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特許7533248汚れ検出装置およびこれを備えた光学式センサ装置、汚れ検出方法、汚れ検出プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】汚れ検出装置およびこれを備えた光学式センサ装置、汚れ検出方法、汚れ検出プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/00 20060101AFI20240806BHJP
   G01V 8/10 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G01B11/00 Z
G01V8/10 T
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021012203
(22)【出願日】2021-01-28
(65)【公開番号】P2022115560
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】杉立 好正
(72)【発明者】
【氏名】相澤 知禎
(72)【発明者】
【氏名】高田 義教
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-192775(JP,A)
【文献】特開2000-046948(JP,A)
【文献】特開平06-242239(JP,A)
【文献】特開平06-342071(JP,A)
【文献】特開2004-017869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01C 3/00- 3/32
G01S 7/48- 7/51
17/00-17/95
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の角度範囲において光を走査しその反射光を受光して走査範囲内に存在する測定対象物までの距離を測定する光学式センサ装置に付着する汚れの有無を判定する汚れ検出装置であって、
前記光学式センサ装置から前記走査範囲に含まれる判定エリア内における前記測定対象物までの距離の測定結果を取得する測定結果取得部と、
前記測定結果取得部において取得された前記測定結果の総和を算出する総和算出部と、
前記総和算出部における算出結果と所定の閾値とを比較して、前記算出結果が前記閾値よりも大きい場合に前記光学式センサ装置に汚れが付着していると判定する判定部と、
を備えている汚れ検出装置。
【請求項2】
前記閾値は、前記光学式センサ装置に汚れが付着していない状態で取得された前記測定結果の総和の約1.5倍以上に設定されている、
請求項1に記載の汚れ検出装置。
【請求項3】
前記走査範囲に含まれる前記判定エリアを設定するエリア設定部を、さらに備えている、
請求項1または2に記載の汚れ検出装置。
【請求項4】
前記光学式センサ装置は、列車が入線する駅のプラットホームの下に設置されている、
請求項3に記載の汚れ検出装置。
【請求項5】
前記エリア設定部は、前記プラットホームにおける前記列車の入線側を、前記判定エリアとして設定する、
請求項4に記載の汚れ検出装置。
【請求項6】
前記エリア設定部において設定された前記判定エリアを保存する記憶部を、さらに備えている、
請求項3から5のいずれか1項に記載の汚れ検出装置。
【請求項7】
前記光学式センサ装置は、約180度の角度範囲で前記光を走査するとともに、
前記エリア設定部は、前記走査範囲における0度から約90度の角度範囲を前記判定エリアとして設定する、
請求項3から6のいずれか1項に記載の汚れ検出装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の汚れ検出装置と、
所定の角度範囲において光を走査する発光部と、
前記発光部が走査した光の反射光を検知する受光部と、
前記受光部における検知結果に基づいて、前記走査範囲内での前記測定対象物の有無を検出する検出部と、
を備えている光学式センサ装置。
【請求項9】
前記光学式センサ装置の発光部は、略水平方向に沿って前記光を走査する、
請求項8に記載の光学式センサ装置。
【請求項10】
前記光学式センサ装置は、駅のプラットホームから転落した人または物を検出する、
請求項8または9に記載の光学式センサ装置。
【請求項11】
前記測定対象物は、前記駅に入線してきた列車の車輪である、
請求項10に記載の光学式センサ装置。
【請求項12】
所定の角度範囲において光を走査しその反射光を受光して走査範囲内に存在する測定対象物までの距離を測定する光学式センサ装置に付着する汚れの有無を判定する汚れ検出方法であって、
前記光学式センサ装置から前記走査範囲に含まれる判定エリア内における前記測定対象物までの距離の測定結果を取得する測定結果取得ステップと、
前記測定結果取得ステップにおいて取得された前記測定結果の総和を算出する総和算出ステップと、
前記総和算出ステップにおける算出結果と所定の閾値とを比較して、前記算出結果が前記閾値よりも大きい場合に前記光学式センサ装置に汚れが付着していると判定する判定ステップと、
を備えている汚れ検出方法。
【請求項13】
所定の角度範囲内において光を走査しその反射光を受光して走査範囲内に存在する測定対象物までの距離を測定する光学式センサ装置に付着する汚れの有無を判定する汚れ検出プログラムであって、
前記光学式センサ装置から前記走査範囲に含まれる判定エリア内における前記測定対象物までの距離の測定結果を取得する測定結果取得ステップと、
前記測定結果取得ステップにおいて取得された前記測定結果の総和を算出する総和算出ステップと、
