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  • 特許-ボイラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F22B 37/38 20060101AFI20240806BHJP
   F22B 37/42 20060101ALI20240806BHJP
   F22D 5/26 20060101ALI20240806BHJP
   F22B 21/06 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
F22B37/38 C
F22B37/42 A
F22D5/26 Z
F22B21/06 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021019873
(22)【出願日】2021-02-10
(65)【公開番号】P2022122556
(43)【公開日】2022-08-23
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142365
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】吉野 孝平
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-57805(JP,A)
【文献】特開平9-75216(JP,A)
【文献】特開平6-300213(JP,A)
【文献】実公平6-45128(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/38
F22B 37/42
F22D 5/26
F22B 35/00
F22B 21/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水管を加熱して蒸気を生成するボイラであって、
生成した蒸気の圧力を検出する圧力検出手段と、
ボイラ内における所定位置の温度を検出する温度検出手段と、
前記水管内の水位が第1の水位に達しているか否かを検出する第1水位検出手段と、
特定条件が成立している場合に前記圧力検出手段が故障していると判定する判定手段とを備え、
前記特定条件は、前記圧力検出手段により検出された圧力が第1の値以下で前記温度検出手段により検出された温度が第2の値以上となる状況であって、さらに前記第1水位検出手段により前記第1の水位に達していると判定されている特定の状況となることにより成立し得る条件である、ボイラ。
【請求項2】
前記水管内の水位が前記第1の水位よりも高い第2の水位に達しているか否かを検出する第2水位検出手段と、
前記ボイラに給水する給水手段とを備え、
前記特定条件は、前記特定の状況下であってさらに前記第2水位検出手段により前記第2の水位に達していないと判定されてから、前記給水手段により給水されているにもかかわらず前記第2水位検出手段により前記第2の水位に達していると判定されずに所定時間が経過することにより成立し得る条件である、請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記第2の水位は、ボイラにおける給水制御に用いられる水位である、請求項2に記載のボイラ。
【請求項4】
前記第1の水位は、ボイラにおいて燃焼を停止するときの水位として定められている燃焼停止水位である、請求項1~請求項3のいずれかに記載のボイラ。
【請求項5】
燃焼量を制御する燃焼量制御手段を備え、
前記第2の値は、前記燃焼量制御手段により制御されている燃焼量に応じた値である、請求項1~請求項4のいずれかに記載のボイラ。
【請求項6】
前記所定位置は、前記水管の表面であって、前記第1の水位以下となる水位に対応する位置である、請求項1~請求項5のいずれかに記載のボイラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラにおいては、生成した蒸気の圧力を計測し、計測された圧力値をフィードバックしてボイラの運転を制御することが行われている。そのため、蒸気の圧力を計測する装置(一例として、蒸気圧センサ)の故障は素早く検知して適切に対応することが求められる。