(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G03G15/20 555
(21)【出願番号】P 2021050507
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2023-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】吉木 潤
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-254148(JP,A)
【文献】特開2004-271908(JP,A)
【文献】特開2020-13069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)媒体の幅方向に延在させて配設された加熱部材、及び該加熱部材を包囲して移動自在に配設された包囲部材を備えた第1の定着部材と、
(b)該第1の定着部材と対向させて配設され、前記包囲部材との間にニップ部を形成する第2の定着部材と、
(c)前記加熱部材をオン・オフする制御部と、
(d)媒体搬送路における前記ニップ部より上流側の所定の箇所に配設され、媒体を検出する媒体検出部とを有するとともに、
(e)前記加熱部材は、前記包囲部材の長手方向における中央部を主として加熱する主加熱体、及び前記包囲部材の長手方向における端部を主として加熱する副加熱体を備え、
(f)前記制御部は、前記媒体検出部による媒体の検出に基づいて媒体間隔を算出するとともに、前記主加熱体及び副加熱体をそれぞれオンにする割合を表す第1、第2のデューティ比を算出し、前記媒体間隔に応じて第2のデューティ比を補正することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記制御部は前記媒体間隔が大きくなると第2のデューティ比を補正し、高くする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記包囲部材の目標温度と、温度検出部によって検出された前記包囲部材の検出温度との差分に基づいて第1のデューティ比を算出する第1のオンデューティ算出部を備える請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1のデューティ比に基づいて第2のデューティ比を算出する第2のオンデューティ算出部を備える請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記包囲部材の目標温度と、前記温度検出部によって検出された検出温度との差分に基づいて第2のデューティ比を算出する第2のオンデューティ算出部を備える請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記制御部は、算出された媒体間隔と、媒体収容部に収容された媒体に応じて設定された媒体間隔との差分に基づいて、第2のデューティ比を補正するための補正値を算出する補正値算出部を備える請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記主加熱体及び副加熱体は、加熱部材を長手方向において分割することによって形成される請求項1~6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記主加熱体及び副加熱体は、加熱部材を短手方向に分割することによって形成される請求項1~6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式のプリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、プリンタは、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成ユニット、LEDヘッド、転写ユニット、定着器等を備え、ホストコンピュータからプリンタに印刷データが送られると、前記各画像形成ユニットにおいて、帯電ローラによって一様に帯電させられた感光体ドラムの表面がLEDヘッドによって露光されて静電潜像が形成され、該静電潜像が現像ローラによって現像されてトナー像が形成されるようになっている。
【0003】
そして、各色のトナー像が転写ユニットにおいて媒体としての用紙に重ねて転写されてカラーのトナー像が形成され、該カラーのトナー像が定着器において用紙に定着させられて、用紙にカラーの画像が形成される。
【0004】
前記定着器は、例えば、ヒータ、及び該ヒータを包囲して走行自在に配設された包囲部材としての定着ベルトを備えた加熱ユニット、並びに前記定着ベルトを介してヒータに当接させて回転自在に配設されたバックアップローラを備える。用紙が定着器における定着ベルトとバックアップローラとの間を通紙させられる間に、用紙上の前記カラーのトナー像が、加熱ユニットによって加熱され、バックアップローラによって加圧されて、用紙に定着させられる。
【0005】
ところで、前記定着器においては、最小幅の用紙が通紙させられる定着ベルトの中央部に温度センサが配設され、該温度センサによって定着ベルトの温度が検出され、検出された温度が適正な値になるようにヒータがオン・オフされるようになっているが、定着ベルトの端部における放熱量が中央部における放熱量より多いので、定着ベルトの端部の温度が低下してしまう。
【0006】
そこで、定着ベルトの端部に温度センサを配設し、端部におけるヒータの発熱量を中央部におけるヒータの発熱量より大きくすることによって端部の温度が低下するのを防止するようにしたプリンタが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、定着ベルトの端部に温度センサが配設されるので、プリンタのコストが高くなるだけでなく、印刷データの処理等に時間がかかったり、1枚の印刷が複数回行われたりして、搬送される用紙間の距離を表す媒体間隔としての紙間が、あらかじめ設定された紙間、すなわち、設定紙間より大きくなった場合等に、通紙による熱変動が少なくなり、ヒータをオンにする割合を表すオンデューティが低くなって、定着ベルトの端部の温度が低下し、定着不良が発生してしまう。
【0009】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、コストを低くすることができ、包囲部材の端部の温度が低下するのを防止し、定着不良が発生するのを防止することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのために、本発明の画像形成装置においては、媒体の幅方向に延在させて配設された加熱部材、及び該加熱部材を包囲して移動自在に配設された包囲部材を備えた第1の定着部材と、該第1の定着部材と対向させて配設され、前記包囲部材との間にニップ部を形成する第2の定着部材と、前記加熱部材をオン・オフする制御部と、媒体搬送路における前記ニップ部より上流側の所定の箇所に配設され、媒体を検出する媒体検出部とを有する。
【0011】
そして、前記加熱部材は、前記包囲部材の長手方向における中央部を主として加熱する主加熱体、及び前記包囲部材の長手方向における端部を主として加熱する副加熱体を備える。
【0012】
また、前記制御部は、前記媒体検出部による媒体の検出に基づいて媒体間隔を算出するとともに、前記主加熱体及び副加熱体をそれぞれオンにする割合を表す第1、第2のデューティ比を算出し、前記媒体間隔に応じて第2のデューティ比を補正する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、画像形成装置においては、媒体の幅方向に延在させて配設された加熱部材、及び該加熱部材を包囲して移動自在に配設された包囲部材を備えた第1の定着部材と、該第1の定着部材と対向させて配設され、前記包囲部材との間にニップ部を形成する第2の定着部材と、前記加熱部材をオン・オフする制御部と、媒体搬送路における前記ニップ部より上流側の所定の箇所に配設され、媒体を検出する媒体検出部とを有する。
【0014】
そして、前記加熱部材は、前記包囲部材の長手方向における中央部を主として加熱する主加熱体、及び前記包囲部材の長手方向における端部を主として加熱する副加熱体を備える。
【0015】
また、前記制御部は、前記媒体検出部による媒体の検出に基づいて媒体間隔を算出するとともに、前記主加熱体及び副加熱体をそれぞれオンにする割合を表す第1、第2のデューティ比を算出し、前記媒体間隔に応じて第2のデューティ比を補正する。
【0016】
この場合、制御部において、前記媒体検出部による媒体の検出に基づいて媒体間隔が算出されるとともに、前記主加熱体及び副加熱体をそれぞれオンにする割合を表す第1、第2のデューティ比が算出され、前記媒体間隔に応じて第2のデューティ比が補正されるので、媒体間隔の変動によって包囲部材の端部の温度が低下することがない。したがって、定着不良が発生するのを防止することができる。
