(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】半導体レーザ素子および半導体ウェハ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/042 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H01S5/042 612
(21)【出願番号】P 2021014166
(22)【出願日】2021-02-01
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊
【審査官】皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-242574(JP,A)
【文献】特開2010-028020(JP,A)
【文献】特開2013-191810(JP,A)
【文献】特開2008-227461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/042
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性層を含む積層された複数の半導体層を有する積層体と、
前記積層体の一方の側に設けられ、前記活性層にレーザ光を発生させる電流を前記積層体に供給する直線状の第一電極と、
前記第一電極と逆極性の第二電極と
、
前記レーザ光が前記積層体内で往復するよう前記レーザ光が反射する2つの共振器端面と
を有し、
前記第一電極の端部は前記共振器端面から共振器方向に離れており、第一電極の端部と前記共振器端面の間に電流非注入領域が設けられ、
前記電流非注入領域の長さが適正か否かを検査するための検査マークをさらに有しており、
各検査マークの少なくとも一端部は、前記第一電極の端部よりも前記共振器端面の近くに配置されている
端面発光型の半導体レーザ素子
の検査方法であって、
前記検査マークと前記共振器端面の相対位置に基づいて、半導体レーザ素子の実際の劈開面である前記共振器端面と設計上の目標劈開面とのずれを認識する
ことを特徴とする半導体レーザ素子の検査方法。
【請求項2】
前記検査マークは、前記第一電極の材料と同じ金属材料から形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子
の検査方法。
【請求項3】
前記半導体レーザ素子は、前記積層体の前記第一電極が設けられる側に形成された絶縁層をさらに有し、
前記検査マークは、前記絶縁層の上に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の半導体レーザ素子
の検査方法。
【請求項4】
前記絶縁層が前記電流非注入領域に形成されており、
前記検査マークは、前記第一電極の端部から前記共振器端面に向けて、前記第一電極の長手方向に沿って突出しており、前記電流非注入領域上の前記絶縁層に重なっている
ことを特徴とする請求項3に記載の半導体レーザ素子
の検査方法。
【請求項5】
前記半導体レーザ素子は、前記積層体の前記第一電極が設けられる側に形成された絶縁層をさらに有し、
前記検査マークは、前記絶縁層に形成された開口、または前記絶縁層と同じ材料を前記絶縁層に重ねた層である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子
の検査方法。
【請求項6】
前記検査マークは、前記第一電極が延びる直線状領域に重ならない領域に位置しており、前記半導体層のいずれかに形成された開口、または前記半導体層のいずれかと同じ材料を前記半導体層のいずれかに重ねた層である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子
の検査方法。
【請求項7】
前記半導体レーザ素子は、前記積層体の前記第一電極が設けられる側に形成された絶縁層と、
前記第一電極と前記絶縁層に重ねられたパッド電極とをさらに有し、
前記パッド電極は、前記電流非注入領域において前記積層体に非オーミック接触し、
前記検査マークは、前記パッド電極に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体レーザ素子
の検査方法。
【請求項8】
半導体レーザ素子の実際の劈開面である前記共振器端面が前記検査マークを分断したか否かを判別し、前記共振器端面が前記検査マークを分断した場合、前記半導体レーザ素子を不良品であると判別する
ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体レーザ素子の検査方法。
【請求項9】
端面発光型の半導体レーザ素子であって、
活性層を含む積層された複数の半導体層を有する積層体と、
前記積層体の一方の側に設けられたリッジ部と、
前記リッジ部に形成され、前記活性層にレーザ光を発生させる電流を前記積層体に供給する直線状の第一電極と、
前記第一電極と逆極性の第二電極と、
前記リッジ部の端部に配置されて、前記第一電極の延長線上に形成された絶縁層と、
前記レーザ光が前記積層体内で往復するよう前記レーザ光が反射する2つの共振器端面と
を有し、
前記第一電極の端部は前記共振器端面から共振器方向に離れており、前記第一電極の端部と前記共振器端面の間に電流非注入領域が設けられ、
前記絶縁層が前記リッジ部の端部の前記電流非注入領域に形成されており、
前記半導体レーザ素子は、前記電流非注入領域の長さが適正か否かを検査するための検査マークをさらに有しており、
各検査マークの少なくとも一端部は、前記第一電極の端部よりも前記共振器端面の近くに配置されており、
前記検査マークは、前記第一電極の材料と同じ金属材料から形成されており、前記第一電極の端部から前記共振器端面に向けて、前記第一電極の長手方向に沿って突出しており、前記リッジ部の端部の前記電流非注入領域に形成された前記絶縁層に重なっている