これに対して、例えば、蒸気圧力センサから異常な値が出力されている場合であって、蒸気圧力センサにより計測される蒸気圧力と、蒸気温度値から算出した蒸気圧力との差が一定の値よりも大きくなった場合には、これらの蒸気圧力のうちの高い方の圧力に基づいてボイラの運転を制御するボイラがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5665438号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のボイラにおいては、蒸気圧力センサが実際に故障している場合であっても、当該蒸気圧力センサから異常とはいえず平常時に取り得る値が出力されている場合には、当該蒸気圧力センサが故障していることを特定できない虞があった。また、例えば缶水の水位が低水位である場合には、蒸気圧センサにより計測される蒸気圧力が低くなる一方で蒸気圧温度値が高くなり、蒸気圧センサにより計測される蒸気圧力と、蒸気温度値から算出した蒸気圧力との差が一定の値よりも大きくなる状況となり得る。このような場合には、蒸気圧センサの異常を正しく検知できない虞があった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、蒸気の圧力を計測する装置の故障を精度よく判定できるボイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明のある局面に従うボイラは、水管を加熱して蒸気を生成するボイラであって、生成した蒸気の圧力を検出する圧力検出手段と、ボイラ内における所定位置の温度を検出する温度検出手段と、前記水管内の水位が第1の水位に達しているか否かを検出する第1水位検出手段と、特定条件が成立している場合に前記圧力検出手段が故障していると判定する判定手段とを備え、前記特定条件は、前記圧力検出手段により検出された圧力が第1の値以下で前記温度検出手段により検出された温度が第2の値以上となる状況であって、さらに前記第1水位検出手段により前記第1の水位に達していると判定されている特定の状況となることにより成立し得る条件である。
【0007】
上記の構成によれば、温度が第2の値以上であるにもかかわらず圧力が第1の値以下であっても、水管内の水位が第1の水位に達していないときには圧力検出手段が故障しているとは判定せず、温度が第2の値以上であるにもかかわらず圧力が第1の値以下であってさらに水管内の水位が第1の水位に達している特定の状況下において圧力検出手段が故障していると判定され得る。このため、圧力検出手段の故障を精度よく判定することができる。
【0008】
好ましくは、前記水管内の水位が前記第1の水位よりも高い第2の水位に達しているか否かを検出する第2水位検出手段と、前記ボイラに給水する給水手段とを備え、前記特定条件は、前記特定の状況下であってさらに前記第2水位検出手段により前記第2の水位に達していないと判定されてから、前記給水手段により給水されているにもかかわらず前記第2水位検出手段により前記第2の水位に達していると判定されずに所定時間が経過することにより成立し得る条件である。
【0009】
上記の構成によれば、特定の状況下となっても所定時間が経過するまでに第2の水位に達していると判定されたときには圧力検出手段が故障しているとは判定せず、特定の状況下となり第2の水位に達していないと判定されてから第2の水位に達していると判定されずに所定時間が経過することにより圧力検出手段が故障していると判定され得る。このため、特定の状況下となっても即座に圧力検出手段が故障しているとは判定しないため、圧力検出手段の故障をより一層精度よく判定することができる。
【0010】
好ましくは、前記第2の水位は、ボイラにおける給水制御に用いられる水位である。
【0011】
上記の構成によれば、特定の状況下となっても所定時間が経過するまでに給水制御に用いられる第2の水位(例えば、給水開始水位、基準水位など)に達していると判定されたときには圧力検出手段が故障しているとは判定されないため、精度を向上させることができる。
【0012】
好ましくは、前記第1の水位は、ボイラにおいて燃焼を停止するときの水位として定められている燃焼停止水位である。
【0013】
上記の構成によれば、単なる水管の過熱を圧力検出手段の故障と判定してしまうことを防止でき、精度を向上させることができる。
【0014】
好ましくは、燃焼量を制御する燃焼量制御手段を備え、前記第2の値は、前記燃焼量制御手段により制御されている燃焼量に応じた値である。
【0015】
上記の構成によれば、燃焼量を考慮して圧力検出手段の故障を判定するため、精度を向上させることができる。
【0016】
好ましくは、前記所定位置は、前記水管の表面であって、前記第1の水位以下となる水位に対応する位置である。
【0017】
上記の構成によれば、水管内の水温を考慮して圧力検出手段の故障を判定するため、精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ボイラの制御装置の概略構成を模式的に示す図である。
