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特許7533263画像検査装置、画像検査方法、及び学習済みモデル生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】画像検査装置、画像検査方法、及び学習済みモデル生成装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20240806BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20240806BHJP
【FI】
G01N21/956
G06T7/00 350C
G06T7/00 610C
G06T7/00 250
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021020384
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123218
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】池田 泰之
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-52520(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0160083(US,A1)
【文献】特許第6664574(JP,B1)
【文献】特許第6818961(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G06T 7/00-7/90
G06N 20/00-20/20
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
良品の検査対象物の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルに、検査対象物の分割画像である検査分割画像と該検査分割画像の周囲の画像に基づく検査周囲含有画像とを入力し、該検査分割画像に対する前記特徴量を成分とする特徴ベクトルをそれぞれ抽出する抽出部と、
前記抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と複数の前記良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、該特徴ベクトルに対応する前記検査分割画像の欠陥の程度を示す欠陥度合いを取得する取得部と、
前記欠陥度合いに基づいて、前記検査対象物を検査する検査部と、を備える、
画像検査装置。
【請求項2】
前記検査周囲含有画像は、前記検査分割画像の周囲の画像を縮小した画像を含む、
請求項1に記載の画像検査装置。
【請求項3】
前記取得部は、前記抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と前記集合との間の距離に基づいて、該特徴ベクトルに対応する前記検査分割画像の前記欠陥度合いを取得する、
請求項1又は2に記載の画像検査装置。
【請求項4】
前記取得部は、前記抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と前記複数の良品分割画像に対する前記複数の特徴ベクトルのうちの1つが示す点との間の距離に基づいて、該特徴ベクトルに対応する前記検査分割画像の前記欠陥度合いを取得する、
請求項1又は2に記載の画像検査装置。
【請求項5】
前記欠陥度合いは、前記検査分割画像の欠陥の程度を示す値である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の画像検査装置。
【請求項6】
前記検査部は、複数の前記欠陥度合いに基づいて欠陥度合い画像を生成し、該欠陥度合い画像に基づいて前記検査対象物を検査する、
請求項5に記載の画像検査装置。
【請求項7】
検査対象物の検査画像を複数の前記検査分割画像に分割する分割部をさらに備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の画像検査装置。
【請求項8】
検査対象物の検査画像を取得するための撮像部をさらに備える、
請求項1から7のいずれか一項に記載の画像検査装置。
【請求項9】
良品の検査対象物の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルに、検査対象物の分割画像である検査分割画像と該検査分割画像の周囲の画像に基づく検査周囲含有画像とを入力し、該検査分割画像に対する前記特徴量を成分とする特徴ベクトルをそれぞれ抽出するステップと、
前記抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と複数の前記良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、該特徴ベクトルに対応する前記検査分割画像の欠陥の程度を示す欠陥度合いを取得するステップと、
前記欠陥度合いに基づいて、前記検査対象物を検査するステップと、を含む、
画像検査方法。
【請求項10】
良品の検査対象物の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルを生成するモデル生成部を備える、
学習済みモデル生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置、画像検査方法、及び学習済みモデル生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物を撮影した画像に基づいて、当該対象物の検査を行う画像検査装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、入力される判定対象画像データに基づいて異常を判定する異常判定を行う異常判定装置において、正常画像データ群から抽出される特徴量から正常画像データを再構成するための再構成用パラメータを用いて、判定対象画像データの特徴量から再構成画像データを生成し、生成した再構成画像データと該判定対象画像データとの差異情報に基づいて異常判定を行うための異常判定処理を実行する処理実行手段を有するものが記載されている。特許文献1の異常判定装置は、判定対象画像データが複数チャネルの画像データを含む場合、再構成用パラメータを用いて各チャネルの画像データの特徴量から再構成画像データをチャネルごとに生成し、生成した各再構成画像データと該判定対象画像データの各チャネルの画像データとの差異情報に基づいて異常判定を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-5773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来、良品の対象物の良品画像を小さいサイズに分割して入力し、当該良品画像の特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルを用い、特徴空間において、検査画像から抽出した特徴ベクトルと良品画像の特徴ベクトルとに基づいて、検査画像の欠陥を検出する方法があった。
【0006】
しかしながら、良品画像に局所的に特殊パターンが存在する場合、この特殊パターンを含む良品画像の特徴ベクトルは、特徴空間において、他の良品画像の特徴ベクトルから離れた位置にプロットされてしまい、特殊パターンを含む対象物を不良品として検出してしまうことがあった。
【0007】
また、別の良品画像が、ある位置では良品である一方、別の位置では不良品であるパターンを含む場合、このようなパターンを当該別の位置に含む検査画像の特徴ベクトルは、特徴空間において、良品画像の特徴ベクトルの近くにプロットされることになり、不良品を見逃してしまうことがあった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、良品画像の特徴ベクトルに対し、特殊パターンを含む良品画像の特徴ベクトルを近くにプロットするとともに、不良品の検査画像の特徴ベクトルを遠くにプロットすることのできる画像検査装置、画像検査方法、及び学習済みモデル生成装置を提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る画像検査装置は、良品の検査対象物の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルに、検査対象物の分割画像である検査分割画像と該検査分割画像の周囲の画像に基づく検査周囲含有画像とを入力し、該検査分割画像に対する特徴量を成分とする特徴ベクトルをそれぞれ抽出する抽出部と、抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥の程度を示す欠陥度合いを取得する取得部と、欠陥度合いに基づいて、検査対象物を検査する検査部と、を備える。
【0010】
