(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】高圧タンク製造装置及び高圧タンク製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 39/24 20060101AFI20240806BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20240806BHJP
B29C 70/16 20060101ALI20240806BHJP
B29C 70/32 20060101ALI20240806BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20240806BHJP
B29C 70/48 20060101ALI20240806BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20240806BHJP
F17C 1/16 20060101ALI20240806BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20240806BHJP
B29L 22/00 20060101ALN20240806BHJP
【FI】
B29C39/24
B29C39/10
B29C70/16
B29C70/32
B29C70/68
B29C70/48
F16J12/00 A
F17C1/16
B29K105:08
B29L22:00
(21)【出願番号】P 2021033667
(22)【出願日】2021-03-03
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 智彦
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-187775(JP,A)
【文献】特開昭61-270125(JP,A)
【文献】特開平5-318502(JP,A)
【文献】実開昭56-26215(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 39/24
B29C 39/10
B29C 70/16
B29C 70/32
B29C 70/68
B29C 70/48
F16J 12/00
F17C 1/16
B29K 105/08
B29L 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナに繊維束が巻回されている中間体が配置されるキャビティを有する金型と、
前記金型に対して移動可能に配置されており、前記キャビティの表面から前記キャビティ内に突出して前記キャビティに配置される前記中間体に接触する接触位置と、前記キャビティに配置される前記中間体から離間する離間位置と、の間で移動するピン部と、を備え、
前記ピン部は、前記接触位置で、前記キャビティに流入される溶融樹脂が前記キャビティの前記表面と前記中間体との間で前記ピン部を越えて流動可能に配置さ
れ、
前記ピン部は、前記キャビティの前記表面から同一の方向に向かって突出している複数のピンであって、互いに離間して配置されている前記複数のピンを備え、
前記中間体は、前記中間体の長手方向に延びる筒状の中央部分と、前記中央部分の両端のそれぞれにおいて先端に向かって徐々に細くなる先端部分と、を備え、
前記複数のピンは、前記中央部分に接触するものの、前記先端部分に接触しない、
高圧タンク製造装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の高圧タンク製造装置のキャビティに、ライナに繊維束が巻回されている中間体を配置する配置工程であって、ピン部が接触位置に配置される前記配置工程と、
前記キャビティに前記溶融樹脂を注入して、前記溶融樹脂が前記キャビティの前記表面と前記中間体との間において前記ピン部を越えて流動させて前記キャビティ内に前記溶融樹脂を充填する充填工程と、
前記キャビティ内の前記溶融樹脂を前記繊維束に含浸させる含浸工程と、
前記ピン部を接触位置から離間位置に移動させる移動工程と、を備える、高圧タンク製造方法。
【請求項3】
前記移動工程では、前記キャビティ内において前記溶融樹脂が硬化する前に、前記ピン部を、前記接触位置から前記離間位置に移動させる、請求項
