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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】弾性クローラの走行試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/03 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01M17/03
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021029442
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130816
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横尾 勝昭
(72)【発明者】
【氏名】福本 徹
(72)【発明者】
【氏名】鳶野 義之
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 寛之
(72)【発明者】
【氏名】林 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】北埜 智広
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-003349(JP,A)
【文献】特開昭53-104901(JP,A)
【文献】特開2009-287946(JP,A)
【文献】特開2019-070588(JP,A)
【文献】特開2018-017566(JP,A)
【文献】実開昭61-089139(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0225779(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D41/00-67/00
G01M17/00-17/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪、従動輪、及び転動輪を有し弾性クローラが巻き掛けられるクローラ装着部、並びに前記駆動輪を駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記転動輪は、前記弾性クローラの内周面に接触する突起を有し、
前記突起は、頂面と、前記頂面に隣接する側壁と、前記頂面と前記側壁との境界に位置する角部と、を有し、
前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が鈍角である、弾性クローラの走行試験装置。
【請求項2】
前記突起の前記頂面は、長方形状であり、
前記頂面の長辺における前記角部が、前記回転方向の先方側に位置する、請求項1に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項3】
前記突起の前記頂面は、長方形状であり、
前記頂面の短辺における前記角部が、前記回転方向の先方側に位置する、請求項1又は2に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項4】
前記転動輪は、前記回転方向の先方側に位置する角部が互いに異なる向きに配置された、複数の前記突起を有している、請求項1~3のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項5】
前記複数の突起は、前記回転方向の先方側に位置する角部が前記転動輪の幅方向に沿って配置された突起と、前記回転方向の先方側に位置する角部が前記転動輪の幅方向に対して傾斜して配置された突起とを含む、請求項4に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項6】
前記転動輪は、互いに異なる幅方向の位置に配置された複数の前記突起を有している、請求項1~5のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項7】
前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が、90°超135°以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項8】
前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が、95°以上130°以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載の弾性クローラの走行試験装置。
【請求項9】
