(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】モータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/16 20060101AFI20240806BHJP
H02K 9/19 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H02K5/16
H02K9/19 A
H02K9/19 B
(21)【出願番号】P 2021028597
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000232302
【氏名又は名称】ニデック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】牧野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】小久保 征洋
【審査官】池田 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-116407(JP,A)
【文献】特開平08-019207(JP,A)
【文献】実開昭63-124057(JP,U)
【文献】特開2016-197930(JP,A)
【文献】実開平04-054471(JP,U)
【文献】特開平11-041861(JP,A)
【文献】特開2016-220275(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0285464(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/16
H02K 9/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向と平行な回転軸に沿って軸方向に延びるシャフトと、
前記シャフトに支持されて前記シャフトとともに回転可能なロータと、
前記ロータよりも径方向外方に配置されるステータと、
前記ロータ及び前記ステータを収容するハウジングと、
前記シャフトの径方向外側面に接する導電部材を有する除電装置と、
を備え、
前記導電部材は、前記シャフトの径方向外側面のうち、軸方向から見て鉛直上方、鉛直斜め上方、及び水平方向のうちのいずれかを向く領域と接し、
前記除電装置は、軸方向から見て、
前記シャフトと前記導電部材との接触部分よりも、軸方向と垂直であって水平方向と平行な方向における一方側及び他方側と、
前記接触部分よりも鉛直上方と、
のうちのいずれかに配置され、
前記除電装置はさらに、軸方向から見て、
前記回転軸よりも前記平行な方向における一方側及び他方側と、
前記回転軸よりも鉛直斜め上方と、
のうちのいずれかに配置され
、
前記ハウジングは、
導電性を有して径方向に広がるプレート部と、
前記プレート部の軸方向一方端面に配置されるカバー部材と、
をさらに有し、
前記プレート部には、前記シャフトが挿通される開口部が配置され、
前記除電装置は、前記プレート部と前記カバー部材とで囲まれた収容空間に収容される、モータ。
【請求項2】
第1周方向角度位置は、前記シャフトの径方向外側面において、軸方向から見て水平方向の一方を向く周方向角度位置であり、
第2周方向角度位置は、前記シャフトの径方向外側面において、軸方向から見て鉛直上方を向く周方向角度位置であり、
第3周方向角度位置は、前記シャフトの径方向外側面において、軸方向から見て水平方向の他方を向く周方向角度位置であり、
前記導電部材は、前記シャフトの径方向外側面のうち、軸方向から見て前記第1周方向角度位置から前記第2周方向角度位置を通って前記第3周方向角度位置までの180°の周方向範囲の領域と接する、請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記プレート部は、前記ステータよりも軸方向一方に配置され、
前記収容空間は、前記開口部よりも鉛直下方に配置される所定の広さの下部空間を含む、請求項
1または請求項2に記載のモータ。
【請求項4】
前記カバー部材は、
前記除電装置を覆う第1カバー部と、
前記第1カバー部よりも径方向外方に配置される第2カバー部と、
を有し、
前記第2カバー部は、前記第1カバー部よりも軸方向他方に配置され、
前記下部空間は、前記プレート部と前記第2カバー部との間に配置される、請求項
3に記載のモータ。
【請求項5】
環状のシール部材をさらに備え、
前記プレート部の前記開口部の外縁部に沿う径方向内端部は、前記シール部材を介して前記シャフトの径方向外側面に接する、請求項
1から請求項
4のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項6】
前記ハウジングは、粘着性を有する粘着部材をさらに有し、
前記粘着部材は、前記プレート部及び前記カバー部材間において、前記プレート部及び前記カバー部材の少なくとも一方に配置される、請求項
1から請求項
5のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項7】
前記除電装置は、
前記導電部材を保持する保持部材と、
前記保持部材を前記プレート部及びカバー部材の少なくとも一方に固定する少なくとも1つの固定部材と、
をさらに有する、請求項
1から請求項
6のいずれか1項に記載のモータ。
【請求項8】
少なくとも1つの前記固定部材は、前記プレート部に固定され、
前記プレート部は、軸方向に突出するリブをさらに有し、
前記リブは、前記プレート部のうちの前記固定部材が固定された固定部分から離れる方向に延びる、請求項
7に記載のモータ。
【請求項9】
前記除電装置は、前記導電部材を前記シャフトに向かって押す弾性部材をさらに有する、請求項1から請求項
8のいずれか1項に記載のモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータなどの回転機械のシャフトの電流を放電装置により放電する技術が知られている。たとえば、放電装置は、成型カーボン体により形成された接触子を有する。接触子は、ガイドスリーブ内に収容される。接触子は、コイルばねが作用させる荷重により、シャフトの周縁に形成されたロータ接触面との電気的接触が確立される。また、接触子はグランドを構成するスリーブ部との間にガイドスリーブを介して導電接続を形成する。(たとえば特表2019-531679号公報参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接触子をシャフトの周縁に接触させるとシャフトの回転により、接触子が摩耗する。そのため、接触子からたとえばカーボンの摩耗粉が発生し、除電装置が摩耗粉を浴びる虞がある。
