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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】加工システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
   A22B 5/16 20060101AFI20240806BHJP
   B25J 9/06 20060101ALI20240806BHJP
   B25J 9/18 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
A22B5/16
B25J9/06 B
B25J9/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021041783
(22)【出願日】2021-03-15
(65)【公開番号】P2022141465
(43)【公開日】2022-09-29
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】朱谷 知洋
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】稲積 伸悟
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-146180(JP,U)
【文献】特開2000-300161(JP,A)
【文献】米国特許第06623348(US,B1)
【文献】米国特許第04751768(US,A)
【文献】特開昭49-005769(JP,A)
【文献】特開2000-004774(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/129409(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22B 5/16
B25J 9/06
B25J 9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屠体の皮部を肉部から剥皮する制御システムであって、
前記屠体の腹部位の皮部を長手方向に切開するとともに、前記腹部位の長手方向の一方の端部において胴体廻りに切開し、前記胴体廻りに切開された皮部を係止可能範囲まで部分的に剥皮する処理工程を行う第1サブシステムと、
前記係止可能範囲まで部分的に剥皮された皮部が係止されるローラを有し、前記ローラを回動させて前記係止された皮部を巻き取りながら前記屠体の肉部から皮部を引き剥がして剥いでいく処理工程を行う第2サブシステムと、
前記屠体の肉部と皮部との境目を検出するセンサを有し、前記センサで検出された肉部と皮部との境目に温度調整されたナイフを当接する処理工程を行う第3サブシステムと、
を備えることを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記ナイフは、前記屠体の皮下脂肪が融解し皮剥ぎが可能な温度範囲で温度調整される、請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記第1サブシステムは、温度調整可能な治具部と、前記治具部の上部に一体的に取り付けられた腹部切開用刃物を有し、前記屠体の皮下脂肪が融解可能な温度範囲で温度調整された前記治具部の底部を前記屠体の腹部位の肉部に当接させるとともに、前記腹部位の皮部を前記治具部の上部に取り付けられた前記腹部切開用刃物を用いて切開する、ことを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項4】
前記第1サブシステムから前記第3サブシステムは通信ネットワークを通じて、前記第1サブシステムの処理工程と、前記第2サブシステムの処理工程と、前記第3サブシステムの処理工程とを管理するコントローラに接続され、
前記第1サブシステムは、前記コントローラから出力された制御指令に従って駆動する第1多関節ロボットを備え、前記第3サブシステムは、前記コントローラから出力された制御指令に従って駆動する第2多関節ロボットを備える、請求項1に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1多関節ロボットは、前記コントローラから出力された制御指令に従って前記第3サブシステムの処理工程を行う、請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
屠体の皮部を肉部から剥皮する制御システムのコンピュータが実行する制御方法であって、
前記屠体の腹部位の皮部を長手方向に切開するとともに、前記腹部位の長手方向の一方の端部において胴体廻りに切開し、前記胴体廻りに切開された皮部を係止可能範囲まで部分的に剥皮する処理工程を行うことと、
前記係止可能範囲まで部分的に剥皮された皮部が係止されるローラを有し、前記ローラを回動させて前記係止された皮部を巻き取りながら前記屠体の肉部から皮部を引き剥がして剥いでいく処理工程を行うことと、
前記屠体の肉部と皮部との境目を検出するセンサを有し、前記センサで検出された肉部と皮部との境目に温度調整されたナイフを当接する処理工程を行うことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屠体の剥皮工程に係る加工システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食肉処理の分野等においては、食肉等に供される牛、豚、羊等の屠体の解体工程として、当該屠体から皮を剥皮する剥皮工程が知られている。剥皮工程においては、例えば、特許文献1に開示の作業機材を用いて吊り下げられた屠体の腹部の皮を、作業者がナイフ等を用いて身長方向に切り開く工程が行われる。その後、切り開かれた皮を左右に剥皮するとともに、右腹側と左腹側のそれぞれの剥皮を担当する2人の作業者が、それぞれの部位の肉部と皮部とのつなぎ目をエアナイフ等で切りながら剥皮された屠体の皮を巻き取る工程とが行われていた。このような屠体からの剥皮作業は、肉部側および皮部側のそれぞれに傷等をつけないよう、繊細な作業が要求されるため熟練性を要する作業である。しかしながら作業者の高齢化が進み、熟練作業者の確保、新規作業者等の確保が困難であることから、剥皮工程の自動化が要望されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-300161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、剥皮工程の自動化を図り、生産性、収益性の確保が可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための開示の技術の一形態は、
屠体の皮部を肉部から剥皮する制御システムであって、
前記屠体の腹部位の皮部を長手方向に切開するとともに、前記腹部位の長手方向の一方の端部において胴体廻りに切開し、前記胴体廻りに切開された皮部を係止可能範囲まで部分的に剥皮する処理工程を行う第1サブシステムと、
前記係止可能範囲まで部分的に剥皮された皮部が係止されるローラを有し、前記ローラを回動させて前記係止された皮部を巻き取りながら前記屠体の肉部から皮部を引き剥がして剥いでいく処理工程を行う第2サブシステムと、
前記屠体の肉部と皮部との境目を検出するセンサを有し、前記センサで検出された肉部と皮部との境目に温度調整されたナイフを当接する処理工程を行う第3サブシステムと、
を備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、制御システムは、第1サブシステムであるロボット11a、サーボ機構20aから20c、温度調整機構30a、測長センサ12を用いて、屠体Z1の腹部位における臀部付近から頭部にかけての長手方向の皮部Z1aを切開し、切開された皮部Z1aを係止可能範囲まで部分的に剥皮する前工程を行うことができる。また、制御システムは、第2サブシステムであるサーボ機構20dとローラ206とを用いて、係止可能範囲まで部分的に剥皮された皮部z1aが係止されたローラ206を回動させて皮部(Z1a)を巻き取りながら、屠体(Z1)の肉部(Z1b)から皮部(Z1a)を引き剥がしながら剥いでいく巻き取り工程を行うことができる。そして、制御システムは、第3サブシステムであるロボット11b、温度調整機構30b、二次元センサ13、画像センサを用いて、屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとの境目に温度調整された金属片である皮剥ぎ用
ナイフ15を当接する巻き取り工程を行うことができる。本形態では、金属片を温めた状態で皮部Z1aと肉界面を接触させて皮部Z1aを分離することができる。剥皮工程の自動化を図り、生産性、収益性の確保が可能になる。
【0007】
また、開示の技術の一形態においては、前記ナイフは、前記屠体の皮下脂肪が融解し皮剥ぎが可能な温度範囲で温度調整される、ようにしてもよい。これにより、皮下脂肪が融解可能な温度範囲(例えば、40度から50度)で一定温度に加熱された皮剥ぎ用ナイフ15からの熱で、当該ナイフが当接されたつなぎ目箇所の皮下脂肪をとかしながら皮部Z1aと肉部Z1bとの間を切断できる。皮下脂肪を通じて一体的につなげられていた肉部Z1bからの一部肉片の引き剥がし、皮部Z1aの一部破損を抑制できる。
【0008】
また、開示の技術の一形態においては、前記第1サブシステムは、温度調整可能な治具部と、前記治具部の上部に一体的に取り付けられた腹部切開用刃物を有し、前記屠体の皮下脂肪が融解可能な温度範囲(例えば、40度から50度)で温度調整された前記治具部の底部を前記屠体の腹部位の肉部に当接させるとともに、前記腹部位の皮部を前記治具部の上部に取り付けられた前記腹部切開用刃物を用いて切開する、ようにしてもよい。これにより、腹部の皮下脂肪を腹部切開用刃物14の治具部(141、143)からの熱で溶かしつつ、皮切部(142、144)で皮部Z1aを切開することができる。皮下脂肪を通じて一体的につなげられていた肉部Z1bからの一部肉片の引き剥がし、皮部Z1aの一部破損を抑制できる。
【0009】
