前記ハイブリッド車両から出力可能な駆動力が前記第2所定駆動力に制限されるように構成されていてよい。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、回生トルクを出力することによりエンジンから入力された動力の一部を電力に変換することができるモータを備え、パラレル走行モードでの走行時におけるモータによる発電量を所定発電量にすることのチャージ要求を運転者が行うことができるように構成されている。そのようにモータによる発電量を所定発電量にすると、エンジンから出力された動力を減じて駆動輪に伝達することになり、ハイブリッド車両から出力可能な駆動力が低下する。そのため、チャージ要求があり、かつ要求駆動力が第1所定駆動力以上である場合に、駆動力を第1所定駆動力に制限して、所定発電量をモータによって発電することにより、チャージ要求されている場合であっても、要求駆動力と実際に出力される駆動力とが大きく乖離することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】この発明の実施形態におけるハイブリッド車両の一例を説明するための模式図である。
【
図2】アクセル開度に応じた要求駆動力、および第1駆動力ならびに第2駆動力を説明するための図である。
【
図3】ECUの構成を説明するためのブロック図である。
【
図4】チャージスイッチをオンされた時点での要求駆動力に応じて駆動力および発電電力を定める制御例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】チャージモードが設定されているときに要求駆動力が第1駆動力を超えて増加した場合の制御例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】チャージモードが設定されているときに要求駆動力が第2駆動力を超えて増加した場合の制御例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】実際の出力できる駆動力が第2駆動力を超えて増加した場合の制御例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図4ないし
図7に示す制御例をまとめた制御フローを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の実施形態におけるハイブリッド車両の一例を説明するための模式図を
図1に示してある。
図1に示すハイブリッド車両Veは、エンジン(Eng)1とリヤモータ(Re-MG)2とを駆動力源としたリヤ駆動装置3と、フロントモータ(Fr-MG)4を駆動力源としたフロント駆動装置5とを備えた四輪駆動できるハイブリッド車両である。
【0020】
エンジン1は、従来知られているガソリンエンジンや、ディーゼルエンジンなどの種々のエンジンを採用することができ、燃料噴射量や吸入空気量、あるいは点火時期などを制御することにより、出力トルクを変更することができるように構成されている。また、エンジン1への燃料の供給を停止して、エンジン1を連れ回すことによるフリクショントルクやポンピングロスなどによって、出力軸6に制動トルクを作用させるフューエルカット制御を実行することができるように構成されている。以下の説明では、エンジン1によって発生するトルクを、単にエンジントルクと記す。
【0021】
各モータ2,4は、永久磁石をロータに設けた同期モータなどの従来知られている交流モータによって構成することができ、出力軸の回転数を増加させるようにトルクを出力するモータとしての機能に加えて、出力軸の回転数を低下させるようにトルクを出力して、その出力軸の動力の一部を電力に変換する発電機としての機能を備えている。
【0022】
これらのモータ2,4には、インバータ7,8がそれぞれ接続され、それらのインバータ7,8を介して蓄電装置9が接続されている。これらインバータ7,8は、ダイオードとトランジスタとを並列に連結して設けられたスイッチ素子などを備えていて、そのスイッチ素子に入力される信号に応じて、モータ2(4)に通電する電流値やその周波数を制御するように構成されている。また、各インバータ7,8は、互いに電力の授受を行うことができるように接続されている。
【0023】
リヤ駆動装置3は、一対の後輪10に伝達するトルクを制御するように構成されていて、