【0005】
本発明は、除電装置が摩耗粉を浴びることを抑制又は防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の例示的なモータは、シャフトと、ロータと、ステータと、ハウジングと、除電装置と、を備える。前記シャフトは、水平方向と平行な回転軸に沿って軸方向に延びる。前記ロータは、前記シャフトに支持されて前記シャフトとともに回転可能である。前記ステータは、前記ロータよりも径方向外方に配置される。前記ハウジングは、前記ロータ及び前記ステータを収容する。前記除電装置は、前記シャフトの径方向外側面に接する導電部材を有する。前記導電部材は、前記シャフトの径方向外側面のうち、軸方向から見て鉛直上方、鉛直斜め上方、及び水平方向のうちのいずれかを向く領域と接する。前記除電装置は、軸方向から見て、前記シャフトと前記導電部材との接触部分よりも、軸方向と垂直であって水平方向と平行な方向における一方側及び他方側と、前記接触部分よりも鉛直上方と、のうちのいずれかに配置される。前記除電装置はさらに、軸方向から見て、前記回転軸よりも前記平行な方向における一方側及び他方側と、前記回転軸よりも鉛直斜め上方と、のうちのいずれかに配置される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の例示的なモータによれば、除電装置が摩耗粉を浴びることを抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、モータの構成例を示す概念図である。
【
図2】
図2は、モータの要部の構成例を拡大して示す概念図である。
【
図3】
図3は、モータを搭載する車両の一例を示す概略図である。
【
図4】
図4は、第2シャフト及び除電装置の接触例を示す図である。
【
図5】
図5は、第2シャフト及び除電装置を軸方向から見た断面図である。
【
図7】
図7は、ハウジングの変形例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0010】
本明細書において、モータ部1の第1回転軸J1と平行な方向をモータ100の「軸方向」とする。軸方向について、
図1に示すとおり、モータ部1側を軸方向一方D1とし、動力伝達装置3側を軸方向他方D2とする。また、所定の軸と直交する径方向を単に「径方向」と称し、所定の軸を中心とする周方向を単に「周方向」と称する。さらに、本明細書において「平行な方向」は、完全に平行な場合のみでなく、略平行な方向も含む。そして、所定の方向または平面に「沿って延びる」とは、厳密に所定の方向に延びる場合に加えて、厳密な方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0011】
<1.実施形態>
図1は、モータ100の構成例を示す概念図である。
図2は、モータ100の要部の構成例を拡大して示す概念図である。
図3は、モータ100を搭載する車両300の一例を示す概略図である。なお、
図1及び
図2は、あくまで概念図であり、各部の配置および寸法は、実際のモータ100と同じであるとは限らない。また、
図2は、
図1の破線で囲まれた部分Xを拡大した図である。また、
図3は、車両300を概念的に図示している。
【0012】
モータ100は、本実施形態では
図3に示すように、ハイブリッド自動車(HV)、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、電気自動車(EV)等、少なくともモータを動力源とする車両300に搭載される。モータ100は、上記の車両300の動力源として使用される。車両300は、モータ100と、バッテリ200と、を有する。バッテリ200は、モータ100に供給するための電力を蓄積する。モータ100は、車両300の例であれば、左右の前輪を駆動する。なお、モータ100は、少なくともいずれかの車輪を駆動すればよい。
【0013】
図1に示すように、モータ100は、モータ部1と、シャフト2と、動力伝達装置3と、ハウジング4と、液循環部6と、を備える。シャフト2は、水平方向と平行な第1回転軸J1に沿って軸方向に延びる。シャフト2は、第1回転軸J1を中心として回転可能である。ハウジング4は、モータ部1、シャフト2、及び動力伝達装置3を収容する。たとえば、ハウジング4は、後述するモータ部1のロータ11、ステータ12、及び、後述するベアリング4211,4314などを収容する。
【0014】
また、モータ100は、導電部材71を有する除電装置7をさらに備える。除電装置7は、シャフト2とハウジング4とを電気的に接続する。除電装置7は、ハウジング4に固定されて、シャフト2と接する。
図2に示すように、本実施形態の除電装置7は、弾性部材72と、保持部材73と、固定部材74と、をさらに有する。
【0015】
導電部材71は、導電性を有する材料を用いて形成される。導電部材71の先端は、シャフト2の後述する第2シャフト23に接する。導電部材71は、本実施形態では成形体であるが、この例示に限定されず、ブラシ形状であってもよい。導電部材71の材料には、好ましくは摺動性の良好な材料が用いられ、さらに好ましくは摩擦係数の低い材料が用いられる。導電部材71の材料には、たとえば、炭素繊維、金属などの導電性フィラーを含む複合樹脂などを採用できる。
【0016】
弾性部材72は、圧縮された状態で保持部材73の内部に収容される。その弾性により、弾性部材72は、シャフト2の第2シャフト23に向かって導電部材71を押す。前述の如く、除電装置7は、弾性部材72を有する。なお、第2シャフト23は、本発明の「シャフト」の一例である。弾性部材72は、本実施形態ではスプリングコイルが用いられるが、この例示に限定されず、板バネ、ゴムなどの他の形態の部材が用いられてもよい。弾性部材72が導電部材71をシャフト2の第2シャフト23に向けて押すことにより、回転する第2シャフト23との摺動により導電部材71が摩耗しても、導電部材71は第2シャフト23との接触を維持できる。つまり、導電部材71と第2シャフト23との電気的な接続を維持できる。
【0017】
保持部材73は、有底筒状であり、導電部材71の一部及び弾性部材72を内部に収容する。前述の如く、除電装置7は、保持部材73を有する。保持部材73は、導電部材71を保持する。詳細には、保持部材73は、導電部材71の弾性部材72側の端部を保持部材73が延びる方向に移動可能に保持する。また、保持部材73は、弾性部材72を保持部材73が延びる方向に伸縮可能に保持する。