また、開示の技術の一形態においては、前記第1サブシステムから前記第3サブシステムは通信ネットワークを通じて、前記第1サブシステムの処理工程と、前記第2サブシステムの処理工程と、前記第3サブシステムの処理工程とを管理するコントローラに接続され、前記第1サブシステムは、前記コントローラから出力された制御指令に従って駆動する第1多関節ロボットを備え、前記第3サブシステムは、前記コントローラから出力された制御指令に従って駆動する第2多関節ロボットを備える、ようにしてもよい。これにより、前工程および巻き取り工程を含む剥皮工程の全体的な処理プロセスを管理・制御するコンピュータであるコントローラ(上位コントローラ10)からの制御指令に基づいて第1多関節ロボットであるロボット11a、第2多関節ロボットであるロボット11bを、連系して協働させることができる。剥皮工程の前工程および巻き取り工程の処理を同時に処理することが可能になるため、処理に係るタクトタイムの短縮を図ることが可能になる。
【0010】
また、開示の技術の一形態においては、前記第1多関節ロボットは、前記コントローラから出力された制御指令に従って前記第3サブシステムの処理工程を行う、ようにしてもよい。これにより、単一のロボットが、前工程および巻き取り工程を行うことでシステムのコンパクト化を図り、設備に係るランニングコストの抑制が可能になる。
【0011】
また、開示の技術の他の一形態においては、
屠体の皮部を肉部から剥皮する制御システムのコンピュータが実行する制御方法であって、
前記屠体の腹部位の皮部を長手方向に切開するとともに、前記腹部位の長手方向の一方の端部において胴体廻りに切開し、前記胴体廻りに切開された皮部を係止可能範囲まで部分的に剥皮する処理工程を行うことと、
前記係止可能範囲まで部分的に剥皮された皮部が係止されるローラを有し、前記ローラを回動させて前記係止された皮部を巻き取りながら前記屠体の肉部から皮部を引き剥がして剥いでいく処理工程を行うことと、
前記屠体の肉部と皮部との境目を検出するセンサを有し、前記センサで検出された肉部と皮部との境目に温度調整されたナイフを当接する処理工程を行うことと、
を含むことを特徴とする制御方法。
【0012】
このような形態であっても、制御システムは、第1サブシステムであるロボット11a、サーボ機構20aから20c、温度調整機構30a、測長センサ12を用いて、屠体Z1の腹部位における臀部付近から頭部にかけての長手方向の皮部Z1aを切開し、切開された皮部Z1aを係止可能範囲まで部分的に剥皮する前工程を行うことができる。また、制御システムは、第2サブシステムであるサーボ機構20dとローラ206とを用いて、係止可能範囲まで部分的に剥皮された皮部Z1aが係止されたローラ206を回動させて皮部(Z1a)を巻き取りながら、屠体(Z1)の肉部(Z1b)から皮部(Z1a)を引き剥がしながら剥いでいく巻き取り工程を行うことができる。そして、制御システムは、第3サブシステムであるロボット11a、温度調整機構30b、二次元センサ13、画像センサを用いて、屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとの境目に温度調整された金属片である皮剥ぎ用ナイフ15を当接する巻き取り工程を行うことができる。本形態であっても、金属片を温めた状態で皮部Z1aと肉界面を接触させて皮部Z1aを分離することができる。剥皮工程の自動化を図り、生産性、収益性の確保が可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、剥皮工程の自動化を図り、生産性、収益性の確保が可能な技術が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】比較例における屠体の剥皮工程を説明する説明図である。
図2】本発明の実施例に係る制御システムの概略構成を説明する説明図である。
図3】本発明の実施例に係る制御システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例における剥皮工程の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施例における巻き付け形態の一例を説明する図である。
図6】本発明の実施例における巻き付け形態の他の一例を説明する図である。
図7】本発明の実施例における巻き付け形態の他の一例を説明する図である。
図8】本発明の実施例における巻き取り形態の一例を説明する図である。
図9】本発明の実施例に係る上位コントローラのハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】本発明の実施例に係る前工程の処理の一例を示すフローチャートである。
図11】本発明の実施例に係る巻き取り工程の処理の一例を示すフローチャートである。
図12】本発明の実施例に係る境目検出の一例を説明する図である。
図13】本発明の実施例に係る境目検出の他の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔適用例〕
以下、本発明の適用例について、図面を参照しつつ説明する。
図2から4に例示のように、本発明の適用例に係る制御システム1は、剥皮工程の前工程における屠体Z1の腹部を切開し、腹部から屠体Z1の胴体周りに左右に切り開く処理を行う構成として、ロボット11aと、サーボ機構(20aから20c)と、温度調節機構30aと、測長センサ12とを備える。また、制御システム1は、剥皮工程の巻き取り工程における屠体Z1から剥皮された皮部Z1aの巻き取りおよび屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとの切り離し処理を行う構成として、ロボット11bと、サーボ機構20dと、温度調節機構30bと、二次元形状センサ13とを備える。これらの構成は、制御システム1が制御対象とする前工程および巻き取り工程を含む剥皮工程の全体的な処理プロ
セスを管理・制御するコンピュータの上位コントローラ10と適宜のタイミングで通信可能なように接続される。
【0016】
本発明の適用例に係る制御システム1のロボット11aには、温度調節ユニット31aによって加熱温度の制御が可能なヒータH1が設けられた腹部切開用刃物14が取り付けられる。そして、ロボット11aでは、画像センサ、測長センサ12等で検出された情報を元に上位コントローラ10で生成された制御指令に基づいて、屠体Z1の皮下脂肪を加熱された腹部切開用刃物14の熱で溶かしながら、屠体Z1の腹部切開処理、腹部から屠体Z1の胴体周りに左右に切り開く処理が行われる。
【0017】
また、本発明の適用例に係る制御システム1のロボット11bには、温度調節ユニット31bによって加熱温度の制御が可能なヒータH2が設けられた金属片である皮剥ぎ用ナイフ15が取り付けられる。本形態では、金属片を温めた状態で皮部Z1aと肉界面を接触させて皮部Z1aを分離させる。そして、ロボット11bでは、画像センサ、二次元形状センサ13等で検出された情報を元に上位コントローラ10で生成された制御指令に基づいて、屠体Z1の皮下脂肪を加熱された皮剥ぎ用ナイフ15の熱で溶かしながら、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aと肉部Z1Bとのつなぎ目における切り離し処理が行われる。
【0018】
また、本適用例に係る制御システム1においては、サーボ機構20dのサーボドライバ21dを介して、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aを巻き取るローラ206のトルクが一定になるようにサーボモータM4のサーボ制御が行われる。このため、サーボモータM4の回転軸に嵌合されたローラ206は、剥皮された屠体Z1の皮部Z1aが一定の引っ張り力で巻き取られるように制御される。サーボモータM4によるトルク制御により、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aは、肉部Z1bの引き剥がれ、皮部Z1aの断裂等を防ぎながら、剥皮された皮部Z1aを巻き取ることが可能になる。
【0019】
なお、本適用例に係る制御システム1においては、ローラ206を駆動するサーボモータM4に係るトルク値の増大するタイミングに応じて、剥皮中の撮像画像からつなぎ目における皮部Z1aの引っ掛かり箇所を特定し、当該箇所の切断指示をロボット11bに指示することができる。本適用によれば、剥皮工程の自動化を図り、生産性、収益性の確保が可能な制御システムが提供できる。
【0020】
〔実施例1〕
以下では、本発明の具体的な実施の形態について、図面を用いて、より詳細に説明する。
【0021】
先ず、比較例として、図1を用いて従来における屠体の剥皮工程を説明する。図1(a)には、剥皮工程における屠体Z1の腹部を切開する工程(以下、「前工程」ともいう)、図1(b)には、屠体Z1の肉部Z1aと皮部Z1bとのつなぎ目をエアナイフ207等で切りながら剥皮された屠体Z1の皮を巻き取る工程(以下、「巻き取り工程」ともいう)を説明する説明図が例示される。以下では、屠体Z1は牛体として説明を行うが、剥皮工程の対象になる屠体は食肉等に供されるものであれば、他の動物、例えば、豚、羊等の家畜、熊、鹿等の狩猟によって捕獲された鳥獣であってもよい。図1において、剥皮対象の屠体Z1は、剥皮工程に至る解体工程において、前脚および後ろ脚、顔皮剥ぎ、尾部切り落とし、角切り等の処理が行われ、屠体Z1の左右の後ろ脚がそれぞれクレーン等のフック(203a、203b)を用いて吊り下げられた状態である。屠体Z1は、後ろ脚から臀部にかけての皮部Z1aが剥皮され、肉部Z1bが露出されている。なお、図1においては、吊り下げられた状態の屠体Z1の右腹を側面視する図が例示されている。また、剥皮対象の屠体Z1は、頭部Z1cが残された図例となっているが、剥皮工程の屠体Z
1は既に頭落とし処理が施された屠体であってもよい。
【0022】
