(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】移動体用制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B60L 15/20 20060101AFI20240806BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20240806BHJP
B60L 58/18 20190101ALI20240806BHJP
H02P 27/08 20060101ALI20240806BHJP
B60L 58/25 20190101ALN20240806BHJP
【FI】
B60L15/20 K
B60L9/18 J
B60L58/18
H02P27/08
B60L58/25
(21)【出願番号】P 2021082443
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】谷 敬弥
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-120566(JP,A)
【文献】国際公開第2020/079983(WO,A1)
【文献】特開2016-086502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/20
B60L 9/18
B60L 58/18
H02P 27/08
B60L 58/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1蓄電部(41)及び第2蓄電部(42)の直列接続
体に並列接続された上,下アームスイッチ(QUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL)を有
し、回転電機(20)が備える巻線(21U,21V,21W)に電気的に接続されたインバータ(30)と、
前記回転電機を構成するロータ(20a)の回転軸から動力が伝達されることにより回転する回転部材(22)と、
前記回転軸から前記回転部材までの動力伝達経路に設けられ、前記回転軸から前記回転部材へと伝達される伝達トルクを変更すべく制御される変更部(25,26,90)と
、
を備える移動体(10)であって、前記回転軸からの動力が前記変更部を介して前記回転部材に伝達されて前記回転部材が回転することにより移動する移動体に適用される移動体用制御装置(70)において、
前記巻線、前記インバータ
、並びに前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記巻線とを電気的に接続する接続経路(60,100)を介して
、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流が流れるように、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、
前記スイッチング制御の実施に伴い発生する前記伝達トルクが判定トルクを超えるか否かを判定するトルク判定部と、
前記スイッチング制御の実施中において、前記伝達トルクが
判定トルクを超えたと判定された場合、前記伝達トルクを前記判定トルク未満とするように前記変更部を制御する伝達制御部と、を備える移動体用制御装置。
【請求項2】
蓄電部(
40)に並列接続された上,下アームスイッチ(QUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL)を有
し、回転電機(20)が備える巻線(21U,21V,21W)に電気的に接続されたインバータ(30)と、
前記回転電機を構成するロータ(20a)の回転軸から動力が伝達されることにより回転する回転部材(22)と、
前記回転軸から前記回転部材までの動力伝達経路に設けられ、前記回転軸から前記回転部材へと伝達される伝達トルクを変更すべく制御される変更部(25,26,90)と
、
を備える移動体(10)であって、前記回転軸からの動力が前記変更部を介して前記回転部材に伝達されて前記回転部材が回転することにより移動する移動体に適用される移動体用制御装置(70)において、
前記蓄電部から前記インバータを介して
前記巻線へと電流が流れるように、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、
前記スイッチング制御の実施に伴い発生する前記伝達トルクが判定トルクを超えるか否かを判定するトルク判定部と、
前記スイッチング制御の実施中において、前記伝達トルクが
判定トルクを超えたと判定された場合、前記伝達トルクを前記判定トルク未満とするように前記変更部を制御する伝達制御部と、を備える移動体用制御装置。
【請求項3】
