(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両のドアハンドル構造
(51)【国際特許分類】
E05B 85/16 20140101AFI20240806BHJP
E05B 79/22 20140101ALI20240806BHJP
E05B 81/06 20140101ALI20240806BHJP
E05B 81/16 20140101ALI20240806BHJP
E05B 81/36 20140101ALI20240806BHJP
E05B 77/34 20140101ALI20240806BHJP
E05B 77/06 20140101ALI20240806BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
E05B85/16 D
E05B79/22 A
E05B81/06
E05B81/16
E05B81/36
E05B77/34
E05B77/06 A
B60J5/04 H
(21)【出願番号】P 2021015647
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】倉本 英介
(72)【発明者】
【氏名】守山 幸宏
【審査官】秋山 斉昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-244991(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0000167(US,A1)
【文献】国際公開第2017/198917(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/201770(WO,A1)
【文献】特開2010-138649(JP,A)
【文献】特開2004-232300(JP,A)
【文献】特開2000-145211(JP,A)
【文献】特開2015-90028(JP,A)
【文献】特開2011-196084(JP,A)
【文献】特開2006-37599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/00-85/28
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが把持するレバーおよび、該レバーをドアパネルから出没可能に回転させる回動支軸を有するヒンジアームと、
上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、
上記レバーは、上記ドアパネルと面一になる格納位置と、
上記駆動装置の駆動により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、
上記把持位置よりさらに突出する開放位置と、
の間で回動可能に構成され、
上記ヒンジアームは、上記回動支軸に対して、上記レバーを有する一方側領域とは反対側の他方側領域に、上記駆動装置が固定され、
上記格納位置において、上記ヒンジアームにおける上記一方側領域と上記駆動装置とが上記回動支軸に対して対向するように設けられたことを特徴とする
車両のドアハンドル構造。
【請求項2】
上記ヒンジアームは、ドアパネル側の部材に上記回動支軸を介して回転可能に取り付けられ、
上記駆動装置に接続されるワイヤーハーネスを備え、
上記ワイヤーハーネスは、上記ドアパネル側の部材における、上記回動支軸近傍に固定されることを特徴とする
請求項1に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項3】
上記レバーと上記駆動装置とは上記回動支軸に対して対向するように設けられたことを特徴とする
請求項1又は2に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項4】
上記レバーを収容し上記ドアパネルに固定されるブラケットと、該ブラケットに固定されたセクタギヤと、を備え、
上記駆動装置は、モータと、
該モータの出力を上記ヒンジアームに伝達する出力軸と、
上記出力軸に嵌合されて上記セクタギヤに噛合するピニオンギヤと、を備えたことを特徴とする
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項5】
上記セクタギヤは、上記ヒンジアームを軸支する上記回動支軸に固定されたことを特徴とする
請求項4に記載の車両のドアハンドル構造。
【請求項6】
上記駆動装置には、モータと、該モータの上部を覆う防水部材とを備え、
上記駆動装置は、上記ワイヤーハーネスに接続されるハーネス接続部を備え、
上記ハーネス接続部は、上記防水部材に位置することを特徴とする
請求項2に記載の車両のドアハンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドアアウタパネルに格納時にドアアウタパネルと外面が面一になるようなフラッシュサーフェイス(flush surface)構造のドアハンドルレバー(ドアアウタハンドルと同意)を備えた車両のドアハンドル構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フラッシュサーフェイス構造のドアハンドルレバー(以下、「レバー」とも称する)が開示され、該レバー自体に回転軸を設けずに、レバーに対して回転軸をドアアウタパネルに沿って離間して設けるとともに、レバーと回転軸とを繋ぐように延びるスワンネックタイプのヒンジアームを備えたドアハンドル構造が開示されている。
【0003】
このようなヒンジアームを採用することで、レバーを、ドアアウタパネルに格納した格納位置からユーザが把持可能な把持位置まで電動により回動させ、当該レバーの全体をドアアウタパネル外方へ突出することができるため、レバーにユーザの手指がかけ易い構成とすることができる。