【0017】
また、包囲部材の端部の温度を温度検出部によって検出する必要がないので、画像形成装置のコストを低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【
図3】本発明の第1の実施の形態における画像形成ユニットの概念図である。
【
図4】本発明の実施の形態における定着器の概略図である。
【
図5】本発明の第1の実施の形態における定着器のヒータ制御回路を示す図である。
【
図6】比較例の定着器のヒータ制御回路の機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図7】比較例の定着器の動作を示すフローチャートである。
【
図8】比較例の定着器の動作を説明するための第1のタイムチャートである。
【
図9】比較例の定着器の動作を説明するための第2のタイムチャートである。
【
図10】比較例の定着器における紙間増加量とサイドヒータのオンデューティの低下量及び定着ベルトの端部の温度の低下量との関係を示す図である。
【
図11】本発明の第1の実施の形態における定着器のヒータ制御回路の機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図12】本発明の第1の実施の形態における定着器の動作を示すフローチャートである。
【
図13】本発明の第1の実施の形態における補正値テーブルの例を示す図である。
【
図14】本発明の第1の実施の形態における定着器の動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図15】本発明の第1の実施の形態における紙間増加量と補正前及び補正後のサイドヒータのオンデューティとの関係を示す図である。
【
図16】本発明の第2の実施の形態における定着器の概略図である。
【
図17】本発明の第2の実施の形態における定着器のヒータ制御回路を示す図である。
【
図18】本発明の第2の実施の形態における定着器のヒータ制御回路の機能を説明するための機能ブロック図である。
【
図19】本発明の第2の実施の形態における定着器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0020】
図2は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの概念図、
図3は本発明の第1の実施の形態における画像形成ユニットの概念図である。なお、本実施の形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cが配設されるようになっているが、該画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cはいずれも同じ構造を有するので、
図3においては画像形成ユニット16Bkだけを図示する。
【0021】
図において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の筐体、Bdはプリンタ10の本体、すなわち、装置本体であり、該装置本体Bdの下部に媒体収容部としての用紙カセット11が配設され、該用紙カセット11に配設されたスタッカSt1に媒体としての用紙Pが積載される。そして、前記用紙カセット11の前端に隣接させて、用紙Pを1枚ずつ分離させて給紙するための給紙機構が配設される。
【0022】
該給紙機構は、回転させられて用紙Pを繰り出す繰出部材としてのホッピングローラ12、用紙Pの重送を防止する分離部材としてのリタードローラ13等から成る。搬送用の駆動部としての後述される搬送モータ55(
図1)が駆動されると、用紙Pは、給紙機構によって1枚ずつ分離させられて媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に給紙され、第1の搬送部材としてのレジストローラ対14に送られ、該レジストローラ対14によって斜行が矯正された後、所定のタイミングで第2の搬送部材としての搬送ローラ対15に送られ、該搬送ローラ対15によって、カラーの画像を形成するための画像形成部Q1に供給される。
【0023】
該画像形成部Q1は、装置本体Bdに対してそれぞれ着脱自在に配設された画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16C、該各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの像担持体としての感光体ドラム31、該感光体ドラム31の上方に、感光体ドラム31と対向させて配設された露光装置としてのLEDヘッド22、及び前記画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの下方に配設された転写ユニットu1から成る。
【0024】
前記画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cは、用紙Pの幅方向に延在させて配設された画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの本体、すなわち、ユニット本体部37、及び該ユニット本体部37に対して着脱自在に配設された現像剤収容部としてのトナーカートリッジ41を備え、該トナーカートリッジ41内に、ブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの現像剤としての図示されないトナーが収容される。
【0025】
前記ユニット本体部37は、前記感光体ドラム31と当接させて回転自在に配設され、感光体ドラム31が図における時計回り方向に回転させられるのに伴って、感光体ドラム31の回転方向と逆の方向、すなわち、反時計回り方向に回転させられて、感光体ドラム31の表面を一様に帯電させる帯電装置としての帯電ローラ32、感光体ドラム31と当接させて回転自在に配設され、トナーを保持し、反時計回り方向に回転させられてトナーを感光体ドラム31上の潜像としての静電潜像に付着させ、該静電潜像を現像する現像剤担持体としての現像ローラ33、該現像ローラ33に当接させて回転自在に配設され、反時計回り方向に回転させられて現像ローラ33にトナーを供給する現像剤供給部材としての供給ローラ34、先端を現像ローラ33に圧接させて配設され、現像ローラ33上に供給されたトナーを均一に薄層化する現像剤層規制部材としての現像ブレード35、前記感光体ドラム31に当接させて配設され、転写ユニットu1による転写が行われた後に感光体ドラム31に残留したトナーを除去するためのクリーニング装置36等を備える。なお、前記現像ローラ33、供給ローラ34及び現像ブレード35によって、現像器が構成される。
【0026】
該現像器において、トナーは、供給ローラ34によって現像ローラ33に供給され、現像ブレード35によって層厚が規制されて現像ローラ33上で薄層化される。
【0027】
前記画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cにおいて、感光体ドラム31は、画像形成用の駆動部としての後述されるIDモータ(ドラムモータ)57によって回転させられ、回転に伴って表面が、帯電ローラ32によって一様に帯電させられ、LEDヘッド22によって露光されて、表面に前記静電潜像が形成される。該静電潜像に前記現像ローラ33上のトナーが静電的に付着させられて、感光体ドラム31上に現像剤像としてのトナー像が形成される。
【0028】
前記転写ユニットu1は、第1の転写用のローラとしての駆動ローラR1、第2の転写用のローラとしての従動ローラR2、駆動ローラR1と従動ローラR2との間に走行自在に張設されたベルト部材としての転写ベルト17、及び該転写ベルト17を介して前記感光体ドラム31と対向させて回転自在に配設され、感光体ドラム31との間に転写部を形成する転写部材としての転写ローラ21を備える。
【0029】
また、転写ユニットu1において、転写用の駆動部としての後述される転写モータ56が駆動されると、駆動ローラR1が回転させられ、転写ベルト17が走行させられる。
【0030】
画像形成部Q1に供給された用紙Pは、前記転写ベルト17が走行させられるのに伴って搬送され、各感光体ドラム31と各転写ローラ21との間の転写部を通紙させられ、このとき、各転写ローラ21によって、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cにおいて感光体ドラム31上に形成された各色のトナー像が用紙Pに順次重ねて転写され、用紙P上にカラーのトナー像が形成される。
【0031】
そして、カラーのトナー像が転写された用紙Pは、定着装置としての定着器18に送られる。