前記スイッチ制御部による前記スイッチング制御が行われることにより、前記巻線にq軸電流が流れる、請求項
1又は2に記載の移動体用制御装置。
【請求項4】
前記移動体は、前記回転部材としての駆動輪(22)を備える車両であり、
前記判定トルクは、前記駆動輪を回転させ始めないトルクである、請求項
1~3のいずれか一項に記載の移動体用制御装置。
【請求項5】
前記トルク判定部は、前記駆動輪と前記車両付近の路面との間の摩擦係数の情報を取得し、取得した情報に基づいて算出した前記摩擦係数が小さいほど、前記判定トルクを小さく設定する、請求項
4に記載の移動体用制御装置。
【請求項6】
前記トルク判定部は、前記車両付近の路面の勾配情報を取得し、取得した勾配情報に基づいて、前記判定トルクを設定する、請求項
4又は5に記載の移動体用制御装置。
【請求項7】
前記ロータの回転角を取得する角度取得部と、
前記角度取得部の取得値に基づいて、前記スイッチング制御の実施に伴い前記巻線に通電された場合に発生する前記伝達トルクを推定する推定部と、を備え、
前記トルク判定部は、前記スイッチング制御の実施に先立ち、前記推定部によって推定された前記伝達トルクが、前記判定トルクを超えたか否かを判定する、請求項
1~6のいずれか一項に記載の移動体用制御装置。
【請求項8】
第1蓄電部(41)及び第2蓄電部(42)の直列接続
体に並列接続された上,下アームスイッチ(QUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL)を有
し、回転電機(20)が備える巻線(21U,21V,21W)に電気的に接続されたインバータ(30)と、
前記回転電機を構成するロータ(20a)の回転軸から動力が伝達されることにより回転する回転部材(22)と、
前記回転軸から前記回転部材までの動力伝達経路に設けられ、前記回転軸から前記回転部材へと伝達される伝達トルクを変更すべく制御される変更部(25,26,90)と
、
を備える移動体(10)であって、前記回転軸からの動力が前記変更部を介して前記回転部材に伝達されて前記回転部材が回転することにより移動する移動体に適用される移動体用制御装置(70)において、
前記巻線、前記インバータ
、並びに前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記巻線とを電気的に接続する接続経路(60,100)を介して
、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流が流れるように、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、
前記スイッチング制御の実施中において前記回転部材が回転し始めたか否かを判定する回転判定部と、
前記回転部材が回転し始めたと判定された場合、前記伝達トルクを低下させるように前記変更部を制御する伝達制御部と、を備える移動体用制御装置。
【請求項9】
前記変更部は、前記回転部材に対する前記伝達トルクの伝達度合いを調整するクラッチ(25)を有し、
前記伝達制御部は、前記クラッチの前記伝達度合いを低下することにより、前記伝達トルクを低下させる請求項1~8のいずれか一項に記載の移動体用制御装置。
【請求項10】
前記変更部は、前記ロータの回転軸の回転速度と前記回転部材の回転速度との比を調整することにより、前記回転部材に対する前記伝達トルクの伝達度合いを調整する変速機(26,90)を有し、
前記伝達制御部は、前記比を小さくすることにより、前記伝達トルクを低下させる請求項1~9のいずれか一項に記載の移動体用制御装置。
【請求項11】
第1蓄電部(41)及び第2蓄電部(42)の直列接続体に並列接続された上,下アームスイッチ(QUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL)を有し、回転電機(20)が備える巻線(21U,21V,21W)に電気的に接続されたインバータ(30)と、
前記回転電機を構成するロータ(20a)の回転軸から動力が伝達されることにより回転する回転部材(22)と、
前記回転軸から前記回転部材までの動力伝達経路に設けられ、前記回転軸から前記回転部材へと伝達される伝達トルクを変更すべく制御される変更部(25,26,90)と、
を備える移動体(10)であって、前記回転軸からの動力が前記変更部を介して前記回転部材に伝達されて前記回転部材が回転することにより移動する移動体に適用されるプログラムにおいて、
コンピュータ(70)に、
前記巻線、前記インバータ、並びに前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と前記巻線とを電気的に接続する接続経路(60,100)を介して、前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流が流れるように、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御処理と、