前記総和算出ステップにおける算出結果と所定の閾値とを比較して、前記算出結果が前記閾値よりも大きい場合に前記光学式センサ装置に汚れが付着していると判定する判定ステップと、
を備えている汚れ検出方法をコンピュータに実行させる汚れ検出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式センサ装置に付着する汚れの有無を判定する汚れ検出装置およびこれを備えた光学式センサ装置、汚れ検出方法、汚れ検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、測定対象物に対して光を照射してその反射光の受光量に基づいて、測定対象物の有無や測定対象物までの距離を測定する光学式センサ装置が用いられている。
このような光学式センサ装置は、光を照射する部分、光を受光する部分に汚れが付着すると、汚れによって反射光の受光量が減少してしまうため、検出精度が低下するという問題がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、保護カバーを透過した反射光を受けた受光素子からの信号に基づいて求めた受光位置情報に基づいて算出された測定対象物までの距離出力値と、測定対象物までの距離に基づいて定められた第1の閾値との差が予め定められた許容値以上であるとき、異常があると判断することで、簡単な構成で異常を検出して小型化とコストダウンが図れる光学式測距装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-53815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された光学式測距装置では、測定対象物が安定的に所定の位置にあることが分かっている場合には汚れの有無を精度良く検出することができる。しかし、測定対象物の位置にばらつきがある場合には、測定対象物が存在しないのか、保護カバーに汚れが付着しているのかを正確に判別することは困難である。
【0006】
本発明の課題は、測定対象物の位置にばらつきがある場合でも、高精度に汚れの付着を検出することが可能な汚れ検出装置およびこれを備えた光学式センサ装置、汚れ検出方法、汚れ検出プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明に係る汚れ検出装置は、所定の角度範囲において光を走査しその反射光を受光して走査範囲内に存在する測定対象物までの距離を測定する光学式センサ装置に付着する汚れの有無を判定する汚れ検出装置であって、測定結果取得部と、総和算出部と、判定部と、を備えている。測定結果取得部は、光学式センサ装置から走査範囲に含まれる判定エリア内における測定対象物までの距離の測定結果を取得する。総和算出部は、測定結果取得部において取得された測定結果の総和を算出する。判定部は、総和算出部における算出結果と所定の閾値とを比較して、算出結果が所定の閾値よりも大きい場合に光学式センサ装置に汚れが付着していると判定する。
【0008】
上記構成によれば、測定対象物の位置が判定エリア内でばらつく場合に、光学式センサ装置が清浄であれば、光学式センサ装置は測定対象物からの反射光を検知する。よって、測定対象物までの距離が適正に測定され、測定結果の総和は適切な数値範囲内に収まる。他方、光学式センサ装置が汚れると、測定対象物が判定エリア内に存在していても、光学式センサ装置は測定対象物からの反射光を検知することができない。測定結果は、測定対象物が存在しない旨を示す値、すなわち、反射光を検知できた場合と比べて大きい値となる。よって、測定結果の総和もより大きくなる。
このように、測定対象物の位置にばらつきがあっても、測定結果の総和は、汚れが酷くなるにつれて大きな値になる。汚れが付着しているか否かは、この総和に基づいて判定される。そのため、測定対象物の位置にばらつきがあっても、光学式センサ装置への汚れの付着を高精度に検出することができる。
【0009】
第2の発明に係る汚れ検出装置は、第1の発明に係る汚れ検出装置であって、閾値は、光学式センサ装置に汚れが付着していない状態で取得された測定結果の総和の約1.5倍以上に設定されている。
上記構成によれば、光学式センサ装置の測距性能が汚れによって失われる前に、汚れの付着を検知することができる。したがって、光学式センサ装置の測距性能を回復するために汚れを除去する清掃作業を、適切なタイミングで行うことができる。
【0010】
第3の発明に係る汚れ検出装置は、第1または第2の発明に係る汚れ検出装置であって、走査範囲に含まれる判定エリアを設定するエリア設定部を、さらに備えている。
上記構成によれば、測定対象物の位置にばらつきがある場合でも高精度に汚れの付着を検出する汚れ検出装置を実現することができる。
【0011】
第4の発明に係る汚れ検出装置は、第3の発明に係る汚れ検出装置であって、光学式センサ装置は、列車が入線する駅のプラットホームの下に設置されている。
光学式センサ装置が駅のプラットホームの下に設置された場合には、走行中の列車によって巻き上げられる異物で、光学式センサ装置が汚れやすい。上記構成によれば、このように汚れやすい光学式センサ装置への汚れの付着を高精度に検出するので、有益である。
【0012】
第5の発明に係る汚れ検出装置は、第4の発明に係る汚れ検出装置であって、エリア設定部は、プラットホームにおける列車の入線側を、判定エリアとして設定する。
光学式センサ装置が駅のプラットホームの下に設置された場合には、走行中の列車によって巻き上げられる異物で、光学式センサ装置のうち列車の入線側が汚れやすい。そのために、走査範囲のうち入線側は、出線側と比べてより早く、汚れ検出装置が反射光を検出できない状況に陥りやすい。上記構成によれば、この入線側が判定エリアとして設定される。よって、光学式センサ装置の入線側の汚れの付着を看過することなく検出することができ、有益である。
