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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240806BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021005341
(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公開番号】P2022109803
(43)【公開日】2022-07-28
【審査請求日】2023-04-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和2年9月24日に株式会社豊田自動織機のウェブサイトにて公開、令和2年9月24日に販売を開始
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 元太
(72)【発明者】
【氏名】石出 宗慎
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-299472(JP,A)
【文献】特開昭57-106906(JP,A)
【文献】特開昭63-253411(JP,A)
【文献】特開昭63-165908(JP,A)
【文献】特開2019-036302(JP,A)
【文献】特開平04-346108(JP,A)
【文献】特開平09-185411(JP,A)
【文献】特開2015-022451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に延在するガイド線を車載用ガイドセンサで検出しながら前記ガイド線に沿って走行する無人搬送車であって、
走行経路は、途中に前記ガイド線が設けられていない非ガイド線区間を有し、
前記車載用ガイドセンサで第1のガイド線を検出しながら走行する区間から前記車載用ガイドセンサで第2のガイド線を検出しながら走行する区間までの前記非ガイド線区間の手前において、路面に設けたマークを検出した時から始まる走行方向学習区間の直線走行中に前記車載用ガイドセンサで前記第1のガイド線を検出しながらオドメトリ情報により前記走行方向学習区間での前記車載用ガイドセンサの中心点の位置を時系列で複数算出し、時系列で得られた各位置から近似直線を生成することで前記第1のガイド線の延在方向を学習し、前記近似直線を前記第1のガイド線から前方に延ばすことで前記非ガイド線区間における仮想ガイド線を設定し、前記非ガイド線区間を前記仮想ガイド線に沿って走行するようにしたことを特徴とする無人搬送車。
【請求項2】
前記非ガイド線区間を前記仮想ガイド線に沿って走行する際に、所定距離走行しても前
記車載用ガイドセンサで前記第2のガイド線を検出できない場合は停止するようにしたこ
とを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【請求項3】
前記学習した走行方向、及び、一定角度かつ一定距離だけ継続する旋回の指令に従って
前記仮想ガイド線を設定することを特徴とする請求項1に記載の無人搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の自動搬送システムにおいては、図14に示すように、自動搬送車2
00の経路中において第1の追従区間と第2の追従区間との間に自動搬送車200が自律
走行する自律走行区間が設けられている。自律走行区間の自動搬送車200を第2の追従
区間の導線201に復帰させるためのパターンとして自動搬送車200の進行方向に直交
する方向の両外側に当たる外縁が自律走行区間側に向かって末広がり状に拡がる復帰パタ
ーン202が敷設されており、外縁が検出されたときに自律走行制御から追従走行制御に
切り換えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-89077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無人搬送車は予め設定された経路に沿って走行するが、走行経路途中にガイ
ド線を設置できないような一定区間を走行する場合がある。この場合、特許文献1の技術
