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  • 特許-マイクロチップ電気泳動装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】マイクロチップ電気泳動装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/447 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01N27/447 301C
G01N27/447 331E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021011103
(22)【出願日】2021-01-27
(65)【公開番号】P2022114705
(43)【公開日】2022-08-08
【審査請求日】2023-05-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003993
【氏名又は名称】弁理士法人野口新生特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 亨
(72)【発明者】
【氏名】荻野 康太
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 英郷
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/235129(WO,A1)
【文献】特開2013-195139(JP,A)
【文献】特開2012-047457(JP,A)
【文献】特開2002-372515(JP,A)
【文献】特開2012-068234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/447
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気泳動分析の対象である少なくとも1つの試料と少なくとも1つの標準試料が設置される試料設置部と、
内部に電気泳動のための流路を有する複数のマイクロチップと、
前記複数のマイクロチップ内のそれぞれの前記流路に対する分離バッファ、試料、及び標準試料の導入を行なうための導入装置と、
前記複数のマイクロチップ内のそれぞれの前記流路に電圧を印加するための電圧印加装置と、
前記複数のマイクロチップのそれぞれの前記流路における電気泳動分析による分析データを取得するための検出部と、
前記導入装置及び前記電圧印加装置の動作を制御するためのコントローラと、を備え、
前記分離バッファには複数種類が存在し、複数種類の分離バッファのそれぞれに対応した複数種類の標準試料が存在しており、
前記コントローラは、
前記分離バッファと前記標準試料の正しい組み合わせでの電気泳動分析を所定条件で実施することによって得られた標準データを記憶している標準データ記憶部と、
前記試料設置部に設置されている試料の電気泳動分析が実施される前に、前記複数のマイクロチップをそれぞれ使用して前記複数種類の標準試料のうち前記複数のマイクロチップの前記流路のそれぞれに充填されているべき分離媒体に対応した標準試料についての前記所定条件での電気泳動分析を実施して当該標準試料についての分析データを前記検出部により取得し、取得した分析データと当該標準試料についての前記標準データとを比較することにより、前記複数のマイクロチップのそれぞれの状態が、前記流路に正しい分離媒体が充填されていることによって電気泳動分析の実施に適しているか否かのチップ判定を実施するように構成されたチップ判定部と、を備えているマイクロチップ電気泳動装置。
【請求項2】
前記チップ判定部による前記チップ判定には、前記標準試料の電気泳動分析により取得した分析データ中のピーク位置と前記標準データ中のピーク位置との相関関係の評価を含む、請求項1に記載のマイクロチップ電気泳動装置。
【請求項3】
前記チップ判定部による前記チップ判定には、前記標準試料の電気泳動分析により取得した分析データ中のピーク数と前記標準データ中のピーク数との比較を含む、請求項1又は2に記載のマイクロチップ電気泳動装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記チップ判定部による前記チップ判定が終了した後で、電気泳動分析への使用に適していると前記チップ判定部によって判定されたマイクロチップを使用して前記試料設置部に設置されている試料の電気泳動分析を実施するように構成された分析実施部をさらに備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマイクロチップ電気泳動装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記チップ判定部による前記チップ判定が終了した後、電気泳動分析への使用に適していると前記チップ判定部によって判定されたマイクロチップのみを使用して前記試料設置部に設置されている試料の電気泳動分析が実施されるように分析スケジュールを決定するスケジュール決定部をさらに備え、
