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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用演算装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240806BHJP
   G06F 1/26 20060101ALI20240806BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60R16/02 645D
G06F1/26 303
H02J1/00 306K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021008982
(22)【出願日】2021-01-22
(65)【公開番号】P2022112939
(43)【公開日】2022-08-03
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉武 慎介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勉
(72)【発明者】
【氏名】森本 康治
(72)【発明者】
【氏名】岡野 俊一
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-221038(JP,A)
【文献】特開2019-043271(JP,A)
【文献】特開2008-072880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
16/03
16/033
G06F 1/26- 1/3296
H02J 1/00- 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行に関する演算を行う主演算IC(Integrated Circuit)を有する車両用演算装置であって、
前記主演算ICが搭載された演算装置本体と、
前記演算装置本体に設けられ、第1電源に電気的に接続された第1給電部と、
前記演算装置本体に前記第1給電部とは独立して設けられ、前記第1電源よりも高電圧な第2電源に電気的に接続される第2給電部と、
前記第1給電部と前記主演算ICとを接続する第1電源ラインと、
前記演算装置本体内に設けられ、前記第2給電部から供給される電圧を降圧させる電圧変換ICと、
前記演算装置本体内に設けられ、前記第1給電部の給電異常を検出するための電源監視ICと、
前記電圧変換ICの下流と前記第1給電部の下流とをリレーを介して接続する第2電源ラインと、を備え、
前記電源監視ICは、前記第1給電部の給電異常が検出されたときには、前記第1給電部からの給電を遮断するとともに、前記第2電源ラインを前記第1電源ラインに電気的に接続し、
前記主演算ICは、前記第2電源ラインを介して前記第2給電部から電力が供給されるときには、前記第1給電部から電力が供給されるときと比較して、前記車両の走行に関する機能を制限することを特徴とする車両用演算装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用演算装置において、
前記第1給電部を構成するコネクタは、前記第2給電部を構成するコネクタとは離間して配置されていることを特徴とする車両用演算装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用演算装置において、
前記主演算ICは、前記車両の周辺情報に基づいて、該車両を自動で走行させる自動運転機能を有し、
さらに前記主演算ICは、前記第2給電部から電力が供給されるときには、前記車両を、該車両の周辺に位置する停止可能領域まで走行させて停止させた後、前記自動運転機能を停止させることを特徴とする車両用演算装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車両用演算装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車などの移動体には多数の電子機器が配置される。これに伴い、車両には、供給電圧の異なる複数種類の電源(例えば、12V電源と48V電源)が搭載されるようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、第1電源と、第1電源よりも高電圧の電力を供給するための第2電源と、第2電源から出力された電力の電圧を、第1電源の電圧に降圧する降圧部と、を備え、車体に配策された幹線の電源ラインに、第1電源からの電力と、降圧部で降圧された第2電源からの電力とが供給される車両用回路構成が開示されている。
【0004】
特許文献1では、第2電源は車両後部に設置され、幹線の少なくとも一部が車両前後方向に配索され、高圧部が幹線の車両後側の端部において幹線の電源ラインと接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2017/222077号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車両の走行を制御する演算装置も電源からの電力供給を受けて作動する。自動車の電子制御が主流になっている状況では、演算装置は特に電源冗長性が必要である。特許文献1に記載のような構成では、同じ電源ラインに2つの電源からの電力が供給されているため、ある程度の冗長性は得られる。
