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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/00 20060101AFI20240806BHJP
   B62D 24/00 20060101ALI20240806BHJP
   B62D 29/04 20060101ALI20240806BHJP
   F16B 5/07 20060101ALI20240806BHJP
   F16B 5/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B62D65/00 Z
B62D24/00
B62D29/04 B
F16B5/07 E
F16B5/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021015580
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118824
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】小阪 有平
(72)【発明者】
【氏名】平野 有一
(72)【発明者】
【氏名】深谷 彰太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和希
(72)【発明者】
【氏名】石倉 祥平
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-155365(JP,A)
【文献】実開昭62-105876(JP,U)
【文献】特開平11-049053(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203782(WO,A1)
【文献】特開2008-082648(JP,A)
【文献】実開昭64-028377(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0137229(US,A1)
【文献】特表2020-504035(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110382212(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102019113349(DE,A1)
【文献】実開昭62-035107(JP,U)
【文献】特開平1-204868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 65/00
B62D 24/00
B62D 29/04
F16B 5/07
F16B 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のアンダーボデー上に複数の内装部品を組み付ける工程と、
前記複数の内装部品が組み付けられた前記アンダーボデーに、樹脂製のアッパーボデーを上側から組み付ける工程と、を備え、
前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーのそれぞれは、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを組み付ける組付面に複数の嵌合構造を有し、
前記アッパーボデーを組み付ける工程において、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの前記嵌合構造同士を嵌合させて、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを一体化する、
車両の製造方法であって、
前記複数の嵌合構造のそれぞれは、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの一方の前記組付面に形成された円柱状の凸部と、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの他方の前記組付面に形成された円柱状に窪んだ凹部とを含み、
前記凸部の外周面に、当該凸部の外側かつ根元側に向かって突出した返し構造を形成し、
前記凹部の内周面に、前記返し構造が嵌まり込む溝を形成する、
車両の製造方法。
【請求項2】
樹脂製のアンダーボデー上に複数の内装部品を組み付ける工程と、
前記複数の内装部品が組み付けられた前記アンダーボデーに、樹脂製のアッパーボデーを上側から組み付ける工程と、を備え、
前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーのそれぞれは、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを組み付ける組付面に複数の嵌合構造を有し、
前記アッパーボデーを組み付ける工程において、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの前記嵌合構造同士を嵌合させて、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを一体化する、
車両の製造方法であって、
前記複数の嵌合構造のそれぞれは、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの一方の前記組付面に形成された円柱状の凸部と、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの他方の前記組付面に形成された円柱状に窪んだ凹部とを含み、
前記凹部の内周面に、当該凹部の内側かつ底面側に向かって突出した返し構造を形成し、
前記凸部の外周面に、前記返し構造が嵌まり込む溝を形成する、
車両の製造方法。
【請求項3】
前記複数の内装部品を組み付ける工程よりも前に、前記アンダーボデーをシャシーに組み付けておく、