前記分析実施部は、前記スケジュール決定部が決定した前記分析スケジュールに従って試料の電気泳動分析を実施するように構成されている、請求項4に記載のマイクロチップ電気泳動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロチップ電気泳動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロチップ用いて電気泳動分析を行なうマイクロチップ電気泳動装置が知られている(特許文献1参照)。マイクロチップ電気泳動装置は、複数のマイクロチップを設置することができ、多数の試料の電気泳動分析を複数のマイクロチップを使用して同時並行的に実施することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-128904号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロチップ電気移動装置では、マイクロチップの性能の低下やマイクロチップに充填する分離バッファの間違いが発生すると、そのマイクロチップを使用して電気泳動分析を実施しても正しい分析データを取得することができない。しかし、これまでは、試料の電気泳動分析を実施することによって得られた分析データを検証して初めてそのような不具合が発生したことに気付くことが多く、そのような場合に不正確な分析データを取得して時間や試料を無駄にしてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、電気泳動分析への使用に適さない状態のマイクロチップを使用して電気泳動分析が実施されることを防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置は、電気泳動分析の対象である少なくとも1つの試料と少なくとも1つの標準試料が設置される試料設置部と、内部に電気泳動のための流路を有する少なくとも1つのマイクロチップと、前記マイクロチップ内の前記流路に対する分離バッファ、試料、及び標準試料の導入を行なうための導入装置と、前記マイクロチップ内の前記流路に電圧を印加するための電圧印加装置と、前記マイクロチップの前記流路における電気泳動分析による分析データを取得するための検出部と、前記導入装置及び前記電圧印加装置の動作を制御するためのコントローラと、を備えている。そして、前記コントローラは、標準試料の電気泳動分析を所定条件で実施することによって得られた標準データを記憶している標準データ記憶部と、前記試料設置部に設置されている試料の電気泳動分析が実施される前に、前記少なくとも1つのマイクロチップのそれぞれを使用して前記標準試料の前記所定条件での電気泳動分析を実施して当該標準試料についての分析データを前記検出部により取得し、取得した分析データと当該標準試料についての前記標準データとを比較することにより、前記少なくとも1つのマイクロチップのそれぞれの状態が電気泳動分析の実施に適しているか否かのチップ判定を実施するように構成されたチップ判定部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置では、コントローラが、標準試料の電気泳動分析を所定条件で実施することによって得られた標準データを記憶しており、試料の電気泳動分析が実施される前に、少なくとも1つのマイクロチップのそれぞれを使用した標準試料についての電気泳動分析を前記所定条件で実施して分析データを取得し、取得した分析データを標準データと比較することによって、少なくとも1つのマイクロチップのそれぞれの状態が電気泳動分析の実施に適しているか否かを判定するように構成されているので、電気泳動分析の実施に適さない状態のマイクロチップを使用して電気泳動分析が実施されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】マイクロチップ電気泳動装置の一実施例を示す概略構成図である。
図2】同実施例の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
図3】同実施例における試料登録画面の一例を示す図である。
図4】分離バッファの種類と標準試料の分析データとの関係を説明するためのエレクトロフェログラムの一例である。
図5】分離バッファの種類と標準試料の分析データとの関係を説明するためのエレクトロフェログラムの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置の一実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