この態様によれば、良品分割画像と良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルに、検査分割画像と検査周囲含有画像とを入力し、当該検査分割画像に対する特徴ベクトルを抽出する。これにより、良品分割画像のみを用いて学習させ、特殊パターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点が他のパターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点から遠い位置にプロットされる場合と比較して、学習済みモデルは、位置により特徴量が大きく変化する良品周囲含有画像も用いて学習することで、同じ位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を近くに、異なる位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を遠くにプロットすることが可能になるので、良品分割画像に特有のパターンを正確に学習することができ、特徴空間において、検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、対応する良品分割画像に対する特徴ベクトルによって形成される集合の近くにプロットされる。よって、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該検査分割画像に対応する複数の良品分割画像に対する特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットすることができ、欠陥の程度が小さい欠陥度合いを取得して良品と判定することができる。また、学習済みモデルは、良品周囲含有画像によって、良品の検査対象物の良品画像における位置、部分に応じて異なる判断基準を学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、検査画像における当該検査分割画像の位置に応じて異なる範囲、領域に集められる。よって、特徴空間において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む、当該別の位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該別の位置における複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルが形成する集合に対して遠くにプロットすることができ、欠陥の程度が大きい欠陥度合いを取得して不良品の見逃しを抑制することができる。従って、特徴空間における、検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、検査分割画像の欠陥度合いを取得し、この欠陥度合いに基づいて、検査対象物を検査することにより、検査対象物の検査精度を高めることができる。
【0011】
前述した態様において、検査周囲含有画像は、検査分割画像の周囲の画像を縮小した画像を含んでもよい。
【0012】
この態様によれば、検査周囲含有画像は、検査分割画像の周囲の画像を縮小した画像を含む。これにより、学習済みモデルによる特徴量の出力において、検査周囲含有画像の影響が大きくなるのを抑制することができ、検査分割画像に対する特徴ベクトルを高精度に抽出することが可能となる。
【0013】
前述した態様において、取得部は、抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と集合との間の距離に基づいて、該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いを取得してもよい。
【0014】
この態様によれば、特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いは、特徴空間における、特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像の複数の特徴ベクトルによって形成される集合との間の距離に基づいて取得される。これにより、検査分割画像の欠陥の程度を容易に示すことができる。
【0015】
前述した態様において、取得部は、抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像の複数の特徴ベクトルのうちの1つが示す点との間の距離に基づいて、該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いを取得してもよい。
【0016】
この態様によれば、特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いは、特徴空間における、特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像の複数の特徴ベクトルのうちの1つが示す点との間の距離に基づいて取得される。これにより、検査分割画像の欠陥の程度を容易に示すことができる。
【0017】
前述した態様において、欠陥度合いは、検査分割画像の欠陥の程度を示す値であってもよい。
【0018】
この態様によれば、検査分割画像の欠陥の程度を定量的に示すことができる。
【0019】
前述した態様において、検査部は、複数の欠陥度合いに基づいて欠陥度合い画像を生成し、該欠陥度合い画像に基づいて検査対象物を検査してもよい。
【0020】
この態様によれば、検査対象物が良品であるか不良品であるかを容易に判定することができ、検査精度の高い検査を容易に実現することができる。
【0021】
前述した態様において、検査対象物の検査画像を複数の検査分割画像に分割する分割部をさらに備えてもよい。
【0022】
この態様によれば、検査対象物の検査画像を複数の検査分割画像に分割する分割部をさらに備える。これにより、検査分割画像を容易に得ることができる。
【0023】
前述した態様において、検査対象物の検査画像を取得するための撮像部をさらに備えてもよい。
【0024】
この態様によれば、検査対象物の検査画像を取得するための撮像部をさらに備える。これにより、検査画像を容易に得ることができる。
【0025】
本開示の他の態様に係る画像検査方法は、良品の検査対象物の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルに、検査対象物の分割画像である検査分割画像と該検査分割画像の周囲の画像に基づく検査周囲含有画像とを入力し、該検査分割画像に対する特徴量を成分とする特徴ベクトルをそれぞれ抽出するステップと、抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥の程度を示す欠陥度合いを取得するステップと、欠陥度合いに基づいて、検査対象物を検査するステップと、を含む。
【0026】
この態様によれば、良品分割画像と良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルに、検査分割画像と検査周囲含有画像とを入力し、当該検査分割画像に対する特徴ベクトルを抽出する。これにより、良品分割画像のみを用いて学習させ、特殊パターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点が他のパターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点から遠い位置にプロットされる場合と比較して、学習済みモデルは、位置により特徴量が大きく変化する良品周囲含有画像も用いて学習することで、同じ位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を近くに、異なる位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を遠くにプロットすることが可能になるので、良品分割画像に特有のパターンを正確に学習することができ、特徴空間において、検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、対応する良品分割画像に対する特徴ベクトルによって形成される集合の近くにプロットされる。よって、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該検査分割画像に対応する複数の良品分割画像に対する特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットすることができ、欠陥の程度が小さい欠陥度合いを取得して良品と判定することができる。また、学習済みモデルは、良品周囲含有画像によって、良品の検査対象物の良品画像における位置、部分に応じて異なる判断基準を学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、検査画像における当該検査分割画像の位置に応じて異なる範囲、領域に集められる。よって、特徴空間において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む、当該別の位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該別の位置における複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルが形成する集合に対して遠くにプロットすることができ、欠陥の程度が大きい欠陥度合いを取得して不良品の見逃しを抑制することができる。従って、特徴空間における、検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、検査分割画像の欠陥度合いを取得し、この欠陥度合いに基づいて、検査対象物を検査することにより、検査対象物の検査精度を高めることができる。
【0027】
本開示の他の態様に係る学習済みモデル生成装置は、良品の検査対象物の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルを生成するモデル生成部を備える。
【0028】
