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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B65G1/00 501C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021022725
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124848
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】岩本 国大
(72)【発明者】
【氏名】高木 裕太郎
(72)【発明者】
【氏名】糸澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】古村 博隆
【審査官】大塚 多佳子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-002603(JP,A)
【文献】特開平04-028700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車両が物体を搬送する搬送システムであって、
前記搬送車両は、
前記物体を収容可能な1以上のラックと、
天板と、
前記天板に取り付けられた、水平方向に伸縮可能なアームと、
前記天板を、鉛直方向を回転軸として所定量回転させることにより、前記アームの伸長方向を変更する回転機構と、
前記回転機構と前記アームの動作とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記アームを伸縮させて、前記1以上のラック又は外部に設置されたラックから前記物体を引き出し、
引き出された前記物体を載置した前記天板を90°回転させ、
前記1以上のラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記外部に設置されたラックに格納し、前記外部に設置されたラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記1以上のラックに格納し、
前記1以上のラックは、前記搬送車両の前後に備えられた2つのラックであり、
前記2つのラックは、前記天板を挟むように配置されており、
前記制御部は、前記2つのラックの一方に収容されている物体を前記天板に載置し、前記天板を180°回転させ、前記天板に載置された前記物体を、前記2つのラックの他方に格納することで、前記2つのラックの一方に収容された物体の重量と前記2つのラックの他方に収容された物体の重量とのバランスをとる
搬送システム。
【請求項2】
前記搬送車両は、
前記天板を昇降させる昇降機構、
を更に備え、
前記制御部は、
前記昇降機構をさらに制御する、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記搬送車両は、
前記昇降機構を水平移動させる機構、
を更に備え、
前記天板は、前記天板を降下させた状態で前記昇降機構を水平移動させることにより、前記1以上のラックに収容可能に構成されている、
請求項に記載の搬送システム。
【請求項4】
搬送車両が物体を搬送する搬送方法であって、
前記搬送車両は、
前記物体を収容可能な1以上のラックと、
天板と、
前記天板に取り付けられた、水平方向に伸縮可能なアームと、
前記天板を、鉛直方向を回転軸として所定量回転させることにより、前記アームの伸長方向を変更する回転機構と、
を備え、
前記搬送方法は、
前記アームを伸縮させて、前記1以上のラック又は外部に設置されたラックから前記物体を引き出すステップと、
引き出された前記物体を載置した前記天板を90°回転させるステップと、
前記1以上のラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記外部に設置されたラックに格納し、前記外部に設置されたラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記1以上のラックに格納するステップと、
を含み、
前記1以上のラックは、前記搬送車両の前後に備えられた2つのラックであり、
前記2つのラックは、前記天板を挟むように配置されており、
前記2つのラックの一方に収容されている物体を前記天板に載置し、前記天板を180°回転させ、前記天板に載置された前記物体を、前記2つのラックの他方に格納することで、前記2つのラックの一方に収容された物体の重量と前記2つのラックの他方に収容された物体の重量とのバランスをとるステップ
を含む
搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送システム及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、荷台と6軸可動型のロボットアームと収納部とを有し、荷台の昇降が可能な搬送車両を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-094197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術によると、荷台とロボットアームとが別個に設けられており、ロボットアームがラックから荷物を取り出す場合に必要な力が大きいという問題があった。