図1(a)の前工程において、作業者M1は、高さ方向に昇降する可動リフト201の作業台201aに搭乗し、吊り下げられた屠体Z1の腹部を切開するための高さ位置まで移動する。そして、作業者M1は作業台201aを降下させながら、ナイフ202等を用いて屠体Z1の腹部を切開する。作業台201aの降下に伴い、ナイフ202等に接する腹部の皮が後ろ脚側端部から頭部Z1cにかけて切開される。なお、屠体Z1の後ろ脚側の腹部位の皮部Z1bは、剥皮された皮部Z1bを巻き取り工程で巻き取るため、腹部から屠体Z1の胴体周りの左右の背中方向に部分的に切り開かれる。図1(a)の前工程においては、剥皮された皮部Z1aおよび肉部Z1bのそれぞれに対して傷等をつけないように作業が行われるため、当該工程を遂行する作業者には熟練性が要求される。前工程の処理後、後ろ脚側端部が切開された屠体Z1の皮部Z1aを剥皮し、屠体Z1の肉部Z1bから剥皮された皮部Z1aを巻き取る巻き取り工程に移行される。なお、図1(a)においては、右腹側の肉部Z1bから剥皮された皮部Z1aが図示されているが、皮部Z1aは背側を廻り、左腹側から剥皮された皮部と一体的につながっている。なお、巻き取り工程に備えて、皮部Z1aの後ろ脚側端部の切開された箇所に隣接する一部分は、剥皮される。
【0023】
巻き取り工程では、屠体Z1から一部が剥皮された皮部Z1aを巻き取るダウンプーラ205が使用される。ダウンプーラ205は、高さ方向に昇降する可動リフト204に設けられた作業台204aとともに移動するローラ206を備える。ローラ206はモータ等の駆動装置によって、回転軸を中心に巻き取り方向に回転される。図1(b)において、作業者M2およびM3は、作業台204aに搭乗し、前工程で屠体Z1から剥皮された皮部Z1aの先端部をローラ206に巻き付けるための高さ位置まで移動する。そして、作業者M2およびM3は連携し、一枚皮でつながっている右腹側の皮部Z1aの端部と左腹側から剥皮された皮部の端部とをチェーン206a等を用いてローラ206に巻き付ける。屠体Z1から剥皮された皮部のローラ206への巻き付け完了後、ローラ206を巻き取り方向に回転させて剥皮された皮部Z1aを巻き取るとともに、皮部Z1aと肉部Z1bとのつなぎ目をエアナイフ207等を用いて切り離していく作業が開始される。エアナイフ207は図示するように回転可能な鋸刃を空気圧によって回転させる切開用の工具である。なお、作業の開始とともに(巻き取り用のローラ206の回転とともに)、作業者M2およびM3が搭乗する作業台204aの下降が開始される。
【0024】
図1(b)の巻き取り工程において、作業者M2はエアナイフ207の空気圧で鋸刃を回転させて屠体Z1の左腹側から皮部を切り離し、作業者M3は右腹側から皮部Z1aを切り離す。このように、剥皮された皮部Z1aをローラ206で巻き取りながら、エアナイフ207等を用いて屠体Z1から皮部Z1aを切り離す作業は、作業者M2およびM3の連携する作業によって行われるため、繊細な熟練性が要求される。巻き取り工程では、上記した皮部Z1aの屠体Z1からの切り離し作業が作業台204aを下降させながら行われ、前工程で切開された屠体Z1の後ろ脚側の腹部位の胴体周りに左右に切り開かれた位置から頭部Z1cに至るまでの皮部Z1aが屠体Z1から剥皮される。巻き取り工程による処理が施された一枚皮の皮部Z1a、および、当該皮部が剥皮された屠体Z1のそれぞれは、出荷のための次の処理工程に移行される。
【0025】
図1(a)、(b)を用いて説明したように、屠体Z1の剥皮工程は、前工程および巻き取り工程のそれぞれに、剥皮された皮部Z1aおよび肉部Z1bのそれぞれに対して傷等をつけないように作業を進めるための熟練性、繊細性が求められる。前工程から巻き取り工程に至る剥皮工程を連続して遂行するためには、少なくとも3人の熟練作業者の確保を要していた。
【0026】
<システム概要>
図2は、本実施例に係る制御システム1の概略構成を説明する説明図である。図2に示す制御システム1は、剥皮工程の作業を処理するロボット(11a、11b)と、測長センサ(12a、12b)と、二次元形状センサ(13a、13b)とを備える形態の一例である。剥皮工程の作業を処理するロボットを複数に備えることで、剥皮工程の前工程および巻き取り工程の処理を連系して協働し、同時に処理することが可能になるため、処理に係るタクトタイムの短縮を図ることができる。以下では、ロボット11aは、剥皮工程の前工程を処理し、ロボット11bは巻き取り工程を処理するものとして説明するが、単一のロボットが前工程および巻き取り工程を行うとしてもよい。単一のロボットが、前工程および巻き取り工程を行うことでシステムのコンパクト化を図り、設備に係るランニングコストの抑制が可能になる。図2においては、クレーン等のフックで吊り下げられた屠体Z1の右腹Z1eを側面視する図が例示され、可動リフト204の作業台204aに設けられた巻き取り工程の処理を行うロボット11bが例示されている。なお、ロボット(11a、11b)を総称してロボット11とも称し、測長センサ(12a、12b)を総称して測長センサ12、二次元形状センサ(13a、13b)を総称して二次元形状センサ13ともいう。
【0027】
本実施例に係るロボット11は、例えば、複数の関節部と複数のアーム部から構成された可動部を有する垂直多関節ロボットである。複数の関節部のそれぞれには回転角度(回転位置)を検出するセンサ(ロータリエンコーダ等)を有するモータが内蔵されており、当該センサによって検出された回転角度に基づいて当該関節部に接続するアーム部のひねりの動きや曲げの動きが制御される。
【0028】
ロボット11の先端には、吸着器、クリッパ(二指ハンド等)といった各種のツールが取り付け可能なフランジが設けられる。本実施例のロボット11a、ロボット11bの先端には、屠体Z1の肉部Z1bから皮部Z1aを剥皮するための皮剥ぎ用ナイフ15等がフランジを介して取り付けられる。また、ロボット11のフランジ近傍には、画像センサ(カメラ)が設けられ、当該画像センサを介して周囲に存在する障害物(作業台、他のロボット、作業者等)の存在が検知されるとともに、剥皮対象の屠体Z1の全体像が撮像される。
【0029】
測長センサ12は、測定対象物との相対的な距離を測定するセンサである。測長センサ12は、例えば、投光面と受光面とを同一面に備え、投光面から測定対象物に向けて投光された可視域のレーザ光の反射光を受光することで、三角距離の原理から測定対象物との間の距離を測定する。本実施例においては、測長センサ12を介して、前工程の屠体Z1との相対距離が測定され、測定された距離値に合わせて腹部切開を行うための刃物の角度が調整される。なお、測長センサ12における距離の測定は、測定された距離値に合わせて腹部切開を行うための刃物の角度調整が可能であれば、赤外線や超音波等を用いる形態であってもよい。さらに、腹部切開を行うための刃物の角度調整が可能であれば、測長センサ12に代えて高精度の画像センサ等を用いてもよい。
【0030】
二次元形状センサ13は、測定対象物の形状に関する特徴を検出するセンサである。2次元形状センサ13は、例えば、投光面と受光面とを同一面に備え、投光面から測定対象物に向けて投光された帯状の可視域のレーザ光の反射光を受光することで、測定対象物の形状に関する特徴を検出する。帯状の可視域のレーザ光が照射された測定対象物表面の形状に関する特徴が反射光の変位として検出される。本実施例においては、二次元形状センサ13を介して、巻き取り工程における屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目の高さ方向の変化を検出し、皮部Z1aを巻き取る際の刃物を当てる箇所として特定する。
【0031】
例えば、二次元形状センサ13で検出された測定対象物の表面の角度変化(角度変化量を特徴量という)がある部分を「変曲点」(これを特徴点という)として捉える。特徴量、すなわち、角度変化が検出された点を繋いで、線を形成し、肉と皮のつなぎ目を検出する。なお、二次元形状センサ13においては、例えば、屠体Z1の右腹側に二次元形状センサ13aが設けられて当該部位における肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目が検出される。また、屠体Z1の左腹側に二次元形状センサ13bが設けられて当該部位の肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目が検出される。
【0032】
剥皮対象の屠体Z1においては、皮部Z1aと肉部Z1bとの間には皮下脂肪が存在し、当該皮下脂肪の存在が屠体Z1から皮部Z1aを引き剥がす際の剥がれにくさの要因であり、従来の作業においては熟練作業者の感覚によって皮部Z1aと肉部Z1bとのつなぎ目の皮下脂肪を把握し、切開刃の当て方や力加減を調整していた。
【0033】
本願の発明者らは、皮下脂肪が融解する温度に着目した。すなわち、皮下脂肪の融点は概ね10度から40度の温度範囲であることに対して、一般的に剥皮工程の作業は常温で行われている。したがって、例えば、金属片を温めた状態で、当該金属片を屠体Z1の皮部Z1aと肉部Z1bとのつなぎ目である肉界面に接触させることで、皮下脂肪の融解を促すことが可能になり皮部Z1aを容易に分離させる。本実施例においては、後述するように前工程に使用される腹部切開用刃物14、および、巻き取り工程で使用される皮剥ぎ用ナイフ15のそれぞれを常温以上に温めて皮下脂肪の融解を促すことにより、屠体Z1の皮部Z1aを剥ぎ易くさせる。
【0034】
具体的には、図2に示すように、前工程に用いられる腹部切開用刃物14、巻き取り工程に用いられる皮剥ぎ用ナイフ15のそれぞれには、加熱用のヒータ(H1、H2)が設けられる。そして、本実施例においては、前工程を行う際の腹部切開用刃物14の温度、および、巻き取り工程を行う際の皮剥ぎ用ナイフ15の温度を常温以上に加熱させる。なお、肉の主要なたんぱく質の硬化温度は50度以上である。このため、本実施例においては、皮下脂肪が融解し始める温度範囲の上値である40度からたんぱく質の硬化温度である50度の範囲内で、腹部切開用刃物14に設けられたヒータH1の加熱温度、および、皮剥ぎ用ナイフ15に設けられたヒータH2の加熱温度を調整する。
【0035】
腹部切開用刃物14の形状例として、例えば、図2の腹部切開用刃物14aおよび14bに示す形状が例示される。腹部切開用刃物14aにおいては、皮下脂肪を融解するためのヒータH1が設けられたアーチ状の治具部141と、皮部Z1aを切り開くナイフとして機能する皮切部142とを備える。アーチ状の治具部141はなまくらに形成され、腹部切開の際には当該治具部の底部141bの面が屠体Z1に当接するようになっている。腹部切開用刃物14aにおいては、治具部141が加熱可能な金属片に相当する。腹部切開時においては、温められた状態の当該治具部の底部141bの面に当接する肉部Z1bの皮下脂肪がヒータH1から伝導された熱によって融解される。皮切部142は、アーチ状の治具部141の底部141bに対向する上部141a側の左右方向の粗中央に位置するように設けられ、腹部切開用刃物14aの移動とともに当該治具部が当接された箇所の皮部Z1aを切り裂くようになっている。なお、腹部切開時においては、治具部141の端部143c側が切開端となる。
