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  • 特許-走行装置、制御方法及びプログラム 図1
  • 特許-走行装置、制御方法及びプログラム 図2
  • 特許-走行装置、制御方法及びプログラム 図3
  • 特許-走行装置、制御方法及びプログラム 図4A
  • 特許-走行装置、制御方法及びプログラム 図4B
  • 特許-走行装置、制御方法及びプログラム 図4C
  • 特許-走行装置、制御方法及びプログラム 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】走行装置、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 5/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
B25J5/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021049879
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148264
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正浩
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-066624(JP,A)
【文献】特開2012-161901(JP,A)
【文献】特開2004-216513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
G05D 1/00- 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の移動体に対して順次コミュニケーションを取ることが可能な走行装置であって、
前記走行装置の周辺の所定距離範囲内に存在する複数の移動体の少なくとも位置情報を含む移動体データを取得する移動体データ取得部と、
複数の前記移動体の中からコミュニケーション対象を決定する対象決定部と、
前記移動体データに基づいて、前記コミュニケーション対象とのコミュニケーションを取る状態を維持しつつ、前記移動体が少ない方向に前記走行装置を移動させる動作制御部と、
を備える、
走行装置。
【請求項2】
前記移動体データ取得部は、前記移動体データとしてさらに複数の前記移動体の動きベクトルを取得し、
前記動作制御部は、前記動きベクトルに基づいて、前記コミュニケーション対象との距離が所定範囲内に収まる状態を維持してコミュニケーションを取りつつ、該コミュニケーション対象以外の移動体との距離が離れるように、前記移動体が少ない方向に前記走行装置を移動させる、
請求項1に記載の走行装置。
【請求項3】
前記動作制御部は、複数の前記移動体の位置に基づき、前記移動体の密度及び/又は前記移動体の存在している面積を算出し、前記密度及び/又は前記面積が所定値以上である場合に、前記走行装置を移動させる、
請求項1又は2に記載の走行装置。
【請求項4】
前記動作制御部は、前記コミュニケーション対象までの距離、前記密度及び前記面積のうちの少なくとも1つの大きさに応じて、前記走行装置の移動速度を決定する、
請求項3に記載の走行装置。
【請求項5】
前記動作制御部は、予め設定された移動可能範囲を超えない位置に前記走行装置を留める、
請求項1~4のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項6】
前記走行装置は、前記コミュニケーションとして前記移動体に対して物品を配布する、配布機構をさらに備える、
請求項1~5のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項7】
前記動作制御部は、前記配布機構の物品を把持する部位が前記コミュニケーション対象に向き続けるように前記走行装置の姿勢を変化させる、
請求項6に記載の走行装置。
【請求項8】
前記対象決定部は、複数の前記移動体のうち、最も近い移動体を前記コミュニケーション対象として決定する、
請求項1~7のいずれか1項に記載の走行装置。
【請求項9】
複数の移動体に対して順次コミュニケーションを取ることが可能な走行装置の制御方法であって、
前記走行装置の周辺の所定距離範囲内に存在する複数の移動体の少なくとも位置情報を含む移動体データを取得し、
複数の前記移動体の中からコミュニケーション対象を決定し、
前記移動体データに基づいて、前記コミュニケーション対象とのコミュニケーションを取る状態を維持しつつ、前記移動体が少ない方向に移動させる、
制御方法。
【請求項10】
