(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】バルブ装置
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
(21)【出願番号】P 2021071792
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】濱田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 亮
(72)【発明者】
【氏名】田中 篤
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-057665(JP,A)
【文献】特開平08-001704(JP,A)
【文献】特開2021-042808(JP,A)
【文献】特開2019-210991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ装置であって、
流体が通過する流路孔(141、142)が少なくとも1つ形成された板状の固定ディスク(14)と、
回転力を出力する駆動部(16)と、
前記回転力によって所定の軸心(CL)を中心に回転するシャフト(18)と、
前記シャフトの回転に伴って前記流路孔の開度を増減する回転子(20)と、
前記シャフトが挿通されるボス部(124c)を有するハウジング(12)と、
前記シャフトと前記ボス部との隙間をシールするリング状のシール部材(124e)と、を備え、
前記シャフトは、前記シール部材に当接する当接部位(184)を含むホルダ部(182)を有し、
前記ホルダ部は、樹脂に強化繊維を含有した高分子材料で構成され、少なくとも前記当接部位が前記シャフトの軸心方向に沿って延びるとともに、前記軸心方向の一方側の端部に位置する先端部(183)が前記駆動部のギア部(162)に連結され、前記先端部に前記高分子材料の吐出ゲートの痕跡部(183b)が形成されて
おり、
前記シャフトは、前記軸心を含むとともに前記軸心方向に沿って延びる金属製の軸心部(181)を含む、バルブ装置。
【請求項2】
バルブ装置であって、
流体が通過する流路孔(141、142)が少なくとも1つ形成された板状の固定ディスク(14)と、
回転力を出力する駆動部(16)と、
前記回転力によって所定の軸心(CL)を中心に回転するシャフト(18)と、
前記シャフトの回転に伴って前記流路孔の開度を増減する回転子(20)と、
前記シャフトが挿通されるボス部(124c)を有するハウジング(12)と、
前記シャフトと前記ボス部との隙間をシールするリング状のシール部材(124e)と、を備え、
前記シャフトは、前記シール部材に当接する当接部位(184)を含むホルダ部(182)を有し、
前記ホルダ部は、樹脂に強化繊維を含有した高分子材料で構成され、少なくとも前記当接部位が前記シャフトの軸心方向に沿って延びるとともに、少なくとも前記当接部位における前記強化繊維の向きが前記軸心方向に揃うように前記強化繊維が配向されて
おり、
前記シャフトは、前記軸心を含むとともに前記軸心方向に沿って延びる金属製の軸心部(181)を含む、バルブ装置。
【請求項3】
前記シャフトは
、前記軸心部における前記軸心方向の一方側の端部が前記先端部の内側に位置し、且つ、前記軸心部が前記当接部位を貫通するように前記軸心部および前記ホルダ部が一体に成型されたインサート成型品である、請求項1に記載のバルブ装置。
【請求項4】
前記ハウジングと前記シャフトとの間には、前記シャフトを前記ハウジングに対して前記軸心まわりの周方向に付勢するトーションスプリング(28)が配置されている、請求項1ないし3のいずれか1つに記載のバルブ装置。
【請求項5】
前記回転子は、前記固定ディスクに相対して摺動する板状の駆動ディスク(22)と、前記駆動ディスクに固定されるとともに、前記駆動ディスクを前記軸心方向に変位可能な状態で前記駆動ディスクおよび前記シャフトを一体に回転可能に連結するレバー(24)と、を含み、
前記ホルダ部と前記回転子との間には、前記回転子を前記固定ディスクに付勢するコンプレッションスプリング(26)が配置されている、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のバルブ装置。
【請求項6】
前記強化繊維は、ガラス繊維である、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のバルブ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、バルブ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャフトに連結される第1バルブプレートとハウジングに回転不能に配置された第2バルブプレートとの相対的な位置関係を変化させることで、第2バルブプレートに形成された流路孔の開度を調整するバルブ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、電動車両における車室内空調および電池温調に供される温調機器では、車室内および電池の温度を調整する流体の流量調整を頻繁に行う必要があり、流体の流量を調整するバルブ装置の作動回数が多くなる。
【0005】
そこで、本発明者らは、バルブ装置の耐久性の向上を図るために、樹脂にガラス等の強化繊維を含有させた高分子材料によってシャフトを構成することを検討した。これによると、シャフトの強度を確保できるものの、シャフトとハウジングとをシールするシール部材が強化繊維によって摩耗し易くなってしまうといった背反がある。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
【0006】
本開示は、耐久性の向上を図ることが可能なバルブ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
バルブ装置であって、
流体が通過する流路孔(141、142)が少なくとも1つ形成された板状の固定ディスク(14)と、
回転力を出力する駆動部(16)と、
回転力によって所定の軸心(CL)を中心に回転するシャフト(18)と、
シャフトの回転に伴って流路孔の開度を増減する回転子(20)と、
シャフトが挿通されるボス部(124c)を有するハウジング(12)と、
シャフトとボス部との隙間をシールするリング状のシール部材(124e)と、を備え、
シャフトは、シール部材に当接する当接部位を含むホルダ部(182)を有し、
ホルダ部は、樹脂に強化繊維を含有した高分子材料で構成され、少なくとも当接部位がシャフトの軸心方向に沿って延びるとともに、軸心方向の一方側の端部に位置する先端部(183)が駆動部のギア部(162)に連結され、先端部に高分子材料の吐出ゲートの痕跡部(183b)が形成されており、
シャフトは、軸心を含むとともに軸心方向に沿って延びる金属製の軸心部(181)を含む。
【0008】
金型に溶融した樹脂を流して、所望形状の成型品を製造する場合、樹脂の流れ方向に強化繊維が配向する。つまり、樹脂の流れ方向に強化繊維の向き(すなわち、長手方向)が揃う。このため、ホルダ部の先端部に高分子材料の吐出ゲートを設定して、ホルダ部を製造すれば、溶融した樹脂がシャフトの軸心方向に沿って当接部位に流れる。これにより、少なくとも当接部位では、強化繊維の向きがシャフトの軸心方向に揃うように強化繊維が配向され、強化繊維がシャフトの表面に露出し難くなることで、シール部材の摩耗が抑制される。したがって、バルブ装置の耐久性の向上を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、