図1に示す例では、エンジン1と後輪10との間のトルクの伝達経路に、この発明の実施形態における「モータ」に相当するリヤモータ2が一体化されている。具体的には、エンジン1の出力軸6に、リヤモータ2におけるロータがスプライン係合するなどにより一体化されていて、リヤモータ2のトルクを出力軸6に加えることができるように構成されている。すなわち、リヤモータ2から回生トルクを出力することにより、エンジン1から出力された動力の一部を、回生トルクの大きさに応じて電力に変換することができ、リヤモータ2から駆動トルクを出力することにより、エンジン1とリヤモータ2との動力を後輪10に伝達することができる。なお、エンジン1とリヤモータ2とは、ギヤ対などを介して出力軸6にトルク伝達可能に連結していてもよく、または、トルクコンバータやクラッチ機構などの伝達機構を介して出力軸6にトルク伝達可能に連結していてもよい。
【0024】
エンジン1の出力軸6は、リヤモータ2を貫通してハイブリッド車両Veの後方側まで延出しており、その先端にクラッチ機構11が設けられている。このクラッチ機構11は、後述するリヤ変速機構12または後輪10とエンジン1およびリヤモータ2とのトルクの伝達を遮断するためのものであって、噛み合い式のクラッチ機構や摩擦式のクラッチ機構を採用することができる。
【0025】
このクラッチ機構11の出力軸13に、エンジン1やリヤモータ2の回転数を制御するためのリヤ変速機構(Re-T/M)12が連結されている。リヤ変速機構12は、複数の係合機構を備え、かつそれらの係合機構のうちの所定の係合機構を係合することにより所定の変速段を設定する有段式の変速機構や、変速比を連続的に変更できる無段式の変速機構を採用することができる。そのリヤ変速機構12は、リヤデファレンシャルギヤユニット14およびリヤドライブシャフト15を介して一対の後輪10にトルク伝達可能に連結されている。
【0026】
上記のリヤ変速機構12には、エンジントルクと、リヤモータ2から出力されたトルク(以下、モータトルクと記す)とを合成した合成トルクが入力される。そして、リヤ変速機構12で設定されている変速比に応じて入力されたトルクが増大させられ、または低下させられて、一対の後輪10に伝達される。したがって、エンジントルクとモータトルクとのいずれか一方のトルクを変化させることにより、リヤ変速機構12に入力されるトルクや、一対の後輪10に伝達されるトルクを変化させることができる。
【0027】
このエンジントルクは、例えば、エンジン1の運転点が燃費の良好な運転点となるように、エンジン1の回転数に基づいて定めることができる。また、モータトルクは、例えば、要求駆動力とリヤ変速機構12の変速比とに基づいてリヤ変速機構12に入力する目標トルクを求め、その目標トルクと上記のエンジントルクとの差分のトルクに設定することができる。すなわち、目標トルクがエンジントルクよりも大きければ不足するトルクをリヤモータ2から出力し、目標トルクがエンジントルクよりも小さければ、余剰のトルクを打ち消すようにリヤモータ2から制動トルクを出力する。
【0028】
一方、フロント駆動装置5は、一対の前輪16に伝達するトルクを制御するように構成されていて、
図1に示す例では、フロントモータ4の出力軸17にフロント変速機構(Fr-T/M)18が連結されている。このフロント変速機構18は、上記のリヤ変速機構12と同様に有段式の変速機構や無段式の変速機構によって構成することができる。そして、フロント変速機構18は、フロントデファレンシャルギヤユニット19およびフロントドライブシャフト20を介して一対の前輪16にトルク伝達可能に連結されている。なお、惰性走行する場合や後輪10の駆動力のみで走行する場合などにフロントモータ4と前輪16とのトルクの伝達を遮断するクラッチ機構をフロント変速機構18に設けていてもよい。
【0029】
上述したエンジン1、各モータ2,4、各変速機構12,18、およびクラッチ機構11を制御するための電子制御装置(以下、ECUと記す)21が設けられている。このECU21は、この発明の実施形態における「コントローラ」に相当するものであって、従来知られている電子制御装置と同様に、マイクロコンピュータを主体に構成されていて、ハイブリッド車両Veに設けられた種々のセンサから信号が入力され、その入力された信号と、予め記憶されている演算式やマップあるいは制御フローなどとに基づいて、エンジン1、各モータ2,4(具体的には、インバータ7,8)、各変速機構12,18、およびクラッチ機構11に指令信号を出力する。
【0030】