を用いてガイド線に復帰させるために進行方向の左右に末広がり状に拡がる復帰パターン
を設けると、復帰パターンに対応する幅で走行できるように左右の両方に車両が走行でき
るスペースを設ける必要がある。進行方向の左右に末広がり状に拡がる復帰パターンを設
けることなく、乗り移り元のガイド線から乗り移り先のガイド線に向かって直進走行する
と、非ガイド線区間の走行を開始する時の機台の姿勢がガイド線の延存方向に対しずれて
いると、移り元のガイド線から乗り移り先のガイド線に乗り移ることが難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための無人搬送車は、床に延在するガイド線を車載用ガイドセンサ
で検出しながら前記ガイド線に沿って走行する無人搬送車であって、走行経路は、途中に
前記ガイド線が設けられていない非ガイド線区間を有し、前記車載用ガイドセンサで第1
のガイド線を検出しながら走行する区間から前記車載用ガイドセンサで第2のガイド線を
検出しながら走行する区間までの前記非ガイド線区間の手前において、路面に設けたマー
クを検出した時から始まる走行方向学習区間の直線走行中に前記車載用ガイドセンサで前
記第1のガイド線を検出しながらオドメトリ情報により走行方向を学習して前記非ガイド
線区間における仮想ガイド線を設定し、前記非ガイド線区間を前記仮想ガイド線に沿って
走行するようにしたことを要旨とする。
【0006】
これによれば、車載用ガイドセンサで第1のガイド線を検出しながら走行する区間から
車載用ガイドセンサで第2のガイド線を検出しながら走行する区間までの非ガイド線区間
の手前において、路面に設けたマークを検出した時から始まる走行方向学習区間の直線走
行中に車載用ガイドセンサで第1のガイド線を検出しながらオドメトリ情報により走行方
向を学習して非ガイド線区間における仮想ガイド線を設定し、非ガイド線区間を仮想ガイ
ド線に沿って走行する。単に、第1のガイド線から第2のガイド線に向かって直進走行す
る場合には、非ガイド線区間の走行を開始する時の機台の姿勢がガイド線の延存方向に対
しずれていると第2のガイド線を検出しにくいが、走行方向学習区間の直線走行中に走行
方向を学習して非ガイド線区間における仮想ガイド線を設定することによって、非ガイド
線区間の走行を開始する時の機台の姿勢に影響を受けることなく、第2のガイド線を検出
しやすくなる。その結果、第1のガイド線から走行経路途中にガイド線が設けられていな
い非ガイド線区間を経て第2のガイド線に容易に乗り移ることができる。
【0007】
また、無人搬送車において、前記非ガイド線区間を前記仮想ガイド線に沿って走行する
際に、所定距離走行しても前記車載用ガイドセンサで前記第2のガイド線を検出できない
場合は停止するようにするとよい。
【0008】
また、無人搬送車において、前記学習した走行方向、及び、一定角度かつ一定距離だけ
継続する旋回の指令に従って前記仮想ガイド線を設定するとよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1のガイド線から走行経路途中にガイド線が設けられていない非ガ
イド線区間を経て第2のガイド線に容易に乗り移ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態における無人搬送車の概略平面図。
図2】実施形態における無人搬送車のブロック図。
図3】実施形態における作用を説明するためのフローチャート。
図4】(a),(b),(c)は走行する無人搬送車の概略平面図。
図5】走行する無人搬送車の概略平面図。
図6】(a),(b),(c)は走行する無人搬送車の概略平面図。
図7】(a),(b),(c)は走行する無人搬送車の概略平面図。
図8】(a),(b),(c)は走行する無人搬送車の概略平面図。
図9】走行する無人搬送車の概略平面図。
図10】走行する無人搬送車の概略平面図。
図11】(a),(b)は走行する無人搬送車の概略平面図。
図12】(a),(b)は走行する無人搬送車の概略平面図。
図13】(a),(b)は走行する無人搬送車の概略平面図。
図14】背景技術を説明するための説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、無人搬送システム10は無人搬送車20を有する。無人搬送車20