バルブ装置であって、
流体が通過する流路孔(141、142)が少なくとも1つ形成された板状の固定ディスク(14)と、
回転力を出力する駆動部(16)と、
回転力によって所定の軸心(CL)を中心に回転するシャフト(18)と、
シャフトの回転に伴って流路孔の開度を増減する回転子(20)と、
シャフトが挿通されるボス部(124c)を有するハウジング(12)と、
シャフトとボス部との隙間をシールするリング状のシール部材(124e)と、を備え、
シャフトは、シール部材に当接する当接部位を含むホルダ部(182)を有し、
ホルダ部は、樹脂に強化繊維を含有した高分子材料で構成され、少なくとも当接部位がシャフトの軸心方向に沿って延びるとともに、少なくとも当接部位における強化繊維の向きがシャフトの軸心方向に揃うように強化繊維が配向されており、
シャフトは、軸心を含むとともに軸心方向に沿って延びる金属製の軸心部(181)を含む。
【0010】
これによれば、シャフトのホルダ部を樹脂だけで構成する場合に比べて、シャフトの強度を確保することができる。加えて、強化繊維がシャフトの表面に露出し難くなることで、シール部材の摩耗が抑制される。したがって、バルブ装置の耐久性の向上を図ることができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係るバルブ装置の正面図である。
【
図2】
図1のIIで示す矢印の方向から見たバルブ装置の下面図である。
【
図5】シャフト、回転子、およびレバーの組付体の平面図である。
【
図6】
図5のVIで示す矢印の方向から見たシャフト、回転子、およびレバーの組付体の斜視図である。
【
図7】
図5のVIIで示す矢印の方向から見たシャフト、回転子、およびレバーの組付体の斜視図である。
【
図11】固定ディスクの上に駆動ディスクを重ねた状態を示す平面図である。
【
図12】本体カバー部にシャフト等を組付けた組付体の側面図である。
【
図13】ホルダ部に軸心部を嵌合する前のシャフトの断面図である。
【
図14】比較例となるシャフトのホルダの製造方法を説明するための説明図である。
【
図15】第1実施形態に係るバルブ装置で用いられるシャフトのホルダの製造方法を説明するための説明図である。
【
図17】第2実施形態に係るバルブ装置で用いられるシャフトの製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0014】
(第1実施形態)
本開示の第1実施形態について
図1~
図16に基づいて説明する。本実施形態では、本開示のバルブ装置10を、電動車両における車室内空調および電池温調に供される温調機器に適用した例について説明する。電動車両の温調機器に用いるバルブ装置10は、車室内および電池それぞれに応じた温度の微調整が必要であり、内燃機関であるエンジンの冷却水回路に用いるものに比べて、流体の流量を精度よく調整する必要がある。
【0015】
図1に示すバルブ装置10は、車室内および電池の温度を調整するための流体(本例では、冷却水)が循環する流体循環回路に適用される。バルブ装置10は、流体循環回路のうちバルブ装置10を介した流通経路における流体の流量を増減することができるとともに、当該流通経路における流体の流れを遮断することもできる。流体としては、例えばエチレングリコールを含むLLCなどが用いられる。なお、LLCはLong Life Coolant の略称である。
【0016】
図1、
図2に示すように、バルブ装置10は、内部に流体を流通させる流体通路を形成するハウジング12を有する。バルブ装置10は、流体が流入する入口部12a、流体を流出させる第1出口部12b、流体を流出させる第2出口部12cがハウジング12に設けられた三方弁で構成されている。バルブ装置10は、単に流路切替弁としての機能だけでなく、入口部12aから第1出口部12bへ流れる流体と、入口部12aから第2出口部12cへ流れる流体との流量割合を調整する流量調整弁としても機能する。
【0017】
バルブ装置10は、後述するシャフト18の軸心CLまわりに円盤状の弁体が回転することで、バルブ開閉動作を行うディスクバルブとして構成されている。なお、本実施形態は、後述するシャフト18の軸心CLに沿う方向を軸心方向DRaとし、当該軸心方向DRaに直交するとともに軸心CLから放射状に拡がる方向を径方向DRrとして各種構成等を説明する。また、本実施形態は、軸心CLまわりの方向を周方向DRcとして各種構成等を説明する。
【0018】
図3に示すように、バルブ装置10は、ハウジング12の内側に固定ディスク14、シャフト18、回転子20、コンプレッションスプリング26、第1トーションスプリング28、第2トーションスプリング30等が収容される。また、バルブ装置10は、ハウジング12の外側に駆動部16等が配置されている。
【0019】
ハウジング12は、回転しない非回転部材である。ハウジング12は、例えば樹脂材料によって形成されている。ハウジング12は、軸心方向DRaに沿って延びる有底筒形状の本体部120と本体部120の開口部120aを閉塞する本体カバー部124とを有している。
【0020】
本体部120は、底面を形成する底壁部121および軸心CLまわりを囲む側壁部122を有している。底壁部121および側壁部122は、一体に成型された一体成型物として構成されている。
【0021】
底壁部121には、後述する固定ディスク14の各流路孔141、142に合わせて段差が設けられている。すなわち、底壁部121は、後述する固定ディスク14の各流路孔141、142に対向する部位が固定ディスク14の各流路孔141、142に対向しない部位に比べて、本体カバー部124との距離が大きくなっている。
【0022】
底壁部121は、固定ディスク14の各流路孔141、142に対向する対向部位121aおよび固定ディスク14の各流路孔141、142に対向しない非対向部位121bを有する。底壁部121は、対向部位121aが固定ディスク14から大きく離れるとともに、非対向部位121bが固定ディスク14に近接している。
【0023】
側壁部122には、底壁部121よりも開口部120aに近い位置に入口部12aが形成され、開口部120aよりも底壁部121に近い位置に第1出口部12bおよび第2出口部12cが形成されている。入口部12a、第1出口部12b、および第2出口部12cは、内側に流路が形成された管状の部材で構成されている。
【0024】
側壁部122の内側には、入口部12aが形成された部位と各出口部12b、12cが形成された部位との間に、固定ディスク14を載置するための載置部122aが設けられている。載置部122aは、固定ディスク14における開口面140の裏面に当接する部位である。載置部122aは、側壁部122において内径が変化する部位に形成されている。具体的には、載置部122aは、径方向DRrに拡がる平坦な部位である。載置部122aには、後述のガスケット15を配置するための収容溝122bが形成されている。
【0025】