コンピュータに、請求項に記載の制御方法を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行装置、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、自己の周辺領域に存在する人(移動体)により形成される流れの領域方向ベクトルの解析結果に基づいて、人の流れに沿った走行を選択可能とする走行装置が開示されている。この走行装置は、多数の人が周りに存在する環境下においても、これらの人が形成する流れに沿って移動をすることで、走行停止をする可能性を抑制して、目的地への走行を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-144612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の走行装置は、周囲の人の流れに沿うように移動することで、円滑に目的地へ移動することを目的としている。このため、走行装置の複数の人に取り囲まれた状態で、複数の人の中から対象とする人に絞ってコミュニケーションを取るように行動することは考慮されていない。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、周囲に複数の移動体が存在する環境下において、複数の移動体の中から対象とする移動体に絞って円滑にコミュニケーションを取ることが可能な走行装置、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る走行装置は、複数の移動体に対して順次コミュニケーションを取ることが可能な走行装置であって、前記走行装置の周辺の所定距離範囲内に存在する複数の移動体の少なくとも位置情報を含む移動体データを取得する移動体データ取得部と、複数の前記移動体の中からコミュニケーション対象を決定する対象決定部と、前記移動体データに基づいて、前記コミュニケーション対象とのコミュニケーションを取る状態を維持しつつ、前記移動体が少ない方向に移動させる動作制御部とを備えるものである。
【0007】
本発明の一態様に係る制御方法は、複数の移動体に対して順次コミュニケーションを取ることが可能な走行装置の制御方法であって、前記走行装置の周辺の所定距離範囲内に存在する複数の移動体の少なくとも位置情報を含む移動体データを取得し、複数の前記移動体の中からコミュニケーション対象を決定し、前記移動体データに基づいて、前記コミュニケーション対象とのコミュニケーションを取る状態を維持しつつ、前記移動体が少ない方向に移動させる。
【0008】
本発明の一態様によれば、コンピュータに、上記の制御方法を実行させるプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、周囲に複数の移動体が存在する環境下において、複数の移動体の中から対象とする移動体に絞って円滑にコミュニケーションを取ることが可能な走行装置、制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る走行装置の構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係る走行装置の機能ブロック図である。
図3】実施形態に係る走行装置の制御方法の一例を説明するフロー図である。
図4A】実施形態に係る走行装置の動作の一例を説明する図である。
図4B】実施形態に係る走行装置の動作の一例を説明する図である。
図4C】実施形態に係る走行装置の動作の一例を説明する図である。
図5】実施形態に係る走行装置の制御方法の他の例を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。なお、特許請求の範囲に係る発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0012】
実施形態に係る走行装置は、複数の移動体に対して順次コミュニケーションを取ることが可能な走行装置である。ここでは、移動体に対してコミュニケーションを取る走行装置の一例として、人に対して物品を配布するサービスを提供するロボットについて説明する。ロボットが停止している場合、物品を得ようとする多数の人が押しかけると、人同士やロボットとが接触し危険な状態となる。
【0013】
そこで、ロボットに搭載されたカメラもしくはセンサ情報から、周囲の状況を判断し、ロボットを遠隔操縦することが考えられる。しかしながら、人だかりを避けたり、複数の人に対して順番に対処できる立ち位置にロボットを移動させることに手間がかかり、本来実施したい動作(例えば、人に対する物品の配布)に専念することができない。そこで、本発明者は、周囲に複数の人が存在する環境下において、ロボットに、複数の人の中から対象とする人に絞って物品を配布し、円滑に複数の人に順次物品を配布させる技術を考案した。
【0014】
まず、本実施形態に係る走行装置としてのロボット1の構成について説明する。ロボット1の、人に対向して、物品を配布する等のサービスを提供する側が、ロボット1の正面(前側)であるものとする。図1は、実施形態に係るロボット1の構成を示す概略図である。図1に示すように、ロボット1は、台車部10、本体部20、ロボットアーム30、ロボットハンド40を含む。
【0015】