は、例えば、無人牽引車である。無人搬送システム10は、床に延在するガイド線を車載
用ガイドセンサで検出しながらガイド線に沿って無人搬送車20を走行させるようになっ
ている。
【0012】
無人搬送車20は、機台21を備える。機台21には、左右一対の駆動輪22,23と
、左右一対の従動輪24,25とが備えられている。駆動輪22,23は後輪であり、従
動輪24,25は前輪である。駆動輪22,23は向きが変わらない固定車輪である。
【0013】
機台21には、左駆動輪22を回転させるための左駆動輪用モータ26と、右駆動輪2
3を回転させるための右駆動輪用モータ27が設けられている。走行は、モータ26,2
7の駆動により左右の駆動輪22,23を同期して回転させることにより行われる。また
、操舵は、左右の駆動輪(固定車輪)22,23を別々のモータ26,27で駆動してそ
の速度差で行われる。
【0014】
機台21の前部における幅方向の中央部にはガイドセンサ28が搭載されている。車載
用ガイドセンサとしてのガイドセンサ28により、路面である床に延在するガイド線41
,42(図4(a)参照)が検出される。ガイド線41,42として、例えば磁気テープ
が用いられ、ガイドセンサ28として、磁気センサが用いられる。なお、他にも、ガイド
線41,42として、例えば白線を用い、ガイドセンサ28として、光学センサを用いて
もよい。
【0015】
図1に示すように、水平面を、直交するx軸及びy軸で規定しており、x軸方向を車両
の前後方向とし、y軸方向を車両の幅方向としている。y軸は、駆動輪22,23の中心
点Pdを通る。x軸は、駆動輪22,23の中心点Pd及びガイドセンサ28の中心点P
gを通る。
【0016】
図4(a)に示すように、ガイド線41,42を用いて無人搬送車20を予め設定され
た経路に沿って走行させることができる。走行経路は、途中に、ガイド線41,42を設
置できないような一定区間が非ガイド線区間となっている。
【0017】
非ガイド線区間の手前には、走行方向学習区間が設けられている。走行方向学習区間は
直線走行区間である。
図1に示すように、機台21の前部におけるガイドセンサ28の右側にはマークセンサ
29が搭載されている。マークセンサ29により、床に設けられたマーク43(図4(a
),(b),(c)参照)が検出される。マーク43は、第1のガイド線41の端部にお
ける横に設けられている。マーク43は、走行方向学習区間の始点、即ち、第1のガイド
線41による走行区間の先端に対しその手前の走行方向学習区間の始まりを示している。
マーク43として、例えば磁気マークが用いられ、マークセンサ29として、磁気センサ
が用いられる。
【0018】
図2に示すように、無人搬送車20は、コントローラ30を備える。コントローラ30
は機台21に搭載されている。
コントローラ30にはガイドセンサ28とマークセンサ29が接続されている。コント
ローラ30はガイドセンサ28とマークセンサ29から検出信号を入力する。
【0019】
コントローラ30には左駆動輪用モータ26と右駆動輪用モータ27が接続されている
。コントローラ30は左駆動輪用モータ26及び右駆動輪用モータ27を制御して、走行
及び操舵を行わせる。そして、コントローラ30は、床に延在するガイド線41,42を
ガイドセンサ28で検出しながらガイド線41,42に沿って無人搬送車20を走行させ
ることができるようになっている。コントローラ30には、左駆動輪用回転センサ31及
び右駆動輪用回転センサ32が接続されている。コントローラ30は、左駆動輪用回転セ
ンサ31及び右駆動輪用回転センサ32からの信号により、自己位置推定のための情報で
あるオドメトリ情報として機台21のx軸座標位置、機台21のy軸座標位置、機台21
の姿勢角θを検知することができるようになっている。図4(b)では機台21の姿勢角
θはプラス所定値であり、図4(c)では機台21の姿勢角θはマイナス所定値であり、
図4(a)では機台21の姿勢角θ=0である。姿勢角θは、ガイド線を用いた誘導走行
の継続に伴い徐々に小さくなるように制御される。
【0020】
次に、作用について説明する。
コントローラ30は図3に示す処理を実行する。
図4(a)、図4(b)、図4(c)には無人搬送車20の走行経路の一例を示す。
