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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ネジ保持構造、端子台、及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01R 9/24 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
H01R9/24
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021029963
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131162
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】菰口 裕介
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 正雄
(72)【発明者】
【氏名】森田 和明
(72)【発明者】
【氏名】小川 翔
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3198296(JP,U)
【文献】特開2015-162431(JP,A)
【文献】特開平9-63663(JP,A)
【文献】特開2010-67559(JP,A)
【文献】実開平6-68312(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/22 - 9/28
H01R 4/28 - 4/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、雌ネジ部を有する端子部と、
前記雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部と、前記雄ネジ部よりも直径が大きい頭部と、前記雄ネジ部と前記頭部とを軸方向に接続する首部と、前記首部の周囲に配置された環状の座金とを有する端子ネジと、
を備えるネジ保持構造であって、
前記端子ネジは、前記筐体内において、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部に螺合することにより前記端子部に接続された接続位置と、前記端子部から軸方向に離れた保持位置との間を移動可能に構成され、
前記座金は、前記端子ネジの頭部側に突出する第1ガイド突起部を有し、
前記筐体は、前記端子ネジが前記接続位置と前記保持位置との間を移動する際に、前記第1ガイド突起部が前記軸方向摺動する第1ガイド溝部を有し、
前記ネジ保持構造は、前記端子ネジが前記接続位置に位置するときと前記保持位置に位置するときとで異なる視覚的指標を提供する表示部を更に備え
前記表示部は、前記端子ネジが前記接続位置に位置するとき、前記筐体の内部に位置し、前記端子ネジが前記保持位置に位置するとき、前記筐体の外部に突出するように、前記座金に設けられた突起部である、ネジ保持構造。
【請求項2】
前記突起部は、前記軸方向に長手方向を有する棒状又は略矩形板状に形成されている、請求項に記載のネジ保持構造。
【請求項3】
筐体と、
前記筐体内に配置され、雌ネジ部を有する端子部と、
前記雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部と、前記雄ネジ部よりも直径が大きい頭部と、前記雄ネジ部と前記頭部とを軸方向に接続する首部と、前記首部の周囲に配置された環状の座金とを有する端子ネジと、
を備えるネジ保持構造であって、
前記端子ネジは、前記筐体内において、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部に螺合することにより前記端子部に接続された接続位置と、前記端子部から軸方向に離れた保持位置との間を移動可能に構成され、
前記座金は、前記端子ネジの頭部側に突出する第1ガイド突起部を有し、
前記筐体は、前記端子ネジが前記接続位置と前記保持位置との間を移動する際に、前記第1ガイド突起部が前記軸方向摺動する第1ガイド溝部を有し、
前記ネジ保持構造は、前記端子ネジが前記接続位置に位置するときと前記保持位置に位置するときとで異なる視覚的指標を提供する表示部を更に備え
前記表示部は、前記端子ネジの移動経路を形成する壁面の一部を構成し、前記壁面の他部と異なる色を有し、前記端子ネジが前記接続位置に位置するとき、前記筐体の外部から視認可能であり、前記端子ネジが前記保持位置に位置するとき、前記筐体の外部から視認不可能である、ネジ保持構造。
【請求項4】
前記座金は、前記軸方向から見て前記頭部を介して前記第1ガイド突起部と対向する位置に、前記頭部側に突出する第2ガイド突起部を有し、
