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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20240806BHJP
   F02D 19/06 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
F02D29/02 321A
F02D19/06 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021016006
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022119044
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】那須田 悠貴
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133598(JP,A)
【文献】特開2015-086700(JP,A)
【文献】特開2014-028605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0114841(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
F02D 13/00-29/06、41/00-45/00
F02M 37/00-37/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体燃料と液体燃料とを切り替えて使用する内燃機関を搭載する車両の制御装置であって、
所定の自動停止条件が成立した場合に前記内燃機関を自動停止させ、前記内燃機関の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に前記内燃機関を再始動させる制御部と、
路面傾斜を検出する傾斜検出部とを備え、
前記再始動条件は、ブレーキ操作量が所定の再始動閾値よりも小さくなったことを含み、
前記制御部は、
前記傾斜検出部により前記路面傾斜が登り勾配であると検出されており、かつ、前記気体燃料を使用して前記内燃機関を再始動する場合は、前記液体燃料を使用して前記内燃機関を再始動する場合と比較して、前記再始動閾値を大きい値に設定することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記ブレーキ操作量が前記再始動閾値よりも小さくなった場合に前記路面傾斜に応じたブレーキ圧を所定の保持時間保持してから減圧するブレーキ圧保持部を備え、
前記制御部は、
前記気体燃料を使用して前記内燃機関を再始動する場合は、前記液体燃料を使用して前記内燃機関を再始動する場合と比較して、前記保持時間を長い値に設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記自動停止条件は、前記ブレーキ操作量が所定の自動停止閾値よりも大きくなったことを含み、
前記気体燃料の使用中に前記内燃機関を自動停止する場合は、前記液体燃料の使用中に前記内燃機関を自動停止する場合と比較して、前記自動停止閾値を大きい値に設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両において、圧縮天然ガス(CNG)等の気体燃料と、ガソリン等の液体燃料とを燃料として使用するエンジンを搭載するバイフューエル車両がある。従来のこの種の車両として、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、気体燃料を用いてエンジンを始動させる始動要求が発生し、かつ暖機完了状態であると判定された場合は、エンジンの目標空燃比を理論空燃比よりもリーンに設定してエンジンを始動する技術が記載されている。そして、特許文献1には、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関を自動停止させ、所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関を再始動させるアイドルストップ機能を有する内燃機関に当該技術が適用される点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-234791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術にあっては、気体燃料の使用時の内燃機関の十分な再始動性を確保できているとはいえない。バイフューエル車両のエンジンは、圧縮天然ガス等の気体燃料を用いることで、ガソリン等の液体燃料を用いる場合よりも燃費を向上させることができる一方、気体燃料用のインジェクタから燃焼室までの経路が液体燃料用のインジェクタの経路よりも長いため、気体燃料を用いて内燃機関を始動する場合に、気体燃料を噴射して内燃機関の始動を開始してから車両の発進に必要な発進トルクが発生するまでの時間が長くなるという特性を有する。