ことを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項10】
端面発光型の半導体レーザ素子であって、
活性層を含む積層された複数の半導体層を有する積層体と、
前記積層体の一方の側に設けられたリッジ部と、
前記リッジ部に形成され、前記活性層にレーザ光を発生させる電流を前記積層体に供給する直線状の第一電極と、
前記第一電極と逆極性の第二電極と、
前記積層体の前記第一電極が設けられる側に形成された絶縁層と、
前記第一電極と前記絶縁層に重ねられたパッド電極と、
前記レーザ光が前記積層体内で往復するよう前記レーザ光が反射する2つの共振器端面と
を有し、
前記第一電極の端部は前記共振器端面から共振器方向に離れており、第一電極の端部と前記共振器端面の間に電流非注入領域が設けられ、
前記半導体レーザ素子は、前記電流非注入領域の長さが適正か否かを検査するための検査マークをさらに有しており、
各検査マークの少なくとも一端部は、前記第一電極の端部よりも前記共振器端面の近くに配置されており、
前記絶縁層は、前記リッジ部には形成されず、
前記パッド電極は、前記リッジ部において前記第一電極が形成された部分で前記第一電極に直接接触し、前記リッジ部において前記第一電極が形成されていない部分である前記電流非注入領域において前記積層体に非オーミック接触し、
前記検査マークは、前記パッド電極のうち前記第一電極の端部よりも前記共振器端面に近い部分である
ことを特徴とする半導体レーザ素子。
【請求項11】
請求項
9または10に記載の半導体レーザ素子を複数形成するための半導体ウェハであって、
複数行と複数列に配置された、それぞれ前記半導体レーザ素子となる複数の素子部分と、
互いに平行な複数の目標劈開面とを有し、
各目標劈開面が、隣り合う2つの前記素子部分が分割される境界となって、前記共振器端面になり、
隣り合う2つの前記素子部分の前記検査マークの間を各目標劈開面が延びる
ことを特徴とする半導体ウェハ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザ素子および半導体ウェハに関する。
【背景技術】
【0002】
端面発光型の窒化物半導体レーザ素子は、半導体レーザ素子の長さよりも直線状のストライプ電極の長さを小さくし、ストライプ電極の端部をレーザ光が往復する共振器端面から離すよう形成されることが多い。この場合、ストライプ電極の端部と共振器端面の間に、電流非注入領域が設けられる。一般に共振器端面は、半導体ウェハから個々の半導体レーザ素子を形成する場合に、半導体レーザ素子が分割される劈開面である。
【0003】
特許文献1は、正電極の端部が劈開面よりも内側に位置し、正電極の端部と劈開面(共振器端面)の間に電流非注入領域を設けた窒化物半導体レーザ素子を開示する。この技術で電流非注入領域を設ける理由は、劈開時の衝撃により、劈開面付近で電極が剥がれやすくなることを防止し、電極の剥がれのない信頼性の高いレーザ素子を提供することにある。
【0004】
特許文献2も、共振器端面からp側電極を離して形成し、p側電極の端部と共振器端面の間に電流非注入領域を設けた半導体レーザを開示する。この技術で電流非注入領域を設ける理由は、リーク電流を抑制することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-84036号公報
【文献】特開2011-29224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電流非注入領域の長さ(電極の端部と共振器端面の間隔)には適切な範囲がある。電流非注入領域が短すぎると、半導体レーザ素子の寿命が短くなる。電流非注入領域が長すぎる場合には、半導体レーザ素子の長さに対して光出力が不適切に小さいことになる。適切な範囲は、半導体レーザ素子から放出されるレーザ光の波長、出力、共振器端面に形成される膜の構造等によって変わりうる。
【0007】
電流非注入領域の長さは、半導体レーザ素子が切り出される半導体ウェハ上の電極の配置と劈開面(共振器端面)の位置で決まる。ホトリソグラフィの技術により、電極はウェハ上に精度良く配置することができる。しかし、特に窒化物半導体レーザ素子の場合、結晶歪みが大きいため、劈開面が曲がりやすい。この結果、劈開面が目標劈開位置からずれてしまい、電流非注入領域の長さがばらつくことがある。
【0008】
電流非注入領域の長さが許容範囲から外れた半導体レーザ素子は、適正な半導体レーザ素子から判別する必要がある。しかし、判別には、高倍率(500倍程度)に拡大した視野での長さ測定が必要となる。これには時間と労力を要するか、あるいは高額な検査装置が必要となる。
【0009】
そこで、本発明は、劈開面のずれを簡便かつ明確に認識することができる半導体レーザ素子および半導体ウェハを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様に係る半導体レーザ素子は、端面発光型の半導体レーザ素子であって、活性層を含む積層された複数の半導体層を有する積層体と、前記積層体の一方の側に設けられ、前記活性層にレーザ光を発生させる電流を前記積層体に供給する直線状の第一電極と、前記第一電極と逆極性の第二電極と、前記レーザ光が前記積層体内で往復するよう前記レーザ光が反射する2つの共振器端面とを有する。前記第一電極の端部は前記共振器端面から共振器方向に離れており、第一電極の端部と前記共振器端面の間に電流非注入領域が設けられている。前記半導体レーザ素子は、前記電流非注入領域の長さが適正か否かを検査するための検査マークをさらに有する。各検査マークの少なくとも一端部は、前記第一電極の端部よりも前記共振器端面の近くに配置されている。
【0011】