【0004】
ところで、上述したヒンジアームに衝突時の衝撃などの大慣性力がかかる際、ヒンジアームの一端側に有するレバーがドアアウタパネルの外側へ振り出されてドアが開錠しないように、ヒンジアームにおける、回転軸に対してレバーと反対側の他端側に、カウンターウェイトを設け、ヒンジアームの重心位置を回転軸に近づけることが好ましい。
【0005】
しかし、一般に上記他端側には、該ヒンジアームを電動で回動するための駆動機構が配置されており、カウンターウェイトを理想の配置位置である上記他端側にレイアウトできないという問題が生じる。
【0006】
特許文献1のドアハンドル構造においてもカウンターウェイトに相当するコントロールアーム(43)がヒンジアームに設けられているが、ヒンジアームにおける上記他端側には、駆動機構がブラケット等を介してドア側に設けられているため、上記他端側にカウンターウェイトを設けることができないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許出願公開第2003/0019261号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電動で回動するスワンネックタイプのヒンジアームを備えた構造において、大慣性力発生時に、ドアアウタパネルの外側へのレバーの振出を抑制するカウンターウェイト機能を成立させることができる車両のドアハンドル構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両のドアハンドル構造は、ユーザが把持するレバーおよび、該レバーをドアパネルから出没可能に回転させる回動支軸を有するヒンジアームと、上記ヒンジアームに動力を伝達する駆動装置と、を備え、上記レバーは、上記ドアパネルと面一になる格納位置と、上記駆動装置の駆動により上記レバーが上記ドアパネルから突出してユーザが把持できる把持位置と、上記把持位置よりさらに突出する開放位置と、の間で回動可能に構成され、上記ヒンジアームは、上記回動支軸に対して、上記レバーを有する一方側領域とは反対側の他方側領域に、上記駆動装置が固定され、上記格納位置において、上記ヒンジアームにおける上記一方側領域と上記駆動装置とが上記回動支軸に対して対向するように設けられたことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、上記回動支軸に対して、上記レバーを有する一方側領域とは反対側の他方側領域に、上記駆動装置が配置されるため、ヒンジアームの重心位置が回動支軸近傍になるとともに、駆動装置の駆動により駆動装置と上記レバーとを一体に回動させることができるため、重量物である駆動装置自体にレバーに対するカウンターウェイト(counter weight、釣り合い重り)機能をもたせることができる。
【0011】
従って他方側領域に別途カウンターウェイトをレイアウトすることなく、大慣性力発生時に、上記ドアパネルから外側へ意に反してレバーが振り出されることを抑制することができる。
【0012】
この発明の態様として、上記ヒンジアームは、ドアパネル側の部材に上記回動支軸を介して回転可能に取り付けられ、上記駆動装置に接続されるワイヤーハーネスを備え、上記ワイヤーハーネスは、上記ドアパネル側の部材における、上記回動支軸近傍に固定されることを特徴とする。
【0013】
上記構成によれば、駆動装置が固定されたヒンジアームが回動支軸を中心として回転することでワイヤーハーネスの接続部分がレバー位置に応じて移動しても、駆動装置への接続部分と、上記回動支軸近傍に固定された固定部との間のワイヤーハーネスの長さ変動を低減できる。
【0014】
従って、ヒンジアームが回動支軸を中心として回転時に、ワイヤーハーネスに入力される引張方向または圧縮方向の荷重を低減でき、ワイヤーハーネスの耐久性を損なわずに上記駆動装置のカウンターウェイト機能を発現することができる。
【0015】
この発明の態様として、上記レバーと上記駆動装置とは上記回動支軸に対して対向するように設けられたことを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、上記回動支軸から最も離れた位置に設けられる上記レバーと上記駆動装置とが上記回動支軸に対して対向するように設けられるため、上記ヒンジアームの重心位置を上記回動支軸により近づけることができる。
【0017】
この発明の態様として、上記レバーを収容し上記ドアパネルに固定されるブラケットと、上記ブラケットに固定されたセクタギヤとを備え、上記駆動装置は、モータと、上記モータの出力を上記ヒンジアームに伝達する出力軸を備え、上記出力軸に嵌合されて上記セクタギヤに噛合するピニオンギヤと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、歯車の噛み合い、すなわち、セクタギヤとピニオンギヤとの噛合により、ヒンジアームに対してモータ動力を伝達することができるとともに、モータとピニオンギヤとを、セクタギヤのピニオンギヤとの噛合部分に沿ってヒンジアームと共に移動させることができる。
【0019】
すなわち、上記構成により、上記ヒンジアームの他端側領域に、レバーに対するカウンターウェイトの機能を有する駆動装置を設けた構成を達成でき、ヒンジアームの重心位置を回動支軸近傍に設定することができる。
【0020】
なお、上述したドアパネル側の部材は、ドアパネル側に備えた、ヒンジアームおよびヒンジアームと一体に回動する部材以外の部材であれば、上記ブラケットであっても、該ブラケット以外の部材であってもよい。
【0021】
この発明の態様として、上記セクタギヤは、上記ヒンジアームを軸支する上記回動支軸に固定されたことを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、上記セクタギヤと、上記ヒンジアームの回転中心となる上記回動支軸との位置決めを正確にできるため、駆動装置がヒンジアームと共に移動可能にヒンジアームの他端側に駆動装置を固定した構成を提供することができる。