ECU21に入力される信号の一例は、車速を検出する車速センサの信号、エンジン1の回転数を検出するセンサの信号、リヤモータ2の回転数を検出するセンサの信号、フロントモータ4の回転数を検出するセンサの信号、図示しないアクセルペダルの操作量を検出するアクセル開度センサの信号、蓄電装置9の充電残量を検出するセンサの信号、運転者が操作する後述するチャージスイッチ22の信号などである。
【0031】
また、ECU21に記憶されているマップは、アクセル開度と車速とに基づいてハイブリッド車両Veに要求される駆動力を定めるための駆動力マップや、要求駆動力と車速とに基づいてリヤ変速機構12やフロント変速機構18で設定する変速比を定めるための変速マップなどである。
【0032】
上述したハイブリッド車両Veは、エンジントルクを後輪10に伝達して走行する走行モードを設定することができる。具体的には、エンジントルクにモータトルク(駆動トルク)を加え、あるいはエンジン1の動力の少なくとも一部をリヤモータ2で回生するパラレル走行モードを設定することができる。このパラレル走行モードは、エンジン1やリヤモータ2から後輪10にトルクを伝達することに加えて、フロントモータ4から前輪16にトルクを伝達して走行してもよい。すなわち、パラレル走行モードは、エンジン1とリヤモータ2とからトルクを出力して後輪10を駆動するように構成されている。
【0033】
図1に示すハイブリッド車両Veは、上記のパラレル走行モードに加えて、クラッチ機構11を解放し、かつエンジン1の動力をリヤモータ2によって電力に変換し、かつその変換された電力や蓄電装置9に充電された電力を、フロントモータ4に通電することにより、フロントモータ4の動力のみによって駆動するシリーズ走行モードを設定することができる。さらに、エンジン1を停止して、蓄電装置9に充電された電力を、フロントモータ4に通電して走行するEV走行モードを設定することができる。
【0034】
上述したパラレル走行モードやシリーズ走行モードを設定して走行している場合には、ハイブリッド車両Veを走行させるためにエンジン1に要求される動力以上の動力をエンジン1から出力することにより、余剰の動力を電力に変換して蓄電装置9を充電することができる。言い換えると、蓄電装置9を充電するための動力を、ハイブリッド車両Veを走行させるためにエンジン1に要求される動力に加えて、エンジン1から出力することにより蓄電装置9を充電することができる。
【0035】
この発明の実施形態におけるハイブリッド車両Veは、蓄電装置9を積極的に充電するためのチャージスイッチ22が設けられている。このチャージスイッチ22は、リヤモータ2による発電電力を増加させることを要求する場合に運転者によって操作されるものであって、チャージスイッチ22が操作され、後述するチャージモードへの切り替えが許可された場合には、チャージスイッチ22が操作されていない通常モードよりもリヤモータ2による発電電力を増加させる。このチャージスイッチ22は、例えば、インストルメントパネルやステアリングホイールに設けることができる。チャージスイッチ22は、運転者や乗員が操作するものであって、ボタンやレバーなどの種々の操作部であってよい。また、そのチャージスイッチ22は、継続して操作することによりオン信号が出力され続けるものであってもよく、所定の操作でオン信号を出力し、他の操作を行うことによりオン信号が遮断されるように構成したものであってもよい。
【0036】
このチャージスイッチ22が操作されてチャージモードに切り替えられた場合には、リヤモータ2で変換可能な最大電力を発電するように構成されている。このリヤモータ2で変換可能な最大電力は、この発明の実施形態における「所定発電量」に相当するものであって、リヤモータ2の運転点や温度などのリヤモータ2の状態(コンディション)に加えて、インバータ7や蓄電装置9の温度、あるいは蓄電装置9の充電残量などに基づいて変動する。また、エンジン1から出力されるトルクが何らかの要因で急低下した場合に、ハイブリッド車両Veが急減速することを抑制するために予め定められた上限トルク以下の回生トルクとなるように、リヤモータ2で変換可能な最大電力が定められている。
【0037】
したがって、上記のパラレル走行モードやシリーズ走行モードが設定されかつチャージモードが設定されている場合には、エンジン1には、後輪10に要求される駆動力に基づいて定められる動力に加えて、リヤモータ2で変換可能な最大電力に相当する動力が要求される。
【0038】
一方、パラレル走行モードが設定されている場合には、