2に記載の高圧タンク製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、高圧タンク製造装置及び高圧タンク製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、高圧タンクの製造方法が開示されている。この製造方法では、金型の樹脂注入口を囲むように設けられたスライドコアを金型のキャビティ面から中間体の方向に向かって移動させることによって、スライドコアを繊維束に当接させて、樹脂注入口から樹脂を注入して繊維束に含浸させる。樹脂注入時にスライドコアを中間体の表面に当接させることによって、樹脂の流れを強制的に繊維束の内層側に向け、繊維束の内層部まで樹脂を含浸させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高圧タンクの形状は、高圧タンクが搭載される領域によって決定される。高圧タンクの中間体は、ライナに繊維束を巻回して作製される。中間体の形状は、高圧タンクの形状に合わせて形成される。例えば、高圧タンクが細長い形状である場合、中間体も細長い形状で形成される。中間体の形状によっては、樹脂を含浸させる前に変形し、中間体がキャビティの表面に広範囲に亘って接触する場合がある。
【0005】
中間体の表面のうちキャビティの表面に接触している領域では、中間体とキャビティとの間に溶融樹脂が流入しない。この結果、中間体の表面に溶融樹脂が接触されず、中間体の表面から溶融樹脂が含浸することができない。この結果、繊維束に樹脂が十分に含浸されていない箇所が生じ得る。
【0006】
本明細書では、中間体がキャビティの表面に接触することを抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、高圧タンク製造装置を開示する。高圧タンク製造装置は、ライナに繊維束が巻回されている中間体が配置されるキャビティを有する金型と、前記金型に対して移動可能に配置されており、前記キャビティの表面から前記キャビティ内に突出して前記キャビティに配置される中間体に接触する接触位置と、前記キャビティに配置される中間体から離間する離間位置と、の間で移動するピン部と、を備え、前記ピン部は、前記接触位置で、前記キャビティに流入される溶融樹脂が前記キャビティの前記表面と前記中間体との間で前記ピン部を越えて流動可能に配置されている。
【0008】
また、本明細書では、高圧タンクの製造方法を開示する。この製造方法は、上記の高圧タンク製造装置のキャビティに、ライナに繊維束が巻回されている中間体を配置する配置工程であって、ピン部が接触位置に配置される前記配置工程と、前記キャビティに溶融樹脂を注入して、前記溶融樹脂が前記キャビティの前記表面と前記中間体との間において前記ピン部を越えて流動させて前記キャビティ内に前記溶融樹脂を充填する充填工程と、前記キャビティ内の前記樹脂を前記繊維束に含浸させる含浸工程と、前記ピン部を接触位置から離間位置に移動させる移動工程と、を備える。
【0009】
上記の構成によれば、キャビティ内で、ピン部が中間体と接触することによって、中間体がキャビティ表面に接触することを抑制することができる。溶融樹脂は、ピン部を越えてキャビティ表面と中間体との間を流れることができるため、ピン部によって溶融樹脂の流れが阻害されることを抑制することができる。また、ピン部を接触位置から離間位置に移動させることによって、ピン部との接触していた部分の中間体の表面にも溶融樹脂を接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施例のキャビティを流れる樹脂の流れを表す模式図。
【
図4】実施例の高圧タンクの製造方法を示すフローチャート。
【
図5】実施例のピン部が離間位置に位置する状態の高圧タンク製造装置の縦断面図。
【0011】
本明細書が開示する熱管理装置の技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0012】
前記ピン部は、前記キャビティの前記表面から同一の方向に向かって突出している複数のピンであって、互いに離間して配置されている前記複数のピンを備えていてもよい。
【0013】
この構成によれば、同一方向に突出する複数のピンが複数の位置で中間体に接触することによって、中間体を支持することができる。これにより、中間体がキャビティ表面に接触することを抑制することができる。
【0014】
前記中間体は、前記中間体の長手方向に延びる筒状の中央部分と、前記中央部分の両端のそれぞれにおいて先端に向かって徐々に細くなる先端部分と、を備え、前記ピン部は、前記中央部分に接触してもよい。
【0015】
中間体の先端部分は徐々に細くなる形状を有しているため、変形しづらい。一方、中間体の中央部分は、筒状を有しており、変形しやすい。ピン部が中央部分に接触することによって、より変形しやすい中央部分にピン部を接触させることができる。
【0016】
