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特許7533332ドライブシャフトの疲労損傷度の推定装置
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  • 特許-ドライブシャフトの疲労損傷度の推定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】ドライブシャフトの疲労損傷度の推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 17/007 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01M17/007 Z
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021069115
(22)【出願日】2021-04-15
(65)【公開番号】P2022163954
(43)【公開日】2022-10-27
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】棗 浩志
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-132358(JP,A)
【文献】特開2008-207723(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110869729(CN,A)
【文献】特開2019-020229(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0029136(US,A1)
【文献】特開2002-122223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H59/00-61/12
61/16-61/24
61/66-61/70
63/40-63/50
G01M13/00-13/045
17/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源が発生したトルクを操舵駆動輪に伝達するドライブシャフトの疲労損傷度を推定する装置であって、
ステアリングの操舵角に基づいて前記操舵駆動輪に対する前記ドライブシャフトのジョイント角を演算するとともに、同ジョイント角の演算値と前記ドライブシャフトの軸トルク及び回転数とに基づいて同ドライブシャフトの疲労損傷の進行度合を示す疲労負荷の値を演算する処理を、既定の演算周期毎に繰り返し実施し、
かつ前記演算周期毎の前記疲労負荷の演算値を積算した値を、前記疲労損傷度の推定値として算出する
ドライブシャフトの疲労損傷度の推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源が発生したトルクを操舵駆動輪に伝達するドライブシャフトの疲労損傷度を推定するドライブシャフトの疲労損傷度の推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の動力伝達系部品の修理・交換の時期を通知する装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同文献に記載の装置は、車両の走行情報に基づき、動力伝達系部品の疲労損傷度を推定している。疲労損傷度の推定に用いる走行情報には、車両の駆動源が発生しているトルクの情報が含まれている。そして、同装置は、疲労損傷度が一定の値に達すると、インストルメントパネルの表示等により、動力伝達系部品の修理・交換が必要であることを車両のユーザに通知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-132358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
なお、車両の動力伝達系部品には、駆動源が発生したトルクを駆動輪に伝達するドライブシャフトが含まれる。前輪駆動の車両では、ドライブシャフトがトルクを伝える駆動輪が、ステアリングの操作に応じて向きを変える操舵輪となっている。ここでは、駆動輪であり、かつ操舵輪でもある車輪を操舵駆動輪と記載する。
【0005】