図2】蒸気圧センサ故障関連処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<概略構成について>
以下に、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。まず、図1を参照して、本実施の形態に係るボイラの概略構成について説明する。
【0020】
ボイラ1は、図1に示すように、燃料を燃焼させて蒸気を生成するボイラ本体2と、水位検出装置3と、圧力検出部(蒸気圧センサ)4と、ボイラ1の運転・動作を制御する制御装置5と、ボイラ本体2に給水を行う給水ライン6と、温度検出部(温度センサ、スケールモニタ)7と、空気供給路2eを介してボイラ本体2の燃焼室内に空気を送り込む送風機8と、気水分離器9と、ボイラ本体2からの排ガスを導出する排気通路(図示せず)と、ボイラ本体2に燃料を供給する燃料供給ライン(図示せず)とを備えている。なお、燃料は、油である例について説明するが、油などの液体に限らず、ガスなどの気体であってもよい。
【0021】
ボイラ本体2は、略円筒状に形成されており、その内部にバーナ2a、複数の水管2b、上部ヘッダ2c、および、下部ヘッダ2dなどを備えている。複数の水管2bは、ボイラ本体2の内部に収容されており、ボイラ本体2の円周方向に所定の間隔で立設されている。これにより、ボイラ本体2の略中央部に、燃焼室が形成される。
【0022】
バーナ2aは、燃焼室の上方に設けられている。バーナ2aは、複数の水管2bの内部に導入された缶水を加熱して、蒸気を生成する。また、バーナ2aは、燃料供給ラインを介して燃料タンク(図示せず)と接続されている。燃料供給ラインには、流量調整弁が設けられている。ボイラ1の燃焼量は、制御装置5により流量調整弁の開度が制御されることにより、連続的又は段階的に調整される。例えば、高燃焼時には、流量調整弁の開度が100%に制御され、低燃焼時には、流量調整弁の開度が50%に制御される。
【0023】
下部ヘッダ2dは、ボイラ本体2の下部に設けられ、複数の水管2bの下部と連結されている。下部ヘッダ2dは、給水ライン6と接続されている。給水ライン6には、給水ポンプ61と逆止弁62が設けられている。給水ポンプ61から給水ライン6を介して下部ヘッダ2dへ給水され、給水された水は水管2bにおいて加熱される。
【0024】
上部ヘッダ2cは、ボイラ本体2の上部に設けられ、複数の水管2bの上部と連結されている。上部ヘッダ2cは、複数の水管2bにおいて生成した蒸気を集め、蒸気出口通路を介して気水分離器9へ導出する。
【0025】
気水分離器9は、上部ヘッダ2cからの蒸気を乾き蒸気と水分とに分離する。気水分離器9により分離された乾き蒸気は、蒸気供給通路を介して所定の機器に送り出される。一方、気水分離器9により分離された水分は、気水分離器9と下部ヘッダ22とを連結する降水通路を介して下部ヘッダ2dに戻される。
【0026】
水位検出装置3は、導通可能な金属により形成される水位制御筒30と、複数の電極棒31とを備える。水位制御筒30は、両端が封止された略円筒形状に形成されている。水位制御筒30の上端部は、上部ヘッダ2cと連通している。また、水位制御筒30の下端部は、下部ヘッダ2dと連通している。このため、水位制御筒30内の水位は、ボイラ本体2内の水管2bの水位と略一致する。水位制御筒30には、複数の電極棒31が設けられている。本実施の形態では、L棒31L、M棒31M、S棒31Sを備えている。L棒31L、M棒31M、S棒31Sは、それぞれの先端(下端)が、上下方向に互いに間隔をあけて配置されており、水位制御筒30内の複数の水位を、段階的に検出可能に構成されている。L棒31Lは、最も低い水位となる水位Lを検出し、M棒31Mは、水位Lよりも高い水位Mを検出し、S棒31Sは、水位Mよりも高い水位Sを検出する。
【0027】
水位Lは、燃焼状態において必要となる最低水位であり、当該水位L未満の状態が所定時間以上継続することにより燃焼停止する水位、つまりボイラにおいて燃焼を強制的に停止する制御に用いられる燃焼停止水位である。
【0028】
水位Mは、高燃焼時の給水制御に用いられる水位である。制御装置5は、例えば給水ポンプをON/OFF制御する場合、水位Mは、高燃焼時における給水開始水位であり、水位が水位Mを下回ると給水を開始し、水位Mを検知してから所定時間経過後に給水を停止するように制御する。これに対して、水位一定制御(基準水位になるように連続的に給水を行う制御)の場合、水位Mは、高燃焼時における基準となる水位となり、常時水位Mとなるように給水制御が行われる。