請求項1又は2に記載の車両の製造方法。
【請求項4】
前記複数の内装部品を組み付ける工程において、
前記アンダーボデー内において、より下側に組み付ける内装部品から順番に前記アンダーボデーに組み付ける、
請求項1~3のいずれか一項に記載の車両の製造方法。
【請求項5】
前記複数の内装部品を組み付ける工程において、前記複数の内装部品をホイストクレーンによって順次搬送し、前記アンダーボデーに組み付ける、
請求項1~のいずれか一項に記載の車両の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のボデーの内部に組み付ける内装部品の組付作業を容易にするため、特許文献1には、車両のボデーをアッパーボデーとアンダーボデーとに分割する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭64-28377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、アッパーボデーとアンダーボデーとをねじ止めや溶接によって一体化している。
省人化、無人化(自動化)や工程簡略化のため、ねじ止めや溶接を用いずに、アッパーボデーとアンダーボデーとを一体化する車両の製造方法が望まれている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、ねじ止めや溶接を用いずに、アッパーボデーとアンダーボデーとを一体化可能な車両の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る車両の製造方法は、
アンダーボデー上に複数の内装部品を組み付ける工程と、
前記複数の内装部品が組み付けられた前記アンダーボデーに、アッパーボデーを組み付ける工程と、を備え、
前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーのそれぞれは、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを組み付ける組付面に嵌合構造を有し、
前記アッパーボデーを組み付ける工程において、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの前記嵌合構造同士を嵌合させて、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを一体化するものである。
【0007】
本発明の一態様に係る車両の製造方法では、アンダーボデー及びアッパーボデーのそれぞれは、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを組み付ける組付面に嵌合構造を有する。そして、前記アッパーボデーを組み付ける工程において、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの前記嵌合構造同士を嵌合させて、前記アンダーボデーと前記アッパーボデーとを一体化する。このような構成により、ねじ止めや溶接を用いずに、アッパーボデーとアンダーボデーとを一体化できる。
【0008】
前記複数の内装部品を組み付ける工程よりも前に、前記アンダーボデーをシャシーに組み付けておいてもよい。このような構成により、内装部品が組み付けられたアンダーボデーを持ち上げ、アンダーボデーの下側からシャシーを組み付ける必要がなくなる。
【0009】
前記複数の内装部品を組み付ける工程において、前記アンダーボデー内において、より下側に組み付ける内装部品から順番に前記アンダーボデーに組み付けてもよい。このような構成により、内装部品をアンダーボデーに対して、常に上側から組み付けることができる。
【0010】
前記複数の内装部品を組み付ける工程において、前記複数の内装部品をホイストクレーンによって順次搬送し、前記アンダーボデーに組み付けてもよい。このような構成により、内装部品をアンダーボデーに組み付けるためにアンダーボデーをコンベア等によって搬送する必要がなくなる。
【0011】
前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーが、いずれも樹脂製であってもよい。このような構成により、嵌合構造によってアンダーボデーとアッパーボデーとを組み付け易くなる。
【0012】
前記嵌合構造は、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの一方の前記組付面に形成された凸部と、前記アンダーボデー及び前記アッパーボデーの他方の前記組付面に形成された凹部とを含み、前記凸部の外周面に、当該凸部の外側かつ根元側に向かって突出した返し構造を形成し、前記凹部の内周面に、前記返し構造が嵌まり込む溝を形成してもよい。あるいは前記凹部の内周面に、当該凹部の内側かつ底面側に向かって突出した返し構造を形成し、前記凸部の外周面に、前記返し構造が嵌まり込む溝を形成してもよい。このような構成により、嵌合された嵌合構造同士を外れ難くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、ねじ止めや溶接を用いずに、アッパーボデーとアンダーボデーとを一体化可能な車両の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る車両の製造方法に供するシャシーの平面図である。
図2】第1の実施形態に係る車両の製造方法に供するシャシーの側面図である。
図3】第1の実施形態に係る車両の製造方法を示す側面図である。
図4】第1の実施形態に係る車両の製造方法を示す側面図である。
図5】第1の実施形態に係る車両の製造方法を示す側面図である。
図6】第1の実施形態に係る車両の製造方法を示す側面図である。
図7】アンダーボデーUNBの嵌合構造の平面図である。
図8】アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の断面図である。