【0006】
このため、内燃機関をアイドルストップによる自動停止状態から気体燃料を使用して再始動する場合、始動開始から発進トルクが発生するまでの時間が液体燃料を用いる場合よりも長くなり、運転者の意図通りに車両が発進できないおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、車両の発進性能を確保しながら燃費を向上させることができる車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、気体燃料と液体燃料とを切り替えて使用する内燃機関を搭載する車両の制御装置であって、所定の自動停止条件が成立した場合に前記内燃機関を自動停止させ、前記内燃機関の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に前記内燃機関を再始動させる制御部と、路面傾斜を検出する傾斜検出部とを備え、前記再始動条件は、ブレーキ操作量が所定の再始動閾値よりも小さくなったことを含み、前記制御部は、前記傾斜検出部により前記路面傾斜が登り勾配であると検出されており、かつ、前記気体燃料を使用して前記内燃機関を再始動する場合は、前記液体燃料を使用して前記内燃機関を再始動する場合と比較して、前記再始動閾値を大きい値に設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
このように上記の本発明によれば、車両の発進性能を確保しながら燃費を向上させることができる車両の制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施例または第2実施例に係る制御装置を備える車両の構成図である。
図2図2は、本発明の第1実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の第2実施例に係る車両の制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、気体燃料と液体燃料とを切り替えて使用する内燃機関を搭載する車両の制御装置であって、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関を自動停止させ、内燃機関の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関を再始動させる制御部を備え、再始動条件は、ブレーキ操作量が所定の再始動閾値よりも小さくなったことを含み、制御部は、気体燃料を使用して内燃機関を再始動する場合は、液体燃料を使用して内燃機関を再始動する場合と比較して、再始動閾値を大きい値に設定することを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両の制御装置は、車両の発進性能を確保しながら燃費を向上させることができる。
【実施例1】
【0012】
以下、本発明の第1実施例に係る車両の制御装置について図面を用いて説明する。図1図2は、本発明の第1実施例に係る車両の制御装置を説明する図である。図1に示すように、本発明の一実施例に係る車両の制御装置を搭載した車両1は、駆動源としての内燃機関2(図中、エンジンと記す)と、この内燃機関2から動力が伝達される変速機4と、内燃機関2と変速機4との間に設けられたクラッチ3と、変速機4から動力が伝達される駆動輪5と、を備えている。
【0013】
また、車両1は、アクセルペダルセンサ12Aと、ブレーキペダルセンサ13Aと、クラッチペダルセンサ14Aと、車速センサ15と、加速度センサ16と、内燃機関2および変速機4を制御するECU(Electronic Control Unit)11とを含んで構成されている。
【0014】
内燃機関2は、吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行うとともに、圧縮行程及び膨張行程の間に点火を行い車両1の駆動力を発生させる4サイクルのエンジンによって構成されている。なお、車両1は、内燃機関2に加えて、モータを駆動源として備えていてもよい。車両1は、内燃機関2を始動するスタータ6を備えている。
【0015】
変速機4は、例えば、手動変速機に一般的に用いられる平行軸歯車式の変速機構として構成されている。クラッチ3は、乾式単板の摩擦クラッチとして構成されており、内燃機関2の出力軸2Aに連結されたフライホイール3Aと、変速機4に連結されたクラッチディスク3Bとを有している。
【0016】
クラッチ3は、フライホイール3Aに対してクラッチディスク3Bが係合(接続)状態に切替えられた場合に内燃機関2と変速機4との間で動力を伝達し、開放(切断)状態に切替えられた場合に内燃機関2と変速機4との間の動力伝達を遮断する。
