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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】飛行体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04313 20160101AFI20240806BHJP
   H01M 8/00 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/04303 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20240806BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240806BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240806BHJP
   B64D 27/24 20240101ALI20240806BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240806BHJP
【FI】
H01M8/04313
H01M8/00 Z
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04955
B64C27/08
B64C39/02
B64D27/24
H01M8/10 101
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021074374
(22)【出願日】2021-04-26
(65)【公開番号】P2022168713
(43)【公開日】2022-11-08
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】金子 智彦
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-101198(JP,A)
【文献】特表2017-530042(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0009280(US,A1)
【文献】国際公開第2020/045995(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
B64C 27/08,39/02
B64D 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池、及び、前記燃料電池が発電した電力により駆動するプロペラを備える飛行体であって、
前記燃料電池による発電停止を指示する停止手段と、
前記燃料電池の前記発電停止の処理をする制御部と、
前記飛行体の着陸状態で接地して前記飛行体の荷重を支える脚部と、
前記脚部が受ける荷重を検知するセンサと、を有し、
前記制御部は、前記停止手段及び前記センサからの信号に基づいて前記脚部が所定の荷重を受けているときにのみ前記発電停止の処理を可能とする、
飛行体。
【請求項2】
前記脚部に対して前記センサが複数設けられ、
全ての前記センサが所定の荷重を受けていることを検知したときに、前記制御部が前記発電停止の処理を可能とする、請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記制御部は、前記センサが前記所定の荷重を受けたことを検知してから該荷重を一定の時間維持していることを確認した後に前記発電停止の処理を行う、請求項1又は2に記載の飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は飛行体に関する。
【背景技術】
【0002】
ジェット燃料を動力源とするエンジンにより飛行する航空機において、例えば特許文献1にはエンジンへの燃料流を制御する方法および装置が開示され、特許文献2には航空機の補助動力装置用の自動制御システムおよび関連する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2007-511701号公報
【文献】特表2008-514485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池を飛行の動力源として用いる飛行体において、飛行中に燃料電池による発電を停止する操作(スイッチの停止操作等)により発電を停止した場合、推力発生のための動力を失う。燃料電池による発電は一度停止してしまうとエンジンに比べて再始動に時間がかかったり、場合によっては凍結により再始動できなくなったりする虞がある。