【0005】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、ロボットアームがラックから荷物を取り出す際に必要な力を低減する搬送システム及び搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施の形態における搬送システムは、搬送車両が物体を搬送する搬送システムであって、
前記搬送車両は、
前記物体を収容可能な1以上のラックと、
天板と、
前記天板に取り付けられた、水平方向に伸縮可能なアームと、
前記天板を、鉛直方向を回転軸として所定量回転させることにより、前記アームの伸長方向を変更する回転機構と、
前記回転機構と前記アームの動作とを制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記アームを伸縮させて、前記1以上のラック又は外部に設置されたラックから前記物体を引き出し、
引き出された前記物体を載置した前記天板を所定量回転させ、
前記1以上のラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記外部に設置されたラックに格納し、前記外部に設置されたラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記1以上のラックに格納する。
【0007】
本実施の形態における搬送方法は、搬送車両が物体を搬送する搬送方法であって、
前記搬送車両は、
前記物体を収容可能な1以上のラックと、
天板と、
前記天板に取り付けられた、水平方向に伸縮可能なアームと、
前記天板を、鉛直方向を回転軸として所定量回転させることにより、前記アームの伸長方向を変更する回転機構と、
を備え、
前記搬送方法は、
前記アームを伸縮させて、前記1以上のラック又は外部に設置されたラックから前記物体を引き出すステップと、
引き出された前記物体を載置した前記天板を所定量回転させるステップと、
前記1以上のラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記外部に設置されたラックに格納し、前記外部に設置されたラックから前記物体を引き出した場合、前記アームを伸長させて前記物体を前記1以上のラックに格納するステップと、を含む、
【発明の効果】
【0008】
本開示により、ロボットアームがラックから物体を取り出す際に必要な力を低減する搬送システム及び搬送方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態にかかる搬送車両の構成を示す模式側面図である。
図2】実施形態にかかる搬送車両の構成を示す模式正面図である。
図3】実施形態にかかる搬送車両の構成を示す模式平面図である。
図4】実施形態にかかる搬送車両の機能を示すブロック図である。
図5】実施形態にかかる搬送車両がアームを収縮させた状態を示す模式平面図である。
図6】実施形態にかかる搬送車両がアームを伸長させた状態を示す模式平面図である。
図7】実施形態にかかる搬送車両が備えるラックの概要を示す模式図である。
図8】実施形態にかかる搬送車両が搬送する物体の形状を例示する斜視図である。
図9】実施形態にかかる搬送車両がラックから物体を取り出す前の状態を示す模式側面図である。
図10】実施形態にかかる搬送車両が、物体とアームとを係合させた状態を示す模式側面図である。
図11】実施形態にかかる搬送車両が、天板に物体を載置した状態を示す模式側面図である。
図12】実施形態にかかる搬送車両の外部に設置されたラックの概要を示す模式図である。
図13】実施形態にかかる搬送車両が、外部に設置されたラックに向かってアームを伸長させた状態を示す模式平面図である。
図14】実施形態にかかる搬送車両が、外部に設置されたラックの前に停車した状態を示す模式平面図である。
図15】実施形態にかかる搬送車両が、引き出された物体を天板に載置した状態を示す模式平面図である。
図16】実施形態にかかる搬送車両が、物体を載置した天板を所定量回転させた状態を示す模式平面図である。
図17】実施形態にかかる搬送車両が、外部に設置されたラックに物体を格納した状態を示す模式平面図である。
図18】実施形態にかかる搬送方法の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0011】
以下、図面を参照して実施形態にかかる搬送システムについて説明する。実施形態にかかる搬送システムは、搬送車両10を有している。搬送システムは、搬送車両10が物体を搬送する搬送システムである。物体は、通函であってもよい。
【0012】
尚、搬送システムには、搬送車両10の走行を制御するサーバが備えられていてもよいが、搬送車両10が自ら搬送ルートを生成して自律移動を行ってもよい。サーバを含まない搬送車両内で処理が完結したシステムも実施形態にかかる搬送システムには含まれ得る。
【0013】