駆動輪、従動輪、及び転動輪を有し弾性クローラが巻き掛けられるクローラ装着部、並びに前記駆動輪を駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記転動輪は、前記弾性クローラの内周面に接触する突起を有し、
前記突起は、頂面と、前記頂面に隣接する側壁と、前記頂面と前記側壁との境界に位置する角部と、を有し、
前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が90°以上130°以下である、弾性クローラの走行試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性クローラの走行試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンバイン等の農用機械やバックホー等の建設機械には、軟弱地や凹凸の激しい場所でも好適に走行可能な弾性クローラを備えた走行装置が適用されている。この弾性クローラは、ゴム等の弾性材料により無端帯状に形成されたクローラ本体と、このクローラ本体の周方向に間隔をあけて埋設された芯金等を備えており、走行装置における駆動輪、従動輪、転動輪等に巻き掛けられて使用される。
【0003】
このような弾性クローラにおいては、長期使用による損傷及び摩耗の有無や芯金と弾性材料との剥離の有無等を評価するために、当該弾性クローラを実際の車両に装着した状態で耐久試験が行われることがある。しかし、このような実車による耐久試験は、広い試験場が必要である。また、この耐久試験は、試験中の旋回動作の頻度や旋回時の左右弾性クローラの周速差の影響を受けるので、再現性に乏しいという実状がある。
【0004】
一方、下記特許文献1には、試験対象となる弾性クローラを台車に装着してコンベア状の仮想路面上で走行させる台上走行試験装置が開示されている。この台上走行試験装置を用いれば、広い試験場が不要となり、再現性もある程度は改善される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭53-2801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の台上走行試験装置では、単に仮想路面上で弾性クローラが走行するだけであるので、実車走行でしか生じ得ない損傷、例えば、弾性クローラと転動輪との間の石等の異物の噛み込みに起因する弾性クローラの虫食い状の損傷(チップカットともいう)を考慮した耐久試験を行うことができない。このような虫食い状の損傷は、土砂の侵入によってクローラ本体と芯金との剥離に発展する可能性が高いため、耐久性評価(例えば相対比較や合否判定など)の信頼性を高めるために考慮することが望ましい。
【0007】
本発明は、弾性クローラと転動輪との間の異物の噛み込みを想定した耐久試験を行うことができる走行試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明における弾性クローラの走行試験装置は、
駆動輪、従動輪、及び転動輪を有し弾性クローラが巻き掛けられるクローラ装着部、並びに前記駆動輪を駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記転動輪は、前記弾性クローラの内周面に接触する突起を有し、
前記突起は、頂面と、前記頂面に隣接する側壁と、前記頂面と前記側壁との境界に位置する角部と、を有し、
前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が鈍角である。
【0009】
上記構成を有する走行試験装置によれば、台車に装着された弾性クローラを回送駆動することによって、路面コンベアの仮想路面上で弾性クローラを走行させることができる。転動輪は、外周面に突起を有しており、転動輪の回転方向の先方側に位置する突起の角部の角度が鈍角であるので、転動輪と弾性クローラとの間に石や砂等の異物が噛み込むことによって発生する虫食い状の損傷を再現した耐久試験を行うことができる。
【0010】
(2)好ましくは、前記突起の前記頂面は、長方形状であり、
前記頂面の長辺における前記角部が、前記回転方向の先方側に位置する。
【0011】
(3)前記突起の前記頂面は、長方形状であり、
前記頂面の短辺における前記角部が、前記回転方向の先方側に位置していてもよい。
【0012】
(4)好ましくは、前記転動輪は、前記回転方向の先方側に位置する角部が互いに異なる向きに配置された、複数の前記突起を有している。
このような構成によって、弾性クローラの内周面にランダムに損傷を与えることができる。
【0013】
(5)好ましくは、前記複数の突起が、前記回転方向の先方側に位置する角部が前記転動輪の幅方向に沿って配置された突起と、前記回転方向の先方側に位置する角部が前記転動輪の幅方向に対して傾斜して配置された突起とを含む。