この態様においては、電流非注入領域の長さが適正か否かを検査するための検査マークが設けられ、検査マークの少なくとも一端部は、第一電極の端部よりも共振器端面の近くに配置されている。共振器端面は、ウェハから半導体レーザ素子を切り出すときの劈開面である。実際の劈開面が設計上の目標劈開面からずれた場合、劈開面の近傍の検査マークと実際の劈開面の相対位置に基づいて、劈開面のずれを簡便かつ明確に認識することができる。
【0012】
好ましくは、前記検査マークは、前記第一電極の材料と同じ金属材料から形成されている。この場合、第一電極を形成する時に、検査マークを形成することができるので、製造工程を増やす必要がない。更には、検査マークとp側電極間の位置ズレを最小限に抑える事ができる、といった更なる効果もある。
【0013】
さらに好ましくは、半導体レーザ素子は、前記積層体の前記第一電極が設けられる側に形成された絶縁層をさらに有し、前記検査マークは、前記絶縁層の上に形成されている。この場合、検査マークは導電性を有する金属材料から形成されているが、絶縁層上に形成されているので、レーザ発光には寄与しない。したがって、実際の劈開面が設計上の目標劈開面から許容範囲内でずれて、共振器端面に対する検査マークの位置がわずかにずれたとしてもレーザ発光には影響がない。
【0014】
この場合、前記絶縁層が前記電流非注入領域に形成されてもよい。前記検査マークは、前記第一電極の端部から前記共振器端面に向けて、前記第一電極の長手方向に沿って突出してよく、前記電流非注入領域上の前記絶縁層に重なっていてよい。この場合、検査マークは金属材料から形成されており、第一電極の端部から共振器端面に向けて突出するが、電流非注入領域上の絶縁層上に形成されているので、レーザ発光には寄与しない。したがって、実際の劈開面が設計上の目標劈開面からずれて、共振器端面に対する検査マークの位置がずれたとしてもレーザ発光には影響がない。また、この場合、検査マークは第一電極の端部から共振器端面に向けて第一電極の長手方向に沿って突出するので、第一電極のすぐ近傍で劈開面のずれの有無およびずれの大きさを確認することができる。
【0015】
あるいは、半導体レーザ素子は、前記積層体の前記第一電極が設けられる側に形成された絶縁層をさらに有してよく、前記検査マークは、前記絶縁層に形成された開口、または前記絶縁層と同じ材料を前記絶縁層に重ねた層であってもよい。この場合、絶縁層に開口を例えばエッチングで形成することにより、あるいは絶縁層と同じ材料を絶縁層に重ねることにより、検査マークを形成することができるので、製造工程の増加数が最小限で済む。
【0016】
あるいは、前記検査マークは、前記第一電極が延びる直線状領域に重ならない領域に位置しており、前記半導体層のいずれかに形成された開口、または前記半導体層のいずれかと同じ材料を前記半導体層のいずれかに重ねた層であってもよい。この場合、一つの半導体層に開口を例えばエッチングで形成することにより、あるいは一つの半導体層と同じ材料をその半導体層に重ねることにより、検査マークを形成することができるので、製造工程の増加数が最小限で済む。
【0017】
あるいは、半導体レーザ素子は、前記積層体の前記第一電極が設けられる側に形成された絶縁層と、前記第一電極と前記絶縁層に重ねられたパッド電極とをさらに有してもよい。前記パッド電極は、前記電流非注入領域において前記積層体に非オーミック接触してよく、前記検査マークは、前記パッド電極に設けられていてもよい。この場合、検査マークは電流非注入領域に配置された金属材料製のパッド電極に設けられているが、パッド電極は積層体に非オーミック接触するので、レーザ発光には寄与しない。したがって、実際の劈開面が設計上の目標劈開面からずれて、共振器端面に対する検査マークの位置がずれたとしてもレーザ発光には影響がない。また、この場合、検査マークは第一電極の端部と共振器端面の間に存在するで、第一電極のすぐ近傍で劈開面のずれの有無およびずれの大きさを確認することができる。また、パッド電極を形成する時に、検査マークを形成することができるので、製造工程を増やす必要がない。
【0018】
本発明のある態様に係る半導体ウェハは、本発明に係る半導体レーザ素子を複数形成するための半導体ウェハであって、複数行と複数列に配置された、それぞれ前記半導体レーザ素子となる複数の素子部分と、互いに平行な複数の目標劈開面とを有する。各目標劈開面が、隣り合う2つの前記素子部分が分割される境界となって、前記共振器端面になるべきものである。隣り合う2つの前記素子部分の前記検査マークの間を各目標劈開面が延びる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様においては、劈開面のずれを簡便かつ明確に認識することができる。この結果、製品の適正な電流非注入長さを確保し、製品の信頼性を向上することができる。電流非注入領域の長さを測定する必要は必ずしもなく、測定の時間と労力を削減することができ、長さ測定のための装置も必要ない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る半導体ウェハの平面図である。
【
図6】実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図7】実際の劈開面が設計上の目標劈開面からずれた場合の
図6と同様の半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図8】他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図9】他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図10】他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図11】他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図12】他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図であり、