【0029】
水位Sは、燃焼開始時や低燃焼時の給水制御に用いられる水位である。制御装置5は、例えば燃焼開始時において、水位が当該水位Sを下回るときには給水を開始し、水位Sを上回っていることを条件として燃焼を開始する。また、制御装置5は、例えば給水ポンプをON/OFF制御する場合、水位Sは、低燃焼時における給水開始水位であり、水位が水位Sを下回ると給水を開始し、水位Sを検知してから所定時間経過後に給水を停止するように制御する。これに対して、水位一定制御の場合、水位Sは、低燃焼時における基準となる水位となり、常時水位Sとなるように給水制御が行われる。
【0030】
電極棒33(D棒)は、上部ヘッダ2cから水管2b内へ向けて配置されている。D棒33の先端が位置する設定水位を水位Dとする。水位Dは、過熱防止用の水位であり、例えば水位Sよりも高い位置に定められている。
【0031】
圧力検出部4は、気水分離器9の蒸気供給通路(蒸気出口)側に設けられ、ボイラ1で生成した蒸気の圧力を検出する蒸気圧センサである。生成した蒸気の圧力は、ボイラ本体2内の水管2bの圧力と相関関係を有している。このため、制御装置5は、蒸気圧センサ4により検出された蒸気の圧力に基づいてボイラの運転状態(燃焼状態)を制御する。例えば、検出された蒸気圧の値が燃焼量に応じて予め定められた蒸気圧よりも高い場合には、給水量の増大や低燃焼に移行等の制御が行われる。蒸気圧センサ4の故障判定については後述する。
【0032】
制御装置5は、内部にメモリ、タイマ、および演算処理部を含むコンピュータにより実現され、ボイラ1の運転・動作等を制御するものであり、例えば、着火時および停止時の動作、燃焼量が異なる複数種類の燃焼状態(例えば、低燃焼、高燃焼)を制御する。
【0033】
温度検出部7は、ボイラ本体2内の水管2bの温度を検出する温度センサであり、例えばスケールモニタを用いることができる。スケールモニタ7は、水管のスケールの付着を監視するために水管の温度を検出するものであるが、水管内の圧力と相関関係があり、水管の圧力をある程度特定可能となる。スケールモニタ7は、水管2bの表面に取り付けられるが、水位Lよりも下方の位置に取り付けることが好ましい。ボイラ1が運転状態のときには、正常であれば水管2bの水位が水位Lよりも高い位置に維持される。このため、スケールモニタ7を水位Lよりも下方の位置に設けることにより、水管2b内の水の温度をより確実に把握可能となる。
【0034】
<蒸気圧センサ故障の判定>
蒸気圧センサ4が正常に動作しており測定された蒸気圧が正しい値である場合、制御装置5は、蒸気圧センサ4の測定値に基づいてボイラを制御することにより、ボイラを正常に運転可能となる。また、蒸気圧センサ4が故障している場合であっても、故障していること自体を制御装置5が判定できれば、測定された蒸気圧に基づく制御を行わずにボイラを運転することにより、ボイラの継続運転が可能となる。制御装置5は、例えば、蒸気圧センサ4が故障していると判定できた場合、蒸気圧センサ4の測定値に代えて、所定の比較的高い値(例えば、ボイラの仕様における最高蒸気圧の9割程度の値等)に基づいてボイラを継続運転することができる。
【0035】
一方、蒸気圧センサ4が故障している場合であって故障していること自体を判定できない場合には、誤った測定値に基づいてボイラを制御することになるため、ボイラを正常に運転できなくなる虞がある。例えば、実際の蒸気圧が高い場合には、給水が行われるべきであるが、蒸気圧センサ4の故障により、実際よりも低い値が測定されてしまい、行われるべき給水が行われず、その結果、水管2b内の水位が上がらず所定の水位(例えば、水位L、水位M、水位Sのいずれか)に達しないことなどにより、ボイラの運転を強制停止させることとなる。ボイラの強制停止は、蒸気圧センサ4以外の要因でも発生し得るが、燃焼効率の低下や再稼働の手間等を考慮すると、極力回避することが望ましい。
【0036】
そこで、発明者は、ボイラが強制停止された場合にその原因が蒸気圧センサの故障であった場合の検証を行った。具体的には、ボイラの運転が強制停止された際の蒸気圧センサの測定値と温度センサの測定値とをサンプリングして集計した。その結果、蒸気圧センサの故障が原因となって強制停止されたケースが、例えば、温度センサにより測定された温度が130℃以上であり、蒸気圧センサにより測定された圧力が0MPa以下となる範囲に集中していることを確認した。つまり、温度が130℃以上の高温であるということは、生成される蒸気の圧力も比較的高くなっているべきところ、蒸気圧センサの故障のために蒸気圧センサにより検出された圧力値が0MPa以下となり実際に生成されている蒸気の圧力に比べて極めて低くなっており、検出された低い圧力に基づく給水制御が行われる結果、水管内の水位が上昇せずに、強制停止に至ったものと推定される。さらに、発明者は、検証を進めた結果、蒸気圧センサが故障していない場合であっても、水管内の水位が例えば水位Lなどの低水位に達しておらず単に水管が過熱されている状況下においても、温度センサにより測定された温度が130℃以上で蒸気圧センサにより測定された圧力が0MPa以下となる状況になり得ることを確認した。