【0036】
また、腹部切開用刃物14bにおいても、皮下脂肪を融解するためのヒータH2が設けられたかまぼこ状の治具部143と、皮部Z1aを切り開くナイフとして機能する皮切部144とを備える。腹部切開用刃物14bにおいても、治具部143が加熱可能な金属片に相当する。かまぼこ状の治具部143はなまくらに形成され、腹部切開の際には当該治具部の底部143bの面が屠体Z1に当接するようになっている。腹部切開時においては、温められた状態の当該治具部の底部141bの面に当接する肉部Z1bの皮下脂肪がヒ
ータH1から伝導された熱によって融解される。皮切部144は、アーチ状の治具部141の底部141bに対向する上部141a側の左右方向の粗中央に位置するように設けられ、腹部切開用刃物14bの移動とともに当該治具部が当接された箇所の皮部Z1aを切り裂くようになっている。皮切部144は端部143c側にU字状に開口し、屠体Z1の腹部を切り開くガットナイフのように機能する。なお、腹部切開時においては、治具部143の端部143c側が切開端となる。
【0037】
なお、腹部切開用刃物14aおよび14bの形状は一例であり、剥皮対象の屠体Z1の肉部Z1bの傷をつけない形状であればよい。また、腹部切開用刃物14aの皮切部142、腹部切開用刃物14bの皮切部144は回転刃や超音波カッター等であってもよく、レーザカッター等の非接触のカットが可能な構成であってもよい。
【0038】
本実施例における加熱温度の調整は、例えば、温度調節ユニット(31a、31b)を用いて行われる。腹部切開用刃物14、皮剥ぎ用ナイフ15には、ヒータによって加熱された温度を検知する温度センサがそれぞれに設けられる。温度調節ユニット31aは、温度センサで検知された加熱温度と予め設定された温度範囲に基づいて、作業時の腹部切開用刃物14の温度を皮下脂肪が融解し皮剥ぎが行える温度(例えば、40度から50度)の範囲に制御する。同様にして、温度調節ユニット31bは、温度センサで検知された加熱温度と予め設定された温度範囲に基づいて、作業時の皮剥ぎ用ナイフ15の温度を皮下脂肪が融解し皮剥ぎが行える温度(例えば、40度から50)度の範囲に制御する。本実施例においては、上記温度範囲に加熱された腹部切開用刃物14、皮剥ぎ用ナイフ15等を温めた状態で皮部Z1aとのつなぎ目である肉界面に接触させることにより、皮部Z1aと肉部Z1bとの間に存在する皮下脂肪を融解させながら皮部Z1aの切開、皮部Z1aを切り開くことが可能になるため、前工程および巻き取り工程における剥皮作業のスムーズ化が期待できる。また、本実施例によれば、皮部Z1aと肉部Z1bとの間に存在する皮下脂肪を融解させながら皮部Z1aの剥皮が可能になるため、例えば、皮下脂肪を通じて一体的につなげられていた肉部Z1bからの一部肉片の引き剥がし、皮部Z1aの一部破損を抑制することが可能になる。本実施例によれば、剥皮された皮部Z1aおよび肉部Z1bのそれぞれに対して傷等をつけないように剥皮処理を進めることが期待できる。
【0039】
なお、本実施例に係る制御システム1は、前工程、巻き取り工程における屠体Z1からの剥皮作業を円滑に遂行するためのサーボ機構(20aから20e)をさらに備える。各サーボ機構は、制御対象を駆動するサーボモータM1と、サーボドライバ21とを構成に含み、それぞれのサーボ機構(20aから20e)では、制御対象の位置や方位、姿勢等を制御量として目標値に追従するように自動制御が行われる。本実施例では、サーボ機構(20aから20c)を用いて、前工程における腹部切開処理が行われる。具体的には、サーボ機構20aを用いて、腹部切開用刃物14の水平方向における位置決めが調整される。また、サーボ機構20bを用いて腹部切開時における腹部切開用刃物14の垂直方向の移動が制御される。腹部切開用刃物14は上下動をし、前面を切開すると同時に刃の届く範囲で左右切り開きを行う。そして、サーボ機構20cを用いて腹部切開が行われた後の、左右切り開きにおける腹部切開用刃物14の屠体Z1曲面に合わせた刃の角度が制御される。腹部切開用刃物14は屠体表面に沿わせるように回転される。なお、腹部切開用刃物14は、皮剥ぎ用ナイフ15が用いられてもよい。また、本実施例では、サーボ機構20dを用いて、巻き取り工程における、剥皮された皮部Z1aを巻き取るための、ダウンプーラ205の巻き取りローラ206の回転制御が行われる。サーボ機構20eでは、前工程および巻き取り工程において、固定装置210のアーム210bを伸縮させて端部210aを屠体Z1に押し当て、作業時における屠体Z1のブレを抑えるための制御が行われる。
【0040】
本実施例に係る制御システム1では、上記構成要素に基づく制御動作により、前工程に
おける屠体Z1の腹部を切開し、腹部から屠体Z1の胴体周りに左右に切り開く処理を行うとともに、巻き取り工程における屠体Z1から剥皮された皮部Z1aの巻き取りおよび屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとの切り離し処理を遂行する。
【0041】
<システム構成>
図3は、本実施例に係る制御システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、本実施例に係る制御システム1では、図2を用いて説明したロボット11、測長センサ12、二次元形状センサが、有線あるいは無線による通信ネットワークNを介して上位コントローラ10と相互に接続される。また、上位コントローラには、通信ネットワークNを介してサーボ機構(20aから20e)、温度調節ユニット(31a、31b)が接続される。通信ネットワークNには、EtherCAT(Ethernet for Control Automation Technology、登録商標)が含まれる。なお、図3においては、単一の通信ネットワークNを例示するが、通信ネットワークNは、規格の異なる複数のネットワークによって構成されてもよく、上位コントローラ10と各構成要素が専用のネットワークで接続されてもよい。上位コントローラ10と各構成要素とは、適宜の通信方式に応じて接続される。また、図3においては単一の上位コントローラ10が例示されるが、複数の上位コントローラが接続されてもよく、上位コントローラ10が複数のコントローラによって構成されてもよい。例えば、上位コントローラ10が、ロボット11を制御するコントローラと、各サーボ機構を制御するコントローラと、各温度調整ユニットを制御するコントローラとの集合によって構成されてもよい。このようなコントローラとして、PLC(Programmable Logic Controller)等が例示される。さらに、上位コントローラ10に
は、画像認識を行う専用のコンピュータ、二次元センサ13で検出された特徴量を解析する専用のコンピュータが含まれてもよい。
【0042】
図3において、各サーボ機構を構成するサーボドライバ(21aから21e)は、通信ネットワークNに接続される。サーボドライバ21aにはサーボモータM1が接続され、同様にして、サーボドライバ21b、21c、21d、21eのそれぞれにサーボモータM2、M3、M4、M5が接続される。サーボ機構20aを構成するサーボドライバ21aとサーボモータM1とは、例えば、専用ケーブルを介して通信可能に接続さる。他のサーボ機構(20bから20e)においても同様である。また、図3においては、温度調節ユニット31aおよび温度調節ユニット31bはそれぞれに通信ネットワークNに接続される。温度調節ユニット31aはヒータH1に接続され、温度調節機構30aを構成する。同様にして、温度調節ユニット31bはヒータH2に接続され、温度調節機構30bを構成する。温度調節機構(30a、30b)を総称して温度調節機構30ともいう。なお、通信ネットワークNには、制御の実行に関する各種のスイッチ、上位コントローラ10が各構成機器への制御指令を出力するための契機となる情報を検出する各種のセンサが接続し得る。
【0043】
上位コントローラ10は、本実施例の制御システム1が制御対象とする前工程および巻き取り工程を含む剥皮工程の全体的な処理プロセスを管理・制御するコンピュータである。上位コントローラ10は、自身の管理する処理プロセスの推移に伴って、通信ネットワークNに接続された各構成用に対する制御指令を生成して出力する。上位コントローラ10が剥皮工程において管理する処理プロセスは、概ね、(1)準備工程、(2)前工程(3)巻き取り工程、(4)洗浄工程に区分けされる。上位コントローラ10は、図4の剥皮工程の処理フローに示されるように、(1)から(4)のプロセス順にしたがって制御指令を生成して出力する。
【0044】
図4に示すP1の準備工程においては、フック等によって吊り下げられた状態の屠体Z1の動きを抑制する制御が行われる。例えば、上位コントローラ10は、通信ネットワークNを通じてロボット11等に設けられた画像センサの撮像画像から屠体Z1の全体を把
握し、測長センサ12で検出された距離値を元に、サーボ機構20eに対して制御指令を出力する。サーボ機構20eのサーボドライバ21eは、上位コントローラ10から出力された制御指令を目標値として、サーボモータM5のサーボ制御を行い、固定装置210のアーム210bを伸縮させる。アーム210bはサーボモータM5の回転軸に嵌合されたウォームギア等を通じて伸張し、固定装置210の端部210aが屠体Z1に押し当てられる。なお、単一のロボットが前工程および巻き取り工程を行う場合には、壁等に押し付けて固定するようにしてもよい。
【0045】
P2の前工程においては、屠体Z1の腹部が切開され、腹部の切開個所から皮部Z1aを胴体周りに左右に切り開く制御が行われる。例えば、上位コントローラ10は、通信ネットワークNを通じてロボット11等に設けられた画像センサの撮像画像から屠体Z1の全体を把握し、測長センサ12で検出された距離値を元に、サーボ機構20aに対して制御指令を出力する。サーボ機構20aのサーボドライバ21aは、上位コントローラ10から出力された制御指令を目標値として、サーボモータM1のサーボ制御を行い、腹部切開用刃物14の水平方向における位置決めが行われる。