【0017】
このように構成された車両1において、内燃機関2から出力された回転は、変速機4で成立している変速段に応じた変速比で変速され、図示しないディファレンシャル装置およびドライブシャフトを介して駆動輪5に伝達される。
【0018】
アクセルペダルセンサ12Aは、アクセルペダル12に設けられており、アクセルペダル12の操作量を検出する。ブレーキペダルセンサ13Aは、ブレーキペダル13に設けられており、ブレーキペダル13の操作量を検出する。クラッチペダルセンサ14Aは、クラッチペダル14に設けられており、クラッチペダル14の操作量を検出する。ここで、各ペダルの操作量とは、ドライバによる踏み込み量であり、踏み込み量が大きいほど操作量が大きくなる。なお、ブレーキペダルセンサ13Aは、ブレーキペダル13の踏み込み量に代わって、ブレーキペダル13に連結されたマスタシリンダの油圧(マスタシリンダ圧力)を検出するようになっていてもよい。以下、ブレーキペダル13の踏み込み量またはマスタシリンダ圧力を、ブレーキ操作量という。
【0019】
車速センサ15は、駆動輪5に設けられており、この駆動輪5の回転速度に基づく車速を検出する。加速度センサ16は、車両1の加速度と、車両1の姿勢とを検出する。
【0020】
内燃機関2は、液体燃料と気体燃料とを利用可能なバイフューエル内燃機関である。したがって、車両1は、バイフューエル自動車である。内燃機関2は、液体燃料としてガソリンまたはディーゼル燃料を用いることができ、気体燃料として圧縮天然ガス(CNG)を用いることができる。
【0021】
車両1は、液体燃料を貯留する第1燃料貯留部8と、気体燃料を貯留する第2燃料貯留部9とを備えている。液体燃料は液体燃料用の図示しないインジェクタによって吸気経路または燃焼室に噴射される。気体燃料は気体燃料用の図示しないインジェクタによって吸気経路に噴射される。
【0022】
車両1は、内燃機関2に供給する燃料を液体燃料または気体燃料に切り替える燃料切替装置7と、ドライバにより操作される使用燃料選択スイッチ18を備えている。使用燃料選択スイッチ18により選択された液体燃料または気体燃料の一方は、燃料切替装置7を介して内燃機関2に供給される。
【0023】
車両1はブレーキ圧保持部17を備えている。ブレーキ圧保持部17は、駆動輪5の図示しないホイールシリンダに対する制動力を増圧、保持および減圧させる。ブレーキ圧保持部17は、いわゆるヒルホールド機能を実現するものであり、ブレーキ操作量が再始動閾値よりも小さくなった場合に路面傾斜に応じたブレーキ圧を所定の保持時間保持してから減圧する。これにより、車両1が登り勾配の傾斜路で停止中に、ドライバが発進のためにブレーキペダル13からアクセルペダル12への踏み替えを行う際に、ブレーキペダル13から足を離した後もブレーキ圧保持部17によってブレーキ圧が所定の保持時間保持され、車両1の発進時の車両1のずり下がりを防止できる。
【0024】
ECU11は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されており、制御対象を電気的に制御する。
【0025】
ECU11のROMには、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをECU11として機能させるためのプログラムが記憶されている。ECU11において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、ECU11として機能する。
【0026】
ECU11の入力ポートには、内燃機関2と、アクセルペダルセンサ12A、ブレーキペダルセンサ13A、クラッチペダルセンサ14A、車速センサ15、加速度センサ16等の各種センサ類と、使用燃料選択スイッチ18とが電気的に接続されている。
【0027】
ECU11の出力ポートには、内燃機関2と、スタータ6と、燃料切替装置7と、ブレーキ圧保持部17等の制御対象が接続されている。ECU11は、入力ポートに入力されたセンサ類等からの検出信号に基づいて、出力ポートに接続された制御対象を制御する。
【0028】
本実施例では、ECU11は制御部11Aを備えており、制御部11Aは、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関2を自動停止させ、内燃機関2の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関2を再始動させる。このように、制御部11Aは、いわゆるアイドルストップ制御を実施する。
【0029】