この態様によれば、良品分割画像と良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデルを生成する。これにより、良品分割画像のみを用いて学習させ、特殊パターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点が他のパターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点から遠い位置にプロットされる場合と比較して、学習済みモデルは、位置により特徴量が大きく変化する良品周囲含有画像も用いて学習することで、同じ位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を近くに、異なる位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を遠くにプロットすることが可能になるので、良品分割画像に特有のパターンを正確に学習することができ、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該検査分割画像に対応する複数の良品分割画像に対する特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットすることができる。また、学習済みモデルは、良品周囲含有画像によって、良品の検査対象物の良品画像における位置、部分に応じて異なる判断基準を学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、検査画像における当該検査分割画像の位置に応じて異なる範囲、領域に集められる。よって、特徴空間において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む、当該別の位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該別の位置における複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルが形成する集合に対して遠くにプロットすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、良品画像の特徴ベクトルに対し、特殊パターンを含む良品画像の特徴ベクトルを近くにプロットするとともに、不良品の検査画像の特徴ベクトルを遠くにプロットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、一実施形態における画像検査システムの概略構成を例示する構成図である。
図2図2は、一実施形態における学習済みモデル生成装置及び画像検査装置の物理的構成を示す構成図である。
図3図3は、一実施形態における学習済みモデル生成装置の機能ブロックの構成を示す構成図である。
図4図4は、図3に示す学習用画像データセット生成部による良品分割画像及び良品周囲含有画像の生成を説明するための概念図である。
図5図5は、図3に示すモデル生成部が使用する第1例の学習モデルを説明するための概念図である。
図6図6は、図3に示すモデル生成部が使用する第2例の学習モデルを説明するための概念図である。
図7図7は、一実施形態における画像検査装置の機能ブロックの構成を示す構成図である。
図8図8は、欠陥度合いを取得する方法の一例を説明するための概念図である。
図9図9は、欠陥度合いを取得する方法の他の例を説明するための概念図である。
図10図10は、図7に示す、分割部、学習用画像データセット生成部、抽出部、及び取得部による処理を説明するための概念図である。
図11図11は、検査画像の一例を示す図である。
図12図12は、図7に示す検査部による処理を説明するための概念図である。
図13図13は、欠陥度合い画像の一例を示す図である。
図14図14は、一実施形態における学習済みモデル生成装置が行う学習済みモデル生成処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図15図15は、一実施形態における画像検査装置が行う画像検査処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。さらに、本発明の技術的範囲は、当該実施形態に限定して解するべきではない。
【0032】
まず、図1を参照しつつ、一実施形態に従う画像検査システムの構成について説明する。図1は、一実施形態における画像検査システム1の概略構成を例示する構成図である。
【0033】
図1に示すように、画像検査システム1は、画像検査装置20及び照明ILを含む。画像検査装置20は、通信ネットワークNWを介して、学習済みモデル生成装置10に接続されている。照明ILは、検査対象物TAに光Lを照射する。画像検査装置20は、反射光Rを撮影し、検査対象物TAの画像(以下、「検査画像」ともいう)に基づいて、検査対象物TAの検査を行う。学習済みモデル生成装置10は、画像検査装置20が検査を行うために用いる学習済みモデルを生成する。
【0034】
次に、図2を参照しつつ、一実施形態に従う学習済みモデル生成装置及び画像検査装置の物理的構成について説明する。図2は、一実施形態における学習済みモデル生成装置10及び画像検査装置20の物理的構成を示す構成図である。
【0035】
図2に示すように、学習済みモデル生成装置10及び画像検査装置20は、それぞれ、プロセッサ31と、メモリ32と、記憶装置33と、通信装置34と、入力装置35と、出力装置36と、を備える。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。
【0036】
なお、図2に示す例では、学習済みモデル生成装置10及び画像検査装置20が、それぞれ、一台のコンピュータで構成される場合について説明するが、これに限定されるものではない。学習済みモデル生成装置10及び画像検査装置20は、それぞれ、複数のコンピュータが組み合わされて実現されてもよい。また、図2で示す構成は一例であり、学習済みモデル生成装置10及び画像検査装置20は、それぞれ、これら以外の構成を備えてもよいし、これらの構成のうち一部を備えなくてもよい。
【0037】
プロセッサ31は、学習済みモデル生成装置10及び画像検査装置20の各部の動作を制御するように構成されている。プロセッサ31は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array))、SoC(Sysmtem-on-a-Chip)等の集積回路を含んで構成される。
【0038】
メモリ32及び記憶装置33は、それぞれ、プログラムやデータ等を記憶するように構成されている。メモリ32は、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)及び/又はRAM(Random Access Memory)等から構成される。記憶装置33は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)及び/又はeMMC(embedded Multi Media Card)等のストレージから構成される。
【0039】
通信装置34は、有線及び無線の少なくとも一方のネットワークを介して通信を行うように構成されている。通信装置34は、例えば、ネットワークカード、通信モジュール、他の機器に接続するインターフェース等を含んで構成される。
【0040】
入力装置35は、ユーザの操作により情報を入力できるように構成されている。入力装置35は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス、ポインティングデバイス、及び/又はマイク等を含んで構成される。
【0041】
出力装置36は、情報を出力するように構成されている。出力装置36は、例えば液晶ディスプレイ、EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、プラズマディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置、及び/又はスピーカ等を含んで構成される。
【0042】
次に、図3から図6を参照しつつ、一実施形態に従う学習済みモデル生成装置の機能ブロックについて説明する。図3は、一実施形態における学習済みモデル生成装置10の機能ブロックの構成を示す構成図である。図4は、図3に示す学習用画像データセット生成部131による良品分割画像及び良品周囲含有画像の生成を説明するための概念図である。図5は、図3に示すモデル生成部135が使用する第1例の学習モデル51を説明するための概念図である。図6は、図3に示すモデル生成部135が使用する第2例の学習モデル52を説明するための概念図である。
【0043】
図3に示すように、学習済みモデル生成装置10は、通信部110と、記憶部120と、学習部130と、を備える。
【0044】
通信部110は、各種の情報を送信及び受信可能に構成されている。通信部110は、例えば、通信ネットワークNWを介して、後述する学習済みモデル55を画像検査装置20に送信する。また、通信部110は、例えば、通信ネットワークNWを介して、他の装置から良品画像を受信する。すなわち、通信部110は、良品と判定された検査対象物TAの画像である良品画像を取得する。通信部110によって取得された複数の良品画像(以下、それぞれを区別しない場合にその1つを「良品画像40」ともいう)は、記憶部120に書き込まれて記憶される。
【0045】
記憶部120は、各種の情報を記憶するように構成されている。記憶部120は、例えば、良品画像40と、複数の学習用画像データセット(以下、それぞれを区別しない場合にその1つを「学習用画像データセット124」ともいう)と、学習済みモデル55と、複数の特徴ベクトル(以下、それぞれを区別しない場合にその1つを「特徴ベクトル129」ともいう)と、を記憶する。
【0046】
学習部130は、学習モデルを学習させて学習済みモデルを生成するためのものである。学習部130は、例えば、学習用画像データセット生成部131及びモデル生成部135を含む。