図1に示されているように、この実施例のマイクロチップ電気泳動装置は、複数のマイクロチップ2-1~2-4、試料設置部4、分離バッファ設置部6、導入装置8、電圧印加装置10、検出部12及びコントローラ14を備えている。図示は省略されているが、マイクロチップ2-1~2-4のそれぞれは、電気泳動を行なうための流路を内部に備え、かつ、その流路の両端に通じるポートを上面に備えている。なお、この実施例では、4つのマイクロチップ2-1~2-4が設けられているが、本発明はこれに限定されるものではなく、1つ以上のマイクロチップが設けられていればよい。
【0011】
試料設置部4には、電気泳動分析の対象である1つ以上の試料、及び、試料中の成分のサイズの基準を示すための1つ以上の標準試料が設置される。試料及び標準試料は、ウェルプレートに設けられたウェル内に収容された状態で設置される。
【0012】
分離バッファ設置部6には、1種類以上の分離バッファが容器に収容された状態で設置される。
【0013】
導入装置8は、分注プローブや吸引ノズルを備えてマイクロチップ2-1~2-4に対して試料、標準試料及び分離バッファを導入するための装置である。導入装置8の具体的構成の例示はここでは省略するが、例えば、特開2020-128904号公報に開示されている構成と同等の構成とすることができる。
【0014】
電圧印加装置10は、マイクロチップ2-1~2-4のそれぞれの流路の両端に電圧を印加して試料の導入、及び試料の電気泳動を実行するための装置である。
【0015】
検出部12は、マイクロチップ2-1~2-4のそれぞれの流路において電気泳動により分離された成分を光学的に検出する。検出部12は、例えば、蛍光染色された成分に対して励起光を照射するための励起光源と、励起された蛍光色素から発せられる蛍光を検出するための光センサと、を含んでいる。
【0016】
コントローラ14は、導入装置8及び電圧印加装置10の動作を制御するとともに、検出部12により取得された検出信号に基づいて種々の演算処理を行なう。コントローラ14は、CPU(中央演算装置)及び情報記憶装置を備えた1又は複数のコンピュータ装置によって実現することができる。
【0017】
コントローラ14は、標準データ記憶部16、チップ判定部18、スケジュール決定部20及び分析実施部22を備えている。標準データ記憶部16は、情報記憶装置の一部の記憶領域によって実現される機能であり、チップ判定部18、スケジュール決定部20及び分析実施部22はCPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能である。
【0018】
標準データ記憶部16は、標準試料について所定条件で予め電気泳動分析を実施することによって取得された分析データを標準データとして記憶している。分離バッファにはDNA-500、DNA-1000、DNA-12000など複数の種類が存在し、各種類の分離バッファに対応した標準試料が存在する。標準データ記憶部16は、各標準試料について対応する分離バッファを使用して所定条件(所定の印加電圧等)で取得した分析データを、各標準試料の標準データとして記憶している。標準データには、エラー数、警告数、低分子マーカ時間、高分子マーカ時間、低分子マーカ高さ、高分子マーカ高さ、ローディング時の各ポートの電流値、電気泳動分離時の各ポートの電流値、ベースライン高さ、高分子マーカ理論段数、ノイズ振幅などを含むことができる。さらに、標準データには、エレクトロフェログラムにおける各ピークの出現時間、及び/又はエレクトロフェログラムにおけるピーク数を含むことができる。
【0019】
チップ判定部18は、試料の電気泳動分析が開始される前に、マイクロチップ2-1~2-4において標準試料の電気泳動分析を実施して当該標準試料についての分析データを取得し、取得した分析データと標準データ記憶部16に記憶されている標準データとを比較することによってマイクロチップ2-1~2-4のそれぞれの状態が試料の電気泳動分析への使用に適しているか否かのチップ判定を実行するように構成されている。チップ判定では、標準試料の電気泳動分析により得られた分析データの各項目を標準データの各項目と比較し、その偏差が許容範囲内にあるか否かを判定する。例えば、分析データのエレクトロフェログラム中の各ピークの位置と標準データのエレクトロフェログラム中の各ピークの位置との相対偏差が許容範囲内か否かを判定し、許容範囲から外れていれば当該マイクロチップを使用不可(電気泳動分析への使用に適していない)と判定する。また、分析データのエレクトロフェログラム中のピーク数と標準データのエレクトロフェログラム中のピーク数が一致しない場合も当該マイクロチップを使用不可と判定する。
【0020】
スケジュール決定部20は、マイクロチップ2-1~2-4のうち、試料の電気泳動分析への使用に適しているとチップ判定部18により判定されたマイクロチップを使用して試料の電気泳動分析が実施されるように分析スケジュールを決定する。分析スケジュールは、複数の試料をどのような順番でそれぞれどのマイクロチップを使用してどのような条件で電気泳動分析を実施するかを規定するものである。