図2に示すようにエンジントルクにモータトルクを加えることにより後輪10で発生する駆動力を最大にすることができ、さらに、フロントモータ4から駆動トルクを出力することによってハイブリッド車両Veの駆動力を最大にすることができる。
【0039】
それに対して、蓄電装置9を充電する要求がある場合には、リヤモータ2を発電機として機能させ、エンジン1から出力されたトルクを減じて後輪10に伝達することになり、後輪10で発生できる駆動力が、リヤモータ2をモータとして機能させた場合よりも低下する。さらに、蓄電装置9を充電する要求がある場合には、フロントモータ4への通電も停止される。したがって、エンジン1から最大トルクを出力した場合の駆動力(
図2における第2駆動力B)よりも、ハイブリッド車両Veの駆動力が低下する。すなわち、チャージスイッチ22が操作されてチャージモードを設定した場合には、ハイブリッド車両Veの最大駆動力が低下する。なお、
図2における横軸にアクセル開度を採り、縦軸に駆動力を採ってあり、ここに示す例では、アクセル開度に応じて要求駆動力が比例して増加するように構成されている。
【0040】
そのため、この発明の実施形態における制御装置は、チャージスイッチ22が操作されてチャージ要求されている場合に、要求駆動力の大きさに基づいてチャージ要求に応じた発電量をモータによって発電するか否かや、要求駆動力に応じた駆動力を出力するかを判断するように構成されている。
【0041】
その制御を実行するECU21の一例を説明するためのブロック図を
図3に示してある。
図3に示すECU21は、チャージ判断部23、駆動力検出部24、走行モード決定部25、発電量および駆動力を算出する演算部26、および出力部27を備えている。
【0042】
チャージ判断部23は、運転者によってチャージスイッチ22が操作されているか否か、すなわち、チャージスイッチ22が操作されていることによりチャージスイッチ22から出力されるオン信号を受信しているか否かを判断する。
【0043】
駆動力検出部24は、運転者によって操作されるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)と車速とを検出し、その検出値と駆動力マップとから要求駆動力を検出する。
【0044】
走行モード決定部25は、要求駆動力、車速、および蓄電装置9の充電残量(SOC)に応じてパラレル走行モード、シリーズ走行モード、およびEV走行モードのうちのいずれかの走行モードを決定する。
【0045】
演算部26は、後述するフローチャートに基づいてハイブリッド車両Veから出力する駆動力や、リヤモータ2の発電量を演算する。
【0046】
そして、出力部27は、演算部26により演算された駆動力や発電量の信号などに応じて、エンジン1、各モータ2,4の出力トルクや、各変速機構12,18で設定する変速段、およびクラッチ機構11の係合の有無を定め、エンジン1、各モータ2,4、各変速機構12,18、およびクラッチ機構11に指令信号を出力する。
【0047】
演算部26によって実行される制御の一例を説明するためのフローチャートを
図4に示してある。
図4に示す制御例は、走行モード決定部25によってパラレル走行モードを設定されている間に実行される。
【0048】
図4に示す例では、まず、チャージスイッチ(チャージSW)22がオンされたか否かを判断する(ステップS1)。このステップS1は、チャージ判断部23から演算部26に入力される信号に基づいて判断することができる。
【0049】
チャージスイッチ22がオフであることによりステップS1で否定的に判断された場合は、そのままこのルーチンを一旦終了する。それとは反対に、チャージスイッチ22がオンであることによりステップS1で肯定的に判断された場合は、要求駆動力が予め定められた第1駆動力A以下であるか否かを判断する(ステップS2)。このステップS2における第1駆動力Aは、この発明の実施形態における「第1所定駆動力」に相当するものであって、エンジン1から最大トルクを出力し、かつリヤモータ2で変換可能な最大電力をリヤモータ2が発電した場合に出力できる駆動力の最大値である。すなわち、ステップS2における第1駆動力Aは、チャージスイッチ22がオンされたことにより要求される発電電力(以下、単に要求発電電力と記す)を発電するためのリヤモータ2の回生トルクに応じた駆動力を、
図2における第2駆動力Bから減算した駆動力となる。
【0050】