【0005】
そこで本開示は、誤操作があっても飛行中に燃料電池の発電が停止してしまうことを防止できる飛行体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、燃料電池、及び、燃料電池が発電した電力により駆動するプロペラを備える飛行体であって、燃料電池による発電停止を指示する停止手段と、燃料電池の発電停止の処理をする制御部と、飛行体の着陸状態で接地して飛行体の荷重を支える脚部と、脚部が受ける荷重を検知するセンサと、を有し、制御部は、停止手段及びセンサからの信号に基づいて脚部が所定の荷重を受けているときにのみ発電停止の処理を可能とする、飛行体を開示する。
【0007】
ここで、「制御部は、停止手段及びセンサからの信号に基づいて脚部が所定の荷重を受けているときにのみ発電停止の処理を可能とする」は、制御部が、停止手段(停止スイッチ等)を操作しても条件が満たされない限り発電停止の処理を行わないこと、及び、条件が満たされない限り停止手段(停止スイッチ等)が操作できないこと、の少なくとも一方であることを意味する。
【0008】
脚部に対してセンサが複数設けられ、全てのセンサが所定の荷重を受けていることを検知したときに、制御部が発電停止の処理を可能とするように構成してもよい。
【0009】
制御部は、センサが所定の荷重を受けたことを検知してから該荷重を一定の時間維持していることを確認した後に発電停止の処理を行うように構成してもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示の飛行体によれば、誤操作があっても飛行中に燃料電池の発電が停止してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、飛行体(航空機1)の外観を表す図である。
図2図2は、計器パネル3aを表す図である。
図3図3は、燃料電池10による発電のための構成を説明する概念図である。
図4図4は、燃料電池10で駆動される機器との関係を説明する概念図である。
図5図5は、制御部70の構成を説明する図である。
図6図6は、第1形態にかかる停止の制御の流れを説明する図である。
図7図7は、第2形態にかかる停止の制御の流れを説明する図である。
図8図8は、第3形態にかかる停止の制御の流れを説明する図である。
図9図9は、第4形態にかかる停止の制御の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1図4には1つの形態にかかる例であり、燃料電池を飛行の動力源として用いる飛行体(航空機1)の構成を説明する図を示した。図1は当該飛行体(航空機1)の外観を表す図、図2は飛行体(航空機1)の操縦部3に備えられる計器パネル3aの外観図、図3は飛行体(航空機1)に具備された燃料電池10を発電させるための構成を模式的に表した図、図4は燃料電池10の作動に関連する各構成の関係を模式的に表した図である。
【0013】
なお、ここでは説明のための飛行体の1つの形態例として航空機1を説明するが、本開示の飛行体は燃料電池をプロペラの動力源としていればよく、外観やプロペラの位置、プロペラの数等は特に限定されることはなく、あらゆる形態の飛行体を本開示の飛行体の範囲に含めることができる。従って、飛行体の大きさ、搭乗できる人数等のいわゆる規模も限定されることはなく、また、無線で操作したり、予め飛行ルートがプログラムされていたりして飛行する無人の飛行体であるドローン等も含まれる。
【0014】
1.外観
図1からわかるように、本形態の航空機1は、内側に飛行に必要な各要素を収納する筐体である本体2を備え、本体2の上部には人が乗って航空機1を操縦するための操縦部3が設けられている。また、本形態の航空機1には航空機1の離陸、推進のためのプロペラ4が本体2の前後及び左右に1つずつ合計4つ配置されている。さらに本体2の下部には着陸の際に接地して本体2を支持する脚部5が具備されている。脚部5は本体2を支持することができれば1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0015】
また、操縦部3には図2に示したように計器パネル3aが設けられており、ここに停止スイッチ90(燃料電池による発電停止を指示する停止手段であり、本形態では燃料電池の作動を開始するスイッチも兼ねる)が配置されている。ここには停止スイッチ90の他に計器類91が配置されている。計器類91の種類は特に限定されることはなく、速度計、水平儀、高度計、旋回計、昇降計、タコメータ、コンパス等を挙げることができる。