例えば、腹部切開用刃物14をフランジに取り付けたロボット11aの位置がサーボモータM1の回転軸に嵌合されたウォームギア等を通じて水平方向に移動し、屠体Z1の腹部を切開するための位置決めが行われる。
【0046】
次に、上位コントローラ10は、画像センサの撮像画像と、測長センサ12で検出された距離値を元にロボット11aに対して制御指令を出力する。ロボット11aは、自装置の関節部に内蔵されたモータのサーボ制御を行い、腹部切開用刃物14が取り付けられた可動部を移動させる。上位コントローラ10は、ロボット11aの可動部の移動とともに、撮像画像と距離値を適宜に取得し、屠体Z1に合わせて腹部切開用刃物14が挿入されるように角度を調整しながら逐次のタイミングで制御指令を出力する。ロボット11aは、屠体Z1の後ろ脚から臀部にかけての皮部Z1aが剥皮され、肉部Z1bが露出されている部位に可動部を移動させ、当該部位に腹部切開用刃物14を挿入して当接させる。
【0047】
また、上位コントローラ10は、腹部切開用刃物14の屠体Z1への当接を契機として、温度調節ユニット31aに、40度から50度の温度範囲で指定された加熱温度を制御指令として出力する。温度調節ユニット31aは、制御指令に含まれる加熱温度を目標値として腹部切開用刃物14に設けられたヒータH1の加熱を開始する。そして、温度調節ユニット13aは、ヒータH1による加熱温度を温度センサを介して取得するとともに、腹部切開用刃物14が屠体Z1の皮下脂肪が融解可能な温度範囲となるようにヒータH1の加熱温度を制御する。本実施例においては40~50℃程度の温度範囲で制御するものとする。
【0048】
腹部切開用刃物14の加熱開始後、上位コントローラ10は、画像センサの撮像画像と、測長センサ12で検出された距離値を元にサーボ機構20bに対して制御指令を出力する。サーボ機構20bのサーボドライバ21bは、上位コントローラ10から出力された制御指令を目標値として、サーボモータM2のサーボ制御を行い、腹部切開用刃物14の垂直方向への移動が行われる。例えば、サーボモータM2の回転軸に嵌合されたウォームギア等を通じて、屠体Z1に腹部切開用刃物14を当接させたロボット11aの高さ位置が垂直方向の下方側に移動し、腹部の切開が開始される。上位コントローラ10は、撮像画像と距離値を適宜に取得し、屠体Z1の腹部形状に合わせて腹部切開用刃物14の角度を調整しながら逐次のタイミングで、ロボット11a、サーボドライバ21bに制御指令を出力する。なお、温度調節ユニット13aを介して、腹部切開用刃物14が40度から50度の温度範囲となるようにヒータH1の加熱制御が継続されている。ロボット11aでは、制御指令を目標値として屠体Z1に当接させた腹部切開用刃物14の角度が調整され、サーボ機構20bでは、制御指令を目標値としてロボット11aの垂直方向の高さ位
置が調整され、臀部付近から頭部にかけて腹部切開が行われる。
【0049】
腹部切開後、上位コントローラ10は、サーボドライバ21bに制御指令を出力し、ロボット11aの高さ位置を腹部切開の開始位置まで移動させる。そして、上位コントローラ10は、サーボ機構20cに対して制御指令を出力し、腹部切開用刃物14を腹部切開個所から胴体廻りの左右方向に移動させる。サーボ機構20cのサーボドライバ21cは、上位コントローラ10から出力された制御指令を目標値として、サーボモータM3のサーボ制御を行い、フック等で吊り下げられた屠体Z1を胴体廻り方向に回転させる。屠体Z1に当接された腹部切開用刃物14は、屠体Z1の回転に伴い胴体廻りに沿って相対的に移動することになり、腹部の皮下脂肪を腹部切開用刃物14からの熱で溶かしつつ、皮部Z1aの左右への切り開きが行われる。
【0050】
P3の巻き取り工程においては、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aのローラ206への巻き付け処理が行われる。巻き付け処理の形態として、例えば、図5に示す巻き付け形態が想定される。図5(a)に示すように、前工程の処理後の皮部Z1aに対して、作業者M4が後ろ脚付近の皮端に鉄片P1a、P1bをクリップする。鉄片P1aは、右腹側の臀部付近から剥皮された皮端にクリップされ、鉄片P1bは、左腹側の臀部付近から剥皮された皮端にクリップされる。そして、図5(b)に示すように、多関節ロボット11cを用いて電磁石P2を鉄片(P1a、P1b)に近づける。電磁石P2にはローラ206との間を接続するケーブルW1の一端が接続されている。ここで、多関節ロボット11cは、腹部切開用刃物14が多指ハンド等に交換されたロボット11aであってもよく、多指ハンドが取り付けられたロボット11bであってもよい。多関節ロボット11cは、例えば、フランジ近傍に画像センサを備える。通信ネットワークNを介して多関節ロボット11cと接続された上位コントローラ10は、画像センサの撮像画像から皮端にクリップされた鉄片(P1a、P1b)を認識し、当該鉄片の位置に電磁石P2が取り付けられた可動部を近づける。そして、電磁石P2を通電させて、皮端にクリップされた鉄片(P1a、P1b)を吸着させる。鉄片(P1a、P1b)の吸着後、ローラ206による皮部Z1aの巻き取りが行われる。
【0051】
他の形態として、図6に示す、多関節ロボット11cが、後ろ脚付近の皮端に鉄片P1a、P1bをクリップする形態が例示される。例えば、図6(a)に示すように、多関節ロボット11cは鉄片(P1a、P1b)および電磁石P2を非磁性体の指先で把持する。そして、多関節ロボット11cは、屠体Z1の後ろ脚付近の皮部Z1aの皮端に鉄片P1a、P1bをクリップする。鉄片P1aは、例えば、右腹側の臀部付近から剥皮された皮端にクリップされ、鉄片P1bは、左腹側の臀部付近から剥皮された皮端にクリップされる。電磁石P2には図5と同様に、ローラ206との間を接続するケーブルW1の一端が接続されている。図6(b)に示すように、多関節ロボット11cは、電磁石P2を皮端にクリップされた鉄片(P1a、P1b)に近づけるとともに電磁石P2を通電させて当該鉄片(P1a、P1b)を吸着させる。屠体Z1の皮部Z1aは、電磁石P2の電磁力によって吸着された鉄片(P1a、P1b)とともにローラ206によって巻き取られる。
【0052】
また他の形態として、図7に示すように、多関節ロボット11cが、直接に後ろ脚付近の皮端をクリップP3で挟み込むようにすることもできる。クリップP3はケーブルW1を介してローラ206に接続されている。上位コントローラ10は、例えば、画像センサで撮像された画像からエッジ検出を行い、剥皮された皮部Z1aの皮端の位置を特定する。あるいは、さらに測長センサ、光電センサ等を組合せ、これらのセンサを介して検出された距離値と撮像画像を元に、剥皮された皮部Z1aの皮端の位置を特定する。そして、多関節ロボット11cに把持されたクリップP3で、特定された皮端を挟み込みクリップすればよい。クリップP3によってクリップされた皮部Z1aは、ローラ206によって
巻き取られる。
【0053】
なお、皮部Z1aの巻き取りは、ダウンプーラ205のローラ206による巻き取り以外の形態であってもよい。例えば、図8に示すように吸引機208aを用いる形態が例示できる。吸引機208aを用いることにより、吸引口付近に存在する剥皮された皮部Z1aの皮端を吸着することが可能になる。図8(a)に示すように、吸引機208aには、水平方向に移動可能なアーム208bが取り付けられている。吸引機208aを制御するコントローラは、例えば、アーム208bを水平方向に伸長させ、吸引機208aの吸引口を屠体Z1から剥皮された皮部Z1aに近づける。吸引機208aは、吸引を開始し、吸引口付近の皮部Z1aの皮端を吸着させる。皮端の吸着後、図8(b)に示すように、当該皮端を吸着させた状態の吸引機208aを引っ張りながら垂直方向下方側に移動させる。屠体Z1は、フック等で吊り下げられた状態で固定されているため、吸引機208aに吸着された皮部Z1aは、吸引機208aの移動とともに屠体Z1から剥皮することが可能になる。このような形態であっても、剥皮された皮部Z1aの巻き取りが可能になる。
【0054】
また、ローラ206を用いた皮部Z1aの巻き取りにおいては、クランプ機構を用いた皮部Z1aの巻き取りが行われてもよい。クランプ機構を用いることで、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aは、クランプで留めてローラ206で巻き取ることができる。例えば、図5から図7の電磁石P2に接続されるケーブルW1を、ローラ206とクランプとの間に挿通させておけばよい。
【0055】
図4に戻り、P3の巻き取り工程においては、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aのローラ206への巻き付け完了を契機として、上位コントローラ10は、サーボ機構20dに対して制御指令を出力し、ダウンプーラ205の巻き取りローラ206のトルク制御が行われる。サーボ機構20dのサーボドライバ21dは上位コントローラ10から出力された制御指令を目標値として、皮部Z1aを巻き取るローラ206のトルクが一定になるようにサーボモータM4のサーボ制御が行われる。サーボモータM4の回転軸に嵌合されたローラ206は、剥皮された屠体Z1の皮部Z1aが一定の引っ張り力で巻き取られるように制御される。サーボモータM4によるトルク制御により、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aは、肉部Z1bの引き剥がれ、皮部Z1aの断裂等を防ぎながら、剥皮された皮部Z1aを巻き取ることが可能になる。
【0056】
また、上位コントローラ10は、皮部Z1aのローラ206への巻き付け完了を契機として、温度調節ユニット31bに、40度から50度の温度範囲で指定された加熱温度を制御指令として出力する。温度調節ユニット13bは、制御指令に含まれる加熱温度を目標値として皮剥ぎ用ナイフ15に設けられたヒータH2の加熱を開始する。そして、温度調節ユニット13bは、ヒータH2による加熱温度を温度センサを介して取得するとともに、皮下脂肪が融解し皮剥ぎが行える温度となるようにヒータH2の加熱温度を制御する。本実施例においては40~50℃程度の温度範囲で制御するものとする。
【0057】