【0023】
従って、ヒンジアームの重心位置を回動支軸近傍に確実に設定することができる。
【0024】
この発明の態様として、上記駆動装置には、モータと、該モータの上部を覆う防水部材とを備え、上記駆動装置は、上記ワイヤーハーネスに接続されるハーネス接続部を備え、上記ハーネス接続部は、上記防水部材に位置することを特徴とする。
【0025】
上記構成によれば、駆動装置には、モータの上部を覆う防水カバーを備えることで、モータの内部への水の浸入を防ぐことができる。さらに、電気的な接点となるハーネス接続部がモータの上部に有する防水キャップに位置するため、ドア内部に水が入り、万一、駆動装置の下部に水が溜まった場合においても、該水によってハーネス接続部が被水することを抑制することができる。
従って、駆動装置の被水に対する信頼性を向上できる。
【発明の効果】
【0026】
上記構成によれば、電動で回動するスワンネックタイプのヒンジアームを備えた構造において、大慣性力発生時に、ドアアウタパネルの外側へのレバーの振出を抑制するカウンターウェイト機能を成立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】車両のドアハンドル構造を備えた実施例1の車両の側面図。
【
図3】レインフォースメントの配置構造を示す内側面図。
【
図4】レバーの格納状態を示す
図1のA-A線矢視断面図。
【
図11】ドアハンドル構造の要部を車幅方向内側から視た側面図。
【
図12】ドアハンドル構造の要部を後方、車幅方向内側かつ上方から視た斜視図。
【
図13】従来のドアハンドル構造の要部を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両のドアハンドル構造を示し、
図1は当該ドアハンドル構造を備えた車両の側面図、
図2は
図1の要部拡大側面図、
図3はレインフォースメントの配置構造を示す内側面図である。
【0029】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示す。
また、本発明の車両のドアハンドル構造は、4ドアタイプの車両のフロントドア、リヤドアやリフトゲート等にも適用できるが、以下の実施例においては2ドアタイプの車両のドアハンドルに適用した構造について述べる。
【0030】
図1に示すように、車室前方部において上下方向に延びるヒンジピラー1と、車両下部において車両前後方向に延びるサイドシル2と、ヒンジピラー1の上端から後方かつ上方に向けて斜め方向に延びるフロントピラー3と、フロントピラー3の後端に連続して車両後方に延びるルーフサイドレール4と、ルーフサイドレール4とサイドシル2とを略上下方向に連結する後部ピラー5と、を備えている。
【0031】
上述のヒンジピラー1、サイドシル2、フロントピラー3、ルーフサイドレール4および後部ピラー5で囲繞されたドア開口部6を形成している。
上述のヒンジピラー1に上下一対のドアヒンジ7,7を介して開閉可能に取付けたサイドドア8により、上記ドア開口部6を開閉すべく構成している。
【0032】
図1、
図2に示すように、サイドドア8はドア本体9とドアウインド部材としてのドアウインドガラス10とを有しており、
図2、
図3に示すように、ドア本体9はドアアウタパネル11と、図示しないドアインナパネルと、ドアアウタパネル11の車幅方向内側かつ後部側に設けられたレインフォースメント12と、を備えている。
この実施例では、上述のドアアウタパネル11と、レインフォースメント12と、でドアパネルを構成している。
【0033】
図3に示すように、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の後部上側には、後述するレバー20を収容する開口部13(レバー開口部)と、当該開口部13の縁部を全周にわたるバーリング加工により折曲げ形成したフランジ部14と、を備えている。
【0034】
また、
図3に示すように、レインフォースメント12の上部および下部には上部開口12a、下部開口12bがそれぞれ形成されると共に、これら上下の各開口12a,12b間には、後述するブラケット50を取付けるための開口部12c(ブラケット開口部)が形成されている。
【0035】
図4はレバー20の格納状態を示す
図1のA-A線矢視断面図、
図5はレバー20およびヒンジアーム30の斜視図、
図6はレバー20を含むブラケット50の外側面図である。
【0036】
また、
図7は駆動装置40を示す平面図、
図8はレバー20の把持位置を示す平面図、
図9はレバー20の開放位置を示す平面図、
図10はスイッチ70の押圧位置を仮想線αで示す平面図である。
【0037】
図4に示すように、車両のドアハンドル構造は、ドアパネルとしてのドアアウタパネル11の開口部13から出没可能なレバー20(詳しくは、ドアハンドルレバー)と、該レバー20を有するスワンネック(swan-neck)構造のヒンジアーム30と、レバー20がドアアウタパネル11から突出するようにヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備えている。また、レバー20を収容しドアパネルの一部を構成するレインフォースメント12に固定されるブラケット50を備えている。
【0038】
上述のレバー20は、
図4、
図5に示すアウタカバー21と、インナカバー22との周縁部を凹凸嵌合および接合固定したもので、該レバー20およびドアアウタパネル11の開口部13は側面視で車両前後方向に長い長円形状に形成されている。
【0039】
図5に示すように、上述のインナカバー22外側におけるヒンジアーム30が挿通する開口23(