また、側壁部122は、固定ディスク14と径方向DRrに対向する第1ディスク対向部122cと、駆動ディスク22と径方向DRrに対向する第2ディスク対向部122dとを有する。
【0026】
図示しないが、第1ディスク対向部122cには、
図4に示す固定ディスク14の回り止め突起144を受け入れる受入溝が形成されている。なお、固定ディスク14の回り止めは、回り止め突起144ではなく、例えば、回り止め用のピンによって実現されていてもよい。
【0027】
第1ディスク対向部122cは、その内径Dhが、固定ディスク14のうち回り止め突起144を除く部位の外径Ddよりも大きくなっている。これにより、固定ディスク14を載置部122aに設置した状態で、固定ディスク14と側壁部122との間に隙間が形成される。換言すれば、固定ディスク14は、側壁部122によって位置決めされていない。
【0028】
第2ディスク対向部122dは、その内径が、第1ディスク対向部122cの内径よりも大きい。また、第2ディスク対向部122dの内径は、駆動ディスク22の外径よりも大きい。これにより、駆動ディスク22と側壁部122との間に隙間が形成される。すなわち、駆動ディスク22は、側壁部122に接触せず、側壁部122によって位置決めされていない。なお、駆動ディスク22の外径は、固定ディスク14の外径Ddと略同等になっている。
【0029】
ハウジング12の内側は、固定ディスク14によって入口側空間12dと出口側空間12eとに仕切られている。入口側空間12dは、ハウジング12の内側にて入口部12aに連通する空間である。出口側空間12eは、ハウジング12内側にて第1出口部12bおよび第2出口部12cに連通する空間である。
【0030】
図示しないが、本体部120の内側には、出口側空間12eを第1流路孔141に連通する第1出口側空間と第2流路孔142に連通する第2出口側空間とに仕切る板状の仕切部が設定されている。この仕切部は、出口側空間12eを径方向DRrに沿って横断するように設けられている。
【0031】
本体カバー部124は、本体部120の開口部120aを覆う蓋部材である。本体カバー部124は、板部124a、リブ部124b、ボス部124c、スプリングガイド部125を含んで構成されている。板部124a、リブ部124b、ボス部124c、スプリングガイド部125は、一体に成型された一体成型物として構成されている。
【0032】
板部124aは、径方向DRrに延びる円環形状の部位である。板部124aは、本体カバー部124のうち、側壁部122および固定ディスク14とともに、入口側空間12dを形成する。
【0033】
リブ部124bは、本体カバー部124のうち本体部120の開口部120aに嵌め込まれる部位である。リブ部124bは、筒形状であって板部124aの外周側に設けられている。リブ部124bは、板部124aから底壁部121に向かって突き出るように設けられている。リブ部124bと側壁部122との間には、本体部120と本体カバー部124との隙間をシールするためのOリング124dが配置されている。
【0034】
ボス部124cは、内側にシャフト18が挿通される部位である。ボス部124cは、筒形状であって板部124aの内周側に設けられている。ボス部124cは、板部124aから軸心方向DRaの一方側に向かって突き出ている。ボス部124cは、内側にシャフトシール124eが設けられ、外側に駆動部16との隙間をシールするOリング124fが設けられている。また、ボス部124cの内側には、シャフト18を回転可能に支持する軸受部124gが配置されている。
【0035】
ここで、シャフトシール124eは、シャフト18との隙間をシールするリング状のシール部材である。シャフトシール124eは、ボス部124cの内側に圧入等によって固定される。シャフトシール124eは、シャフト18側がシャフト18に向かって突き出る部位がシャフト18に摺接する。これにより、シャフト18とボス部124cとの間から駆動部16側への流体の浸入が抑制される。
【0036】
スプリングガイド部125は、第1トーションスプリング28の機能が適切に発揮されるように第1トーションスプリング28を適正位置に規制するガイド部材である。スプリングガイド部125は、第1トーションスプリング28の内側において軸心CLを囲むように配置されている。
【0037】
固定ディスク14は、円盤状の部材で構成されている。固定ディスク14は、軸心方向DRaを厚み方向とする姿勢でハウジング12の内側に配置されている。固定ディスク14は、駆動ディスク22が摺動する表面としての開口面140を有する。開口面140は、後述する駆動ディスク22の摺動面220に接触する接触面である。
【0038】
固定ディスク14は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていることが望ましい。固定ディスク14は、ハウジング12よりも硬度が高い高硬度材料で構成されている。具体的には、固定ディスク14はセラミックで構成されている。固定ディスク14は、セラミックの粉末をプレス機によって所望の形状に成型された粉末成型体である。なお、固定ディスク14は、開口面140を形成する部位だけが、ハウジング12の構成材料に比較して、セラミック等の線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていてもよい。
【0039】
また、固定ディスク14は、流体が通過する各流路孔141、142が形成された流路形成部を構成する。したがって、本実施形態のバルブ装置10は、流路形成部である固定ディスク14がハウジング12とは別体の部材として構成されている。
【0040】
図4に示すように、固定ディスク14には、流体が通過する第1流路孔141および第2流路孔142が形成されている。第1流路孔141および第2流路孔142は、シャフト18の軸心CLと重ならないように、固定ディスク14のうちシャフト18の軸心CLから離れた位置に形成されている。第1流路孔141および第2流路孔142は、セクタ状(すなわち、扇形状)の貫通孔であり、第1流路孔141および第2流路孔142は、入口側空間12dと出口側空間12eとを連通させる連通路として機能する。なお、第1流路孔141および第2流路孔142は円形状、楕円形状など他の形状であってもよい。
【0041】
具体的には、第1流路孔141は、第1出口側空間に連通するように、固定ディスク14のうち、第1出口側空間に対応する部位に設けられている。また、第2流路孔142は、第2出口側空間に連通するように、固定ディスク14のうち、第2出口側空間に対応する部位に設けられている。
【0042】
固定ディスク14の略中心部分には、固定ディスク孔143が形成されている。固定ディスク孔143は、シャフト18が挿通される固定側挿通孔である。固定ディスク孔143は、シャフト18が摺動しないように、その内径がシャフト18の直径よりも大きくなっている。
【0043】
固定ディスク14と載置部122aとの間には、固定ディスク14と載置部122aとの隙間をシールするガスケット15が配置されている。ガスケット15は、ゴム製である。ガスケット15は、載置部122aに形成された収容溝122bに収容される。ガスケット15は、固定ディスク14に対向するシール面に2つ以上の突起が設けられ、載置部122aに対向するシール面に2つ以上の突起が設けられている。具体的には、ガスケット15には、軸心方向DRaに向けて突き出る2つの突起が設けられている。このようなガスケット15は、例えば、平坦なシール面に対して窪みを形成するといった簡易な手法によって得ることができる。