図1のIII-III線に対応する。
【
図13】他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図であり、
図1のIII-III線に対応する。
【
図14】他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図であり、
図1のIII-III線に対応する。
【
図15】他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図17】他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図である。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII線矢視断面図である。
【
図19】他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図である。
【
図20】他の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る様々な実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0022】
実施形態に係る半導体レーザ素子は、端面発光型、具体的にはリッジ型の窒化物半導体レーザ素子である。
図1から
図4に示すように、半導体レーザ素子1は、長尺なほぼ矩形の輪郭を有する薄い板であり、基板2、半導体積層体4、絶縁層6、p側電極8、パッド電極10、n側電極12を有する。
【0023】
基板2は例えばn型のGaNから形成されている。基板2の上には、複数の半導体層を有する半導体積層体4が形成されている。半導体積層体4は、例えば、n型GaN層4a、n型クラッド層4b、n型ガイド層4c、活性層4d、p型ガイド層4e、p型クラッド層4fを有する。但し、図示の半導体積層体4は一例に過ぎず、半導体積層体4を構成する層の数および種類は図示の実施形態に限定されない。
【0024】
p型クラッド層4fの上面は、例えばエッチングによって加工され、その結果として、半導体レーザ素子1の長手方向(共振器長方向)に延びるリッジ部14が形成されている。
【0025】
絶縁層6は、例えばSiO2のような絶縁体から形成された薄膜である。絶縁層6は、p型クラッド層4fの上面のリッジ部14を除く領域に形成されている。リッジ部14を含むp型クラッド層4fの全体に絶縁層6を形成し、リッジ部14の上の絶縁層部分を例えばエッチングによって除去することによって、絶縁層6を完成することができる。あるいは、リッジ部14をマスクで覆って絶縁層6を形成してもよい。
【0026】
p側電極(第一電極)8は、直線状のストライプ電極であって、半導体積層体4の一方の側に設けられている。具体的には、p側電極8は、p型クラッド層4fの上面におけるリッジ部14とその両脇の線状の領域からなる直線状領域に形成されている。したがって、p側電極8は、リッジ部14の真上に配置された中央部分8aと、中央部分8aの両脇に位置してリッジ部14の両脇の領域の真上に配置されたサイド部分8bを有する。サイド部分8bは、絶縁層6の上に配置されているので、半導体積層体4における発光には寄与しない。各サイド部分8bは直線状の側端縁8eを有する。しかし、側端縁8eは凹凸を有していてもよい。すなわち、p側電極8について「直線状」とは、共振器方向に沿って直線状に延びる部分を少なくとも有することを意味し、必ずしもp側電極の側端縁が直線状でなくてもよい。p型クラッド層4fに直接的にオーミック接触する中央部分8aは、活性層4dにレーザ光を発生させる電流を供給する。p側電極8は、例えば、パラジウム層、白金層、金層からなる薄膜、またはパラジウム層、チタン層、白金層、金層からなる薄膜であり、GaNに接合しやすい。
【0027】
パッド電極10は、p側電極8と絶縁層6の上に形成されており、p側電極8と絶縁層6に面接触している。パッド電極10は、例えば、チタン層、白金層、金層からなる薄膜、またはモリブデン層、金層からなる薄膜であり、絶縁層6にもp側電極8にも接合しやすい。パッド電極10は、ワイヤボンディングのために設けられている。
【0028】
n側電極12は、基板2の下面に形成されており、基板2に面接触している。n側電極12は、例えば、チタン層、白金層、金層からなる薄膜であり、GaNに接合しやすい。
【0029】
図1に示すように、半導体レーザ素子1は、2つの共振器端面20,21を有する。半導体積層体4内で発生したレーザ光は、共振器端面20,21で反射を繰り返して、半導体積層体4内で往復して増幅する。共振器端面20,21の各々には、多層誘電体反射膜が形成される。共振器端面20,21の一方に設けられる多層誘電体反射膜は、他方に設けられる多層誘電体反射膜の反射率より低い反射率を有し、そこからレーザ光が外部に放出される。
【0030】
半導体レーザ素子1の長さよりもp側電極8の長さは小さい。共振器端面20側のp側電極8の端部8cは、共振器端面20から共振器方向に離れており、端部8cと共振器端面20の間には電流非注入領域22が設けられている。共振器端面21側のp側電極8の端部8dも、共振器端面21から共振器方向に離れており、端部8dと共振器端面21の間にも電流非注入領域23が設けられている。「共振器方向」とは、レーザ光が半導体積層体4で往復する方向、すなわち共振器端面20,21に直交する方向であり、図示の実施形態では半導体レーザ素子1の長手方向である。電流非注入領域22,23を設ける目的は、上記の通り、半導体ウェハから半導体レーザ素子1を劈開によって分割する時、衝撃によってp側電極8の端部が剥がれやすくなることを防止するためであり、他の目的はリーク電流を抑制するためである。さらに他の目的は、劈開時に、展延性が高いp側電極8が延びて、共振器端面20,21に垂れ下がることを防止するためである。