前記筐体は、前記端子ネジが前記接続位置と前記保持位置との間を移動する際に、前記第2ガイド突起部が摺動する第2ガイド溝部を有する、請求項1~3のいずれか1つに記載のネジ保持構造。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1つに記載のネジ保持構造を備える、端子台。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1つに記載のネジ保持構造を備える、電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネジ保持構造、並びに、当該ネジ保持構造を有する端子台及び電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線挿入口を通じて筐体内部に挿入された電線の先端部を、電線挿入方向に対して交差する方向から端子ネジで押圧することにより、筐体内部に設けられた端子部に押圧して電気的に接続する電線接続方式が知られている。この電線接続方式においては、電線の挿入を容易にするため、端子ネジを端子部から離れた保持位置で保持するネジ保持構造(ホールドオン構造ともいう)が一般的に採用されている。当該ネジ保持構造としては、例えば、特許文献1(特開2011-34735号公報)に開示されたものが知られている。特許文献1には、端子ネジの座金に一端部が取り付けられたコイルバネの付勢力によって、端子ネジを端子部から離れた保持位置で保持するネジ保持構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-34735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のネジ保持構造では、端子ネジが保持位置に位置するか否かの視認性が悪いという課題がある。
【0005】
本発明の目的は、前記問題を解決することにあって、端子ネジが保持位置に位置するか否かの視認性を向上させることができるネジ保持構造、並びに、当該ネジ保持構造を備える端子台及び電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の一態様に係るネジ保持構造は、
筐体と、
前記筐体内に配置され、雌ネジ部を有する端子部と、
前記雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部と、前記雄ネジ部よりも直径が大きい頭部と、前記雄ネジ部と前記頭部とを軸方向に接続する首部と、前記首部の周囲に配置された環状の座金とを有する端子ネジと、
を備えるネジ保持構造であって、
前記端子ネジは、前記筐体内において、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部に螺合することにより前記端子部に接続された接続位置と、前記端子部から軸方向に離れた保持位置との間を移動可能に構成され、
前記座金は、前記端子ネジの頭部側に突出する第1ガイド突起部を有し、
前記筐体は、前記端子ネジが前記接続位置と前記保持位置との間を移動する際に、前記第1ガイド突起部が前記軸方向に摺動する第1ガイド溝部を有し、
前記ネジ保持構造は、前記端子ネジが前記接続位置に位置するときと前記保持位置に位置するときとで異なる視覚的指標を提供する表示部を更に備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様に係るネジ保持構造によれば、端子ネジが保持位置に位置するか否かの視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るネジ接続構造を備える押しボタンスイッチの斜視図である。
図2図1の押しボタンスイッチの断面図である。
図3図1の押しボタンスイッチから前面側筐体部品を取り外した状態を示す斜視図である。
図4図1の押しボタンスイッチから後面側筐体部品を取り外した状態を示す斜視図である。
図5図4に示す状態から更に、プランジャを取り外した状態を示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係るネジ接続構造が備える端子ネジの斜視図である。
図7図1の押しボタンスイッチが備える表示部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様に係るネジ保持構造は、
筐体と、
前記筐体内に配置され、雌ネジ部を有する端子部と、
前記雌ネジ部に螺合可能な雄ネジ部と、前記雄ネジ部よりも直径が大きい頭部と、前記雄ネジ部と前記頭部とを軸方向に接続する首部と、前記首部の周囲に配置された環状の座金とを有する端子ネジと、
を備えるネジ保持構造であって、
前記端子ネジは、前記筐体内において、前記雄ネジ部が前記雌ネジ部に螺合することにより前記端子部に接続された接続位置と、前記端子部から軸方向に離れた保持位置との間を移動可能に構成され、