【0021】
図4(a)において、無人搬送車20の走行経路として、直線的に延びる第1のガイド
線41による走行経路が形成されているとともに、第1のガイド線41と同一方向に直線
的に延びる第2のガイド線42による走行経路が形成されている。第1のガイド線41と
第2のガイド線42とは、一直線上に形成されている。無人搬送車20の走行経路は、途
中に、ガイド線41,42が設けられていない非ガイド線区間を有する。
【0022】
ここで、図1における左右の駆動輪22,23の中心点Pdの位置を、x-y座標での
位置(x,y)とするとともに、この位置での機台21の姿勢角をθとする。また、図1
におけるガイドセンサ28の中心点Pgの位置を、x-y座標での位置(x´,y´)と
するとともに、この位置での機台21の姿勢角をθ´とする。
【0023】
図4(a),(b),(c)において、無人搬送車20をガイドセンサ28で第1のガ
イド線41を検出しながら走行する区間から、ガイドセンサ28で第2のガイド線42を
検出しながら走行する区間までが非ガイド線区間である。この非ガイド線区間に入る際に
は、次のようにする。
【0024】
図4(a),(b),(c)に示すように、非ガイド線区間の手前において、路面に設
けたマーク43を検出した時から始まる走行方向学習区間の直線走行中にガイドセンサ2
8で第1のガイド線41を検出しながらオドメトリ情報により走行方向を学習して非ガイ
ド線区間における仮想ガイド線Lvg1を設定する。そして、非ガイド線区間を仮想ガイ
ド線Lvg1に沿って走行する。
【0025】
具体的には、図3において、コントローラ30は、学習開始マーク43を検出するとス
テップS10において、オドメトリ情報から自己位置を算出する。これにより、左右の駆
動輪22,23の中心点Pdの位置データ(x,y,θ)が得られる。
【0026】
コントローラ30は、ステップS11において、左右の駆動輪22,23の中心点Pd
での位置データ(x,y,θ)から、ガイドセンサ28の中心点Pgでの位置データ(x
、´,y´,θ´)へ変換して保存する。
【0027】
コントローラ30は、ステップS12において、第1のガイド線41による誘導を継続
する。
コントローラ30は、ステップS13において、学習開始マーク43を検知した地点か
ら一定距離(ほぼ第1のガイド線41の先端までの距離)の走行が完了したか否か判定し
、完了していないとステップS10に戻る。そして、ステップS10,S11,S12,
S13の処理を繰り返す。ステップS13において一定距離の走行が完了すると、コント
ローラ30は、走行学習区間の走行が完了したとしてステップS14に移行する。
【0028】
コントローラ30は、ステップS14において、保存したガイドセンサ中心点Pgの位
置データ(x´,y´)から近似直線を算出する。具体的には、最小二乗法等で直線を算
出する。
【0029】
コントローラ30は、ステップS15において、近似直線を仮想ガイド線Lvg1とし
て設定する。
コントローラ30は、ステップS16において、オドメトリ情報から左右の駆動輪22
,23の中心点Pdの位置(自己位置)を算出する。
【0030】
コントローラ30は、ステップS17において、仮想ガイド線Lvg1からの横ずれを
補正するように旋回指令を出して、左右の駆動輪22,23の中心点Pdの位置から算出
したガイドセンサ中心点Pgの位置が仮想ガイド線Lvg1へ近づくよう誘導する。
【0031】
コントローラ30は、ステップS18において、学習開始マーク43を検知した地点か
ら走行距離Aだけ走行したか否か判定し、距離Aだけ走行していないとステップS16に
戻る。そして、ステップS16,S17,S18の処理を繰り返すことにより距離Aだけ
走行したか否か判定しながら、走行方向学習区間における第1のガイド線41をガイドセ
ンサ28が読まないよう一定距離はガイドセンサ28で第1のガイド線41を検知せずに
オドメトリ情報による走行を継続する。
【0032】
ステップS18において走行距離Aだけ走行すると、コントローラ30は、ステップS
19において、ガイドセンサ28が第2のガイド線42を検知したか否か判定して、乗り
移り先の検知判定を行う。
【0033】
ステップS19において第2のガイド線42を検知しないと、コントローラ30は、ス