【0013】
第6の発明に係る汚れ検出装置は、第3から第5の発明のいずれか1つに係る汚れ検出装置であって、エリア設定部において設定された判定エリアを保存する記憶部を、さらに備えている。
上記構成によれば、測定対象物の位置にばらつきがある場合でも高精度に汚れの付着を検出する汚れ検出装置を実現することができる。
【0014】
第7の発明に係る汚れ検出装置は、第3から第6の発明のいずれか1つに係る汚れ検出装置であって、光学式センサ装置は、約180度の角度範囲で光を走査するとともに、エリア設定部は、走査範囲における0度から約90度の角度範囲を判定エリアとして設定する。
上記構成によれば、走査範囲の半分が判定エリアとして設定される。総和の対象となる測定結果が、半分に限定されるため、演算負荷を軽減することができる。また、汚れの程度の変化に対し、総和をより敏感に変化させることができる。よって、総和に基づく汚れの判定精度が向上する。なお、この半分のエリアが入線側に該当する場合には、上記のように汚れの付着を看過することなく検出することができる。
【0015】
第8の発明に係る光学式センサ装置は、第1から第7の発明のいずれか1つに係る汚れ検出装置と、所定の角度範囲において光を走査する発光部と、発光部が走査した光の反射光を検知する受光部と、受光部における検知結果に基づいて、前記走査範囲内での測定対象物の有無を検出する検出部と、を備えている。
これにより、測定対象物の位置にばらつきがあっても、測定結果の総和は、汚れが酷くなるにつれて大きな値になる。汚れが付着しているか否かは、この総和に基づいて判定される。そのため、測定対象物の位置にばらつきがあっても、光学式センサ装置への汚れの付着を高精度に検出することができる。
【0016】
第9の発明に係る光学式センサ装置は、第8の発明に係る光学式センサ装置であって、光学式センサ装置の発光部は、略水平方向に沿って光を走査する。
これにより、走査範囲およびこれに含まれる判定エリアが、略水平面状に形成される。このような走査範囲を形成可能な光学式センサ装置に汚れが付着した場合に、その汚れを高精度で検知することができる。
【0017】
第10の発明に係る光学式センサ装置は、第8または第9の発明に係る光学式センサ装置であって、光学式センサ装置は、駅のプラットホームから転落した人または物を検出する。
これにより、光学式センサに汚れが付着して転落者または転落物の検出性能が低下しても、その低下を高精度で検知することができる。光学式センサ装置の性能回復のための清掃作業を適切なタイミングで行うことができ、転落者または転落物を検出する状態を安定的に継続することができる。
【0018】
第11の発明に係る光学式センサ装置は、第8から第10の発明のいずれか1つに係る光学式センサ装置であって、測定対象物は、駅に入線してきた列車の車輪である。
一般に、各駅では列車の目標停車位置が決められている。しかし、実際の停車位置は、目標停車位置から前または後にずれる。上記構成によれば、光学式センサ装置から車輪までの距離が測定されている。列車によってその停車位置が前後にずれ、車輪の位置に判定エリア内でばらつきがあっても、光学式センサ装置への汚れの付着を高精度に検出することができる。また、通常、列車は時刻表に従って毎日決められた時刻に到着する。少なくとも1日1回汚れの有無を判定することができ、適時の清掃作業を行うために十分な頻度で汚れの有無を判定することができる。
【0019】
第12の発明に係る汚れ検出方法は、所定の角度範囲において光を走査しその反射光を受光して走査範囲内に存在する測定対象物までの距離を測定する光学式センサ装置に付着する汚れの有無を判定する汚れ検出方法であって、測定結果取得ステップと、総和算出ステップと、判定ステップと、を備えている。測定結果取得ステップでは、光学式センサ装置から走査範囲に含まれる判定エリア内における測定対象物までの距離の測定結果を取得する。総和算出ステップでは、測定結果取得ステップにおいて取得された測定結果の総和を算出する。判定ステップでは、総和算出ステップにおける算出結果と所定の閾値とを比較して、算出結果が閾値よりも大きい場合に光学式センサ装置に汚れが付着していると判定する。
これにより、測定対象物の位置にばらつきがあっても、測定結果の総和は、汚れが酷くなるにつれて大きな値になる。汚れが付着しているか否かは、この総和に基づいて判定される。そのため、測定対象物の位置にばらつきがあっても、光学式センサ装置への汚れの付着を高精度に検出することができる。
【0020】
第13の発明に係る汚れ検出プログラムは、所定の角度範囲内において光を走査しその反射光を受光して走査範囲内に存在する測定対象物までの距離を測定する光学式センサ装置に付着する汚れの有無を判定する汚れ検出プログラムであって、測定結果取得ステップと、総和算出ステップと、判定ステップと、を備えている汚れ検出方法をコンピュータに実行させる。測定結果取得ステップでは、光学式センサ装置から走査範囲に含まれる判定エリア内における測定対象物までの距離の測定結果を取得する。総和算出ステップでは、測定結果取得ステップにおいて取得された測定結果の総和を算出する。判定ステップでは、総和算出ステップにおける算出結果と所定の閾値とを比較して、算出結果が閾値よりも大きい場合に光学式センサ装置に汚れが付着していると判定する。
【0021】
これにより、測定対象物の位置にばらつきがあっても、測定結果の総和は、汚れが酷くなるにつれて大きな値になる。汚れが付着しているか否かは、この総和に基づいて判定される。そのため、測定対象物の位置にばらつきがあっても、光学式センサ装置への汚れの付着を高精度に検出することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る汚れ検出装置によれば、測定対象物の位置にばらつきがある場合でも、高精度に汚れの付着を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る光学式センサ装置を示すブロック図。