ここで、再始動条件は、ブレーキ操作量が所定の再始動閾値よりも小さくなったことを含んでいる。再始動閾値とは、内燃機関2の再始動を開始するブレーキ操作量の閾値である。これにより、ドライバによるブレーキ操作量が再始動閾値以上である間は、内燃機関2の自動停止が維持され、ドライバによるブレーキ操作量が再始動閾値よりも小さくなった場合は、再始動条件が成立し、内燃機関2が再始動される。また、ECU11は傾斜検出部11Bを備えており、傾斜検出部11Bは、加速度センサ16が検出した車両1の姿勢に基いて路面の傾斜を検出する。
【0030】
ここで、液体燃料と気体燃料とを切り替えて用いる内燃機関2にあっては、気体燃料用のインジェクタから燃焼室までの経路が液体燃料用のインジェクタよりも長く、噴射された気体燃料が燃焼室に到達するまでの時間が液体燃料の場合よりも長いため、内燃機関2の始動開始から車両の発進に必要な発進トルクが発生するまでの時間が長くなるという特性を有している。そのため、ドライバがブレーキペダル13から足を離したことにより内燃機関2がアイドルストップによる自動停止状態から再始動する際に、車両1の発進に要する発進トルクが発生するまでの時間は、気体燃料を用いる再始動の場合は液体燃料を用いる再始動の場合よりも長くなる。
【0031】
そこで、本実施例では、制御部11Aは、気体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合は、液体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合と比較して、再始動閾値を大きい値に設定する。このため、気体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合は、液体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合と比較して、ブレーキ操作量が大きい状態で内燃機関2の再始動が開始される。言い換えれば、気体燃料を使用する場合は、液体燃料を使用する場合と比較して、内燃機関2の再始動の開始タイミングが早められる。
【0032】
また、本実施例では、自動停止条件は、ブレーキ操作量が所定の自動停止閾値よりも大きくなったことを含んでいる。そして、制御部11Aは、気体燃料の使用中に内燃機関2を自動停止する場合は、液体燃料の使用中に内燃機関2を自動停止する場合と比較して、自動停止閾値を大きい値に設定する。したがって、気体燃料を用いる場合は、液体燃料を用いる場合と比較して、アイドルストップ制御の再始動閾値と自動停止閾値との両方が大きな値に設定される。
【0033】
なお、アイドルストップ制御による内燃機関2の再始動は、内燃機関2が自動停止により停止した状態で行われるため、液体燃料および気体燃料の何れを用いる場合であっても、自動停止閾値が再始動閾値よりも大きな値に設定されている。
【0034】
次に、図2に示すフローチャートを参照して、本実施例に係る車両の制御装置の動作の流れについて説明する。図2は、アイドルストップ制御による内燃機関2の自動停止中に、ブレーキストロークが減少したことにより内燃機関2が再始動されて、車両1が発進する際の制御部11Aの動作を示すものである。
【0035】
図2において、制御部11Aは、エンジン状態を取得し(ステップS1)、エンジン自動停止状態であるか否かを判別する(ステップS2)。ここで、エンジン状態とは、内燃機関2の運転状態をいう。また、エンジン自動停止状態とは、内燃機関2がアイドルストップ制御により運転を停止している状態をいう。
【0036】
制御部11Aは、ステップS2でエンジン自動停止状態でないと判別した場合はステップS1に戻り、ステップS2でエンジン自動停止状態であると判別した場合は、気体燃料が選択されているか否かを判別する(ステップS3)。
【0037】
ステップS3の判別がNO、つまり液体燃料が選択されている場合、制御部11Aは、ブレーキ操作量としてのブレーキストローク量を取得し(ステップS4)、ブレーキストローク量が閾値2未満であるか否かを判別する(ステップS5)。
【0038】
制御部11Aは、ステップS5でブレーキストローク量が閾値2未満ではないと判別した場合はステップS4に戻り、ブレーキストローク量が閾値2未満であると判別した場合は、液体燃料を用いて内燃機関2を始動する(ステップS6)。
【0039】
一方、ステップS3の判別がYES、つまり気体燃料が選択されている場合、制御部11Aは、ブレーキストローク量を取得し(ステップS7)、ブレーキストローク量が閾値1未満であるか否かを判別する(ステップS8)。ここで、閾値1および閾値2は、本発明における再始動閾値である。制御部11Aは、閾値1を閾値2よりも大きな値(大きなブレーキストローク量閾値)に設定している。
【0040】
制御部11Aは、ステップS8でブレーキストローク量が閾値1未満ではないと判別した場合はステップS7に戻り、ブレーキストローク量が閾値1未満であると判別した場合は、気体燃料を用いて内燃機関2を始動する(ステップS9)。
【0041】