前記座金は、前記端子ネジの頭部側に突出する第1ガイド突起部を有し、
前記筐体は、前記端子ネジが前記接続位置と前記保持位置との間を移動する際に、前記第1ガイド突起部が前記軸方向に摺動する第1ガイド溝部を有し、
前記ネジ保持構造は、前記端子ネジが前記接続位置に位置するときと前記保持位置に位置するときとで異なる視覚的指標を提供する表示部を更に備える。
【0010】
この構成によれば、第1ガイド突起部が第1ガイド溝部を摺動することで端子ネジの移動を軸方向に規制して、端子ネジの移動量を認識し易くすることができる。また、端子ネジが接続位置に位置するときと保持位置に位置するときとで異なる視覚的指標を提供する表示部を備えているので、表示部を確認することで、端子ネジが保持位置に位置するか否かの視認性を向上させることができる。
【0011】
なお、前記座金は、前記軸方向から見て前記頭部を介して前記第1ガイド突起部と対向する位置に、前記頭部側に突出する第2ガイド突起部を有し、前記筐体は、前記端子ネジが前記接続位置と前記保持位置との間を移動する際に、前記第2ガイド突起部が摺動する第2ガイド溝部を有してもよい。この構成によれば、第1及び第2ガイド突起部が第1及び第2ガイド溝部を摺動することで端子ネジの移動をより確実に軸方向に規制することができる。その結果、端子ネジの移動量をより認識し易くすることができ、端子ネジが保持位置に位置するか否かの視認性を向上させることができる。
【0012】
また、前記表示部は、前記端子ネジが前記接続位置に位置するとき、前記筐体の内部に位置し、前記端子ネジが前記保持位置に位置するとき、前記筐体の外部に突出するように、前記座金に設けられた突起部であってもよい。この構成によれば、端子ネジが保持位置に位置するとき、突起部が筐体の外部に突出するので、突起部が一見して認識し易く、端子ネジが保持位置に位置するか否かの視認性を向上させることができる。
【0013】
また、前記突起部は、前記軸方向に長手方向を有する棒状又は略矩形板状に形成されてもよい。この構成によれば、省スペースで配置可能であるとともに、作成が容易である。
【0014】
また、前記表示部は、前記端子ネジの移動経路を形成する壁面の一部を構成し、前記壁面の他部と異なる色又は材質を有し、前記端子ネジが前記接続位置に位置するとき、前記筐体の外部から視認可能であり、前記端子ネジが前記保持位置に位置するとき、前記筐体の外部から視認不可能であってもよい。この構成によれば、端子ネジの移動経路を形成する壁面の色又は材質を確認することで、端子ネジが保持位置に位置するか否かを確認することができ、当該視認性を向上させることができる。
【0015】
前記ネジ保持構造は、端子台又は電気機器に設けられてもよい。
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。また、図面において実質的に同一の部材については同一の符号を付している。
【0017】
また、以下では、説明の便宜上、通常使用時の状態を想定して「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」等の方向を示す用語を用いるが、本発明に係るネジ保持構造の使用状態等を限定することを意味するものではない。
【0018】
(実施形態)
本発明の実施形態に係るネジ接続構造について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るネジ接続構造を備える押しボタンスイッチの斜視図である。押しボタンスイッチは、電気機器の一例である。
【0019】
本実施形態に係る押しボタンスイッチ1は、筐体2と、プランジャ3とを備えている。筐体2とプランジャ3とは、絶縁性部材で構成されている。
【0020】
筐体2は、前面側筐体部品21と、後面側筐体部品22とを備えている。筐体2の上面には、プランジャ3が上下方向Zに移動可能な貫通穴23が設けられている。筐体2は、前後方向Y(図1の右下から左上への方向)から見て左右対称に形成されている。筐体2の左右側面には、電線(図示せず)が通る電線挿入口24が形成されている。
【0021】
プランジャ3は、上下方向Zに延在する中空の略四角柱状の棒体である。プランジャ3は、図1に示すように、先端部31が貫通穴23を通じて筐体2の外部に突出するように、筐体2の内部に収容されている。プランジャ3の先端部31は、左右方向Xの角部が面取りされており、前後方向Yから見て略円弧状に形成されている。本実施形態において、左右方向X、前後方向Y、及び、上下方向Zは、互いに直交している。
【0022】
図2は、図1の押しボタンスイッチ1の断面図である。図3は、図1の押しボタンスイッチ1から前面側筐体部品21を取り外した状態を示す斜視図である。図4は、図1の押しボタンスイッチ1から後面側筐体部品22を取り外した状態を示す斜視図である。図5は、図4に示す状態から更に、プランジャ3を取り外した状態を示す斜視図である。図6は、端子ネジの斜視図である。