【0032】
該定着器18は、搬送される用紙Pの幅方向に延在させて配設され、第1の定着部材としての加熱ユニット46、該加熱ユニット46と対向させて回転自在に配設された第2の定着部材としての、かつ、定着駆動ローラとしてのバックアップローラ47を備える。
【0033】
前記加熱ユニット46は、用紙Pの幅方向である長手方向に延在させて配設され、平板状の形状を有する加熱部材としての後述されるヒータHt(
図4)、該ヒータHtを包囲して移動自在に、本実施の形態においては、走行自在に配設された包囲部材としての定着ベルト45等を有し、該定着ベルト45を介してヒータHtとバックアップローラ47とが当接させられ、定着ベルト45とバックアップローラ47との間に定着部としての後述されるニップ部Npが形成される。
【0034】
定着器18において、画像形成部Q1から送られ、カラーのトナー像が弱い静電気力で付着している用紙Pが前記ニップNpを通過、すなわち、通紙させられると、カラーのトナー像が、定着ベルト45によって加熱され、バックアップローラ47によって所定の加圧力、すなわち、ニップ圧で加圧されて用紙Pに定着させられ、用紙Pにカラーの画像が形成される。
【0035】
なお、本実施の形態において、前記加熱ユニット46はヒータHt及び定着ベルト45から成るが、包囲部材として、定着ベルト45に代えて、筒状の形状を有する加熱ローラを回転自在に配設することもできる。また、本実施の形態においては、ヒータHtが平板状の形状を有するようになっているが、ヒータHtを円筒状の形状にすることもできる。
【0036】
そして、カラーの画像が形成された用紙Pは、定着器18から排出され、第3の搬送部材としての搬送ローラ対19によって搬送された後、第4の搬送部材としての排出ローラ対20によって装置本体Bd外に排出され、筐体Csの頂部に形成されたスタッカSk2に積載される。
【0037】
前記用紙搬送路Rt1における定着器18より上流側の所定の箇所、本実施の形態においては、前記搬送ローラ対15と画像形成部Q1との間に第1の媒体検出部としての書出センサs1が配設され、該書出センサs1によって用紙Pの有無が検出される。書出センサs1のセンサ信号gs1は、LEDヘッド22が感光体ドラム31を露光するタイミング、及び後述される高電圧回路59が転写ローラ21に高電圧を印加するタイミングの基準となる。
【0038】
また、前記用紙搬送路Rt1における定着器18より下流側の所定の箇所、本実施の形態においては、定着器18と搬送ローラ対19との間に第2の媒体検出部としての出口センサs2が配設され、該出口センサs2によって用紙Pの有無が検出される。出口センサs2のセンサ信号gs2に基づいて、用紙Pに対するすべての画像形成プロセスが終了したかどうか、すなわち、印刷が終了したかどうかが判断される。
【0039】
次に、定着器18について説明する。
【0040】
図4は本発明の実施の形態における定着器の概略図である。
【0041】
図において、18は定着器、46は加熱ユニット、47はバックアップローラであり、加熱ユニット46はヒータHt及び定着ベルト45を備える。
【0042】
該定着ベルト45は、多重構造を有し、ポリイミド(PI)等の樹脂、又はステンレス鋼(SUS)等の金属から成る基材、該基材を被覆するシリコーンゴム等から成る弾性層、及び該弾性層を被覆する、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂から成るコーティング層(又はチューブ状の表層)を備える。
【0043】
前記バックアップローラ47は、芯金、該芯金を被覆するゴム材料、本実施の形態においては、シリコーンゴムから成る弾性層、及び該弾性層を被覆する、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂から成るチューブによって形成された最外層としての離形層を備え、各層が互いに接着される。
【0044】
前記バックアップローラ47の弾性層は、用紙P上のトナー像が厚い場合でもトナー像を十分なニップ圧で加圧し、用紙Pにトナー像を確実に定着させることができるように、また、ヒータHtの熱を吸収することなく、十分な熱を用紙Pに伝達して、消費されるエネルギーを少なくすることができるように、スポンジ構造を有する。
【0045】
ところで、本実施の形態においては、用紙Pとして、坪量が70~80〔gsm〕程度の普通紙だけでなく、坪量が60〔gsm〕以下の薄紙、封筒等が使用されるが、いずれの用紙Pを使用した場合でも、用紙Pがニップ部Npを通過する際に、ニップ部Npの幅方向において用紙Pの搬送速度にムラが生じ、用紙Pに皺が発生してしまう。
【0046】
そこで、用紙Pに皺が発生するのを防止するために、本実施の形態においては、バックアップローラ47が、長手方向における中央部の径と端部の径とが異なり、中央部から端部にかけて径が大きくなる形状、すなわち、逆クラウン形状に形成され、バックアップローラ47を回転させたときのバックアップローラ47の端部の周速が中央部の周速より高くされる。これにより、ニップ部Npの端部における用紙Pの搬送速度が中央部における用紙Pの搬送速度より高くなり、用紙Pが端部側に引っ張られるので、用紙Pの中央部付近に弛みが生じることがなくなり、用紙Pに皺が発生するのを防止することができる。
【0047】
また、前記ヒータHtとして、長手方向に延びる面状発熱体から成る面状ヒータが使用される。ヒータHtは、ステンレス又はセラミックから成る基板上に、電気絶縁層、抵抗発熱層、電極及び保護層を順に積層することによって形成され、電極を介して電力を供給することによって発熱する。なお、ヒータHtによって加熱される定着ベルト45の長手方向において温度のムラが生じるのを抑制するために、ヒータHtと定着ベルト45との間に熱伝導率の高い金属製の熱拡散部材を配設することができる。
【0048】
また、ヒータHtの表面にはグリスが塗付され、ヒータHtと定着ベルト45との摺動性が高くされる。
【0049】
さらに、前記ヒータHtは、定着ベルト45に沿って長手方向において3分割され、定着ベルト45の中央部に位置し、定着ベルト45の中央部を主として加熱する中央加熱部としての、かつ、主加熱体としてのメインヒータMH、用紙Pの搬送方向の下流側を見たときの左側の端部に位置し、定着ベルト45の端部を主として加熱する第1の端部加熱部として、かつ、副加熱体としてのサイドヒータLH、及び用紙Pの搬送方向の下流側を見たときの右側の端部に位置し、定着ベルト45の端部を主として加熱する第2の端部加熱部としての、かつ、副加熱体としてのサイドヒータRHから成る。なお、サイドヒータLH、RHによって両端加熱部が構成される。
【0050】
前記メインヒータMHとサイドヒータLH、RHとは、それぞれ独立に駆動されてオン・オフされ、サイドヒータLH、RHは同時に駆動されてオン・オフされる。
【0051】
前記メインヒータMH及びサイドヒータLH、RHの各寸法は、プリンタ10の仕様、ユーザの要求等によって任意に決定される。本実施の形態においては、メインヒータMHの両端間の距離が、A4判の用紙の横サイズである幅(210〔mm〕)と等しくされ、サイドヒータLHの左端とサイドヒータRHの右端との間の距離が、プリンタ10の印刷可能な最大幅であるA4判の用紙の縦サイズである長さ(297〔mm〕)と等しくされる。
【0052】
幅がA4判の用紙の幅未満の用紙Pが使用される場合は、メインヒータMHだけがオン・オフされ、幅がA4判の用紙の幅以上であり、かつ、長さがA4判の用紙の長さ以下の用紙Pが使用される場合は、メインヒータMHがオン・オフされるとともに、用紙Pの幅に応じてサイドヒータLH、RHがオン・オフされる。
【0053】
そのために、メインヒータMHの裏面の長手方向における中央部に、第1の温度監視用の検出部としてのメインサーミスタMsが配設され、各サイドヒータLH、RHの裏面の長手方向における中央部に、第2の温度監視用の検出部としてのサイドサーミスタLs、Rsが配設され、メインサーミスタMs及びサイドサーミスタLs、RsによってメインヒータMH及びサイドヒータLH、RHの各温度が検出される。メインサーミスタMs及びサイドサーミスタLs、Rsは、ヒータHtが故障したり、幅の狭い用紙P、すなわち、幅狭紙に対して連続印刷が行われたときに、定着ベルト45における非通紙部である端部の温度が上昇したりした場合の、定着ベルト45の温度の過剰な上昇を監視する。
【0054】
また、用紙Pの搬送方向における定着器18の入口側において、定着ベルト45の外周面の幅方向における中央部と対向させて、温度制御用の検出部としての赤外線温度センサIsが配設される。該赤外線温度センサIsは、非接触の温度センサであり、定着ベルト45の表面から放射された赤外線を受光し、受光した光の光量を温度に変換することによって定着ベルト45の温度を検出する。
【0055】