図2】第1実施形態に係る光学式センサ装置を示す平面図。
図3】光学式センサ装置の清浄状態における総和算出の処理を示す図。
図4】測定対象物が判定エリア内で変位した場合における総和算出の処理を示す図。
図5】光学式センサ装置の汚れ状態における総和算出の処理を示す図。
図6】本発明の第1実施形態に係る汚れ検出方法を示すフローチャート。
図7】本発明の第2実施形態に係る光学式センサ装置を示す平面図。
図8図7のVIII-VIII線に沿って示す軌道およびプラットホームの断面図。
図9図7の拡大図。
図10】(A)が清浄状態における総和算出の処理を示す図。(B)が汚れ状態における総和算出の処理を示す図。
図11】本発明の第3実施形態に係る判定エリアを示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。全図を通じて同一または対応する要素には同一の符号を付して詳細説明の重複を省略する。
<第1実施形態>
図1および図2は、本発明の第1実施形態に係る汚れ検出装置10およびこれを備える光学式センサ装置1を示す。光学式センサ装置1は、汚れ検出装置10の他、筐体2、発光部3、受光部4、検出部5および測定部6を備えている。筐体2は、少なくとも発光部3および受光部4を収容している。筐体2には、光透過性を有した透過部2aが設けられている。透過部2aは、発光部3から射出される走査光SLと、受光部4で検知される反射光RLとを透過させる。汚れ検出装置10は、光学式センサ装置1(特に、透過部2a)に付着する汚れの有無を判定する。
【0025】
本実施形態では、光学式センサ装置1が、前壁51、後壁52、左壁53および右壁54で囲まれた平面視矩形状の部屋50内に配置されている。光学式センサ装置1は、部屋50の左右方向中央部かつ後部に配置されている。前壁51には、出入口あるいは窓などの開口55が形成されている。部屋50内には、測定対象物56が設置されている。測定対象物56は、単なる一例として、円柱状である。光学式センサ装置1は、測定対象物56までの距離を測定する。測定対象物56は、部屋50内における所定領域内で変位し得る。
【0026】
(発光部)
発光部3は、所定の角度範囲φMにおいて走査光SLを走査する。
発光部3は、光源部7、偏向器8およびアクチュエータ9を有している。光源部7は、走査光SLを生成する。走査光SLは、例えば赤外線レーザであり、レーザ発振器は、光源部7の好適例である。偏向器8は、光源部7で生成された走査光SLを偏向する。偏向器8は、例えばポリゴンミラーなどの可動ミラーであり、偏向器8上での走査光SLの反射点が走査中心SCである。走査中心SCは、筐体2内に位置する。アクチュエータ9は、偏向器8を回転駆動する。アクチュエータ9は、例えばサーボモータである。
【0027】
走査光SLは、筐体2の内部から透過部2aを通過して筐体2の外部へ直線的に射出される。走査光SLは、走査中心SC周りに角度範囲φM内で走査角θを変更しながら走査される。このようにして、2次元的な(すなわち、平面状の)走査範囲SRが形成される。本実施形態では、走査光SLが水平に射出され、走査範囲SRが水平面を成す。平面視において、走査範囲SRは、走査中心SCを中心として角度範囲φMを中心角とする扇形に形成される。
【0028】
ここで、走査光SLが、光学式センサ装置1から前方に射出されているとき、その走査光SLの走査角θを0°とする。走査光SLが左方(図2の紙面右方)へ射出されるとき、その走査光の走査角θを負値とする。走査光SLが右方(図2の紙面左方)へ射出されるとき、その走査光の走査角θを正値とする。
角度範囲φMは、走査開始角θMsの走査角θから走査終了角θMeの走査角θまでの角度である。角度範囲φMは、約180°である。走査開始角θMsの絶対値と走査終了角θMeの絶対値は、互いに等しく、概略90°である。本実施形態では、角度範囲φMが180°よりも僅かに大きく、絶対値が90°よりも僅かに大きい。例えば、走査開始角θMsは-95°であり、走査終了角θMeは+95°であり、角度範囲φMが190°である。なお、走査光SLの回転走査方向は、逆でもよい。
【0029】
発光部3は、1回のスキャン動作で、走査開始角θMs(-95°)の走査角θで走査光SLが射出される状態から、0°の走査角θで走査光SLが射出される状態を経て、走査終了角θMe(+95°)の走査角θで走査光SLが射出される状態になるまで、走査角θを増大させながら走査光SLを走査中心SC周りに角移動させる。発光部3は、このスキャン動作を高速で繰り返す。
【0030】
(受光部)
図3を参照し、受光部4は、発光部3が走査した走査光SLの反射光RLを検知する。
走査範囲SR内に物体(本例では、壁51~54および測定対象物56)が存在する場合、走査光SLが、その物体上で反射する(図3の丸印(○および●)を参照)。反射光RLの一部は、走査光SLと同一の光路に沿って光学式センサ装置1へ返り、透過部2aを通過して筐体2内に進入する。受光部4は、筐体2内に進入した反射光RLの光量を検知する素子(例えば、位置検出素子あるいはイメージセンサ)によって構成される。
走査範囲SRの半径は、受光部4による反射光RLの検知可否に応じて決められる。本実施形態では、走査範囲SRの半径は、約25mである。
【0031】
(検出部)
検出部5は、受光部4における検知結果に基づいて測定対象物56の有無を検出する。
所定光量以上の反射光RLが受光部4で検知されると、検出部5は、走査範囲SR内に測定対象物56が存在することを検知する。更に、検出部5は、受光部4で検知された反射光RLがどの走査角θで射出された走査光SLの反射によって生成されたのかを検知する。すなわち、検出部5は、測定対象物56の方位を検出する。