次に、上位コントローラ10は、画像センサの撮像画像と、二次元形状センサ13で検出された屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目を示す変曲点の位置を元にロボット11bに対して制御指令を出力する。ロボット11bは、自装置の関節部に内蔵されたモータのサーボ制御を行い、皮剥ぎ用ナイフ15が取り付けられた可動部を屠体Z1のつなぎ目位置に移動させる。上位コントローラ10は、ロボット11bの可動部の移動ともに、撮像画像と二次元形状センサ13で検出された変曲点の位置を適宜に取得し、屠体Z1のつなぎ目位置に合わせて皮剥ぎ用ナイフ15を当接させる箇所を指示する制御指令を逐次のタイミングで出力する。ロボット11bは、屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目に可動部を移動させ、一定温度に加熱された金属片である皮剥ぎ用ナイフ1
5を制御指令から指示された箇所に当接させる。屠体Z1に当接された皮剥ぎ用ナイフ15からの熱でつなぎ目である肉界面の皮下脂肪を溶かしつつ皮部Z1aを分離し、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aを一定のトルクでローラ206に巻き取る、巻き取り作業が行われる。
【0058】
P4の洗浄工程においては、屠体Z1の肉部Z1bに接触させた刃物、前工程で使用された腹部切開用刃物14、巻き取り工程で使用された皮剥ぎ用ナイフ15の洗浄処理が行われる。例えば、上位コントローラ10は、画像センサの撮像画像から、洗浄槽の位置を特定する。洗浄槽には、所定温度(例えば、83度以上)の熱湯が入れられている。上位コントローラ10は、ロボット11aに、可動部を移動させ腹部切開用刃物14を洗浄槽に浸けさせる制御指令を出力する。ロボット11aは、自装置の関節部に内蔵されたモータのサーボ制御を行い、腹部切開用刃物14が取り付けられた可動部を洗浄槽に移動させる。上位コントローラ10は、ロボット11aの可動部の移動ともに、撮像画像を適宜に取得し、腹部切開用刃物14の移動位置を調整しながら逐次のタイミングで制御指令を出力する。ロボット11aは、制御指令を元に可動部を移動させ、腹部切開用刃物14を洗浄槽内の熱湯に浸す。腹部切開用刃物14が、熱湯に浸される時間は3秒以上である。洗浄後、ロボット11aの可動部は、上位コントローラ10からの制御指令を元に、次の剥皮対象の屠体Z1を処理するための作業開始位置に移動する。ロボット11bにおいても、同様にして、上位コントローラ10からの制御指令に基づいて皮剥ぎ用ナイフ15が洗浄され、洗浄後、次の剥皮対象の屠体Z1を処理するための作業開始位置に移動される。
【0059】
なお、洗浄工程では、洗浄槽を使用せず、屠体Z1の肉部Z1bに接触させた刃物に熱湯(例えば、83度以上)を噴射させるようにしてもよい。上位コントローラ10は、例えば、画像センサの撮像画像から、熱湯が噴射される洗浄場の位置を特定する。当該洗浄場には、噴射された熱湯の飛沫が屠体Z1に掛からないように、カバー等が設けられている。上位コントローラ10は、ロボット11aに、可動部を移動させ腹部切開用刃物14を洗浄場に移動させる制御指令を出力すると、ロボット11aは、自装置の関節部に内蔵されたモータのサーボ制御を行い、腹部切開用刃物14が取り付けられた可動部を洗浄場に移動させる。
【0060】
上位コントローラ10は、ロボット11aの可動部の移動ともに、撮像画像を適宜に取得し、腹部切開用刃物14の移動位置を調整しながら逐次のタイミングで制御指令を出力すればよい。ロボット11aは、制御指令を元に可動部を洗浄場の熱湯の噴射位置に移動させ、噴射された熱湯に腹部切開用刃物14を曝し、洗浄処理が完了される。ロボット11bにおいても、同様にして、上位コントローラ10からの制御指令に基づいて皮剥ぎ用ナイフ15が洗浄される。洗浄後、ロボット11の可動部は、上位コントローラ10からの制御指令を元に、次の剥皮対象の屠体Z1を処理するための作業開始位置に移動する。なお、洗浄工程においては、屠体Z1の肉部Z1bに接触させたロボット11a、11bの刃物を殺菌済みの刃物と交換し、交換されたそれぞれの刃物が洗浄されるようにしてもよい
【0061】
<コントローラ構成>
図9は、本実施例に係る上位コントローラ10のハードウェア構成の一例を示す図である。図9に示すように、上位コントローラ10は、接続バス116によって相互に接続されたプロセッサ111、主記憶装置112、補助記憶装置113、通信IF114、入出力IF115を構成要素に含むコンピュータである。主記憶装置112および補助記憶装置113は、上位コントローラ10が読み取り可能な記録媒体である。主記憶装置112および補助記憶装置113は、上位コントローラ10のメモリを構成する。上記の構成要素はそれぞれ複数に設けられてもよいし、一部の構成要素を設けないようにしてもよい。制御システム1を構成するサーボドライバ(21aから21e)、温度調節ユニット(3
1a、31b)、測長センサ12および二次元形状センサ13の内蔵された制御ユニット、ロボット11に内蔵される制御ユニット等は、実質的に上位コントローラ10のハードウェア構成と同等であるため、説明が省略される。
【0062】
プロセッサ111は、上位コントローラ10全体の制御を行う中央処理演算装置である。プロセッサ111は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。プロセッサ111は、例えば、補助記憶装置113に記憶されたプログラムを主記憶装置112の作業領域に実行可能に展開し、当該プログラムの実行を通じて周辺機器の制御を行うことで所定の目的に合致した機能を提供する。但し、プロセッサ111が提供する一部または全部の機能が、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、GPU(Graphics Processing Unit)、SoC(System on a Chip)等によって提供されてもよい。同様にして、
一部または全部の機能が、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、数値演算プロ
セッサ等の専用LSI(large scale integration)、その他のハードウェア回路で実現
されてもよい。
【0063】
主記憶装置112および補助記憶装置113は、上位コントローラ10のメモリを構成する。主記憶装置112は、プロセッサ111が実行するプログラム、当該プロセッサが処理するデータ等を記憶する。主記憶装置112は、フラッシュメモリ、RAM(Random
Access Memory)やROM(Read Only Memory)を含む。補助記憶装置113は、プロセッサ111等により実行されるプログラムや、動作の設定情報などを記憶する記憶媒体である。補助記憶装置113は、例えば、HDD(Hard-disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ、USBメ
モリ、SD(Secure Digital)メモリカード等を含む。通信IF114は、通信ネットワークNとの通信インタフェースである。通信IF114は、接続される通信ネットワークNとの接続方式に応じて適宜の構成を採用できる。入出力IF115は、上位コントローラ10の備える入力デバイス、出力デバイスとの間でデータの入出力を行うインタフェースである。入出力IF115を通じて、LCD等の表示デバイスや、上位コントローラ10の筐体等に設けられたLED等に所定の情報が出力される。また、入出力IF115を通じて、操作指示が受け付けられ、当該操作指示に基づいて操作者の意図する処理が行われる。
【0064】
<処理の流れ>
次に、本実施例に係る制御システム1の前工程、巻き取り工程について、処理の流れを説明する。なお、前工程は、上位コントローラ10と、ロボット11aと、サーボ機構(20aから20c)と、温度調節機構30aと、測長センサ12との連携された協働する処理により行われる。
【0065】
図10は、本実施例に係る前工程の処理の一例を示すフローチャートである。本フローの処理の対象になる屠体Z1は、準備工程で説明したように、フック等で吊り下げられた状態で、固定装置210のアーム210bを通じて端部210aが屠体Z1に押し当てられた状態である。また、ロボット11aのフランジには、屠体Z1の腹部を切開するための腹部切開用刃物14が取り付けられている。腹部切開用刃物14には、皮部Z1aと肉部Z1bとの間に存在する皮下脂肪を溶かすためのヒータH1が設けられている。ヒータH1は、腹部切開用刃物14の屠体Z1に当接される治具部(141、143)の温度が、温度調節ユニット31aを介して所定の温度範囲(40度から50度)になるように加熱制御される。
【0066】
前工程の処理の開始後、剥皮対象の屠体Z1に対する腹部切開用刃物14の位置決めが行われる(ステップS101)。剥皮対象の屠体Z1では、後ろ脚から臀部にかけての皮
部Z1aが剥皮され、肉部Z1bが露出されている状態である。屠体Z1腹部側の皮部Z1aには、後ろ脚から臀部にかけて剥皮された際の切れ目が存在している。ステップS101の処理では、当該切れ目を目標位置として腹部切開のための水平方向の位置調整、後ろ脚から臀部にかけて剥皮された腹部箇所へ腹部切開用刃物14の下部側の面(治具部141の下部141b側の面、治具部143の下部143b側の面)を屠体Z1の当接させるための垂直方向の高さ調整が行われる。ステップS101の処理後、処理はステップS102に進む。
【0067】
ステップS102では、屠体Z1の腹部を切開する処理が開始される。例えば、温度調節ユニット31aを介して屠体Z1の当接させた腹部切開用刃物14の治具部(141、143)を皮下脂肪が融解する所定温度(40度から50度)に加熱する。そして、腹部切開用刃物14の皮切部(142、144)を垂直方向の下方側として、治具部(141、143)の下部側の面が、屠体Z1の後ろ脚から臀部にかけての皮部Z1aが剥皮されて肉部Z1bが露出している部位に当接させる。腹部に当接させた腹部切開用刃物14の治具部(141、143)からの熱により屠体Z1の皮下脂肪を溶かしながら、皮切部(142、144)の腹部に当てる角度を調整し、腹部切開用刃物14を垂直方向下方側へ徐々に移動させる。ステップS102の処理により、屠体腹部の皮が後ろ脚側端部から頭部Z1cにかけて切開されると処理はステップS103に進む。