【0037】
以上の検証結果を踏まえて、本実施の形態におけるボイラ1では、蒸気圧センサ4の故障を、温度と圧力の条件に加え、水位の条件も考慮することで、蒸気圧センサの故障を精度よく判定可能となった。具体的には、蒸気圧センサ4により検出された圧力が低圧力となる第1の値以下で、スケールモニタ7により検出された温度が高温となる第2の値以上となる状況であって、さらに水位が低水位となる第1の水位に達していると判定されている特定の状況となることにより、蒸気圧センサ4の故障を判定可能とするようにした。
【0038】
第1の値は、低圧力値であればよく、例えば、大気圧に対して0MPaと設定されることが好ましい。第2の値としては、100℃以上の高温であればよく、例えば130℃~200℃の範囲内(例えば、150℃)に設定されることが好ましい。また、第2の値は、制御装置5が設定している燃焼量や、制御装置5が制御している燃焼状態に応じた値であることが好ましい。燃焼量や燃焼状態により水管の温度が変動するため、ボイラの運転状態において基準となる蒸気の圧力も変動し、より高い燃焼量・燃焼状態のときには第2の温度としてより高い数値が設定される。例えば、低燃焼の場合は130℃(または150℃)、高燃焼の場合は200℃が設定される。
【0039】
また、第1の水位は、低水位であればよく、例えば水位L(例えば、燃焼停止水位)を用いることが好ましい。水位が水位L未満の状態が所定時間以上継続するときは、燃焼停止することから、通常運転中であるときには水位L以上となる。それにもかかわらず、水位が水位L未満である一方で温度が第2の温度以上となっている状況は、単なる水管の過熱である可能性が高いこととなる。第1の水位として水位Lを用いることにより、単なる水管の過熱により、蒸気圧センサの故障と誤検知することを防止できる。
【0040】
また、本実施の形態におけるボイラ1では、蒸気圧センサ4の故障を判定する条件に、前述した特定の状況下であってその時の水位が第1の水位よりも高い第2の水位に達していないと判定されてから、給水されているにもかかわらず第2の水位に達していると判定されずに所定時間が経過することを加えることが好ましい。つまり、水位が十分に確保されている場合や、確保されていないときでも給水されて所定時間が経過するまでに第2の水位に達して事後的に水位が十分に確保された場合には、蒸気圧センサの故障とは判定せず、水位が十分に確保されていないときにおいて所定時間に亘って給水したが未だに第2の水位に達していない場合に蒸気圧センサの故障を判定可能とするものである。所定時間が経過するまでに第2の水位に達したならば、十分な給水が行われていることが推測されるため、故障とは認定しない。ここで、第2の水位は、第1の水位よりも高い水位であればよく、例えば、低燃焼時において低燃焼時の給水制御に用いられる水位S、高燃焼時においては高燃焼時の給水制御に用いられる水位Mを例示するが、これに限らず、水位Dであってもよい。
【0041】
<蒸気圧センサ故障関連処理について>
図2は、蒸気圧センサ故障関連処理の一例を説明するためのフローチャートである。蒸気圧センサ故障関連処理は、ボイラ1の蒸気圧センサ4の故障を判定するための処理であり、制御装置5により実行される。
【0042】
ステップS01では、蒸気圧センサ4に基づく圧力が0MPa以下であるか否かが判定される。蒸気圧センサ4に基づく圧力が0MPa以下であると判定された場合には、ステップS02に進み、0MPaを超えると判定された場合にはステップS01に戻る。
【0043】
ステップS02では、スケールモニタ7に基づく温度が燃焼量に応じた温度(例えば、低燃焼の場合は130℃、高燃焼の場合は200℃)以上であるか否かが判定される。燃焼量に応じた温度以上であると判定された場合には、ステップS03に進み、燃焼量に応じた温度未満であると判定された場合にはステップS01に戻る。
【0044】
ステップS03では、水管内の水位が第1の水位(例えば、水位L)以上であるか否かが判定される。水位L以上であると判定された場合には、ステップS04に進み、水位L未満であると判定された場合にはステップS01に戻る。
【0045】