走査光SLの走査角θは、偏向器8の姿勢に応じて連続的に変化する。他方、検出部5は、所定の角度分解能ごとに走査角θ(測定対象物の方位)を離散的に検出する。角度分解能は、例えば、0.042°~1°である。
【0032】
(測定部)
検出部5で測定対象物56の存在が検知されると、測定部6は、測定対象物56までの距離を測定する。
【0033】
測定部6は、走査光SLがある走査角θで射出されてからその反射光RLが受光部4で検知されるまでの走査光SLの飛行時間と、部屋50内での走査光SLの伝播速度とに基づいて、光学式センサ装置1(筐体2)から測定対象物56までの距離L(θ)を測定する。走査光SLの反射位置RPの方位および距離を検出または測定することで、反射位置RPの走査範囲SR内での位置が特定される(図3の丸印(○および●)を参照)。
【0034】
ここで、参照符号「L(θ)」は、光学式センサ装置1から、ある走査角θで射出された走査光SLの反射位置RPまでの距離である。例えば、L(-30°)は、θ=-30°の場合における距離、すなわち、光学式センサ装置1から、-30°の走査角θで射出された走査光SLの反射位置RPまでの距離である。
仮に光学式センサ装置1が清浄状態であっても、走査光SLが走査範囲SR内で物理的に反射し得ない場合もある。図3では、走査角θが10°および15°である場合、走査光SLが開口55を通り抜けている。なお、図3において、走査範囲SRの限界を表した弧上の菱形印(◇)は、受光部4が反射光RLを検知できなかった旨を示す。この場合、測定部6は、L(10°),L(15°)の測定結果として、受光部4が反射光RLを検知できなかった旨を示した「測定不可値」を設定する。
【0035】
測定不可値は、走査範囲SRの半径よりも大きい値に設定される。走査範囲SRの限界付近で生成された反射光RLが正常に検知された場合における距離の測定結果と区別できるように、測定不可値は、十分に大きい値に設定される。換言すれば、測定不可値は、測定結果として取り得る数値の最大値である。本実施形態に係る汚れ検出装置10は、この測定不可値の性質を利用し、光学式センサ装置1に付着した汚れを検出する。
【0036】
(汚れ検出装置)
汚れ検出装置10は、図示しないCPU、メモリおよび入出力インターフェイスを有するコンピュータで構成されている。汚れ検出装置10は、単一のコンピュータであってもよいし、物理的に分散された複数のコンピュータの複合であってもよい。汚れ検出装置10がコンピュータの複合である場合、コンピュータの一部が筐体2に収容されていてもよい。
【0037】
CPUは、メモリに記憶される汚れ検出プログラムを読み出し、汚れ検出プログラムにおいて指示される手順に沿って情報処理を実行する。これにより、本発明の第1実施形態に係る汚れ検出方法(図6を参照)が実行される。汚れ検出装置10は、汚れ検出プログラムに従って汚れ検出方法を実行するコンピュータの一例である。
汚れ検出装置10は、汚れ検出プログラムに従って情報処理を実行することで、記憶部11、エリア設定部12、測定結果取得部13、総和算出部14および判定部15を有している。
【0038】
記憶部11は、コンピュータのメモリによって実現される。記憶部11は、汚れ検出プログラムの実行に必要なデータあるいは情報を一時的に記憶することができる。例えば、記憶部11には、判定エリアDAおよび閾値sTHが保存されている。
【0039】
(エリア設定部)
エリア設定部12は、記憶部11を参照して、記憶部11に保存された判定エリアDAを走査範囲SR内に設定する。
図2および図3に示すように、判定エリアDAは、判定開始角θDsの走査角θから判定終了角θDeの走査角θまでの判定角度範囲φDを有している。判定開始角θDsは、走査開始角θMsまたはそれよりも大きい任意の角度である。判定終了角θDeは、走査終了角θMeまたはそれよりも小さい任意の角度である。
判定エリアDAは、走査範囲SR内に設定されるため走査範囲SRと同様、2次元的に形成される。平面視において、判定エリアDAは、走査中心SCを中心として判定角度範囲φDを中心角とする扇形に形成される。
【0040】
判定エリアDAは、走査範囲SRのうち、変位し得る測定対象物56が存在する領域、すなわち、予め想定される測定対象物56の変位範囲を覆うようにして設定される。本実施形態では、単なる一例として、判定開始角θDsが-85°、判定終了角θDeが25°であり、判定角度範囲φDが110°である。測定対象物56の変位範囲は、この判定エリアDA内に収まっている。
【0041】
(測定結果取得部)
測定結果取得部13は、判定エリアDA内における距離L(θ)の測定結果を測定部6から取得する。
図3を参照して、測定結果取得部13は、1回のスキャン動作の間において、判定エリアDA内で測定された距離L(θ)の測定結果を取得する。測定結果は、後述のとおり総和sの算出に利用されるため、測定結果取得部13は、複数の測定結果を取得する。
【0042】
複数の測定結果は、判定エリアDAの判定角度範囲φD内における複数の互いに異なる走査角θと対応する。以下、複数の測定結果をまとめて「集合R」と呼ぶ。
測定部6は、判定角度範囲φD外の走査角θと対応する距離L(θ)を測定することも可能である。しかし、その測定結果は、総和sの算出に利用されない。図3では、測定結果の集合Rに含まれて総和sの算出に利用される走査光SLの反射位置を黒塗潰し丸印(●)で示し、集合Rに含まれず総和sの算出に利用されない走査光SLの反射位置を白抜き丸印(○)で示している。10°および15°は、判定角度範囲φDに含まれるため、L(10°),L(15°)は集合Rに含まれるが、走査光SLが反射しないため測定結果が測定不可値となる。そのため、10°および15°の走査光SLには、特別に菱形印(◇)が付されている。