【0044】
図3および
図5に示すように、シャフト18は、駆動部16が出力する回転力によって所定の軸心CLを中心に回転する回転軸である。シャフト18は、軸心方向DRaに沿って延びている。シャフト18は、軸心方向DRaの両側がハウジング12に回転可能に支持されている。すなわち、シャフト18は、両端支持構造になっている。シャフト18は、固定ディスク14および駆動ディスク22を貫通してハウジング12に対して回転可能に支持されている。具体的には、シャフト18は、軸心方向DRaの一方側が本体カバー部124の内側に設けられた軸受部124gによって回転可能に支持されている。また、シャフト18は、軸心方向DRaの他方側が本体部120の底壁部121に形成された軸受孔部121cに支持されている。軸受孔部121cは、滑り軸受で構成されている。なお、軸受孔部121cは、滑り軸受ではなく、玉軸受等で構成されていてもよい。
【0045】
図3、
図6、
図7、
図8に示すように、シャフト18は、金属製の軸心部181と、軸心部181に連結される樹脂製のホルダ部182と、を含んでいる。軸心部181およびホルダ部182は、一体に回転可能なように互いに連結されている。
【0046】
軸心部181は、シャフト18の軸心CLを含むとともに軸心方向DRaに沿って延びている。軸心部181は、回転子20の回転中心となる部位である。軸心部181は、真直度を確保するために、金属製の棒部材で構成されている。
【0047】
ホルダ部182は、軸心部181の軸心方向DRaの一方側に連結されている。ホルダ部182は、有底筒形状である。ホルダ部182は、軸心方向DRaの一方側の先端部の内側に軸心部181が連結されている。換言すれば、軸心部181は、軸心方向DRaの一方側の端部がホルダ部182の先端部の内側に位置する。ホルダ部182は、ハウジング12の外側に突き出た先端部が駆動部16のギア部162に連結されている。
【0048】
ホルダ部182は、軸心方向DRaの一方側から他方側に向かって内径が段階的に大きくなっている。具体的には、ホルダ部182は、軸心方向DRaの一方側に位置する軸連結部183、軸連結部183に連なる中間部184、中間部184に連なる小径部185、小径部185に連なる大径部186を備える。そして、ホルダ部182は、軸連結部183、中間部184、小径部185、大径部186の順に内径が大きくなっている。
【0049】
軸連結部183は、軸心方向DRaの一方側に位置する先端部である。軸連結部183には軸心部181が連結される。軸連結部183は、ボス部124cの外側に突き出た部位の外側部分にギア部162の一部に噛み合うシャフトギア183aが形成されている。軸連結部183は、ボス部124cの内側に位置する部位の外側部分が軸受部124gによって支持されている。
【0050】
中間部184は、ボス部124cの内側に位置する部位である。中間部184は、軸心部181の外径に対して大きい内径を有している。中間部184の外側には、シール部材であるシャフトシール124eが配置されている。中間部184は、シール部材であるシャフトシール124eに当接する当接部位を構成している。
【0051】
中間部184は、軸心方向DRaに沿って延びている。具体的には、中間部184は、軸心CLを中心とする円筒形状になっている。中間部184は、その内側が軸心部181に接触しないように、中間部184の内径が軸心部181の外径よりも大きくなっている。これにより、中間部184は薄肉化されている。
【0052】
小径部185は、その内側に後述するコンプレッションスプリング26を配置する空間を形成する。小径部185は、中間部184の内径に対して若干大きい内径を有している。中間部184と小径部185とをつなぐ接続端面185aがコンプレッションスプリング26の一方側の端部が接触する接触部となっている。小径部185の外側には、大径部186は接続されている。
【0053】
大径部186は、小径部185の径方向DRrの外側に位置する。大径部186は、小径部185の内径に対して若干大きい内径を有している。大径部186は、筒形状の胴部186a、第1大径係止部186b、第2大径係止部186c、第1フランジ部187、第2フランジ部188を有する。
【0054】
第1大径係止部186bは、後述する第1トーションスプリング28のフック282が係止されるフック係止部である。
図7に示すように、第1大径係止部186bは、胴部186aの外側のうち軸心方向DRaの一方側に設けられている。第1大径係止部186bは、第1トーションスプリング28のフック282と周方向DRcに相対するように、胴部186aから径方向DRrの外側に向けて突き出ている。
【0055】
第2大径係止部186cは、後述する第2トーションスプリング30のフック301が係止されるフック係止部である。
図7に示すように、第2大径係止部186cは、胴部186aの外側のうち第1大径係止部186bよりも軸心方向DRaの他方側に設けられている。第2大径係止部186cは、第2トーションスプリング30のフック301と周方向DRcに相対するように、胴部186aから径方向DRrの外側に向けて突き出ている。
【0056】
第1フランジ部187および第2フランジ部188は、シャフト18を後述するレバー24の係合部に係合させる係止片である。第1フランジ部187および第2フランジ部188は、胴部186aの外側のうち第2大径係止部186cよりも軸心方向DRaの他方側に設けられている。
図5に示すように、第1フランジ部187および第2フランジ部188は、シャフト18の軸心CLに対して互いに略点対称となる形状を有している。第1フランジ部187および第2フランジ部188は、レバー24の係合部と周方向DRcに相対するように、胴部186aから径方向DRrの外側に向けて突き出ている。
【0057】
このように構成されるホルダ部182は、第1大径係止部186bおよび第2大径係止部186cを有することで、第1トーションスプリング28および第2トーションスプリング30それぞれの付勢力を受ける。また、ホルダ部182は、第1フランジ部187および第2フランジ部188を有することで、シャフト18がレバー24に対して周方向DRcにおいて異なる箇所で接触している。すなわち、シャフト18は、レバー24に接触する当接部が周方向DRcにおける異なる箇所に設けられている。
【0058】
また、ホルダ部182には、周方向DRcにおけるシャフト18の回転駆動範囲を規制する回転規制部189が設けられている。回転規制部189は、ホルダ部182の中間部184の下方に設けられている。回転規制部189は、径方向DRrに突き出た凸部で構成されている。この回転規制部189が、図示しないハウジング12のストッパに突き当たることで、周方向DRcにおけるシャフト18の回転駆動範囲を規制される。
【0059】
回転子20は、駆動部16の出力によってシャフト18の軸心CLを中心に回転する。回転子20は、シャフト18の回転に伴って固定ディスク14の各流路孔141、142の開度を増減する。
図9に示すように、回転子20は、弁体としての駆動ディスク22と、シャフト18に駆動ディスク22を連結するレバー24とを有している。
【0060】
図9、
図10、