【0068】
なお、ステップS102の処理では、腹部の切開後に継続して、前脚部における皮部Z1aの切開が行われるとしてもよい。前脚部における皮部Z1aを切開することにより、巻き取り工程における処理を容易に進めることができる。前脚部の皮部Z1aの切開では、例えば、ステップS101と同様にして、前脚部の皮部Z1aの切開のための水平方向の位置調整、腹部切開用刃物14の下部面を当接させるための垂直方向の高さ調整が行われる。上位コントローラ10は、画像センサの撮像画像と、測長センサ12で検出された前脚部との距離値を元に、サーボ機構20a、20bに制御指令を出力し、水平方向の位置調整、垂直方向の高さ調整が行われる。そして、上位コントローラ10は、測長センサ12で検出された前脚部との距離値を元に、ロボット11aに制御指令を出力し、腹部切開用刃物14が取り付けられた可動部を移動させて、前脚部の切断端(足先)に当該腹部切開用刃物14を当接させる。
【0069】
上位コントローラ10は、撮像画像と距離値を適宜に取得し、前脚部の形状に合わせて腹部切開用刃物14の角度を調整しながら逐次のタイミングでロボット11aに制御指令を出力し、前脚部に当接させた腹部切開用刃物14の熱により前脚部の皮下脂肪を溶かしながら皮部Z1aの切開が行われる。腹部切開用刃物14の皮切部(142、144)の前脚部に当てる角度を調整しつつ、足先から腹部に向かって当該刃物14を徐々に移動させ、前脚部の足先から既に切開された腹部の切れ目にかけての皮部Z1aが切開される。なお、前脚部の切開は腹部切開用刃物14以外の刃物、ハサミや回転刃等の刃物が用いられてもよい。例えば、腹部切開用刃物14を前脚部の皮部側から当接させて皮部Z1aと肉部Z1bとの間の皮下脂肪を融解させる。そして、皮下脂肪の融解によって形成された隙間にハサミの一方の片刃を挿入させ、他方の片刃との間に挟まれた皮部Z1aを切開してもよい。また、二枚の刃を同時に皮の下に脂肪を融解しながら潜り込ませ、物理的に引っかかった場合に開閉する方法も使用できる。
【0070】
ステップS103では、切開された腹部の切れ目から屠体Z1の胴体廻りに沿って左右に切り開く切り開き処理が行われる。具体的には、サーボ機構20aを用いて、腹部切開用刃物14の水平方向における位置決めが調整される。また、サーボ機構20bを用いて腹部切開時における腹部切開用刃物14の垂直方向の移動が制御される。腹部切開用刃物14は上下動をし、前面を切開すると同時に刃の届く範囲で左右切り開きを行う。そして、サーボ機構20cを用いて腹部切開が行われた後の、左右切り開きにおける腹部切開用
刃物14の屠体Z1曲面に合わせた刃の角度が制御される。腹部切開用刃物14は屠体表面に沿わせるように回転される。
【0071】
なお、ステップS103においては、ロボット11bとの協働する作業により、当該ロボットのフランジに取り付けられた金属片である皮剥ぎ用ナイフ15を用いて、腹部の皮下脂肪を温めた状態の皮剥ぎ用ナイフ15からの熱で溶かしつつ、切り開くようにしてもよい。また、腹部の皮下脂肪はロボット11aの腹部切開用刃物14からの熱で溶かしながら、皮部Z1aと肉部Z1bとのつなぎ目をロボット11bのフランジに取り付けられた回転刃、スキナーナイフ、超音波カッター、レーザカッターで切断して切り開くようにしてもよい。ロボット間の協働する作業により、前工程におけるタクトタイムの短縮が期待できる。ステップS103の処理後、本ルーチンを一旦終了する。
【0072】
次に、巻き取り工程の処理を説明する。図11は、本実施例に係る巻き取り工程の処理の一例を示すフローチャートである。巻き取り工程は、上位コントローラ10と、ロボット11bと、サーボ機構20dと、温度調節機構30bと、二次元形状センサ13との連携された協働する処理により行われる。ロボット11bのフランジには、屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目の皮下脂肪を溶かしつつ、肉部Z1bから皮部Z1aを切り離すための金属片である皮剥ぎ用ナイフ15が取り付けられている。皮剥ぎ用ナイフ15には、当該ナイフの温度が、温度調節ユニット31bを介して所定の温度範囲(40度から50度)になるように加熱制御されるヒータH1が設けられている。
【0073】
巻き取り工程の処理の開始後、前工程によって屠体Z1から剥皮された皮部Z1aのローラ206への巻き付け処理が行われる(ステップS111)。巻き付け処理では、図5から図7を用いて説明した形態による処理が行われる。なお、皮部Z1aの屠体Z1からの引き剥がしは、例えば、図8で説明した吸引機208aを用いる形態であってもよい。ステップS111の処理の終了後、処理はステップS112に進む。
【0074】
ステップS112では、屠体Z1の皮部Z1aと肉部Z1bとのつなぎ目を検出する境目検出が行われる。なお、肉部側には皮下脂肪含まれる。つなぎ目には境目検出は、例えば、画像センサの撮像画像、二次元センサ13で検出された屠体Z1の形状に関する特徴量等に基づいて行われる。図12に、本実施例に係る境目検出を説明する説明図を例示する。図12(a)には画像センサで撮像された画像A1が例示される。図12(b)には、肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目部分に接近された画像A2が例示されている。
【0075】
ステップS112において、上位コントローラ10は、例えば、撮像画像から屠体Z1の全体を認識し、肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目(境目)B1aが存在する領域B1を特定する。領域B1の特定後、ロボット11bの可動部を領域B1に徐々に近づけさせ、領域B1付近の接近画像(画像A2)を撮像する。上位コントローラ10は、例えば、画像A2が取得された位置近傍にロボット11bの可動部を固定するとともに、2次元形状センサ13から投光される帯状のレーザ光を走査させる。図12(b)に示すように、2次元形状センサ13から投光されたレーザ光は帯状であるため、A2a-A2b、A2c-A2d、A2e-A2f、A2g-A2hに示すようにX軸、あるいはY軸方向に一定の幅を持って屠体Z1に照射される(図12(b)ではY軸)。
【0076】
上位コントローラ10は、例えば、レーザ光の照射位置を屠体Z1の胴体廻り方向に沿って、A2a-A2bからA2g-A2hへ順に走査していく。そして、各照射位置におけるレーザ光の反射光から、それぞれの照射位置における屠体Z1のZ方向(図12の紙面に垂直な方向)の特徴量が検出された位置(図12横方向のX座標、図12の上下方向のY座標)を検出する。例えば、二次元形状センサ13で検出された測定対象物の表面の角度変化(角度変化量を特徴量という)がある部分を「変曲点」(これを特徴点という)
として捉える。特徴量、すなわち、角度変化が検出された点を繋いで、線を形成し、肉と皮のつなぎ目を検出する。特徴量が検出された位置を繋いだ線は、A2a-A2bからA2g-A2hへ順に走査した時点の肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目(境目)を示している。上位コントローラ10は、レーザ光の照射位置を屠体Z1の胴体廻り方向に沿ってA2a-A2bからA2g-A2hへ順に走査することで、肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目(境目)が検出できる。
【0077】
図12においては、吊り下げられた屠体Z1の胴体廻り方向の走査によるつなぎ目検出を説明したが、屠体Z1の臀部から頭部にかけての垂直方向の走査によってもつなぎ目を検出することができる。図13は、垂直方向の走査による境目検出を説明する説明図である。図13においては、画像センサで撮像された画像A3が例示される。図13に示すように、二次元形状センサ13は、帯状に広がるレーザ光A3aの広がり方向を水平方向とし、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aの作業経過に合わせて当該レーザ光を追従させる。レーザ光の追従とともに、丸囲み1から丸囲み3の順に照射光が走査された各照射位置における反射光が受光できる。そして、各照射位置における特徴量から、剥皮の引っ張りに伴う皮部Z1aと肉部Z1bとの出っ張り(段差箇所)を特定すればよい。図12(b)と同様にして、照射位置毎の高さが変化する位置の走査方向の推移から肉部(皮下脂肪を含む)Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目(境目)が検出できる。
【0078】
他の肉部(皮下脂肪を含む)Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目(境目)を検出する形態として、例えば、画像センサから得られた撮像画像における、波長(色)、偏向(色調)、強度(明るさ)といった特徴量からつなぎ目を検出するとしてもよい。高解像度の画像センサをロボット11bのフランジ付近に取り付け、剥皮された肉部Z1bおよび皮部Z1aの界面状態を監視すればよい。また、画像センサから屠体Z1の形状を認識させ、3Dスキャンによるつなぎ目検出であってもよい。つなぎ目の検出方法は図12図13と同様である。3Dスキャンを用いる場合には、例えば、つなぎ目の数mm内側をカットすることもできる。
【0079】
図11に示すフローに戻り、ステップS113の処理では、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aをローラ206で巻き取りながら、温められた状態の金属片である皮剥ぎ用ナイフ15からの熱でつなぎ目の皮下脂肪を溶かしつつ、皮部Z1aを剥皮する処理が開始される。例えば、サーボ機構20dを介して、皮部Z1aを巻き取るローラ206のトルク値が一定になるようにサーボ制御が行われる。このようなトルク制御により、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aは、肉部Z1bの引き剥がれ、皮部Z1aの断裂等を防ぎながら、剥皮された皮部Z1aを巻き取ることが可能になる。
【0080】
