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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用サイドエアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20240806BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20240806BHJP
   B60N 2/42 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/207
B60N2/42
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021007256
(22)【出願日】2021-01-20
(65)【公開番号】P2022111674
(43)【公開日】2022-08-01
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 勇介
(72)【発明者】
【氏名】国定 正人
(72)【発明者】
【氏名】林 重希
(72)【発明者】
【氏名】鶴井 健司
(72)【発明者】
【氏名】徳山 美惠
(72)【発明者】
【氏名】山田 喜大
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100493(JP,A)
【文献】特開平11-091477(JP,A)
【文献】特開2009-190530(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165202(WO,A1)
【文献】特開2018-016163(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0103625(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009019930(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16 - 21/33
B60N 2/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバック内に設けられ、車両の側面衝突の予知時又は検知時にガスを発生させるインフレータと、
前記シートバック内に折り畳まれた状態で収納され、前記インフレータからガスの供給を受けて着座乗員の側方へ膨張展開すると共に、着座乗員の頭部を保護する上部チャンバと、着座乗員の腰部及び胸部の少なくとも一方を保護する下部チャンバと、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを繋ぐ繋ぎ部と、を備えるサイドエアバッグと、
前記サイドエアバッグ内でシートバック上下方向に延在し、筒状に形成されて前記インフレータからのガスを前記上部チャンバ内及び前記下部チャンバ内に分配するダクトと、
を有し、
前記サイドエアバッグには、前記サイドエアバッグの膨張展開状態で前記上部チャンバを前記シートバックの肩口部から着座乗員の頭部側面側へ向けるための曲げ部が前記繋ぎ部に形成されるように前記曲げ部に対応する部位に折返部が形成されかつ前記折返部の一部を縫い合わせた縫製部が設けられている、車両用サイドエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートのシートバックにエアバッグモジュールが収納されたサイドエアバッグ装置に関する技術が開示されている。簡単に説明すると、この先行技術では、側面衝突時にインフレータから噴出されたガスをインナチューブ(ダクト)によって頭部保護膨張部(上部チャンバ)と腰部保護膨張部(下部チャンバ)とに分配する。頭部保護膨張部は、膨張展開状態で乗員の頭部を側方側から拘束し、腰部保護膨張部は、膨張展開状態で乗員の腰部を側方側から拘束する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-105107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載されたサイドエアバッグでは、側面衝突時の初期においては頭部保護膨張部と着座乗員の頭部との間に隙間が生じるため、この点で改善の余地がある。このような点を改善するために、サイドエアバッグの一部をショルダベルトと車両用シートとの間に膨張展開させることが考えられる。