【0031】
図4に示すように、この実施形態では、p側電極8の中央部分8aの延長部分25(リッジ部14上のp側電極8が設けられていない部分、つまり電流非注入領域23の中央部分)には、絶縁層6が形成されていない。
図4に示されていない共振器端面20側においても、p側電極8の中央部分8aの延長部分24(電流非注入領域22の中央部分)には、絶縁層6が形成されていない。これはp側電極8とオーミック接触するリッジ部14上に絶縁層6が設けられないためである。ただし、延長部分24,25に絶縁層6を形成してもよい。
【0032】
半導体レーザ素子1は、電流非注入領域22,23の長さが適正か否かを検査するための検査マーク30,31をさらに有する。この実施形態では、検査マーク30,31は絶縁層6の上に配置されており、金属材料から形成された薄膜である。検査マーク30,31の各々はL字の形状を有する。検査マーク30の一端部30aは、p側電極8の端部8cよりも共振器端面20の近くに配置されている。検査マーク31の一端部31aは、p側電極8の端部8dよりも共振器端面21の近くに配置されている。
【0033】
個々の半導体レーザ素子1は、
図5に示す半導体ウェハから切り出される。半導体ウェハでは、複数行と複数列に規則的に配置された素子部分1Aを有する。これらの素子部分1Aは、半導体ウェハが分割されることによって、それぞれ半導体レーザ素子1となる。半導体ウェハは、互いに平行な複数の目標劈開面35を有する。共振器端面20,21は、ウェハから半導体レーザ素子1を切り出すときの劈開面である。目標劈開面35は、設計上の理想的な劈開面である。理想的に正確な劈開が行われれば、共振器端面20,21は目標劈開面35に一致する。換言すると、各目標劈開面35は、
図5の縦方向に隣り合う2つの素子部分1Aが分割される境界となって、共振器端面20,21になるべきものである。
【0034】
したがって、
図6に示すように、縦方向に隣り合う2つの素子部分1Aの電流非注入領域22,23の間を各目標劈開面35が延びる。また、縦方向に隣り合う2つの素子部分1Aの検査マーク30,31の間を各目標劈開面35が延びる。
【0035】
p側電極8の端部8cと目標劈開面35の間隔をd1とし、p側電極8の端部8dと目標劈開面35の間隔をd2とする。また、検査マーク30の端部30aと目標劈開面35の間隔をe1とし、検査マーク31の端部31aと目標劈開面35の間隔をe2とする。間隔d1は電流非注入領域22の理想の長さであり、d1+e2が電流非注入領域22の最大許容長さ、d1-e1が電流非注入領域22の最小許容長さである。間隔d2は電流非注入領域23の理想の長さであり、d2+e1が電流非注入領域23の最大許容長さ、d2-e2が電流非注入領域23の最小許容長さである。
【0036】
半導体レーザ素子1から放出されるレーザ光の波長、出力、共振器端面20,21のそれぞれに要求される性能、共振器端面20,21に設けられる多層誘電体反射膜の性質などの諸要因に応じて、d1,d2,e1,e2は決定される。
図6の実施形態においては、d1はd2に等しく、e1はe2に等しい。
【0037】
実際の劈開面(2つの半導体レーザ素子1の共振器端面20,21)が設計上の目標劈開面35からずれた場合、劈開面の近傍の検査マーク30,31と実際の劈開面の相対位置に基づいて、劈開面のずれを簡便かつ明確に認識することができる。例えば、
図7に示すように、
図6と同じウェハを劈開した場合、実際の劈開面が検査マーク31を通過した(つまり検査マーク31を分断した)と想定する。この場合、
図7の上方の半導体レーザ素子1においては、電流非注入領域23の長さが、電流非注入領域23の最小許容長さd2-e2より短く、
図7の下方の半導体レーザ素子1においては、電流非注入領域22の長さが、電流非注入領域22の最大許容長さd1+e2より長い。
【0038】
一方、実際の劈開面が検査マーク30,31の間を通過した場合、
図7の上方の半導体レーザ素子1においては、電流非注入領域23の長さが、最小許容長さd2-e2より長く、最大許容長さd2+e1より短い。
図7の下方の半導体レーザ素子1においては、電流非注入領域22の長さが、最大許容長さd1+e2より短く、最小許容長さd1-e1より長い。
【0039】
つまり、間隔e1と間隔e2を縦方向に隣り合う2つの半導体レーザ素子1の電流非注入領域22,23の長さの許容誤差として設定することにより、実際の劈開面が検査マーク30,31のいずれかを分断したか否かを判別することにより、不良品を簡便かつ明確に判別することができる。この判別には、顕微鏡での拡大した視野での観察が必要かもしれないが、電流非注入領域22,23の長さを測定するよりも不良品の区別が容易である。
【0040】
検査マーク30,31は金属材料から形成されている。他方、半導体積層体4および絶縁層6は透明な材料から形成されている。したがって、検査マーク30,31は視認しやすく、劈開面のずれの認識に役立つ。検査マーク30,31の材料は、p側電極8の材料と異なっていてもよい。しかし、この実施形態では、検査マーク30,31は絶縁層6の上に配置されており、p側電極8の材料と同じ金属材料から形成されている。したがって、p側電極8を形成する時に、検査マーク30,31を形成することができるので、製造工程を増やす必要がない。更には、検査マーク30、31とp側電極8との間の位置ズレを最小限に抑える事ができる、といった更なる効果もある。
【0041】
また、検査マーク30,31は導電性を有する金属材料から形成されているが、絶縁層6上に形成されているので、レーザ発光には寄与しない。したがって、実際の劈開面が設計上の目標劈開面35から許容範囲内でずれて、共振器端面20,21に対する検査マーク30,31の位置がわずかにずれたとしてもレーザ発光には影響がない。
【0042】
図8は、他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図であり、