また、温度調節ユニット31bを介して皮剥ぎ用ナイフ15が、つなぎ目における皮下脂肪を融解させる所定温度(40度から50度)に加熱される。そして、加熱された皮剥ぎ用ナイフ15を、例えば、つなぎ目(境目)検出で特定された箇所に当接させる。つなぎ目の箇所に当接させた皮剥ぎ用ナイフ15からの熱により、肉部Z1b側の皮下脂肪を溶かしながら、皮部Z1aと肉部Z1bとの間が切断される。本実施例では、金属片(皮剥ぎ用ナイフ15等)を温めた状態で皮部Z1aと肉界面を接触させて皮部Z1aを分離することができる。
【0081】
なお、肉部Z1bと皮部Z1aとが皮下脂肪を通じて剥がされにくくなっている場合には、ローラ206を駆動するサーボモータM4に係るトルク値が増大することになる。上位コントローラ10は、トルク値の増大に応じて、剥皮中の撮像画像からつなぎ目における皮部Z1aの引っ掛かり箇所を特定し、当該引っ掛かり個所の切断をロボット11bに対する制御指令として出力する。ロボット11bは、屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとのつなぎ目に可動部を移動させ、一定温度に加熱された皮剥ぎ用ナイフ15を制御指令
から指示された引っ掛かり箇所に当接させる。引っ掛かり箇所に当接させた皮剥ぎ用ナイフ15の熱により、当該箇所の皮下脂肪が融解され、当該箇所の皮部Z1aが肉部Z1bから剥離される。ステップS113の処理の終了後、本ルーチンを一旦終了し、図4に示すP4の洗浄工程が行われる。
【0082】
ステップS113の処理においては、皮部Z1aと肉部Z1bとのつなぎ目を回転刃、スキナーナイフ、超音波カッター、レーザカッター等を用いて切断してもよい。少なくとも、つなぎ目の肉部Z1bおよび皮部Z1aに損傷を与えない刃物であればよい。
【0083】
以上、説明したように、本実施例に係る制御システム1においては、剥皮工程の前工程における屠体Z1の腹部を切開し、腹部から屠体Z1の胴体周りに左右に切り開く処理を行うロボット11aと、サーボ機構(20aから20c)と、温度調節機構30aと、測長センサ12とを構成に含むことができる。また、剥皮工程の巻き取り工程における屠体Z1から剥皮された皮部Z1aの巻き取りおよび屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとの切り離し処理を行う、ロボット11bと、サーボ機構20dと、温度調節機構30bと、二次元形状センサ13とを構成に含むことができる。これらの構成は、制御システム1が制御対象とする前工程および巻き取り工程を含む剥皮工程の全体的な処理プロセスを管理・制御するコンピュータの上位コントローラ10と適宜のタイミングで通信可能なように接続される。本実施形態に係る制御システム1によれば、剥皮工程の前工程および巻き取り工程の処理を連系して協働し、同時に処理することが可能になるため、処理に係るタクトタイムの短縮を図ることが可能になる。
【0084】
本実施例に係る制御システム1において、前工程の腹部を切開し、腹部から屠体Z1の胴体周りに左右に切り開く処理を行うロボット11aは、腹部切開用刃物14を備える。腹部切開用刃物14の治具部(141、143)には、温度調節ユニット31aによって加熱温度の制御が可能なヒータH1が設けられる。これにより、屠体Z1の腹部切開の際、および、腹部から屠体Z1の胴体周りに左右に切り開く際には、腹部切開用刃物14の治具部(141、143)の温度を皮下脂肪が融解し始める温度範囲の上値である40度からたんぱく質の硬化温度である50度の範囲内で加熱することができる。本実施例によれば、腹部切開用刃物14の治具部(141、143)からの熱によって、治具部(141、143)が当接された皮部Z1aと肉部Z1bとの間に存在する皮下脂肪を融解させながら皮部Z1aの切開、皮部Z1aを切り開くことが可能になる。この結果、例えば、皮下脂肪を通じて一体的につなげられていた肉部Z1bからの一部肉片の引き剥がし、皮部Z1aの一部破損を抑制できる。本実施例によれば、剥皮された皮部Z1aおよび肉部Z1bのそれぞれに対して傷等をつけないように前工程を進めることが可能になる。
【0085】
また、本実施例に係る制御システム1において、巻き取り工程の屠体Z1から剥皮された皮部Z1aの巻き取りおよび屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとの切り離し処理を行うロボット11aは、加熱可能な金属片である皮剥ぎ用ナイフ15を備える。皮剥ぎ用ナイフ15には、温度調節ユニット31bによって加熱温度の制御が可能なヒータH2が設けられる。これにより、屠体Z1の肉部Z1bと皮部Z1aとの切り離しの際には、金属片である皮剥ぎ用ナイフ15の、肉界面へ接触させる部位の温度を皮下脂肪が融解し始める温度範囲の上値である40度からたんぱく質の硬化温度である50度の範囲内で加熱することができる。本実施例によれば、温められた状態の皮剥ぎ用ナイフ15からの熱によって皮部Z1aと肉部Z1bとの間に存在する皮下脂肪を融解させながら皮部Z1aの肉部Z1bからの切り離すことが可能になる。本実施例によれば、巻き取り工程においても、剥皮された皮部Z1aおよび肉部Z1bのそれぞれに対して傷等をつけないように進めることが可能になる。
【0086】
また、本実施例に係る制御システム1においては、サーボ機構20dのサーボドライバ
21dを介して、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aを巻き取るローラ206のトルクが一定になるようにサーボモータM4のサーボ制御が行われる。このため、サーボモータM4の回転軸に嵌合されたローラ206は、剥皮された屠体Z1の皮部Z1aが一定の引っ張り力で巻き取られるように制御される。サーボモータM4によるトルク制御により、屠体Z1から剥皮された皮部Z1aは、肉部Z1bの引き剥がれ、皮部Z1aの断裂等を防ぎながら、剥皮された皮部Z1aを巻き取ることが可能になる。
【0087】
また、本実施例に係る制御システム1においては、ローラ206を駆動するサーボモータM4に係るトルク値の増大するタイミングに応じて、剥皮中の撮像画像からつなぎ目における皮部Z1aの引っ掛かり箇所を特定し、当該箇所を適宜に切断することができる。本実施例に係る制御システム1によれば、剥皮工程の自動化を図り、生産性、収益性の確保が可能になる。
【0088】
(その他)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本実施の形態の開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組合せて実施することができる。
【0089】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0090】
例えば、処理対象の屠体Z1のサイズが大きい場合には、巻き取り工程の皮剥ぎ作業を複数台の垂直多関節ロボットで分担して行うとしてもよい。例えば、図2における剥皮の巻き取り時におけるつなぎ目の切り離し作業に関し、一台のロボットが屠体Z1の右腹側の切り離しを担当し、もう一台のロボットが左腹側の切り離しを担当するように構成してもよい。なお、この形態では、ロボットに取り付けられる皮剥ぎ用ナイフの加熱を制御する温度調整機構が追加される。
【0091】
《コンピュータが読み取り可能な記録媒体》
情報処理装置その他の機械、装置(以下、コンピュータ等)に上記何れかの機能を実現させるプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録することができる。そして、コンピュータ等に、この記録媒体のプログラムを読み込ませて実行させることにより、その機能を提供させることができる。
【0092】
ここで、コンピュータ等が読み取り可能な記録媒体とは、データやプログラム等の情報を電気的、磁気的、光学的、機械的、または化学的作用によって蓄積し、コンピュータ等から読み取ることができる記録媒体をいう。このような記録媒体のうちコンピュータ等から取り外し可能なものとしては、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、CD-R/W、DVD、ブルーレイディスク、DAT、8mmテープ、フラッシュメモリなどのメモリカード等がある。また、コンピュータ等に固定された記録媒体としてハードディスクやROM等がある。
【0093】
なお、以下には本発明の構成要件と実施例の構成とを対比可能とするために、本発明の構成要件を図面の符号付きで記載しておく。
<発明1>
屠体(Z1)の皮部(Z1a)を肉部(Z1b)から剥皮する制御システム(1)であって、
前記屠体(Z1)の腹部位の皮部(Z1a)を長手方向に切開するとともに、前記腹部
位の長手方向の一方の端部において胴体廻りに切開し、前記胴体廻りに切開された皮部(Z1a)を係止可能範囲まで部分的に剥皮する処理工程を行う第1サブシステム(11a、20aから20c、30a、12)と、
前記係止可能範囲まで部分的に剥皮された皮部(Z1a)が係止されるローラ(206)を有し、前記ローラ(206)を回動させて前記係止された皮部(Z1a)を巻き取りながら前記屠体(Z1)の肉部(Z1b)から皮部(Z1a)を剥いでいく処理工程を行う第2サブシステム(20d)と、
前記屠体(Z1)の肉部(Z1b)と皮部(Z1a)との境目を検出するセンサ(13、画像センサ)を有し、前記センサ(13、画像センサ)で検出された肉部(Z1b)と皮部(Z1a)との境目に温度調整されたナイフ(15)を当接する処理工程を行う第3サブシステム(11b、30b、13)と、
を備えることを特徴とする制御システム(1)。
【符号の説明】
【0094】
1 制御システム
10 上位コントローラ
11、11a、11b、11c 垂直多関節ロボット
12、12a、12b 測長センサ
13、13a、13b 2次元形状センサ
14、14a、14b 腹部切開用刃物
15 皮剥ぎ用ナイフ
20、20a~20e サーボ機構
21、21a~21e サーボドライバ
30、30a、30b 温度調節機構
31a、31b 温度調節ユニット
111 プロセッサ
112 主記憶装置
113 補助記憶装置
114 通信IF
115 入出力IF
116 接続バス
M1~M5 サーボモータ
H1~H2 ヒータ(加熱機)
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