図9】アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを互いに嵌合させて組み付けた状態を示す断面図である。
図10】アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の変形例1の断面図である。
図11】アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の変形例2の断面図である。
図12】第2の実施形態に係る車両の製造方法に用いるアンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0016】
(第1の実施形態)
<シャシーの構成>
まず、図1図2を参照して、第1の実施形態に係る車両の製造方法に供するシャシーの構成例について説明する。図1は、第1の実施形態に係る車両の製造方法に供するシャシーの平面図である。図2は、第1の実施形態に係る車両の製造方法に供するシャシーの側面図である。
【0017】
なお、当然のことながら、図1図2に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正向きが鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。
【0018】
図1図2に示すように、シャシーは、いわゆるベアシャシーであり、タイヤT1、T2及びホイールW1、W2を含む走行部品、モータMT、電池BTを備えている。図1図2に示すように、フロントのホイールW1にはタイヤT1が装着されており、リヤのホイールW2にはタイヤT2が装着されている。走行部品には、例えば、図1には示されていないサスペンション、ステアリング装置、ブレーキ装置などが含まれる。
【0019】
モータMTは、図示しない変速機を介してホイールW1を駆動する駆動源である。駆動源は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどのエンジンであってもよい。また、駆動源がホイールW2もしくはホイールW1、W2の両方を駆動してもよい。
【0020】
電池BTは、モータMTに動力源(電気)を供給する動力供給装置である。電池BTは、リチウムイオン電池などの二次電池でもよく、燃料電池でもよい。駆動源がエンジンの場合、ガソリンや軽油を蓄えてエンジンに供給するための燃料タンクが動力供給装置に該当する。
【0021】
すなわち、本実施形態に係る車両の製造方法の製造対象車両は、モータで駆動可能な電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車などに限定されず、エンジンで駆動可能なエンジン自動車であってもよい。
【0022】
<車両の製造方法>
次に、図3図6を参照して、第1の実施形態に係る車両の製造方法について説明する。
図3図6は、第1の実施形態に係る車両の製造方法を示す側面図である。
なお、図3図6に示した右手系xyz直交座標も、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正向きが鉛直上向き、xy平面が水平面であり、図面間で共通である。また、図1図2に示した右手系xyz直交座標とも共通である。
【0023】
まず、図3に示すように、床面に載置されたシャシー上に、アンダーボデーUNBを上側から組み付ける。アンダーボデーUNBは、例えばホイストクレーン等の搬送装置によって搬送されると共に、シャシーに上側から組み付けられる。そのため、内装部品が組み付けられたアンダーボデーUNBを持ち上げ、アンダーボデーUNBの下側からシャシーを組み付ける必要がない。
【0024】
特に限定されないが、アンダーボデーUNBをシャシーに組み付ける際、例えばホイストクレーンによって搬送されたアンダーボデーUNBを、例えば組付ロボット又は組付作業者が受け取り、シャシーに組み付ける。
【0025】
また、シャシーへのアンダーボデーUNBの組付方法は、通常のねじ止め等に限らない。例えば、シャシー及びアンダーボデーUNBの組付面にそれぞれ設けられた嵌合構造によって、両者を組み付けてもよい。嵌合構造を用いることによって、省人化あるいは無人化できる。嵌合構造の詳細については後述する。
なお、アンダーボデーUNBに内装部品を組み付けた後、アンダーボデーUNBを持ち上げ、アンダーボデーUNBの下側からシャシーを組み付けてもよい。
【0026】
次に、図4に示すように、フロントシートFS、リアシートRS、ステアリングホイールSW等の複数の内装部品をアンダーボデーUNBに組み付ける。内装部品は、例えばホイストクレーン等によって順次搬送されると共に、アンダーボデーUNBに上側から組み付けられる。
なお、本明細書における内装部品とは、ボデーの内部に組み付けられる部品全般を意味する。例えば、内装部品には、図示しないインストルメントパネルアセンブリ等も含まれる。
【0027】
内装部品を組み付ける際、アンダーボデーUNB内において、より下側に組み付ける内装部品から順番に組み付ける。すなわち、アンダーボデーUNB内において、最も下側に組み付ける内装部品を最初に組み付け、最も上側に組み付ける内装部品を最後に組み付ける。そのため、内装部品をアンダーボデーUNBに対して、常に上側から組み付けることができる。その結果、組付作業を効率化できると共に、内装部品の組付工程を省人化あるいは無人化できる。
【0028】
特に限定されないが、内装部品をアンダーボデーUNBに組み付ける際、例えばホイストクレーンによって搬送された内装部品を、例えば組付ロボット又は組付作業者が受け取り、アンダーボデーUNBに組み付ける。
【0029】
また、アンダーボデーUNBへの内装部品の組付方法は、通常のねじ止め等に限らない。例えば、アンダーボデーUNB及び内装部品の組付面にそれぞれ設けられた嵌合構造によって、両者を組み付けてもよい。嵌合構造を用いることによって、さらに組付作業を効率化できると共に、さらに省人化あるいは無人化し易くなる。嵌合構造の詳細については後述する。