なお、定着ベルト45の端部の放熱量は中央部の放熱量より多いので、例えば、加熱源となる発熱線の密度を異ならせることによって、サイドヒータLH、RHの発熱量がメインヒータMHの発熱量より大きくされる。
【0056】
次に、前記プリンタ10の制御装置について説明する。
【0057】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0058】
図において、50はプリンタ10(
図2)の全体の制御を行う第1の制御部としての印刷制御部、51は定着器18の制御を行う第2の制御部としての定着制御部であり、印刷制御部50及び定着制御部51は、前記ヒータHt(
図4)をオン・オフすることによってヒータHtへの電力の供給を制御する。
【0059】
前記印刷制御部50は、不揮発性メモリから成る第1の記憶部としてのROM52、揮発性メモリから成る第2の記憶部としてのRAM53、ハードディスク等から成る第3の記憶部としての記憶装置54、前記搬送モータ55、前記転写モータ56、前記IDモータ57、定着用の駆動部としての定着モータ58、LEDヘッド22、高圧回路59、ユーザインタフェース部としての操作パネル60等と接続される。定着モータ58はバックアップローラ47に接続される。
【0060】
前記印刷制御部50は、図示されない演算装置としてのCPU、タイマ、入出力ポート等を備え、ROM52に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。
【0061】
ROM52には、前記プログラムのほかに各種の設定値等が記録される。また、RAM53には、上位装置としての図示されないホストコンピュータから送信された印刷データに基づいて生成された、通常の印刷を行うための画像データのほかに、各種の制御用のデータが一時的に記録される。なお、前記RAM53は、前記CPUが演算を行う際にワーキングメモリとして使用される。
【0062】
前記記憶装置54には、操作者が操作パネル60を操作し、用紙カセット11に収容する用紙Pの設定、すなわち、用紙設定を行ったときの、用紙Pの幅、厚さ等の用紙設定情報が記録されるほかに、前記サイドヒータLH、RHをオンにする割合を表す第2のデューティ比としてのオンデューティBDy2の補正値Dupを算出するための補正値テーブルTb1が記録される。
【0063】
また、前記印刷制御部50は、目標温度設定処理部Pr1、ウォームアップ処理部Pr2、印刷処理部Pr3、紙間算出処理部Pr4等を有する。
【0064】
前記目標温度設定処理部Pr1は、目標温度設定処理を行い、記憶装置54から用紙設定情報を読み出し、用紙設定情報に応じた定着器18の目標温度Teを設定する。
【0065】
前記ウォームアップ処理部Pr2は、ウォームアップ処理を行い、ヒータHtをオンにし、印刷が可能になるまで定着ベルト45を加熱する。
【0066】
前記印刷処理部Pr3は、印刷処理を行い、前記ホストコンピュータから送信された印刷データを受信すると、印刷データを編集する等の処理を行い、画像データを生成し、生成した画像データをRAM52に記録し、続いて、前記書出センサs1によって用紙Pが検出されると、LEDヘッド22に画像データを送り、感光体ドラム31を露光して感光体ドラム31の表面に静電潜像を形成する。そして、印刷処理部Pr3は、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cにおいて、静電潜像にトナーを付着させて感光体ドラム31上にトナー像を形成し、転写ユニットu1において各色のトナー像を用紙Pに転写してカラーのトナー像を形成し、定着器18においてカラーのトナー像を用紙Pに定着させる。
【0067】
前記紙間算出処理部Pr4は、紙間算出処理を行い、記憶装置54に記録された用紙設定情報を読み出し、用紙設定情報に応じた印刷速度(用紙Pの搬送速度)Vp、及び書出しセンサs1による用紙Pの検出に伴うセンサ信号gs1に基づいて、用紙搬送路Rt1を搬送される用紙P間の距離である紙間を、第1の媒体間隔としての算出紙間Gcとして算出し、定着制御部51に送る。
【0068】
該定着制御部51は、ヒータHtの温度が目標温度TeになるようにメインヒータMH
をオン・オフし、定着ベルト45の温度が適正になるようにサイドヒータLH、RHをオン・オフするための制御を行う。そのために、定着制御部51は、メインヒータMHをオンにする割合を表す第1のデューティ比としてのオンデューティDy1、及びサイドヒータLH、RHをオンにする割合を表す前記オンデューティDy2、BDy2、ADy2を算出し、駆動信号SG1、SG2を生成する。また、前記定着制御部51は、用紙搬送路Rt1を搬送される用紙P間の距離を表す紙間を算出紙間Gcとして算出し、該算出紙間Gcに応じてサイドヒータLH、RHのオンデューティDy2、BDy2を補正する。すなわち、定着制御部51は、算出紙間Gcが、用紙カセット11に収容された用紙Pの種類に応じてあらかじめ設定された第2の媒体間隔としての設定紙間Gsより大きくなると、紙間の増加量を表す紙間増加量に応じて前記オンデューティDy2、BDy2を補正することによってオンデューティADy2を算出する。
【0069】
前記搬送モータ55は、ステッピングモータ、DCモータ等から成り、前記ホッピングローラ12を回転させて用紙カセット11から用紙Pを繰り出したり、レジストローラ対14及び搬送ローラ対15を回転させて用紙Pを搬送したりする。
【0070】
前記転写モータ56は、ステッピングモータ、DCモータ等から成り、駆動ローラR1を回転させて転写ベルト17を走行させるとともに、各転写ローラ21を回転させる。
【0071】
前記IDモータ57は、DCモータから成り、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cにおいて、感光体ドラム31、帯電ローラ32、現像ローラ33等を回転させる。
【0072】
前記定着モータ58は、DCモータから成り、定着器18のバックアップローラ47を回転させ、定着ベルト45を走行させてニップ部Npにおいて用紙Pを搬送したり、搬送ローラ対19を回転させて用紙Pを搬送したり、排出ローラ対20を回転させて用紙Pを装置本体Bd外に排出したりする。なお、定着器18において、定着モータ58の回転は、図示されないギヤ列を介して減速させられた後、バックアップローラ47に伝達される。
【0073】
前記高圧回路59は、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cにおいて、帯電ローラ32、現像ローラ33、供給ローラ34(
図3)、現像ブレード35等に高電圧を印加したり、転写ユニットu1において転写ローラ21に高電圧を印加したりする。
【0074】
前記操作パネル60は、プリンタ10の状態を表示するためのLED画面等から成る表示部61、及びプリンタ10に操作者が指示を入力し、用紙設定等を行うためのスイッチ、キー等から成る操作部62を備える。なお、操作パネル60がタッチパネルによって形成される場合、操作パネル60は、表示部として機能するとともに、操作部としても機能する。
【0075】
次に、前記プリンタ10の動作について説明する。
【0076】
印刷処理部Pr2が、高圧回路59によって発生させられた高圧バイアスを画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cに供給すると、帯電ローラ32に、例えば、-1100〔V〕の帯電電圧が印加され、感光ドラム31の表面が、例えば、-600〔V〕に帯電させられ、現像ローラ33に、例えば、-200〔V〕の現像電圧が、供給ローラ34に、例えば、-250〔V〕の供給電圧が印加され、現像ローラ33と供給ローラ34との間において現像ローラ33から供給ローラ34に向かう方向の電界が形成される。これにより、前記トナーカートリッジ41からユニット本体部37内に供給されたトナーは、現像ローラ33及び供給ローラ34によって強く擦られて負の極性に摩擦帯電させられる。
【0077】
負の極性に摩擦帯電させられたトナーは、現像ローラ33から供給ローラ34に向かう方向の電界から受けるクーロン力によって現像ローラ33に付着させられる。付着させられたトナーは、現像ローラ33の回転に伴って現像ローラ33と現像ブレード34との接触部に送られ、現像ブレード35によって均一な厚さの薄層にされる。現像ローラ33は、さらに回転し続けて、トナーの薄層を感光体ドラム31との間に送る。
【0078】
また、印刷処理部Pr2は、LEDヘッド22を駆動し、-600〔V〕に帯電させられた感光体ドラム31を露光して-50〔V〕の電位に除電し、感光体ドラム31の表面に静電潜像を形成する。
【0079】