【0005】
しかしながら、サイドエアバッグは、ガスの供給を受けると内圧によって直立しようとするため、サイドエアバッグの一部を安定してショルダベルトと車両用シートとの間に膨張展開させるのは容易ではない。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、上部チャンバを安定してショルダベルトと車両用シートとの間に膨張展開させることが可能な車両用サイドエアバッグ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載する本発明の車両用サイドエアバッグ装置は、車両用シートのシートバック内に設けられ、車両の側面衝突の予知時又は検知時にガスを発生させるインフレータと、前記シートバック内に折り畳まれた状態で収納され、前記インフレータからガスの供給を受けて着座乗員の側方へ膨張展開すると共に、着座乗員の頭部を保護する上部チャンバと、着座乗員の腰部及び胸部の少なくとも一方を保護する下部チャンバと、前記上部チャンバと前記下部チャンバとを繋ぐ繋ぎ部と、を備えるサイドエアバッグと、前記サイドエアバッグ内でシートバック上下方向に延在し、筒状に形成されて前記インフレータからのガスを前記上部チャンバ内及び前記下部チャンバ内に分配するダクトと、を有し、前記サイドエアバッグには、前記サイドエアバッグの膨張展開状態で前記上部チャンバを前記シートバックの肩口部から着座乗員の頭部側面側へ向けるための曲げ部が前記繋ぎ部に形成されるように前記曲げ部に対応する部位に折返部が形成されかつ前記折返部の一部を縫い合わせた縫製部が設けられている。
【0008】
上記構成によれば、車両用シートのシートバック内には、インフレータが設けられると共にサイドエアバッグが折り畳まれた状態で収納されている。そして、車両の側面衝突の予知時又は検知時には、インフレータからガスが発生し、当該ガスがサイドエアバッグに供給される。これにより、サイドエアバッグが着座乗員の側方へ膨張展開する。このサイドエアバッグは、着座乗員の頭部を保護する上部チャンバと、着座乗員の腰部及び胸部の少なくとも一方を保護する下部チャンバと、上部チャンバと下部チャンバとを繋ぐ繋ぎ部と、を備えている。上部チャンバ内及び下部チャンバ内には、インフレータからのガスがサイドエアバッグ内のダクトによって分配される。
【0009】
ここで、サイドエアバッグには、サイドエアバッグの膨張展開状態で上部チャンバをシートバックの肩口部から着座乗員の頭部側面側へ向けるための曲げ部が繋ぎ部に形成されるように前記曲げ部に対応する部位に折返部が形成されかつ折返部の一部を縫い合わせた縫製部が設けられている。これにより、サイドエアバッグの膨張展開時に、上部チャンバは、シートバックの肩口部から着座乗員の頭部側面側へ向けて膨張展開される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明の車両用サイドエアバッグ装置によれば、上部チャンバを安定してショルダベルトと車両用シートとの間に膨張展開させることが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置を含む乗員保護装置においてサイドエアバッグが膨張展開した状態を示す正面図である。
図2図1の乗員保護装置においてサイドエアバッグが膨張展開した状態を示す側面図である。
図3図1のサイドエアバッグがシートバック内に収納されている状態を簡略化して示す正面図である。
図4】折返部を形成したサイドエアバッグを平面上に広げた状態で示す斜視図である。
図5図5(A)は折返部を形成する前のサイドエアバッグを平面上に広げた状態で示す正面図である。図5(B)は折返部を形成したサイドエアバッグを平面上に広げた状態で示す正面図である。
図6図5(B)を矢印6方向から見た状態で示す図である。
図7図5(B)を矢印7方向から見た状態で示す図である。
図8図7の8-8線に沿って切断した状態を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
図9】サイドエアバッグが膨張展開しようとしている状態を示す斜視図である。