【0014】
(6)好ましくは、前記転動輪は、互いに異なる幅方向の位置に配置された複数の前記突起を有している。
このような構成によって、弾性クローラの内周面にランダムに損傷を与えることができる。
【0015】
(7)好ましくは、前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が、90°超135°以下である。
【0016】
(8)より好ましくは、前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が、95°以上130°以下である。
【0017】
(9) 本開示の他の観点に係る弾性クローラの走行試験装置は、
駆動輪、従動輪、及び転動輪を有し弾性クローラが巻き掛けられるクローラ装着部、並びに前記駆動輪を駆動する駆動部を有する台車と、
前記台車に装着された弾性クローラを走行させる仮想路面が外周に設けられた路面コンベアを有する台車支持装置と、を備え、
前記転動輪は、前記弾性クローラの内周面に接触する突起を有し、
前記突起は、頂面と、前記頂面に隣接する側壁と、前記頂面と前記側壁との境界に位置する角部と、を有し、
前記転動輪の回転方向の先方側に位置する前記角部の角度が90°以上130°以下である、弾性クローラの走行試験装置。
【0018】
上記構成を有する走行試験装置によれば、台車に装着された弾性クローラを回送駆動することによって、路面コンベアの仮想路面上で弾性クローラを走行させることができる。転動輪は、外周面に突起を有しており、転動輪の回転方向の先方側に位置する突起の角部の角度が90°以上130°以下であるので、当該角部の角度が鋭角である場合よりも、転動輪と弾性クローラとの間に石や砂等の異物が噛み込むことによって発生する虫食い状の損傷を再現した耐久試験を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の走行試験装置によれば、弾性クローラと転動輪との間の砕石等の噛み込みを想定した耐久試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性クローラの走行試験装置を示す概略的な側面図である。
図2】走行試験装置の台車を示す概略的な平面図である。
図3】台車の転動輪を示す正面図である。
図4】台車の転動輪を示す側面図である。
図5】走行試験装置の台車支持装置を示す概略的な平面図である。
図6】転動輪の突起を示す斜視図である。
図7】突起の平面図である。
図8図7のA矢視図である。
図9図7のB矢視図である。
図10】転動輪の外周面の展開図である。
図11A】本発明の突起が弾性クローラの内周面に接触する状態を示す説明図である。
図11B】比較例に係る突起が弾性クローラの内周面に接触する状態を示す説明図である。
図12】第2の実施形態における転動輪の外周面の展開図である。
図13】第3の実施形態における転動輪の外周面の展開図である。
図14】突起の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る弾性クローラの走行試験装置を示す概略的な側面図である。
この走行試験装置10は、無端帯状に形成された弾性クローラCを装着し、この弾性クローラCを走行させることによって、耐久試験等を行うために用いられる。弾性クローラCは、ゴム等の弾性材料によって形成されたクローラ本体の内部に周方向に等間隔で多数の芯金が埋設されており、この芯金に走行装置の駆動輪を噛み合わせることによって動力が伝達され、回送駆動されるようになっている。
【0022】
なお、本明細書においては、弾性クローラCを走行させる方向を前後方向とし、この前後方向に直交する水平方向を左右方向とする。
【0023】
走行試験装置10は、台車11と、台車支持装置12とに大別される。
(台車の構造)
図2は、走行試験装置の台車を示す概略的な平面図である。
図1及び図2に示すように、台車11は、車体フレーム21と、この車体フレーム21に設けられたクローラ装着部22、駆動部23、及びウエイト装着部24とを有する。
クローラ装着部22は、車体フレーム21の左右両側に設けられている。クローラ装着部22は、車体フレーム21の側面の前部側に設けられた駆動輪31と、後部側に設けられた従動輪32と、駆動輪31と従動輪32との前後方向の間に配置された複数の転動輪33とを有している。クローラ装着部22の駆動輪31、従動輪32、及び転動輪33に弾性クローラCが巻き掛けられる。
【0024】
駆動輪31は、車体フレーム21の前部に回転自在に支持された駆動シャフト34の両端部に設けられている。