図4参照)の前部には、ブラケット50の対向壁(図示せず)と当接して上記レバー20の揺動時に支点となる舌片形状の突出部28が形成されている。
【0040】
また、
図5に示すように、上述の開口23(
図4参照)の車幅方向内側には、ヒンジアーム30を離間して囲繞する筒部29が形成されている。
上述のヒンジアーム30は、
図4に示すように、一端(この実施例では後端)に上述のレバー20を有し、該レバー20がドアアウタパネル11から突出するように回動させる回動支軸としてのヒンジピン31を備えている。このヒンジピン31は上述のブラケット50に固定され上下方向に指向している。
【0041】
また、上述のヒンジアーム30は、
図4に示すように、ヒンジピン31を枢支する枢支部32と、この枢支部32からスワンネック形状のネック部33を介して後方に延びるレバー支持部34と、枢支部32から上記ネック部33とは反対側の車両前方に延びる延出部35と、を一体的に備えている。上述のレバー支持部34は、アウタカバー21とインナカバー22とから成るレバー20の内部に配置されている。
【0042】
図4に示すように、ヒンジアーム30の延出部35には、駆動装置40に備えた後述するモータ42等をアセンブリするモータベース41が取付けられている。
また、
図4に示すように、上述のヒンジピン31と同軸上には、クランクプレート60が設けられている。このクランクプレート60の後側かつ車幅方向外側には、レバー20およびヒンジアーム30が把持位置(
図8参照)に回動した時、ヒンジアーム30のネック部33と当接係止される縦壁61が一体形成されている。
【0043】
さらに、上述のクランクプレート60の車幅方向内端部には、ドアラッチ(図示せず)を解除するレリーズワイヤ62が固定されている。このクランクプレート60は、バネ力が大きいコイルスプリング(図示せず)により常時反レリーズ方向にバネ付勢されている。
【0044】
一方、上述のヒンジピン31には付勢手段としてのトーションスプリング36が巻回されている。このトーションスプリング36の一端36aが
図4に示すクランクプレート60に係止され、トーションスプリング36の他端36bが
図5に示すように、ヒンジアーム30の延出部35に係止されている。これにより、該トーションスプリング36によりレバー20を常時格納方向にバネ付勢している。
このトーションスプリング36のバネ力は、クランクプレート60を反レリーズ方向に付勢するコイルスプリング(図示せず)に対して、小さく設定されている。
【0045】
次に、上述のブラケット50に備えたセクタギヤG1、並びに、該セクタギヤG1と協働してヒンジアーム30の他端側(延出部35側参照)に動力を伝達する駆動装置40の構成について
図7を参照して説明する。
セクタギヤG1は、扇形状の板状部材で形成され、ヒンジアーム30を軸支するヒンジピン31に固定されると共に、上述のブラケット50に固定されていて、ブラケット50に対して位置および姿勢が相対変位しないように形成されている。
【0046】
セクタギヤG1は、嵌合穴G1aが貫通形成され、この嵌合穴G1aにおいてヒンジピン31に嵌合することで、上述したようにヒンジピン31に固定されている。
【0047】
この嵌合穴G1aは、セクタギヤG1における、ピニオンギヤG5との円弧状の噛合部分G1bの中心位置に形成されている。
【0048】
駆動装置40は、モータ42と、各要素G2~G6から成る歯車列46(gear train)と、これら42,46をアセンブリするモータベース41とを備えている。
【0049】
詳しくは、モータベース41にはモータ42が取付けられている。モータ42の回転軸43には出力ギヤG2が嵌合されている。モータベース41に設けられた軸44にはピニオンギヤG3を備えたアイドルギヤG4が設けられている。また、モータベース41に設けられた出力軸45には、ピニオンギヤG5を備えた従動ギヤG6が設けられている。上述の出力軸45はピニオンギヤG5を介してモータ42からの出力を上記ヒンジアーム30に伝達する軸である。
【0050】
図7に示すように、出力ギヤG2はアイドルギヤG4と噛合している。ピニオンギヤG3は従動ギヤG6と噛合している。ピニオンギヤG5はセクタギヤG1と噛合している。これにより、モータ42を駆動して、その回転軸43および出力ギヤG2を、
図7の反時計方向に回転させると、各ギヤG2,G4,G3,G6および出力軸45をこの順に介してピニオンギヤG5が
図7の反時計方向に回転する。
【0051】
ピニオンギヤG5が
図7の反時計方向に回転すると、セクタギヤG1は位置および姿勢が不変であるから、駆動装置40、すなわち、モータ42と、各要素G2~G6から成る歯車列46(gear train)と、モータベース41とは、扇形状のセクタギヤG1のピニオンギヤG5との円弧状の噛合部分G1bに沿ってレバー20突出方向に移動する。
【0052】
そして、上述したように、ヒンジアーム30の延出部35は、モータベース41が取付けられているため、駆動装置40は、ヒンジピン31を中心としてヒンジアーム30と一体に回動し、レバー20をドアアウタパネル11に対して出没可能としている。
【0053】
上述のレバー20は、そのアウタカバー21がドアアウタパネル11と面一になる格納位置(
図4参照)と、駆動装置40によりレバー20の格納位置において面一になる意匠面全体がドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(
図8参照)と、この把持位置よりもさらに突出する開放位置(
図9参照)と、の間で回動可能に構成されている。
【0054】
図4に示す格納位置から
図8に示す把持位置までの間は、駆動装置40によりレバー20を回動することができる。また、ヒンジアーム30が
図4に示す格納位置から
図8に示す把持位置に達するまでの間においては、クランクプレート60は動くことなく、バネ力の強いコイルスプリング(図示せず)により反レリーズ方向に付勢されている。