テップS20において、仮想ガイド線Lvg1による誘導を継続しながらオドメトリ情報
から左右の駆動輪22,23の中心点Pdの位置(自己位置)を算出する。即ち、自己位
置判定を継続する。
【0034】
コントローラ30は、ステップS21において、仮想ガイド線Lvg1からの横ずれを
補正するように旋回指令を出す。
コントローラ30は、ステップS22において、学習開始マーク43を検知した地点か
ら距離Bだけ走行したか否か判定し、距離Bだけ走行していないとステップS19に戻る
。そして、ステップS19,S20,S21,S22の処理を繰り返しながら、コントロ
ーラ30は、ステップS19においてガイドセンサ28が第2のガイド線42を検知する
と、ステップS24において、第2のガイド線42を発見したため第2のガイド線42に
沿うガイド誘導に復帰する。
【0035】
一方、ステップS22においてコントローラ30は、所定の距離Bだけ走行してもガイ
ドセンサ28が第2のガイド線42を検知できないと、ステップS23で、走行を停止す
る。
【0036】
図5を用いて、図3のステップS14,S15における近似直線の算出及び仮想ガイド
線Lvg1の設定について説明を加える。
左右の駆動輪22,23の中心点Pdの時系列での位置は、(x1,y1),・・・,
(x5,y5)である。この各位置に対応するガイドセンサ中心点Pgの時系列での各位
置は、(x1´,y1´),・・・,(x5´,y5´)で表される。ガイドセンサ中心
点Pgの位置(x1´,y1´),・・・,(x5´,y5´)を最小二乗法で直線近似
する。この直線を第1のガイド線41から前方に延ばすことにより仮想ガイド線Lvg1
が得られる。即ち、走行方向学習区間でのガイドセンサ中心点Pgの時系列で得られる各
位置を繋ぐことで非ガイド線区間の仮想ガイド線Lvg1が算出される。
【0037】
このようにして、得られた仮想ガイド線Lvg1に沿って走行することにより、走行方
向推定によるガイド式無人搬送車の直線自律走行が行われる。
図14に示した従来の場合、予め設定された経路に沿って走行する無人搬送車において
、ガイド線を設置できないような一定区間を専用のセンサを必要とせず自律走行すること
ができる。
【0038】
ところが、ガイド線を特殊な形状で施工する必要がある。また、第2のガイド線による
復帰走行区間の確保のため、機台の通路幅を左右両側に多く取る必要がある。さらに、非
ガイド線区間開始前に機台姿勢を整える区間が必要となる。つまり、ガイド線の延在方向
に対し同一方向となるように機台姿勢を整える必要があり、斜めに非ガイド線区間に入っ
てしまうと斜めに走行してしまう。また、非ガイド線区間開始時の機台姿勢の影響により
非ガイド線区間終了時の機台到達位置が特殊形状で施工した走行ガイド幅を超える可能性
がある。
【0039】
本実施形態では、図4(a)においては、機台21の姿勢が第1のガイド線41の延在
方向に合っているが、図4(b),(c)に示すように、非ガイド線区間の手前において
機台21の姿勢が第1のガイド線41の延在方向に対し傾いていても第2のガイド線42
の手前では姿勢が合っている。そのために、非ガイド線区間の進入前の学習区間の走行で
自車のオドメトリ情報による自己位置の推定とガイド線の検知状態を考慮して自車がどち
らの方向に動いているのかから仮想的なガイド線Lvg1を生成する。つまり、仮想ガイ
ド線Lvg1に沿って誘導すべく第1のガイド線41の延在方向を学習して第1のガイド
線41の延長線上に引いた仮想ガイド線Lvg1に沿って誘導する。こうすることで始め
機台21が斜めを向いていたとしても得られる仮想ガイド線Lvg1は常に真っすぐにな
るので目的の第2のガイド線42に乗り移ることができる。このようにして、図14での
復帰パターン202の敷設が不要となり、真っすぐに仮想ガイド線Lvg1を引くことが
でき、ガイド線の設置手法によらず、かつ専用センサの搭載が不要となる。
【0040】
つまり、非ガイド線区間において、単純に直進走行した場合には非ガイド線区間の走行
開始時の機台姿勢のばらつきにより目標の第2のガイド線42へ到達できない場合がある
。これに対し、非ガイド線区間の進入前の走行において、回転センサ31,32による自
己位置推定(左右の駆動輪22,23の中心点Pdの位置推定)を行いつつオドメトリ情