【0007】
しかし、特許文献1の構成では、電源と演算装置とを接続する電線の断線時などには、演算装置への電力の供給が困難になる。
【0008】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両の走行を制御する演算装置の電源冗長性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術では、車両の走行に関する演算を行う主演算IC(Integrated Circuit)を有する車両用演算装置を対象として、前記主演算ICが搭載された演算装置本体と、前記演算装置本体に設けられ、第1電源に電気的に接続された第1給電部と、前記演算装置本体に前記第1給電部とは独立して設けられ、前記第1電源よりも高電圧な第2電源に電気的に接続される第2給電部と、前記第1給電部と前記主演算ICとを接続する第1電源ラインと、前記演算装置本体内に設けられ、前記第2給電部から供給される電圧を降圧させる電圧変換ICと、前記演算装置本体内に設けられ、前記第1給電部の給電異常を検出するための電源監視ICと、前記電圧変換ICの下流と前記第1給電部の下流とをリレーを介して接続する第2電源ラインと、を備え、前記電源監視ICは、前記第1給電部の給電異常が検出されたときには、前記第1給電部からの給電を遮断するとともに、前記第2電源ラインを前記第1電源ラインに電気的に接続する、という構成とした。
【0010】
この構成によると、演算装置本体内に電圧変換ICが設けられており、演算装置単体で、第2電源からの電力を主演算ICに供給可能になっている。このため、たとえば、第1電源と第1給電部との接続が断たれたとしても、第2電源から主演算ICに電力を供給することができる。また、演算装置本体内に電源監視ICが設けられていることにより、第1給電部からの電力供給が困難になったときには、迅速に第2給電部から主演算ICに電力を供給させることができる。したがって、車両の走行を制御する演算装置の電源冗長性を向上させることができる。
【0011】
前記車両用演算装置において、前記第1給電部を構成するコネクタは、前記第2給電部を構成するコネクタとは離間して配置されている、という構成でもよい。
【0012】
この構成によると、第1給電部のコネクタと第2給電部のコネクタとが離間しているため、衝突などの外的要因により第1給電部と第2給電部との両方に同時に異常が生じる可能性が抑えられる。これにより、演算装置の電源冗長性をより向上させることができる。
【0013】
前記車両用演算装置の一実施形態では、前記主演算ICは、前記第2電源ラインを介して前記第2給電部から電力が供給されるときには、前記第1給電部から電力が供給されるときと比較して、前記車両の走行に関する機能を制限する。
【0014】
すなわち、相対的に低電圧な第1電源から直接供給される電力と、相対的に高電圧な第2電源から電圧降下ICを介して供給される電力とでは、電圧波形の揺らぎ度合い等の電力の質が異なる。このため、第2給電部からの電力を利用した制御は出来る限り制限することが好ましい。前述の構成であれば、演算装置の電源冗長性を確保しつつ、車両の制御の安定性も向上させることができる。
【0015】
前記一実施形態において、前記主演算ICは、前記車両の周辺情報に基づいて、該車両を自動で走行させる自動運転機能を有し、さらに前記主演算ICは、前記第2給電部からの電力が供給されるときには、前記車両を、該車両の周辺に位置する停止可能領域まで走行させて停止させた後、前記自動運転機能を停止させる、という構成でもよい。
【0016】
この構成によると、車両を停止させるまでの最低限の機能を第2給電部からの電力供給で行う。このため、電源異常時における、車両の制御の安定性をより効果的に向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、車両の走行を制御する演算装置の電源冗長性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、例示的な実施形態に係る演算装置を備えた車両の電力供給系統を示す構成図である。
図2図2は、電源と演算装置との接続を示す概略図である。
図3図3は、演算装置の構成を概略的に示すブロック図である。
図4図4は、通常モードから異常時モードに移行する際のプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、実施形態1に係る電源システムが搭載された移動体の電力供給系統の構成を示す。本実施形態1において、移動体は自動車の車両1である。この車両1は、4つのサイドドアと1つのバックドアとを備える5ドア式の車両である。車両1は、運転者によるアクセル等の操作に応じて走行するマニュアル運転と、運転者の操作をアシストして走行するアシスト運転と、運転者の操作なしに走行する自動運転とが可能な車両である。以下の説明においては、移動体のこと単に車両1と表現することがある。また、「前」、「後」、「右」、及び「左」については、「車両1の前」、「車両1の後」、「車両1の右」、及び「車両1の左」を意味する。
【0021】