ステップS04では、水管内の水位が第2の水位(例えば、低燃焼時においては水位S、高燃焼時においては水位M)未満であるか否かが判定される。第2の水位未満であると判定された場合には、ステップS05に進み、第2の水位以上であると判定された場合にはステップS01に戻る。
【0046】
ステップS05では、給水中であるか否かが判定される。給水中であると判定された場合には、ステップS06に進み、給水中ではないと判定された場合にはステップS01に戻る。
【0047】
ステップS06~S09は、ステップS04において水管内の水位が第2の水位未満であると判定されてから、時間の計測を開始し、所定時間(例えば60秒)経過するまでに第2の水位に達しているか否かを判定する。具体的に、ステップS06では、カウントタイマの値に1を加算する。ステップS07では、水管内の水位が第2の水位未満であるか否かが判定される。第2の水位未満であると判定された場合には、ステップS08に進み、第2の水位以上であると判定された場合には、水位を十分に確保できているため、蒸気圧センサ故障関連処理を終了する。
【0048】
ステップS08では、カウントタイマの値が所定時間(例えば60秒)以上に相当する値に到達したか否かが判定される。例えば、ステップS06~S09の繰り返しが2m秒ごとに行われる場合、60秒に相当する値とは、例えば、ステップS06~S09の処理が2m秒ごとに行われる場合には30000(=60秒/2m秒)となる。ステップS08において、カウントタイマの値が所定時間以上に相当する値に到達していないと判定された場合、すなわち所定時間が経過していない場合には、ステップS09に進む。
【0049】
ステップS09では、蒸気圧センサ4に基づく圧力が0MPa以下であるか否か(つまり測定値に変化があったか否か)が判定される。蒸気圧センサ4に基づく圧力が0MPa以下であると判定された場合には、ステップS06に戻り、0MPaを超えると判定された場合には、測定値が変動していることから、蒸気圧センサ4の故障である可能性が低いため、蒸気圧センサ故障関連処理を終了する。一方、特定の状況下であってさらに第2の水位に達していないと判定されてステップS06におけるカウントタイマの加算が開始された以降において、例えば、検出された温度が第2の値(燃焼量に応じた温度)未満となった場合や、水位が第1の水位(水位L)を下回った場合は、所定時間の計測を中止せず継続して行う。一時的に温度や水位が特定の状況を満たさなくなるケースが生じ得るためである。
【0050】
一方、ステップS08において、カウントタイマの値が所定時間以上に相当する値に到達したと判定された場合、すなわち第2の水位に到達することなく所定時間が経過した場合には、ステップS10に進む。ステップS10では、所定時間が経過するまでに第2の水位以上とならなかった状況であり、蒸気圧センサ4が故障している可能性が高くかつ水位を十分に確保できていないため、蒸気圧センサ故障時の制御に切り替えるとともに、蒸気圧センサが故障している旨を報知する。蒸気圧センサ故障時の制御としては、測定された蒸気圧の値に基づく制御を行わず、例えば、蒸気圧センサ4の測定値に代えて、所定の比較的高い値(例えば、仕様において最高蒸気圧の9割程度の値等)に基づいてボイラを継続運転することである。これにより、蒸気圧センサ4が故障している可能性が高い場合であっても、ボイラ1の運転を継続することができる。
【0051】
以上のように、本実施の形態では、図2のステップS01~S03で示すように、温度が第2の値以上であるにもかかわらず圧力が0MPa以下であっても、水管内の水位が水位Lに達していないときには蒸気圧センサ4が故障しているとは判定せず、温度が第2の値以上であるにもかかわらず圧力が0MPa以下であってさらに水管内の水位が水位Lに達している特定の状況下において蒸気圧センサ4が故障していると判定され得る。このため、蒸気圧センサ4の故障を精度よく判定することができる。
【0052】
また、本実施の形態では、特定の状況下となっても、図2のステップS04~S09で示すように、所定時間が経過するまでに第2の水位に達していると判定されたときには、蒸気圧センサ4が故障しているとは判定せず、特定の状況下となり第2の水位に達していないと判定されてから第2の水位に達することなく所定時間が経過することにより、蒸気圧センサ4が故障していると判定され得る。このため、特定の状況下となっても即座に蒸気圧センサ4が故障しているとは判定しないため、蒸気圧センサ4の故障をより一層精度よく判定することができる。
【0053】