報とガイドセンサ28による第1のガイド線41の検知状態によって第1のガイド線41
の延在方向を推定する。ここで、本無人搬送システム10においては、床に設置されたガ
イド線41,42と、そのガイド線41,42を認識するガイドセンサ28を備えるとと
もに、床に設置されたマーク43と、そのマーク43を認識するマークセンサ29を備え
る。
【0041】
図6(a)に示すように、本実施形態の機能が無い場合においては、非ガイド線区間で
の走行開始時に機台21の姿勢が第1のガイド線41の延びる方向に対しずれると第2の
ガイド線42に乗り移ることが困難となる。これに対し、図6(b),(c)に示すよう
に、非ガイド線区間の走行開始時の機台21の姿勢によらず、走行方向学習区間の延長線
上へ走行可能となっている。つまり、第1のガイド線41の端部に来た時に機台姿勢が目
標から傾いていても誘導させながら第2のガイド線42に到達することが可能となる。こ
のとき、機台21の姿勢が整うためにはある程度の長さが必要であるが、機台21の姿勢
が整うまでの距離よりも走行方向学習区間を短くできる。なお、走行方向学習区間の長さ
は、非ガイド線区間の長さと等しい程度であるとよい。
【0042】
図7(a),(b)に示すように、走行方向学習区間の長さは、非ガイド線区間の距離
に応じて変更可能となっている。図7(c)に示すように、走行方向学習区間の距離が長
いほど仮想ガイド線Lvg1の左右方向のばらつきが小さくなる。換言すると、図7(a
),(b)に示すように、走行方向学習区間の長さを変えずに非ガイド線区間の長さを延
長するとばらつき範囲が大きくなるが、図7(c)に示すように、走行方向学習区間を長
くして非ガイド線区間の長さを長くするとばらつき範囲を小さくすることができる。
【0043】
このように、走行方向学習区間を延長することで、非ガイド線区間を延長することによ
り、駆動輪中心点Pdの位置(ガイドセンサ中心点Pgの位置)のプロット点の数は同じ
でもプロット点間の距離が長くなることにより、精度が上がり、ばらつき範囲を抑えるこ
とが可能となる。
【0044】
図8(a)に示すように、右側タイヤのみ摩耗すると、真っすぐ走っていても右側へ傾
いていく。ここで、図8(b)に示すように、右側タイヤのみ摩耗した状態で仮想ガイド
線Lvg1を引くと左側へ傾いた仮想ガイド線Lvg1が算出される。仮想ガイド線Lv
g1が左へ傾くことと、図8(c)において実際の走行軌跡で示すように、無人搬送車2
0が右側へ傾いていくことが打ち消し合うことが可能となる。詳しくは、左右輪摩耗に対
して完全には打ち消さなくとも有利に働く。即ち、非ガイド線区間が走行方向学習区間よ
りも短い場合を考慮して有利に働く。
【0045】
つまり、図8(a)において一方の側のタイヤが摩耗すると、左右の回転センサ31,
32により同じ回転数でフィードバック制御しても径が小さい一方の車輪の側に曲がって
いく。図8(b)に示すように、仮想ガイド線Lvg1を引くために学習する区間におい
て、自己位置を推定して仮想ガイド線Lvg1を引くとき、推定する自己位置はタイヤの
回転数から算出するが、摩耗によって影響されて曲がる。ここで、図8(c)に示すよう
に、機台21が曲がっていく方向と逆側に仮想ガイド線Lvg1が引かれる。理想的に考
えた場合、走行方向学習区間の長さと非ガイド線区間の長さが等しいと、図8(c)に示
すように、機台21が実際に曲がっていく現象と左右車輪の摩耗の影響とが打ち消されて
、実際の走行軌跡として第2のガイド線42に到達することができる。
【0046】
図9を用いて説明する。
図9は、右輪のみタイヤ摩耗している場合である。
オドメトリ情報により算出した駆動輪中心点Pdの位置により求められたガイドセンサ
中心点Pgの位置は、右輪摩耗によって第1のガイド線41上からずれる。
【0047】
ガイドセンサ中心点Pgの位置は、(x1´,y1´),(x2´,y2´),・・・
,(x5´,y5´)であるので、この各点の位置を用いて非ガイド線区間の近似直線を
算出する。そして、この近似直線を、現在のガイドセンサ中心点Pgの位置から第1のガ
イド線41の延在方向に平行移動させたものを、仮想ガイド線Lvg1として設定して、
仮想ガイド線Lvg1に沿って走行する。
【0048】