【0030】
さらに、本実施形態に係る車両の製造方法では、内装部品をホイストクレーン等によって順次搬送し、アンダーボデーUNBに組み付ける。そのため、内装部品をアンダーボデーUNBに組み付けるためにアンダーボデーUNBをコンベア等によって搬送する必要がない。すなわち、内装部品をアンダーボデーUNBへ組み付けるための組付ラインが不要であり、省スペース化できる。
【0031】
次に、図5に示すように、内装部品が組み付けられたアンダーボデーUNB上にアッパーボデーUPBを組み付け、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを一体化する。アッパーボデーUPBは、例えばホイストクレーン等によって搬送されると共に、アンダーボデーUNBに上側から組み付けられる。
【0032】
特に限定されないが、アッパーボデーUPBをアンダーボデーUNBに組み付ける際、例えばホイストクレーンによって搬送されたアッパーボデーUPBを、例えば組付ロボット又は組付作業者が受け取り、アンダーボデーUNBに組み付ける。
【0033】
ここで、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを、嵌合構造によって組み付ける。ねじ止めや溶接を用いずに、嵌合構造を用いることによって、組付作業を効率化できると共に、省人化あるいは無人化できる。嵌合構造の詳細については後述する。
【0034】
また、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBを樹脂製とすることによって、嵌合構造によって組み付け易くなる。さらに、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBを樹脂製とすることによって、ボデーの塗装工程を省略できる。
【0035】
最後に、図6に示すように、一体化されたアンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPB(以下、単に「ボデー」という)に、フロントドアFD、リアドアRD、フードHD、及びトランクリッドTL等(以下、「フロントドアFD等」という)を組み付ける。フロントドアFD等は、例えばホイストクレーン等によって搬送されると共に、ボデーに上側から組み付けられる。
【0036】
特に限定されないが、フロントドアFD等をボデーに組み付ける際、ホイストクレーンによって搬送されたフロントドアFD等を、例えば組付ロボット又は組付作業者が受け取り、ボデーに組み付ける。
【0037】
また、ボデーへのフロントドアFD等の組付方法は、通常のねじ止め等に限らない。例えば、ボデー及びフロントドアFD等の組付面にそれぞれ設けられた嵌合構造によって、両者を組み付けてもよい。嵌合構造を用いることによって、さらに組付作業を効率化できると共に、さらに省人化あるいは無人化し易くなる。嵌合構造の詳細については後述する。
【0038】
さらに、本実施形態に係る車両の製造方法では、フロントドアFD等をホイストクレーン等によって順次搬送し、ボデーに組み付ける。そのため、フロントドアFD等をボデーに組み付けるためにボデーをコンベア等によって搬送する必要がない。すなわち、フロントドアFD等をボデーへ組み付けるための組付ラインが不要であり、省スペース化できる。
【0039】
以上に説明した通り、本実施形態に係る車両の製造方法では、ボデーをアンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとに分割する。そして、アンダーボデーUNBに内装部品を組み付けた後、アンダーボデーUNB上にアッパーボデーUPBを組み付け、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを一体化する。そのため、内装部品の組付作業を効率化できる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る車両の製造方法では、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを嵌合構造によって組み付ける。そのため、ねじ止めや溶接を用いずに、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを一体化できる。その結果、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとの組付作業を効率化できると共に、省人化あるいは無人化できる。
【0041】
<嵌合構造の構成>
次に、図7図9を参照して、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを互いに組み付けるための嵌合構造の構成について説明する。図7は、アンダーボデーUNBの嵌合構造の平面図である。図8は、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の断面図である。ここで、図8は、図7に示すアンダーボデーUNBのVIII-VIII切断線による断面図でもある。図9は、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを互いに嵌合させて組み付けた状態を示す断面図である。
【0042】
なお、当然のことながら、図7図12に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものであり、図面間で共通である。他方、図7図12に示した右手系xyz直交座標と、図1図6に示した右手系xyz直交座標とは、図面間で必ずしも共通ではない。
【0043】
図7に示したアンダーボデーUNBの嵌合構造は、凸部11であり、例えば玩具用の組み立てブロックの凸部に類似した形状を有している。