図1図2図3はそれぞれ、実施形態にかかる搬送システムが有する搬送車両10の模式側面図、模式平面図、及び模式平面図である。また、図4は、搬送車両10の機能を示すブロック図である。搬送車両10は、移動可能な移動部110と、伸縮部120と、載置された物体を支持するための天板130と、回転機構140と、アーム150と、制御部100と、無線通信部160と、ラック170とを備えている。制御部100は、伸縮部120、回転機構140、及びアーム150の制御を含む、搬送車両10の制御を行う。
【0014】
移動部110は、車両本体111と、車両本体111に回転可能に設けられた左右一対の車輪112、各車輪112を回転駆動する一対のモータ113と、を有している。モータ113は、減速機などを介して、各車輪112を回転させる。各モータ113は、制御部100からの制御信号に応じて、各車輪112を回転させることで、車両本体111の前進移動、後進移動、及び回転を可能にする。これにより、車両本体111は、任意の位置に移動することができる。尚、上記移動部110の構成は一例であり、これに限定されない。車両本体111を任意の位置に移動させることができれば任意の構成が適用可能である。
【0015】
伸縮部120は、上下方向へ伸縮する。伸縮部120は、昇降機構とも称される。伸縮部120は、テレスコピック型の伸縮機構として構成されていてもよい。伸縮部120の上端部には、天板130が設けられており、伸縮部120の動作により、天板130が上昇又は下降する。伸縮部120は、モータなどの第1駆動装置121を備えており、第1駆動装置121の駆動により伸縮する。すなわち、第1駆動装置121の駆動により、天板130が上昇又は下降する。第1駆動装置121は、制御部100からの制御信号に応じて駆動する。尚、搬送車両10において、天板130の高さを任意の位置に移動させることができれば任意の構成が適用可能である。
【0016】
尚、搬送車両10は、伸縮部120を水平移動させる機構をさらに備えていてもよい。このような場合、後述する天板130は、天板130を降下させた状態で、伸縮部120を水平方向(例:搬送車両の進行方向、又はその反対方向)に移動させることにより、後述するラック170に収容可能に構成されていてもよい。
【0017】
天板130は、例えば、上面となる板材と下面となる板材とで構成されており、上面と下面との間に、アーム150を収める空間を有していてもよい。この板材の形状、すなわち、天板130の形状は、例えば、平らな円盤状であるが、他の任意の形状であってもよい。アーム150の移動の際に、アーム150の突起部152が天板130にぶつからないように、天板130にはアーム150の動線に沿って切り欠きが設けられていてもよい。
【0018】
回転機構140は、鉛直方向を回転軸として、天板130を所定量回転させる回転機構を備える。所定量は、例えば、90°である。回転機構140は、搬送車両10に回転可能に取り付けられた伸縮部120を回転させてもよく、伸縮部120の上端に取り付けられた天板130を回転させてもよい。回転機構140は、天板130を所定量回転させることにより、後述するアーム150の伸長方向を変更することができる。回転機構140は、モータなどの駆動装置により天板130を回転させる。
【0019】
アーム150は、天板130に取り付けられており、水平方向に伸縮可能である。アーム150は、天板130から出し入れされてもよい。アーム150は、軸部151と、突起部152とを有している。突起部152は、軸部151から軸部151とは異なる方向に延び、物体と係合する。突起部152は、軸部151の先端で軸部151と垂直方向に延びていてもよい。即ち、アーム150は、L字形状を有していてもよい。
【0020】
また、アーム150は、制御部100からの制御信号に応じてアーム150を水平方向(すなわち、軸部151に沿った方向、さらに換言するとアーム150の長手方向)に伸縮させる第2駆動装置153を有する。第2駆動装置153は、更に、軸部151を回転軸としてアーム150を回転させる機能を有していてもよい。第2駆動装置153は、例えば、モータ及びリニアガイドを含み、アーム150の伸縮等を行うが、第2駆動装置153として、これらの動作を行うための公知の機構が用いられてもよい。アーム150の伸縮機構は、ガイドレール機構には限られない。
【0021】
尚、アーム150は、上述した構造に限られない。アーム150は、天板130の内部に備えられている必要はなく、天板の上側又は下側に取り付けられていてもよい。また、アーム150は、物体を把持することが可能な伸縮アームであってもよい。このような場合、アーム150は、天板130の上側に取り付けられていてもよい。
【0022】
ここで、アーム150の移動について図5及び図6に示す。図5は、アーム150を収縮させた状態の搬送車両10を示す模式平面図である。図6は、アーム150を伸長させた状態の搬送車両10を示す模式平面図である。
【0023】
図4に示す無線通信部160は、必要に応じてサーバ又はロボットなどと通信するために、無線通信する回路であり、例えば、無線送受信回路及びアンテナを含む。尚、搬送車両10が他の機器と通信を行わない場合には、無線通信部160が省略されてもよい。
【0024】