そして、ステップS6またはステップS9で内燃機関2が始動された後、ブレーキストローク量がさらに減少すると車両1が発進する(ステップS10)。
【0042】
以上のように、本実施例の車両の制御装置は、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関2を自動停止させ、内燃機関2の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関2を再始動させる制御部11Aを備えている。また、再始動条件は、ブレーキ操作量が所定の再始動閾値よりも小さくなったことを含んでいる。そして、制御部11Aは、気体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合は、液体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合と比較して、再始動閾値を大きい値に設定している。
【0043】
これにより、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関2が自動停止されるので、燃費を向上させることができる。
【0044】
また、気体燃料を使用して内燃機関2を始動する場合は、液体燃料を使用する場合と比較して、ブレーキ操作量の再始動閾値が大きくされるため、内燃機関2の再始動を早いタイミングで開始することができる。このため、液体燃料を使用して内燃機関2を始動する場合と同等のタイミングで発進トルクを発生させることができる。
【0045】
この結果、車両1の発進性能を確保しながら燃費を向上させることができる。
【0046】
また、本実施例では、自動停止条件は、ブレーキ操作量が所定の自動停止閾値よりも大きくなったことを含んでいる。そして、制御部11Aは、気体燃料の使用中に内燃機関2を自動停止する場合は、液体燃料の使用中に内燃機関2を自動停止する場合と比較して、自動停止閾値を大きい値に設定している。
【0047】
これにより、気体燃料を用いる場合の自動停止閾値と再始動閾値との差が小さくなることを防止できるので、自動停止中にドライバがブレーキペダル13の踏み込み量を少し減らしただけで内燃機関2が再始動してしまうことを回避できる。このため、運転者の意図しない内燃機関2の再始動を防止することができる。
【実施例2】
【0048】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、第2実施例に係る車両の制御装置の動作の流れについて説明する。本実施例は、図1の構成の車両1においてECU11の制御部11Aの動作を異ならせたものである。以下、ECU11の制御部11Aの動作について説明する。図3は、アイドルストップ制御による内燃機関2の自動停止中に、ブレーキストロークが減少したことにより内燃機関2が再始動されて、車両1が発進する際の制御部11Aの動作を示すものである。
【0049】
図3において、制御部11Aは、傾斜検出部11Bから路面傾斜を取得し(ステップS11)、エンジン状態を取得し(ステップS12)、エンジン自動停止状態であるか否かを判別する(ステップS13)。
【0050】
制御部11Aは、ステップS13でエンジン自動停止状態でないと判別した場合はステップS12に戻り、ステップS13でエンジン自動停止状態であると判別した場合は、気体燃料が選択されているか否かを判別する(ステップS14)。
【0051】
ステップS14の判別がNO、つまり液体燃料が選択されている場合、制御部11Aは、ブレーキ操作量としてのブレーキストローク量を取得し(ステップS15)、ブレーキストローク量が閾値2未満であるか否かを判別する(ステップS16)。
【0052】
制御部11Aは、ステップS16でブレーキストローク量が閾値2未満ではないと判別した場合はステップS15に戻り、ブレーキストローク量が閾値2未満であると判別した場合は、液体燃料を用いて内燃機関2を始動する(ステップS17)。その後、制御部11Aは、ブレーキ保持圧を速く減圧させる(ステップS18)。ここでは、制御部11Aは、ブレーキ圧を所定の保持時間保持してから減圧させる。ステップS18における保持時間は、後述するステップS22における保持時間よりも短い時間である。このため、ブレーキ保持圧が相対的に速く減圧される。
【0053】
一方、ステップS14の判別がYES、つまり気体燃料が選択されている場合、制御部11Aは、ブレーキストローク量を取得し(ステップS19)、ブレーキストローク量が閾値1未満であるか否かを判別する(ステップS20)。
【0054】