【0043】
複数の測定結果と対応する複数の走査角θは、単位角度Δθごとに離れている。この場合、集合Rは、L(θDs),L(θDs+Δθ),L(θDs+2Δθ),…L(θDe)の測定結果を構成要素とする。判定角度範囲φDを単位角度Δθで除算した値に1を足した数が、集合Rに含まれる測定結果の個数である。単位角度Δθは、前述した検出部5および測定部6における角度分解能と同じでもよいし、それよりも大きくてもよい。本実施形態では、単なる一例として、また、図示便宜上、単位角度Δθが、角度分解能よりも大きい5°である。
図3に示される具体例では、測定結果取得部13が、1回のスキャン動作の間に得られた測定結果の集合Rとして、{L(-85°),L(-80°),L(-75°),…,L(20°),L(25°)}の合計23(=110/5+1)個の測定結果を取得する。
【0044】
(総和算出部)
総和算出部14は、測定結果取得部13において取得された測定結果の総和sを算出する。総和算出部14は、測定結果の集合Rの構成要素{L(θDs),L(θDs+Δθ),L(θDs+2Δθ),…L(θDe)}の総和sを算出する。
【0045】
(判定部)
判定部15は、総和算出部14における算出結果と所定の閾値sTHとを比較する。前述したとおり、閾値sTHは記憶部11に保存されており、判定部15は、比較に際して記憶部11を参照する。判定部15は、算出結果が閾値sTHよりも大きい場合に、光学式センサ装置1に汚れが付着していると判定する。
【0046】
図2に示すように、走査光SLは、走査開始角θMsから走査終了角θMeまでの角度範囲φM内で走査される。その過程で、走査光SLは、左壁53、前壁51および右壁54にこの順で照射され、走査光SLの反射位置RPが移動する。反射位置RPが左壁53上で移動している過程で、走査光SLは、測定対象物56の外周面に照射される。反射位置RPが前壁51上で移動している過程で、走査光SLは、開口55を通り抜ける。
【0047】
図3は、光学式センサ装置1に汚れが付着していない状態(清浄状態)を示す。この清浄状態では、受光部4は、判定エリアDA内で、開口55を通り抜けず左壁53および前壁51または測定対象物56で反射した反射光RLを、全て検知することができる。
測定結果取得部13は、判定エリアDA内における距離L(θ)の複数の測定結果を取得する(-85°≦θ≦+25°)。取得された複数の測定結果のうち、L(-85°)~L(-60°)は、左壁53までの距離を示す。L(-55°)~L(-40°)は、測定対象物56までの距離を示す。L(-35°)~L(+5°)およびL(+20°)~L(+25°)は、前壁51までの距離を示す。L(+10°)~L(+15°)は、測定不可値に設定される。
【0048】
総和算出部14は、測定結果取得部13によって取得された複数の測定結果の総和sを算出する。閾値sTHは、このように清浄状態で取得された測定結果の総和sに基づいて決定される。例えば、閾値sTHは、清浄状態で取得された測定結果の総和sの1.5倍以上に設定されている。また、閾値sTHは、清浄状態で取得された測定結果の総和sの2.0倍以下に設定されている。決定された閾値sTHが、記憶部11に保存される。
【0049】
(作用)
図4は、光学式センサ装置1の清浄状態を示す。受光部4は、判定エリアDA内で、開口55を通り抜けず左壁53、前壁51または測定対象物56で反射した反射光RLを、全て検知することができる。ただし、測定対象物56が、図3に示した位置(図4では破線で示す)から判定エリアDA内で変位している。
【0050】
図3では、L(-55°)~L(-40°)が、測定対象物56までの距離を示す。図4では、測定対象物56が変位したため、これら走査角θ(-55°~-40°)で射出された走査光SLは、左壁53または前壁51で反射される。このため、L(-55°)~L(-40°)の測定結果はいずれも、図3の場合と比べて、大きくなる。
他方、図3では、L(-30°)~L(-10°)が、前壁51までの距離を示す。図4では、測定対象物56が変位したため、これらの走査角θ(-30°~-10°)で射出された走査光SLが、測定対象物56で反射される。このため、L(-30°)~L(-10°)の測定結果はいずれも、図3の場合と比べて、小さくなる。
【0051】
結果として、図4の場合における総和sは、図3の場合における総和sと略同じ値となる。閾値sTHが図3の場合における総和sに基づき上記のように設定されると(sTH≧1.5s)、図4の場合における総和sは、閾値sTH未満となる。よって、清浄状態においては、測定対象物56が変位したとしても、その変位が判定エリアDA内に収まっている限りにおいて、判定部15は、光学式センサ装置1に汚れが付着していないと精度よく判定することができる。
【0052】
図5は、光学式センサ装置1の汚れ状態を示す。測定対象物56の位置は図3の場合と同じである。光学式センサ装置1が汚れると、走査光SLが透過部2aを透過するときに走査光SLの光量が低下し、反射光RLが透過部2aを透過するときに反射光RLの光量が低下する。ここで、測定対象物56の表面は、壁51~54の内面よりも光を吸収しやすいものとする。
【0053】
測定対象物56から反射光RLが光学式センサ装置1に返ってきていたとしても、受光部4は、その反射光RLを検知することができなくなる。壁51~54からの反射光RLの光量減衰は、測定対象物56からの反射光RLと比べて抑えられる。このため、図5では、受光部4が、まだ、壁51~54の内面からの反射光RLを検知できている。