図6と同様に見た図である。この実施形態では、素子部分1A(ひいては半導体レーザ素子1)に
図6で示したL字形の検査マーク30,31の代わりに、矩形の検査マーク36,37が設けられている。検査マーク36,37は絶縁層6の上に配置されており、p側電極8の材料と同じ金属材料から形成されている。検査マーク36の一端部36aは、p側電極8の端部8cよりも共振器端面20の近くに配置されている。検査マーク37の一端部37aは、p側電極8の端部8dよりも共振器端面21の近くに配置されている。
【0043】
この実施形態では、p側電極8の端部8cと目標劈開面35の間隔d1(電流非注入領域22の理想の長さ)は、p側電極8の端部8dと目標劈開面35の間隔d2(電流非注入領域23の理想の長さ)より大きい。このように、d1とd2は異なってもよい。共振器端面20,21に要求される性能、共振器端面20,21に設けられる多層誘電体反射膜の性質などの諸要因に応じて、異なるd1とd2が決定されうる。ただし、検査マーク36の端部36aと目標劈開面35の間隔e1は、検査マーク37の端部37aと目標劈開面35の間隔e2に等しい。
【0044】
図9は、他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図であり、
図6と同様に見た図である。この実施形態では、
図8の実施形態と同様に矩形の検査マーク36,37が設けられている。
【0045】
この実施形態では、p側電極8の端部8cと目標劈開面35の間隔d1(電流非注入領域22の理想の長さ)は、p側電極8の端部8dと目標劈開面35の間隔d2(電流非注入領域23の理想の長さ)に等しい。ただし、検査マーク36の端部36aと目標劈開面35の間隔e1(許容誤差)は、検査マーク37の端部37aと目標劈開面35の間隔e2(許容誤差)より長い。このように、e1とe2は異なってもよい。共振器端面20,21に要求される性能、共振器端面20,21に設けられる多層誘電体反射膜の性質などの諸要因に応じて、異なるe1とe2が決定されうる。
【0046】
図10は、他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図であり、
図6と同様に見た図である。この実施形態では、素子部分1A(ひいては半導体レーザ素子1)に、階段状のパターンを持つ検査マーク40,41が設けられている。検査マーク40,41は絶縁層6の上に配置されており、p側電極8の材料と同じ金属材料から形成されている。検査マーク40の一端部40aは、p側電極8の端部8cよりも共振器端面20の近くに配置されている。検査マーク41の一端部41aは、p側電極8の端部8dよりも共振器端面21の近くに配置されている。
【0047】
検査マーク40,41の各々に形成された階段状のパターンは、等間隔をおいた複数の段差を有し、これらの段差は、目標劈開面35に対して平行である。したがって、検査マーク40,41と実際の劈開面の相対位置に基づいて、実際の劈開面が設計上の目標劈開面35からどの程度ずれているのか、簡便かつ明確に認識することができる。この実施形態では、検査マーク40の端部40aと目標劈開面35の間隔e1、および検査マーク41の端部41aと目標劈開面35の間隔e2は、電流非注入領域の長さの許容誤差より小さくてもよい。例えば、検査マーク40のある段差40bと目標劈開面35の間隔e3、および検査マーク41のある段差41bと目標劈開面35の間隔e4を電流非注入領域の長さの許容誤差として決定してもよい。すなわち、実際の劈開面が、端部40a,40bの間の範囲からずれて、検査マーク40または41を分断したとしても、段差40b,41bの間を通過した場合には、半導体レーザ素子1を合格品に分類してもよい。この場合、実際の劈開面が、端部40a,40bの間を通過した場合には、半導体レーザ素子1を合格品より品質が高い優等品に分類してもよい。
【0048】
図11は、他の実施形態に係る半導体ウェハの拡大平面図であり、
図6と同様に見た図である。この実施形態では、素子部分1A(ひいては半導体レーザ素子1)に、二等辺三角形の検査マーク47と楕円形の検査マーク46が設けられている。検査マーク46,47は絶縁層6の上に配置されており、p側電極8の材料と同じ金属材料から形成されている。検査マーク46の一端部46aは、p側電極8の端部8cよりも共振器端面20の近くに配置されている。検査マーク47の一端部47aは、p側電極8の端部8dよりも共振器端面21の近くに配置されている。
【0049】
図11の上方の素子部分1Aに形成された二等辺三角形の検査マーク47は、頂角を目標劈開面35に向けて配置されている。したがって、実際の劈開面が検査マーク47を分断すると、検査マーク47の断片が台形となって半導体レーザ素子1(
図11の上方の素子部分1A)に残される。このような明らかな形状変化によって、検査マーク47が分断されたことが視認されやすい。
図11の下方の素子部分1Aに形成された楕円形の検査マーク46は、短軸が目標劈開面35に平行になるよう配置されている。したがって、実際の劈開面が検査マーク46を分断すると、検査マーク46が分断されたことが視認されやすい。
【0050】
この実施形態では、検査マーク46,47は、接続線46b,47bによってp側電極8に接続されている。接続線46b,47bも導電性を有する金属材料から形成されているが、絶縁層6上に形成されているので、レーザ発光には寄与しない。したがって、接続線46b,47bはなくてもよいし、あったとしてもレーザ発光には影響がない。
【0051】
当業者であれば、検査マークの形状に様々なバリエーションがありうることは理解されるであろう。1つの半導体ウェハに複数の形状の検査マークが設けられてもよい。
【0052】
図12は、他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図であり、