従動輪32は、車体フレーム21に位置調整機構35を介して取り付けられている。この位置調整機構35は、車体フレーム21の側部に回転自在に設けられた送りネジ35aと、この送りネジ35aに螺合された支持体35bとを備えており、支持体35bに従動輪32が回転自在に支持されている。位置調整機構35は、送りネジ35aを回転させて支持体35bを前後に移動させることによって、従動輪32の前後方向の位置を調整することができる。図1及び図2は、従動輪32が最も後方に位置付けられた状態を示している。また、図1には、従動輪32の位置調整範囲を符号Rで示している。
【0025】
転動輪33は、支持体33aに回転自在に支持されている。支持体33aは、車体フレーム21の側面に固定ボルト等の取付具33bによって取り外し可能に取り付けられている。車体フレーム21の側面には、取付具33bを取り付けることができる取付孔21aが前後方向に多数形成されている。そして、この取付孔21aのいずれかを選択して支持体33aを取り付けることで、転動輪33の前後方向の位置と、車体フレーム21に取り付ける転動輪33の数量とを調整可能である。
【0026】
台車11の駆動部23は、車体フレーム21の前部側の上面に配置されている。駆動部23は、電動モータ36と、減速機37とを有する。電動モータ36は、インバータ制御等によって出力(運転回転数)を調整可能な出力可変型のモータである。
減速機37は、電動モータ36の駆動軸36aの回転を減速する。電動モータ36の駆動軸36aと減速機37の入力軸37aとは、ベルト伝動機構38によって動力伝達可能に接続されている。減速機37の出力軸37bと、駆動シャフト34とは、チェーン伝動機構39によって動力伝達可能に接続されている。
【0027】
以上より、駆動部23は、電動モータ36を作動することによって、減速機37を介して駆動シャフト34及び駆動輪31を回転させることができる。そして、駆動輪31を回転させることによって、クローラ装着部22に装着した弾性クローラCを回送させることができる。
【0028】
ウエイト装着部24は、車体フレーム21の後部側の上面に配置されている。具体的には、ウエイト装着部24は、駆動部23を構成する電動モータ36の後方に配置されている。ウエイト装着部24は、上方が開口した箱体24aを備え、前後方向に並べて複数(図示例では3箇所)設けられている。各ウエイト装着部24の箱体24a内には、板状のウエイト24bを積層して収容することができる。
【0029】
車体フレーム21の前後左右の4隅には、アイボルト等からなるワイヤ取付具21bが設けられており、このワイヤ取付具21bには、台車11を前後から引っ張るワイヤが取り付けられている。これにより台車11の前後方向の位置が固定され、台車支持装置12上における前後方向の移動が阻止されている。
【0030】
(台車支持装置の構成)
図5は、走行試験装置の台車支持装置を示す概略的な平面図である。
図1及び図5に示すように、台車支持装置12は、装置フレーム26と、装置フレーム26に支持された左右一対の路面コンベア27を備えている。路面コンベア27は仮想路面を形成する。
【0031】
図5に示すように、各路面コンベア27は、左右一対の回送チェーン41と、左右一対の回送チェーン41の間に架け渡された複数の路面板42とを有している。回送チェーン41は、装置フレーム26に回転自在に支持された前後のシャフト43,44に取り付けられた前側スプロケット45と後側スプロケット46とに巻き掛けられている。一方のシャフト43には制動装置49が設けられ、路面コンベア27の回送を制動することができる。
【0032】
以上の構成を有する走行試験装置10は、台車11のクローラ装着部22に弾性クローラCを装着し、当該台車11を台車支持装置12上に搭載した状態で使用される。そして、台車11の駆動部23を作動することによって弾性クローラCを回送させると、弾性クローラCと路面コンベア27との接触面に発生する摩擦力(弾性クローラCの牽引力)によって路面コンベア27も回送する。したがって、弾性クローラCが実際の路面を走行する場合と略同様の環境で弾性クローラCの試験を行うことができる。
【0033】
また、弾性クローラCを路面コンベア27上で走行させるので、広い試験場を必要とせず、走行試験装置10を設置することができる一定の広さの領域があれば試験を行うことができる。
そして、弾性クローラCを路面コンベア27上で走行させるので、実際の路面の状態に影響を受けることなく、弾性クローラCの純粋な屈曲や牽引力等についての評価が可能となる。また、試験中は一定の場所で弾性クローラCを直進させるだけであるので弾性クローラCを旋回させる必要がなくなり、旋回頻度や左右弾性クローラCの周速差の影響で試験結果が変動することもなく、再現性の高い試験を行うことができる。
【0034】
台車11のクローラ装着部22は、従動輪32が前後方向に位置調整自在に設けられ、駆動輪31と従動輪32との前後方向の間隔が調整可能である。そのため、長さが異なる弾性クローラCをクローラ装着部22に装着することができ、台車11の汎用性を高めることができる。