車両1は、図1に示すように、車両1が有するデバイスD1~D4に電力を供給可能な演算装置10を有する。また、車両1は、低圧バッテリ20(第1電源)と、高圧バッテリ30(第2電源)と、高圧バッテリ30の電圧を低圧バッテリ20の電圧まで降圧するDCDCコンバータ40とを有する。低圧バッテリ20は、例えば12Vバッテリであり、演算装置10に電線L1により接続されている。高圧バッテリ30は、例えば48Vバッテリであり、演算装置10に電線L2により接続されている。DCDCコンバータ40は、低圧バッテリ20及び高圧バッテリ30と接続されていて、高圧バッテリ30に蓄積された電力を、低圧バッテリ20の電圧に降圧した上で、演算装置10に供給できるようにしている。
【0022】
デバイスD1~D4は、演算装置10と電気的、通信的にそれぞれ接続されている。デバイスD1~D4には、演算装置10で電圧調整された電力がそれぞれ供給される。本実施形態では、例えば、デバイスD1は前照灯であり、デバイスD2はワイパーであり、デバイスD3はブレーキランプであり、デバイスD4はオルタネータである。デバイスD1~D3は、12V以下の電力により作動し、デバイスD4は、48Vの電力により作動する。ここに示すデバイスD1~D4は例示であり、これらのデバイス以外の電動デバイスが配置されることを排除するわけではない。
【0023】
デバイスD1~D4は、演算装置10と電線SLを介してそれぞれ接続されている。デバイスD1~D4には、演算装置10内の後述する電源IC(Integrated Circuit)14,15を介して電圧が調整された電力が供給される。
【0024】
図2に示すように、演算装置10は、装置本体50を有する。装置本体50は、例えば樹脂で構成されている。装置本体50は、低圧バッテリ20に電気的に接続される第1給電部51と、高圧バッテリ30に電気的に接続される第2給電部52とを有する。第2給電部52は、第1給電部51とは独立して設けられており、第1給電部51を構成する第1コネクタ51aと、第2給電部52を構成する第2コネクタ52aとは、互いに離間して配置されている。第1コネクタ51aと第2コネクタ52aとの間には、第1チャンネルCH1が配置されている。第1チャンネルCH1には、電線SLのいずれかが接続される。また、図3に示すように、装置本体50には、第2~第5チャンネルCH2~CH5が設けられている。第2~第5チャンネルCH2~CH5にも電線SLのいずれかが接続される。尚、装置本体50に設けられるチャンネルは、7つ以上でも、5つ以下でもよい。
【0025】
装置本体50は、複数のフィン53を有する。フィン53は、放熱用のフィンである。
【0026】
装置本体50内には、基板11が設けられている。基板11は、例えば、160mm×160mm程度の比較的大型の基板である。基板11には、主演算IC12、電源監視IC13、第1電源IC14、第2電源IC15、及び電圧変換IC16の複数のICが搭載されている。ここで示すICは、基板11に搭載される電子部品の例示であり、これらのIC以外の電子部品(特にIC)が基板11に搭載されることを排除するものではない。
【0027】
主演算IC12は、車両1に搭載されたデバイスを制御するためのICである。主演算IC12は、車両1に搭載された各センサからの情報に基づいて、各デバイスを制御するための制御信号を生成する。特に、本実施形態では、主演算IC12は、車両1を自動で走行させる自動運転機能を有する。主演算IC12は、車両1に搭載されたカメラやレーダーから取得される車外環境情報、ナビシステム等から取得される地図情報、位置センサから取得される位置情報等に基づいて、車両1の走行経路を設定する。主演算IC12は、設定した走行経路を追従するためのエンジン、ブレーキ、及びステアリングを含む各デバイスの制御量を算出し、該制御量に応じた制御信号を各デバイスに送信する。経路の設定方法等はステートラティス法等の既知の方法を採用することができるため、詳細な説明を省略する。
【0028】
主演算IC12は、第1電源ライン17を介して第1給電部51と電気的に接続されている。電源監視IC13と第1電源IC14は、第1電源ライン17における第1給電部51と主演算IC12との間に設けられている。主演算IC12は、第1電源IC14により12V以下に調整された電圧により作動する。
【0029】
電源監視IC13は、第1給電部51の給電異常を検出するためのICである。具体的には、電源監視IC13は、第1給電部51を介して供給される低圧バッテリ20からの電力の異常を検出する。電力の異常は、例えば、電圧及び電流の大きさ、電圧波形の滑らかさ、ノイズレベル等である。電源監視IC13は、例えば、ノイズレベルが所定のレベルを超えたときに第1給電部51からの給電異常ありと判断する、また、詳しくは後述するが、電源監視IC13は、第1給電部51からの給電異常を検出したときに、第2給電部52から電力を供給するように、電力の供給先を切り換える電源切換制御を実行する。
【0030】
第1電源IC14は、第1給電部51から供給された電力を、デバイスD1~D3及び主電源IC12に対応する電圧が調整した上で、デバイスD1~D3及び主電源IC12にそれぞれ供給するICである。図示は省略しているが、第1電源IC14により調整された電力は、第1~第5チャンネルCH1~CH5からデバイスD1~D3に出力される。
【0031】