【0021】
この実施例では、分析スケジュールがコントローラ14への試料登録の際に仮作成される。マイクロチップ2-1~2-4のすべてが試料の電気泳動分析への使用に適しているとチップ判定部18によって判定された場合、スケジュール決定部20は、試料登録の際に仮作成された分析スケジュールをそのまま決定する。一方で、マイクロチップ2-1~2-4のいずれかが試料の電気泳動分析への使用に適していないとチップ判定部18によって判定された場合、スケジュール決定部20は電気泳動分析への使用に適していると判定されたマイクロチップのみを使用して試料の電気泳動分析が実施されるように分析スケジュールを組み直して決定する。
【0022】
分析実施部22は、スケジュール決定部20により決定された分析スケジュールに従って試料の電気泳動分析を実施するように構成されている。
【0023】
この実施例の動作の一例について、図1とともに図2のフローチャートを参照しながら説明する。
【0024】
まず、コントローラ14に対する試料登録が行われる(ステップ101)。試料登録は、コントローラ14と通信可能に設けられたディスプレイ(図示は省略)に表示される試料登録画面上で行われる。
【0025】
図3は、試料登録画面の一例である。試料登録画面の左側には、各ウェルに試料や標準試料を収容するウェルプレートが表示され、右側にはウェルプレートの各ウェルに収容された試料又は標準試料の電気泳動を、どのような順番で、どのマイクロチップ(チップ)を使用して、どの種類の分離バッファを使用して実施するかの登録情報が分析スケジュールとして表示されている。試料の分析スケジュールは、ユーザが任意に決定することができる。標準試料の分析スケジュールは、試料の分析スケジュールの前に自動登録してもよいし、ユーザにそのような登録を実行させるように促す表示を行ってもよい。
【0026】
試料登録が終了してユーザが分析開始の指示をコントローラ14に対して入力すると(ステップ102)、チップ判定部18は、各マイクロチップ2-1~2-4において標準試料の電気泳動分析を実施し(ステップ103)、各マイクロチップ2-1~2-4での標準試料についての分析データを取得する。そして、チップ判定部18は、各分析データを標準データ記憶部16に記憶されている対応する標準データと比較することによって、各マイクロチップ2-1~2-4の状態が電気泳動分析への使用に適しているか否かを判定する(ステップ104)。
【0027】
チップ判定部18によるチップ判定の結果、試料の電気泳動分析に使用可能なマイクロチップが存在する場合(ステップ105:Yes)、スケジュール決定部106は使用可能なマイクロチップのみを使用して試料の電気泳動分析が実施されるような分析スケジュールを決定する(ステップ106)。分析実施部22は、スケジュール決定部20により決定された分析スケジュールに従って試料の電気泳動分析を実施する(ステップ107)。
【0028】
一方、チップ判定部18によってすべてのマイクロチップが試料の電気泳動分析に使用不可と判定された場合(ステップ105:No)、試料の分析を中止する(ステップ108)。試料の分析を中止した場合、ユーザに警告を発するなどしてマイクロチップの交換、分離バッファの設置位置の確認等を促してもよい。
【0029】
上記のように、試料の電気泳動分析が開始される前に、各マイクロチップ2-1~2-4が電気泳動分析に使用可能な状態か否かのチップ判定を実施し、使用不可能な状態のマイクロチップを除外して分析スケジュールを決定するので、使用不可能な状態のマイクロチップを使用して無駄な電気泳動分析が実施されることを防止できる。
【0030】
また、チップ判定において、エレクトロフェログラム中のピーク位置の相関関係の評価及び/又はピーク数の比較を行なうことにより、マイクロチップの性能の低下や分離バッファの取り違えなどのエラーを検知することができる。
【0031】
図4及び図5はそれぞれ、標準試料と分離バッファの組合せとピーク位置との関係の検証結果である。図4及び図5の(A)は、DNA-1000用の標準試料をDNA-1000(分離バッファ)を用いて電気泳動分析をしたときのエレクトロフェログラムであり、図4及び図5の(B)は、DNA-1000用の標準試料をDNA-500(分離バッファ)を用いて電気泳動分析をしたときのエレクトロフェログラムであり、図4及び図5の(C)は、DNA-1000用の標準試料をDNA-12000(分離バッファ)を用いて電気泳動分析をしたときのエレクトロフェログラムである。図4においては、横軸が泳動時間(秒)、縦軸が信号強度(mV)となっており、図5においては、横軸が移動時間インデックス(%)、縦軸が信号強度(mV)となっている。
【0032】