感光体ドラム31の表面に形成された静電潜像は、感光体ドラム31の回転に伴って現像ローラ33との間に到達する。現像ローラ33と感光体ドラム31との間において、-50〔V〕の電位に除電された部分、すなわち、露光部では、感光体ドラム31から現像ローラ33に向かう方向の電界が形成され、-600〔V〕のまま除電されていない非露光部では、現像ローラ33から感光体ドラム31に向かう逆方向の電界が形成されるので、現像ローラ33上の負の極性に帯電させられたトナーが露光部にだけ選択的に付着させられ、これにより、静電潜像が現像されて感光体ドラム31の表面にトナー像が形成される。
【0080】
続いて、印刷処理部Pr2は、感光体ドラム31上のトナー像が転写ローラ21との間に到達するタイミングに合わせて、用紙Pを感光体ドラム31と転写ローラ21との間に送り、高圧回路59によって発生させられた高圧バイアスを転写ユニットu1に供給し、転写ローラ21に+2500〔V〕の転写電圧を印加する。このとき、感光体ドラム31と転写ローラ21との間においては、感光体ドラム31から転写ローラ21に向かう方向の電界が形成され、感光体ドラム31上に転写された負の極性のトナー像が用紙Pに転写される。
【0081】
このようにして、各画像形成ユニット16Bk、16Y、16M、16Cの感光体ドラム31上に形成されたトナー像が、転写ベルト17の走行に伴って順次重ねて用紙Pに転写されて、用紙Pにカラーのトナー像が形成される。
【0082】
カラーのトナー像が形成された用紙Pが定着器18に到達すると、既に定着可能な温度に加熱されている定着ベルト45及びバックアップローラ47によって、用紙P上のカラーのトナーが、加熱され、溶融させられ、加圧されて用紙Pに定着させられる。
【0083】
さらに、印刷処理部Pr2は、出口センサs2のセンサ信号gs2によって定着器18における用紙Pのジャム、用紙Pの定着ベルト45への巻付き等を監視し、カラーの画像が形成された用紙Pを搬送ローラ対19によって搬送し、排出ローラ対20によって装置本体Bd外に排出する。
【0084】
次に、ヒータHtを駆動し、オン・オフするためのヒータ制御回路について説明する。
【0085】
図5は本発明の第1の実施の形態における定着器のヒータ制御回路を示す図である。
【0086】
図において、65はヒータ制御回路、51は定着制御部、66はトライアック駆動回路、68は交流電源となる商用電源、Htはヒータ、MHはメインヒータ、LH、RHはサイドヒータ、Msはメインサーミスタ、Ls、Rsはサイドサーミスタ、Isは赤外線温度センサ、TR1は、メインヒータMHをオン・オフする主スイッチング素子としてのトライアック、TR2は、サイドヒータLH、RHをオン・オフする副スイッチング素子としてのトライアックである。
【0087】
前記メインサーミスタMs、サイドサーミスタLs、Rs及び赤外線温度センサIsのセンサ出力が定着制御部51に送られる。
【0088】
前記商用電源68の一方の端子は、メインヒータMH及びサイドヒータLH、RHの長手方向における各一方の電極に接続され、商用電源68の他方の端子は、トライアックTR1、TR2を介してメインヒータMH及びサイドヒータLH、RHの長手方向における各他方の電極に接続される。
【0089】
前記トライアック駆動回路66は、図示されないフォトトライアックから成り、一次側と二次側とが絶縁され、一次側において定着制御部51に接続され、二次側においてトライアックTR1、TR2の各ゲート端子に接続される。
【0090】
前記定着制御部51からトライアック駆動回路66にメインヒータMHの駆動信号SG1及びサイドヒータLH、RHの駆動信号SG2が送られると、トライアック駆動回路61は、駆動信号SG1、SG2のオン・オフに応じてトライアックTR1、TR2を駆動し、メインヒータMH及びサイドヒータLH、RHに供給される電力を変更する。ところで、本実施の形態において、温度制御用の前記赤外線温度センサIsが定着ベルト45の中央部に配設され、赤外線温度センサIsによって検出された温度、すなわち、検出温度Tsが目標温度TeになるようにメインヒータMH及びサイドヒータLH、RHがオン・オフされるので、印刷データの処理等に時間がかかったり、1枚の印刷が複数回行われたりして、前記算出紙間Gcが前記設定紙間Gsより大きくなると、通紙による熱変動が少なくなり、メインヒータMH及びサイドヒータLH、RHヒータのオンデューティDy1、BDy2が低くなり、定着ベルト45の端部の温度が低下してしまう。
【0091】
次に、算出紙間Gcが設定紙間Gsより大きくなった場合の定着器18の動作について説明する。この場合、本実施の形態と機能が同じ部材に本実施の形態と同じ符号を付与することによって比較例の定着器について説明する。
【0092】
図6は比較例の定着器のヒータ制御回路の機能を説明するための機能ブロック図、
図7は比較例の定着器の動作を示すフローチャート、
図8は比較例の定着器の動作を説明するための第1のタイムチャート、
図9は比較例の定着器の動作を説明するための第2のタイムチャート、
図10は比較例の定着器における紙間増加量とサイドヒータのオンデューティの低下量及び定着ベルトの端部の温度の低下量との関係を示す図である。なお、
図10において、横軸に紙間増加量Gupを、縦軸に、サイドヒータLH、RH(
図4)のオンデューティDy2の低下量を百分率で、また、定着ベルト45の端部の温度TLRの低下量を温度で採ってある。
【0093】
図6において、70は減算器、71は第1のオンデューティ算出部、72は第2のオンデューティ算出部である。
【0094】
前記印刷制御部50(
図1)において、前記ホストコンピュータから印刷データを受信すると、目標温度設定処理部Pr1は、記憶装置54から用紙情報を読み出し、該用紙情報に応じて目標温度Teを設定し、ウォームアップ処理部Pr2は、ウォームアップ時間Tupを短くするために、メインヒータMHのオンデューティDy1及びサイドヒータLH、RHのオンデューティDy2をいずれも100〔%〕にしてウォームアップを開始する(ステップS1)。
【0095】
そして、印刷処理部Pr3は、赤外線温度センサIsによって検出された定着ベルト45の温度、すなわち、検出温度Tsが目標温度Teに到達するのを待機し(ステップS2)、検出温度Tsが目標温度Teに到達すると、印刷を開始する(ステップS3)。
【0096】
次に、減算器70は、目標温度Teから検出温度Tsを減算することによって差分ΔTを算出し、第1のオンデューティ算出部71は、差分ΔTに基づいてメインヒータMHのオンデューティDy1を算出し(ステップS4)、駆動信号SG1を生成し、トライアック駆動回路66に送る。これに伴い、トライアック駆動回路66はメインヒータMHをオン・オフする(ステップS5)。また、第2のオンデューティ算出部72は、メインヒータMHのオンデューティDy1に係数αを乗算することによってサイドヒータLH、RHのオンデューティDy2を算出し(ステップS6)、駆動信号SG2を生成し、トライアック駆動回路66に送る。これに伴い、トライアック駆動回路66はサイドヒータLH、RHをオン・オフする(ステップS7)。なお、前記係数αは、あらかじめ実験等によって算出され、記憶装置54に記録される。
【0097】
印刷が行われている間、赤外線温度センサIsによって検出された検出温度Tsは常にフィードバックされ、前記差分ΔTに基づいてメインヒータMHのオンデューティDy1が更新される。
【0098】
続いて、印刷処理部Pr3は印刷が終了したかどうかを判断する(ステップS8)。印刷が終了するまで、定着制御部51によるメインヒータMH及びサイドヒータLH、LRのオン・オフが行われる。
【0099】
なお、用紙カセット11(
図2)から繰り出された用紙Pが書出センサs1に到達すると、書出センサs1が用紙Pを検出している間、センサ信号gs1がオンになり、用紙Pが出口センサs2に到達すると、出口センサs2が用紙Pを検出している間、センサ信号gs2がオンになる。
【0100】
そして、入口書出センサs1のセンサ信号gs1がオフになってからオンになるまでの時間Tαは、算出紙間GDcに応じて変化する。
【0101】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 ウォームアップ処理部Pr2はウォームアップを開始する。
ステップS2 印刷処理部Pr3は検出温度Tsが目標温度Teに到達するのを待機する。検出温度Tsが目標温度Teに到達した場合はステップS3に進む。
ステップS3 印刷処理部Pr3は印刷を開始する。
ステップS4 第1のオンデューティ算出部71はメインヒータMHのオンデューティDy1を算出する。
ステップS5 トライアック駆動回路66はメインヒータMHをオン・オフする。
ステップS6 第2のオンデューティ算出部72はサイドヒータLH、RHのオンデューティDy2を算出する。
ステップS7 トライアック駆動回路66はサイドヒータLH、RHをオン・オフする。