高圧タンクの製造方法の前記移動工程では、前記キャビティ内において前記樹脂が硬化する前に、前記ピン部を、前記接触位置から前記離間位置に移動させてもよい。
【0017】
この構成によれば、ピン部が接触位置から離間位置に移動することによって形成された空間に、硬化していない溶融樹脂を流入させることができる。これにより、中間体の表面うち、ピン部に接触していた部分にも、樹脂を接触させることができる。これにより、中間体の全域において、中間体の表面から繊維束に樹脂を含浸させることができる。
【0018】
(実施例)
図1に示すように、本実施例の高圧タンク製造装置10は、高圧タンク100(
図2参照)を製造する際に用いられる。
【0019】
(高圧タンクの構成)
最初に、
図2を参照して高圧タンク100を説明する。高圧タンク100は、燃料電池自動車に搭載され、天然ガス、水素ガス等の燃料ガスを貯蔵する。高圧タンク100は、ライナ102と、樹脂が含浸されている繊維束104と、環状部材106と、を備える。ライナ102は、ガスバリア性の樹脂材料で作製されている。ライナ102は、中央部分102aにおいて円筒形状を有している。ライナ102の先端部分102bは、中央部分102aから離間してライナ102の端に向かうのに従って、徐々に細くなっている。
【0020】
ライナ102の外側表面には、繊維束104が配置されている。繊維束104は、ライナ102の外側表面に炭素繊維を巻回させることによって形成されている。繊維束104は、ライナ102の全長に亘って配置されている。繊維束104は、ブレーディング製法によって炭素繊維が巻回されている。
【0021】
繊維束104は、高圧タンク100の両端において、ライナ102と環状部材106とによって、挟まれて保持されている。高圧タンク製造装置10は、ライナ102に繊維束104が巻回され、かつ、環状部材106によって繊維束104が保持されている中間体200の繊維束104に樹脂を含浸させるために用いられる。このため、高圧タンク製造装置10は、含浸装置10と呼ぶこともできる。なお、変形例では、高圧タンク100の用途は、燃料電池自動車の燃料ガスを貯留するタンクに限られず、上記と同様の構造を有しており、高圧のガスを貯留するタンクであってもよい。
【0022】
(高圧タンク製造装置の構成)
図1に示すように、金型11と、ピン部20と、を備える。金型11は、上型12と下型14とを備える。上型12と下型14とが閉じられると、金型11内にキャビティ40が形成される。キャビティ40には、中間体200が配置される。キャビティ40は、中間体200の外形よりも若干大きな空間を有する。このため、キャビティ40に中間体200が配置されている状態では、キャビティ40と中間体200との間に、溶融樹脂が流れる程度の小さな隙間が形成される。なお、
図1及び
図5では、見易さを優先して、キャビティ40と中間体200との隙間が大きく描かれている。
【0023】
上型12には、ピン部20が取り付けられている。ピン部20は、複数のピン22と、支持板24と、アクチュエータ26と、を備える。複数のピン22のそれぞれは、円柱形状を有する。複数のピン22は、上型12において、キャビティ40の表面から上方に延びる配置孔42内に配置されている。なお、
図1及び
図5では、ピン22と配置孔42との隙間が大きく描かれているが、ピン22と配置孔42との間には、溶融樹脂が流入しない程度の隙間が設けられている。
【0024】
複数のピン22は、上型12において、中間体200の長手方向(即ち
図1の左右方向)に互いに間隔を有して並んでいる。複数のピン22は、互いに平行に配置されている。複数のピン22は、上端において、支持板24に取り付けられている。支持板24は、アクチュエータ26によって、上型12に対して上下方向に移動可能に配置されている。アクチュエータ26は、油圧シリンダであってもよいし、エアシリンダ、サーボモータ等であってもよい。複数のピン22は、支持板24がアクチュエータ26によって上下方向に移動されることによって、
図1に示すような中間体200に接触する接触位置と、
図5に示すような中間体200から離間する離間位置と、の間で上下方向に移動可能に配置されている。複数のピン22が離間位置に配置されている状態では、複数のピン22の下端面は、キャビティ40の表面と同一面上に位置する。
【0025】
下型14には、ピン部30が取り付けられている。ピン部30は、複数のピン32と、支持板34と、アクチュエータ36と、を備える。複数のピン32のそれぞれは、複数のピン22と同様の構成を有する。複数のピン32は、下型14において、キャビティ40の表面から上方に延びる配置孔44内に配置されている。ピン32と配置孔44との関係は、ピン22と配置孔42との関係と同一である。