【0018】
固定部材74は、除電装置7をハウジング4に固定する。本実施形態では、固定部材74は、保持部材73に取り付けられる。また、少なくとも1つの固定部材74が、後述するプレート部433に固定される(後述する
図4参照)。但し、この例示に限定されず、少なくとも1つの固定部材74が、後述するカバー部材44に固定されてもよい。つまり、固定部材74は、保持部材73をプレート部433及びカバー部材44の少なくとも一方に固定する。除電装置7は、少なくとも1つの固定部材74を有する。固定部材74による保持部材73の固定により、除電装置7をプレート部433及びカバー部材44の少なくとも一方に固定できる。
【0019】
また、固定部材74は、導電性を有し、導電部材71と電気的に接続される。固定部材74が導電性を有するプレート部433又はカバー部材44に固定されることにより、導電部材71は、ハウジング4と電気的に接続される。
【0020】
<1-1.モータ部1>
次に、
図1及び
図2を参照して、モータ部1を説明する。モータ部1は、直流のブラシレスモータである。モータ部1は、モータ100の駆動源であり、不図示のインバータからの電力によって駆動される。モータ部1は、ステータ12の内方にロータ11が回転可能に配置されたインナーロータ型である。
図1に示すように、モータ部1は、ロータ11と、ステータ12と、を有する。
【0021】
<1-1-1.ロータ11>
ロータ11は、シャフト2に支持される。モータ100は、ロータ11を備える。ロータ11は、シャフト2とともに回転可能である。詳細には、ロータ11は、後述する第1シャフト21に支持される。ロータ11は、モータ100の電源部(図示省略)からステータ12に電力が供給されることで回転する。ロータ11は、ロータコア111と、マグネット112と、を有する。ロータコア111は、たとえば、薄板状の電磁鋼板を積層して形成される。ロータコア111は、軸方向に沿って延びる円柱体であり、第1シャフト21の径方向外側面に固定される。ロータコア111には、複数のマグネット112が固定される。複数のマグネット112は、磁極を交互にして周方向に沿って並ぶ。
【0022】
また、ロータコア111は、ロータ貫通孔1111を有する。ロータ貫通孔1111は、ロータコア111を軸方向に貫通するとともに、第1シャフト貫通孔201と繋がる。ロータ貫通孔1111は、冷媒としても機能する潤滑液CLの流通経路として利用される。ロータ11が回転する際、第1シャフト21の中空部211を流通する潤滑液CLは、第1シャフト貫通孔201を経由してロータ貫通孔1111に流入できる。また、ロータ貫通孔1111に流入した潤滑液CLは、ロータ貫通孔1111の軸方向両端部から外部に流出できる。流出した潤滑液CLは、ステータ12に向かって飛び、たとえばコイル部122(特にコイルエンド1221)などを冷却する。また、流出した潤滑液CLは、第1シャフト21を回転可能に支持するベアリング4211,4314などに向かって飛び、ベアリング4211,4314を潤滑するとともに冷却する。
【0023】
<1-1-2.ステータ12>
ステータ12は、ロータ11よりも径方向外方に配置される。モータ100は、ステータ12を備える。ステータ12は、ステータコア121と、コイル部122と、を有する。ステータコア121とコイル部122との間に介在する。ステータ12は、後述する第1ハウジング筒部41に保持される。ステータコア121は、円環状のヨークの内周面から径方向内方に延びる複数の磁極歯(不図示)を有する。コイル部122は、インシュレータ(図示省略)を介して、磁極歯に導線を巻き付けることで形成される。コイル部122は、ステータコア121の軸方向端面から突出するコイルエンド1221を有する。
【0024】
<1-2.シャフト2>
シャフト2は、
図1に示すように、後述するベアリング4211,4221,4314,4611を介してハウジング4により回転可能に支持される。つまり、モータ100は、ベアリング4211,4221,4314,4611を備える。ベアリング4211,4221,4314,4611は、第1シャフト21を回転可能に支持する。
【0025】
シャフト2は、第1シャフト21を有する。前述の如くモータ100は、シャフト2を備える。第1シャフト21は、軸方向に延びる筒状である。第1シャフト21の内側には、冷媒が流れる。モータ100は、この冷媒をさらに備える。なお、冷媒は、本実施形態では潤滑液CLである。シャフト2の回転に応じて、第1シャフト21の内側を流れる冷媒を後述する第1シャフト貫通孔201を通じてステータ12及びベアリング4211,4314などに供給することができる。従って、冷媒によって、ステータ12(特にコイル部122のコイルエンド1221)及びベアリング4211,4314などを冷却できる。
【0026】
第1シャフト21は、中空部211と、シャフト筒部212と、流入口213と、を有する。シャフト筒部212は、第1回転軸J1に沿って軸方向に延びる。中空部211は、シャフト筒部212の内部に配置される。流入口213は、シャフト筒部212の軸方向他方D2側に配置され、後述するギヤ蓋部46の油路465と繋がる。流入口213を介して、後述する潤滑液CLが油路465から中空部211に流入する。
【0027】
なお、第1シャフト21は、軸方向の中間部分で分割可能であってもよい。第1シャフト21が分割可能である場合、分割された第1シャフト21は、例えば、雄ねじおよび雌ねじを用いたねじカップリングを採用することが可能である。また、圧入、溶接等の固定方法にて接合してもよい。圧入、溶接等の固定方法を採用する場合、軸方向に延びる凹部および凸部を組み合わせるセレーションを採用してもよい。このような構成とすることで、回転を確実に伝達することが可能である。
【0028】
また、シャフト2は、蓋部22と、第2シャフト23と、第1シャフト貫通孔201と、第2シャフト貫通孔202と、をさらに有する。蓋部22は、第1シャフト21の軸方向一方端部に配置される。第2シャフト23は、蓋部22から軸方向一方D1に延びる。第1シャフト貫通孔201は、第1シャフト21において径方向に貫通する。第2シャフト貫通孔202は、第1シャフト21の内部とシャフト2の外部空間とに連通する。第2シャフト貫通孔202は、第1シャフト貫通孔201よりも軸方向一方D1に配置される。第1シャフト21、蓋部22、及び第2シャフト23は、導電性を有し、本実施形態では金属製である。第2シャフト23は、除電装置7と接する。
【0029】
<1-2-1.第2シャフト23>