ステップS8 印刷処理部Pr3は印刷が終了したかどうかを判断する。印刷が終了した場合は処理を終了し、印刷が終了しなかった場合はステップS2に戻る。
【0102】
ところで、各用紙Pが設定紙間Gsで搬送される場合、
図8に示されるように、センサ信号gs1、gs2はいずれも設定紙間Gsに対応した一定の間隔でオン・オフされる。
その場合、定着ベルト45において、通紙による熱変動に伴って検出温度Tsが変動しても、メインヒータMHのオンデューティDy1及びサイドヒータLH、LRのオンデューティDy2は一定の値を維持するので、定着ベルト45の中央部の温度TMと端部の温度TLRはほぼ同様に推移し、定着ベルト45の中央部と端部との温度差ΔTMLRはほぼ基準値0になる。したがって、安定させて定着を行うことができる。
【0103】
ところが、前述されたように、印刷データの処理等に時間がかかったり、1枚の印刷が複数回行われたりすると、各用紙Pは設定紙間Gsより大きい紙間で搬送されるようになる。
【0104】
その結果、
図8及び9に示されるように、書出センサs1のセンサ信号gs1がオフになってからオンになるまでの時間Tαは長くなり、時間(Tα+Tβ)になる。
【0105】
その場合、時間Tβが経過する間、定着ベルト45において通紙による熱変動がなくなるので、赤外線温度センサIsによって検出される検出温度Tsは一定の温度以上に維持され、目標温度Teと検出温度Tsとの差分ΔTが小さくなり、メインヒータMHのオンデューティDy1が低下し、サイドヒータLH、LRのオンデューティDy2が低下するが、定着ベルト45の中央部においては放熱量が少ないので、メインヒータMHのオンデューティDy1が低下しても温度TMがそれほど低下しないのに対して、定着ベルト45の端部においては放熱量が多いので、サイドヒータLH、LRのオンデューティDy2が低下するのに伴って、端部TLRの温度が低下し、時間の経過と共に、中央部と端部との温度差TMLRが基準値0より低くなってしまう。
【0106】
すなわち、
図10に示されるように、紙間増加量Gupが大きくなるのに伴って、サイドヒータLH、LRのオンデューティDy2が線L1で表されるように低下し、定着ベルト45の端部の温度TLRが線L2で表されるように低下する。例えば、紙間増加量が200〔mm〕である場合、サイドヒータLH、LRのオンデューティBDy2の低下量が17〔%〕になり、端部の温度TLRの低下量は6〔℃〕になる。
【0107】
したがって、幅の広い用紙P、すなわち、幅広紙が定着器18に送られた場合、定着ベルト45の端部においてカラーのトナー像を十分加熱することができなくなり、定着不良が発生してしまう。
【0108】
そこで、本実施の形態においては、印刷データの処理等に時間がかかったり、1枚の印刷が複数回行われたりして紙間が設定紙間Gsより大きくなっても、サイドヒータLH、LRのオンデューティが低下しないように補正されるようになっている。
【0109】
次に、本実施の形態における定着器18の動作について説明する。
【0110】
図11は本発明の第1の実施の形態における定着器のヒータ制御回路の機能を説明するための機能ブロック図、
図12は本発明の第1の実施の形態における定着器の動作を示すフローチャート、
図13は本発明の第1の実施の形態における補正値テーブルの例を示す図、
図14は本発明の第1の実施の形態における定着器の動作を説明するためのタイムチャート、
図15は本発明の第1の実施の形態における紙間増加量と補正前及び補正後のサイドヒータのオンデューティとの関係を示す図である。なお、
図15において、横軸に紙間増加量Gupを、縦軸に、補正前及び補正後のサイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2、ADy2を採ってある。
【0111】
図11において、51は定着制御部、70、73は減算器、71はメインヒータMH(
図4)のオンデューティDy1を算出する第1のオンデューティ算出部、72はサイドヒータLH、RHの補正前のオンデューティBDy2を算出する第2のオンデューティ算出部、74は補正値算出部、75は、補正後のサイドヒータLH、RHのオンデューティADy2を算出するオンデューティ補正処理部としての乗算器である。
【0112】
印刷制御部50(
図1)において、印刷処理部Pr3は記憶装置54から用紙設定情報を読み出し、用紙カセット11(
図2)に収容された用紙Pの幅、厚さ等に基づいて印刷速度Vpを設定する。
【0113】
続いて、ホストコンピュータから印刷データを受信すると、目標温度設定処理部Pr1は用紙Pの幅、厚さ等に応じて目標温度Teを設定し、ウォームアップ処理部Pr2は、ヒータHtを加熱し、ウォームアップを開始する(ステップS11)。なお、このとき、ウォームアップ時間Tupを短くするために、メインヒータMHのオンデューティDy1及びサイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2はいずれも100〔%〕にされる。
【0114】
また、印刷処理部Pr3は、ウォームアップが開始されるのと同時に搬送モータ55を駆動し、ホッピングローラ12によって用紙Pを用紙カセット11から繰り出し、レジストローラ対14によって用紙搬送路Rt1を搬送し、書出センサs1へ送る。
【0115】
そして、印刷処理部Pr3は、赤外線温度センサIsによって検出された定着ベルト45の検出温度Tsが所定の温度になると、定着器18において定着モータ58を駆動してバックアップローラ47を回転させ、定着ベルト45を走行させる。
【0116】
続いて、印刷処理部Pr3は、検出温度Tsが目標温度Teに到達するのを待機し(ステップS12)、検出温度Tsが目標温度Teに到達すると、印刷を開始する(ステップS13)。そのために、印刷処理部Pr3は、画像形成部Q1においてIDモータ57を駆動して各色のトナー像を形成し、転写ユニットu1において転写モータ56を駆動して転写ベルト17を走行させ、用紙Pを設定紙間Gsで搬送し、定着器18においてカラーのトナー像を用紙Pに定着させる。
【0117】
その間、紙間算出処理部Pr4は、書出センサs1のセンサ信号gs1を監視し、用紙Pの後端が書出センサs1を通過してセンサ信号gs1がオフになったタイミングから、次の用紙Pの前端が書出センサs1に到達してセンサ信号gs1がオンになったタイミングまでの時間、すなわち、オフ時間Toffを印刷制御部50に内蔵された前記タイマによって計時し、設定されている印刷速度Vp及びオフ時間Toffに基づいて算出紙間Gcを算出する(ステップS14)。
【0118】
例えば、印刷速度Vpが200〔mm/秒〕の印刷において、オフ時間Toffが1〔秒〕である場合、算出紙間Gcは、
Gc=Vp×Toff
=200×1
=200〔mm〕
になる。
【0119】
続いて、減算器73は、算出紙間Gcから設定紙間Gsを減算して、差分、すなわち、紙間増加量Gupを算出し、補正値算出部74は、記憶装置54の補正値テーブルTb1を参照し、紙間増加量Gupに対応するサイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2を補正するための補正値Dyupを読み出すことによって算出する(ステップS15)。
【0120】
例えば、設定紙間Gsが50〔mm〕である場合、紙間増加量Gupは、
Gup=Gc-Gs
=200-50
=150〔mm〕
になり、補正値Dyupは1.08になる。
【0121】
なお、補正値テーブルTb1には、紙間増加量Gupと、あらかじめ実験等によって算出された補正値Dyupとが線L3で表されるように対応させて記録され、紙間増加量をxとし、補正値Dyupをyとしたとき、補正値Dyupは近似式
y=-5×10-7×x2+0.0006×x+1
で表される。したがって、補正値算出部74は、近似式に基づいて補正値Dyupを算出することもできる。
【0122】
本実施の形態においては、用紙Pの前端が
図14に示されるタイミングt1で書出センサs1に到達し、センサ信号gs1がオンになり、タイミングt2で用紙Pが書出センサs1を通過してセンサ信号gs1がオフになると、算出紙間Gcの算出が開始され、算出紙間Gcと設定紙間Gsとの比較が開始される。そして、タイミングt3で算出紙間Gcが設定紙間Gsより長くなると、紙間増加量Gupの算出が開始され、補正値Dyupが算出され、サイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2が補正され、時間の経過と共に補正値Dyupが大きくされ、サイドヒータLH、RHのオンデューティADy2が高くされる。続いて、タイミングt4で次の用紙Pが書出センサs1によって検出されると、紙間増加量Gup及び補正値Dyupはリセットされ、0にされる。
【0123】