【0055】
図8に示す把持位置においては、レバー20がドアアウタパネル11から外方に突出してユーザが当該レバー20を把持できるので、
図8に示す把持位置から
図9に示す開放位置へはユーザによりレバー20を開放することができる。
【0056】
図8に示すように、ヒンジアーム30が把持位置に達すると、当該ヒンジアーム30のネック部33がクランクプレート60の縦壁61に当接するので、図示しないコイルスプリングのバネ力に抗してレバー20が開放方向に回動操作されると、クランクプレート60がレリーズ方向に回動し、レリーズワイヤ62を介してドアラッチを解除する。
【0057】
ところで、上述のブラケット50は、
図4に示すように、開口部13と連通するレバー20の格納空間52と、ヒンジアーム30の挿通孔53とを備えている。
また、上述のブラケット50は、
図6に示すように、前側取付け部54と、上側取付け部55と、下側取付け部56と、後側取付け部57と、をそれぞれ備えている。
【0058】
図6、
図3に示すように、ブラケット50の前側取付け部54はレインフォースメント12の開口部12c周縁の前側取付け座12dに締結固定される。同様に上側、下側の各取付け部55,56はレインフォースメント12の開口部12c周縁の上側取付け座12e、下側取付け座12fにそれぞれ締結固定される。
【0059】
図3、
図4に示すように、レインフォースメント12の開口部12cにおける後側周縁には、車幅方向外方に延びる切起こし部12gが一体形成されており、
図6に示すブラケット50の後側取付け部57は、上記切起こし部12gに締結固定される。
【0060】
一方、
図4に示すように、格納位置におけるレバー20の車両内方、詳しくは、インナカバー22の後端部と対向するブラケット50の後端側の車幅方向内側にはインナカバー22の後端部と近接してスイッチ70が配置されている。
このスイッチ70は、モータ42と電気的に接続されており、当該スイッチ70の押圧操作時にONとなり、モータ42への通電を行なうものである。
【0061】
また、
図4に示すように、上記スイッチ70の前側近傍におけるブラケット50にはキーシリンダ15が配置されている。
さらに、
図4に示すように、レバー20の格納位置において、ヒンジアーム30のネック部33とキーシリンダ15との間のブラケット50の所定位置には、ヒンジアーム30を
図8に示す把持位置で仮保持する仮保持機構80が配置されている。
【0062】
図10に示すように、上記レバー20はヒンジアーム30のレバー支持部34に対して揺動可能に設けられているので、格納位置にあるレバー20の後端部を外方から押圧すると、
図10に仮想線αで示すように、レバー20の後端部が車幅方向内側に揺動変位して、スイッチ70をONにするスイッチ押圧位置となる。
【0063】
図11は、ドアハンドル構造の要部を車幅方向内側から視た側面図を示す。
図4、
図11に示すように、ヒンジアーム30は、ヒンジピン31に対して一方側領域、すなわちヒンジピン31よりも後側領域Rrに、レバー20(アウタカバー21およびインナカバー22)、ネック部33およびレバー支持部34等を備えている。
【0064】
さらに、ヒンジアーム30は、ヒンジピン31に対して、一方側領域と反対側の他方側領域、すなわちヒンジピン31よりも前側領域Rfにおいて駆動装置40が固定されている。
【0065】
そして、レバー20が格納位置において、ヒンジアーム30における後側領域Rrと、前側領域Rfに備えた駆動装置40とは、ヒンジピン31に対して対向する、すなわち、本実施形態において、車両正面視で少なくとも一部が重複するように設けられている。
【0066】
具体的に、後側領域Rrに備えたレバー20(インナカバー22)およびレバー支持部34と、ヒンジピン31と、前側領域Rfに備えた駆動装置40の中で最も重量物であるモータ42とは、
図4に示す状態(車両平面視)において、前後方向に延びる同一直線上に配置される(
図4中の仮想線La参照)とともに、
図11に示す状態(車幅方向内側面視)において、前後方向に延びる同一直線上に配置されている(
図11中の仮想線Lb参照)。
【0067】
図12は、ドアハンドル構造の要部を後方、車幅方向内側かつ上方から視た斜視図を示す。
図11、
図12に示すように、駆動装置40は、モータ42の上部に装着される防水キャップ65を備えている。
【0068】
防水キャップ65は、耐水性を有する樹脂或いはゴム等で形成され、上壁部66と、上壁部66の周縁全体から下方へ延びる周壁部67とで上方へ凹状に形成され、モータ42の上部に対して密着した状態で覆うように装着される。さらに、防水キャップ65の上壁部66の後部には、後方へ向けて突出する突出片65aが一体に形成され、突出片65aの平面視で中央部には、上下方向に貫通する貫通穴65bが形成されている。
【0069】
また、同図に示すように、モータ42は、駆動装置40に備えた各ギヤG3,G4,G5,G6と比して上方に突出するようにモータベース41に配設されている。換言すると、モータ42は、ブラケット50の上壁50Aよりも上方に突出するように配設されている。
【0070】
これにより、モータ42の少なくとも上部は、仮にブラケット50の下壁50Bに水が溜まっても被水しないレイアウトとしている。
【0071】
また、
図11、
図12に示すように、ヒンジアーム30に固定された駆動装置40と、ブラケット50等に搭載された各種電気機器とは、ワイヤーハーネス90を介して電気的に接続されている。
例えば、上述したように、スイッチ70(
図11、
図12参照)が押圧操作時にONとされた際に、モータ42への通電を行うために、スイッチ70とモータ42とは、ワイヤーハーネス90を介して電気的に接続されている。
【0072】
なお、
図11、
図12以外の図面においては、ワイヤーハーネス90および防水キャップ65の図示を省略している。
【0073】