【0016】
2.燃料電池による発電
本開示の飛行体は燃料電池により発電した電力によりプロペラを駆動させ、これにより飛行に必要な力を得るように構成されている。そのため、図3からわかるように燃料電池10がプロペラを駆動するモータ(プロペラ用モータ50)に電気的に接続され、このプロペラを駆動するモータ(プロペラ用モータ50)がプロペラ4を駆動させる。燃料電池10には、水素供給システム20から水素、空気供給システム30からエア(空気)が供給されることで燃料電池10が発電する。また、燃料電池10には冷却水循環システム40から冷却水が供給され燃料電池10の冷却が行われている。以下に各構成について説明する。
【0017】
2.1.燃料電池
燃料電池10は公知の通りであるが、例えば複数の燃料電池セルが重ねられた積層体がスタックケースに納められてなる。燃料電池セルは膜-電極接合体(MEA)が2つのセパレータで挟まれて構成されている。MEAは固体高分子膜、負極触媒層、正極触媒層、負極ガス拡散層、正極ガス拡散層等による積層体である。
【0018】
2.2.水素供給システム
水素供給システム20は配管を通じて水素を燃料電池10に供給するシステムである。水素供給システム20は公知の通りであるが、水素タンク21、バルブ22、及び、水素ポンプ23を備えている。
水素タンク21は水素を貯留するタンクであり、容器状の水素タンク本体21a及び口金21bを備えている。これにより水素タンク本体21aに納められた水素を口金21bを通じて取り出せるように構成されている。
バルブ22は口金21bに取り付けられ、水素タンク21からの水素の出入りを切り替える。
【0019】
水素ポンプ23は、バルブ22を通じて水素タンク21から取り出した水素を燃料電池10に送るポンプである。水素ポンプ23の具体的態様は特に限定されることなく、燃料電池による発電システムに適用される公知の水素ポンプを適用することができる。
【0020】
2.3.空気供給システム
空気供給システム30は配管を通じてエア(空気)を燃料電池10に供給するシステムである。空気供給システム30は公知の通りであるが、エアコンプレッサ31を備えている。エアコンプレッサ31は周囲の空気を取り込んで圧縮して燃料電池10に送る。エアコンプレッサ31の具体的態様は特に限定されることなく、燃料電池による発電システムに適用される公知のエアコンプレッサを適用することができる。
【0021】
2.4.冷却水循環システム
冷却水循環システム40は配管を通じて冷却水を循環し、燃料電池10に冷却水を供給するとともに燃料電池10を冷却した冷却水を回収して熱を外気に放出する。冷却水循環システム40は公知の通りであるが冷却水ポンプ41、冷却用熱交換器42、及び、ラジエタ43を備えている。
冷却水ポンプ41は冷却水を循環させるポンプであり、公知のものを用いることができる。
冷却用熱交換器42は燃料電池10に配置され、燃料電池10が発電することにより発生した熱を吸収することで燃料電池10を冷却する。冷却用熱交換器42の具体的態様は特に限定されることはなく、燃料電池による発電システムに適用される公知の冷却用熱交換器を適用することができる。
ラジエタ43は燃料電池10から吸収した熱を外気に放出する熱交換器である。これにより燃料電池10から吸収した熱を含んだ冷却水から熱を外気に放出することで、再度燃料電池10を冷却することが可能な冷却水となる。ラジエタ43の具体的態様は特に限定されることはなく、燃料電池による発電システムに適用される公知のラジエタを適用することができる。
【0022】
以上のような構成により冷却水は配管を通じて各構成を通ることで次のように循環する。冷却水ポンプ41により冷却用熱交換器42に達した冷却水は燃料電池10から熱を吸収しラジエタ43に移動する。ラジエタ43に達した冷却水は燃料電池10から吸収した熱を外気に放出して再び冷却水ポンプ41に達する。
【0023】
3.発電による駆動
図4には、燃料電池10が発電した電力を用いて駆動させる各構成の関係を模式的に示した。
プロペラ4は、燃料電池用コンバータ10a及びインバータ50aを介して、燃料電池10で発電された電力によりプロペラ用モータ50で駆動する。プロペラ4の駆動により飛行のための動力を得る。
冷却水ポンプ41は、燃料電池用コンバータ10a及びインバータ50aを介して、燃料電池10で発電された電力により冷却水ポンプ用モータ41bで駆動する。冷却水ポンプ41の駆動により上記したように冷却水循環システム40を冷却水が循環する。