制御部100は、搬送車両10を制御する装置であり、プロセッサ1001、メモリ1002、及びインタフェース(IF)1003を備える。プロセッサ1001、メモリ1002、及びインタフェース1003は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0025】
インタフェース1003は、移動部110、伸縮部120、回転機構140、アーム150、無線通信部160などの他の装置と通信するために使用される入出力回路である。
【0026】
メモリ1002は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。メモリ1002は、プロセッサにより実行される、1以上の命令を含むソフトウェア(コンピュータプログラム)、及び搬送車両10の各種処理に用いるデータなどを格納するために使用される。
【0027】
プロセッサ1001は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPU(Central Processing Unit)などであってもよい。プロセッサ1001は、複数のプロセッサを含んでもよい。このように、制御部100は、コンピュータとして機能する装置である。
【0028】
なお、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0029】
次に、制御部100について説明する。制御部100は、移動部110の各モータ113に制御信号を送信することで、各車輪112の回転を制御し、車両本体111を任意の位置に移動させることができる。
【0030】
尚、制御部100は、車輪112に設けられた回転センサにより検出された車輪112の回転情報などに基づいて、フィードバック制御、ロバスト制御等の周知の制御を行うことで、搬送車両10の移動を制御してもよい。また、制御部100は、搬送車両10に設けられたカメラや超音波センサなどの距離センサにより検出された距離情報、移動環境の地図情報に基づいて、移動部110を制御することで、搬送車両10を自律的に移動させてもよい。
【0031】
また、制御部100は、伸縮部120の第1駆動装置121に対して制御信号を送信することで、天板130の高さを制御することができる。さらに、制御部100は、回転機構140に対して制御信号を送信することで、天板130の回転角度を制御することができる。そして、制御部100は、第2駆動装置153に対して制御信号を送信することで、アーム150の水平方向の伸縮を制御することができる。
【0032】
図1図3に戻って、ラック170は、搬送車両10が搬送する物体を収容する。ラック170は、搬送車両10の前方と後方の両方に設けられてもよく、いずれか一方に設けられてもよい。ラック170には、物体を支持するための対のレール172が設けられている。搬送車両10の前方と後方にラック170が配置される場合、2つのラックは、天板130を挟むように配置されることとなる。
【0033】
図7は、搬送車両が有するラック170と、ラック170に収容された物体80とを示す模式図である。また、図8は、物体80の正面、底面、及び側面を示す斜視図である。
【0034】
ラック170は、筐体171と、対のレール172とを備えている。上述の通り、対のレール172は、物体80の両サイドを支持する。対のレール172は、同じ高さに平行に設けられている。ラック170に収納された物体80は、物体80の一方のサイドがレール172の一方により支持され、他方のサイドがレール172の他方により支持される。レール172は、いずれも、ラック170の正面から背面にわたって設けられている。
【0035】
物体80の両サイドには、例えば、図8に示すようにつば81が設けられており、つば81がレール172に下から支持されることにより、ラック170において物体80が支持される。尚、つば81は、物体80の両サイドに正面から背面にわたって設けられている。図8に示した例では、つば81は、物体80のサイドの上部に設けられているが、例えば下部に設けられてもよく、必ずしも上部でなくてもよい。また、物体80の底面をレール172が支持する場合には、必ずしもつば81が物体80に設けられていなくてもよい。
【0036】
このように、ラック170は、物体80の両サイドをレール172により下から支持する。そして、物体80は、レール172に沿って、ラック170内で前後方向に移動可能である。すなわち、物体80をラック170の背面に向かって押し込むことにより、物体80はラック170に収容される。逆に、物体80をラック170の正面に向かって引き出すことにより、物体80をラック170から取り出すことができる。
【0037】
図8に示すように、物体80の底面には、アーム150の突起部152を引っ掛けるための溝82が所定の位置に形成されている。溝82は、例えば、物体80の引き出し方向を軸方向とする半円筒形状であってもよい。尚、物体80は、例えば、直方体形状の容器(箱)であるが、これに限らず任意の物体でよい。容器としての物体80の中には、他の任意の物体を収納することができる。尚、図8は、あくまでも例示である。例えば、アーム150が物体80を把持する場合、物体80に溝82が形成されていなくてもよい。
【0038】