【0047】
学習用画像データセット生成部131は、学習用画像データセット124を生成するように構成されている。学習用画像データセット124は、学習済みモデル55を生成するために用いられる画像データのセットである。
【0048】
より詳細には、学習用画像データセット生成部131は、記憶部120に記憶された複数の良品画像40を読み出し、それぞれについて、当該良品画像40を複数に分割した画像(以下「良品分割画像」という)を生成する。
【0049】
図4に示すように、学習用画像データセット生成部131は、1つの良品画像40を、例えば縦方向及び横方向にそれぞれ5分割することで、合計25個の良品分割画像を生成する。なお、良品画像40は、2から24個の良品分割画像に分割されてもよいし、26個以上の良品分割画像に分割されてもよい。また、良品分割画像の形状は矩形に限定されるものではなく、いかなる形状であってよい。
【0050】
また、学習用画像データセット生成部131は、良品分割画像について、当該良品分割画像の周囲に配置された画像に基づいて、良品周囲含有画像を生成する。例えば、学習用画像データセット生成部131は、良品画像40に含まれる25個の良品分割画像のうち、縁に配置されている16個の良品分割画像を除いた9個の良品分割画像のそれぞれについて、良品周囲含有画像を生成する。なお、縁に配置されている16個の良品分割画像について、それぞれ、検査画像からはみ出した領域の画素値を生成することで、良品周囲含有画像を生成してもよい。この場合、はみ出した領域の画素値は、ユーザが決めた特定の値を用いて生成してもよいし、当該良品分割画像に最も近い画像端の画素値をコピーして生成してもよい。
【0051】
そして、学習用画像データセット生成部131は、良品分割画像と当該良品分割画像の良品周囲含有画像とを含んで構成される学習用画像データセット124を生成する。
【0052】
例えば、学習用画像データセット生成部131は、良品画像40において、左から2番目、上から2番目に位置する第1良品分割画像400について、その周囲の良品分割画像を含む第1良品周囲含有画像404を生成する。第1良品分割画像400及び第1良品周囲含有画像404は、1つの学習用画像データセット124を構成する。同様に、学習用画像データセット生成部131は、良品画像40において、左から3番目、上から2番目に位置する第2良品分割画像402について第2良品周囲含有画像406を生成し、第2良品分割画像402及び第2良品周囲含有画像406を含んで構成される学習用画像データセット124を生成する。このようにして、9個の良品分割画像のそれぞれについて、学習用画像データセット124を生成する。生成された複数の学習用画像データセット124は、記憶部120に書き込まれて記憶される。
【0053】
図4に示す例では、第1良品周囲含有画像404は、第1良品分割画像400の周囲に位置する8個の良品分割画像を良品周囲画像として含んでいるが、良品周囲含有画像は、この例に限定されるものではない。良品周囲含有画像は、例えば第1良品分割画像400の周囲の8個の良品分割画像のうちの一部を含まなくてよい。また、良品周囲含有画像は、良品分割画像の単位で構成されている場合に限定されず、いかなる単位で構成されていてもよい。すなわち、良品周囲含有画像は、良品分割画像よりも小さい単位で構成されていてもよいし、良品分割画像よりも大きい単位で構成されていてもよい。
【0054】
なお、良品分割画像の解像度と良品周囲含有画像の解像度とが同じである場合、良品周囲画像の画素数の方が良品分割画像の画素数よりも多くなると、良品周囲含有画像の方が良品分割画像よりも学習処理への寄与度が大きくなる。このため、使用する学習モデルの表現能力が低いと、後述する良品分割画像の特徴量を十分な精度で得ることができない場合がある。
【0055】
以上の理由により、良品周囲含有画像の学習処理への寄与度は、良品分割画像の学習処理への寄与度よりも小さいことが好ましい。よって、良品周囲含有画像に含まれる、良品分割画像の周囲の画像は、縮小されていることが好ましい。より具体的には、縮小された良品周囲画像のサイズ、つまり画素数が良品分割画像のサイズ、つまり画素数よりも小さくなるように、良品分割画像の周囲の画像が縮小されていることが好ましい。この縮小は、例えば、学習用画像データセット生成部131によって行われる。このとき、学習用画像データセット生成部131は、良品分割画像の周囲の画像のみを縮小してもよいし、良品分割画像の周囲の画像とともに、良品周囲含有画像に含まれる残りの画像、例えば良品分割画像を縮小してもよい。
【0056】
モデル生成部135は、学習モデルに複数の学習用画像データセット124を学習させる学習処理を実施し、学習済みモデル55を生成するように構成されている。学習済みモデル55は、良品分割画像及び良品周囲含有画像を入力とし、特徴量を出力するモデルである。
【0057】
図5に示すように、モデル生成部135が学習済みモデル55を生成するために用いる学習モデル51は、例えば、ニューラルネットワークの1つであって、教師なし機械学習の手法の1つでもあるオートエンコーダが用いられ、オートエンコーダは、入力層511と、出力層517と、入力層511と出力層517との間に配置されている中間層515と、を含んでいる。
【0058】
なお、学習モデル51は、オートエンコーダを用いる場合に限定されるものではない。学習モデル51は、例えば、PCA(Principal Component Analysis)を用いてもよい。また、中間層515は、1層である場合に限定されず、2層以上であってもよい。
【0059】
入力層511及び出力層517は、それぞれ、2つのチャネルを有している。具体的には、入力層511は第1入力チャネル512及び第2入力チャネル513を有し、出力層517は、第1出力チャネル518及び第2出力チャネル519を有する。良品分割画像と対応する良品周囲含有画像とは、それぞれ、異なるチャネルに入力される。例えば、第1入力チャネル512に良品分割画像が入力され、第2入力チャネル513に良品周囲含有画像が入力される。入力層511に入力された良品分割画像及び良品周囲含有画像は、中間層515において画像の次元が削減され、出力層517において次元が戻されて出力される。具体的には、第1出力チャネル518から良品分割画像に対応する出力良品分割画像が出力され、第2出力チャネル519から良品周囲含有画像に対応する出力良品周囲含有画像が出力される。オートエンコーダは、良品分割画像と出力良品分割画像との間の差分(以下、「第1差分」ともいう)及び良品周囲含有画像と出力良品周囲含有画像との間の差分(以下、「第2差分」ともいう)の合計が最小となるように、重み(係数ともいう)を学習する。より詳細には、円形状で表される各ノードは、線で表される各エッジにおいて固有の重み付けを行い、重み付けされた値が次の層のノードに入力される。この重み付けにおける重みを学習することで、第1差分と第2差分との合計が最小になる。この学習によって、中間層515から特徴量を出力することが可能となる。
【0060】
ここで、特徴量は、求めたい事物の特徴を定量的に表した変数である。中間層515から出力される特徴量は、例えば良品分割画像であることを特徴づけるものであり、具体的には良品分割画像が有する濃淡の配列、良品分割画像における輝度、赤単体、緑単体、青単体、又は赤・緑・青(RGB)のヒストグラム等が挙げられる。一般的に、良品分割画像は、1種類の特徴量だけで良品の分割画像であることを認識可能である場合は少なく、複数種類の特徴量を用いて良品の分割画像であることを認識できる場合が多い。前述したように、良品周囲含有画像の学習処理への寄与度を小さく、言い換えれば、良品分割画像の学習処理への寄与度を大きくすることで、学習済みモデル55は、良品周囲含有画像を考慮した良品分割画像に対する特徴量を出力する。
【0061】
この1つ又は複数の特徴量を成分としてベクトル形式で表現したものが特徴ベクトルである。特徴量の数(個数)は、当該特徴ベクトルの次元(次元数)を表す。特徴ベクトルで表現される空間、別の言い方をすれば、特徴ベクトルによって張られる空間は、特徴空間と呼ばれ、特徴ベクトルは特徴空間上の1点として表される。例えば出力層505がd個(dは正の整数)の特徴量を出力するように学習された場合、学習済みモデル55によって、入力された画像からd次元ベクトルの特徴ベクトル129を抽出することができ、抽出された特徴ベクトル129は、d次元空間の特徴空間における1点で表すことができる。
【0062】
また、図6に示すように、モデル生成部135が学習済みモデル55を生成するために用いる学習モデル52は、例えば、図5に示す学習モデル51と同様に、オートエンコーダが用いられ、オートエンコーダは、入力層521と、出力層527と、入力層521と出力層527との間に配置されている中間層525と、を含んでいる。なお、学習モデル52は、例えばPCAを用いてもよく、また、中間層525は、2層以上であってもよい。
【0063】
入力層521及び出力層527は、それぞれ、1つのチャネルを有している。良品分割画像と対応する良品周囲含有画像とは、結合されて結合画像が生成される。入力層521に結合画像が入力されると、中間層525において結合画像の次元が削減される。そして、出力層527において次元を戻して結合画像に対応する出力結合画像が出力される。オートエンコーダは、結合画像と出力結合画像との間の差分が最小となるように、重みを学習する。より詳細には、円形状で表される各ノードは、線で表される各エッジにおいて固有の重み付けを行い、重み付けされた値が次の層のノードに入力される。この重み付けにおける重みを学習することで、結合画像と出力結合画像との間の差分が最小になる。この学習によって、中間層525から特徴量を出力することが可能となる。