要求駆動力が第1駆動力A以下であることによりステップS2で肯定的に判断された場合は、要求駆動力と要求発電電力とを充足するようにエンジン1およびリヤモータ2のトルクを制御して(ステップS3)、このルーチンを一旦終了する。具体的には、まず、要求発電電力を発電するためのリヤモータ2の回生トルクを定める。このリヤモータ2の回生トルクは、要求発電電力をリヤモータ2の回転数で除算して求めることができる。ついで、要求駆動力に基づいて定められるエンジン1のトルクにリヤモータ2の回生トルク(絶対値)を加算することにより、エンジン1のトルクを定めることができる。そして、上記のように求められたトルクに応じて、エンジン1およびリヤモータ2のトルクを制御する。なお、アクセル開度が所定開度θ1未満であり制動力が要求されている場合であって、要求発電電力を発電するためのリヤモータ2の回生トルクに応じた制動力が要求制動力よりも小さい場合には、エンジン1から駆動トルクを出力する。
【0051】
要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きいことによりステップS2で否定的に判断された場合は、要求発電電力に基づいてリヤモータ2を制御すると、エンジン1から最大トルクを出力した場合であっても、要求駆動力を出力することができない。そのため、この発明の実施形態における制御装置は、要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きい場合には、要求発電電力に基づいて発電することが、要求駆動力に基づいた駆動力を出力することよりも優先するべきか否かを判断し、その判断結果に基づいて、チャージモードを設定するように構成されている。
【0052】
具体的には、チャージモードを設定した場合に出力される駆動力と、チャージモードが設定されていない場合に出力される駆動力との差が所定差以下となる範囲では、要求発電電力に基づいて発電することが優先されるように構成されている。上述したように要求発電電力に基づいて発電した場合に出力可能な駆動力は、第1駆動力Aである。したがって、要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きい程、チャージモードを設定した場合に出力される駆動力と、チャージモードが設定されていない場合に出力される駆動力との差が大きくなる。
【0053】
そのため、この制御例では、ステップS2で否定的に判断された場合は、要求駆動力が第2駆動力B以下か否かを判断する(ステップS4)。この第2駆動力Bが、この発明の実施形態における「第2所定駆動力」に相当する。なお、要求発電電力に基づいて発電することが、要求駆動力に基づいた駆動力を出力することよりも優先するべきか否かを判断する閾値は、第2駆動力Bに限定されず、第2駆動力Bよりも大きい値に設定してもよい。
【0054】
要求駆動力が第2駆動力B以下であることによりステップS4で肯定的に判断された場合は、エンジン1から最大トルクを出力しつつ、要求発電電力を発電するようにリヤモータ2から回生トルクを出力する。すなわち、要求発電電力を発電しつつ、駆動力を第1駆動力Aにする(ステップS5)。言い換えると、通常モードからチャージモードへの切り替えを許可することにより、要求発電電力を発電することを優先するとともに、駆動力を要求駆動力以下に制限する。
【0055】
それとは反対に、要求駆動力が第2駆動力Bよりも大きいことによりステップS4で否定的に判断された場合は、実際に出力できる駆動力(実現駆動力)が第2駆動力B以下か否かを判断する(ステップS6)。このステップS6は、蓄電装置9の充電残量が所定値以下の場合や、車速が所定車速以上の場合などであってリヤモータ2から出力できる駆動トルクが制限されている場合を考慮したステップである。そのようにリヤモータ2から出力できる駆動トルクが制限されている場合には、第2駆動力B以上の駆動力を出力できず、結局、チャージモードを設定した場合に出力される駆動力(第1駆動力A)と、チャージモードが設定されていない場合に出力される駆動力(第2駆動力B)の差が所定差以下となる。そのような場合には、チャージモードを設定する方が好ましい。
【0056】