エアコンプレッサ31は、燃料電池用コンバータ10a及びインバータ31aを介して、燃料電池10で発電された電力によりエアコンプレッサ用モータ31bで駆動する。エアコンプレッサ31の駆動により上記したように空気供給システム30から燃料電池10にエアが供給される。
水素ポンプ23は、燃料電池用コンバータ10a及びインバータ23aを介して、燃料電池10で発電された電力により水素ポンプ用モータ23bで駆動する。水素ポンプ23の駆動により上記したように水素供給システム20から燃料電池10に水素が供給される。
【0024】
また、当該発電による駆動のための電気系統には飛行体1に設けられた二次電池60が含まれており、当該二次電池60によっても二次電池コンバータ61及び/又はインバータ23a、31a、41a、50aを介してエアコンプレッサ用モータ31b、プロペラ用モータ50、冷却水ポンプ用モータ41b、水素ポンプ用モータ23bのそれぞれに電気的に接続され駆動できるように構成されている。
二次電池60による電力の供給は航空機1の始動時に用いられ、その他緊急時に用いられることもある。また、二次電池60は燃料電池10からの電力で充電が可能とされている。
【0025】
4.燃料電池の停止制御
4.1.停止制御のための構成
図4には燃料電池の停止制御に関する構成が、上記した燃料電池10が発電した電力を用いて駆動させる各構成の関係と合わせて表されている。
燃料電池10の停止制御のため、飛行体1は制御部70及びセンサ80を備えている。
【0026】
センサ80は図1に模式的に表したように例えば航空機1の脚部5に配置され、脚部5が受ける荷重を検知するセンサである。すなわち、航空機1が着陸すると脚部5は本体2等の荷重を受けるが、センサ80はこの荷重を検知する。センサ80は1つ設けられてもよいし複数設けられてもよい。脚部5が複数の場合にはそれぞれの脚部5に配置されてもよいし、いずれか1つの脚部5に配置されてもよい。
センサ80の具体的態様は特に限定されることはないが、荷重センサ、ひずみセンサ、バネ及びバネ伸縮の程度を検知するセンサとの組み合わせのセンサ(例えばバネと光学的センサとの組み合わせ)等を挙げることができる。
【0027】
制御部70は、後で説明するように、停止スイッチ90からの指令を受けてセンサ80からの情報に基づいて燃料電池10を停止するか否かの判断をして燃料電池10の停止制御を行う。従って、図4に表れているように、制御部70は停止スイッチ90、センサ80、エアコンプレッサ用モータ31b、及び、水素ポンプ用モータ23bに電気的に接続されている。
具体的にどのように停止制御を行うかは後で詳しく説明する。
【0028】
制御部70としては例えばコンピュータが挙げられる。図5に1つの例にかかる制御部70の構成を模式的に示した、制御部70は、演算子71、RAM72、記憶手段73、受信手段74、及び出力手段75を備えている。
【0029】
演算子71は、いわゆるCPU(中央演算子)により構成されており、記憶媒体として機能する記憶手段73等に記憶された各種プログラムを実行し、停止スイッチ90及びセンサ80からの情報に基づいた演算を行い、エアコンプレッサ用モータ31b、及び、水素ポンプ用モータ23bに指令を送信する。
【0030】
RAM72は、演算子の作業領域や一時的なデータの記憶手段として機能する構成部材である。RAMは、SRAM、DRAM、フラッシュメモリ等で構成することができ、公知のRAMと同様である。
【0031】
記憶手段73は、各種演算の根拠となるプログラムやデータが保存される記憶媒体として機能する部材である。また記憶手段には、プログラムの実行により得られた中間、最終の各種結果を保存することができてもよい。
【0032】
本形態では、この記憶手段73に記憶されたプログラムの1つとして、後で説明するように停止スイッチ90及びセンサ80からの情報に基づいた演算を行い、エアコンプレッサ用モータ31b、及び、水素ポンプ用モータ23bに指令を送信して燃料電池10による発電を停止する制御を行うためのプログラムが含まれる。
【0033】
受信手段74は、停止スイッチ90、センサ80からの信号を受信する機能を有する構成部材である。
【0034】
出力手段75は、得られた結果のうち外部に出力すべき情報を適切に外部に出力する機能を有する構成部材であり、本形態ではエアコンプレッサ用モータ31b、及び、水素ポンプ用モータ23bが電気的に接続されている。
【0035】
4.2.制御の流れ