前記スイッチング制御の実施に伴い発生する前記伝達トルクが判定トルクを超えるか否かを判定するトルク判定処理と、
前記スイッチング制御の実施中において、前記伝達トルクが判定トルクを超えたと判定された場合、前記伝達トルクを前記判定トルク未満とするように前記変更部を制御する伝達制御処理と、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体用制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、第1蓄電部及び第2蓄電部の直列接続体と、インバータと、回転電機とを備えるシステムが知られている。インバータは、上記直列接続体に並列接続された上,下アームスイッチを有している。回転電機は、インバータに電気的に接続された巻線を有している。
【0003】
上記システムは、第1蓄電部の負極側及び第2蓄電部の正極側と、巻線とを電気的に接続する接続経路を更に備えている。上,下アームスイッチのスイッチング制御が行われることにより、インバータ、巻線及び接続経路を介して第1蓄電部と第2蓄電部との間に電流を流すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記システムが車両等の移動体に搭載されることがある。移動体は、回転電機を構成するロータの回転軸から動力が伝達されることにより回転する回転部材を備えている。回転軸からの動力が伝達されて回転部材が回転することにより、移動体が移動する。
【0006】
ここで、上,下アームスイッチのスイッチング制御により、インバータ、巻線及び接続経路を介して第1蓄電部と第2蓄電部との間に電流を流すことに伴い、ロータが回転し得る。この場合、ロータから回転軸を介して回転部材に動力が伝達され、回転部材が回転しようとする。その結果、移動体のユーザに違和感を与える懸念がある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、上,下アームスイッチのスイッチング制御によってインバータ、巻線及び接続経路を介して第1蓄電部と第2蓄電部との間に電流を流すことに伴い、移動体の回転部材が回転する事態の発生を抑制できる移動体用制御装置、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1蓄電部及び第2蓄電部の直列接続体と、前記直列接続体に並列接続された上,下アームスイッチを有するインバータと、前記インバータに電気的に接続された巻線を有する回転電機と、前記第1蓄電部の負極側及び前記第2蓄電部の正極側と、前記巻線とを電気的に接続する接続経路と、前記回転電機を構成するロータの回転軸から動力が伝達されることにより回転する回転部材と、前記回転軸から前記回転部材までの動力伝達経路に設けられ、前記回転軸から前記回転部材へと伝達される伝達トルクを変更すべく制御される変更部と、を備える移動体であって、前記回転軸からの動力が前記変更部を介して前記回転部材に伝達されて前記回転部材が回転することにより移動する移動体に適用される移動体用制御装置において、前記巻線、前記インバータ及び前記接続経路を介して前記第1蓄電部及び前記第2蓄電部の間に電流が流れるように、前記上,下アームスイッチをオンオフするスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、前記スイッチング制御の実施中において、前記伝達トルクが低下するように前記変更部を制御する伝達制御部と、を備える。
【0009】
本発明では、スイッチング制御の実施中において、回転電機から回転体へと伝達される伝達トルクが低下するように変更部が制御される。これにより、スイッチング制御に伴ってロータが回転する場合であっても、移動体の回転部材が回転する事態の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】昇温制御の実施中に行われる伝達制御の一例を示すタイムチャート。
【
図4】ロータの機械角と回転軸のトルクとの対応関係を示す図。
【
図5】第2実施形態に係る昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図6】昇温制御の実施中に行われる伝達制御の一例を示すタイムチャート。
【
図7】第3実施形態に係る昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図8】昇温制御の実施中に行われる伝達制御の一例を示すタイムチャート。
【
図9】第4実施形態に係る昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