操舵駆動輪に連結されるドライブシャフトでは、ステアリングの操作状況によっても疲労損傷の進み方が変化する。一方、上記文献1に記載の装置での疲労損傷度の推定では、ステアリングの操作状況が疲労損傷の進み方に影響するという、ドライブシャフトに特有の事情までは考慮していない。そのため、ドライブシャフトの疲労損傷度の推定には、その推定精度を向上する上で未だ改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する推定装置は、駆動源が発生したトルクを操舵駆動輪に伝達するドライブシャフトの疲労損傷度を推定する。同推定装置は、ステアリングの操舵角に基づいて操舵駆動輪に対するドライブシャフトのジョイント角を演算するとともに、同ジョイント角の演算値とドライブシャフトの軸トルク及び回転数とに基づいて同ドライブシャフトの疲労損傷の進行度合を示す疲労負荷の値を演算する処理を、既定の演算周期毎に繰り返し実施する。そして、同推定装置は、演算周期毎の疲労負荷の演算値を積算した値を、疲労損傷度の推定値として算出する。
【0007】
車両の走行中にドライブシャフトに加わる繰り返し応力の応力振幅は、ジョイント角とドライブシャフトの軸トルクとの関数として求められる。また、演算周期における繰り返し応力の繰り返し数は、ドライブシャフトの回転数に比例した値となる。よって、上記のような疲労負荷の値は、ジョイント角とドライブシャフトの軸トルク及び回転数の関数として求められる。そして、演算周期毎の疲労負荷の演算値を積算した値が、ドライブシャフトの疲労損傷度を示す値となる。そのため、上記推定装置では、疲労損傷の進行にジョイント角が与える影響を反映したかたちで、ドライブシャフトの疲労損傷度を推定できる。したがって、ドライブシャフトの疲労損傷度の推定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】推定装置の一実施形態の構成を模式的に示す図。
図2】同推定装置が行う推定ルーチンのフローチャート。
図3】軸トルクが一定の値であるときのドライブシャフトの応力振幅とジョイント角との関係を示すグラフ。
図4】応力振幅とドライブシャフトが寿命に達する繰り返し数との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、ドライブシャフトの疲労損傷度の推定装置の一実施形態を、図1図4を参照して詳細に説明する。本実施形態の推定装置30は、ハイブリッド車両10に設置されている。
【0010】
<動力伝達系の構成>
まず、図1を参照して、本実施形態の推定装置30が設置されたハイブリッド車両10の動力伝達系の構成を説明する。ハイブリッド車両10には、エンジン11、発電機12、及びモータ13の3つの駆動源が搭載されている。エンジン11及び発電機12は、動力分割機構14に連結されている。動力分割機構14は、サンギア、リングギア、プラネタリキャリアの3つの回転要素を有する遊星ギア機構である。動力分割機構14の回転要素の一つにはエンジン11のクランク軸が、もう一つには発電機12の回転軸が、残りの一つには減速ギア機構15が、それぞれ連結されている。なお、減速ギア機構15には、モータ13の回転軸も連結されている。
【0011】
減速ギア機構15は、ディファレンシャルギア16を介して左右のドライブシャフト17が連結されている。ディファレンシャルギア16は、左右のドライブシャフト17の差動回転を許容するための差動装置である。左右のドライブシャフト17には、左右の操舵駆動輪18がそれぞれ連結されている。なお、左右のドライブシャフト17におけるディファレンシャルギア16との連結部には、インナジョイント17Aがそれぞれ設けられている。また、左右のドライブシャフト17における操舵駆動輪18との連結部には、アウタジョイント17Bがそれぞれ設けられている。なお、このハイブリッド車両10では、インナジョイント17Aには摺動式の等速ジョイントが、アウタジョイント17Bには固定式の等速ジョイントが、それぞれ採用されている。
【0012】
<操舵機構の構成>
続いて、ハイブリッド車両10の操舵機構の構成を説明する。操舵機構は、車体左右方向に延びるタイロッド20と、操舵駆動輪18を保持するナックルアーム21と、により構成されたリンク機構を備える。また、操舵機構は、ステアリングギア機構23を備えている。ステアリングギア機構23は、ステアリング22の回転をタイロッド20の左右の動きに変換する。このタイロッド20の動きをナックルアーム21に伝えることで、操舵駆動輪18の舵角が変更される。