次に、減算器70は、目標温度Teから検出温度Tsを減算することによって差分ΔTを算出し、第1のオンデューティ算出部71は、差分ΔTに基づいてメインヒータMHのオンデューティDy1を算出し(ステップS16)、駆動信号SG1を生成し、トライアック駆動回路66(
図5)に送る。これに伴い、トライアック駆動回路66はメインヒータMHをオン・オフする(ステップS17)。また、第2のオンデューティ算出部72は、記憶装置54から係数αを読み出し、メインヒータMHのオンデューティDy1に係数αを乗算し、サイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2を算出する。
【0124】
なお、用紙Pの種類、有無、算出紙間Gcの変動等によって定着ベルト45の中央部の温度TMはそれほど変化しないが、端部の温度TLRは変化するので、本実施の形態において、第1のオンデューティ算出部71は、目標温度Teと定着ベルト45の中央部における検出温度Tsとの差分ΔTに基づいてオンデューティDy1を算出し、第2のオンデューティ算出部72はオンデューティDy1に基づいてオンデューティBDy2を算出するようになっている。
【0125】
続いて、乗算器75は、補正前のサイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2に補正値Dyupを乗算することによって補正後のサイドヒータLH、RHのオンデューティADy2を算出し(ステップS18)、駆動信号SG2を生成し、トライアック駆動回路66に送る。これに伴い、トライアック駆動回路66はサイドヒータLH、RHをオン・オフする(ステップS19)。
【0126】
図15において、L4は補正前のサイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2を表す線であり、L5は補正後のサイドヒータLH、RHのオンデューティADy2を表す線である。
【0127】
図13及び15に示されるように、例えば、紙間増加量Gupが150〔mm〕である場合、補正前のサイドヒータLH、RHのオンデューティBDy2は46〔%〕であり、補正値Dyupは1.08になるので、補正後のサイドヒータLH、RHのオンデューティADy2は、
ADy2=BDy2×Dyup
=46×1.08
=50〔%〕
になる。
【0128】
印刷が行われている間、赤外線温度センサIsによって検出される検出温度Tsは常にフィードバックされ、差分ΔTに基づいてメインヒータMHのオンデューティDy1が更新される。
【0129】
そして、印刷処理部Pr3は印刷が終了したかどうかを判断する(ステップS20)。印刷が終了するまで、定着制御部51によるメインヒータMH及びサイドヒータLH、LRのオン・オフが行われる。
【0130】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 ウォームアップ処理部Pr2はウォームアップを開始する。
ステップS12 印刷処理部Pr3は検出温度Tsが目標温度Teに到達するのを待機する。検出温度Tsが目標温度Teに到達した場合はステップS13に進む。
ステップS13 印刷処理部Pr3は印刷を開始する。
ステップS14 紙間算出処理部Pr4は算出紙間Gcを算出する。
ステップS15 補正値算出部74は補正値Dyupを算出する。
ステップS16 第1のオンデューティ算出部71はメインヒータMHのオンデューティDy1を算出する。
ステップS17 トライアック駆動回路66はメインヒータMHをオン・オフする。
ステップS18 乗算器75は補正後のサイドヒータLH、RHのオンデューティADy2を算出する。
ステップS19 トライアック駆動回路66はサイドヒータLH、RHをオン・オフする。
ステップS20 印刷処理部Pr3は印刷が終了したかどうかを判断する。印刷が終了した場合は処理を終了し、印刷が終了しなかった場合はステップS12に戻る。
【0131】
このように、本実施の形態においては、印刷制御部50において、書出センサs1による用紙Pの検出に基づいて算出紙間Gcが算出されるとともに、前記メインヒータMH及びサイドヒータLH、RHをそれぞれオンにする割合を表すオンデューティDy1、BDy2が算出され、算出紙間Gcに応じてオンデューティBDy2が補正されるので、算出紙間Gcの変動によって定着ベルト45の端部の温度TLRが低下することがなく、定着不良が発生するのを防止することができる。
【0132】
すなわち、算出紙間Gcが大きくなると、定着ベルト45において通紙による熱変動がなくなるので、赤外線温度センサIsによる検出温度Tsは一定の温度以上に維持され、目標温度Teと検出温度Tsとの差分ΔTが小さくなり、メインヒータMHのオンデューティDy1が低下し、サイドヒータLH、LRのオンデューティBDy2が低下する。このとき、定着ベルト45の中央部においては、放熱量が少ないので、メインヒータMHのオンデューティDy1が低下しても温度TMがそれほど低下しない。一方、定着ベルト45の端部においては、放熱量が多いが、サイドヒータLH、LRのオンデューティBDy2が補正され、高くされるので、端部の温度TLRが低下することはない。したがって、定着ベルト45の端部においてカラーのトナー像を十分加熱することができるので、定着不良が発生するのを防止することができる。
【0133】
また、定着ベルト45の端部の温度TLRが低下するのを防止するためにサイドサーミスタLs、Rsによって端部の温度TLRを検出する必要がなく、サイドサーミスタLs、Rsが不要になるので、プリンタ10のコストを低くすることができる。
【0134】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0135】
図16は本発明の第2の実施の形態における定着器の概略図である。
【0136】
図において、18は定着装置としての定着器、46は第1の定着部材としての加熱ユニット、47は第2の定着部材としての、かつ、定着駆動ローラとしてのバックアップローラであり、前記加熱ユニット46は加熱部材としてのヒータHt、及び包囲部材としての定着ベルト45を備え、ヒータHtとして面状ヒータが使用される。
【0137】
前記ヒータHtは、短手方向において2分割され、媒体としての用紙P(
図2)の搬送方向における上流側、すなわち、定着器18の入口側に位置し、定着ベルト45の中央部を主として加熱する中央加熱部としての、かつ、主加熱体としてのメインヒータMH、及び用紙Pの搬送方向における下流側、すなわち、定着器18の出口側に位置し、定着ベルト45の端部を主として加熱する端部加熱部として、かつ、副加熱体としてのサイドヒータSHから成る。メインヒータMHは、長手方向における中央部MHMの発熱量が大きく、左右の端部MHL、MHRの発熱量が小さくされ、サイドヒータSHは、長手方向における中央部SHMの発熱量が小さく、左右の端部SHL、SHRの発熱量が大きくされる。
【0138】
そのために、メインヒータMHにおける中央部MHMの短手方向の寸法は端部MHL、MHRの短手方向の寸法より小さくされ、中央部MHMの体積が端部MHL、MHRの体積より小さくされる。その結果、中央部MHMの抵抗値が端部MHL、MHRの抵抗値より大きくなり、中央部MHMの発熱量が大きくされ、左右の端部MHL、MHRの発熱量が小さくなる。
【0139】
また、サイドヒータSHにおける中央部SHMの短手方向の寸法は端部SHL、SHRの短手方向の寸法より大きくされ、中央部SHMの体積が端部SHL、SHRの体積より大きくされる。その結果、中央部SHMの抵抗値が端部SHL、SHRの抵抗値より小さくなり、中央部SHMの発熱量が小さく、左右の端部SHL、SHRの発熱量が大きくなる。
【0140】
本実施の形態においては、メインヒータMHにおける中央部MHM及び端部MHL、MHRの短手方向の寸法、並びにサイドヒータSHにおける中央部SHM及び端部SHL、SHRの短手方向の寸法を異ならせることによって発熱量を異ならせるようにしているが、メインヒータMHにおける中央部MHM及び端部MHL、MHRの高さ方向の寸法、並びにサイドヒータSHにおける中央部SHM及び端部SHL、SHRの高さ方向の寸法を異ならせることによって発熱量を異ならせることもできる。
【0141】
また、前記メインヒータMHの中央部MHM及び端部MHL、MHRの寸法、並びにサイドヒータSHの中央部SHM及び端部SHL、SHRの各寸法は、画像形成装置としてのプリンタ10の仕様、操作者の要求等によって任意に決定されるが、本実施の形態においては、メインヒータMHの中央部MHM及びサイドヒータSHの中央部SHMの両端間の距離が、A4判の用紙の横サイズである幅(210〔mm〕)と等しくされ、メインヒータMH及びサイドヒータSHの両端間の距離が、プリンタ10の印刷可能な最大幅であるA4判の用紙の縦サイズである長さ(297〔mm〕)と等しくされる。
【0142】