また、本実施の形態では、ステップS07における判定基準となる水位として、ボイラ1における給水制御に用いられる第2の水位(例えば、給水開始水位、基準水位など)が定められているため、特定の状況下となっても所定時間が経過するまでに第2の水位(低燃焼時においては水位S、高燃焼時においては水位M)に達していると判定されたときには蒸気圧センサ4が故障しているとは判定されないため、精度を向上させることができる。
【0054】
また、本実施の形態では、ステップS03における判定基準となる水位として、ボイラにおいて燃焼を停止するときの水位として定められている燃焼停止水位(水位L)が定められているため、単なる水管の過熱を蒸気圧センサの故障と検知してしまうことを防止でき、精度を向上させることができる。
【0055】
また、本実施の形態では、ステップS02における判定基準となる温度として、制御装置5により制御されている燃焼量に応じた温度が定められている。燃焼量の高低に応じて水管内の水の温度が変動し得るが、当該燃焼量を考慮して蒸気圧センサ4の故障を判定することにより、精度を向上させることができる。
【0056】
また、本実施の形態では、図1に示すように、スケールモニタ7は、水管の表面であって、水位L以下となる水位に対応する位置の温度を検出する。ボイラ1が運転状態のときには、水管2bの水位が水位Lよりも高い位置にあるため、水管内の水温を考慮して蒸気圧センサ4の故障を判定するため、精度を向上させることができる。
【0057】
本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施の形態の変形例などについて説明する。
【0058】
上記実施形態では、蒸気圧センサ4の故障判定の一例を図2に基づいて説明したが、これに限らず、例えば、ステップS01~S03の処理を行うものであって、ステップS03において水位が水位L以上でありYESと判定された場合に、蒸気圧センサ4の故障と判定してステップS10へ移行するものであってもよい。また、ステップS01~ステップS04の処理を行うものであって、ステップS04において水位が水位S未満であってYESと判定された場合に、蒸気圧センサ4の故障と判定してステップS10へ移行するものであってもよい。また、ステップS01~ステップS05の処理を行うものであって、ステップS05において給水中であってYESと判定された場合に、蒸気圧センサ4の故障と判定してステップS10へ移行するものであってもよい。
【0059】
また、図2のステップS04およびステップS07においては、判定基準として、第2の水位(低燃焼時においては水位S、高燃焼時においては水位M)が定められている例について説明したが、これに限らず、判定基準として水位Dが定められているものであってもよい。また、低燃焼時においては水位S/高燃焼時においては水位Mを判定基準とした判定と、水位Dを判定基準とした判定を併用してもよく、少なくとも一方の判定基準を満たしたときに故障と判定するようにしてもよいし、双方の判定基準を満たしたときに故障と判定するようにしてもよい。
【0060】
また、図2のステップS08における所定時間として60秒を例示したが、これに限らず、例えば、電極棒Sの断線判定時間を基準とし、当該断線判定時間よりも例えば20秒短い時間であってもよい。
【0061】
また、温度検出手段(スケールモニタ)7を用いて水管2bの温度から間接的に水管2b内の圧力を特定する例を示したが、温度検出手段に代えて、例えば、ゲージ抵抗等により水管2b内の圧力の度合いを特定する管内圧力検出手段を用いるようにしてもよい。この場合、圧力検出手段(蒸気圧センサ)が故障していると判定することとなる特定条件は、圧力検出手段(蒸気圧センサ)により検出された圧力が第1の値以下で管内圧力検出手段(ゲージ抵抗等)により検出された圧力が第2の値(水管の温度が例えば130℃となる場合に対応する管内圧力)以上となる状況であって、さらに水位Lに達していると判定されている所定の状況となることにより成立し得るものであってもよく、また、所定の状況下であってさらに第2の水位に達していないと判定されてから、給水されているにもかかわらず第2の水位に達していると判定されずに所定時間が経過することにより成立し得るものであってもよい。
【0062】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0063】
1 ボイラ
2 ボイラ本体
2a バーナ
2b 水管
2c 上部ヘッダ
2d 下部ヘッダ
2e 空気供給路
3 水位検出装置
30 水位制御筒
31 電極棒
31L L棒
31M M棒
31S S棒
33 電極棒(D棒)
4 圧力検出部
5 制御装置
6 給水ライン
7 温度検出部
8 送風機
9 気水分離器

図1
図2