第2電源IC15は、第2給電部52から供給された電力を、デバイスD4に供給するICである。第2電源IC15により調整された電力は、第1~第5チャンネルCH1~CH5のいずれかからデバイスD4に出力される。
【0032】
電圧変換IC16は、第2給電部52を介して高圧バッテリ30から供給された電力を低圧バッテリ20の電圧と同じ電圧に降圧させるICである。
【0033】
第2給電部52、第2電源IC15、及び電圧変換IC16は、第2電源ライン18により互いに接続されている。第2電源ライン18は、電圧変換IC16の下流において、リレー19を介して第1給電部51の下流と電気的に接続されている。具体的には、図3に示すように、第2電源ライン18は、第1電源ライン17における電源監視IC13よりも下流でかつ第1電源IC14よりも上流の部分と電気的に接続されている。
【0034】
リレー19は、切換式のリレーであって、電源監視IC13により制御される。
【0035】
ここで、図1及び図2に示すように、高圧バッテリ30と低圧バッテリ20とはDCDCコンバータ40を介して接続されているため、低圧バッテリ20に異常が生じたり、充電残量が枯渇したりしたとしても、高圧バッテリ30からDCDCコンバータ40を介して電力の供給が可能である。これにより、演算装置10の電源冗長性をある程度は得ることができる。
【0036】
しかしながら、衝突により電線L1が断線したり、電線L1が経年劣化によってノイズを発生させやすくなったりしたときには、DCDCコンバータ40を介して電力を供給するだけでは、給電異常を抑制することができない。そこで、本実施形態では、電源監視IC13により、第1給電部51の給電異常が検出されたときには、異常時モードとして、第1給電部51からの給電を遮断するとともに、第2電源ライン18を第1電源ライン17に電気的に接続するようにした。
【0037】
具体的には、電源監視IC13は、通常モードでは、リレー19を第1電源ライン17に接続して、第1給電部51と第1電源14とを接続する一方、異常時モードでは、リレー19を切り換えて、第1給電部51と第1電源ライン17との接続を遮断して、第2電源ライン18と第1電源ライン17とを接続する。第1電源ライン17は、第2電源ライン18における電圧変換IC16よりも下流と接続されるため、第1電源ライン17には、電圧変換IC16により降圧された高圧バッテリ30からの電力が供給される。
【0038】
電源監視IC13は、第1給電部51の給電異常を検出して、通常モードから異常時モードに移行するときには、主演算IC12に異常時モードに移行することを通知する。電源監視IC13から通知を受けた主演算IC12は、車両1の走行に関する機能を制限する。すなわち、異常時モードでは、主演算IC12にも第2給電部52から電力が供給される。主演算IC12は、第2電源ライン18を介して第2給電部52から電力が供給されるときには、第1給電部51から電力が供給されるときと比較して、車両1の走行に関する機能を制限する。第1給電部51を介して低圧バッテリ20から供給される電力と、高圧バッテリ30から電圧降下IC16を介して供給される電力とでは、電圧波形の揺らぎ度合い等の電力の質が異なる。特に、前述したように、主演算IC12は、12V以下の電圧で作動するため、高圧バッテリ30の電力を電圧調整した電力よりも、低圧バッテリ20の電力を電圧調整した電力の方が、作動用の電力としては適切である。また、電力が供給されるまでの経路が長くなるため、ノイズが大きくなるおそれがある。このため、第2給電部52からの電力を利用した制御は出来る限り制限することが好ましい。
【0039】
特に、本実施形態では、主演算IC12は、第2給電部52から電力が供給されるときには、車両1を、該車両1の周辺に位置する停止領域まで走行させて停止させた後、自動運転機能を停止させる。すなわち、自動運転機能は、画像処理、経路生成、デバイスの制御量の演算など、主演算IC12の負荷がかなり大きく、消費電力も大きい。このため、第2給電部52からの電力では、適切な経路生成が出来ずに走行安定性が低下するおそれがある。また、自動運転機能で電力を消費するよりも、電話機能等の緊急時用の機能のために電力を残すことが好ましい。そこで、主演算IC12は、路肩や周囲の駐車場等の安全に停止可能な停止領域を検出して、検出した停止領域までは車両1を自動走行させて、停止領域への到着後は、自動運転機能を停止させる。その後は、例えば、手動運転をするための機能は作動させておいてもよいし、手動運転に関する機能をも停止させて、電話機能等のみ作動可能な状態にしてもよい。
【0040】
次に、図4のフローチャートを参照しながら、通常モードから異常時モードへ移行する際のプロセスについて説明する。図4のフローチャートは、予め設定された周期で実行される。
【0041】
先ず、ステップS1において、電源監視IC13は、第1給電部51と接続された第1電源ライン17の電力を読み取る。
【0042】
次に、ステップS2において、電源監視IC13は、第1電源ライン17の電力に異常があるか否かを判定する。電源監視IC13は、電力異常があるYESのときにはステップS3に進む。一方で、電源監視IC13は、電力異常がないNOのときにはプロセスを終了する。
【0043】
前記ステップS3では、電源監視IC13は、主演算IC12に通常モードから異常時モードに移行することを通知する。
【0044】