【
図10】第5実施形態に係る昇温制御の処理手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る移動体用制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、移動体用制御装置は車両に搭載されている。
【0012】
図1示すように、車両10は、回転電機20を備えている。回転電機20は、3相の同期機であり、ステータ巻線として星形結線されたU,V,W相巻線21U,21V,21Wを備えている。各相巻線21U,21V,21Wは、電気角で120°ずつずれて配置されている。回転電機20は、例えば永久磁石同期機である。
【0013】
回転電機20は、車載主機であり、そのロータ20aが駆動輪22と動力伝達可能とされている。詳しくは、ロータ20aの回転軸23と、駆動輪22の車軸24とは動力伝達機構を介して機械的に連結されている。回転電機20が電動機として機能することにより発生するトルクが、回転軸23から動力伝達機構を介して車軸24に伝達され、車軸24に固定されている駆動輪22を回転駆動させる。なお、本実施形態において、駆動輪22が「回転部材」に相当する。
【0014】
車両10は、動力伝達機構として、クラッチ25及び変速機26を備えている。クラッチ25の入力軸が回転軸23に連結され、クラッチ25の出力軸が変速機26の入力軸に連結され、変速機26の出力軸が図示しないディファレンシャルギア等を介して車軸24に連結されている。クラッチ25は、油圧駆動式の湿式クラッチ等であり、クラッチ25の入力軸とクラッチ25の出力軸との間の連結及び切り離しを切り替えるとともに、回転軸23から駆動輪22へと伝達されるトルクの伝達度合いを調整する機能を有する。変速機26は、変速機26の入力軸の回転速度と変速機26の出力軸の回転速度との比である変速比を調整する機能を有する。回転軸23のトルクは、クラッチ25、変速機26及び車軸24を介して駆動輪22に伝達される。なお、変速機26は、例えば、CVT(無段変速機)であってもよいし、有段変速機であってもよい。なお、本実施形態において、クラッチ25及び変速機26が「変更部」に相当する。
【0015】
車両10は、インバータ30を備えている。インバータ30は、上アームスイッチQUH,QVH,QWHと下アームスイッチQUL,QVL,QWLとの直列接続体を3相分備えている。本実施形態では、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子が用いられており、具体的にはIGBTが用いられている。このため、各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLの高電位側端子はコレクタであり、低電位側端子はエミッタである。各スイッチQUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWLには、フリーホイールダイオードとしての各ダイオードDUH,DVH,DWH,DUL,DVL,DWLが逆並列に接続されている。
【0016】
U相上アームスイッチQUHのエミッタと、U相下アームスイッチQULのコレクタとには、バスバー等のU相導電部材32Uを介して、U相巻線21Uの第1端が接続されている。V相上アームスイッチQVHのエミッタと、V相下アームスイッチQVLのコレクタとには、バスバー等のV相導電部材32Vを介して、V相巻線21Vの第1端が接続されている。W相上アームスイッチQWHのエミッタと、W相下アームスイッチQWLのコレクタとには、バスバー等のW相導電部材32Wを介して、W相巻線21Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線21U,21V,21Wの第2端同士は、中性点Oで接続されている。なお、本実施形態において、各相巻線21U,21V,21Wは、ターン数が同じに設定されている。
【0017】
各上アームスイッチQUH,QVH,QWHのコレクタと、組電池40の正極端子とは、バスバー等の正極側母線Lpにより接続されている。各下アームスイッチQUL,QVL,QWLのエミッタと、組電池40の負極端子とは、バスバー等の負極側母線Lnにより接続されている。
【0018】
車両10は、正極側母線Lpと負極側母線Lnとを接続するコンデンサ31を備えている。なお、コンデンサ31は、インバータ30に内蔵されていてもよいし、インバータ30の外部に設けられていてもよい。
【0019】
組電池40は、単電池としての電池セルの直列接続体として構成されており、端子電圧が例えば数百Vとなるものである。本実施形態では、組電池40を構成する各電池セルの端子電圧(例えば定格電圧)が互いに同じに設定されている。電池セルとしては、例えば、リチウムイオン電池等の2次電池を用いることができる。