次に、図9図11を用いて、ラック170に格納された物体80を天板130に載置する方法について説明する。搬送車両10の制御部100は、アーム150を操作することにより、ラック170から天板130へ物体80を移動させ、又は天板130からラック170へ物体80を移動させることができる。図9図11は、搬送車両10の模式側面図である。尚、見やすくするため、物体80及びアーム150は、ラック70に隠れている場合であっても実線で表示している。また、ラック170のレール172は、図示を省略している。
【0039】
図9に示すように、まず、制御部100は、アーム150を所定の長さ分だけ伸長させ、物体80の底面の溝82へとアーム150の突起部152を移動する。尚、搬送車両10は、物体80の溝82の位置を検知するカメラなどのセンサを備え、センサによる検出結果に基づいて、アーム150を伸長させる長さを決定してもよい。このとき、突起部152の突起の方向は、水平方向であってもよい。
【0040】
次に、図10に示すように、制御部100は、アーム150の軸部151を回転軸として突起部152を回転させる。具体的には、制御部100は、突起部152が上側を向くように突起部152を回転させる。これにより、突起部152が、物体80の溝82に入る。尚、搬送車両10は、アーム150の突起部が上を向いた状態でアーム150を伸長させた後、天板130を上昇させることにより、突起部152を溝82に入れてもよい。
【0041】
次に、搬送車両10は、溝82に引っかかったアーム150を収縮させる。これにより、図11に示されるように、物体80が、ラック170から引き出され、天板130へと移動する。
【0042】
これに対し、制御部100は、天板130上に載置された物体80の溝82に引っかかったアーム150をラック170に挿入することにより、すなわち、溝82に突起部152が入った状態でアーム150を所定の長さ分だけ伸長させることにより、天板130上の物体80をラック170に格納することができる。
【0043】
ところで、物体80の溝82の数は、図8に示したように、一つであってもよいが複数であってもよい。具体的には、物体80の底面は、物体80の移動方向に並んだ複数の溝82を有していてもよい。このような場合、搬送車両10の制御部100は、ラック170に収納された物体80を天板130に移動させる場合、天板130側の溝82から順にアーム150の先端を引っ掛けることにより、ラック170からの引き出し動作を繰り返してもよい。同様に、搬送車両10の制御部100は、天板130上の物体80をラック170に移動させる場合、ラック170側の溝から順にアーム150の先端を引っ掛けることにより、ラック170への押し入れ動作を繰り返してもよい。
【0044】
また、搬送車両10の外部には、ラック170と同様の構成を有するラック70が設置されている。搬送車両10は、ラック70に対しても、同様の引き出し動作、押し入れ動作を行うことができる。図12は、搬送車両10の外部に設置されたラック70の構成例を示す模式正面図である。ラック70は、住居の外部や内部に設置されていてもよい。
【0045】
ラック70は、筐体71と、対のレール72と、仕切板73とを備えている。筐体71は、搬送車両10のラック170の筐体171に対応している。対のレール72は、搬送車両のラック170の対のレール172に対応している。したがって、詳細な説明は省略する。図12の例では、2枚の仕切板が設けられているが仕切板の数は何ら限定されない。また、仕切板73は、設けられていなくてもよい。図12に示されているように、ラック70は、異なるサイズの物体80を収容可能に構成されていてもよい。尚、搬送車両10のラック170も、異なるサイズの物体80が収容可能に構成されていてもよい。
【0046】
搬送車両10は、ラック70から物体80を出し入れするとき、図13に示すようにラック70の前面に停車してもよい。図13では、搬送車両10の側面と、ラック70の前面とが対向する状態になっている。搬送車両10は、アーム150を伸縮させてラック70から物体80を引き出したり、アームを伸長させてラック70に物体80を格納したりすることができる。
【0047】
次に、図14から図17を用いて、搬送車両10による物体80の搬送方法について具体的に説明する。図14図17は、搬送車両10及びラック70の模式平面図である。まず、搬送車両10は、ラック170に収容された物体80を、配送先まで搬送する。搬送時において、搬送車両10は、天板130を降下させた状態で走行してもよい。
【0048】
まず、搬送車両10は、図14に示すように配送先に設置されたラック70の前に停車する。次に、搬送車両10は、天板130を物体80が収容された位置まで上昇させた後、アーム150を伸縮させて、ラック70から物体80を引き出す。具体的には、搬送車両10は、まずアーム150を伸長させて物体80と係合させる。そして、搬送車両10は、アーム150を収縮させることにより、物体80をラック170から取り出す。これにより、搬送車両10は、物体80を天板130に載置する(図15参照)。
【0049】