次に、ステップS4において、電源監視IC13は、通常モードから異常時モードへの移行を開始する。
【0045】
続く、ステップS5において、電源監視IC13は、リレー19の接続を第1電源ライン17から第2電源ライン18に切り換える。これにより、主演算IC12には、第2電源ライン18からの電力が供給されるようになる。
【0046】
次いで、ステップS6において、主演算IC12は、車両1の周辺にある停止領域を検索する。主演算IC12は、地図情報や車両1の周辺情報等に基づいて停止領域を検索する。
【0047】
次に、ステップS7において、主演算IC12は、車両1を停止領域へ移動させる。このとき、主演算IC12は、停止領域までの経路と、該経路を追従するためのデバイスの制御量を算出して、自動運転により車両1を停止領域に移動させる。
【0048】
続いて、ステップS8において、主演算IC12は、車両1が停止領域への移動を完了したか否かを判定する。主演算IC12は、車両1が停止領域への移動を完了したYESのときには、ステップS9に進む。一方で、主演算IC12は、車両1が停止領域への移動を完了していないNOのときには、ステップS7に戻って、停止領域への移動を継続する。
【0049】
前記ステップS9では、主演算IC12は、車両1を停止領域に停止させる。そして、主演算IC12は、車両1の自動運転機能を停止させる。ステップS9の後は、プロセスを終了する。
【0050】
したがって、本実施形態では、主演算IC12が搭載された装置本体50と、装置本体50に設けられ、低圧バッテリ20に電気的に接続された第1給電部51と、装置本体50に第1給電部51とは独立して設けられ、低圧バッテリ20よりも高電圧な高圧バッテリ30に電気的に接続される第2給電部52と、第1給電部51と主演算IC12とを接続する第1電源ライン17と、装置本体50内に設けられ、第2給電部52から供給される電圧を降圧させる電圧変換IC16と、装置本体50内に設けられ、第1給電部51の給電異常を検出するための電源監視IC13と、電圧変換IC16の下流と第1給電部51の下流とをリレー19を介して接続する第2電源ライン18と、を備え、電源監視IC13は、第1給電部51の給電異常が検出されたときには、第1給電部51からの給電を遮断するとともに、第2電源ライン18を第1電源ライン17に電気的に接続する。このように、装置本体50内に電圧変換IC16を設けることで、演算装置10単体で、高圧バッテリ30からの電力を主演算IC12に供給可能になっている。このため、電線L1が断線したとしても、高圧バッテリ30から主演算IC12に電力を供給することができる。また、装置本体50内に電源監視IC13が設けられていることにより、第1給電部51からの電力供給が困難になったときには、迅速に第2給電部52から主演算IC12に電力を供給させることができる。したがって、車両1の走行を制御する演算装置10の電源冗長性を向上させることができる。
【0051】
また、本実施形態では、第1給電部51を構成するコネクタ51aは、第2給電部52を構成するコネクタ52aとは離間して配置されている。これにより、車両衝突により第1給電部51に異常が生じたときに、第2給電部52にまで異常が生じるのを抑制することができる。この結果、車両1の走行を制御する演算装置10の電源冗長性をより向上させることができる。
【0052】
また、本実施形態では、主演算IC12は、第2電源ライン18を介して第2給電部52から電力が供給されるときには、第1給電部51から電力が供給されるときと比較して、車両1の走行に関する機能を制限する。特に、本実施形態では、主演算IC12は、第2給電部52から電力が供給されるときには、車両1を、該車両1の周辺に位置する停止可能領域まで走行させて停止させた後、車両1の自動運転機能を停止させる。これにより、電力の供給先が変更されて、電力の質が変化することにより、車両の制御の安定性が低下することを抑制することができる。
【0053】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0054】
例えば、前述の実施形態では、リレー19を第1電源IC14の上流側に配置した。これに限らず、例えば、第1電源IC14からチャンネルCH1~CH6に延びるラインにリレーを配置するようにしてもよい。この構成であれば、演算装置10内で断線が生じたとしても、各デバイスに電力を供給することができ、電源冗長性をより向上させることができる。この場合、電圧変換IC16に、第2給電部52からの電力を各デバイスの駆動電圧に応じた電圧に変換できる機能を持たせるとともに、電圧変換IC16から延びる第2電源ライン18の数も増やす必要がある。
【0055】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0056】
ここに開示された技術は、車両の走行に関する演算を行う主演算ICを有する車両用演算装置として有用である。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
10 演算装置
12 主演算IC
13 電源監視IC
16 電圧変換IC
17 第1電源ライン
18 第2電源ライン
19 リレー
50 装置本体
51 第1給電部
51a コネクタ
52 第2給電部
52a コネクタ
図1
図2
図3
図4