ワイヤーハーネス90は、駆動装置40側(つまり可動部側)において、防水キャップ65の上壁部66に接続されている。なお、以下の説明において、ワイヤーハーネス90の駆動装置40側の接続部分68を「ハーネス接続部68」と称する。
【0074】
具体的には、防水キャップ65の上壁部66には、ハーネス挿通穴68a(
図12参照)が上下方向に貫通形成されている。そして、ワイヤーハーネス90は、ハーネス挿通穴68aにワイヤーハーネス90の一端側が上壁部66の上面側から嵌挿状態で保持されている。これにより、ハーネス接続部68は、防水キャップ65の上壁部66に位置する。さらに、ワイヤーハーネス90のハーネス挿通穴68aへ嵌挿された端部は、防水キャップ65の上壁部66の下方に位置するモータ42と電気的に接続されている(図示省略)。
【0075】
なお、ワイヤーハーネス90は、防水キャップ65の上壁部66に位置するハーネス接続部68から防水キャップ65の突出片65aの貫通穴65bを通じて、該突出片65aの下方へと取り回され、ブラケット50側(つまり固定部側)へと延出されている。その際、ワイヤーハーネス90は、突出片65aの貫通穴65bの縁部に結束バンドBによって固定されている。この固定部分を「ハーネス可動側固定部63」とも称する。
【0076】
一方、ワイヤーハーネス90は、ブラケット50側のヒンジピン31近傍、具体的には、ブラケット50の上壁部66において、ヒンジピン31の一端(上端)を取り付け固定するピン取付部58に対して車幅方向内側近傍の位置、(すなわち、ピン取付部58に対して、ハーネス接続部68を有する側の近傍位置(
図12参照))に結束バンドBによって固定されている。
なお、この固定部分を「ハーネス固定部69」と称する。
【0077】
また、
図11、
図12に示すように、ピン取付部58(ヒンジピン31)近傍における、ハーネス固定部69は、ハーネス接続部68と、ヒンジピン31に固定されるセクタギヤG1との車幅方向の間に位置する。
【0078】
この位置にハーネス固定部69を設定することで、ハーネス接続部68がレバー20位置に応じて移動する際に、ハーネス接続部68がハーネス固定部69に対して相対変位しない方向(車幅方向)においては、ハーネス接続部68とハーネス固定部69とを極力に近接させることができ、結果として、これらハーネス接続部68とハーネス固定部69とを結ぶワイヤーハーネス90の余分な配索長さを省略することができる。
【0079】
図4に示すように、上述した本実施形態の車両のドアハンドル構造は、ユーザが把持するレバー20および、該レバー20をドアアウタパネル11(ドアパネル)から出没可能に回転させるヒンジピン31(回動支軸)を有するヒンジアーム30と、ヒンジアーム30に動力を伝達する駆動装置40と、を備え、レバー20は、ドアアウタパネル11と面一になる格納位置(
図4参照)と、駆動装置40の駆動によりレバー20がドアアウタパネル11から突出してユーザが把持できる把持位置(
図8参照)と、把持位置よりさらに突出する開放位置(
図9参照)と、の間で回動可能に構成され、
図4に示すように、ヒンジアーム30は、ヒンジピン31に対して、レバー20を有する後側領域Rr(一方側領域)とは反対側の前側領域Rf(他方側領域)に、駆動装置40が固定され、
図4、
図11に示すように、格納位置において、ヒンジアーム30における後側領域Rrと駆動装置40とがヒンジピン31に対して対向するように設けられたことを特徴とする。
【0080】
上記構成によれば、
図4、
図11に示すように、レバー20、ヒンジアーム30における、ヒンジピン31に対して、レバー20を有する後側領域Rrとは反対側の前側領域Rfに、駆動装置40が固定され、さらに、格納位置において、ヒンジアーム30における後側領域Rrと駆動装置40とがヒンジピン31に対して対向するように設けたため、ヒンジアーム30の重心位置がヒンジピン31近傍になるとともに、駆動装置40の駆動により駆動装置40とレバー20とを一体に回動させることができる。
【0081】
このため、ヒンジアーム30における、カウンターウェイトのレイアウト位置として理想的な位置である前側領域Rfに配置された重量物である駆動装置40自体に、レバー20に対するカウンターウェイト機能をもたせることができる。
【0082】
従って、カウンターウェイトを前側領域Rfに別途レイアウトする場合のように、カウンターウェイトが駆動装置40と競合することがなく、大慣性力発生時に、ドアアウタパネル11から外側へレバー20が意に反して振り出されることを抑制することができる。
【0083】
その他にも、前側領域Rfに別途カウンターウェイトをレイアウトすることがないため、該カウンターウェイトのレイアウトスペースおよび車体重量の軽減化を図ることができる。
【0084】
以下、詳述すると、従来よりフラッシュサーフェイス構造のドアハンドルレバーとして、レバー自体に回転支軸を有し、例えば、回転支軸を有する一端側を回転中心として他端側をドアアウタパネルに対して出没可能に電動により揺動させるシーソ式のレバーが知られている。
【0085】
但し、このシーソ式のレバー構造は、上述したように、レバー自体に回転支軸を有するため、回転支軸を電動により回転させるモータ等の電気部品を、レバーをドアアウタパネルに取り付け可能に開口する開口部に近接して配置する必要があるため、該電気部品が被水し易くなることが懸念される。
【0086】
その他にも、シーソ式のレバー構造は、レバー自体に回転支軸を有するため、回転支軸を有する一端側を含めたレバー全体を、ドアアウタパネルから突出させることが困難であるため、ユーザが把持位置のレバーを把持し難くなることも懸念される。
【0087】
これに対して、レバーの位置に対して回転支軸をドアアウタパネルに沿って離間して設けた構成、すなわちスワンネックヒンジ構造を採用することで、上述した課題を解決できる点で有利である。
【0088】