【0013】
<推定装置の構成>
以上のように構成されたハイブリッド車両10に設置される推定装置30の構成を説明する。推定装置30は、演算処理装置31、主記憶装置32、及び不揮発性メモリ33を備えている。主記憶装置32には、ドライブシャフト17の疲労損傷度の推定処理用のプログラムやデータが記憶されている。推定装置30は、主記憶装置32に記憶されたプログラムを演算処理装置31が読み込んで実行することで、ドライブシャフト17の疲労損傷度の推定処理を実施する。また、推定装置30には、モータ13の電流値を検出する電流センサ34、同モータ13の回転数を検出するレゾルバ35、ステアリング22の操舵角を検出する操舵角センサ36が接続されている。なお、実際には、ハイブリッド車両10の制御用の電子制御ユニットが、こうした推定装置30としての役割を担っている。
【0014】
<疲労損傷度の推定処理>
続いて、図2を参照して、ドライブシャフト17の疲労損傷度を推定するための推定装置30の処理について説明する。推定装置30は、ハイブリッド車両10の走行中、既定の演算周期P毎に、図2に示す疲労損傷度推定ルーチンの処理を繰り返し実行している。なお、本ルーチンの処理は、左右のドライブシャフト17のそれぞれについて個別に実行される。また、本ルーチンで演算される各数値も、左右のドライブシャフト17のそれぞれに個別の値となっている。
【0015】
なお、本実施形態の推定装置30が疲労損傷度を推定するドライブシャフト17では、アウタジョイント17Bのボール溝の表面層が疲労損傷の進行が最も早い部位となっている。疲労損傷度推定ルーチンでは、厳密には、こうしたアウタジョイント17Bのボール溝の表面層の疲労損傷度を推定している。
【0016】
本ルーチンを開始すると推定装置30はまずステップS100において、ステアリング22の操舵角からアウタジョイント17Bのジョイント角θを、すなわち操舵駆動輪18に対するドライブシャフト17のジョイント角θを演算する。また、推定装置30は、続くステップS110において、モータ13の回転数からドライブシャフト17の回転数Dを演算する。さらに、推定装置30は、同ステップS110において、モータ13の電流値からドライブシャフト17の軸トルクTを演算する。なお、回転数Dは、単位時間におけるドライブシャフト17の回転の回数を示している。
【0017】
左右のドライブシャフト17は、ディファレンシャルギア16、減速ギア機構15を介してモータ13に連結されている。よって、モータ13の回転数と、減速ギア機構15及びディファレンシャルギア16のギア比と、から左右のドライブシャフト17の回転数Dが求められる。また、モータ13の電流値からは、モータ13の軸トルクが求まる。そして、モータ13の軸トルクからは、ディファレンシャルギア16の入力トルクが求められる。左右のドライブシャフト17には、ディファレンシャルギア16の入力トルクが分配される。よって、モータ13の電流値から左右のドライブシャフト17の軸トルクTが求められる。
【0018】
続いて推定装置30は、ステップS120において、ジョイント角θに基づき、式(1)の関係を満たす値を補正軸トルクTcの値として演算する。式(1)における「θmax」は、最大ジョイント角である。最大ジョイント角θmaxは、操舵駆動輪18の舵角変更範囲におけるジョイント角θの最大値を示している。
【0019】
【数1】
さらに、推定装置30は、ステップS140において、補正軸トルクTcとドライブシャフト17の回転数Dとに基づき、式(2)の関係を満たす値を疲労負荷Fの値として演算する。式(2)における「k」は、予め設定された定数であるトルク定数を示している。
【0020】
【数2】
続くステップS150において、推定装置30は、ステップS140で演算した疲労負荷Fの値を更新前の値に加えた和を更新後の値とするように、累積疲労負荷AFの値を更新する。累積疲労負荷AFの値は、不揮発性メモリ33に記録されている。不揮発性メモリ33に記録された値は、ハイブリッド車両10のシステム停止中も保持される。一方、ステップS130での疲労負荷Fの演算、及びステップS140での累積疲労負荷AFの値の更新は、本ルーチンの実行毎に行われる。また、推定装置30は、演算周期P毎に本ルーチンを実行している。よって、累積疲労負荷AFの値は、演算周期P毎の疲労負荷Fの演算値を積算した値となる。
【0021】