図3では、L(-55°)~L(-40°)が、測定対象物56までの距離を適正に示す。図5では、受光部4が測定対象物56からの反射光を検知できないため、L(-55°)~L(-40°)の測定結果が、測定不可値に設定されてしまう(菱形印(◇)を参照)。したがって、図5の汚れ状態において算出される総和sは、図3の清浄状態において算出される総和sに対し、大きくなる。
【0054】
汚れがより酷くなると、受光部4は、壁51~54からの反射光RLも検知できなくなる。汚れが酷くなるにつれ、取得された複数の測定結果のなかで測定不可値を示すものが次第に増えていき、そのため、測定結果の総和sが次第に大きくなる(図5を参照)。一方、汚れの程度が同一の条件下では、測定対象物56が判定エリアDA内で変位しても、総和sの値は大きく変化しない(図4を参照)。総和sは、判定エリアDA内における測定対象物56の位置の変化に影響を受けにくい数値であり、かつ、汚れの程度に応じて変化しやすい数値である。
判定部15は、このような総和sが閾値sTHよりも大きい場合に光学式センサ装置1に汚れが付着していると判定する。したがって、測定対象物56が変位し得る場合においても、光学式センサ装置1の汚れを精度よく検知することができる。
【0055】
(汚れ検出方法)
図6は、本実施形態に係る汚れ検出方法を示すフローチャートである。汚れ検出方法では、まず、測定部6が、判定エリアDA内において単位角度Δθごとに距離L(θ)を測定する(S1)。距離L(θ)の「θ」は、判定開始角θDsから判定終了角θDeまでの走査角である。
【0056】
次に、測定結果取得部13が、距離L(θ)の測定結果を取得する(S2)。次に、総和算出部14が、測定結果の総和sを算出する(S3)。次に、判定部15が、総和sの算出結果を閾値sTHと比較し(S4)、算出結果が閾値sTHよりも大きいか否かを判定する(S5)。算出結果が閾値sTHよりも大きければ(S5:Y)、判定部15は、光学式センサ装置1に汚れが付着していると判定する(S6)。算出結果が閾値sTH以下であれば(S5:N)、判定部15は、光学式センサ装置1に汚れが付着していないと判定する(S7)。
このような汚れ検出方法を実行することで、光学式センサ装置1の汚れを精度よく検出することができる。
【0057】
<第2実施形態>
以下、図7図10を参照して、第2実施形態に係る汚れ検出装置およびこれを備える光学式センサ装置1Aについて説明する。
【0058】
図8に示すように、光学式センサ装置1Aの筐体2は、列車Tが入線する駅のプラットホームPの下に設置されている。走査範囲SRは、プラットホームPの下方かつ軌道60の上方の高さ位置に水平に形成される。光学式センサ装置1Aは、プラットホームPから転落した人または物を検出する。
図7に示すように、列車Tは順次に連結された複数の車両Cによって構成される。複数の光学式センサ装置1AがプラットホームPの長手方向において互いに離れて配置されている。列車Tが駅で停車している在線状態において、各光学式センサ装置1Aの走査範囲SR内には2両の車両Cが収まる。
【0059】
各車両Cは、1以上の台車と、台車に支持された車体とを有する。各台車は、1以上の輪軸を有し、各輪軸は、車軸と、その両端に連結された一対の車輪Wを有する。車体の下部には、台車と隣接して、主制御器、空気圧縮機などの床下設備が設けられる。
図8に戻り、光学式センサ装置1Aから射出された走査光SLは、在線状態かつ転落者および転落物が存在しない状態において、車輪Wの側面に照射される。
【0060】
本実施形態では、エリア設定部12が、走査範囲SR内において、車輪Wが存在し得る領域に判定エリアDAを設定する。すなわち、本実施形態では、車輪Wが光学式センサ装置1Aの測定対象物である。
駅には列車Tの目標停車位置が予め定められている。列車Tの実際の停車位置は、目標停車位置に対してずれる。車輪Wの位置は、列車Tの停車位置のずれに応じて変位するが、判定エリアDA内には収まる。
【0061】
本実施形態では、光学式センサ装置1Aが屋外に設置されているため、天候(雨滴の有無、霧の有無など)の影響で測定結果が変動するおそれがある。また、停車する列車Tに搭載される設備(台車および床下設備)の外観形状は、様々である。さらに、車輪Wの停止位置は、列車Tごとに異なる。そこで、閾値sTHを決める際には、光学式センサ装置1Aが清浄な状態で所定期間(例えば、数日間)かけて在線状態での総和sのデータが取得される。閾値sTHは、複数の総和データの平均値や中央値などの統計値に基づいて決定され、例えば、統計値の1.5倍以上2.0倍以下に設定される。
【0062】
図9を参照して、本実施形態においても、走査範囲SRの角度範囲φMは、約180°である。判定エリアDAの判定角度範囲φDは90°である。判定開始角θDsが0°であり、判定終了角θDeが90°である。このように、判定エリアDAは、走査範囲SRの約半分の領域である。
光学式センサ装置1Aの前後方向は、軌道60の幅方向に向けられ、光学式センサ装置1Aの左右方向は、軌道60の延在方向に向けられている。0°の走査角では、走査光SLが、光学式センサ装置1から前方、すなわち、軌道60の幅方向に射出され、軌道60の上方を通過する。
【0063】
本実施形態では、列車Tが右方(図9の紙面左方)から左方(図9の紙面右方)へ進行する。光学式センサ装置1Aの右側(図9の紙面左側)は、光学式センサ装置1Aに近づいてくる列車Tの先頭車両と対向する側、すなわち「列車Tの入線側」である。光学式センサ装置1Aの左側(図9の紙面右側)は、光学式センサ装置1Aから遠ざかっていく列車Tの最後尾車両と対向する側、すなわち「列車Tの出線側」である。走査範囲SRは、列車Tの入線側と出線側とに二分される。判定エリアDAは、走査範囲SRの半分領域であって列車Tの入線側に設定されている。
【0064】