しかし、スワンネックヒンジ構造においては、レバーと回転支軸とが上述したように離間することに起因して、ヒンジアームの重心位置がヒンジピン(回転支軸)と離間することになる。
【0089】
そうすると、車両衝突時などヒンジアームに大慣性が発生時に、ヒンジアームの一端側のレバーがドアアウタパネルの外側へ振り出され、意に反してドアが開錠されることが懸念される。
【0090】
このため、従来より、スワンネックヒンジ構造においては、ヒンジアームにおける、ヒンジピンに対して、レバーを有する側と反対側にカウンターウェイト(重量物)を設けることで、ヒンジアームの重心位置がヒンジピンに近接させることが行われている。
【0091】
しかし、スワンネックヒンジ構造においては、ヒンジアームにおける、ヒンジピンに対して、レバーを有する一端側と反対側の他端側には、ヒンジピンを回転中心としてヒンジアームを電動により回転するための駆動装置(モータ)が配置されている。
【0092】
このため、
図13に示すように、駆動装置40’を避けるようにカウンターウェイトC/Wを該駆動装置40’に対して例えば、車幅方向内側寄りの位置に配置することが考えられる。
なお、
図13は、レバー20’の格納位置における、従来のドアハンドル構造の要部を示す平面図である。従来のドアハンドル構造において、セクタギヤG1’は、ヒンジアーム30’と一体に回動するように該ヒンジアーム30に固定され、駆動装置40’は、ヒンジアーム30’と一体に回動せず、ドアハンドル構造のブラケットに固定されている。
【0093】
上述したように、カウンターウェイトC/Wをヒンジアーム30’のヒンジピン31’に対して前側に設けることで、前後方向においては、ヒンジアーム30’の重心位置CGを、ヒンジピン31’に対して、レバー20’を有する後側からヒンジピン31’に近い前側へ寄せることができる。しかし、カウンターウェイトC/Wを上述したように、駆動装置40’よりも車幅方向内側寄りの位置に配置することで、ヒンジアーム30’の重心位置CGは、車幅方向においてはヒンジピン31’に対して車幅方向内側寄りの位置となる(
図13参照)。
【0094】
そうすると、車両の後面衝突時に、ヒンジアーム30’には、ヒンジピン31’を中心として、ヒンジアーム30’の一端側のレバー20’がドアアウタパネル11’の外側へ振り出される方向のモーメント荷重(
図13中の矢印M参照)が発生するため(
図13中の仮想線で示したヒンジアーム30’参照)、上述したように、意に反してドアが開錠されることが懸念される。
【0095】
これに対して、本実施形態においては、上述したように、駆動装置40自体をカウンターウェイトとして活用可能な構成とすることで、駆動装置40とカウンターウェイトとが競合することがなく、ヒンジアーム30の重心位置をヒンジピン31近傍とすることができる。
【0096】
従って、大慣性力発生時に、ドアアウタパネル11から外側へレバー20が意に反して振り出されることを抑制することができる。
【0097】
図11、
図12に示すように、この発明の態様として、ヒンジアーム30は、ブラケット50(ドアアウタパネル11側の部材)にヒンジピン31を介して回転可能に取り付けられ、駆動装置40にハーネス接続部68において接続されるワイヤーハーネス90を備え、ワイヤーハーネス90は、ブラケット50における、ヒンジピン31近傍、すなわち、ハーネス固定部69において固定されることを特徴とする。
【0098】
上記構成によれば、駆動装置40が固定されたヒンジアーム30がヒンジピン31を中心として回転することでワイヤーハーネス90の駆動装置40側へ接続したハーネス接続部68がレバー20位置に応じて移動しても、ハーネス接続部68と、ヒンジピン31近傍に固定されたハーネス固定部69との間における、該ワイヤーハーネス90の長さ変動を低減できる。
【0099】
詳しくは、上述したように、ヒンジアーム30には、駆動装置40が固定されているため、駆動装置40がヒンジアーム30の回転中心(ヒンジピン31)を中心として回転する間、駆動装置40とヒンジアーム30のヒンジピン31との距離は、略一定に保たれる。
【0100】
このため、上述したように、ワイヤーハーネス90をブラケット50におけるヒンジピン31(厳密にはピン取付部58)近傍、すなわち、ハーネス固定部69において固定することで、ハーネス接続部68がレバー20位置に応じて移動しても、ハーネス接続部68(厳密にはハーネス可動側固定部63)とハーネス固定部69との間の長さ変動を低減できる。
【0101】
従って、ヒンジアーム30がヒンジピン31を中心として回転時に、ワイヤーハーネス90に入力される引張方向または圧縮方向の荷重を低減でき、ワイヤーハーネス90の耐久性を損なわずに駆動装置40のカウンターウェイト機能を発現することができる。
【0102】
図4、
図11に示すように、この発明の態様として、レバー20と、ヒンジピン31と、駆動装置40とは車両正面視(車幅方向(
図4参照)および上下方向(
図12参照))で重複する、すなわち、車両平面視において、前後方向に延びる同一直線上に配置されるとともに(
図4中の仮想線La参照)、車幅方向内側面視において、前後方向に延びる同一直線上に配置され(
図11中の仮想線Lb参照)ように設けられたことを特徴とする。
【0103】
上記構成によれば、後端にレバー20を備えたヒンジアーム30の重心を、よりヒンジピン31に近づけることができる。
【0104】
図7に示すように、この発明の態様として、レバー20を収容しドアアウタパネル11に固定されるブラケット50(
図11、
図12参照)と、該ブラケット50に固定されたセクタギヤG1を備え、駆動装置40は、モータ42と、モータ42の出力をヒンジアーム30に伝達する出力軸45を備え、該出力軸45に嵌合されてセクタギヤG1に噛合するピニオンギヤG5と、を備えたことを特徴とする。
【0105】