【0020】
本実施形態では、組電池40を構成する電池セルのうち、高電位側の複数の電池セルの直列接続体が第1蓄電池41を構成し、低電位側の複数の電池セルの直列接続体が第2蓄電池42を構成している。つまり、組電池40が2つのブロックに分けられている。本実施形態では、第1蓄電池41を構成する電池セル数と、第2蓄電池42を構成する電池セル数とが同じである。このため、第1蓄電池41の端子電圧(例えば定格電圧)と、第2蓄電池42の端子電圧(例えば定格電圧)とが同じである。なお、本実施形態において、第1蓄電池41が「第1蓄電部」に相当し、第2蓄電池42が「第2蓄電部」に相当する。
【0021】
組電池40において、第1蓄電池41の負極端子と第2蓄電池42の正極端子とには中間端子Bが接続されている。
【0022】
車両10は、監視ユニット50を備えている。監視ユニット50は、組電池40を構成する各電池セルの端子電圧、SOC、SOH及び温度等を監視する。
【0023】
車両10は、接続経路60と、接続スイッチ61とを備えている。接続経路60は、組電池40の中間端子Bと中性点Oとを電気的に接続する。接続スイッチ61は、接続経路60上に設けられている。本実施形態では、接続スイッチ61としてリレーが用いられている。接続スイッチ61がオンされることにより、中間端子Bと中性点Oとが電気的に接続される。一方、接続スイッチ61がオフ状態とされることにより、中間端子Bと中性点Oとの間が電気的に遮断される。
【0024】
車両10は、接続経路60に流れる電流を検出する電流センサ62を備えている。電流センサ62の検出値IMrは、車両10が備える制御装置70に入力される。
【0025】
車両10は、トルクセンサ63を備えている。本実施形態において、トルクセンサ63は、回転軸23及び車軸24の少なくとも一方に設けられており、回転軸23及び車軸24それぞれのトルクを検出する。トルクセンサ63の検出値は、制御装置70に入力される。
【0026】
車両10は、角度検出部64を備えている。角度検出部64は、例えばレゾルバである。角度検出部64は、ロータ20aの回転角を検出する。角度検出部64の検出値は、制御装置70に入力される。
【0027】
車両10は、状況認識装置65を備えている。状況認識装置65は、車両10の状態を認識する。状況認識装置65は、例えば、車速センサ、回転速度センサ及びナビゲーション装置の少なくとも1つである。車速センサは、車両10の走行速度を検出する。回転速度センサは、回転軸23の回転速度や車軸24の回転速度を検出する。ナビゲーション装置は、GPS衛星から送信された信号に基づいて、車両10の現在位置及び現在時刻の情報を検出する。状況認識装置65で検出された情報は、制御装置70に入力される。
【0028】
車両10は、周辺認識装置66を備えている。周辺認識装置66は、車両10の周囲の路面状況を認識する。周辺認識装置66は、例えば、温度センサ、雨検出センサ、雪検出センサ及びカメラ装置である。温度センサは、車両10の周囲の外気温や路面温度を検出する。雨検出センサは降雨を検出し、雪検出センサは降雪を検出する。カメラ装置は、車両10の走行路面を含む周辺環境を撮影するものであり、単眼カメラやステレオカメラである。周辺認識装置66で検出された周辺情報は、制御装置70に入力される。
【0029】
車両10は、勾配検出装置67を備えている。勾配検出装置67は、車両10付近の路面の勾配情報を検出する。勾配検出装置67は、例えば、ナビゲーション装置及び傾斜角センサである。ナビゲーション装置は、地図情報及びGPS衛星から送信される測位情報に基づいて、車両10付近の路面勾配を検出する。傾斜角センサは、車両10付近の路面勾配を検出する。勾配検出装置67で検出された勾配情報は、制御装置70に入力される。
【0030】
制御装置70は、マイコンを主体として構成され、回転電機20の制御量をその指令値にフィードバック制御すべく、インバータ30を構成する各スイッチのスイッチング制御を行う。制御量は、例えばトルクである。
【0031】
制御装置70は、接続スイッチ61をオンオフ制御する。また、制御装置70は、監視ユニット50や、車両10に設けられた上位制御装置80と通信可能とされている。上位制御装置80は、車両10の制御を統括する。
【0032】
ちなみに、制御装置70は、自身が備える記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種制御機能を実現する。各種機能は、ハードウェアである電子回路によって実現されてもよいし、ハードウェア及びソフトウェアの双方によって実現されてもよい。
【0033】