そのため、実際に出力できる駆動力が第2駆動力B以下であることによりステップS6で肯定的に判断された場合は、ステップS5に移行する。それとは反対に、実際に出力できる駆動力が第2駆動力Bよりも大きいことによりステップS6で否定的に判断された場合は、チャージスイッチ22を操作されたことによるチャージ要求をリジェクトして(ステップS7)、このルーチンを一旦終了する。これは、チャージモードを設定した場合に出力される駆動力(第1駆動力)と、チャージモードが設定されていない場合に出力される駆動力との差が所定差よりも大きくなり、チャージモードを一旦設定した後に、チャージスイッチ22をオフされた場合に駆動力が急変することを抑制するなどのためである。すなわち、ステップS7では、チャージモードへの切り替えを禁止し、要求駆動力に応じた駆動力を出力することを優先する。なお、ステップS7では、チャージスイッチ22への移行要求をリジェクトした旨の警告音を発し、またはその旨をインストールパネルに表示するなどによって運転者に通知するように構成してもよい。
【0057】
上述したように要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きくかつ第2駆動力B以下である場合に、第1駆動力Aで走行するとともに、要求発電電力を発電するように構成することにより、ハイブリッド車両Veから出力される駆動力と、要求駆動力とが大きく乖離することを抑制しつつ、要求発電電力に応じた電力を発電することができる。言い換えると、チャージスイッチ22をオンに切り替えることによって、駆動力が大きく低下することを抑制できる。同様に、要求駆動力が第2駆動力Bよりも大きい場合に、チャージ要求をリジェクトすることにより、ハイブリッド車両Veから出力される駆動力と要求駆動力とが大きく乖離することや、チャージスイッチ22をオンに切り替えることによって、駆動力が大きく低下することを抑制できる。
【0058】
一方、チャージスイッチ22がオンされているときに要求駆動力が増加した場合には、蓄電装置9を充電することよりも要求駆動力を充足することを優先する方が好ましい。そのため、チャージモードが選択されている場合には、要求駆動力の変化に応じてチャージモードを解除するように構成されている。すなわち、通常モードに切り替えることにより要求駆動力に応じた駆動力を出力するように構成されている。
【0059】
図5には、要求駆動力が第1駆動力A以下であり、かつチャージモードが設定されている場合に実行される制御例を説明するためのフローチャートを示してある。
図5に示す例では、まず、要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きくなったか否かを判断する(ステップS11)。このステップS11は、アクセル開度センサによって検出されたアクセル開度に応じて判断することができる。
【0060】
図4に示す制御例では、要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きくかつ第2駆動力Bよりも小さい領域でチャージスイッチ22がオンに切り替えられると、駆動力を第1駆動力Aに制限して走行する。一方、チャージモードが設定されている状態(すなわち、要求発電電力を発電している状態)で、要求駆動力が第1駆動力Aを跨いで増加した場合に、駆動力を第1駆動力Aに制限すると、運転者が駆動力不足と感じる可能性がある。そのため、
図5に示す例では、要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きくなることによりステップS11で肯定的に判断された場合には、チャージモードを解除して(ステップS12)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、通常モードに切り替えて要求駆動力に応じた駆動力を出力する。その場合には、エンジン1から最大トルクを出力し、要求駆動力を充足できる範囲でリヤモータ2が発電機として機能してもよい。言い換えると、ステップS11で肯定的に判断された場合は、リヤモータ2による発電電力を要求発電電力未満に制限してもよい。なお、ステップS12では、チャージモードを解除した旨または発電電力を低下させた旨の警告音を発し、またはその旨をインストールパネルに表示するなどによって運転者に通知するように構成してもよい。
【0061】
それとは反対に、要求駆動力が第1駆動力Aよりも小さい場合には、チャージスイッチ22がオフされたか否かを判断する(ステップS13)。このステップS13は、ECU21に入力されるチャージスイッチ22の信号に基づいて判断することができる。
【0062】