車両自体は、右輪が摩耗していても、仮想ガイド線Lvg1に沿って走行する。オドメ
トリ情報から算出するガイドセンサ中心点Pgの位置は、右輪摩耗によって徐々にずれて
いくため、算出する近似直線も実際の走行方向学習区間の延長線上にならない(図9参照
)。
【0049】
非ガイド線区間においても、右輪摩耗により、徐々に右に傾いていくが、仮想ガイド線
Lvg1が左傾斜状態で引かれるため、ずれが打ち消し合って車両自体は目標方向に向き
やすくなる(図8(c)参照)。
【0050】
このようにして、オドメトリ情報取得用の回転センサ31,32を使うことにより、非
ガイド線区間の走行専用の自己位置推定センサが不要となるため、安価に実現できる。ガ
イド線を特殊な形状での施工する必要がない。また、図14での復帰パターン202の敷
設が不要となり、ガイド線の設置長を減らすことができる。事前に機台21の姿勢を整え
る必要がないため、走行方向学習区間は必要であるが非ガイド線区間の走行開始前の状態
を任意に設定可能となる。
【0051】
従来、一方に走行するだけであれば片側に復帰パターン202を設けるだけでよいが、
往復走行するには反対側にも復帰パターン202を設ける必要があり、往復走行に対応で
きない。
【0052】
本実施形態では、図10に示すように、第1のガイド線41側及び第2のガイド線42
側に走行方向学習区間を設けることにより、往復の走行に対応可能となる。第1のガイド
線41を真っすぐに敷設するだけでよく、走行方向学習区間に特別な施工の必要がない。
こうすることで、ガイド線がない非ガイド線区間においても、仮想ガイド線Lvg1を目
標として誘導することでガイド線を特殊な形状にする必要はなく、往復の走行も可能とな
る。
【0053】
なお、図1において、x軸方向における駆動輪22,23の中心点Pdとガイドセンサ
28の中心点Pgとの距離は長いほど機台21の姿勢が整うまでに時間がかかる。また、
x軸方向における駆動輪22,23の中心点Pdとガイドセンサ28の中心点Pgとの距
離は長いほど安定した走行が可能となる。また、駆動輪22,23の中心点Pdでの座標
(x,y)に加えて姿勢角θを用いてガイドセンサ28の中心点Pgでの座標が求められ
る。このガイドセンサ28の中心点Pgでの座標についての図5図9で説明したように
、複数のプロット点から最小二乗法により直線が算出されて、仮想ガイド線Lvg1が得
られる。
【0054】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)無人搬送車20は、床に延在するガイド線41,42をガイドセンサ28で検出
しながらガイド線41,42に沿って走行する。走行経路は、途中にガイド線41,42
が設けられていない非ガイド線区間を有する。ガイドセンサ28で第1のガイド線41を
検出しながら走行する区間からガイドセンサ28で第2のガイド線42を検出しながら走
行する区間までが非ガイド線区間である。この非ガイド線区間の手前において、路面に設
けたマーク43を検出した時から始まる走行方向学習区間の直線走行中にガイドセンサ2
8で第1のガイド線41を検出しながらオドメトリ情報により走行方向を学習して非ガイ
ド線区間における仮想ガイド線Lvg1を設定し、非ガイド線区間を仮想ガイド線Lvg
1に沿って走行するようにした。
【0055】
よって、単に、第1のガイド線41から第2のガイド線42に向かって直進走行する場
合には、非ガイド線区間の走行を開始する時の機台21の姿勢がガイド線の延存方向に対
しずれていると第2のガイド線42を検出しにくい。これに対し、走行方向学習区間の直
線走行中に走行方向を学習して非ガイド線区間における仮想ガイド線Lvg1を設定する
ことによって、非ガイド線区間の走行を開始する時の機台21の姿勢に影響を受けること
なく、第2のガイド線42を検出しやすくなる。その結果、第1のガイド線41から走行
経路途中にガイド線が設けられていない非ガイド線区間を経て第2のガイド線42に容易
に乗り移ることができる。
【0056】
(2)図3のステップS19,S20,S21,S22,S23の処理を実行すること
により、非ガイド線区間を仮想ガイド線Lvg1に沿って走行する際に、所定距離走行し
てもガイドセンサ28で第2のガイド線42を検出できない場合は停止するようにしたの