台車部10は、走行面を移動するための移動機構である。台車部10には、それぞれが走行面に接地する3つの車輪が設けられている。図1に示す例では、2つの駆動輪11と1つの従動輪12とが設けられている。2つの駆動輪11は、互いに回転軸芯が一致するように配設されている。それぞれの駆動輪11は、図示しないモータによって独立して回転駆動される。従動輪12は、台車部10の移動方向に倣うように追従する。ロボット1は、例えば、2つの駆動輪11が同じ方向に同じ回転速度で回転されれば、直進する。なお、車輪の数はこの例に限定されるものではなく、車輪はすべてが駆動輪であってもよい。
【0016】
本体部20の前側には、外界センサ21が設けられている。外界センサ21は、ロボット1の周辺の所定距離範囲内に存在する複数の人(移動体)の少なくとも位置情報を含むデータ(移動体データ)を生成する。外界センサ21としては、例えば、カメラを用いることができる。カメラは、ロボット1の前方の周辺領域を撮影し、画像データから人の位置を示すデータを生成することができる。カメラは、測距機能を有するステレオカメラであり得る。
【0017】
なお、外界センサ21は、本体部20に対してロール軸及びヨー軸まわりに揺動可能に構成されていてもよい。これにより、ロボット1が移動することなく、撮像方向を変更することができる。なお、外界センサ21の個数や、設けられる位置は、この例に限定されない。
【0018】
また、外界センサ21は、光波を用いた距離測定に基づいて、ロボット1の位置を特定するとともに、ロボット1の周囲環境を検知する測距センサ(例えば、LRF(Laser rangefinder)、LIDAR(Light Detection and Ranging))であってもよい。また、外界センサ21として、周辺からの電磁波や音波等を捉えて、周囲の物体を検出するソナーやミリ波レーザ等を用いることも可能である。
【0019】
本体部20は、ロボットアーム30を支持する。図1の例では、本体部20の側部からそれぞれ1つずつロボットアーム30が設けられている。外界センサ21は、本体部20のロボットアーム30及びロボットハンド40の動作範囲を含む、ロボット1の前方の周辺空間を見渡せる位置に設けられている。
【0020】
ロボットアーム30は、複数のリンク、図1の例では2つのリンクを含む。関節部31(手首関節、肘関節、肩関節など)は、各リンクを回動可能に連結する。ロボットアーム30は、関節部31に設けられたアクチュエータを駆動させることにより様々な姿勢を取り得る。
【0021】
ロボットアーム30の先端部にはロボットハンド40が接続されている。ロボットハンド40は、先端部に設けられた第1フィンガー40aと第2フィンガー40bを含む。第1フィンガー40aと第2フィンガー40bとが互いに接近するように動作することで、人に配布するための物品を挟持することができる。ロボットアーム30及びロボットハンド40は、人に対して物品を配布する配布機構を構成する。
【0022】
ロボット1は、図示しない遠隔操作端末と、例えばインターネットなどのWAN(Wide Area Network)を介して双方向通信可能に構成され得る。ロボット1は、遠隔操作端末からの指示に基づき、人に対して物品を配布するサービスを提供することができる。
【0023】
また、本体部20には、コントロールユニット50が設けられている。コントロールユニット50は、ロボット1の動作を制御する後述する制御部と、メモリ等を含む。なお、本体部20には、ユーザインタフェースの一例である表示パネル22が設けられていてもよい。表示パネル22が表示面にタッチパネルを有することで、ユーザからの指示入力を受け付けることも可能である。
【0024】
図2は、実施形態に係るロボット1の機能ブロック図である。コントロールユニット50は、制御部として、例えば、CPU(Central Processing Unit)を備える。CPUがメモリに記憶されている制御プログラムを読み出して実行することで、制御プログラムは、CPUなどのハードウェアを以下の各機能部として機能させる。
【0025】
各機能部は、移動体データ取得部51、対象決定部52、動作制御部53を含む。移動体データ取得部51は、外界センサ21で生成された、ロボット1の周辺の所定距離範囲内に存在する複数の移動体の少なくとも位置情報を含む移動体データを取得する。例えば、移動体データ取得部51は、ロボット1を中心とした所定の半径の円の中に存在するそれぞれの人の位置を示す移動体データを取得することができる。
【0026】
対象決定部52は、複数の人の中からコミュニケーション対象を決定する。対象決定部52は、例えば、撮影された画像データに含まれる複数の人のうち、最も距離が近い人を物品の配布対象として決定する。また、対象決定部52は、決定された配布対象に物品を配布した後、配布対象以外の人のうち、次に近い人を新たな配布対象に決定する。なお、サービスの提供対象の決定方法は、この例に限定されるものではない。
【0027】
動作制御部53は、まず、ロボット1を移動させる必要があるか否かを判断する。具体的には、動作制御部53は、移動体データ取得部51で取得した移動体データの複数の人の位置情報に基づき、人の密度及び/又は人の存在している面積(人だかりの大きさ)を算出する。そして、動作制御部53は、算出した密度及び/又は面積が所定値以上である場合に、走行装置を移動させる処理を行う。