第2シャフト23は、第1回転軸J1に沿って軸方向に延びる。第2シャフト23の外径は、第1シャフト21の外径よりも小さい。
【0030】
第2シャフト23には、除電装置7が接する。
図4は、第2シャフト23及び除電装置7の接触例を示す図である。
図5は、第2シャフト23及び除電装置7を軸方向から見た断面図である。
図4では、第2シャフト23及び除電装置7の配置を見やすくするため、後述するカバー部材44を透明で表示する。また、
図5は、軸方向と垂直な仮想の平面で第2シャフト23、除電装置7、及びカバー部材44を切断した断面構造を示す。
図5の上下方向は、鉛直方向Dvである。鉛直方向Dvのうち、
図5の下側から上側への方向は鉛直方向Dvの上方であり、
図5の上側から下側への方向は鉛直方向Dvの下方である。
図5の左右方向は、水平方向Dhである。鉛直方向Dvは軸方向と垂直であり、水平方向Dhは軸方向及び水平方向Dhの両方と垂直である。
【0031】
図4及び
図5に示すように、除電装置7の導電部材71は、第2シャフト23の径方向外側面に接する。導電部材71は、第2シャフト23の径方向外側面のうち、水平方向Dhの一方を向く第1周方向角度位置Pa及び水平方向Dhの他方を向く第3周方向角度位置Pcよりも鉛直上方の領域に接する。つまり、導電部材71は、第2シャフト23の径方向外側面のうち、
図4の左側の第1周方向角度位置Paから第2シャフト23の鉛直上方側を回って
図4の右側の第3周方向角度位置Pcまでの180°の周方向範囲の領域と接する。
【0032】
導電部材71は、シャフト2の第2シャフト23の径方向外側面のうち、軸方向から見て鉛直方向Dvの上方、鉛直斜め上方、及び水平方向Dhのうちのいずれかを向く領域と接する。なお、軸方向から見た鉛直斜め上方は、鉛直方向Dvの上方を向く方向成分と水平方向Dhを向く方向成分とを有する方向である。つまり、導電部材71は、第2シャフト23の径方向外側面の上半分の領域と接することができる。
【0033】
言い換えると、導電部材71は、第2シャフト23の径方向外側面のうち、軸方向から見て第1周方向角度位置Paから第2周方向角度位置Pbを通って第3周方向角度位置Pcまでの180°の周方向範囲θrの領域と接する(
図5参照)。第1周方向角度位置Paは、第2シャフト23の径方向外側面において、軸方向から見て水平方向Dhの一方(たとえば
図5の右側から左側に向かう方向)を向く周方向角度位置である。第2周方向角度位置Pbは、第2シャフト23の径方向外側面において、軸方向から見て鉛直方向Dvの上方を向く周方向角度位置である。第3周方向角度位置Pcは、第2シャフト23の径方向外側面において、軸方向から見て水平方向Dhの他方(たとえば
図5の左側から右側に向かう方向)を向く周方向角度位置である。なお、周方向範囲θrは、第1周方向角度位置Pa、第2周方向角度位置Pb、第3周方向角度位置Pc、及び、軸方向から見て鉛直斜め上方を向く周方向角度位置を含む。
【0034】
なお、
図4及び
図5では、導電部材71は、軸方向から見て、第2シャフト23の外側から第1回転軸J1に向かって径方向に延びる。但し、この例示に限定されず、軸方向から見て、導電部材71が延びる方向は、第2シャフト23の外側から第1回転軸J1に向かう径方向からずれたり傾いたりしていてもよい(
図6参照)。
【0035】
また、本実施形態では、除電装置7は、軸方向から見て、第2シャフト23と導電部材71との接触部分よりも鉛直斜め上方に配置される。但し、この例示に限定されず、除電装置7は、軸方向から見て、上述の接触部分の直上に配置されてもよいし、上述の接触部分よりも水平方向Dhの一方側又は他方側に配置されてもよい。つまり、除電装置7は、軸方向から見て、シャフト2の第2シャフト23と導電部材71との接触部分よりも、軸方向と垂直であって水平方向と平行な方向における一方側及び他方側と、この接触部分よりも鉛直上方と、のうちのいずれかに配置されていればよい。
【0036】
また、本実施形態では、除電装置7はさらに、軸方向から見て、第2シャフト23の第1回転軸J1よりも鉛直斜め上方に配置される。但し、この例示に限定されず、除電装置7は、軸方向から見て、第1回転軸J1よりも水平方向Dhの一方側又は他方側に配置されてもよい。つまり、除電装置7はさらに、軸方向から見て、第1回転軸J1よりも上述の平行な方向(つまり水平方向Dh)における一方側及び他方側と、第1回転軸J1よりも鉛直斜め上方とのうちのいずれかに配置されていればよい。
【0037】
導電部材71が第2シャフト23の径方向外側面の上半分と接するとともに両者の接触部分に対して除電装置7が上述のように配置されることにより、第2シャフト23と導電部材71との接触部分で発生する導電部材71の摩耗粉が導電部材71自身に掛かり難くなる。また、第1回転軸J1に対して除電装置7が上述のように配置されることにより、除電装置7の導電部材71以外の部分に摩耗粉が掛かり難くなる。従って、除電装置7が導電部材71の摩耗粉を浴びることを抑制又は防止することができ、摩耗粉を第2シャフト23よりも鉛直下方に落とし易くなる。
【0038】
<1-2-2.第1シャフト貫通孔201>
また、第1シャフト貫通孔201は、シャフト筒部212に配置され、シャフト筒部212を径方向に貫通する。シャフト2が回転する際、第1シャフト21内の潤滑液CLは遠心力によって、第1シャフト貫通孔201を通じて中空部211から第1シャフト21の外部に流出する。本実施形態では
図1に示すように、第1シャフト貫通孔201は、ロータ11の軸方向一方端部よりも軸方向他方D2、且つ、ロータ11の軸方向他方端部よりも軸方向一方D1に配置され、前述の如くロータ貫通孔1111と繋がる。
【0039】
但し、
図1の例示に限定されず、第1シャフト貫通孔201は、ロータ11の軸方向一方端部よりも軸方向一方D1に配置されてもよいし、ロータ11の軸方向他方端部よりも軸方向他方D2に配置されてもよい。つまり、少なくとも一部の第1シャフト貫通孔201は、これらのうちの少なくともいずれかの位置に配置されてもよい。
【0040】
<1-2-3.第2シャフト貫通孔202>
第2シャフト貫通孔202は、蓋部22及びシャフト筒部212のうちの少なくともどちらかに配置される。本実施形態では、第2シャフト貫通孔202は、蓋部22に配置され、蓋部22を軸方向に貫通する(たとえば
図2参照)。こうすれば、第2シャフト貫通孔202が第1シャフト21に配置される場合よりも、第1シャフト21の内部に空気を吸い込み易くなる。また、吸気口として機能する第2シャフト貫通孔202を複数にすれば、第2シャフト貫通孔202の数、配置に応じて第1シャフト21内への吸気量、吸気された気流の流れを適切に調節することができる。但し、上述の例示に限定されず、第2シャフト貫通孔202は、第1シャフト21に配置され、第1シャフト21を径方向に貫通してもよい。