次に、制御部70による燃料電池10の停止制御について説明する。図6図9に4つの形態例の流れを示した。
【0036】
4.2a.第1形態
図6からわかるように、第1形態にかかる制御部70による演算は過程S11~過程S13を含む。以下に各過程について説明する。
【0037】
過程S11では停止スイッチ90が操作されたことが検知される。
【0038】
過程S12ではセンサ80からの信号に基づいて脚部5にかかる荷重が閾値より大きいかを判断する。ここで閾値は航空機1が着陸した状態においてセンサ80が検知する荷重の大きさを予め得ておき、これを記憶手段73にデータベースとして記憶しておく。
過程S12でNoであった場合には航空機1は着陸していないと判断して燃料電池10への停止処理を行うことなく燃料電池10による発電を維持し、停止スイッチ90の操作は無効となる。
過程S12でYesであった場合には航空機1は着陸状態であると判断して過程S13に進む。
【0039】
過程S13では燃料電池10の停止処理を行う。燃料電池10の停止処理は、制御部70からエアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bに信号を送信し停止することによる行う。ただし、エアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bの実際の停止は、排水、ガスの設定(エアは封止、水素は圧力設定)、及び、主力弁の閉弁が行われた後に実行されることが好ましい。これにより、燃料電池の劣化防止や再始動の円滑(凍結防止)が図られる。
【0040】
このような制御部70による燃料電池10の停止制御によれば脚部5の荷重を判断することで航空機1が着陸していることを得てから燃料電池10の停止を行うので、飛行中に停止スイッチ90が誤って操作されても燃料電池10による発電が停止されることがない。
【0041】
4.2b.第2形態
図7からわかるように、第2形態にかかる制御部70による演算は過程S21~過程S23を含む。以下に各過程について説明する。
【0042】
過程S21では停止スイッチ90が操作されたことが検知される。
【0043】
過程S22では複数設置されたセンサ80からの信号に基づいて全てのセンサについて荷重が閾値より大きいかを判断する。ここで閾値は航空機1が着陸した状態においてセンサ80が検知する荷重の大きさを予め得ておき、これを記憶手段73にデータベースとして記憶しておく。
過程S22でNoであった場合には航空機1は着陸していないと判断して燃料電池10への停止処理を行うことなく燃料電池10による発電を維持し、停止スイッチの操作は無効となる。
過程S22でYesであった場合には航空機1は着陸状態であると判断して過程S23に進む。
【0044】
過程S23では燃料電池10の停止処理を行う。燃料電池10の停止処理は、制御部70からエアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bに信号を送信し停止することによる行う。ただし、エアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bの実際の停止は、排水、ガスの設定(エアは封止、水素は圧力設定)、及び、主力弁の閉弁が行われた後に実行されることが好ましい。これにより、燃料電池の劣化防止や再始動の円滑(凍結防止)が図られる。
【0045】
このような制御部70による燃料電池10の停止制御によれば脚部5の荷重を判断することで飛行体1が着陸していることを得てから燃料電池10の停止を行うので、飛行中に停止スイッチ90が誤って操作されても燃料電池10による発電が停止されることがない。
本形態では複数設けられたセンサ80の全てで閾値の荷重を超えることが求められるのでより確実に着陸の判断を行うことができる。
【0046】
4.2c.第3形態
図8からわかるように、第3形態にかかる制御部70による演算は過程S31~過程S36を含む。以下に各過程について説明する。
【0047】
過程S31では停止スイッチ90が操作されたことが検知される。
【0048】
過程S32ではセンサ80からの信号に基づいて荷重が閾値より大きいかを判断する。ここで閾値は航空機1が着陸した状態においてセンサ80が検知する荷重の大きさを予め得ておき、これを記憶手段73にデータベースとして記憶しておく。
過程S32でNoであった場合には航空機1は着陸していないと判断して燃料電池10への停止処理を行うことなく燃料電池10による発電を維持し、停止スイッチの操作は無効となる。