図1のIII-III線に対応する。この実施形態では、検査マーク50は、金属製の薄膜ではなく、絶縁層6に形成された開口であって、絶縁層6を貫通する。絶縁層6に開口を例えばエッチングで形成することにより、検査マーク50を形成することができるので、製造工程の増加数が最小限で済む。検査マーク50の輪郭形状は、上記の他の実施形態の検査マークの輪郭形状と同じでもよいし、他の形状でもよい。
【0053】
検査マーク50は、絶縁層6を貫通する開口であるので、検査マーク50を通じて半導体積層体4が視認される。半導体積層体4および絶縁層6は透明な材料から形成されているが、絶縁層6は、半導体積層体4内の上方の層(例えばp型クラッド層4f)の屈折率と異なる屈折率を有する。したがって、検査マーク50は視認することができ、劈開面のずれの認識に役立つ。
【0054】
図13は、他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図であり、
図1のIII-III線に対応する。この実施形態では、検査マーク52は、絶縁層6と同じ材料を絶縁層6に重ねた層である。絶縁層6と同じ材料を絶縁層6に重ねることにより、検査マーク52を形成することができるので、製造工程の増加数が最小限で済む。検査マーク52の輪郭形状は、上記の他の実施形態の検査マークの輪郭形状と同じでもよいし、他の形状でもよい。
【0055】
検査マーク52は、透明な絶縁層6と同じ材料を絶縁層6に重ねた層であるが、検査マーク52の領域は他の絶縁層6の領域の厚さと異なる厚さを有するので、検査マーク52は視認することができ、劈開面のずれの認識に役立つ。
【0056】
図14は、他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図であり、
図1のIII-III線に対応する。この実施形態では、検査マーク54は、p側電極8に重ならない領域に位置しており、半導体積層体4のp型クラッド層4fに形成された開口であって、p型クラッド層4fを貫通する。p型クラッド層4fに開口を例えばエッチングで形成することにより、検査マーク54を形成することができるので、製造工程の増加数が最小限で済む。検査マーク54の輪郭形状は、上記の他の実施形態の検査マークの輪郭形状と同じでもよいし、他の形状でもよい。
【0057】
検査マーク54は、p型クラッド層4fを貫通する開口であるので、検査マーク54を通じてp型ガイド層4eが視認される。半導体積層体4の各層は透明な材料から形成されているが、各層は、互いに異なる屈折率を有する。したがって、検査マーク54は視認することができ、劈開面のずれの認識に役立つ。
【0058】
p型クラッド層4fに限らず、半導体積層体4の他の層に検査マークを形成してもよい。また、図示しないが、検査マークは、一つの半導体層(半導体積層体4のいずれかの層)と同じ材料をその半導体層に重ねることにより、形成してもよい。この場合も、製造工程の増加数が最小限で済む。
【0059】
図15および
図16は、他の実施形態を示す。
図15は、半導体レーザ素子1が切り出される前の半導体ウェハの平面図であり、
図16は、
図15の上方の素子部分1Aに対応する半導体レーザ素子1の断面図であり、共振器端面21の付近を示す。この実施形態では、絶縁層6は、p型クラッド層4fの上面のリッジ部14を除く領域だけではなく、リッジ部14の一部にも絶縁層6が形成されている。具体的には、目標劈開面35(理想的な共振器端面20,21)の両側のある程度の長さ分、リッジ部14上に絶縁層6が形成されている。したがって、
図16に示すように、共振器端面21側において、p側電極8の中央部分8aの延長部分25(電流非注入領域23でもある)に絶縁層6が形成されている。
図16に示されていない共振器端面20側においても、p側電極8の中央部分8aの延長部分24(電流非注入領域22でもある)に絶縁層6が形成されている。
【0060】
この実施形態では、
図16に示すように、共振器端面21側において、p側電極8の両端から突出する金属部分57が延長部分25上の絶縁層6に載っている。
図16に示されていない共振器端面20側においても、p側電極8の両端から突出する金属部分56が延長部分24上の絶縁層6に載っている。これらの金属部分56,57は、絶縁層6上に形成されているので、レーザ発光には寄与せず、p側電極8に連結されているが、電極としての役割を持たない。つまり、これらの金属部分はp側電極8の部分ではない。したがって、p側電極8は、p型クラッド層4fに直接接触する範囲で終端し、p型クラッド層4fに直接接触する端部8c,8dを有する。別の見方をすれば、端部8cから突出して延長部分24上に位置する金属部分56は、p側電極8の一部ではなく、端部8dから突出して延長部分25上に位置する金属部分57も、p側電極8の一部ではない。
【0061】
この実施形態では、これらの金属部分56,57が検査マークとして利用される。したがって、検査マーク56は、p側電極8の端部8cから共振器端面20(目標劈開面35)に向けて、p側電極8の長手方向に沿って突出する金属製の突出片であり、検査マーク57は、p側電極8の端部8dから共振器端面21(目標劈開面35)に向けて、p側電極8の長手方向に沿って突出する金属製の突出片である。このように、検査マーク56,57はp側電極8の材料と同じ金属材料から形成されており、電流非注入領域22,23に形成された絶縁層6に重なっている。
【0062】
検査マーク56,57の各々は、二等辺三角形の形状を有し、頂角を目標劈開面35に向けて配置されている。検査マーク56の頂角すなわち一端部56aは、p側電極8の端部8cよりも共振器端面20の近くに配置されている。検査マーク57の頂角すなわち一端部57aは、p側電極8の端部8dよりも共振器端面21の近くに配置されている。ただし、検査マーク56,57の輪郭形状は二等辺三角形に限定されない。
【0063】