【0023】
図2図5に示すように、筐体2内には、端子部4と、端子ネジ5と、板バネ6とが配置されている。
【0024】
端子部4は、筐体2に固定的に取り付けられている。端子部4は、導電性部材で構成されている。本実施形態において、端子部4は、一枚の金属板を穿孔及び折り曲げ加工することに構成されている。端子部4には、厚み方向に延在する雌ネジ部41が設けられている。プランジャ3に近い側に位置する端子部4の一端部には、固定接触子42が取り付けられている。
【0025】
端子ネジ5は、雌ネジ部41に螺合可能な雄ネジ部51と、雄ネジ部51よりも直径が大きい頭部52と、雄ネジ部51と頭部52とを軸方向A1に接続する首部53とを備えている。頭部52には、ドライバを挿入可能なネジ溝部52aが設けられている。首部53の周囲には、環状の座金54が配置されている。また、本実施形態において、首部53の周囲には、座金54との間で板バネ6の一端部6aを挟持する環状の挟持部材55が配置されている。本実施形態において、挟持部材55は、座金54と同じ金属で構成されている。
【0026】
端子ネジ5は、筐体2内において、雄ネジ部51が雌ネジ部41に螺合することにより端子部4に接続された接続位置P1と、端子部4から軸方向A1に離れた保持位置P2との間を移動可能に構成されている。端子ネジ5は、電線挿入口24から電線(図示せず)が挿入されたとき、保持位置P2から接続位置P1に移動され、電線の先端部に取り付けられた接続端子(図示せず)を端子部4に押圧する。これにより、電線の接続端子と端子部4とが電気的に接続される。
【0027】
座金54は、端子ネジ5の頭部52側に突出し、軸方向A1に延在する第1ガイド突起部56を有している。筐体2は、端子ネジ5が接続位置P1と保持位置P2との間を移動する際に、第1ガイド突起部56が軸方向A1に摺動する第1ガイド溝部25を有している。また、本実施形態において、座金54は、軸方向A1から見て頭部52を介して第1ガイド突起部56と対向する位置に、頭部52側に突出し、軸方向A1に延在する第2ガイド突起部57を有している。筐体2は、端子ネジ5が接続位置P1と保持位置P2との間を移動する際に、第2ガイド突起部57が軸方向A1に摺動する第2ガイド溝部26を有している。
【0028】
本実施形態において、第1ガイド突起部56と第2ガイド突起部57とは、軸方向A1から見て頭部52の中心を介して対向する位置に設けられている。また、第1ガイド突起部56と第2ガイド突起部57とは、角部が面取りされた略矩形板状に形成されている。第1ガイド溝部25と第2ガイド溝部26とは、筐体2の外表面の手前の位置まで軸方向A1に延在している。すなわち、端子部4から離れた第1ガイド溝部25の一端部及び第2ガイド溝部26の一端部は、筐体2内に位置する。第1ガイド突起部56の先端部が第1ガイド溝部25の一端部に接触することにより、端子ネジ5の軸方向A1の移動が規制され、端子ネジ5が保持位置P2で保持される。また、第2ガイド突起部57の先端部が第2ガイド溝部26の一端部に接触することにより、端子ネジ5の軸方向A1の移動が規制され、端子ネジ5が保持位置P2で保持される。
【0029】
また、座金54は、頭部52側に突出し、端子ネジ5が接続位置P1と保持位置P2との間を移動する間、板バネ6が端子ネジ5の移動経路に露出しないように、板バネ6を隠蔽するように構成された保護部材58を有している。本実施形態において、保護部材58は、軸方向A1に長手方向を有し、角部が面取りされた略矩形板状に形成されている。保護部材58の軸方向A1の長さは、接続位置P1と保持位置P2との距離よりも長くなっている。本実施形態において、保護部材58は、端子ネジ5が保持位置P2に位置するとき、筐体2の外部に突出するように設けられている(図2の右側の保護部材58を参照)。これにより、保護部材58は、端子ネジ5が接続位置P1に位置するときと保持位置P2に位置するときとで異なる視覚的指標を提供する表示部として機能する。
【0030】
板バネ6は、一端部6aが座金54に雄ネジ部51側から面接触し、雌ネジ部41と雄ネジ部51との螺合が解除されたときに端子ネジ5を保持位置P2に向けて付勢するように構成されている。筐体2内には、板バネ6の他端部6bが挿入されて板バネ6を保持する溝部27が設けられている。
【0031】
端子ネジ5と板バネ6の他端部6bとの間には、規制部材28が設けられている。規制部材28は、端子ネジ5が保持位置P2から接続位置P1に移動する際、板バネ6の一端部6aと他端部6bとの間の部分に接触して、板バネ6の湾曲量を規制する円弧状部分28aを有している。
【0032】
また、各端子部4の固定接触子42に対向する位置には、可動接触子32が上下方向Zに移動可能に設けられている。可動接触子32は、左右方向Xに延在する接点用腕部33に設けられている。接点用腕部33は、導電性部材で構成されている。接点用腕部33の中央部には、上方向に突出する半球状の突起部34が設けられている。突起部34には、第1コイルバネ35の下端部が取り付けられている。第1コイルバネ35の上端部は、プランジャ3に取り付けられている。