【0035】
また、クローラ装着部22の転動輪33は、前後方向の位置及び数量を調整可能である。そのため、前述したように、長さの異なる弾性クローラCを装着するときに、その弾性クローラCの長さに応じて転動輪33の位置及び数量を適切に設定することができる。
【0036】
台車11の駆動部23を構成する電動モータ36は出力可変型であるため、その出力を高めることによって弾性クローラCを高速で回送させることができる。そのため、試験を短時間で行う促進テストを行うことが可能となる。また、駆動部23として電動モータ36が用いられているので、エンジンを用いた駆動部のように排気ガスによる試験環境の悪化が生じることもない。
【0037】
台車11には、ウエイト24bを装着するウエイト装着部24が設けられているので、台車11に高荷重をかけた促進テストを行うことが可能となる。また、ウエイト装着部24は、複数のウエイト24bを取り外し可能に装着することができるので、台車11に付与する荷重を調整することができる。
【0038】
なお、ウエイト装着部24は、前後方向に複数設けられているので、いずれかのウエイト装着部24を選択してウエイト24bを装着することができる。本実施形態では、ウエイト装着部24が、従動輪32の位置調整範囲(図1にRで示す)に対応して複数設けられており、従動輪32の位置に応じてウエイト24bを装着するウエイト装着部24を選択することができる。例えば、図1に示すように従動輪32が最も後方に位置付けられた場合は、3つのウエイト装着部24に均等にウエイト24bを装着することができる。また、従動輪32が最も前方に位置付けられた場合は、最も前側のウエイト装着部24のみにウエイト24bを装着することができる。
【0039】
台車支持装置12には、路面コンベア27を制動する制動装置49が設けられているので、路面コンベア27の回送を止めた状態で弾性クローラCを回送させるという高牽引負荷をかけた促進テストを行うことが可能となる。
【0040】
[転動輪の具体的構成]
図3は、台車の転動輪を示す正面図である。図4は、台車の転動輪を示す側面図である。
本実施形態の転動輪33は、軸方向(幅方向)の両側に配置された輪体33cと、両輪体33cを連結する軸部33dとを有する。輪体33cの外周面が、弾性クローラCの内周面に接触する転動面を構成する。以下の説明において、転動輪33の外周面という記載は、輪体33cの外周面を意味する。
【0041】
弾性クローラCは、ゴム等の弾性材料により無端帯状に形成されたクローラ本体C1と、クローラ本体の内部に周方向に間隔をあけて埋設された複数の芯金C2とを有している。芯金C2は、弾性クローラCの幅方向(図3の左右方向)の中央から内周側に突出する一対のガイド突部C2aと、一対のガイド突部C2aから幅方向両側に延びる翼部C2bとを有する。翼部C2bの内周側には、ゴム層C1aが設けられ、このゴム層C1aの表面上を各輪体33cが転動する。
【0042】
台車11に設けられた複数の転動輪33のうち、いずれか1つ又は複数の転動輪33の外周面には、突起57が設けられている。この突起57は、転動輪33の周方向に間隔をあけて複数設けられている。本実施形態では、転動輪33の片側の輪体33cのみの外周面に8個の突起57が等間隔で設けられている。
【0043】
突起57を有する転動輪33が弾性クローラCの内周面を転動すると、芯金C2の翼部C2bと転動輪33の突起57との間でゴム層C1aが挟まれ、ゴム層C1aに傷が発生する。そして、この傷が芯金C2まで進行すると、ゴム層C1aがむしられるような虫食い状の損傷(チップカット)が生じる。そのため、実車に装着された弾性クローラCが工事現場などの荒れた路面を走行することによって弾性クローラCと転動輪33との間に石や砂等の異物を噛み込むような状況を再現することができる。
【0044】
なお、図3及び図4においては、転動輪33における一方の輪体33cの突起57が弾性クローラCの内周面に接触し、他方の輪体33cの外周面が弾性クローラCの内周面から浮いた状態で示されているが、実際は、弾性クローラCの内周面が弾性変形したり、転動輪33や弾性クローラCに若干の傾きが生じたりすることによって、双方の輪体33cの外周面が弾性クローラCの内周面に接触する。
【0045】
[突起の具体的構成]
図6は、転動輪の突起を示す斜視図である。図7は、突起の平面図である。図8は、図7のA矢視図である。図9は、図7のB矢視図である。
本実施形態の突起57は、概ね角錐台形状に形成されている。具体的に、突起57は、底面61と、頂面62と、複数の側壁63,64と、複数の角部65,66とを有している。底面61は、長方形状に形成されている。頂面62は、長方形状に形成されている。頂面62の面積は底面61の面積よりも小さい。
【0046】