検査マーク56,57は金属材料から形成されており、p側電極8の端部8c,8dから共振器端面20,21に向けて突出するが、電流非注入領域22,23に形成された絶縁層6上に形成されているので、レーザ発光には寄与しない。したがって、実際の劈開面が設計上の目標劈開面35からずれて、共振器端面20,21に対する検査マーク56,57の位置がずれたとしてもレーザ発光には影響がない。また、検査マーク56,57はp側電極8の端部8c,8dから共振器端面20,21に向けてp側電極8の長手方向に沿って突出するので、p側電極8のすぐ近傍で劈開面のずれの有無およびずれの大きさを確認することができる。
【0064】
図17および
図18は、他の実施形態を示す。
図17は、半導体レーザ素子1が切り出される前の半導体ウェハの平面図であり、
図18は、
図17の上方の素子部分1Aに対応する半導体レーザ素子1の断面図であり、共振器端面21の付近を示す。この実施形態では、非オーミック電極であるパッド電極10に検査マーク60,61が設けられている。検査マーク60,61は、他の実施形態の検査マークと異なり、p側電極8から目標劈開面35の付近まで延びている。
【0065】
この実施形態では、絶縁層6は、p型クラッド層4fの上面のリッジ部14を除く領域に形成され、リッジ部14上には形成されていない。したがって、
図18に示すように、共振器端面21側において、p側電極8の中央部分8aの延長部分25(電流非注入領域23でもある)には、絶縁層6がなく、半導体積層体4のp型クラッド層4fにパッド電極10が非オーミック接触する。
図18に示されていない共振器端面20側においても、p側電極8の中央部分8aの延長部分24(電流非注入領域22でもある)には、絶縁層6がなく、半導体積層体4のp型クラッド層4fにパッド電極10が非オーミック接触する。リッジ部14の両脇では、パッド電極10は絶縁層6上に形成されている。
【0066】
したがって、パッド電極10は金属材料製ではあるが、レーザ発光には寄与しない。
図17の下方の素子部分1Aにおいては、パッド電極10のうちp側電極8の端部8cよりも目標劈開面35に近い部分が検査マーク60として利用される。検査マーク60の一端部60aは、p側電極8の端部8cよりも共振器端面20の近くに配置されている。
図17の上方の素子部分1Aにおいては、パッド電極10のうちp側電極8の端部8dよりも目標劈開面35に近い部分が検査マーク61として利用される。検査マーク61の一端部61aは、p側電極8の端部8dよりも共振器端面21の近くに配置されている。
【0067】
検査マーク60,61の各々は、階段状のパターンを有する。具体的には、検査マーク60は直線状の端部60aと段差60bを有し、これらは目標劈開面35に対して平行である。検査マーク61は直線状の端部61aと段差61bを有し、これらも目標劈開面35に対して平行である。したがって、検査マーク60,61と実際の劈開面の相対位置に基づいて、実際の劈開面が設計上の目標劈開面35からどの程度ずれているのか、簡便かつ明確に認識することができる。ただし、検査マーク60,61の形状は、図示の実施形態に限定されない。
【0068】
検査マーク60,61は電流非注入領域22,23に配置された金属材料製のパッド電極10に設けられているが、パッド電極10は半導体積層体4に非オーミック接触するので、レーザ発光には寄与しない。したがって、実際の劈開面が設計上の目標劈開面35からずれて、共振器端面20,21に対する検査マーク60,61の位置がずれたとしてもレーザ発光には影響がない。また、検査マーク60,61はp側電極8の端部8c,8dと共振器端面20,21の間に存在するので、p側電極8のすぐ近傍で劈開面のずれの有無およびずれの大きさを確認することができる。また、パッド電極10を形成する時に、検査マーク60,61を形成することができるので、製造工程を増やす必要がない。
【0069】
図19は、他の実施形態に係る半導体レーザ素子の断面図であり、
図3と同様の図である。この実施形態では、n側電極12がp側電極8と同じ側に配置されている。具体的には、半導体積層体4のいずれかの層(例えば図示のようにn型クラッド層4b)の上面にn側電極12が形成されている。
【0070】
半導体積層体4の下面には、ダイボンド用パッド65が形成されている。ダイボンド用パッド65は、例えばチタン層、白金層、金層からなる薄膜である。
【0071】
この実施形態では、絶縁層6の上に配置され金属材料から形成された薄膜である検査マーク30,31が設けられている(検査マーク31のみ
図19に示す)。上述した他のタイプの検査マークを設けてもよい。
【0072】
図20は、他の実施形態に係る半導体レーザ素子の平面図である。この実施形態では、
図1の実施形態よりも幅が広いリッジ部14の真上だけに直線状のp側電極8が配置されている。この実施形態のp側電極8は、中央部分8aに相当する部分を有し、リッジ部14の両脇の領域の上に配置されるサイド部分8bを有しない。リッジ部14上のp側電極8の両方の側端縁は、凹凸を有する。このように、p側電極8について「直線状」とは、共振器方向に沿って、電流を注入して発光に寄与する直線状に延びる部分を少なくとも有することを意味し、必ずしもp側電極の側端縁が直線状でなくてもよい、
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【符号の説明】
【0074】
1 半導体レーザ素子
1A 素子部分
4 半導体積層体
6 絶縁層
8 p側電極(第一電極)
8c,8d 端部
10 パッド電極
12 n側電極(第二電極)
14 リッジ部
20,21 共振器端面
22,23 電流非注入領域
30,31,36,37,40,41,46,47,50,52,54,56,57,60,61 検査マーク
30a,31a,36a,37a,40a,41a,46a,47a,56a,57a,60a,61a 端部
35 目標劈開面