図10(A)は光学式センサ装置1Aの清浄状態を示し、図10(B)は光学式センサ装置1Aの汚れ状態を示す。黒塗潰し丸印(●)は、判定エリアDA内で検出された測定対象物の反射位置を示す。白抜き丸印(○)は、判定エリアDA外で検出された測定対象物の反射位置を示す。
図10(A)を参照して、光学式センサ装置1Aの清浄状態では、入線側でも出線側でも、受光部4が、破線楕円内に存在する車輪Wからの反射光RLを良好に検知している。なお、破線楕円外にも反射位置を示す丸印が図示されている。これらは、受光部4が、車輪W以外の台車の構成部品、または床下設備からの反射光を検知したことを示している。
【0065】
図10(B)を参照して、光学式センサ装置1Aの汚れ状態では、入線側でも出線側でも、受光部4で検知された反射光の反射位置が減っている。ただし、入線側の方が、反射位置がより多く減っている。この点、プラットホームPの下方に設置された光学式センサ装置1において、汚れの主因は、走行中の列車Tによって巻き上げられる鉄粉等の異物である。
【0066】
異物は、列車Tの進行方向に飛ばされやすく、そのため、光学式センサ装置1の入線側は出線側よりも汚れやすい。時間が経過するにつれ、入線側の汚れが出線側の汚れよりも酷くなる。そのため、入線側では、出線側よりも反射位置がより速く減る。
本実施形態では、判定エリアDAがこの入線側に設定されている。このため、光学式センサ装置1Aの入線側の汚れの進行に対して、測定結果の総和sを敏感に増大させることができる。したがって、光学式センサ装置1Aの入線側の汚れの進行に応じて、光学式センサ装置1Aの入線側の汚れの付着を精度よく検出することができる。
【0067】
<第3実施形態>
図11は、第3実施形態に係る第1判定エリアDA1および第2判定エリアDA2を示す。プラットホームPに、上り列車と下り列車とが両方とも停車および通過する場合がある。この場合、光学式センサ装置1の左右いずれが入線側であるのかを特定することができない。
【0068】
第3実施形態では、第1判定エリアDA1が、第2実施形態の判定エリアDA(図9を参照)と同様にして、光学式センサ装置1の右側(図11の紙面左側)に設定されており、その判定開始角θD1sは0°、判定終了角θD1eが90°である。第2判定エリアDA2は、第1判定エリアDA1の反対側に設定されており、その判定開始角θD2sは-90°、判定終了角θD2eが0°である。
【0069】
測定結果取得部13は、第1判定エリアDA1内における測定結果の集合と、第2判定エリアDA2内における距離の測定結果の集合とを取得する。
総和算出部14は、第1判定エリアDA1内における測定結果の総和sを算出するとともに、第2判定エリアDA2内における測定結果の総和sを算出する。
判定部15は、第1判定エリアDA1における総和sの算出結果を閾値sTHと比較するとともに、第2判定エリアDA2における総和sの算出結果を閾値sTHと比較する。判定部15は、いずれか一方の算出結果が閾値sTHより大きい場合に、光学式センサ装置1に汚れが付着していると判定する。
【0070】
本実施形態の構成によれば、上り列車と下り列車とが両方とも停車するプラットホームPに光学式センサ装置1が設置された場合でも、光学式センサ装置1に付着した汚れを精度よく検知することができる。
【0071】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、判定エリアDAおよび第1判定エリアDA1の判定終了角θDe,θD1eが90°、第2判定エリアDA2の判定開始角θD2sが-90°の例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、これら角度の絶対値は、約90°であればよい。例えば、85°~95°の間に設定されてもよい。
【0072】
(B)
上記実施形態では、総和sの対象となる測定結果は、単位角度Δθおきに間隔をおいた複数の走査角θと対応した複数の距離の測定結果の集合である場合の例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、総和sの対象となる測定結果は、複数の異なる走査角θの走査光SLと対応していればよい。複数の走査角θは必ずしも決められた角度ごとに等間隔に設定されていなくてもよい。
【0073】
(C)
上記実施形態では、光学式センサ装置1,1Aが部屋50またはプラットホームPの下に設置されている例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、光学式センサ装置は、自動車や自律移動ロボットなど、その他の装置に搭載されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の汚れ検出装置は、測定対象物の位置にばらつきがある場合でも、高精度に汚れの付着を検出することができるという効果を奏することから、汚れの付着が測定結果に悪影響を及ぼす光学式センサ装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0075】
1,1A 光学式センサ装置
2 筐体
2a 透過部
3 発光部
4 受光部
5 検出部
6 測定部
7 光源部
8 偏向器
9 アクチュエータ
10 汚れ検出装置
11 記憶部
12 エリア設定部
13 測定結果取得部
14 総和算出部
15 判定部
50 部屋
56 測定対象物
60 軌道
C 車両
DA,DA1,DA2 判定エリア
L(θ) 距離
P プラットホーム
R 測定結果の集合
RL 反射光
s 総和
sTH 閾値
SL 走査光
SR 走査範囲
T 列車
W 車輪(測定対象物)
θDs,θD1s,θD2s 判定開始角
θDe,θD1e,θD2e 判定終了角
φM 走査範囲の角度範囲
φD 判定角度範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11