で、実用的である。
【0057】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○非ガイド線区間が直進走行の場合以外にも適用可能である。
例えば、図11(a)に示すように、従来、第1のガイド線41と第2のガイド線44
が直交する直交路を走行する90度プログラムステアリング動作時においてプログラムス
テアリング開始時の機台姿勢によっては第2のガイド線44を越えてしまう。これに対し
本発明においては、図11(b)に示すように、路面に設けたマーク45を検出した時か
ら始まる走行方向学習区間の直線走行中にガイドセンサ28で第1のガイド線41を検出
しながらオドメトリ情報により走行方向を学習する。そして、非ガイド線区間における仮
想ガイド線Lvg2を設定し、非ガイド線区間を仮想ガイド線Lvg2に沿って走行する
。よって、90度プログラムステアリング開始時の機台姿勢によらず、目標位置へ到達可
能となる。図11(b)のマーク45は、90度プログラムステアリング動作を行う手前
であることを示す情報を含んでいる。
【0058】
図12(a)に示すように、従来、第1のガイド線41と第2のガイド線46が並行な
る並行路を走行する180度プログラムステアリング動作時においては、プログラムステ
アリング開始時の機台姿勢によっては曲がりすぎて第2のガイド線46に到達できない。
これに対し本発明においては、図12(b)に示すように、路面に設けたマーク47を検
出した時から始まる走行方向学習区間の直線走行中にガイドセンサ28で第1のガイド線
41を検出しながらオドメトリ情報により走行方向を学習する。そして、非ガイド線区間
における仮想ガイド線Lvg3を設定し、非ガイド線区間を仮想ガイド線Lvg3に沿っ
て走行する。よって、180度プログラムステアリング開始時の機台姿勢によらず、目標
位置へ到達することが可能となる。図12(b)のマーク47は、180度プログラムス
テアリング動作を行う手前であることを示す情報を含んでいる。
【0059】
なお、プログラムステアリングについて説明を加えると、図13(a),(b)に示す
ように、マーク50の検知をトリガにして、一定角度の旋回走行を一定距離まで継続し、
その後直進走行へ切り替えることで直交路もしくは並行路へガイド線無しで乗り移る機能
である。
【0060】
プログラムステアリング機能は、予め操舵を固定して曲がっていく機能であり、この場
合でも、機台21が傾いていると、そこから操舵方向を固定して旋回してしまうので、目
標の第2のガイド線44,46に対して外れて走行してしまう。
【0061】
走行方向学習区間で得た仮想ガイド線Lvg2,Lvg3は、自車の姿勢の差分だけ円
弧線R(図11(a)、図12(a)参照)を回転させている。即ち、真っすぐな第1の
ガイド線41と、マークによる90度若しくは180度等の指示から、仮想ガイド線Lv
g2,Lvg3を設定する。
【0062】
このように、学習した走行方向、及び、一定角度かつ一定距離だけ継続する旋回の指令
に従って仮想ガイド線を設定して第2のガイド線に乗り移るようにしてもよい。つまり、
走行方向を学習し、これにプログラムステアリングの指令に従って仮想ガイド線Lvg2
,Lvg3を設定することにより、機台21の姿勢によらずに第2のガイド線に乗り移る
ことができる。
【0063】
○車両の足回りとして、操舵は左右の固定車輪を別々のモータで駆動してその速度差で
操舵を行うようにしたが(二輪速度差方式であったが)、操舵は旋回輪をステアリングモ
ータで旋回させてもよい(操舵輪方式でもよい)。つまり、駆動および旋回のための駆動
車輪を1輪以上備えるとともに、安定走行のための従動車輪を1輪以上備えているとよい
【0064】
〇無人搬送車は無人牽引車でなくてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…無人搬送車、28…ガイドセンサ、41…第1のガイド線、42…第2のガイド
線、43…マーク、44…第2のガイド線、45…マーク、46…第2のガイド線、47
…マーク、Lvg1…仮想ガイド線、Lvg2…仮想ガイド線、Lvg3…仮想ガイド線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14