図11に示す駆動ディスク22は、シャフト18の回転に伴って第1流路孔141の開度および第2流路孔142の開度を増減する弁体である。なお、第1流路孔141の開度は、第1流路孔141が開かれている度合いであり、第1流路孔141の全開を100%、全閉を0%として表される。第1流路孔141の全開は、例えば、第1流路孔141が駆動ディスク22に全く塞がれていない状態である。第1流路孔141の全閉は、例えば、第1流路孔141の全体が駆動ディスク22に塞がれている状態である。第2流路孔142の開度は、第1流路孔141の開度と同様である。
【0061】
駆動ディスク22は、円盤状の部材で構成されている。駆動ディスク22は、軸心方向DRaを厚み方向とする姿勢でハウジング12の内側に配置されている。駆動ディスク22は、軸心方向DRaにおいて固定ディスク14に相対するように入口側空間12dに配置されている。駆動ディスク22は、固定ディスク14の開口面140に相対する摺動面220を有する。摺動面220は、固定ディスク14の開口面140をシールするシール面である。
【0062】
駆動ディスク22は、ハウジング12の構成材料に比較して、線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていることが望ましい。駆動ディスク22は、ハウジング12よりも硬度が高い高硬度材料で構成されている。具体的には、駆動ディスク22はセラミックで構成されている。駆動ディスク22は、セラミックの粉末をプレス機によって所望の形状に成型された粉末成型体である。なお、駆動ディスク22は、摺動面220を形成する部位だけが、ハウジング12の構成材料に比較して、セラミック等の線膨張係数が小さく、且つ、耐摩耗性に優れた材料で形成されていてもよい。
【0063】
ここで、セラミックは、線膨張係数が小さく、且つ、吸水による寸法変化が少ない材料であって、耐摩耗性も優れている。駆動ディスク22をセラミックで構成すれば、駆動ディスク22とシャフト18との相対的な位置関係や駆動ディスク22とハウジング12との相対的な位置関係が安定する。この結果、流体の流量制御の精度を確保したり、意図しない流体漏れを抑えたりすることができる。
【0064】
駆動ディスク22には、シャフト18の軸心CLに対して偏心した位置に回転子孔221が形成されている。回転子孔221は、軸心方向DRaに貫通する貫通孔である。回転子孔221は、駆動ディスク22のシャフト18の軸心CLまわりを回転させた際に、駆動ディスク22において第1流路孔141および第2流路孔142と軸心方向DRaに重なり合う部位に形成されている。
【0065】
駆動ディスク22には、略中心部分にシャフト挿通孔223が形成されている。シャフト挿通孔223は、シャフト18が挿通される駆動側挿通孔である。シャフト挿通孔223は、シャフト18が摺動しないように、その内径がシャフト18の直径よりも大きくなっている。駆動ディスク22には、レバー24の一部を圧入するための第1圧入溝224および第2圧入溝225が形成されている。
【0066】
バルブ装置10は、回転子孔221が第1流路孔141と軸心方向DRaに重なり合う位置に駆動ディスク22を回転させると、第1流路孔141が開放される。また、バルブ装置10は、回転子孔221が第2流路孔142と軸心方向DRaに重なり合う位置に駆動ディスク22を回転させると、第2流路孔142が開放される。
【0067】
駆動ディスク22は、第1流路孔141を通過する流体および第2流路孔142を通過する流体の流量割合を調整可能に構成されている。すなわち、駆動ディスク22は、第1流路孔141の開度が大きくなるにともなって第2流路孔142の開度が小さくなるように構成されている。
【0068】
レバー24は、シャフト18に駆動ディスク22を連結する連結部材である。レバー24は、駆動ディスク22に固定されるとともに、駆動ディスク22をシャフト18の軸心方向DRaに変位可能な状態で駆動ディスク22およびシャフト18を一体に回転可能に連結する。
【0069】
具体的には、レバー24は、
図9に示すように、円盤部241、第1腕部242、および第2腕部243を有する。円盤部241、第1腕部242、および第2腕部243は、一体に成型された一体成型物として構成されている。
【0070】
円盤部241は、その略中心部分にシャフト18を挿通させる中間挿通孔241aが形成されている。円盤部241は、軸心方向DRaにおいてシャフト挿通孔223と重なり合わない大きさになっている。円盤部241には、第1腕部242および第2腕部243が接続されている。
【0071】
第1腕部242および第2腕部243それぞれは、円盤部241から径方向DRrの外側に向けて突き出ている。第1腕部242および第2腕部243は、互いに逆向きに突き出ている。
【0072】
具体的には、第1腕部242には、駆動ディスク22に対向する対向面の反対側に軸心方向DRaに向かって突き出る第1係合爪242aおよび第2係合爪242bが設けられている。第1係合爪242aは、シャフト18の第1フランジ部187に係合する。第2係合爪242bは、第2トーションスプリング30のフック302が係止されるフック係止部である。
【0073】
一方、第2腕部243には、駆動ディスク22に対向する対向面の反対側に軸心方向DRaに向かって突き出る第3係合爪243aおよび第4係合爪243bが設けられている。第3係合爪243aおよび第4係合爪243bは、第1係合爪242aおよび第2係合爪242bと略同様に構成されている。第3係合爪243aは、シャフト18の第2フランジ部188に係合する。
【0074】
ここで、図示しないが、第1係合爪242aおよび第3係合爪243aは、軸心方向DRaにおいて各フランジ部187、188との間に隙間があいた状態で各フランジ部187、188に係合されている。これにより、レバー24および駆動ディスク22は、軸心方向DRaに変位可能な状態でシャフト18に連結される。また、第1腕部242および第2腕部243には、駆動ディスク22に対向する対向面に凸部が形成されている。各凸部は、駆動ディスク22に形成された第1圧入溝224および第2圧入溝225に圧入可能なように、駆動ディスク22に向けて突き出ている。
【0075】
このように構成されるレバー24は、各凸部が各圧入溝224、225に圧入されることによって駆動ディスク22に固定されている。本実施形態のレバー24は、中間挿通孔241aに対して点対称となるように第1腕部242および第2腕部243が略同等の形状になっている。これにより、レバー24を周方向DRcに180°回転させた状態でも、シャフト18および駆動ディスク22に対して組み付けることができる。
【0076】
図3、
図8に示すコンプレッションスプリング26は、回転子20を固定ディスク14に付勢する付勢部材である。コンプレッションスプリング26は、シャフト18の軸心方向DRaに弾性変形する。コンプレッションスプリング26は、軸心方向DRaの一方側の端部がシャフト18に接し、軸心方向DRaの他方側の端部が回転子20に接するように、軸心方向DRaに圧縮された状態でハウジング12の内側に配置されている。具体的には、コンプレッションスプリング26は、軸心方向DRaの一方側の端部がホルダ部182の内側の接続端面185aに接し、軸心方向DRaの他方側の端部が円盤部241に接するように配置されている。コンプレッションスプリング26は、トーションスプリングとして機能しないように、回転子20およびシャフト18の少なくとも一方に対して固定されていない。