【0026】
複数のピン32は、下端において、支持板24と同様の支持板34に取り付けられている。支持板34は、アクチュエータ26と同様のアクチュエータ36によって、下型14に対して上下方向に移動可能に配置されている。これにより、複数のピン32は、支持板34がアクチュエータ36によって上下方向に移動されることによって、
図1に示すような中間体200に接触する接触位置と、
図5に示すような中間体200から離間する離間位置と、の間で上下方向に移動可能に配置されている。複数のピン32が離間位置に配置されている状態では、複数のピン32の下端面は、キャビティ40の表面と同一面上に位置する。
【0027】
図3に示すように、下型14には、中間体200の両端を支持する支持部16を備える。支持部16は、中間体200の環状部材106を支持する。これにより、中間体200が金型11内で支持される。また、下型14には、キャビティ40に樹脂を充填するための複数の流路46が配置されている。複数の流路46は、金型11外から金型11内に注入される溶融樹脂を、キャビティ40内に案内する溝形状を有する。
【0028】
(高圧タンクの製造方法)
次いで、高圧タンク100の製造方法を説明する。高圧タンク100では、まず、ライナ102に繊維束104を配置して環状部材106で保持することによって、中間体200が作製される。中間体200は、ライナ102の中央部分102aによって形成される中央部分200aと、ライナ102の先端部分102bによって形成される先端部分200bと、を有する。中央部分200aは、円筒形状を有する。先端部分200bは、中央部分200aから離間して、中間体200の先端に向かって、徐々に細くなっている。
【0029】
次いで、繊維束104に樹脂を含浸させる樹脂含浸処理が実行される。樹脂含浸処理では、
図1に示すように、設備300(例えばプレス装置)に取り付けられた金型11に、中間体200が配置されているキャビティ40に樹脂を注入し、加圧することによって、繊維束104に樹脂を含浸させる、いわゆるRTM(Resin Tranfer Moldingの略)成形が実行される。
【0030】
図4に示すように、樹脂含浸処理では、まず、金型11の上型12と下型14とを離間させて、下型14のキャビティ40の形状部分に中間体200を配置し、支持部16で中間体200を固定する(S12)。次いで、上型12と下型14とを閉じる。中間体200が金型11に配置される工程では、複数のピン22、32は、中間体200が配置される前から、接触位置に配置されている。なお、変形例では、複数のピン22、32は、中間体200が金型11に配置される際には離間位置に配置され、中間体200が金型11に配置された後に接触位置に移動されてもよい。複数のピン22、32は、中間体200の中央部分200aに接触する位置に配置される一方、先端部分200bに接触する位置には配置されない。
【0031】
次いで、キャビティ40内に、溶融樹脂が注入される(S14)。注入される樹脂は、例えば、エポキシ樹脂である。キャビティ40内に樹脂が充填されると、キャビティ40内の樹脂を所定圧力まで昇圧する(S16)。次いで、キャビティ40内の樹脂が所定圧力まで昇圧されると、所定圧力で、所定期間保持される(S18)。これにより、樹脂が繊維束104に含浸される。
【0032】
樹脂が保圧されて含浸が進行すると、樹脂が徐々に硬化していく。S20では、樹脂が完全に硬化する前に、複数のピン22、32を、接触位置から離間位置まで移動させる。この結果、硬化前の樹脂が、複数のピン22、32が移動することによって形成された空間に流入する。これにより、複数のピン22、32が接触していた位置からも、樹脂を含浸させることができる。
【0033】
次いで、樹脂の硬化後(S20)、上型12と下型14とを離間させ、成形済みの高圧タンク100を、金型11から取り出して(S22)、樹脂含浸処理を終了する。
【0034】
(効果)
中間体200は、樹脂製のライナ102が歪んで成形されることに起因して、設計値に対して歪んだ状態で作製される場合がある。中間体200が金型11に配置された段階では、中間体200は、支持部16によって支持されている。中間体200が歪んでいない場合には、キャビティ40の表面と中間体200との間には、溶融樹脂が流入するように、若干の隙間が形成される。しかしながら、実際には中間体200が歪んでいるために、支持部16によって両端が支持されている状態では、中間体200の中央部分200aが曲がってしまう。なお、中間体200とキャビティ40の表面との接触を避けるために、中間体200とキャビティ40の表面との隙間を大きくすると、含浸のために必要な樹脂量が増加してしまう。