【0064】
また、モデル生成部135は、学習済みモデル55を生成する過程で、各良品分割画像に対する特徴ベクトル129を抽出する。抽出された複数の特徴ベクトル129は、記憶部120に書き込まれて記憶される。例えば、j個の良品画像のそれぞれについて25個の良品分割画像に分割し、そのうちのk個の良品分割画像のそれぞれについて学習用画像データセット124を生成する場合、抽出され、記憶される特徴ベクトル129の数は、例えばj×k個である。なお、複数の特徴ベクトル129のそれぞれの次元dは、同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0065】
このように、良品分割画像と良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル55を生成することにより、詳細は後述するように、良品分割画像のみを用いて学習させ、特殊パターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点が他のパターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点から遠い位置にプロットされる場合と比較して、学習済みモデル55は、位置により特徴量が大きく変化する良品周囲含有画像も用いて学習することで、同じ位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を近くに、異なる位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を遠くにプロットすることが可能になるので、良品分割画像に特有のパターンを正確に学習することができ、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該検査分割画像に対応する複数の良品分割画像に対する特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットすることができる。また、学習済みモデル55は、良品周囲含有画像によって、良品の検査対象物TAの良品画像における位置、部分に応じて異なる判断基準を学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、検査画像における当該検査分割画像の位置に応じて異なる範囲、領域に集められる。よって、特徴空間において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む、当該別の位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該別の位置における複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルが形成する集合に対して遠くにプロットすることができる。
【0066】
なお、学習用画像データセット生成部131及びモデル生成部135の少なくとも一方は、プロセッサ31が、記憶装置33に記憶されたプログラムを実行することにより実現されてもよい。プログラムを実行する場合、当該プログラムは、記憶媒体に格納されていてもよい。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-Transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は、特に限定されないが、例えば、USBメモリ、又はCD-ROM(Compact Disc ROM)等の記憶媒体であってもよい。
【0067】
次に、図7から図13を参照しつつ、一実施形態に従う画像検査装置の機能ブロックについて説明する。図7は、一実施形態における画像検査装置20の機能ブロックの構成を示す構成図である。図8は、欠陥度合いを取得する方法の一例を説明するための概念図である。図9は、欠陥度合いを取得する方法の他の例を説明するための概念図である。図10は、図7に示す、分割部240、検査用画像データセット生成部250、抽出部260、及び取得部270による処理を説明するための概念図である。図11は、検査画像60の一例を示す図である。図12は、図7に示す検査部280による処理を説明するための概念図である。図13は、欠陥度合い画像70の一例を示す図である。
【0068】
図7に示すように、画像検査装置20は、通信部210と、記憶部220と、撮像部230と、分割部240と、検査用画像データセット生成部250と、抽出部260と、取得部270と、検査部280と、を備える。
【0069】
通信部210は、各種の情報を送信及び受信可能に構成されている。通信部210は、例えば、通信ネットワークNWを介して、学習済みモデル生成装置10から学習済みモデル55及び複数の特徴ベクトル129を受信する。受信された学習済みモデル55、及び複数の特徴ベクトル129は、記憶部220に書き込まれて記憶される。
【0070】
記憶部220は、各種の情報を記憶するように構成されている。記憶部220は、例えば、学習済みモデル55と、複数の特徴ベクトル129とを記憶する。このように、複数の学習済みモデル55を記憶する記憶部220を備えることにより、学習済みモデルを容易に読み出すことができる。
【0071】
撮像部230は、検査対象物TAの検査画像を取得するためのものである。撮像部230は、例えばカメラ等の撮像装置を含んで構成される。本実施形態の撮像部230は、検査対象物TAからの反射光Rを受光し、検査画像を取得する。そして、撮像部230は、取得した検査画像を分割部240に出力する。このように、検査対象物TAの検査画像を取得することにより、検査画像を容易に得ることができる。
【0072】
分割部240は、検査対象物TAの検査画像を複数の検査分割画像に分割するように構成されている。より詳細には、分割部240は、学習済みモデル生成装置10における良品画像の分割と同様の方法によって、検査画像を分割する。具体的には、分割部240は、検査対象物TAの検査画像を、縦方向及び横方向にそれぞれ5分割して、25個の検査分割画像を生成する。そして、分割部240は、生成した検査分割画像を検査用画像データセット生成部250に出力する。このように、検査対象物TAの検査画像を複数の検査分割画像に分割することにより、検査分割画像を容易に得ることができる。
【0073】
検査用画像データセット生成部250は、検査分割画像について、当該検査分割画像の周囲に配置された画像に基づいて、検査周囲含有画像を生成するように構成されている。検査周囲含有画像は、検査分割画像の周囲の画像のうちの少なくとも一部に基づく画像である。検査用画像データセット生成部250は、予め指定されたアルゴリズムに基づいて検査周囲含有画像を生成してもよいし、ユーザの操作に基づいて検査周囲含有画像を生成してもよい。
【0074】
また、検査用画像データセット生成部250は、検査分割画像と生成された検査周囲含有画像とを含んで構成される検査用画像データセットを生成するように構成されている。
【0075】
より詳細には、検査用画像データセット生成部250は、複数の検査分割画像のそれぞれについて、検査周囲含有画像を生成して複数の検査用画像データセットを生成する。本実施形態では、検査用画像データセット生成部250は、分割部240により生成された25個の検査分割画像のうちの縁の検査分割画像を除く9個の検査分割画像について、検査周囲含有画像を生成する。ここで、前述したように、学習処理の際に良品周囲含有画像が縮小されている場合、検査用画像データセット生成部250は、良品周囲含有画像の縮小に合わせて、検査分割画像の周囲の画像を縮小し、検査周囲含有画像は、この縮小された画像を含むことが好ましい。検査用画像データセット生成部250は、生成した検査用画像データセットを抽出部260に出力する。
【0076】
抽出部260は、学習済みモデル55に検査用画像データセットを入力し、当該検査用画像データセットに含まれる検査分割画像に対する特徴量を成分とする特徴ベクトルを抽出するように構成されている。具体的には、抽出部260は、記憶部220に記憶された学習済みモデル55を読み出し、学習済みモデル55に、複数の検査用画像データセットのそれぞれを順次入力する。前述したように、学習済みモデル55は入力された画像の特徴量を出力するように学習されているので、抽出部260は、入力の検査分割画像に対する1つ又は複数の特徴量を、学習済みモデル55から得ることができる。これにより、1つ又は複数の特徴量を成分とする特徴ベクトルが抽出される。そして、抽出部260は、抽出した複数の特徴ベクトルを取得部270に出力する。なお、抽出部260が抽出する検査分割画像の特徴ベクトルは、良品分割画像に対する特徴ベクトル129と同じd次元ベクトルである。
【0077】
取得部270は、抽出された複数の特徴ベクトルのそれぞれについて、当該特徴ベクトルで表現される特徴空間における、当該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、当該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥の程度を示す欠陥度合いを取得するように構成されている。欠陥度合いは、例えば、レベル、ステップ、クラス、級(等級)、層(階層)等のように離散的に程度を表すものを用いてもよいし、例えば数等のように連続的に程度を表すものを用いてもよい。
【0078】
具体的には、取得部270は、記憶部220に記憶された複数の特徴ベクトル129を読み出し、d次元空間である特徴空間に、各特徴ベクトル129が示す点をプロットする。これにより、図8に示すように、例えば2次元の特徴空間において、各特徴ベクトル129が示す黒丸の点によって、破線で示す集合S1が形成される。この集合は、例えば良品画像40における位置に応じて形成される。なお、取得部270は、複数の特徴ベクトル129に基づいて特徴空間における集合S1をあらかじめ形成しておき、当該集合S1に関する情報を記憶部220に書き込んで記憶していてもよい。