【0028】
そして、動作制御部53は、移動体データに基づいて、配布対象への物品の配布を行いつつ、ロボット1を人が少ない方向に移動させる。これにより、ロボット1の周りに押しかけていた人を、ロボット1が移動するにつれて、徐々に整列させることができる。これにより、整列した複数の人に順番に物品を配布することが可能となる。
【0029】
図3は、実施形態に係る走行装置の制御方法の一例を説明するフロー図である。図3に示すように、まず、外界センサ21から周囲の人の移動体データが取得される(ステップS10)。そして、移動体データに基づき、人の密度及び/又は人の存在している面積が算出され、該密度及び/又は面積が、所定値以上であるか否かが判断される(ステップS11)。
【0030】
算出された密度及び/又は面積が、所定値未満である場合(ステップS11、NO)、ステップS10に戻り、再度、移動体データの取得が行われる。一方、算出された密度及び/又は面積が、所定値以上である場合(ステップS11、YES)、ロボット1が物品の配布対象を決定し、決定された配布対象に関する情報を取得する(ステップS12)。
【0031】
なお、上述したように、最も距離が近い人を物品の配布対象として決定することができる。配布対象に関する情報とは、現在、外界センサ21が捉えている配布対象の位置や向きを示す情報であって、例えば、外界センサ21が撮像した画像データや、関節部31の角度情報等から得られる情報である。
【0032】
そして、ステップS12で得られた配布対象に関する情報を用いて、配布対象への物品の配布を行いつつ、ロボット1を人が少ない方向に移動させる(ステップS13)。例えば、ロボット1は、配布対象に正面を向けた状態を維持しつつ、人の密度が小さい方向に後退することができる。すなわち、ロボット1の移動中も、ロボット1のロボットハンド40の先端の方向は配布対象を向き続けるように姿勢を変化させる。
【0033】
図4A~4Cには、人の密度に応じてロボット1を移動する方向を決定する例が示されている。これらの図は、ロボット1と、その周辺に存在する複数の人との位置関係を示している。これらの図において、人は丸で示されており、配布対象の人は二重丸で示されている。
【0034】
図4Aは、図3に示した制御が開始されるときの状態を示しているものとする。図4Aから図4Cに向かうにしたがって、所定の時間が連続して経過しているものとする。図4Bには、図4Aの時間にロボット1が存在した位置が二点鎖線で記載されている。また、図4Cには、図4Bのときにロボット1が存在した位置が二点鎖線で記載されている。
【0035】
これらの図に示すように、ロボット1は、配布対象に正面を向けた状態を維持しつつ、配布対象に物品を配布し、白抜き矢印で示される人の密度が低い方向(人が存在しない方向)に後退する。これに伴い、物品を受けようとする複数の人は、ロボット1の前方に、配布対象を先頭として整列するように移動し、人だかりの大きさが小さくなる。このように、実施形態によれば、外界センサを用いて、人が少ない方向へ自動的にロボット1を移動させることで、人だかりの中での対人サービスを継続させることが可能となる。
【0036】
なお、図4B、4Cに示すように、後退している途中で、配布対象となっている人よりもより近い距離に人が現れた場合、決定された配布対象に物品の配布が終了するまでは、より近い距離に現れた人を考慮する必要はない。しかしながら、より近い距離に現れた人に先に物品を配布するように、配布対象を変更することも可能である。
【0037】
また、移動体データ取得部51は、移動体データとして、さらにロボット1の周辺の所定距離範囲内の複数の人の動きベクトルを取得してもよい。動きベクトルは、例えば、直前画像と現画像との間でオプティカルフロー分析を行うことにより取得することができる。動作制御部53は、この動きベクトルを解析して、ロボット1と配布対象との距離が、物品を配布するための所定範囲内に収まる状態を維持して、配布対象に物品を配布する動作を行うことができる。同時に、動作制御部53は、配布対象以外の人との距離が離れるように、人が少ない方向にロボット1を移動させることができる。
【0038】
このように、ロボット1と配布対象との距離を、物品を配布するための所定範囲内に収まる状態を維持することで、配布対象に物品を配布する動作を円滑に行うことが可能となる。また、配布対象以外の人との距離が離れるように、人が少ない方向にロボット1を移動させることで、配布対象以外の人による配布動作への干渉を抑制することが可能となる。
【0039】
図5は、実施形態に係る走行装置の制御方法の他の例を説明するフロー図である。図5では、図3のフロー図に加えて、以下の3つのステップが追加されている。
ステップS101:配布対象までの距離、密度及び面積のうちの少なくとも1つの大きさに応じて、走行装置の移動速度を決定する。
ステップS102:予め設定された移動可能範囲内にロボット1を留める。