次のステップS150において推定装置30は、累積疲労負荷AFに基づき、ドライブシャフト17のダメージレベルを算出した後、今回の本ルーチンの処理を終了する。ダメージレベルは、ドライブシャフト17の疲労損傷の程度を示す値として算出されている。本実施形態ではダメージレベルとして、レベル0からレベル9までの10段階のレベルを設定している。そして、ステップS150では、累積疲労負荷AFの値を0から次第に増加させていったときに、レベル0からレベル9へと段階的にレベル数が増加していくようにダメージレベルの値を算出している。
【0022】
ハイブリッド車両10では、こうして推定装置30が算出したダメージレベルが一定の値を超えると、インストルメントパネル等に設けられた警告灯を点灯している。また、ハイブリッド車両10では、ダメージレベルが一定の値を超えると、エンジン11やモータ13の出力制限を実施している。
【0023】
また、車両管理のためのデータセンタとのデータ通信装置がハイブリッド車両10に搭載されている場合には、ダメージレベルを次のように利用できる。車両管理用のデータセンタは、管理下の各車両からダメージレベルと走行距離とを収集する。そして、データセンタでは、収集したデータから各車両のドライブシャフト17の交換時期の予測が行われる。そして、その予測結果に基づき、整備工場への車両の入庫日をユーザに通知する。また、データセンタでは、各車両の交換時期の予測結果から、将来のドライブシャフト17の交換数の推移を予測して、必要な時期に必要な数のドライブシャフト17が納入されるようにサプライヤへの発注が行われる。
【0024】
<実施形態の作用、効果>
本実施形態の作用及び効果について説明する。
ハイブリッド車両10の走行中、ドライブシャフト17の各部には繰り返し応力が発生する。そして、その繰り返し応力によりドライブシャフト17の各部の疲労損傷が進行する。ドライブシャフト17の各部における繰り返し応力の応力振幅Sは、軸トルクTとジョイント角θとの関数として求まる。アウタジョイント17Bのボール溝の表面層における応力振幅Sは、軸トルクTに比例し、かつ「θ/2」の正接の値に比例する値となる。
【0025】
図3に、軸トルクTを一定としたときの、アウタジョイント17Bのボール溝の表面層の応力振幅Sとジョイント角θとの関係を示す。ここで、ジョイント角θが最大ジョイント角θmaxであるときの応力振幅Sを「Smax」とする。このとき、ジョイント角θが「θ1」であるときの応力振幅S1は、式(3)に示す値となる。ジョイント角θを最大ジョイント角θmaxとした状態での「Smax」は、軸トルクTに比例する値となる。よって、上述した式(2)の関係を満たす値として演算される補正軸トルクTcは、アウタジョイント17Bのボール溝の表面層の応力振幅Sに比例する値となる。
【0026】
【数3】
図4に、応力振幅Sと交換時期繰り返し数Nfとの関係を示す。交換時期繰り返し数Nfは、アウタジョイント17Bのボール溝の表面層に応力振幅Sを一定とした繰り返し応力を加えたときに、部品交換を要する疲労損傷が生じるまでの繰り返し応力の繰り返し数Nを示している。こうした応力振幅Sと交換時期繰り返し数Nfとの関係は、疲労試験により求めることができる。本実施形態の場合、疲労試験により、応力振幅Sと交換時期繰り返し数Nfとの間に、式(4)に示す関係が確認されている。なお、上述のトルク係数kには、式(4)の関係式における「k」の値が設定されている。
【0027】
【数4】
ここで、図4に示すように応力振幅Sが「S2」のときの交換時期繰り返し数Nfを「N2」とする。また、ドライブシャフト17の使用開始から部品交換を要する疲労損傷が生じるまでの期間をドライブシャフト17の総寿命とする。このとき、応力振幅Sが「S2」の繰り返し応力が1回加えられたときのドライブシャフト17の残寿命は、「N2」の逆数を総寿命に乗算した値の分だけ減少する。残寿命の減少量、すなわち疲労損傷の進行量である。よって、式(5)に示すように、ドライブシャフト17の1回転当たりの疲労損傷の進行量ΔFは、トルク係数kをべき指数として応力振幅Sをべき乗した値となる。
【0028】
【数5】
一方、上述のように応力振幅Sは、補正軸トルクTcに比例した値となる。また、演算周期Pにおける繰り返し応力の繰り返し数は、ドライブシャフト17の回転数Dに比例した値となる。したがって、式(2)の関係を満たす値として演算される疲労負荷Fの値は、演算周期Pにおけるドライブシャフト17の疲労損傷の進行量に比例した値となる。そして、演算周期P毎の疲労負荷Fの演算値を積算した値である累積疲労負荷AFは、使用開始から現在までのドライブシャフト17の疲労損傷度を示す値となる。すなわち、本実施形態では、こうした累積疲労負荷AFを、ドライブシャフト17の疲労損傷度の推定値として求めている。