【0033】
また、図5に示すように、第1コイルバネ35よりも後面側筐体部品22に近い側には、第2コイルバネ36が設けられている。第2コイルバネ36の下端部は、筐体2の内側底面から上方に突出するボス29に取り付けられている。第2コイルバネ36の上端部は、プランジャ3に取り付けられ、プランジャ3を上方向に付勢している。第2コイルバネ36は、第1コイルバネ35よりも長尺に構成されている。
【0034】
プランジャ3が第1コイルバネ35及び第2コイルバネ36の付勢力に抗して下方向に押圧されたとき、接点用腕部33が下方向に移動し、可動接触子32が固定接触子42に接触する。筐体2の左右の電線挿入口24からそれぞれ電線が挿入され、端子ネジ5によって電線の接続端子が端子部4に電気的に接続された状態で、可動接触子32と固定接触子42とが電気的に接続されると、電線同士が電気的に導通する。これにより、押しボタンスイッチ1がオン状態になる。この状態から、プランジャ3の押圧力を開放すると、圧縮された第1コイルバネ35及び第2コイルバネ36の弾性復帰により、プランジャ3が上方向に移動し、可動接触子32と固定接触子42とが離れる。これにより、押しボタンスイッチ1がオフ状態になる。
【0035】
本実施形態によれば、板バネ6の一端部6aが座金54に雄ネジ部51側から面接触し、端子ネジ5を保持位置P2に向けて付勢するように構成されている。これにより、座金54に対して、よりバランス良く板バネ6の付勢力を付与することができる。また、板バネ6は、コイルバネに比べて、湾曲した状態から平板状に弾性復帰する際の反発方向を制御しやすく、組立性がよい。従って、前記構成によれば、コイルバネを用いずに端子ネジ5を端子部4から離れた保持位置P2で保持することができる新規なネジ保持構造を提供することができる。また、板バネ6は、コイルバネに比べて一般的に安価であり、押しボタンスイッチ1の製造コストの低下に寄与することができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、端子ネジ5は、座金54との間で板バネ6の一端部6aを挟持する環状の挟持部材55を備えている。これにより、板バネ6の一端部6aを座金54と挟持部材55との間でしっかりと保持することができ、座金54に対して、よりバランス良く板バネ6の付勢力を付与することができる。また、端子ネジ5の頭部52と板バネ6との間に座金54が介在するので、頭部52をドライバで回転させる際、当該ドライバの回転力が直接的に板バネ6に掛からないようにして、板バネ6の捻じれを抑えることができる。また、端子ネジ5の雄ネジ部51側において、端子部4と板バネ6との間に挟持部材55が介在するので、端子部4と端子ネジ5との間に電線を差し込む際に電線が板バネ6に接触することを抑えることができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、筐体2内には、板バネ6の他端部6bが挿入されて板バネ6を保持する溝部27が設けられている。これにより、より組立性を向上させることができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、板バネ6の湾曲量を規制する円弧状部分28aを有する規制部材28を備えている。これにより、規制部材28によって板バネ6が過度に湾曲することを抑えることができる。例えば、端子ネジ5が接続位置P1に位置して板バネ6の湾曲量が大きくなった状態で、筐体2に外力が加わるなどして板バネ6に衝撃が加わった場合でも、板バネ6の湾曲量が更に大きくなることを抑えることができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、座金54は、端子ネジ5の頭部52側に突出する第1ガイド突起部56を有し、筐体2は、第1ガイド突起部56が軸方向A1に摺動する第1ガイド溝部25を有している。これにより、第1ガイド突起部56が第1ガイド溝部25を摺動することで端子ネジ5の移動を軸方向A1に規制することができ、座金54に対して、よりバランス良く板バネ6の付勢力を付与することができる。また、第1ガイド突起部56が第1ガイド溝部25を摺動することで端子ネジ5の移動を軸方向A1に規制して、端子ネジ5の移動量を認識し易くすることができる。
【0040】