次に、搬送車両10は、図16に示すように、引き出された物体80を載置した天板130を鉛直軸回りに90°回転させる。これにより、アーム150の伸長方向が、ラック170が配置された方向から、ラック70が配置された方向に変更される。これにより、搬送車両10は、アーム150を用いてラック70に物体を格納することができるようになる。次に、搬送車両10は、アーム150を伸長させて物体80をラック70に格納する。図18は、搬送車両10が物体80をラック70に格納した後、アーム150を収縮させた状態を示している。
【0050】
また、搬送車両10は、同様の手順により、外部のラック70から搬送車両10のラック170に、物体80を移載してもよい。具体的には、搬送車両10は、まず、アーム150を伸縮させて、ラック70から物体80を引き出す。そして、搬送車両10は、引き出された物体を載置した天板130を所定量回転させる。これにより、アーム150の伸長方向が、ラック170が配置された方向となる。最後に、搬送車両10は、アーム150を伸長させて物体80をラック170に格納する。そして、搬送車両10は、ラック170に収容された物体80を配送先まで配送する。
【0051】
なお、上述した例では、搬送車両10は、物体80を載置した天板130を90°回転させたが、天板130の回転角度は90°には限られない。例えば、搬送車両10は、車両本体111の前後の一方のみにラック170を備えていてもよく、このような場合、搬送車両10の前方をラック70の前面に向けて停車することができる。そして、搬送車両10は、搬送車両10のラック170に格納された物体80を天板130に載置した後、天板130を180°回転させて、外部に設置されたラック70に物体を格納することができる。外部に設置されたラック70から、搬送車両10に設置されたラック170に物体80を移動させるときも同様である。
【0052】
尚、ラック170を車両本体の前後に備えている場合、搬送車両10は、ラック170の一方に収容されている物体80を天板130に載置し、天板130を180°回転させて、ラック170の他方に格納することができる。これにより、搬送車両10は、前後のラック170に収容されている物体80の数量(例:重量)のバランスをとることができる。
【0053】
図18は、実施形態にかかる搬送方法の流れを例示するフローチャートである。搬送車両10が、配送元に設置されたラック70の前で停車しているものとする。配送元は、倉庫であってもよい。まず、搬送車両10は、配送元に設置されたラック70から、搬送する物体80を引き出す(ステップS101)。次に、搬送車両10は、物体80を載置した天板130を所定量回転させる(ステップS102)。次に、搬送車両10は、天板130に載置された物体80を、搬送車両10のラック170に格納する(ステップS103)。次に、搬送車両10は、物体80を搬送し(ステップS104)、配送先に設置されたラック70の前に停車する。配送先は、住居であってもよい。
【0054】
次に、搬送車両10は、搬送車両10のラック170から物体80を引き出す(ステップS105)。次に、搬送車両10は、物体80を載置した天板130を所定量回転させる(ステップS106)。最後に、搬送車両10は、アーム150を用いて、天板130に載置された物体80を、ラック70に格納する(ステップS107)。
【0055】
以下、実施形態にかかる搬送システムが奏する効果について説明する。実施形態にかかる搬送車両は、天板に取り付けられたアームを備えており、物体を移動させる際、物体を天板に一旦載置することができる。したがって、実施形態にかかる搬送システムは、物体の移動に要する力を低減することができる。
【0056】
また、小型の搬送ロボットの幅や奥行に対して高い位置まで天板を上昇させると、搬送ロボットが、転倒したり、搬送する物体を落下させたりするリスクがある。実施形態にかかる搬送車両は、搬送ロボットの両側又は片側にラックを備えており、搬送車両のサイズが大きいため、天板を上昇させた場合の転倒リスクを低減することができる。また、実施形態にかかる搬送システムによれば、物体を搬送する車両と、より小型の搬送ロボットと、の両方を用いて搬送を行う必要がない。
【0057】
実施形態にかかる搬送車両は、天板の両側にラックを備えていてもよい。このような場合、外部からロボット(天板、アーム、昇降機構等)を視認しにくくすることができるため、周囲に与える威圧感を低減することができる。また、天板をラックに収容した場合、このような効果をさらに強調することができる。また、天板の両側にラックを備えることにより、より安定性を向上できる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
10 搬送車両
100 制御部
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 インタフェース
110 移動部
111 車両本体
112 車輪
113 モータ
120 伸縮部
121 第1駆動装置
130 天板
140 回転機構
150 アーム
151 軸部
152 突起部
153 第2駆動装置
160 無線通信部
170 ラック
171 筐体
172 レール
70 ラック
71 筐体
72 レール
73 仕切板
80 物体
81 つば
82 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18