過程S32でYesであった場合には過程S33に進む。
【0049】
過程S33では予め決めておいた時間のカウントを行ない、当該時間の経過後に過程S34に進む。
【0050】
過程S34では、過程S33でカウントした時間経過後においてもなお過程S32で得た脚部への荷重を維持しているかを判断する。
過程S34でNoであった場合には脚部5への荷重は一時的であり着陸状態ではないと判断し、過程S36に進み、過程S33で行ったカウントをクリアして燃料電池10への停止処理を行うことなく燃料電池10による発電を維持し、停止スイッチの操作は無効となる。
過程S34でYesであった場合には過程S35に進む。
【0051】
過程S35では燃料電池10の停止処理を行う。燃料電池10の停止処理は、制御部70からエアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bに信号を送信し停止することによる行う。ただし、エアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bの実際の停止は、排水、ガスの設定(エアは封止、水素は圧力設定)、及び、主力弁の閉弁が行われた後に実行されることが好ましい。これにより、燃料電池の劣化防止や再始動の円滑(凍結防止)が図られる。
【0052】
このような制御部70による燃料電池の停止制御によれば脚部5の荷重を判断することで航空機1が着陸していることを得てから燃料電池の停止を行うので、飛行中に停止スイッチ90が誤って操作されても燃料電池による発電が停止されることがない。
本形態では脚部にかかる荷重が一度閾値を超えても、ある程度時間が経過しても当該荷重を維持してしないと燃料電池の停止処理をしないため、着陸していないにもかかわらず何らかの理由で一時的な脚部への荷重が検知された場合の燃料電池の停止を防止することができ、より確実に誤操作による燃料電池の発電停止を防ぐことができる。
【0053】
4.2d.第4形態
図9からわかるように、第4形態にかかる制御部70による演算は過程S41~過程S46を含む。以下に各過程について説明する。
【0054】
過程S41ではセンサ80による荷重検知が行われ信号が制御部70に送信される。この送信は所定の時間間隔で自動的に行われる。
【0055】
過程S42では過程S41で得たセンサ80からの信号に基づいて荷重が閾値より大きいかを判断する。ここで閾値は航空機1が着陸した状態においてセンサ80が検知する荷重の大きさを予め得ておき、これを記憶手段73にデータベースとして記憶しておく。
過程S42でNoであった場合には、航空機1は着陸していないと判断して過程S46に進み、停止スイッチ90の操作が禁止される。
過程S42でYesであった場合には、過程S43に進み、停止スイッチ90の操作が許容され、過程S44に進む。
【0056】
過程S44では、操縦者が停止スイッチ90を操作して停止スイッチ90が操作されたことが検知され、過程S45に進む。
【0057】
過程S45では燃料電池10の停止処理を行う。燃料電池10の停止処理は、制御部70からエアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bに信号を送信し停止することによる行う。ただし、エアコンプレッサ用モータ31b、及び/又は、水素ポンプ用モータ23bの実際の停止は、排水、ガスの設定(エアは封止、水素は圧力設定)、及び、主力弁の閉弁が行われた後に実行されることが好ましい。これにより、燃料電池の劣化防止や再始動の円滑(凍結防止)が図られる。
【0058】
このような制御部70による燃料電池10の停止制御によれば脚部5の荷重を判断することで航空機1が着陸していることを得てから停止スイッチ90の操作を許可する。従って、飛行中に停止スイッチ90の操作が禁止されるため誤って操作されることがなく、燃料電池による発電が停止されることがない。すなわち、本形態では航空機1の着陸が判断されない限り停止スイッチ90の操作自体が禁止されるというものである。
【符号の説明】
【0059】
1 航空機(飛行体)
2 本体
3 操縦部
4 プロペラ
5 脚部
10 燃料電池
20 水素供給システム
21 水素タンク
22 バルブ
23 水素ポンプ
30 空気供給システム
31 エアコンプレッサ
40 冷却水循環システム
41 冷却水ポンプ
42 冷却用熱交換器
43 ラジエタ
50 プロペラ用モータ
70 制御部
80 センサ
90 停止スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9