【0041】
また、第2シャフト貫通孔202の数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。後者の場合、第2シャフト貫通孔202は、周方向において等間隔又は異なる間隔で配置できる。
【0042】
<1-2-4.蓋部22>
蓋部22は、本実施形態では
図2に示すように、第1回転軸J1から径方向に広がる板状である。但し、この例示に限定されず、蓋部22の形状は、板状以外の形状であってもよく、たとえば、軸方向一方D1又は軸方向他方D2に向かうにつれて径方向外方に広がる円錐形状であってよい。
【0043】
<1-3.動力伝達装置3>
次に、
図1を参照して、動力伝達装置3の詳細を説明する。動力伝達装置3は、モータ部1の動力を出力シャフトDsに伝達する。動力伝達装置3は、減速装置31と、差動装置32と、を有する。
【0044】
<1-3-1.減速装置31>
減速装置31は、シャフト2に接続される。減速装置31は、モータ部1の回転速度を減じて、モータ部1から出力されるトルクを減速比に応じて増大させる機能を有する。減速装置31は、モータ部1から出力されるトルクを出力シャフトDsへ伝達する。すなわち、動力伝達装置3は、水平方向に沿って延びる第1回転軸J1を中心として回転するシャフト2の軸方向他方D2側に接続される。
【0045】
減速装置31は、メインドライブギヤ311と、中間ドリブンギヤ312と、ファイナルドライブギヤ313と、中間シャフト314と、を有する。モータ部1から出力されるトルクは、シャフト2、メインドライブギヤ311、中間ドリブンギヤ312、中間シャフト314およびファイナルドライブギヤ313を介して出力シャフトDsのリングギヤ321へ伝達される。
【0046】
メインドライブギヤ311は、シャフト2の外周面に配置される。メインドライブギヤ311は、シャフト2と同一の部材であってもよいし、別の部材であって強固に固定されてもよい。メインドライブギヤ311は、シャフト2とともに、第1回転軸J1を中心に回転する。
【0047】
中間シャフト314は、第1回転軸J1と平行な第2回転軸J2に沿って延びる。中間シャフト314の両端は、第1中間ベアリング4231および第2中間ベアリング4621により,第2回転軸J2を中心として回転可能に支持される。中間ドリブンギヤ312およびファイナルドライブギヤ313は、中間シャフト314の外周面に配置される。中間ドリブンギヤ312は、中間シャフト314と同一の部材であってもよいし、別の部材であって強固に固定されてもよい。
【0048】
中間ドリブンギヤ312及びファイナルドライブギヤ313とは、中間シャフト314と一体的に、第2回転軸J2を中心として回転する。中間ドリブンギヤ312は、メインドライブギヤ311に噛み合う。ファイナルドライブギヤ313は、出力シャフトDsのリングギヤ321と噛み合う。
【0049】
シャフト2のトルクは、メインドライブギヤ311から中間ドリブンギヤ312に伝達される。そして、中間ドリブンギヤ312に伝達されたトルクは、中間シャフト314を介してファイナルドライブギヤ313に伝達される。さらに、ファイナルドライブギヤ313から、出力シャフトDsにトルクが伝達される。
【0050】
<1-3-2.差動装置32>
差動装置32は、出力シャフトDsに取り付けられる。差動装置32は、リングギヤ321を有する。リングギヤ321は、モータ部1の出力トルクを出力シャフトDsに伝達する。出力シャフトDsは、差動装置32の左右にそれぞれ取り付けられる車軸Ds1,Ds2を有する。差動装置32は、たとえば、車両の旋回時に、左右の車軸の回転速度差を吸収しつつ、左右の車軸Ds1,Ds2にトルクを伝える。
【0051】
リングギヤ321の下端部は、ギヤ部収容空間402の下部に貯留された潤滑油CLなどが溜まる後述の液貯留部Pの内部に配置される(
図1参照)。そのため、第1ギヤ331が回転するとき、リングギヤ321のギヤ歯によって潤滑液CLが掻き上げられる。リングギヤ321にて掻き上げられた潤滑液CLによって、動力伝達装置3の各ギヤ、ベアリングが潤滑または冷却される。また、掻き上げられた潤滑液CLの一部は、後述の受け皿部464に貯められて、シャフト2を介してモータ部1の冷却にも利用される。
【0052】
<1-4.ハウジング4>
次に、
図1及び
図2を参照して、ハウジング4の詳細を説明する。ハウジング4は、第1ハウジング筒部41と、側板部42と、モータ蓋部43と、カバー部材44と、第2ハウジング筒部45と、ギヤ蓋部46と、を有する。なお、第1ハウジング筒部41、側板部42、モータ蓋部43、第2ハウジング筒部45、及びギヤ蓋部46は、たとえば、導電材料を用いて形成され、本実施形態では鉄、アルミ、これらの合金などの金属材料を用いて形成される。また、接触部分での異種金属接触腐食を抑制するため、これらは、好ましくは同一の材料を用いて形成される。但し、この例示に限定されず、これらは金属材料以外を用いて形成されてもよいし、これらのうちの少なくとも一部は異なる材料を用いて形成されてもよい。
【0053】
また、ハウジング4は、前述の如く、モータ部1のロータ11、ステータ12、及び、ベアリング4211,4314などを収容する。詳細には、ハウジング4は、モータ収容空間401を有する。モータ収容空間401は、第1ハウジング筒部41、側板部42、及びモータ蓋部43で囲まれた空間であり、ロータ11、ステータ12、及び、ベアリング4211,4314などを収容する。
【0054】
また、ハウジング4は、動力伝達装置3を収容する。詳細には、ハウジング4は、ギヤ部収容空間402を有する。ギヤ部収容空間402は、側板部42、第2ハウジング筒部45、及びギヤ蓋部46で囲まれた空間であり、減速装置31及び差動装置32などを収容する。
【0055】
ギヤ部収容空間402内の下部には、潤滑液CLが溜る液貯留部Pが配置される。液貯留部Pには、差動装置32の一部が浸かる。液貯留部Pに溜る潤滑液CLは、差動装置32の動作によって掻きあげられて、ギヤ部収容空間402の内部に供給される。たとえば、潤滑液CLは、差動装置32のリングギヤ321が回転するときに、リングギヤ321の歯面によって掻きあげられる。掻きあげられた潤滑液CLの一部は、ギヤ部収容空間402内の減速装置31及び差動装置32の各ギヤ及び各ベアリングに供給され、潤滑に利用される。また、掻きあげられた潤滑液CLの他の一部は、シャフト2の内部に供給され、モータ部1のロータ11及びステータ12、ギヤ部収容空間402内の各ベアリングに供給されて、冷却・潤滑に利用される。