【0029】
以上の本実施形態のドライブシャフト17の疲労損傷度の推定装置30によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施形態では、既定の演算周期P毎にジョイント角θと、ドライブシャフトの軸トルクT及び回転数Dと、に基づいて疲労負荷Fを演算している。そして、演算周期P毎の疲労負荷Fの演算値を積算した値を、ドライブシャフト17の疲労損傷度の推定値である累積疲労負荷AFの値として算出している。そのため、疲労損傷の進行にジョイント角θが与える影響を反映したかたちで、ドライブシャフト17の疲労損傷度を推定できる。したがって、ドライブシャフト17の疲労損傷度の推定精度を向上できる。
【0030】
(2)ドライブシャフト17の疲労損傷度の高精度の推定が可能であるため、ドライブシャフト17の交換時期の予測も精度良く行える。そのため、整備工場への入庫日のユーザへの案内や、交換部品の発注といった、ドライブシャフト17の交換の準備を適切に行える。
【0031】
(3)ドライブシャフト17の疲労損傷が進行して、異音の発生や車体振動の増加等の不具合が生じると、車両に対するユーザの信頼が損なわれる。これに対して本実施形態では、ドライブシャフト17の交換時期を正確に予測でき、不具合が生じる前の適切な時期の部品交換を促せる。そのため、車両へのユーザ評価を高められる。
【0032】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の推定装置30は、ハイブリッド車両10以外の車両において、ドライブシャフトの疲労損傷度の推定を行う装置としての実施も可能である。
【0033】
・上記実施形態では、ドライブシャフト17の軸トルクT、及び回転数Dを、モータ13の電流値、及び回転数から求めていたが、それ以外のパラメータから求めるようにしてもよい。例えば、エンジンのみを駆動源として備える従来型の車両の場合、エンジンのトルク、回転数、変速機のギア段等から、ドライブシャフト17の軸トルクT、及び回転数Dを求めることが可能である。
【0034】
・上記実施形態では、ドライブシャフト17の疲労損傷度として、アウタジョイント17Bのボール溝の表面層における疲労損傷度を推定していた。ドライブシャフト17のそれ以外の部位の疲労損傷度を推定の対象としてもよい。
【0035】
・上記実施形態では、繰り返し応力の応力振幅Sに比例する値である補正軸トルクTcを、式(1)の関係を満たす値となるように演算していた。軸トルクT、ジョイント角θと応力振幅Sとの関係は、ドライブシャフトの構成や部位により異なったものとなる。そうした場合にも、応力振幅Sは、軸トルクT及びジョイント角θの関数として求められる。よって、補正軸トルクTcの演算に用いる、軸トルクT及びジョイント角θの関数には、ドライブシャフトの構成や疲労損傷度を推定する部位に応じた適切な関数を採用するとよい。
【0036】
・上記実施形態では、応力振幅Sと交換時期繰り返し数Nfとの関係から導出した式(2)の関係を満たす値として、演算周期P毎の疲労損傷の進行度合を示す疲労負荷Fの値を演算していた。応力振幅Sと交換時期繰り返し数Nfとの関係もドライブシャフトの構成や部位により異なったものとなる。そうした場合にも、疲労負荷Fは、ジョイント角θ、軸トルクT、及び回転数Dの関数として求められる。よって、疲労負荷Fの演算に用いる、ジョイント角θ、軸トルクT、及び回転数Dの関数には、ドライブシャフトの構成や疲労損傷度を推定する部位に応じた適切な関数を採用するとよい。
【符号の説明】
【0037】
10…ハイブリッド車両
11…エンジン
12…発電機
13…モータ
14…動力分割機構
15…減速ギア機構
16…ディファレンシャル
17…ドライブシャフト
17A…インナジョイント
17B…アウタジョイント
18…操舵駆動輪
20…タイロッド
21…ナックルアーム
22…ステアリング
23…ステアリングギア機構
30…推定装置
31…演算処理装置
32…主記憶装置
33…不揮発性メモリ
34…電流センサ
35…レゾルバ
36…舵角センサ
図1
図2
図3
図4