チャージスイッチ22がオフされたことによりステップS13で肯定的に判断された場合は、ステップS12に移行してチャージモードを解除する。すなわち、通常モードに切り替える。それとは反対に、チャージスイッチ22がオフされていないことによりステップS13で否定的に判断された場合は、要求発電電力を発電しつつ、要求駆動力に応じた駆動力を出力できるため、上記ステップS3と同様に、要求駆動力と要求発電電力とを充足するようにエンジン1およびリヤモータ2のトルクを制御する。すなわち、チャージモードを維持して(ステップS14)、このルーチンを一旦終了する。
【0063】
図6には、要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きくかつ第2駆動力B以下でチャージモードが設定されている場合に実行される制御例を説明するためのフローチャートを示してある。
図6に示す例では、まず、要求駆動力が第2駆動力Bよりも大きくなったか否かを判断する(ステップS21)。このステップS21は、アクセル開度センサによって検出されたアクセル開度に応じて判断することができる。
【0064】
要求駆動力が第2駆動力Bよりも大きくなることによりステップS21で肯定的に判断された場合には、チャージモードを解除して(ステップS22)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、通常モードに切り替えて要求駆動力に応じた駆動力を出力する。なお、ステップS22では、チャージモードを解除した旨の警告音を発し、またはその旨をインストールパネルに表示するなどによって運転者に通知するように構成してもよい。
【0065】
それとは反対に、要求駆動力が第2駆動力Bよりも小さい場合には、チャージスイッチ22がオフされたか否かを判断する(ステップS23)。このステップS23は、ECU21に入力されるチャージスイッチ22の信号に基づいて判断することができる。
【0066】
チャージスイッチ22がオフされたことによりステップS23で肯定的に判断された場合は、ステップS22に移行してチャージモードを解除する。すなわち、通常モードに切り替える。それとは反対に、チャージスイッチ22がオフされていないことによりステップS23で否定的に判断された場合は、要求発電電力を発電しつつ、第1駆動力Aを出力して走行する。すなわち、チャージモードを維持して(ステップS24)、このルーチンを一旦終了する。
【0067】
さらに、要求駆動力が第2駆動力Bよりも大きくかつ実際に出力できる駆動力が第2駆動力Bであることにより、チャージモードが設定されている場合に実行される制御例を説明するためのフローチャートを
図7に示してある。
図7に示す例では、まず、実際に出力できる駆動力が第2駆動力Bよりも大きくなったか否かを判断する(ステップS31)。このステップS31は、例えば、蓄電装置9の充電残量が所定値以上になったか否か、あるいは車速が所定車速未満になったか否かによって判断することができる。
【0068】
実際に出力できる駆動力が第2駆動力Bよりも大きくなることによりステップ31で肯定的に判断された場合には、チャージモードを解除して(ステップS32)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、通常モードに切り替えて要求駆動力に応じた駆動力を出力する。なお、ステップS32では、チャージモードを解除した旨を、警告音やインストールパネルに表示するなどによって運転者に通知するように構成してもよい。
【0069】
それとは反対に、実際に出力できる駆動力が第2駆動力Bよりも小さい場合には、チャージスイッチ22がオフされたか否かを判断する(ステップS33)。このステップS33は、ECU21に入力されるチャージスイッチ22の信号に基づいて判断することができる。
【0070】
チャージスイッチ22がオフされたことによりステップS33で肯定的に判断された場合は、ステップS32に移行してチャージモードを解除する。すなわち、通常モードに切り替える。それとは反対に、チャージスイッチ22がオフされていないことによりステップS33で否定的に判断された場合は、要求発電電力を発電しつつ、第1駆動力Aを出力して走行する。すなわち、チャージモードを維持して(ステップS34)、このルーチンを一旦終了する。
【0071】
上述したようにチャージモードが設定されている状態で要求駆動力が増加した場合には、要求発電電力を発電するようにリヤモータ2を制御すると、要求駆動力の増加量分の駆動力を、実際の駆動力で増加させることができないことがある。そのような場合には、要求駆動力を充足することが優先される。そのため、運転者の駆動力を増加する意図を反映することができ、駆動力が不足するとの違和感を運転者が抱くことを抑制できる。