【0056】
<1-4-1.第1ハウジング筒部41>
第1ハウジング筒部41は、軸方向に延びる筒状である。第1ハウジング筒部41の内側には、モータ部1、後述するモータオイルリザーバ64などが配置される。また、第1ハウジング筒部41の内側面には、ステータコア121が固定される。
【0057】
<1-4-2.側板部42>
側板部42は、第1回転軸J1と垂直な方向に広がり、第1ハウジング筒部41の軸方向他方端部を覆う。本実施形態は、第1ハウジング筒部41及び側板部42は、単一の部材のそれぞれ異なる一部である。両者を一体に形成することで、これらの剛性を高めることができる。但し、この例示に限定されず、第1ハウジング筒部41及び側板部42は、別部材であってもよい。
【0058】
側板部42は、シャフト2が挿通される側板貫通孔4201と、第1出力シャフト貫通孔4202と、を有する。側板貫通孔4201及び第1出力シャフト貫通孔4202は、側板部42を軸方向に貫通する。側板貫通孔4201には、第1シャフト21が挿通される。第1出力シャフト貫通孔4202には、出力シャフトDsの一方の車軸Ds1が挿通される。出力シャフトDsと第1出力シャフト貫通孔4202との隙間には、両者間をシールするオイルシール(不図示)が配置される。なお、シールとは、異なる部材同士がたとえば部材内部の潤滑液CLが外部に漏れない程度、及び外部の水、埃、塵等の異物が進入しない程度に密着していることを指す。シールについては、以下同様とする。
【0059】
また、側板部42は、ベアリング保持部421,422,423,424をさらに有する。ベアリング保持部421は、モータ収容空間401において、側板部42の軸方向一方端面に配置され、ベアリング4211を保持する。ベアリング保持部422,423,424は、後述するギヤ部収容空間402において、側板部42の軸方向他方端面に配置される。ベアリング保持部422は、側板貫通孔4201の軸方向他方端部の外縁部に沿って配置され、ベアリング4211を保持する。ベアリング保持部423は、第1中間ベアリング4231を保持する。ベアリング保持部424は、第1出力シャフト貫通孔4202の軸方向他方端部の外縁部に沿って配置され、第1出力ベアリング4241を保持する。
【0060】
<1-4-3.モータ蓋部43>
モータ蓋部43は、第1ハウジング筒部41の軸方向一方端部に取り付けられる。モータ蓋部43の第1ハウジング筒部41への固定は、たとえば、ねじによる固定を挙げることができるが、これに限定されず、ねじ込み、圧入等、プレート部433を第1ハウジング筒部41に強固に固定できる方法を広く採用できる。これにより、モータ蓋部43は、第1ハウジング筒部41の軸方向一方端部に密着できる。なお、密着とは、部材内部の潤滑液CLが外部に漏れない程度、及び外部の水、埃、塵等の異物が進入しない程度の密閉性を有していることを指す。密着については、以下同様とする。
【0061】
図2に示すように、モータ蓋部43は、蓋部431と、筒部432と、プレート部433と、ベアリング保持部434と、を有する。言い換えると、ハウジング4は、蓋部431、筒部432、及びプレート部433を有する。
【0062】
<1-4-3-1.蓋部431>
蓋部431は、第1回転軸J1と交差する方向に広がり、第1ハウジング筒部41の軸方向一方端部を覆う。蓋部431は、シャフト2が挿通される開口部4311を有する。開口部4311は、蓋部431を軸方向に貫通する。開口部4311には、第1シャフト21が挿通される。また、蓋部431は、ベアリング保持部4312と、シール部材4313と、をさらに有する。ベアリング保持部4312は、モータ収容空間401において、蓋部431の軸方向他方端面に配置される。ベアリング保持部4312は、開口部4311の軸方向他方端部の外縁部に沿って配置され、ベアリング4314を保持する。シール部材4313は、開口部4311において第1シャフト21と蓋部431との間に配置され、両者間をシールする。開口部4311をシール部材4313でシールすることにより、たとえば除電装置7で発生する摩耗粉などの異物が、開口部4311を通じて、ステータ12などが収容されたモータ収容空間401に摩耗粉が進入することを防止できる。
【0063】
<1-4-3-2.筒部432>
筒部432は、第1回転軸J1を囲む筒状であり、蓋部431の軸方向一方端面から軸方向一方D1に延びる。
【0064】
<1-4-3-3.プレート部433>
プレート部433は、第1回転軸J1と交差する方向に広がり、筒部432の軸方向他方端部に取り付けられる。前述の如く、ハウジング4は、プレート部433を有する。本実施形態では、プレート部433は、導電性を有して、径方向に広がる。プレート部433は、ステータ12及び後述するベアリング4341よりも軸方向一方D1に配置される。プレート部433には、シャフト2の第2シャフト23が挿通される開口部4331が配置される。言い換えると、プレート部433は、開口部4331を有する。開口部4331は、プレート部433を軸方向に貫通する。また、プレート部433の軸方向一方端部には、除電装置7が配置される。
【0065】
また、プレート部433は、軸方向に突出する固定部4332をさらに有する。固定部4332は、プレート部433から軸方向一方D1に突出する。固定部4332には、除電装置7の固定部材74が固定される。
【0066】
また、プレート部433は、軸方向に突出するリブ4333をさらに有する。リブ4333は、プレート部433のうちの除電装置7の固定部材74が固定された固定部分から離れる方向に延びる。たとえば、本実施形態では
図4に示すように、複数のリブ4333が、プレート部433から軸方向一方D1に突出する。各々の固定部4332に対して、複数のリブ4333が、固定部4332から放射状に延びる。また、各々のリブ4333の固定部4332側の端部は、固定部4332の外側面と接続される。ここで、
図4では、1個の固定部4332に対して、3個のリブ4333が配置される。但し、各々の固定部4332に対するリブ4333の数は、この例示に限定されず、単数であってもよいし、3以外の複数であってもよい。リブ4333の配置により、プレート部433のうちの除電装置7の固定部材74が固定される固定部分を補強できる。さらに、回転するシャフト2との摺動による除電装置7の振動によってプレート部433が軸方向に振動することを抑制できる。
【0067】