なお、本実施の形態においてはヒータHtとして面状ヒータが使用されるようになっているが、面状ヒータに代えて、長手方向の中央部と端部とで発熱量の異なるハロゲンヒータを使用することもできる。
【0143】
また、図において、Msは第1の温度監視用の検出部としてのメインサーミスタ、Ls、Rsは第2の温度監視用の検出部としてのサイドサーミスタ、Isは温度検出用の検出部としての赤外線温度センサである。
【0144】
次に、ヒータHtを駆動し、オン・オフするためのヒータ制御回路について説明する。
【0145】
図17は本発明の第2の実施の形態における定着器のヒータ制御回路を示す図である。
【0146】
図において、65はヒータ制御回路、51は第2の制御部としての定着制御部、66はトライアック駆動回路、68は交流電源となる商用電源、Htはヒータ、MHはメインヒータ、SHはサイドヒータ、Msメインサーミスタ、Ls、Rsはサイドサーミスタ、Isは赤外線温度センサ、TR1はメインヒータMHをオン・オフする主スイッチング素子としてのトライアック、TR2はサイドヒータSHをオン・オフする副スイッチング素子としてのトライアックである。
【0147】
前記メインサーミスタMs、サイドサーミスタLs、Rs及び赤外線温度センサIsのセンサ出力が定着制御部51に送られる。
【0148】
前記商用電源68の一方の端子は、メインヒータMH及びサイドヒータSHの長手方向における各一方の電極に接続され、商用電源63の他方の端子は、トライアックTR1、TR2を介してメインヒータMH及びサイドヒータSHの長手方向における各他方の電極に接続される。
【0149】
前記トライアック駆動回路66は、図示されないフォトトライアックから成り、一次側と二次側とが絶縁され、一次側において定着制御部51に接続され、二次側においてトライアックTR1、TR2の各ゲート端子に接続される。
【0150】
前記定着制御部51からトライアック駆動回路66にメインヒータMHの駆動信号SG1及びサイドヒータSHの駆動信号SG2が送られると、トライアック駆動回路66は、駆動信号SG1、SG2のオン・オフに応じてトライアックTR1、TR2を駆動し、メインヒータMH及びサイドヒータSHに供給される電力を変更する。
【0151】
次に、本実施の形態における定着器18の動作について説明する。
【0152】
図18は本発明の第2の実施の形態における定着器のヒータ制御回路の機能を説明するための機能ブロック図、
図19は本発明の第2の実施の形態における定着器の動作を示すフローチャートである。
【0153】
図において、51は定着制御部、70、73は減算器、71は、メインヒータMHをオンにする割合を表す第1のデューティ比としてのオンデューティDy1を算出する第1のオンデューティ算出部、72は、サイドヒータSHをオンにする割合を表す第2のデューティ比としての補正前のオンデューティBDy2を算出する第2のオンデューティ算出部、74は補正値算出部、75は、補正後のオンデューティADy2を算出するオンデューティ補正処理部としての乗算器である。
【0154】
第1の制御部としての印刷制御部50(
図1)において、印刷処理部Pr3は、第3の記憶部としての記憶装置54から用紙設定情報を読み出し、媒体収容部としての用紙カセット11に収容された用紙Pの幅、厚さ等に基づいて印刷速度Vpを設定する。
【0155】
続いて、上位装置としての図示されないホストコンピュータから印刷データを受信すると、目標温度設定処理部Pr1は用紙Pの幅、厚さ等に応じて目標温度Teを設定し、ウォームアップ処理部Pr2は、ヒータHtを加熱し、ウォームアップを開始する(ステップS31)。
【0156】
また、印刷処理部Pr3は、ウォームアップが開始されるのと同時に搬送用の駆動部としての搬送モータ55を駆動し、繰出部材としてのホッピングローラ12によって用紙Pを、用紙カセット11から繰り出し、第1の搬送部材としてのレジストローラ対14によって用紙搬送路Rt1に搬送し、第1の媒体検出部としての書出センサs1へ送り、検出温度Tsが所定の温度になると、定着器18においてバックアップローラ47を回転させ、定着ベルト45を走行させる。
【0157】
続いて、印刷処理部Pr3は、検出温度Tsが目標温度Teに到達するのを待機し(ステップS32)、検出温度Tsが目標温度Teに到達すると、印刷を開始し(ステップS33)、用紙Pに画像を形成する。
【0158】
その間、紙間算出処理部Pr4は、書出センサs1のセンサ信号gs1を監視し、前記オフ時間Toffをタイマによって計時し、印刷速度Vp及びオフ時間Toffに基づいて、第1の媒体間隔としての算出紙間Gcを算出する(ステップS34)。
【0159】
続いて、減算器73は、算出紙間Gcから第2の媒体間隔としての設定紙間Gsを減算して紙間増加量Gupを算出し、補正値算出部74は、記憶装置54の補正値テーブルTb1(
図13)を参照し、紙間増加量Gupに対応するサイドヒータSHのオンデューティBDy2の補正値Dyupを読み出すことによって算出する(ステップS35)。
【0160】
次に、減算器70は、目標温度Teから検出温度Tsを減算することによって差分ΔTを算出し、第1のオンデューティ算出部71は、差分ΔTに基づいてメインヒータMHのオンデューティDy1を算出し(ステップS36)、駆動信号SG1を生成し、トライアック駆動回路66に送る。これに伴い、トライアック駆動回路66はメインヒータMHをオン・オフする(ステップS37)。
【0161】
また、第2のオンデューティ算出部72は、差分ΔTに基づいて補正前のサイドヒータSHのオンデューティBDy2を算出する。
【0162】
続いて、乗算器75は、補正前のサイドヒータSHのオンデューティBDy2に補正値Dupを乗算することによって補正後のサイドヒータSHのオンデューティADy2を算出し(ステップS38)、駆動信号SG2を生成し、トライアック駆動回路66に送る。これに伴い、トライアック駆動回路66はサイドヒータSHをオン・オフする(ステップS39)。
【0163】
印刷が行われている間、赤外線温度センサIsによって検出される検出温度Tsは常にフィードバックされ、差分ΔTに基づいてメインヒータMHのオンデューティDy1が更新される。
【0164】
そして、印刷処理部Pr3は印刷が終了したかどうかを判断する(ステップS40)。印刷が終了するまで、定着制御部51によるメインヒータMH及びサイドヒータSHのオン・オフが行われる。
【0165】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS31 ウォームアップ処理部Pr2はウォームアップを開始する。
ステップS32 印刷処理部Pr3は検出温度Tsが目標温度Teに到達するのを待機する。検出温度Tsが目標温度Teに到達した場合はステップS33に進む。
ステップS33 印刷処理部Pr3は印刷を開始する。
ステップS34 紙間算出処理部Pr4は算出紙間Gcを算出する。
ステップS35 補正値算出部74は補正値Dyupを算出する。
ステップS36 第1のオンデューティ算出部71はメインヒータMHのオンデューティDy1を算出する。
ステップS37 トライアック駆動回路66はメインヒータMHをオン・オフする。
ステップS38 乗算器75は補正後のサイドヒータSHのオンデューティADy2を算出する。
ステップS39 トライアック駆動回路66はサイドヒータSHをオン・オフする。
ステップS40 印刷処理部Pr3は印刷が終了したかどうかを判断する。印刷が終了した場合は処理を終了し、印刷が終了しなかった場合はステップS32に戻る。
【0166】
このように、本実施の形態においては、長手方向における中央部MHMの発熱量が大きく、左右の端部MHL、MHRの発熱量が小さくされたメインヒータMH、及び長手方向における中央部SHMの発熱量が小さく、左右の端部SHL、SHRの発熱量が大きくされたサイドヒータSHが配設された定着器18において、メインヒータMH及びサイドヒータSHのオンデューティDy1、BDy2が個別に算出され、算出紙間Gcに基づいてオンデューティBDy2が補正されるので、算出紙間Gcの変動によって定着ベルト45の端部の温度TLRが低下することがなく、定着不良が発生するのを防止することができる。
【0167】
前記各実施の形態においてはプリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0168】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0169】
10 プリンタ
45 定着ベルト
46 加熱ユニット
47 バックアップローラ
50 印刷制御部
51 定着制御部
Dc 算出紙間
Dy1、BDy2 オンデューティ
Ht ヒータ
LH、RH、SH サイドヒータ
MH メインヒータ
Np ニップ部
s1 書出センサ