図10】折返部の二箇所を縫い合わせた変形例に係るサイドエアバッグを図4と同様の状態で示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る車両用サイドエアバッグ装置30(以下、単に「サイドエアバッグ装置30」という。)を含む乗員保護装置10について、図1図9に基づいて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両用シート12の前方向(着座乗員の向く方向)を示しており、矢印UPは車両用シート12の上方向を示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート前後方向の前方を向いた場合の左右を示すものとする。また、図1及び図3に示される矢印INは、車両用シート12が搭載された車両としての自動車における車両幅方向中央側を示している。
【0013】
(実施形態の構成)
図1に示されるように、乗員保護装置10は、車両用シート12に搭載されている。車両用シート12は、図示しない自動車における車両幅方向中央部に対し左右何れか(本実施形態では左側)にオフセットして配置されている。この車両用シート12は、シート前後方向が車両の前後方向に一致され、シート幅方向が車両幅方向に一致されている。
【0014】
なお、図1及び図2では、保護すべき乗員のモデルとして衝突試験用のダミー(人形)Dが車両用シート12に着座した状態を図示している。ダミーDは、例えばWorldSID(国際統一側面衝突ダミー:World Side Impact Dummy)のAM50(米国人成人男性の50パーセンタイル)である。このダミーDは、衝突試験法で定められた標準的な着座姿勢で着座しており、車両用シート12は、当該着座姿勢に対応した基準設定位置に位置している。以下、説明を分かり易くするために、ダミーDを「着座乗員D」と称する。
【0015】
図1及び図2に示されるように、車両用シート12は、シートクッション14と、シートクッション14の後端部に連結されたシートバック16と、シートバック16の上端部に連結されたヘッドレスト18と、を有する。シートクッション14は、着座乗員Dの臀部及び大腿部を支持する構成部とされる。シートバック16は、着座乗員Dの背部を支持する構成部とされる。ヘッドレスト18は、着座乗員Dの頭部Hを支持する構成部とされる。また、ヘッドレスト18は、ヘッドレストステー18Sによってシートバック16に取り付けられている。
【0016】
乗員保護装置10は、シートベルト装置20及びサイドエアバッグ装置30を有している。以下、シートベルト装置20及びサイドエアバッグ装置30の構成を説明する。なお、シートベルト装置20は、3点式のシートベルト装置とされ、この3点式のシートベルト装置には、公知の構成を適用することができる。このため、シートベルト装置20については簡単に説明する。
【0017】
シートベルト装置20は、乗員拘束用のシートベルト(ウェビング)22を備えている。シートベルト22の一端部22Aは、シートクッション14の車両幅方向外側の側部にアンカプレート24を介して取り付けられ、シートベルト22の他端部は、図示しないリトラクタ(ベルト巻取装置)のスプールに係止されている。なお、リトラクタには、衝突検知時に作動してシートベルト22を強制的に巻き取るプリテンショナ機構が設けられている。シートベルト22の中間部は、車両側部(図示しないセンタピラー)の上側に設けられた図示しないショルダアンカに挿通されて折り返されている。さらに、図1に示されるように、シートクッション14の車両幅方向内側の側部には、バックル26が立設されている。このバックル26には、シートベルト22の中間部に挿通された状態で支持されたタングプレート28が係合可能とされている。
【0018】
シートベルト装置20は、着座乗員Dがシートクッション14に着座した状態でバックル26にタングプレート28が係合されることで、シートベルト22が着座乗員Dに装着されるようになっている。タングプレート28をバックル26に係合させた状態で、シートベルト22のうちタングプレート28からアンカプレート24までの間に位置する部位はラップベルト22Lと称され、シートベルト22のうちタングプレート28から図示しないショルダアンカまでの間に位置する部位はショルダベルト22Sと称される。そして、シートベルト装置20は、ラップベルト22Lで着座乗員Dの腰部Pを拘束すると共にショルダベルト22Sで着座乗員Dの上体を拘束する。
【0019】
一方、サイドエアバッグ装置30は、シートバック16に搭載されている。図2に示されるように、サイドエアバッグ装置30は、インフレータ32と、サイドエアバッグ34と、を備えている。
【0020】