制御装置70は、組電池40を昇温するべく、各相巻線21U,21V,21W、インバータ30及び接続経路60を介して、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の間に電流が流れるように、各スイッチQUH~QWLをオンオフする昇温制御を行う。制御装置70は、例えば、上位制御装置80から組電池40の昇温指示があったと判定した場合、又は監視ユニット50により検出された組電池40の温度が閾値温度未満であると判定した場合、昇温要求があると判定する。制御装置70は、昇温要求があると判定した場合、接続スイッチ61をオンする。これにより、中間端子Bと中性点Oとが接続経路60を介して電気的に接続される。
【0034】
制御装置70は、接続スイッチ61をオンした後、インバータ30の各スイッチQUH~QWLをオンオフさせる昇温PWM制御を行う。制御装置70は、昇温PWM制御として、接続経路60に流す電流の指令値を設定する。ここで、制御装置70は、指令値として交流信号(例えば正弦波)を設定すればよい。
【0035】
制御装置70は、昇温PWM制御として、電流センサ62の検出値IMrと、接続経路60に流れる電流の指令値との電流偏差を0にするフィードバック制御を行う。ここで、制御装置70は、フィードバック制御として比例積分制御を行えばよい。フィードバック制御の操作量は、各スイッチQUH~QWLそれぞれのデューティ比である。デューティ比は、各スイッチQUH~QWLの1スイッチング周期Tswにおけるオン時間Tonの比率(Ton/Tsw)を定める値である。
【0036】
昇温制御は、ロータ20aの回転停止状態において行われる。言い換えると、昇温制御は、各相巻線21U~21Wに通電がなされていない状態で行われ、例えば車両10の停車中に行われる。
【0037】
昇温PWM制御により、各相巻線21U,21V,21W、インバータ30及び接続経路60を介して、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の間に電流が流れることに伴い、駆動輪22が回転し得る。詳しくは、昇温制御により各相巻線21U,21V,21Wに電流が流れる場合、ロータ20aの電気角に応じたq軸電流が流れる。これにより、ロータ20aのトルクが発生する。ロータ20aで発生したトルクが回転軸23、動力伝達機構及び車軸24を介して駆動輪22に伝達され、駆動輪22が回転しようとする。その結果、車両10のユーザに違和感を与える懸念がある。
【0038】
ここで、ロータ20aが回転しないように、昇温制御における各スイッチQUH~QWLのスイッチング制御を行うことが考えられる。しかし、この場合、指令値の振幅を小さめに設定しなければならないこと等に起因して、昇温制御による組電池40の昇温効果が小さくなってしまうといった制約がある。
【0039】
そこで、本実施形態では、制御装置70は、昇温制御の実施中において、ロータ20aから車軸24へと伝達されるトルクが低下するように動力伝達機構を制御する伝達制御を実施する。
【0040】
制御装置70は、車軸トルクTqrが判定トルクTqcを超えたか否かを判定する。ここで、判定トルクTqcは、駆動輪22を回転させ始めないトルクに設定されている。詳しくは、判定トルクTqcは、駆動輪22を回転させ始めないトルクとして想定される範囲の上限値に設定されている。判定トルクTqcは、例えば実験や計算により適合されればよい。
【0041】
制御装置70は、トルクセンサ63の検出値を取得する。トルクセンサ63が車軸24のトルクを検出する場合、トルクセンサ63の検出値が判定トルクTqcと比較される車軸トルクTqrになる。また、トルクセンサ63が回転軸23のトルクを検出する場合、トルクセンサ63の検出値、クラッチ25の伝達度合い及び変速機26の変速比に基づいて算出したトルクが、判定トルクTqcと比較される車軸トルクTqrになる。
【0042】
制御装置70は、車軸トルクTqrが判定トルクTqcを超えたと判定した場合、伝達制御を実施する。
【0043】
制御装置70は、伝達制御として、変速機26を制御することにより、車軸24のトルクを低下する。具体的には、制御装置70は、伝達制御として、変速機26の変速比を小さくする。これにより、変速機26の入力軸及び出力軸の間のトルクの伝達度合いが低下し、車軸24のトルクが低下する。
【0044】
また、制御装置70は、伝達制御として、変速機26を制御することに代えて、クラッチ25を制御することにより、車軸24のトルクを低下する。具体的には、制御装置70は、伝達制御として、クラッチ25の入力軸及び出力軸が互いに離れる方向の移動量であるクラッチストロークを大きくする。これにより、クラッチ25の入力軸及び出力軸の間のトルクの伝達度合いが低下し、車軸24のトルクが低下する。なお、制御装置70は、伝達制御としてクラッチ25を制御する場合、クラッチ25の入力軸及び出力軸の間のトルクの伝達度合いが0となる遮断状態まで、クラッチストロークを大きくしてもよい。