【0079】
次に、取得部270は、抽出部260から入力された複数の特徴ベクトルのうち、集合S1に対応する位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、特徴空間にプロットする。図10では、対応する位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルは、白丸の点P1で示されている。そして、取得部270は、この検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点P1と集合S1とに基づいて、当該検査分割画像の欠陥度合いを取得する。
【0080】
より詳細には、取得部270は、抽出された複数の特徴ベクトルのそれぞれについて、特徴空間における、当該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合との間の距離に基づいて、当該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いを取得するように構成されている。
【0081】
図8に示す例では、第1特徴量及び第2特徴量を成分とする特徴ベクトルで表現される特徴空間において、取得部270は、ある検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点P1と、当該検査分割画像に対応する複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルの集合S1との間の距離に基づいて、当該検査分割画像の欠陥度合いを取得する。この欠陥度合いは、例えば距離に応じた値である。このように、特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いが、特徴空間における、特徴ベクトルが示す点P1と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合S1との間の距離に基づいて取得されることにより、検査分割画像の欠陥の程度を容易に示すことができる。
【0082】
あるいは、取得部270は、抽出された複数の特徴ベクトルのそれぞれについて、特徴空間における、当該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルのうちの1つが示す点との間の距離に基づいて、当該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いを取得するように構成されていてもよい。
【0083】
例えば、図9に示すように、第1特徴量及び第2特徴量を成分とする特徴ベクトルで表現される特徴空間において、取得部270は、ある検査分割画像の特徴ベクトルが示す点P2と、当該検査分割画像に対応する複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルの集合S2に含まれる点との間の距離に基づいて、当該検査分割画像の欠陥度合いを取得する。この欠陥度合いは、例えば距離に応じた値である。また、集合S2に含まれる点は、集合S2に含まれる複数の点のうち、例えば点P2に最も近い点である。取得部270は、集合S2に含まれる複数の点のそれぞれについて点P2との間の距離を算出し、点P2に最も近い点を決定することができる。このように、特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いが、特徴空間における、特徴ベクトルが示す点P2と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルのうちの1つが示す点との間の距離に基づいて取得されることにより、検査分割画像の欠陥の程度を容易に示すことができる。
【0084】
取得部270は、抽出部260により抽出された複数の特徴ベクトルのそれぞれについて、以上の手順を繰り返し行い、複数の検査分割画像のそれぞれの欠陥度合いを取得する。そして、取得部270は、取得した複数の欠陥度合いを検査部280に出力する。
【0085】
図10に示すように、撮像部230が取得した検査対象物TAの検査画像42は、分割部240によって縦方向及び横方向にそれぞれ5分割され、25個の検査分割画像が生成される。生成された25個の検査分割画像のうちの縁の検査分割画像を除く9個の検査分割画像のそれぞれについて、検査用画像データセット生成部250によって検査周囲含有画像が生成される。例えば、第1検査分割画像420について第1検査周囲含有画像424が生成され、第2検査分割画像422について第2検査周囲含有画像426が生成される。検査分割画像と検査周囲含有画像との組みが検査用画像データセットとなる。
【0086】
抽出部260は、生成された9個の検査用画像データセットのぞれぞれを、学習済みモデルに入力する。9個の検査分割画像に対するぞれぞれの特徴量が学習済みモデルから出力され、抽出部260は、9個の検査用画像データセットに対してそれぞれ出力された特徴量を成分とする9個の特徴ベクトルを抽出する。例えば、第1特徴ベクトル440は第1検査分割画像420及び第1検査周囲含有画像424に基づいて抽出され、第2特徴ベクトル442は第2検査分割画像422及び第2検査周囲含有画像426に基づいて抽出される。
【0087】
取得部270は、抽出された9個の特徴ベクトルのそれぞれについて、当該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルの集合とに基づいて、当該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥度合いを取得する。これにより、9個の検査分割画像のそれぞれの欠陥度合いが取得される。例えば、第1欠陥度合い460は第1特徴ベクトル440に基づいて取得され、第2欠陥度合い462は第2特徴ベクトル442に基づき取得される。
【0088】
ここで、図11に示すように、良品であることがあらかじめ分かっている検査対象物TAの検査画像60は、例えば、6個の検査分割画像600,602,604,606,608,及び610に分割される。これら6個の検査分割画像のうち、検査分割画像602,606,及び608は互いに類似するパターンを含んでいる。また、検査分割画像604は、他の検査分割画像と異なる特殊パターンを含んでいる。
【0089】
本実施形態の学習済みモデル55とは異なり、仮に、良品周囲含有画像を用いずに、これら6個の検査分割画像を用いて学習済みモデルを生成する場合、当該学習済みモデルは、検査分割画像602,604又は608のパターンの特徴量を抽出して出力し得るものの、学習済みモデルの表現能力次第では、検査分割画像604に含まれる特殊パターンの特徴量が十分に抽出されない可能性がある。この場合、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像604の特徴ベクトルが示す点は、他の検査分割画像600,602,606,608,及び610の特徴ベクトルが形成する集合から離れた位置にプロットされることがある。その結果、当該検査分割画像604の欠陥度合いは大きくなり、良品である検査対象物TAが不良品と判定されてしまうことがあった。
【0090】
これに対し、本実施形態の画像検査装置20は、良品分割画像に加え、良品周囲含有画像を入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル55に、検査分割画像600,602,604,606,608,及び610と、検査周囲含有画像とを入力し、当該検査分割画像600,602,604,606,608,及び610に対する特徴ベクトルを抽出する。これにより、良品分割画像のみを用いて学習させ、特殊パターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点が他のパターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点から遠い位置にプロットされる場合と比較して、学習済みモデル55は、位置により特徴量が大きく変化する良品周囲含有画像も用いて学習することで、同じ位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を近くに、異なる位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を遠くにプロットすることが可能になるので、良品分割画像に特有のパターンを正確に学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像600,602,604,606,608,及び610に対する特徴ベクトルが示す点は、それぞれの対応する良品分割画像に対する特徴ベクトルによって形成される集合の近くにプロットされる。よって、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像604に対する特徴ベクトルが示す点を、当該検査分割画像604に対応する複数の良品分割画像に対する特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットすることができ、欠陥の程度が小さい欠陥度合いを取得して良品と判定することができる。
【0091】