上記構成によれば、歯車の噛み合い、すなわち、セクタギヤG1とピニオンギヤG5との噛合により、モータ42とピニオンギヤG5とを、セクタギヤG1のピニオンギヤG5との噛合部分G1bに沿って移動しながらヒンジアーム30に対してモータ42の動力を伝達することができる(
図8参照)。
【0106】
すなわち、上記構成により、駆動装置40は、前側領域Rfにおいてヒンジアーム30と共に回転できるため、ヒンジアーム30は、前側領域Rfに、レバー20に対するカウンターウェイトの機能を有する駆動装置40を設けた構成を達成でき、ヒンジアーム30の重心位置をヒンジピン31近傍に設定することができる。
【0107】
図7に示すように、この発明の態様として、セクタギヤG1は、上記ヒンジアーム30を軸支するヒンジピン31に固定されたことを特徴とする
上記構成によれば、セクタギヤG1とヒンジアーム30の回転中心となるヒンジピン31との位置決めを正確にできるため、駆動装置40がヒンジアーム30と共に移動可能にヒンジアーム30の前側領域Rfに駆動装置40を固定した構成を提供することができる。
【0108】
従って、ヒンジアーム30の重心位置をヒンジピン31近傍に確実に設定することができる。
【0109】
詳述すると、セクタギヤG1は、ヒンジピン31に固定された構成とすることで、セクタギヤG1とヒンジピン31とを正確に位置決めすることができる。
【0110】
これにより、セクタギヤG1における、ピニオンギヤG5との円弧状の噛合部分G1bの中心位置に、ヒンジアーム30の回転中心となるヒンジピン31を固定することができ、結果としてヒンジアーム30の回転中心と、セクタギヤG1の噛合部分G1bに沿って移動するピニオンギヤG5の回転中心とを一致させることができる。つまり、セクタギヤG1の円弧状の噛合部分G1bの中心と、ヒンジアーム30の回転中心とを同軸とすることができる。
【0111】
これにより、セクタギヤG1の噛合部分G1bに沿って移動するピニオンギヤG5が嵌合される出力軸45と、ヒンジアーム30の回転中心となるヒンジピン31との軸間距離を、レバー20が移動している間、一定に保つことができる。
【0112】
従って、駆動装置40がヒンジアーム30と共に移動可能にヒンジアーム30の他端側に駆動装置40を固定した構成を提供することができ、結果としてヒンジアーム30の重心位置をヒンジピン31近傍に確実に設定することができる。
【0113】
また、セクタギヤG1とヒンジピン31との位置決め精度の管理を容易にできるため、ヒンジアーム30とセクタギヤG1とのヒンジピン31を介した組付け誤差を排除することができる。
【0114】
図11、
図12に示すように、この発明の態様として、駆動装置40には、モータ42と、該モータ42の上部を覆う防水キャップ65(防水部材)とを備え、駆動装置40は、ワイヤーハーネス90に接続されるハーネス接続部68を備え、ハーネス接続部68は、防水キャップ65に位置することを特徴とする。
【0115】
上記構成によれば、駆動装置40の被水に対する信頼性を向上できる。
【0116】
詳述すると、ドア内部(図示しないドアインナパネルとドアアウタパネル11の間)は、被水領域に相当するため、降雨時や洗車時に例えば、ドアウインドガラス10とドア本体9との間からドア内部に浸入した水がドアハンドル構造に向けて滴下するおそれがある。
【0117】
さらに、駆動装置40は、ヒンジアーム30がヒンジピン31を中心として回転することでレバー20位置に応じてブラケット50の内部から外側(車幅方向内側)へ移動するため(例えば、
図8参照)、被水し易くなる。
【0118】
これに対して、
図11、
図12に示すように、駆動装置40には、モータ42の上部を覆う防水キャップ65を備えることで、モータ42の内部への水の浸入を防ぐことができる。
【0119】
本実施形態においては、防水キャップ65は、上壁部66と周壁部67を備え、モータ42に対して上方から嵌め込むように装着され、周壁部67の内面とモータ42の外面との隙間は、下方へ向けて開口させることができる。このため、例えば、防水キャップ65の上壁部66に水が滴下しても、その水は、上壁部66の上面から周壁部67の外面を伝ってモータ42の下部へと流下するが、その際に、周壁部67の内面とモータ42の外面との隙間を通じてモータ42の内部に水が浸入することを防ぐことができる。
【0120】
さらに、
図12に示すように、ハーネス接続部68は、モータ42を上方から覆う防水キャップ65に位置するため、ドアハンドル構造の上方から滴下してブラケット50の下壁50Bに溜まった水によって被水し続けることがなく、水捌けのよい位置に設けることができる。
【0121】
このように、この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
【0122】
本発明のレバーは、ヒンジアームの回転支軸に対して一方側に有する構成であれば、本実施形態のレバー20のように、ヒンジアーム30における、レバー20以外の他の部位に対して一体に形成された構成に限定せず、別体で形成された構成であってもよい。
【0123】
また、本発明の駆動装置は、本実施形態の駆動装置40に限定しない。例えば、図示省略するが、モータの回転力が伝達される出力軸と、基端が当該出力軸に固定され、遊端がブラケットに当接して摺動可能なクランクと、を備えたクランク作動式装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0124】
11…ドアアウタパネル(ドアパネル)
20…レバー
30…ヒンジアーム
31…ヒンジピン(回動支軸)
40…駆動装置
42…モータ
45…出力軸
50…ブラケット(ドアアウタパネル側の部材)
65…防水キャップ(防水部材)
68…ハーネス接続部
90…ワイヤーハーネス
G1…セクタギヤ
G5…ピニオンギヤ
Rr…後領域(一方側領域)
Rf…前側領域(他方側領域)