側壁は、第1側壁63及び第2側壁64を含む。第1側壁63は、底面61の長辺61aと、頂面62の長辺62aとの間に配置されている。第2側壁64は、底面61の短辺61bと、頂面62の短辺62bとの間に配置されている。第1側壁63及び第2側壁64の上側の大部分は、底面61及び頂面62に対して傾斜した姿勢で配置された傾斜部63a,64aである。第1側壁63及び第2側壁64の下端の一部分は、底面61及び頂面62に対して垂直な姿勢で配置された垂直部63b、64bである。ただし、垂直部63b、64bは省略されていてもよい。第1,第2側壁63,64は、全体が傾斜部63a,64aからなっていてもよい。第1,第2側壁63,64は、下部側の半分以上が垂直部63b、64bで構成されていてもよい。
【0047】
角部65,66は、第1角部65と第2角部66とを含む。第1角部65は、頂面62の長辺62aと第1側壁63との境界に設けられている。第2角部66は、頂面62の短辺62bと第2側壁64との境界に設けられている。
【0048】
図9に示すように、本実施形態の第1角部65の角度θ1は、約112.5°である。図8に示すように、第2角部66の角度θ2は、約100°である。第1角部65及び第2角部66の角度θ1,θ2は、90°超、135°以下であることが好ましい。より好ましくは、第1角部65及び第2角部66の角度θ1,θ2は、95°以上、130°以下である。
【0049】
本実施形態では、突起57の底面61における長辺61aの長さが約19mm、短辺61bの長さが約14mmである。頂面62における長辺62aの長さが約15mm、短辺62bの長さが約5mmである。したがって、突起57を頂面62側から見たときの最大の長さ寸法は19mmである。この最大の長さ寸法は、例えば10mm以上30mm以下とすることができる。突起57の高さは、約12mmである。突起57の高さは、5mm以上20mm以下とすることができる。
【0050】
突起57は、その底面61が転動輪33の外周面に取り付けられている。転動輪33の外周面には、複数個の突起57が転動輪33の周方向に間隔をあけて設けられている。
【0051】
図10は、転動輪の外周面の展開図である。図10における矢印aは、転動輪33の回転方向を示し、矢印bは、転動輪33の幅方向(左右方向)を示している。
転動輪33(輪体33c)の外周面には、複数の突起57が周方向に間隔をあけて配置されている。本実施形態では、8個の突起57が等間隔で配置されている。以下、図10に示される突起57を左から順に第1~第8突起57a~57hともいう。
【0052】
8個の突起57は、互いに異なる4つのパターンの向きで配置されている。具体的に、8個の突起57は、頂面62の長辺62aにおける角部65が転動輪33の幅方向bに沿っている第1パターンと、頂面62の短辺62bにおける角部66が転動輪33の幅方向bに沿っている第2パターンと、頂面62の長辺62a及び短辺62bにおける角部65,66が幅方向bに対して傾斜している第3パターンと、頂面62の長辺62a及び短辺62bにおける角部65,66が幅方向bに対して第3パターンとは逆向きに傾斜している第4パターンとの、4つのパターンで配置されている。図10に示した突起57の配置のパターンは一例であり、例えば、第3パターンと第4パターンとを入れ替えて配置してもよい。
【0053】
図10に示す例では、第1,第2突起57a,57bが第1パターンで配置され、第3,第4突起57c,57dが第2パターンで配置され、第5,第6突起57e,57fが第3パターンで配置され、第7,第8突起57g,57hが第4パターンで配置されている。第3パターンの第5、第6突起57e,57fと、第4パターンの突起57g,57hとは、いずれも幅方向bに対して略45°の角度で傾斜している。
【0054】
各パターンで配置された2個の突起57は、互いに幅方向bの位置がずらされている。具体的に、第1パターンの第1突起57aは幅方向bの一方側(図10の上側)に偏って配置され、第2突起57bは幅方向bの他方側(図10の下側)に偏って配置されている。第2パターンの第3突起57cは幅方向bの一方側に偏って配置され、第4突起57dは幅方向bの他方側に偏って配置されている。第3パターンの第5突起57eは幅方向bの一方側に偏って配置され、第6突起57fは幅方向bの他方側に偏って配置されている。第4パターンの第7突起57gは幅方向bの一方側に偏って配置され、第8突起57hは幅方向bの他方側に偏って配置されている。したがって、転動輪33の周方向において、幅方向bに一方側に偏って配置された第1,第3,第5,第7突起57a,57c,57e,57gと、他方側に偏って配置された第2,第4,第6,第8突起57b,57d,57f,57hとは、交互に配置されている。言い換えると、8個の突起57は、千鳥状に配置されている。
【0055】