【0035】
高圧タンク製造装置10では、キャビティ40に突出するピン部20、30が配置されている。この構成によれば、ピン部20、30によって、曲がった中間体200がキャビティ40の表面に接触しないように支持することができる。これにより、中間体200とキャビティ40の表面との隙間が維持される。この結果、
図3に示すように、流路46からキャビティ40内に流入する溶融樹脂が、中間体200とキャビティ40との間を流れて、中間体200の表面の全体に行き渡る。
【0036】
複数のピン22、32は、流路46から離間して配置されている。また、複数のピン22、32は、キャビティ40内に互いに離間して配置されている。このため、中間体200とキャビティ40との間を流れる溶融樹脂は、複数のピン22、32に遮られることなく、複数のピン22、32を越えて流れることができる。これにより、複数のピン22、32によって、溶融樹脂の流れが阻害される事態を回避することができる。なお、変形例では、溶融樹脂をキャビティ40内に注入する流路は、流路46に限定されない。例えば、流路は、上型12においてキャビティ40の上方に配置されていてもよい。また、流路の本数に制限は無い。いずれの流路であっても、ピン部20、30は、キャビティ40内を流れる溶融樹脂の流れを妨げるような配置及び形状を有していない。
【0037】
また、複数のピン22は、同一の方向(即ち下方向)に向かって、キャビティ40の表面から突出している。この構成によれば、複数のピン22によって、中間体200の歪みを抑えることができる。これにより、中間体200が複数のピン22が突出している方向に曲がって、キャビティ40の表面に接触することを抑制することができる。複数のピン33も同様である。
【0038】
複数のピン22、32は、溶融樹脂が硬化する前に、接触位置から離間位置まで移動することによって、複数のピン22、32が接触していた位置からも、樹脂を含浸させることができる。これにより、樹脂が適切に含浸されている部分が発生することを抑制することができる。
【0039】
複数のピン22、32は、中間体200の中央部分200aに配置される一方、中間体200の先端部分200bに配置されない。ライナ102では、円筒形状の中央部分102aで歪みが発生しやすい一方、徐々に縮径する形状を有する先端部分102bでは歪みが発生しにくい。高圧タンク製造装置10では、中央部分200aに接触するように複数のピン22、32を配置する一方、先端部分102bに接触するピンは配置されない。これにより、効果的な位置にピン22、32を配置することによって、ピンの個数を抑制することができる。
【0040】
なお、複数のピン22、32は、円柱形状に限られない。例えば、複数のピン22、32のうち、中間体200に接触する部分は、湾曲面、例えば部分的な球面形状を有していてもよい。ピン22、32と中間体200との接触面積を小さくすることによって、ピン22、32によって溶融樹脂と中間体200との接触が妨げられることを回避することができる。この結果、例えば、複数のピン22、32を離間位置に移動させずに、樹脂を適切に含浸させ得る。
【0041】
一方、複数のピン22、32の形状を、中間体200との接触面積が大きくなるような形状にしてもよい。例えば、複数のピン22、32の形状を、中間体200の表面形状に沿った形状に形成してもよい。ピン22、32と中間体200との接触面積を大きくすることによって、中間体200の表面、即ち繊維束104がピン22、32から受ける接触圧力を低減させることができる。これにより、繊維束104が、ピン22、32との接触圧力によって、窪んでしまうことを抑制することができる。
【0042】
複数のピン22、32の形状は、同一でなくてもよい。例えば、中間体200の歪み量が大きい箇所には、接触圧力を低減するために接触面積が大きい形状のピンを配置する一方、中間体200の歪み量が小さい箇所には、接触面積が小さい形状のピンを配置してもよい。この場合、接触面積が小さいピンは、金型11に対して固定されていてもよい。
【0043】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0044】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0045】
10:高圧タンク製造装置(含浸装置)、11:金型、12:上型、14:下型、16:支持部、20、30:ピン部、22、32:ピン、26、36:アクチュエータ、40:キャビティ、100:高圧タンク、200:中間体、200a:中央部分、200b:先端部分