ステップS103:周囲の人の密度又は人の存在している面積が減少したか否かを判断する。
なお、図5において、図3と同一のステップには、同一の符号を付している。
【0040】
図5を参照すると、まず、外界センサ21から周囲の人の移動体データが取得される(ステップS10)。そして、移動体データに基づき、人の密度及び/又は人の存在している面積が算出され、該密度及び/又は面積が、所定値以上であるか否かが判断される(ステップS11)。
【0041】
そして、ロボット1が物品の配布対象を決定し、決定された配布対象に関する情報を取得した(ステップS12)後に、ステップS101が実行される。ステップS101では、例えば、ロボット1と配布対象との距離が所定値よりも短い場合や、人だかりの面積が大きい場合には、ロボット1の速度を早くすることができる。また、逆に、人の密度が小さく、人だかりの面積が小さい場合には、ロボット1の移動速度を遅くしてもよい。このように、ロボット1の速度を変更することで、人だかりを整列させる時間を適切にコントロールすることが可能となる。
【0042】
そして、ステップS12で得られた配布対象に関する情報を用いて、配布対象への物品の配布を行いつつ、ステップS101で算出された速度で、ロボット1を人が少ない方向に移動させる(ステップS13)。
【0043】
そして、ロボット1を予め設定された移動可能範囲に留める(ステップS102)。図4Aに点線で示すように、例えば、制御を開始したときのロボット1の位置を中心とした所定の半径の円が、移動可能範囲として設定され得る。動作制御部53は、ロボット1がこの円の外縁に達する前に、ロボット1の移動を停止することができる。
【0044】
又は、動作制御部53は、ロボット1がこの円の外縁に達した時に移動方向を変更することができる。このとき、動作制御部53は、ロボット1を円の外縁に沿って移動させてもよい。このように、所定の範囲内にロボット1を留めるように制御することで、室内や屋外のイベントスペース等からロボット1が逸脱するのを防止することが可能となる。
【0045】
なお、移動可能範囲は、円形に限定されるものではない。例えば、移動可能範囲は、上記イベントスペースの形状に合わせた他の任意の形状を取ることも可能である。
【0046】
ロボット1が移動した後に、再度、外界センサ21から周囲の人の移動体データが取得され、人の密度及び/又は人の存在している面積が算出される。そして、周囲の人の密度又は人の存在している面積が減少したか否かが判断される(ステップS103)。この密度又は面積が減少していない場合(NO)、人同士の接触等、危険な状態となることが想定される。この場合、制御を終了して、ロボット1の動作の少なくとも1つを停止させることができる。
【0047】
例えば、所定の時間又は所定の距離、継続してロボット1を移動させたにも関わらず、人だかりの状況が改善されない場合には、物品の配布を一時中断させることができる。一方、この密度又は面積が減少した場合(YES)、再度ステップS11に戻り、該密度及び/又は面積が、所定値以上であるか否かが判断され、以降の処理が継続される。
【0048】
なお、図5に示す例では、上記3つのステップのすべてがロボット1の制御方法に組み込まれているが、いずれか1つ又は任意の組合せが組み込まれていてもよい。また、制御方法における各ステップが実行される順序は、これに限定されるものではない。例えば、配布対象の決定(ステップS12)と移動速度の決定(ステップS101)の順序は逆であってよいし、同時に実行してもよい。
【0049】
以上説明したように、実施形態によれば、外界センサを用いて、人が少ない方向へ自動的にロボット1を移動させることで、周囲に停滞する複数の人を整列させることが可能となる。これにより、複数の人に、順番に円滑にサービスを提供することが可能となる。
【0050】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、更に、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROMを含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、更に、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(random access memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。移動体とのコミュニケーションとして、上述した人への物品の配布に限定されず、例えば、動物へのえさやり等が含まれ得る。
【符号の説明】
【0052】
1 ロボット
10 台車部
11 駆動輪
12 従動輪
20 本体部
21 外界センサ
22 表示パネル
30 ロボットアーム
31 関節部
40 ロボットハンド
40a 第1フィンガー
40b 第2フィンガー
50 コントロールユニット
51 移動体データ取得部
52 対象決定部
53 動作制御部
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5