図8に示したアッパーボデーUPBの嵌合構造は、凹部12であり、例えば玩具用の組み立てブロックの凹部に類似した形状を有している。
【0044】
具体的には、図7に示すように、アンダーボデーUNBの組付面上には、円柱状の凸部11が例えばx軸方向及びy軸方向に並べて配置されている。なお、凸部11は、各組付部位において単数ずつ設けられていてもよい。
他方、図8に示すように、アッパーボデーUPBの組付面上には、アンダーボデーUNBの凸部11に対応する位置に、円柱状に窪んだ凹部12が形成されている。
【0045】
図9に示すように、アンダーボデーUNBの凸部11とアッパーボデーUPBの凹部12とを嵌合させて、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを互いに組み付ける。
アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBは、例えば金属や樹脂からなる。上述の通り、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBを樹脂製とすることによって、嵌合構造同士を嵌合し易くなると共に、ボデーの塗装工程を省略できる。
なお、嵌合構造として、アンダーボデーUNBが凹部を備え、アッパーボデーUPBが凸部を備えていてもよい。
【0046】
図7図8に示すように、凸部11の外周面には、当該凸部11の外側かつ根元側(z軸負方向側)に向かって突出した返し構造(Barb Structure)11aが形成されている。図7に示した例では、返し構造11aは、各凸部11のx軸方向両端に形成されている。すなわち、返し構造11aは、各凸部11に2つずつ形成されている。
【0047】
返し構造11aは、外力を加えることによって凸部11の外周面に密着するように変形可能であると共に、外力を除去した際に、再び外側に張り出すように変形可能である。このように、返し構造11aは、根元部において弾性変形可能である。
なお、返し構造11aは、各凸部11に3つ以上ずつ形成されていてもよい。あるいは、返し構造11aは、各凸部11の外周面の全周に亘って、円環状に形成されていてもよい。
【0048】
他方、図8図9に示すように、凹部12の内周面には、返し構造11aが嵌まり込む溝12aが形成されている。図8に示した例では、断面三角形状の溝12aが、凹部12の内周面の全周に亘って円環状に形成されている。ここで、溝12aに返し構造11aが嵌まり込み易いように、凹部12の深さ方向(z軸方向)における溝12aの幅は、返し構造11aの根元部の幅よりも大きくなっている。
なお、溝12aは、凹部12の内周面における返し構造11aに対応する位置のみに形成されていてもよい。
【0049】
図8図9に示すように、アンダーボデーUNBの上側からアッパーボデーUPBを押圧し、アッパーボデーUPBの凹部12にアンダーボデーUNBの凸部11を嵌入することによって、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを組み付ける。凹部12に凸部11を嵌入する際、凸部11の外周面に形成された返し構造11aは、凸部11の外周面に密着するように折れ曲がる。
【0050】
そして、図9に示すように、凹部12への凸部11の嵌入が完了すると、凹部12の内周面に形成された溝12aに、凸部11の外周面に形成された返し構造11aが嵌まり込み、返し構造11aが凸部11の外周面から離間して、再び外側に張り出す。
【0051】
そのため、互いに嵌合した凹部12から凸部11を引き抜こうとしても、凹部12の溝12aに嵌まり込んだ凸部11の返し構造11aがストッパーとして機能し、凹部12から凸部11を引き抜き難い。すなわち、互いに嵌合された凸部11と凹部12とを外れ難くすることができる。
【0052】
ここで、アッパーボデーUPBの凹部12にアンダーボデーUNBの凸部11を嵌入する際、アンダーボデーUNBの凸部11を例えば液体窒素等によって冷却し、熱収縮させておいてもよい。これにより、当該凸部11をアッパーボデーUPBの凹部12に嵌入し易くなる。
【0053】
あるいは、アッパーボデーUPBの凹部12にアンダーボデーUNBの凸部11を嵌入する際、アッパーボデーUPBの凹部12を加熱し、熱膨張させておいてもよい。これにより、当該凹部12にアンダーボデーUNBの凸部11を嵌入し易くなる。
【0054】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両の製造方法では、アンダーボデーUNBの組付面に形成された凸部11の外周面に、外側かつ根元側に向かって突出した返し構造11aを形成する。さらに、アッパーボデーUPBの組付面に形成された凹部12の内周面に、返し構造11aが嵌まり込む溝12aを形成する。
【0055】
そのため、凹部12に凸部11を嵌合させて、アッパーボデーUPBとアンダーボデーUNBとを互いに組み付けた際、凹部12の内周面に形成された溝12aに、凸部11の外周面に形成された返し構造11aが嵌まり込む。その結果、嵌合された凸部11と凹部12とを外れ難くすることができる。
すなわち、本実施形態に係る車両の製造方法は、ねじ止めや溶接を用いずに部品同士を組み付け可能であり、かつ、嵌合構造が外れ難い。
【0056】
なお、凸部11は、円柱状である必要はなく、例えば角柱状でもよい。凹部12も円柱状に窪んでいる必要はなく、凸部11と嵌合する形状であればよい。
また、嵌合構造によって互いに組み付けられる部品はアッパーボデーUPBとアンダーボデーUNBとに限定されない。本実施形態に係る車両の製造方法において互いに組み付けるあらゆる部品に、上記のような嵌合構造を適用できる。
【0057】
(嵌合構造の変形例1)
次に、図10を参照して、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の変形例1について説明する。図10は、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の変形例1の断面図である。図10は、図8に対応する断面図である。