【0077】
コンプレッションスプリング26によって回転子20が固定ディスク14に押し付けられることで、固定ディスク14の開口面140と駆動ディスク22の摺動面220との接触状態が維持される。この接触状態は、固定ディスク14の開口面140と駆動ディスク22の摺動面220とが面接触した状態である。すなわち、バルブ装置10は、駆動ディスク22の姿勢を固定ディスク14に接する姿勢に維持することができる。
【0078】
具体的には、コンプレッションスプリング26は、シャフト18の軸心CLを囲むように配置されている。換言すれば、シャフト18は、コンプレッションスプリング26の内側に配置されている。これによると、駆動ディスク22に対するコンプレッションスプリング26の荷重がシャフト18の周方向DRcで偏ることが抑制されるので、摺動面220と開口面140との接触状態が維持され易くなる。
【0079】
第1トーションスプリング28は、シャフト18をハウジング12に対してシャフト18の軸心CLまわりの周方向DRcに付勢するスプリングである。第1トーションスプリング28は、ハウジング12とシャフト18との間に配置されている。具体的には、第1トーションスプリング28は、軸心方向DRaの両端に径方向DRrの外側に突き出るフック282が設けられている。説明の便宜上、以下では、軸心方向DRaの一方側のフック281を第1フックと呼び、軸心方向DRaの他方側のフック282を第2フック282と呼ぶ。本実施形態では、第1フックが、ハウジング12に対して係止される係止フックを構成している。
【0080】
図示しないが、第1フックは、本体カバー部124に形成された本体側係止部に対して係止されている。本体側係止部は、リブ部124bの内側に形成された凸部で構成されている。
【0081】
図12に示すように、第2フック282は、ホルダ部182の第1大径係止部186bに対して係止されている。第2フック282は、回転部材である第1大径係止部186bに係止されるので、回転子20が回転するとその位置が周方向DRcに変化する。
【0082】
第1トーションスプリング28は、基本的に、周方向DRcに捩られて弾性変形した状態で使用される。第1トーションスプリング28の付勢力は、シャフト18が回転している場合にも止まっている場合にもシャフト18に作用する。そして、第1トーションスプリング28の付勢力は、シャフト18を介して駆動部16のギア部162からモータ161に回転力として伝達される。このため、第1トーションスプリング28をハウジング12とシャフト18との間に配置することで、駆動部16とシャフト18との間における周方向DRcのガタツキが抑制される。なお、第1トーションスプリング28は、周方向DRcに捩じられているだけで軸心方向DRaに圧縮されているわけではない。
【0083】
第2トーションスプリング30は、レバー24をシャフト18に対して周方向DRcに付勢するスプリングである。第2トーションスプリング30は、シャフト18とレバー24との間に配置されている。第2トーションスプリング30は、第1トーションスプリング28に比べて軸心方向DRaの寸法および径方向DRrの寸法が小さくなっている。
【0084】
第2トーションスプリング30は、軸心方向DRaの両端に径方向DRrの外側に突き出るフック301、302が設けられている。説明の便宜上、以下では、軸心方向DRaの一方側のフック301を第3フック301と呼び、軸心方向DRaの他方側のフック302を第4フック302と呼ぶ。
【0085】
図7に示すように、第2トーションスプリング30は、第3フック301がホルダ部182の第2大径係止部186cに対して係止されている。また、
図6に示すように、第4フック302がレバー24の第2係合爪242bに対して係止されている。
【0086】
第2トーションスプリング30は、基本的に、周方向DRcに捩られて弾性変形した状態で使用される。第2トーションスプリング30の付勢力は、シャフト18が回転している場合にも止まっている場合にもレバー24に作用する。そして、第2トーションスプリング30の付勢力は、レバー24を介して駆動ディスク22に回転力として伝達される。このため、第2トーションスプリング30をシャフト18とレバー24との間に配置することで、シャフト18とレバー24の間における周方向DRcのガタツキが抑制される。そして、レバー24は、駆動ディスク22に固定されているので、第2トーションスプリング30によってシャフト18から駆動ディスク22までの間における周方向DRcのガタツキが抑制される。なお、第2トーションスプリング30は、周方向DRcに捩じられているだけで軸心方向DRaに圧縮されているわけではない。
【0087】
バルブ装置10は、シャフト18とレバー24との間に第2トーションスプリング30が介在させた状態でシャフト18の各フランジ部187、188をレバー24に係合させることで、これら3部品がサブアッシー化されている。
【0088】
駆動部16は、回転力を出力するための機器である。
図3に示すように、駆動源としてのモータ161と、モータ161の出力をシャフト18に伝達する動力伝達部材としてのギア部162とを有している。モータ161は、モータ161と電気的に連結したモータ制御部163からの制御信号に従って回転する。ギア部162は、モータ161の出力を減速する減速機である。ギア部162は、出力ギアを含むギア機構部で構成されている。出力ギアは、シャフトギア183aに噛み合うギアである。
【0089】
ここで、
図13に示すように、本実施形態のシャフト18は、別々に製造された軸心部181とホルダ部182とを一体化したものである。シャフト18は、圧入等によってホルダ部182の内側に軸心部181を嵌合させることで軸心部181およびホルダ部182が一体化されている。具体的には、シャフト18は、軸心部181における軸心方向DRaの端部がホルダ部182の先端部の内側に位置し、且つ、軸心部181が中間部184を貫通するように軸心部181およびホルダ部182が一体化されている。
【0090】
このように構成されるシャフト18は、駆動部16からの回転力、コンプレッションスプリング26の付勢力、各トーションスプリング28、30の付勢力を受ける。このため、シャフト18の強度を高める必要がある。
【0091】
シャフト18の強度向上を図るべく、本実施形態では、シャフト18のホルダ部182を樹脂に強化繊維を含有した高分子材料で構成している。強化繊維は、樹脂を補強する補強基材である。強化繊維には、高レベルの強度を有するガラス繊維を採用している。ホルダ部182は、金型に溶融した高分子材料を流して所望形状に成型された成型品である。
【0092】
ここで、
図14は、比較例となるシャフトCEのホルダ部182の製造方法を説明するための説明図である。説明の便宜上、比較例のシャフトCEにおける本実施形態のシャフト18に対応する部位に対して本実施形態と同一の符号付している。
【0093】
例えば、
図14に示す比較例のシャフトCEの如く、ホルダ部182における軸心方向DRaの他方側の端部に対応する位置に高分子材料の吐出ゲートGを設定して、ホルダ部182を製造することが考えられる。吐出ゲートGは、ホルダ部182を成型する金型に溶融した樹脂を流し込む際の入口である。
【0094】
しかしながら、