ここで、閾値1および閾値2は、本発明における再始動閾値である。また、制御部11Aは、傾斜検出部11Bにより路面傾斜が登り勾配であると検出されており、かつ、気体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合は、液体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合と比較して、再始動閾値を大きい値に設定している。つまり、制御部11Aは、傾斜検出部11Bにより路面傾斜が登り勾配であると検出されている場合は、気体燃料を使用して内燃機関2を再始動するときの再始動閾値である閾値1を、液体燃料を使用して内燃機関2を再始動するときの再始動閾値である閾値2よりも大きな値(大きなブレーキストローク量閾値)に設定している。
【0055】
制御部11Aは、ステップS20でブレーキストローク量が閾値1未満ではないと判別した場合はステップS19に戻り、ブレーキストローク量が閾値1未満であると判別した場合は、気体燃料を用いて内燃機関2を始動する(ステップS21)。その後、制御部11Aは、ブレーキ保持圧を緩やかに減圧させる(ステップS22)。ここでは、制御部11Aは、ブレーキ圧を所定の保持時間保持してから減圧させる。ステップS22における保持時間は、ステップS18における保持時間よりも長い時間である。このため、ブレーキ保持圧が相対的に緩やかに減圧される。
【0056】
そして、ステップS18またはステップS22によって所定の保持時間が経過してブレーキ保持圧が減少すると、車両1が発進する(ステップS23)。
【0057】
なお、制御部11Aは、傾斜検出部11Bにより路面傾斜が登り勾配であると検出されている場合は、閾値1を閾値2よりも大きくすることに加えて、傾斜検出部11Bにより路面傾斜が登り勾配であると検出されていない場合と比較して閾値1および閾値2の両方を大きくしてもよい。
【0058】
以上のように、本実施例では、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関2を自動停止させ、内燃機関2の自動停止中に所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関2を再始動させる制御部11Aと、路面傾斜を検出する傾斜検出部11Bとを備えている。また、再始動条件は、ブレーキ操作量が所定の再始動閾値よりも小さくなったことを含んでいる。
【0059】
そして、制御部11Aは、傾斜検出部11Bにより路面傾斜が登り勾配であると検出されており、かつ、気体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合は、液体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合と比較して、再始動閾値を大きい値に設定している。
【0060】
これにより、登り勾配の傾斜路において気体燃料を使用して内燃機関2を始動する場合は、液体燃料を使用する場合と比較して、ブレーキ操作量の再始動閾値が大きくされるため、内燃機関2の再始動を早いタイミングで開始することができる。このため、液体燃料を使用して内燃機関2を始動する場合と同等のタイミングで発進トルクを発生させることができる。したがって、平坦路よりも大きな発進トルクが必要な登り勾配の傾斜路においても、車両1の発進時に車両1のずり下がりを発生しにくくすることができる。
【0061】
この結果、車両1の発進性能を確保しながら燃費を向上させることができる。
【0062】
また、本実施例では、ブレーキ操作量が再始動閾値よりも小さくなった場合に路面傾斜に応じたブレーキ圧を所定の保持時間保持してから減圧するブレーキ圧保持部を備えている。そして、制御部11Aは、気体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合は、液体燃料を使用して内燃機関2を再始動する場合と比較して、保持時間を長い値に設定している。
【0063】
これにより、登り勾配の傾斜路において、気体燃料を用いて内燃機関2を再始動して発進する場合に、ペダルの踏み替えのための十分な長さの保持時間が確保されるので、車両1のずり下がりを確実に防止できる。
【0064】
また、本実施例では、自動停止条件は、ブレーキ操作量が所定の自動停止閾値よりも大きくなったことを含んでいる。そして、気体燃料の使用中に内燃機関2を自動停止する場合は、液体燃料の使用中に内燃機関2を自動停止する場合と比較して、自動停止閾値を大きい値に設定している。
【0065】
これにより、気体燃料を用いる場合の自動停止閾値と再始動閾値との差が小さくなることを防止できるので、自動停止中にドライバがブレーキペダル13の踏み込み量を少し減らしただけで内燃機関2が再始動してしまうことを回避できる。このため、運転者の意図しない内燃機関2の再始動を防止することができる。
【0066】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0067】
1 車両
2 内燃機関
11A 制御部
11B 傾斜検出部
17 ブレーキ圧保持部
図1
図2
図3