【0058】
図10に示すように、変形例1に係るアンダーボデーUNBの凸部11の外周面には、返し構造11aが、凸部11の高さ方向(z軸方向)に、2つすなわち複数並べて設けられている。
これに対応して、図10に示すように、アッパーボデーUPBの凹部12の内周面には、溝12aが、凹部12の深さ方向(z軸方向)に、2つすなわち複数並べて設けられている。
なお、返し構造11a及び溝12aは、3つ以上であってもよい。
【0059】
嵌合構造の変形例1では、凹部12に凸部11を嵌合させて、アッパーボデーUPBとアンダーボデーUNBとを互いに組み付けた際、凹部12の内周面に形成された2つの溝12aのそれぞれに、凸部11の外周面に形成された返し構造11aが嵌まり込む。そのため、嵌合構造の変形例1では、図7図9に示した嵌合構造よりも、嵌合された凸部11と凹部12とを外れ難くすることができる。
その他の構成は、図7図9に示した嵌合構造と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
(嵌合構造の変形例2)
次に、図11を参照して、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の変形例2について説明する。図11は、アンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の変形例2の断面図である。図11は、図8に対応する断面図である。
【0061】
図8図9に示した例では、溝12aに返し構造11aが嵌まり込み易いように、凹部12の深さ方向(z軸方向)における溝12aの幅は、返し構造11aの根元部の幅よりも大きくなっている。これに対し、図11に示した嵌合構造の変形例2では、返し構造11aのxz断面形状と溝12aのxz断面形状とが略同一形状である。
【0062】
変形例2に係るアンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBは、例えばゴム等の弾性変形し易い材料からなる。変形例2に係るアンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを組み付ける場合、例えば、凸部11を一旦凹部12の深くまで押し込み、凸部11が凹部12の開口側に戻る際に、溝12aに返し構造11aが嵌まり込む。
その他の構成は、図7図9に示した第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0063】
(第2の実施形態)
次に、図12を参照して、第2の実施形態に係る車両の製造方法について説明する。図12は、第2の実施形態に係る車両の製造方法に用いるアンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造の断面図である。図12は、図8に対応する断面図である。
【0064】
図12に示すように、本実施形態に係るアンダーボデーUNB及びアッパーボデーUPBの嵌合構造では、第1の実施形態に係るアンダーボデーUNBと同様に、組付面上に、円柱状の凸部21が形成されている。そして、アッパーボデーUPBの組付面上における凸部21に対応する位置に、円柱状に窪んだ凹部22が形成されている。
【0065】
そして、図12に示すように、凹部22の内周面には、当該凹部22の内側かつ底面側(z軸正方向側)に向かって突出した返し構造22aが形成されている。
また、図12に示すように、凸部21の外周面には、返し構造22aが嵌まり込む溝21aが形成されている。図12に示した例では、断面三角形状の溝21aが、凸部21の外周面の全周に亘って円環状に形成されている。
【0066】
図12に示すように、アンダーボデーUNBの上側からアッパーボデーUPBを押圧し、アッパーボデーUPBの凹部22にアンダーボデーUNBの凸部21を嵌入することによって、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを組み付ける。凹部22に凸部21を嵌入する際、凹部22の内周面に形成された返し構造22aは、凹部22の内周面に密着するように折れ曲がる。そして、凹部22への凸部21の嵌入が完了すると、凸部21の外周面に形成された溝21aに、凹部22の内周面に形成された返し構造22aが嵌まり込む。
【0067】
以上に説明したように、本実施形態に係る車両の製造方法では、アッパーボデーUPBの組付面に形成された凹部22の内周面に、内側かつ底面側に向かって突出した返し構造22aを形成する。さらに、アンダーボデーUNBの組付面に形成された凸部21の外周面に、返し構造22aが嵌まり込む溝21aを形成する。
【0068】
そのため、凹部22に凸部21を嵌合させて、アンダーボデーUNBとアッパーボデーUPBとを互いに組み付けた際、凸部21の外周面に形成された溝21aに、凹部22の内周面に形成された返し構造22aが嵌まり込む。その結果、嵌合された凸部21と凹部22とを外れ難くすることができる。
すなわち、本実施形態に係る車両の製造方法は、ねじ止めや溶接を用いずに部品同士を組み付け可能であり、かつ、嵌合構造が外れ難い。
その他の構成は、第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0070】
11、21 凸部
11a、22a 返し構造
12、22 凹部
12a、21a 溝
BT 電池
FD フロントドア
FS フロントシート
HD フード
MT モータ
RD リアドア
RS リアシート
SW ステアリングホイール
T1、T2 タイヤ
TL トランクリッド
UNB アンダーボデー
UPB アッパーボデー
W1、W2 ホイール
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12