第1パターンで配置された2個の突起57a,57bは、4つの角部65,66のうち、頂面62の一方の長辺62aにおける角部65が転動輪33の回転方向の先方側に位置している。第2パターンで配置された2個の突起57c,57dは、4つの角部65,66のうち、頂面62の一方の短辺62bにおける角部66が転動輪33の回転方向の先方側に位置している。
第3パターン及び第4パターンの突起57e,57f,57g,57hは、幅方向bに対して略45°の角度で傾斜しているので、頂面62の一方の長辺62a及び一方の短辺62bにおける角部65,66が、回転方向の先方側に位置している。
【0056】
図11Aは、本発明の突起が弾性クローラの内周面に接触する状態を示す説明図である。図11Bは、比較例に係る突起が弾性クローラの内周面に接触する状態を示す説明図である。
図11Bに示すように、比較例に係る突起157は、断面形状が略三角形であり、頂点に位置する角部165の角度θ3が鋭角(約60°)に形成されている。そのため、この突起157の角部165が弾性クローラCの内周面に接触すると、当該内周面に突き刺さり負荷が1点に集中してしまう。そして、このような突起157が周方向に間隔をあけて複数設けられていると、弾性クローラCの内周面にパターン化された傷が生じ、弾性クローラCの実車走行で生じ得る石や砂などの異物の噛み込みによる虫食い状の損傷(チップカット)を再現し難い。
【0057】
これに対して、本実施形態の突起57は、図11Aに示すように、転動輪33の回転方向における先方側の角部65,66の角度θ1,θ2が鈍角に形成されているので、当該角部65は、弾性クローラCの内周面に突き刺さるというよりも、当該内周面に接触して圧力をかけたまま内周面を引っ掻き、弾性クローラCに大きなせん断応力を発生させる。このような作用によって、例えば実車走行において小石が転動輪33と弾性クローラCの内周面との間に噛み込み、当該内周面上を転がりながら当該内周面を引っ掻くような現象を再現することができる。これにより、弾性クローラCの内周面には、実車走行で生じるような虫食い状の損傷(チップカット)が生じやすくなる。
【0058】
なお、角度θ1,θ2が90°である場合でも、角度θ3のような鋭角と比べると、弾性クローラCへの突き刺さりを抑えてチップカットをある程度再現することができる。
【0059】
また、本実施形態では、複数の突起57の向きが互いに異なっているので、弾性クローラCの内周面にランダムに虫食い状の損傷を生じさせることができる。また、本実施形態では、複数の突起57の幅方向bの位置が互いに異なっているので、これによっても弾性クローラCの内周面にランダムに虫食い状の損傷を生じさせることができる。
【0060】
転動輪33の回転方向aの先方側に位置する角部65,66の角度は、90°超、135°以下にすることが好ましい。当該角度が90°未満であると、弾性クローラCの内周面に当該角部65,66が突き刺さって負荷が1点に集中し、パターン化した傷が発生しやすくなるからである。また、当該角部65,66の角度が135°を超えると、弾性クローラCの内周面に損傷が生じ難くなり、耐久試験に長時間を要するからである。なお、角部65,66の角度は、95°以上、130°以下にすることがより好ましい。
【0061】
突起57の個数は、6個以上10個以下とすることが好ましい。突起57の個数が6個未満であると、周方向に隣接する突起57の間隔が広くなり、突起57が弾性クローラCの内周面に接触する回数が減り、耐久試験に長時間を要するからである。また、突起57の個数が10個を超えると、周方向に隣接する突起57の間隔が狭くなり、弾性クローラCの内周面に突起57が接触したときの面圧が低下し、当該内周面を引っ掻く作用を得難くなるからである。
【0062】
図10に示すように、複数の突起57は、互いに幅方向bの位置がずらされることによって、その頂面62が、転動輪33(輪体33c)の外周面の幅Wの60%を超える範囲Rで配置される。そのため、弾性クローラCの内周面に対して幅方向bに広範囲でランダムに損傷を生じさせることができる。複数の突起57における頂面62の幅方向bの範囲Rは、転動輪33の外周面の幅Wの70%以上とすることがより好ましい。
【0063】
突起57を有する転動輪33は、突起57に摩耗や損傷が生じた場合に、支持体33aごと車体フレーム21の側面から取り外し、新たな転動輪33を有する支持体33aを車体フレーム21に取り付けることによって容易に交換することができる。あるいは、支持体33aから突起57を有する転動輪33のみを取り外し、新たな転動輪33を支持体33aに取り付けることによって交換することも可能である。
【0064】
以上より、本実施形態の走行試験装置10を用いることで、同種又は異種の弾性クローラCの比較評価が可能となる。なお、弾性クローラCの評価としては、弾性クローラCのクラック評価、駆動輪に対する噛み合い評価、摩耗の評価、弾性クローラCを構成する部品(芯金、スチールコード、ゴム等)の接着性評価等を挙げることができる。