また、本実施形態によれば、座金54は、軸方向A1から見て頭部52を介して第1ガイド突起部56と対向する位置に、頭部52側に突出する第2ガイド突起部57を有する。また、筐体2は、端子ネジ5が接続位置P1と保持位置P2との間を移動する際に、第2ガイド突起部57が軸方向A1に摺動する第2ガイド溝部26を有している。これにより、第1ガイド突起部56及び第2ガイド突起部57が第1ガイド溝部25及び第2ガイド溝部26を摺動することで端子ネジ5の移動をより確実に軸方向A1に規制することができる。従って、座金54に対して、一層バランス良く板バネ6の付勢力を付与することができる。また、端子ネジ5の移動量をより認識し易くすることができ、端子ネジ5が保持位置P2に位置するか否かの視認性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態によれば、座金54は、頭部52側に突出し、端子ネジ5が接続位置P1と保持位置P2との間を移動する間、板バネ6が端子ネジ5の移動経路に露出しないように、板バネ6を隠蔽するように構成された保護部材58を有している。これにより、端子ネジ5の頭部52をドライバで回転させる際、当該ドライバが誤って端子ネジ5の移動経路から外れて板バネ6に接触することを抑えることができる。
【0042】
また、本実施形態によれば、保護部材58は、端子ネジ5が接続位置P1に位置するとき、筐体2の内部に位置し、端子ネジ5が保持位置P2に位置するとき、筐体2の外部に突出するように、座金54に設けられた突起部である。これにより、端子ネジ5が保持位置P2に位置するとき、保護部材58が筐体2の外部に突出するので、保護部材58が一見して認識し易く、端子ネジ5が保持位置P2に位置するか否かの視認性を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、保護部材58は、軸方向A1に長手方向を有する略矩形板状に形成されているので、省スペースで配置可能であるとともに、作成が容易である。
【0044】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。例えば、前記では、本発明に係るネジ接続構造が押しボタンスイッチ1に設けられるものとしたが、本発明はこれに限定されない。本発明に係るネジ接続構造は、電線挿入口24を通じて筐体2の内部に挿入された電線の先端部を、端子ネジ5で端子部4に押圧して電気的に接続する電線接続方式を採用する装置に適用可能である。このような装置としては、操作スイッチや表示灯などの電気機器や端子台が挙げられる。
【0045】
また、前記では、第1ガイド突起部56、第2ガイド突起部57、及び保護部材58は、略矩形板状に形成されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、第1ガイド突起部56、第2ガイド突起部57、及び保護部材58は、多角柱などの棒状に形成されてもよい。
【0046】
また、前記では、保護部材58が、端子ネジ5が接続位置P1に位置するときと保持位置P2に位置するときとで異なる視覚的指標を提供する表示部として機能するものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、端子ネジ5の移動経路を形成する壁面の一部を構成する第1ガイド溝部25の下端部に、他の部分と異なる色又は材質を有する表示部7を設けてもよい。この構成によれば、端子ネジ5が接続位置P1に位置するとき、表示部7は筐体2の外部から視認可能である。一方、端子ネジ5が保持位置P2に位置するとき、表示部7は筐体2の外部から視認不可能である。従って、端子ネジ5の移動経路を形成する壁面の色又は材質を確認することで、端子ネジ5が保持位置P2に位置するか否かを確認することができ、当該視認性を向上させることができる。
【0047】
なお、前記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0048】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るネジ保持構造は、端子ネジが保持位置に位置するか否かの視認性を向上させることができるので、端子ネジを用いた電線接続方式を採用する端子台や電気機器に有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 押しボタンスイッチ
2 筐体
3 プランジャ
4 端子部
5 端子ネジ
6 板バネ
6a 一端部
6b 他端部
7 表示部
21 前面側筐体部品
22 後面側筐体部品
23 貫通穴
24 電線挿入口
25 第1ガイド溝部
26 第2ガイド溝部
27 溝部
28 規制部材
28a 円弧状部分
29 ボス
31 先端部
32 可動接触子
33 接点用腕部
34 突起部
35 第1コイルバネ
36 第2コイルバネ
41 雌ネジ部
42 固定接触子
51 雄ネジ部
52 頭部
52a ネジ溝部
53 首部
54 座金
55 挟持部材
56 第1ガイド突起部
57 第2ガイド突起部
58 保護部材
A1 軸方向
P1 接続位置
P2 保持位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7