また、良品であることがあらかじめ分かっている別の検査対象物TAの検査画像において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む検査分割画像を用いて1つの学習済みモデルを生成する場合、特徴空間において、このようなパターンを含む検査分割画像の特徴ベクトルが示す点は、他の検査分割画像の特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットされることがある。そのため、当該別の位置にこのようなパターンを含む検査分割画像の欠陥度合いは小さくなり、本来は不良品である検査分割画像を含む検査画像の検査対象物TAは良品として判定され、不良品を見逃してしまうことがあった。
【0092】
このような場合にも、本実施形態の画像検査装置20では、学習済みモデル55は、良品周囲含有画像によって、良品の検査対象物TAの良品画像における位置、部分に応じて異なる判断基準を学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、検査画像における当該検査分割画像の位置に応じて異なる範囲、領域に集められる。よって、特徴空間において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む、当該別の位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該別の位置における複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルが形成する集合に対して遠くにプロットすることができ、欠陥の程度が大きい欠陥度合いを取得して不良品の見逃しを抑制することができる。
【0093】
また、本実施形態の検査周囲含有画像は、検査分割画像の周囲の画像を縮小した画像を含む。これにより、学習済みモデル55による特徴量の出力において、検査周囲含有画像の影響が大きくなるのを抑制することができ、検査分割画像に対する特徴ベクトルを高精度に抽出することが可能となる。
【0094】
図7の説明に戻り、検査部280は、欠陥度合いに基づいて検査対象物TAの検査するように構成されている。このように、特徴空間における、検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、検査分割画像の欠陥度合いを取得し、この欠陥度合いに基づいて、検査対象物TAを検査することにより、検査対象物TAの検査精度を高めることができる。
【0095】
また、前述した欠陥度合いは、検査分割画像の欠陥の程度を示す値であることが好ましい。これにより、検査分割画像の欠陥の程度を定量的に示すことができる。
【0096】
この場合、検査部280は、取得部270によって取得された複数の欠陥度合いに基づいて欠陥度合い画像を生成し、当該欠陥度合い画像に基づいて検査対象物TAを検査するように構成されている。これにより、検査対象物が良品であるか不良品であるかを容易に判定することができ、検査精度の高い検査を容易に実現することができる。
【0097】
具体的には、図12に示すように、検査部280は、取得部270によって取得された複数の欠陥度合い460,462、464,・・・を、それぞれの値に基づいて画像化することで、複数の部分画像480,482,484,・・・を生成する。複数の部分画像480,482,484,・・・のそれぞれは、例えば、欠陥度合いの値を、白黒の階調に変換したグレースケール画像や、RGBの階調に変換したカラー画像等である。検査部280は、生成された複数の部分画像480,482,484,・・・を統合することで、欠陥度合い画像48を生成する。なお、欠陥度合い画像48の縦及び横のサイズ(画素数)は、検査画像42と同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、検査部280は、当該欠陥度合い画像48に基づいて検査対象物TAが良品であるか否かを判定する。
【0098】
図13に示すように、欠陥度合い画像70は、例えば2つの欠陥部分画像700,702を含んでいる。欠陥部分画像700は欠陥度合いが相対的に低い部分画像であり、欠陥部分画像702は欠陥度合いが相対的に高い部分画像である。
【0099】
検査部280は、例えば、欠陥度合い画像70における欠陥部分画像700,702の占める割合が、所定の閾値以下である場合に検査対象物TAが良品であると判定し、所定の閾値を超える場合に検査対象物TAが良品ではない、つまり、不良品であると判定する。
【0100】
あるいは、検査部280は、欠陥度合い画像70に含まれる欠陥部分画像700,702の有無に基づいて、検査対象物TAの欠陥を検出してもよい。
【0101】
なお、分割部240、検査用画像データセット生成部250、抽出部260、取得部270、及び検査部280のうちの少なくとも1つは、プロセッサ31が、記憶装置33に記憶されたプログラムを実行することにより実現されてもよい。プログラムを実行する場合、当該プログラムは、記憶媒体に格納されていてもよい。当該プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体であってもよい。非一時的な記憶媒体は、特に限定されないが、例えば、USBメモリ、又はCD-ROM等の記憶媒体であってもよい。
【0102】
次に、図14を参照しつつ、一実施形態に従う学習済みモデル生成装置が行う処理手順について説明する。図14は、一実施形態における学習済みモデル生成装置10が行う学習済みモデル生成処理S100の一例を説明するためのフローチャートである。
【0103】
図14に示すように、まず、通信部110は、通信ネットワークNWを介して、複数の良品画像40を取得する(ステップS101)。取得された複数の良品画像40は、記憶部120に記憶される。
【0104】
次に、学習用画像データセット生成部131は、記憶部120から複数の良品画像40を読み出し、当該複数の良品画像40に基づいて、複数の学習用画像データセット124を生成する(ステップS102)。学習用画像データセット124は、前述したように、良品分割画像と良品周囲含油画像とを含んでいる。
【0105】
次に、モデル生成部135は、ステップS102において生成された複数の学習用画像データセット124を入力とし、特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル55を生成する。(ステップS103)。生成された学習済みモデル55と、学習済みモデル55の生成過程で抽出される複数の特徴ベクトル129とは、記憶部120に記憶される。
【0106】
次に、通信部110は、ステップS103において生成された学習済みモデル55と、生成過程で抽出される複数の特徴ベクトル129とを、通信ネットワークNWを介して、画像検査装置20に送信する(ステップS104)。これにより、画像検査装置20は、学習済みモデル生成装置10によって生成された学習済みモデルを使用可能になる。
【0107】
ステップS104の後、学習済みモデル生成装置10は、学習済みモデル生成処理S100を終了する。
【0108】
次に、図15を参照しつつ、一実施形態に従う画像検査装置が行う処理手順について説明する。図15は、一実施形態における画像検査装置20が行う画像検査処理S200の一例を説明するためのフローチャートである。
【0109】
なお、以下の例では、通信部210が学習済みモデル生成装置10から学習済みモデル55及び複数の特徴ベクトル129を受信し、記憶部220に当該学習済みモデル55及び複数の特徴ベクトル129が記憶されているものとして、説明する。
【0110】
図15に示すように、まず、撮像部230が、検査対象物TAの検査画像を取得する(ステップS201)。取得された検査画像は、分割部240に出力される。
【0111】
次に、分割部240はステップS201において取得された検査画像を分割し、検査用画像データセット生成部250は、分割された複数の検査分割画像のそれぞれについて、検査周囲含有画像を生成して複数の検査用画像データセットを生成する(ステップS202)。検査用画像データセットは、前述したように、検査分割画像と検査周囲含有画像とを含んでいる。生成された複数の検査用画像データセットは、抽出部260に出力される。
【0112】
次に、抽出部260は、記憶部220にあらかじめ記憶された学習済みモデル55を読み出し、ステップS207において生成された複数の検査用画像データセットのそれぞれを学習済みモデル55にそれぞれ入力し、複数の特徴ベクトルを抽出する(ステップS203)。生成された複数の特徴ベクトルは、取得部270に出力される。
【0113】
次に、取得部270は、記憶部220にあらかじめ記憶された複数の複数の特徴ベクトル129を読み出し、ステップS207において抽出された複数の特徴ベクトルのそれぞれについて、特徴空間において、特徴ベクトルが示す点と対応する複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトル129によって形成される集合とに基づいて、複数の検査分割画像の欠陥度合いを取得する(ステップS204)。得られた複数の欠陥度合いは、検査部280に出力される。
【0114】
次に、検査部280は、ステップS204において得られた複数の欠陥度合いのそれぞれの値をから複数の部分画像を生成し、生成された各部分画像を統合して欠陥度合い画像を生成する(ステップS205)。
【0115】
次に、検査部280は、ステップS205において生成された欠陥度合い画像に基づいて、検査対象物TAを検査する(ステップS206)。
【0116】
ステップS206の後、画像検査装置20は、画像検査処理S200を終了する。
【0117】
なお、本実施形態で説明したシーケンス及びフローチャートは、処理に矛盾が生じない限り、順序を入れ替えてもよい。
【0118】