図4及び図5において(A)~(C)をそれぞれ比較すると、DNA-500を使用してDNA-1000用の標準試料の電気泳動分析を行なうと、DNA-1000を使用してDNA-1000用の標準試料の電気泳動分析を行なった場合に比べて各ピーク位置が全体的に遅くなり、DNA-12000を使用してDNA-1000用の標準試料の電気泳動分析を行なうと、DNA-1000を使用してDNA-1000用の標準試料の電気泳動分析を行なった場合に比べて各ピーク位置が全体的に早くなる。したがって、エレクトロフェログラムにおける各ピークの位置やピーク数を評価することにより、標準試料と分離バッファの組合せが正しいものであるか否かを判定することが可能である。
【0033】
以上において説明した実施例は、本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置の実施形態の一例を示したにすぎない。本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置の実施形態は以下のとおりである。
【0034】
本発明に係るマイクロチップ電気泳動装置の一実施形態では、電気泳動分析の対象である少なくとも1つの試料と少なくとも1つの標準試料が設置される試料設置部と、内部に電気泳動のための流路を有する少なくとも1つのマイクロチップと、前記マイクロチップ内の前記流路に対する分離バッファ、試料、及び標準試料の導入を行なうための導入装置と、前記マイクロチップ内の前記流路に電圧を印加するための電圧印加装置と、前記マイクロチップの前記流路における電気泳動分析による分析データを取得するための検出部と、前記導入装置及び前記電圧印加装置の動作を制御するためのコントローラと、を備え、前記コントローラは、標準試料の電気泳動分析を所定条件で実施することによって得られた標準データを記憶している標準データ記憶部と、前記試料設置部に設置されている試料の電気泳動分析が実施される前に、前記少なくとも1つのマイクロチップをそれぞれ使用して前記標準試料の前記所定条件での電気泳動分析を実施して当該標準試料についての分析データを前記検出部により取得し、取得した分析データと当該標準試料についての前記標準データとを比較することにより、前記少なくとも1つのマイクロチップのそれぞれの状態が電気泳動分析の実施に適しているか否かのチップ判定を実施するように構成されたチップ判定部と、を備えている。
【0035】
上記実施形態の第1態様では、前記チップ判定部による前記チップ判定には、前記標準試料の電気泳動分析により取得した分析データ中のピーク位置と前記標準データ中のピーク位置との相関関係の評価を含む。このような態様により、マイクロチップの性能の低下や標準試料と分離バッファの組合せの間違いといったエラーを検知することができる。
【0036】
上記実施形態の第2態様では、前記チップ判定部による前記チップ判定には、前記標準試料の電気泳動分析により取得した分析データ中のピーク数と前記標準データ中のピーク数との比較を含む。このような態様により、マイクロチップの性能の低下や標準試料と分離バッファの組合せの間違いといったエラーを検知することができる。この第2態様は、上記第1態様と組み合わせることができる。
【0037】
上記実施形態の第3態様では、前記コントローラは、前記チップ判定部による前記チップ判定が終了した後で、電気泳動分析への使用に適していると前記チップ判定部によって判定されたマイクロチップを使用して前記試料設置部に設置されている試料の電気泳動分析を実施するように構成された分析実施部をさらに備えている。このような態様により、電気泳動分析への使用に適していないマイクロチップを使用して試料の電気泳動分析が実施されることが防止される。この第3態様は、上記第1態様及び/又は第2態様と組み合わせることができる。
【0038】
上記第3態様において、前記コントローラは、前記チップ判定部による前記チップ判定が終了した後、電気泳動分析への使用に適していると前記チップ判定部によって判定されたマイクロチップのみを使用して前記試料設置部に設置されている試料の電気泳動分析が実施されるように分析スケジュールを決定するスケジュール決定部をさらに備え、前記分析実施部は、前記スケジュール決定部が決定した前記分析スケジュールに従って試料の電気泳動分析を実施するように構成されている。このような態様により、試料の電気泳動分析への使用に適していないマイクロチップが存在する場合にそのようなマイクロチップが除外された分析スケジュールが自動的に決定されるので、ユーザが分析スケジュールを作成する必要がなく、ユーザの作業負担が軽減される。
【符号の説明】
【0039】
2-1~2-4 マイクロチップ
4 試料設置部
6 分離バッファ設置部
8 導入装置
10 電圧印加装置
12 検出部
14 コントローラ
16 標準データ記憶部
18 チップ判定部
20 スケジュール決定部
22 分析実施部
図1
図2
図3
図4
図5