図14の破線矢印で示すように、高分子材料が軸心CLに対して傾いた方向に流れ易くなる。高分子材料が軸心CLに対して傾いた方向に流れ易くなっていると、高分子材料の強化繊維の向きが軸心CLに対して傾斜し易くなる。そして、高分子材料の強化繊維の向きが軸心CLに対して傾斜していると、強化繊維の一部がシャフト18の表面に露出し易くなる。
【0095】
特に、ホルダ部182の中間部184では、高分子材料が様々な方向に流れ易く、強化繊維の一部がシャフト18の表面に露出し易くなっている。この場合、シャフト18の表面に露出した強化繊維によってシャフトシール124eが摩耗し易くなってしまう。このことは、本発明者らの鋭意検討の末に見出された。
【0096】
これらを加味して、本実施形態のバルブ装置10では、
図15に示すように、ホルダ部182における軸心方向DRaの一方側の先端部に対応する位置に高分子材料の吐出ゲートGを設定して製造したホルダ部182を採用している。
【0097】
ホルダ部182の先端部に高分子材料の吐出ゲートGを設定して、ホルダ部182を製造する場合、
図15の破線矢印で示すように、溶融した樹脂がシャフト18の軸心方向DRaに沿って流れ易くなる。これにより、少なくとも中間部184では、
図16に示すように、強化繊維RFの向きがシャフト18の軸心方向DRaに揃うように強化繊維RFが配向される。換言すれば、強化繊維RFがシャフト18の軸心方向DRaに沿って延びるように配向される。これにより、強化繊維RFがシャフト18の表面に露出し難くなっている。
【0098】
本実施形態のホルダ部182は、軸心方向DRaの一方側に位置する先端部に、高分子材料の吐出ゲートGの痕跡部183bが形成されている。具体的には、痕跡部183bは、軸連結部183のうち軸心方向DRaの一方側の端面に形成された凹形状の部位である。なお、痕跡部183bの形状は、凹形状に限らず、例えば、凸形状になっていてもよい。
【0099】
次に、本実施形態のバルブ装置10の作動について説明する。バルブ装置10は、
図1、
図2、
図3に示すように、流体は、矢印Fiのように入口部12aから入口側空間12dへ流入する。そして、第1流路孔141が開いている場合には、流体が入口側空間12dから第1流路孔141を介して第1出口側空間へ流れる。第1出口側空間へ流れ込んだ流体は、第1出口側空間から第1出口部12bを介してバルブ装置10の外部へ矢印F1oのように流出する。この場合、第1流路孔141を通過する流体の流量は、第1流路孔141の開度に応じて定まる。すなわち、入口部12aから第1流路孔141を介して第1出口部12bへ流れる流体の流量は、第1流路孔141の開度が大きいほど大きくなる。
【0100】
一方、第2流路孔142が開いている場合には、流体が入口側空間12dから第2流路孔142を介して第2出口側空間へ流入する。第2出口側空間へ流れ込んだ流体は第2出口側空間から第2出口部12cを介してバルブ装置10の外部へ矢印F2oのように流出する。この場合、第2流路孔142を通過する流体の流量は、第2流路孔142の開度に応じて定まる。すなわち、入口部12aから第2流路孔142を介して第2出口部12cへ流れる流体の流量は、第2流路孔142の開度が大きいほど大きくなる。
【0101】
以上説明したバルブ装置10は、シャフト18のホルダ部182が樹脂に強化繊維を含有した高分子材料で構成されている。ホルダ部182は、少なくともシャフトシール124eに当接する中間部184が軸心方向DRaに沿って延びている。ホルダ部182は、軸心方向DRaの一方側の端部に位置する先端部が駆動部16のギア部162に連結されるとともに、当該先端部に高分子材料の吐出ゲートGの痕跡部183bが形成されている。
【0102】
このように構成されるホルダ部182は、少なくとも中間部184における強化繊維の向きが軸心方向DRaに揃うように強化繊維が配向される。これによると、強化繊維がシャフト18の表面に露出し難くなることで、シャフトシール124eの摩耗が抑制される。したがって、シャフト18の強度向上とシャフトシール124eの摩耗抑制とを両立して、バルブ装置10の耐久性の向上を図ることができる。
【0103】
また、本実施形態のバルブ装置10は、例えば、以下の効果を得ることができる。
【0104】
(1)ハウジング12とシャフト18間には、シャフト18をハウジング12に対して軸心CLまわりの周方向DRcに付勢する第1トーションスプリング28が配置されている。これによると、駆動部16とシャフト18との間における周方向DRcのガタツキが抑制されることで、当該ガタツキに起因する各流路孔141、142の開度バラツキを抑えることができる。特に、本実施形態のバルブ装置10は、シャフト18のホルダ部182が、樹脂に強化繊維を含有した高分子材料で構成されている。このため、第1トーションスプリング28の追加に伴ってシャフト18に作用するトルクが増大しても、シャフト18の耐久性を確保することができる。
【0105】
(2)回転子20は、固定ディスク14に相対して摺動する板状の駆動ディスク22と、駆動ディスク22をシャフト18の軸心方向DRaに変位可能な状態で駆動ディスク22およびシャフト18を一体に回転可能に連結するレバー24と、を含む。ホルダ部182と回転子20との間には、回転子20を固定ディスク14に付勢するコンプレッションスプリング26が配置されている。これによると、回転子20を固定ディスク14に向けて押し付ける荷重を充分に確保することができる。このため、駆動ディスク22と固定ディスク14との接触状態を維持して、駆動ディスク22と固定ディスク14との間からの意図しない流体の漏れを抑制することができる。
【0106】
(3)強化繊維は、ガラス繊維である。これにより、シャフト18の強度を充分に確保することができる。
【0107】
(4)シャフト18は、軸心部181が中間部184を貫通して配置される構造になっている。これによれば、シャフト18を高分子材料のみで構成する場合に比べて、中間部184の肉厚を小さくすることができる。特に、本実施形態の中間部184は、軸心部181の外径に対して大きい内径を有している。これにより、中間部184は、軸心部181の外径と同等の内径を有するものに比べて、肉厚が小さくなっている。このように、中間部184の肉厚が小さい場合、中間部184の肉厚が大きい場合に生じやすい溶融した樹脂の乱れが抑制され、中間部184における強化繊維の向きがシャフト18の軸心方向DRaに揃い易くなるといった利点がある。
【0108】
(5)シャフト18は、軸心CLを含むとともに軸心方向DRaに沿って延びる金属製の軸心部181と、軸心部181に連結されるとともに各トーションスプリング28、30の付勢力を受ける樹脂製のホルダ部182と、を含んでいる。これによると、シャフト18全体が樹脂材料で構成される場合に比べて、シャフト18の剛性および精度(すなわち真直度)を確保することができる。また、ホルダ部182を樹脂製とすることで、軽量であって複雑な形状のシャフト18を実現することができる。特に、シャフト18の真直度を確保できることで、軸受部124g等のクリアランスを低減できるので、シャフト18のラジアル方向(すなわち、径方向DRr)の位置ズレを抑制することができる。
【0109】