以上、本発明の例示的な実施形態について説明した。本実施形態における画像検査装置20及び画像検査方法によれば、良品分割画像と良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル55に、検査分割画像600,602,604,606,608,及び610と、検査周囲含有画像とを入力し、当該検査分割画像600,602,604,606,608,及び610に対する特徴ベクトルを抽出する。これにより、良品分割画像のみを用いて学習させ、特殊パターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点が他のパターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点から遠い位置にプロットされる場合と比較して、学習済みモデル55は、位置により特徴量が大きく変化する良品周囲含有画像も用いて学習することで、同じ位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を近くに、異なる位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を遠くにプロットすることが可能になるので、良品分割画像に特有のパターンを正確に学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像600,602,604,606,608,及び610に対する特徴ベクトルが示す点は、それぞれの対応する良品分割画像に対する特徴ベクトルによって形成される集合の近くにプロットされる。よって、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像604に対する特徴ベクトルが示す点を、当該検査分割画像604に対応する複数の良品分割画像に対する特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットすることができ、欠陥の程度が小さい欠陥度合いを取得して良品と判定することができる。また、学習済みモデル55は、良品周囲含有画像によって、良品の検査対象物TAの良品画像における位置、部分に応じて異なる判断基準を学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、検査画像における当該検査分割画像の位置に応じて異なる範囲、領域に集められる。よって、特徴空間において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む、当該別の位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該別の位置における複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルが形成する集合に対して遠くにプロットすることができ、欠陥の程度が大きい欠陥度合いを取得して不良品の見逃しを抑制することができる。従って、特徴空間における、検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルによって形成される集合とに基づいて、検査分割画像の欠陥度合いを取得し、この欠陥度合いに基づいて、検査対象物TAを検査することにより、検査対象物TAの検査精度を高めることができる。
【0119】
また、本実施形態における学習済みモデル生成装置10によれば、良品分割画像と良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル55を生成する。これにより、良品分割画像のみを用いて学習させ、特殊パターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点が他のパターンを含む良品分割画像の特徴ベクトルが示す点から遠い位置にプロットされる場合と比較して、学習済みモデル55は、位置により特徴量が大きく変化する良品周囲含有画像も用いて学習することで、同じ位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を近くに、異なる位置の良品分割画像に対する特徴ベクトルが示す点との間の距離を遠くにプロットすることが可能になるので、良品分割画像に特有のパターンを正確に学習することができ、特徴空間において、特殊パターンを含む検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該検査分割画像に対応する複数の良品分割画像に対する特徴ベクトルが形成する集合の近くにプロットすることができる。また、学習済みモデル55は、良品周囲含有画像によって、良品の検査対象物TAの良品画像における位置、部分に応じて異なる判断基準を学習することができ、特徴空間において、各検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点は、検査画像における当該検査分割画像の位置に応じて異なる範囲、領域に集められる。よって、特徴空間において、ある位置で良品であるが別の位置では不良品であるパターンを含む、当該別の位置の検査分割画像に対する特徴ベクトルが示す点を、当該別の位置における複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトルが形成する集合に対して遠くにプロットすることができる。
【0120】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、実施形態が備える各要素及びその配置、材料、条件、形状、サイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもなく、これらも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【0121】
[付記1]
良品の検査対象物(TA)の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル(55)に、検査対象物(TA)の分割画像である検査分割画像と該検査分割画像の周囲の画像に基づく検査周囲含有画像とを入力し、該検査分割画像に対する特徴量を成分とする特徴ベクトルをそれぞれ抽出する抽出部(260)と、
抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトル(129)によって形成される集合とに基づいて、該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥の程度を示す欠陥度合いを取得する取得部(270)と、
欠陥度合いに基づいて、検査対象物(TA)を検査する検査部(280)と、を備える、
画像検査装置(20)。
[付記9]
良品の検査対象物(TA)の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル(55)に、検査対象物(TA)の分割画像である検査分割画像と該検査分割画像の周囲の画像に基づく検査周囲含有画像とを入力し、該検査分割画像に対する特徴量を成分とする特徴ベクトルをそれぞれ抽出するステップと、
抽出された特徴ベクトルで表現される特徴空間において、該特徴ベクトルが示す点と複数の良品分割画像に対する複数の特徴ベクトル(129)によって形成される集合とに基づいて、該特徴ベクトルに対応する検査分割画像の欠陥の程度を示す欠陥度合いを取得するステップと、
欠陥度合いに基づいて、検査対象物(TA)を検査するステップと、を含む、
画像検査方法。
[付記10]
良品の検査対象物(TA)の分割画像である良品分割画像と該良品分割画像の周囲の画像に基づく良品周囲含有画像とを入力として特徴量を出力するように学習させた学習済みモデル(55)を生成するモデル生成部(135)を備える、
学習済みモデル生成装置(10)。
【符号の説明】
【0122】
1…画像検査システム、10…モデル生成装置、20…画像検査装置、31…プロセッサ、32…メモリ、33…記憶装置、34…通信装置、35…入力装置、36…出力装置、40…良品画像、42…検査画像、48…欠陥度合い画像、51…学習モデル、52…学習モデル、55…学習済みモデル、60…検査画像、70…欠陥度合い画像、110…通信部、120…記憶部、124…学習用画像データセット、129…特徴ベクトル、130…学習部、131…学習用画像データセット生成部、135…モデル生成部、210…通信部、220…記憶部、230…撮像部、240…分割部、250…検査用画像データセット生成部、260…抽出部、270…取得部、280…検査部、400…第1良品分割画像、402…第2良品分割画像、404…第1良品周囲含有画像、406…第2良品周囲含有画像、420…第1検査分割画像、422…第2検査分割画像、424…第1検査周囲含有画像、426…第2検査周囲含有画像、440…第1特徴ベクトル、442…第2特徴ベクトル、480…部分画像、482…部分画像、484…部分画像、511…入力層、512…第1入力チャネル、513…第2入力チャネル、515…中間層、517…出力層、518…第1出力チャネル、519…第2出力チャネル、521…入力層、525…中間層、527…出力層、600…検査分割画像、602…検査分割画像、604…検査分割画像、606…検査分割画像、608…検査分割画像、700…欠陥部分画像、702…欠陥部分画像、IL…照明、L…光、NW…通信ネットワーク、P1…点、P2…点、R…反射光、S1…集合、S2…集合、S100…モデル生成処理、S200…画像検査処理、TA…検査対象物。
図1
図2
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図10
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