インフレータ32は、シートバック16内に設けられ、作動することによりガスを発生させ、当該ガスをサイドエアバッグ34内に供給するようになっている。この実施形態では、インフレータ32は、シリンダ型のインフレータとされ、シートバック上下方向を長手方向として配置されている。インフレータ32の噴出口は下方側に向けられている。このインフレータ32には、車両に搭載された側突ECU40が電気的に接続されている。側突ECU40には、側面衝突を検知する側突センサ42及び側面衝突を予知する側突予知センサ44が電気的に接続されている。そして、インフレータ32は、側突ECU40によって作動が制御され、車両の側面衝突が予知又は検知された場合に作動する。
【0021】
図4に示されるサイドエアバッグ34は、例えばナイロン系又はポリエステル系の布材を切り出して形成された2枚の基布によって構成されている。サイドエアバッグ34は、互いに重ね合わせられた2枚の基布の周縁部が縫製部(シーム)Tにおいて縫製されることで袋体に形成されている。サイドエアバッグ34の後部かつ下部側にはインフレータ32(図2参照)を挿入するためのインフレータ挿入口34Xが形成されている。
【0022】
サイドエアバッグ34は、折り畳まれた状態で図3に示されるシートバック16内において車両幅方向外側の側部16S側からそれに連続する一方の肩口部16A側にかけての部分にシート正面視で逆L字状となるように収納されている。なお、図3では、収納状態のサイドエアバッグ34の外形を簡略化して示している。図2に示されるように、サイドエアバッグ34は、インフレータ32からガスの供給を受けて着座乗員Dの側方へ膨張展開する。図1及び図2に示されるように、サイドエアバッグ34は、着座乗員Dの頭部Hを保護する上部チャンバ34Aと、着座乗員Dの腰部P及び胸部Cを保護する下部チャンバ34Cと、を備えている。図4に示されるように、上部チャンバ34Aと下部チャンバ34Cとは繋ぎ部34Bによって連通した状態で繋がれている。
【0023】
図2に示されるサイドエアバッグ34の内部における後部には筒状に形成されたダクト(ソック、ディフューザ)38の後端側の一部が縫い付けられている。ダクト38は、互いに重ね合わせられた2枚の基布が縫製されることで筒状に形成されている。ダクト38は、サイドエアバッグ34内でシートバック上下方向に延在している。ダクト38は、インフレータ32に対して前方側に配置され、ダクト38の下部がインフレータ32の噴出口に通じるように構成されている。ダクト38の上側噴出口38Aは、上部チャンバ34Aの内部に配置され、ダクト38の下側噴出口38Bは、下部チャンバ34Cの内部に配置されている。これらにより、ダクト38は、インフレータ32からのガスを上部チャンバ34A内及び下部チャンバ34C内に分配する。
【0024】
図1に示されるように、ダクト38の上側噴出口38Aは、サイドエアバッグ34の膨張展開状態で着座乗員Dの頭部Hに対する側方側付近でショルダベルト22Sと着座乗員Dの頭部Hとの間に配置される。言い換えれば、ダクト38の上側噴出口38Aは、サイドエアバッグ34の膨張展開状態でヘッドレストステー18Sの側方付近に配置される。また、ダクト38の下側噴出口38Bは、サイドエアバッグ34の膨張展開状態でシートクッション14のサイドサポート部14S付近に配置される。
【0025】
サイドエアバッグ34には、サイドエアバッグ34の膨張展開状態で上部チャンバ34Aをシートバック16の肩口部16Aから着座乗員Dの頭部H側面側へ向けるための曲げ部34P(図9参照)が繋ぎ部34Bに形成されるように曲げ部34Pに対応する部位に図4に示される折返部35が形成されかつ折返部35の一部を縫い合わせた縫製部36が設けられている。
【0026】
ここで、折返部35及び縫製部36を設ける手順について概説する。図5(A)には、折返部35(図5(B)参照)が設けられる前のサイドエアバッグ34が示されている。なお、図5(A)の図中において、前後方向(図中の左右方向)に延在された二点鎖線L1は、山折りで折り返すように曲げられる第一折曲予定線であり、第一折曲予定線L1の上下に示されて第一折曲予定線L1と平行な二点鎖線L2は、谷折りされる第二折曲予定線である。
【0027】
まず、図5(A)に示されるサイドエアバッグ34において前述した曲げ部34P(図9参照)に対応する部位が車両幅方向外側に(図5(A)では図中手前側に)凸となるように、第一折曲予定線L1及び第二折曲予定線L2に沿ってサイドエアバッグ34を折り曲げる。すなわち、サイドエアバッグ34を、図5(B)、及び図6図5(B)を矢印6方向から見た状態で示す図)に示されるように折り曲げる。ここで、第一折曲予定線L1(図5(A)参照)に沿って折り返された部分が折返部35となる。