なお、除電装置7の少なくとも一部の固定部材74がカバー部材44に固定される場合、この固定部材74に対する固定部4332及びリブ4333は、カバー部材44に配置されてもよい。こうすれば、リブ4333の配置により、カバー部材44のうちの除電装置7の固定部材74が固定される固定部分を補強できる。さらに、回転するシャフト2との摺動による除電装置7の振動によってカバー部材44が軸方向に振動することを抑制できる。
【0068】
<1-4-3-4.ベアリング保持部434>
ベアリング保持部434は、プレート部433の軸方向他方端面において開口部4331の軸方向一方端部の外縁部に沿って配置され、ベアリング4341を保持する。
【0069】
<1-4-3-5.シール部材435>
シール部材435は、プレート部433の開口部4331に配置される。モータ100は、環状のシール部材435を備える。シール部材435は、開口部4331において第2シャフト23とプレート部433との間に配置され、両者間をシールする。プレート部433の開口部4331の外縁部に沿う径方向内端部は、シール部材435を介してシャフト2の第2シャフト23の径方向外側面に接する。シール部材435の径方向外端部は、開口部4331の径方向内方を向く内周面に接する。シール部材435の径方向内端部は、第2シャフト23の径方向外側面に接する。開口部4331をシール部材435でシールすることにより、プレート部433の軸方向一方端面に配置に配置された除電装置7から発生する摩耗粉が開口部4331を通じてプレート部433よりも軸方向他方側に進入することを防止できる。従って、ステータ12などが収容されたハウジング4の内部に摩耗粉が進入することを防止できる。たとえば、摩耗粉が、第2シャフト貫通孔202を介して第1シャフト21の中空部211内に進入することも防止できる。そのため、摩耗粉が、中空部211内の潤滑液CLの流れに乗って、モータ収容空間401内に進入することを防止できる。
【0070】
<1-4-4.カバー部材44>
カバー部材44は、プレート部433の軸方向一方端面に配置される。前述の如く、ハウジング4は、カバー部材44を有する。カバー部材44は、開口部4331及び除電装置7を覆う。つまり、除電装置7は、プレート部433とカバー部材44とで囲まれた収容空間440に収容される。シャフト2の第2シャフト23と導電部材71との接触部分で発生する導電部材71の摩耗粉を収容空間440内に収容することができる。従って、摩耗粉が収容空間440の外部に飛散することを防止できる。
【0071】
また、収容空間440は、所定の広さの下部空間4401を含む。下部空間4401は、プレート部433の開口部4331よりも鉛直下方に配置される。こうすれば、第2シャフト23と除電装置7との接触部分で発生した摩耗粉を下部空間4401に溜めることができる。下部空間4401を十分な広さにすることで、収容空間440の下部に溜まった摩耗粉が開口部4331における第2シャフト23及びプレート部433間に溢れることを防止できる。
【0072】
カバー部材44のプレート部433への取付は、たとえば、ねじ止めを挙げることができるが、これに限定されない。本実施形態では、カバー部材44は、プレート部433とともに収容空間440を形成する。収容空間440は、カバー部材44及びプレート部433で囲まれた空間であり、開口部4331及び除電装置7を収容する。
【0073】
カバー部材44は、第1カバー部441と、第2カバー部442と、を有する。第1カバー部441は、除電装置7を覆う。第2カバー部442は、第1カバー部441よりも径方向外方に配置される。詳細には、第1カバー部441及び第2カバー部442は、第1回転軸J1と交差する方向に広がる。第1カバー部441は、開口部4331及び除電装置7よりも軸方向一方D1に配置される。また、第2カバー部442は、第1カバー部441よりも軸方向他方D2に配置される。第2カバー部442の径方向内端部は第1カバー部441の径方向外端部に接続され、第2カバー部442の径方向外端部はプレート部433の軸方向一方端面に接続される。下部空間4401は、プレート部433と第2カバー部442との間に配置される。こうすれば、第2カバー部442が第1カバー部441よりも軸方向他方D2に配置されるので、軸方向においてハウジング4を省スペース化できる。また、プレート部433と第2カバー部442との間の空間の一部を摩耗粉が溜まる下部空間4401として利用できる。
【0074】
また、カバー部材44は、貫通孔443と、筒部444と、フィルタ445と、を有する。貫通孔443は、収容空間440とその外部とを繋ぐ。貫通孔443は、
図1では第1カバー部441に配置される。但し、貫通孔443の配置は、
図1の例示に限定されない。貫通孔443は、第1カバー部441及び第2カバー部442の少なくとも一方に配置できる。筒部444は、貫通孔443の外縁部から軸方向に延びる。筒部444の内部は、貫通孔443に繋がる。フィルタ445は、筒部444の先端に取り付けられる。収容空間440は、貫通孔443及びフィルタ445を介して外部と繋がる。
【0075】
<1-4-5.第2ハウジング筒部45>
第2ハウジング筒部45は、軸方向に延びる筒状である。第2ハウジング筒部45の内側には、動力伝達装置3が配置される。第2ハウジング筒部45の軸方向一方端部は、側板部42に接続され、側板部42で覆われる。
【0076】
<1-4-6.ギヤ蓋部46>
ギヤ蓋部46は、第1回転軸J1と交差する方向に広がり、第2ハウジング筒部45の軸方向一方端部に着脱可能に取り付けられる。本実施形態は、第2ハウジング筒部45及びギヤ蓋部46は、単一の部材のそれぞれ異なる一部である。但し、この例示に限定されず、第2ハウジング筒部45及びギヤ蓋部46は、別部材であってもよい。また、第2ハウジング筒部45へのギヤ蓋部46の取り付けは、たとえば、ねじによる固定を挙げることができるが、これに限定されず、ねじ込み、圧入等、ギヤ蓋部46を第2ハウジング筒部45に強固に固定できる方法を広く採用できる。これにより、ギヤ蓋部46は、第2ハウジング筒部45の軸方向一方端部に密着できる。
【0077】
ギヤ蓋部46は、第2出力シャフト貫通孔460を有する。第2出力シャフト貫通孔460の中央は、第3回転軸J3と一致する。第2出力シャフト貫通孔460には、出力シャフトDsが挿通される。他方の出力シャフトDsと第2出力シャフト貫通孔460との隙間には、オイルシール(不図示)が配置される。
【0078】