【0065】
[第2の実施形態]
図12は、第2の実施形態における転動輪の接地面の展開図である。なお、図12に示す各突起57には、第1の実施形態(図10)において同じ向き及び配置で配置された突起57と同一の符号を付している。
本実施形態は、突起57の配列が第1の実施形態と異なっている。本実施形態では、第1パターンで配置された第1突起57aと、第2パターンで配置された第4突起57dと、第3パターンで配置された第5突起57eと、第4パターンで配置された第8突起57hとが、この順で並べて配置されている。さらに続けて、第1、第4、第5、第8突起57a,57d,57e,57hがこの順で並べられている。したがって、周方向に隣接する突起57a,57d,57e,57hは、互いに向きが異なっている。また、周方向に隣接する突起57a,57d,57e,57hは、互いに幅方向bの位置が異なっている。したがって、本実施形態においても、上記第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0066】
[第3の実施形態]
図13は、第3の実施形態における転動輪の外周面の展開図である。なお、図13に示す各突起57には、第1の実施形態(図10)において同じ向き及び配置で配置された突起57と同一の符号を付している。
本実施形態は、突起57の数及び配列が第1の実施形態と異なっている。本実施形態では、6個の突起57が周方向に間隔をあけて配置されている。本実施形態では、第1の実施形態における第2パターンで配置された第3突起57c及び第4突起57dが省略されている。したがって、本実施形態では、第1パターンで配置された第1突起57aと、第1パターンで配置された第2突起57bと、第3パターンで配置された第5突起57eと、第3パターンで配置された第6突起57fと、第4パターンで配置された第7突起57gと、第4パターンで配置された第8突起57hとが、この順で配置されている。いずれの突起57a,57b,57e,57f,57g,57hも、頂面62の長辺62aにおける角部65が転動輪33の回転方向aの先方側に位置している。
【0067】
突起57の頂面62の長辺62aにおける角部65が、転動輪33の回転方向aの先方側に位置している場合、短辺62bにおける角部66が転動輪33の回転方向の先方側に位置している場合と比べて、弾性クローラCの内周面に接触したときの圧力を緩和することができ、より虫食い状の損傷を生じさせ易くすることができる。
【0068】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、適宜変更できるものである。
例えば、転動輪に設けられた突起の具体的形状は、上記実施形態で説明したものに限定されない。例えば図14に示す変形例のように、突起57の底面61及び頂面62が正方形状に形成され、頂面62の各辺62cと側壁67との間の角部68の角度が鈍角に形成されたものであってもよい。また、突起は、底面及び頂面が、四角形以外の多角形や、円形等であってもよい。
【0069】
また、転動輪に設けられる突起の数は、適宜変更可能である。したがって、転動輪に設けられる突起の数は、1つであってもよい。転動輪の外周面に複数の突起が設けられる場合、少なくとも一つの突起における転動輪の回転方向の先方側の角部の角度が鈍角であればよい。
突起を有する転動輪の数や車体フレームにおける前後方向の位置は、適宜変更することができる。
【0070】
上記実施形態では、クローラ装着部における従動輪の前後方向の位置が調整可能に構成されていたが、これに代えて又は加えて、駆動輪の前後方向の位置が調整可能に構成されていてもよい。また、転動輪は、従動輪と同じような位置調整機構によって前後方向の位置が調整可能に構成されていてもよい。
【0071】
転動輪の位置調整機構は、上記実施形態のような送りネジ式のものに代えて、流体圧シリンダや電動シリンダを用いたものであってもよい。
転動輪は、前後方向の位置及び数量のいずれか一方のみが調整可能に構成されていてもよい。
【0072】
上記実施形態における走行試験装置は、芯金を備えた弾性クローラに限らず、芯金レスの弾性クローラにも適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
10 :走行試験装置
11 :台車
12 :台車支持装置
22 :クローラ装着部
23 :駆動部
31 :駆動輪
32 :従動輪
33 :転動輪
57 :突起
62 :頂面
62a :長辺
62b :短辺
63 :側壁
64 :側壁
65 :角部
66 :角部
67 :側壁
68 :角部
C :弾性クローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14