【0028】
次に、図5(B)、図7図5(B)を矢印7方向から見た状態で示す図)及び図8図7の8-8線に沿って切断した状態を拡大して模式的に示す拡大断面図)に示されるように、折返部35の後端部を縫い合わせて縫製部36とする。この縫製部36は、サイドエアバッグ34の周縁部の縫製部Tに対して外周側に設定される。以上により、折返部35及び縫製部36が設定される。
【0029】
なお、図8において、符号34B1、34B2、34B3、34B4は、それぞれ繋ぎ部34Bの一部を指しており、符号T1、T2、T3、T4は、それぞれ縫製部Tの一部を指している。また、図8において、符号381、382、383、384は、それぞれダクト38の一部を指しており、符号S1、S2、S3、S4は、それぞれダクト38の縫製部の一部を指している。さらに、図8では、図を見易くするために、各断面部同士の図中上下方向の間隔を誇張して示している。
【0030】
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0031】
本実施形態では、車両の側面衝突の予知時又は検知時には、図2に示されるインフレータ32からガスが発生する。インフレータ32から発生するガスは、ダクト38によって、サイドエアバッグ34における上部チャンバ34A内及び下部チャンバ34C内に分配される。これにより、図1に示されるように、サイドエアバッグ34がシートバック16から着座乗員Dの側方へ膨張展開する。このサイドエアバッグ34では、上部チャンバ34Aが着座乗員Dの頭部Hの側方へ膨張展開し、下部チャンバ34Cが着座乗員Dの腰部P及び胸部Cの側方へ膨張展開する。
【0032】
ここで、サイドエアバッグ34には、サイドエアバッグ34の膨張展開状態で上部チャンバ34Aをシートバック16の肩口部16Aから着座乗員Dの頭部H側面側へ向けるための曲げ部34P(図9参照)が繋ぎ部34Bに形成されるように曲げ部34Pに対応する部位に図4に示される折返部35が形成されかつ折返部35の一部を縫い合わせた縫製部36が設けられている。これにより、図9に示されるように、サイドエアバッグ34の膨張展開時には、縫製部36付近が突っ張ってサイドエアバッグ34の上部側が曲げられる(矢印X方向参照)。このように縫製部36によってサイドエアバッグ34の膨張展開形状が矯正されることにより、図1に示されるように、上部チャンバ34Aは、シートバック16の肩口部16Aから着座乗員Dの頭部H側面側へ向けて膨張展開される。
【0033】
以上説明した本実施形態の車両用サイドエアバッグ装置30によれば、上部チャンバ34Aを安定してショルダベルト22Sと車両用シート12との間に膨張展開させることが可能になる。また、本実施形態では、簡易な構成で上記効果を得ることができるので、コストも抑えられる。
【0034】
なお、上記実施形態の変形例として、図10に示されるように、折返部35の一部を縫い合わせた縫製部36、37が二箇所に設けられてもよい。図10に示される縫製部37は、繋ぎ部34Bの前部側でかつサイドエアバッグ34の周縁部の縫製部Tに対して外周側かつ近傍に設定されている。この変形例では、サイドエアバッグ34の膨張展開状態での曲げ部34P(図9参照)の形状を保持する性能が高い。なお、上部チャンバ34Aへのガスは流れ易さという点では、この変形例よりも上記実施形態の方が優れている。
【0035】
また、上記実施形態では、図1等に示される下部チャンバ34Cが着座乗員Dの腰部P及び胸部Cの両方を保護するが、上記実施形態の変形例として、下部チャンバは、着座乗員(D)の腰部(P)及び胸部(C)の一方を保護するものであってもよい。
【0036】
なお、上記実施形態及び上述の複数の変形例は、適宜組み合わされて実施可能である。
【0037】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0038】
12 車両用シート
16 シートバック
16A 肩口部
30 車両用サイドエアバッグ装置
32 インフレータ
34 サイドエアバッグ
34A 上部チャンバ
34B 繋ぎ部
34C 下部チャンバ
34P 曲げ部
35 折返部
36 縫製部
37 縫製部
38 ダクト
D 着座乗員
C 胸部
H 頭部
P 腰部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10