また、ギヤ蓋部46は、ベアリング保持部461,462,463をさらに有する。ベアリング保持部461,462,463は、ギヤ部収容空間402において、ギヤ蓋部46の軸方向他方端面に配置される。ベアリング保持部461は、ベアリング4611を保持する。ベアリング保持部462は、第2中間ベアリング4621を保持する。ベアリング保持部463は、第2出力シャフト貫通孔460の軸方向他方端部の外縁部に沿って配置され、第2出力ベアリング4631を保持する。
【0079】
また、ギヤ蓋部46は、受け皿部464と、油路465と、を有する。受け皿部464は、ギヤ蓋部46の軸方向一方端面に配置され、鉛直下方に凹む凹部を有する。受け皿部464には、リングギヤ321によって掻き上げられた潤滑液CLを貯めることができる。油路465は、潤滑液CLの通路であり、受け皿部464とシャフト2の流入口213とを繋ぐ。受け皿部464に貯まった潤滑液CLは、油路465に供給され、シャフト2の軸方向他方端部の流入口213から中空部211に流入する。
【0080】
<1-4-7.ハウジング4の変形例>
次に、
図7を参照して、ハウジング4の変形例を説明する。
図7は、ハウジング4の変形例を示す概略図である。なお、
図7は、あくまで概念図であり、各部の配置および寸法は、実際のモータ100と同じであるとは限らない。また、
図7は、
図2の破線で囲まれた部分Yに対応する。
【0081】
図7に示すように、ハウジング4は、粘着性を有する粘着部材47をさらに有してもよい。本実施形態では、粘着部材47は、シート状であり、収容空間440内においてプレート部433の軸方向一方端面及びカバー部材44の軸方向他方D2側の面に張り付けられる。但し、この例示に限定されず、粘着部材47は、収容空間440内においてプレート部433の軸方向一方端面及びカバー部材44の軸方向他方D2側の面のうちの一方の面に張り付けられてもよい。つまり、粘着部材47は、プレート部433及びカバー部材44間において、プレート部433及びカバー部材44の少なくとも一方に配置されればよい。また、好ましくは、粘着部材47は、少なくとも下部空間4401内に配置される。こうすれば、摩耗粉を粘着部材47に付着させることにより、プレート部433及びカバー部材44間の収容空間440内で摩耗粉が浮遊することを抑制又は防止できる。従って、除電装置7が浮遊した摩耗粉を浴びることを抑制又は防止することができる。なお、
図7の例示は、粘着部材47が収容空間440内に配置されない構成を排除しない。
【0082】
<1-5.液循環部6>
次に、液循環部6を説明する。液循環部6は、配管部61と、ポンプ62と、オイルクーラ63と、モータオイルリザーバ64と、を有する。
【0083】
配管部61は、ポンプ62と第1ハウジング筒部41の内部に配置されたモータオイルリザーバ64とを繋ぎ、モータオイルリザーバ64に潤滑液CLを供給する。ポンプ62は、ギヤ部収容空間402の下部領域に貯留される潤滑液CLを吸い込む。ポンプ62は、電動ポンプであるが、これに限定されない。たとえば、モータ100のシャフト2の動力の一部を利用して駆動する構成であってもよい。
【0084】
オイルクーラ63は、配管部61のポンプ62とモータオイルリザーバ64との間に配置される。つまり、ポンプ62で吸引された潤滑液CLは、配管部61を介してオイルクーラ63を通過した後、モータオイルリザーバ64に送られる。オイルクーラ63には、たとえば、外部から供給される水等の冷媒が供給される。オイルクーラ63は、冷媒と潤滑液CLとの間で熱交換して、潤滑液CLの温度を下げる。
【0085】
モータオイルリザーバ64は、モータ収容空間401の内部においてステータ12よりも鉛直上方に配置されたトレイである。モータオイルリザーバ64の底部には、滴下孔が形成されており、滴下孔から潤滑液CLを滴下することで、モータ部1を冷却する。滴下孔は、例えば、ステータ12のコイル部122のコイルエンド1221の上部に形成され、コイル部122が潤滑液CLによって冷却される。
【0086】
<2.その他>
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾が生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明は、シャフトを接地する装置に有用である。
【符号の説明】
【0088】
100・・・モータ、200・・・バッテリ、300・・・車両、1・・・モータ部、11・・・ロータ、111・・・ロータコア、1111・・・ロータ貫通孔、112・・・マグネット、12・・・ステータ、121・・・ステータコア、122・・・コイル部、1221・・・コイルエンド、2・・・シャフト、201・・・第1シャフト貫通孔、202・・・第2シャフト貫通孔、21・・・第1シャフト、211・・・中空部、212・・・シャフト筒部、213・・・流入口、22・・・蓋部、23・・・第2シャフト、3・・・動力伝達装置、31・・・減速装置、311・・・メインドライブギヤ、312・・・中間ドリブンギヤ、313・・・ファイナルドライブギヤ、314・・・中間シャフト、32・・・差動装置、321・・・リングギヤ、4・・・ハウジング、401・・・モータ収容空間、402・・・ギヤ部収容空間、41・・・第1ハウジング筒部、42・・・側板部、4201・・・側板貫通孔、4202・・・第1出力シャフト貫通孔、421,422,423,424・・・ベアリング保持部、4211・・・ベアリング、4221・・・ベアリング、4231・・・第1中間ベアリング、4241・・・第1出力ベアリング、43・・・モータ蓋部、431・・・蓋部、4311・・・開口部、4312・・・ベアリング保持部、4313・・・シール部材、4314・・・ベアリング、432・・・筒部、433・・・プレート部、4331・・・開口部、4332・・・固定部、4333・・・リブ、434・・・ベアリング保持部、4341・・・ベアリング、435・・・シール部材、44・・・カバー部材、440・・・収容空間、4401・・・下部空間、441・・・第1カバー部、442・・・第2カバー部、443・・・貫通孔、444・・・筒部、445・・・フィルタ、45・・・第2ハウジング筒部、46・・・ギヤ蓋部、460・・・第2出力シャフト貫通孔、461,462,463・・・ベアリング保持部、4611・・・ベアリング、4621・・・第2中間ベアリング、4631・・・第2出力ベアリング、464・・・受け皿部、465・・・油路、6・・・液循環部、47・・・粘着部材、61・・・配管部、62・・・ポンプ、63・・・オイルクーラ、64・・・モータオイルリザーバ、7・・・除電装置、71・・・導電部材、72・・・弾性部材、73・・・保持部材、74・・・固定部材、CL・・・潤滑液、P・・・液貯留部、Ds・・・出力シャフト、J1・・・第1回転軸、J2・・・第2回転軸、J3・・・第3回転軸