【0072】
なお、チャージスイッチ22がオンされた時点での要求駆動力に応じて駆動力や発電電力を定める制御と、チャージモードが設定されて走行しているときに通常モードに切り替えるか否かを判断する制御とは、
図4ないし
図7に示すように個別の制御フローで実行してもよく、一連の制御フローで実行してもよい。
【0073】
図8は、
図4ないし
図7に示す制御例をまとめた制御フローを示したものである。なお、
図4ないし
図7に示すステップと同一のステップには同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0074】
図8に示す制御例では、ステップS3についで、ステップS11を実行するように構成されている。すなわち、要求駆動力が第1駆動力A以下の場合には、チャージモードに切り替え、要求駆動力が第1駆動力Aを超えて増加し、あるいはチャージスイッチ22がオフされるまで、要求駆動力と要求発電電力とを両立させる。また、要求駆動力が第1駆動力Aを超えて増加し、またはチャージスイッチ22がオフされた場合には、チャージモードを解除して通常モードによってエンジントルクやモータトルクが制御される。
【0075】
一方、
図8に示す制御例では、要求駆動力が第2駆動力B以下のときにチャージスイッチ22がオンされることにより通常モードからチャージモードに切り替えられた後に、要求駆動力が第1駆動力A以下に低下したか否かを判断する(ステップS41)。これは、ステップS5によって駆動力が第1駆動力Aに制限されているため、要求駆動力と要求発電電力とを両立することができる第1駆動力A以下に要求駆動力が低下した場合に、駆動力の制限を解除するためである。したがって、要求駆動力が第1駆動力A以下に低下したことによりステップS41で肯定的に判断された場合は、ステップS3に移行する。なお、要求駆動力が第1駆動力Aよりも大きいことによりステップS41で否定的に判断された場合は、ステップS21に移行する。
【0076】
また、要求駆動力が第2駆動力Bを超えて増加したことによりチャージモードが解除された場合には、第1駆動力Aに制限された駆動力を、第1駆動力Aよりも大きい駆動力に増加させる必要がある。したがって、ステップS22についで、あるいはチャージスイッチ22がオフされて肯定的に判断された場合には、発電電力とエンジントルクとを徐々に元に戻して(ステップS42)、このルーチンを一旦終了する。具体的には、運転者が違和感を抱かないように予め定められた駆動力の変化率で増加するように、エンジントルクやモータトルクを増加させる。
【0077】
さらに、実際に出力できる駆動力が第2駆動力B以下であるときにチャージスイッチ22がオンされることにより通常モードからチャージモードに切り替えられた後に、要求駆動力が第2駆動力B以下に低下したか否かを判断する(ステップS43)。要求駆動力が第2駆動力B以下に低下した場合には、ステップS5に移行する。これは、要求駆動力に応じてチャージモードを解除する条件が、実質的に、要求駆動力が第2駆動力B以下でチャージスイッチ22がオンされてチャージモードを設定した場合と同一であるためである。なお、要求駆動力が第2駆動力Bよりも大きいことによりステップS43で否定的に判断された場合は、ステップS31に移行し、また、ステップS32についで、あるいはチャージスイッチ22がオフされて肯定的に判断された場合には、発電電力とエンジントルクとを徐々に元に戻して(ステップS42)、このルーチンを一旦終了する。
【0078】
なお、この発明の実施形態におけるハイブリッド車両は、エンジントルクにモータトルクを加え、あるいはモータを発電機として機能させることによりエンジントルクを減じて伝達することができるように構成されていればよい。したがって、
図1に示すフロント駆動装置5を備えていなくてもよい。また、リヤモータ2は、リヤ変速機構12の出力側に連結していてもよい。さらに、モータおよび発電機として機能するものは一つに限らず複数設けていてもよい。すなわち、例えば、リヤモータ2に加えてリヤ変速機構12の出力側に他のモータを備えていてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 エンジン
2 リヤモータ
9 蓄電装置
10 後輪
21 電子制御装置(ECU)
22 チャージスイッチ
23 チャージ判断部
24 駆動力検出部
25 走行モード決定部
26 演算部
27 出力部
Ve ハイブリッド車両