(6)シャフト18は、固定ディスク14および駆動ディスク22を貫通してハウジング12に対して回転可能に支持されている。このように、固定ディスク14および駆動ディスク22をシャフト18が貫通する構造とすれば、固定ディスク14および駆動ディスク22を同一部材であるシャフト18で芯出しすることが可能となる。これにより、固定ディスク14および駆動ディスク22のラジアル方向の位置ズレを抑制することができる。このことは、各流路孔141、142の開度バラツキを抑える上で有効である。
【0110】
(7)バルブ装置10は、駆動ディスク22がシャフト18の軸心方向DRaに変位可能な状態でシャフト18に連結されている。このため、シャフト18とレバー24との間に第2トーションスプリング30を配置したとしても、駆動ディスク22の摺動面220と固定ディスク14との面接触を良好に維持することができる。
【0111】
(8)ここで、単一のトーションスプリングによって駆動部16から回転子20までの間における周方向DRcのガタツキを抑える場合、トーションスプリングの付勢力が過大となってしまうので、駆動部16の負荷の増大が避けられない。これに対して、第1トーションスプリング28および第2トーションスプリング30によって駆動部16から回転子20までの間における周方向DRcのガタツキを抑える構造になっていれば、各トーションスプリング28、30の付勢力を抑えることができる。この結果、駆動部16の負荷の増大を抑制することができる。
【0112】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図17を参照して説明する。本実施形態では、シャフト18がインサート成型によって製造されている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明する。
【0113】
図17に示すように、シャフト18は、軸心部181およびホルダ部182が一体に成型されたインサート成型品で構成されている。シャフト18は、軸心部181は軸心方向DRaの一方側の端部が先端部の内側に位置し、且つ、軸心部181が中間部184を貫通するように軸心部181およびホルダ部182が一体化されている。なお、本実施形態の中間部184は、軸心部181に接触している。すなわち、中間部184の内径が軸心部181の外径と同等の大きさになっている。
【0114】
その他については、第1実施形態と同様である。本実施形態のバルブ装置10は、第1実施形態と共通の構成または均等な構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0115】
(1)本実施形態のシャフト18は、
図15の破線矢印で示すように、溶融した樹脂が軸心部181に沿ってシャフト18の軸心方向DRaに流れる。これにより、少なくとも中間部184では、強化繊維RFの向きがシャフト18の軸心方向DRaに揃うように強化繊維RFが配向される。換言すれば、強化繊維RFがシャフト18の軸心方向DRaに沿って延びるように配向される。これにより、強化繊維RFがシャフト18の表面に露出し難くなっている。
【0116】
加えて、シャフト18は、軸心部181が中間部184を貫通して配置される構造になっている。これによれば、シャフト18を高分子材料のみで構成する場合に比べて、中間部184の肉厚を小さくすることができる。このように、中間部184の肉厚が小さい場合、中間部184の肉厚が大きい場合に生じやすい溶融した樹脂の乱れが抑制され、中間部184における強化繊維の向きがシャフト18の軸心方向DRaに揃い易くなるといった利点がある。
【0117】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されない。また、バルブ装置10の構成部品は、上述したものに限定されず、上述したものと異なっていてもよい。
【0118】
上述の実施形態の如く、シャフト18は、金属製の軸心部181および樹脂製のホルダ部182を備えていることが望ましいが、これに限定されない。シャフト18は、例えば、軸心部181およびホルダ部182が金属材料および樹脂材料の一方によって構成されていてもよい。なお、シャフト18は、ホルダ部182に対して軸心部181に相当する構成を追加したもので構成されていてもよい。
【0119】
上述の実施形態の如く、ホルダ部182は、ガラス繊維を含む高分子材料で構成されていることが望ましいが、これに限らず、ガラス繊維以外の強化繊維を含む高分子材料で構成されていてもよい。
【0120】
上述の実施形態の如く、バルブ装置10は、各トーションスプリング28、30を備えていることが望ましいが、これに限らず、各トーションスプリング28、30が省略されていてもよい。
【0121】
上述の実施形態では、シャフト18の両端がハウジング12に対して回転可能に支持されているものを例示したが、バルブ装置10は、これに限定されない。バルブ装置10は、例えば、シャフト18の一端が固定ディスク14に対して回転可能に支持されていてもよい。また、バルブ装置10は、例えば、シャフト18の一端だけがハウジング12に回転可能に支持されていてもよい。
【0122】
上述の実施形態では、コンプレッションスプリング26によって回転子20を固定ディスク14に付勢しているが、バルブ装置10は、これに限定されない。バルブ装置10は、例えば、シャフト18の軸心方向DRaに弾性変形する円筒形状の弾性体によって、回転子20を固定ディスク14に付勢するようになっていてもよい。また、バルブ装置10は、例えば、入口側空間12dと出口側空間12eとの圧力差によって、回転子20を固定ディスク14に付勢するようになっていてもよい。これらに示すように、コンプレッションスプリング26は、バルブ装置10において必須の構成部品ではない。
【0123】
上述の実施形態の如く、バルブ装置10は、レバー24に対して、シャフト18との間に第2トーションスプリング30を介在させた状態でシャフト18に係合する係合部が設けられていることが望ましいが、当該係合部が設けられていなくてもよい。
【0124】
上述の実施形態では、バルブ装置10として三方弁で構成されるものを例示したが、バルブ装置10は三方弁に限定されない。本開示のバルブ装置10は、例えば、1つの流体入口、1つの流体出口を有する流量調整弁または開閉弁として構成されていてもよい。この場合、固定ディスク14には1つの流路孔が形成される。本開示のバルブ装置10は、例えば、1つの流体入口および3つ以上の流体出口を有する多方弁、3つ以上の流体入口および1つの流体出口を有する多方弁、複数の流体入口および複数の流体出口を有する多方弁等で構成されていてもよい。
【0125】
上述の実施形態では、本開示のバルブ装置10を、車両に搭載される車両用の制御バルブに適用した例について説明したが、バルブ装置10は、車両以外の他の機器の制御バルブにも適用可能である。
【0126】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0127】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0128】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0129】
12 ハウジング
124c ボス部
124e シャフトシール(シール部材)
14 固定ディスク
16 駆動部
18 シャフト
182 ホルダ部
183b 痕跡部
184 中間部(当接部位)
20 回転子