【0045】
なお、制御装置70は、伝達制御として、クラッチ25及び変速機26のうち一方を制御することに代えて、クラッチ25及び変速機26の両方を制御することにより、車軸24のトルクを低下させてもよい。
【0046】
図2に、制御装置70が実施する昇温制御の処理手順を示す。本実施形態において、制御装置70が「スイッチ制御部」に相当する。
【0047】
ステップS10では、昇温要求があるか否かを判定する。ステップS10において否定判定した場合、本処理を終了する。一方、ステップS10において肯定判定した場合、ステップS11に進む。
【0048】
ステップS11では、接続スイッチ61をオンするとともに、各スイッチQUH~QWLをオンオフさせる昇温PWM制御を実施する。これにより、各相巻線21U,21V,21W、インバータ30及び接続経路60を介して、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の間に電流が流れる。
【0049】
ステップS12では、トルクセンサ63の検出値に基づいて、判定トルクTqcと比較する車軸トルクTqrを取得する。
【0050】
ステップS13では、車軸トルクTqrが判定トルクTqcを超えたか否かを判定する。ステップS13において否定判定した場合、本処理を終了する。一方、ステップS13において肯定判定した場合、ステップS14に進む。本実施形態において、ステップS13が「トルク判定部」に相当する。
【0051】
ステップS14では、上述した伝達制御を実施する。これにより、車軸トルクTqrを判定トルクTqc未満とする。本実施形態において、ステップS14が「伝達制御部」に相当する。
【0052】
図3に、昇温制御の実施中に伝達制御が行われる場合の一例を示す。
図3は、車軸トルクTqrの推移を示す図である。時刻t1において、昇温PWM制御が実施される。これにより、各相巻線21U,21V,21Wに電流が流れることに伴い、ロータ20aのトルクが発生する。ロータ20aで発生したトルクが、回転軸23、クラッチ25及び変速機26を介して駆動輪22へと伝達される。このため、車軸トルクTqrが漸増する。時刻t2において、車軸トルクTqrが判定トルクTqcを超える。そのため、ステップS13の処理で肯定判定がなされ、ステップS14の伝達制御が実施される。これにより、車軸トルクTqrが判定トルクTqc未満まで低下する。
【0053】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0054】
昇温制御の実施中において、車軸24のトルクが低下するように伝達制御が実施される。これにより、昇温PWM制御の実施に伴ってロータ20aが回転する場合であっても、駆動輪22が回転する事態の発生を抑制することができる。
【0055】
伝達制御において、各相巻線21U~21Wに流れる電流を制限しない。これにより、駆動輪22が回転する事態の発生を抑制しつつ、昇温制御の昇温効果を確保できる。
【0056】
車軸トルクTqrが判定トルクTqcを超えたと判定した場合に伝達制御が実施される。これにより、トルク低下が必要な場合に車軸24のトルクを的確に低下させることができる。
【0057】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0058】
本実施形態では、制御装置70は、伝達制御の実施条件として、トルクセンサ63の検出値に基づいて取得した車軸トルクTqrが判定トルクTqcを超えたとの条件に代えて、車軸24のトルクの推定値Tqeが判定トルクTqcを超えたとの条件を用いる。
【0059】
制御装置70は、角度検出部64の検出値に基づいて、回転停止状態におけるロータ20aの回転角を取得する。本実施形態では、制御装置70は、ロータ20aの機械角を取得する。
【0060】
制御装置70は、各相巻線21U~21Wのうちいずれかの巻線21に電流が流れる場合に発生する回転軸23のトルクと、取得したロータ20aの機械角とが予め対応付けられた対応情報を用いて、回転軸23のトルクを算出する。具体的には、
図4に示すように、回転停止状態におけるロータ20aの機械角と、巻線21に電流が流れた場合に発生する回転軸23のトルクとの対応関係に基づいて、回転軸23のトルクを算出する。
図4において、実線は巻線21の第1端から中性点O側の第2端へと電流が流れる場合に発生する回転軸23のトルクを示し、破線は巻線21の第2端から第1端へと電流が流れる場合に発生する回転軸23のトルクを示す。
【0061】
巻線21の第1端から第2端へと電流が流れる場合、ロータ20aの機械角に対応して、回転軸23のトルクが正側に発生する。この場合、ロータ20aの機械角には、正側の回転軸23のトルクが比較的小さい範囲と、正側の回転軸23のトルクが顕著に増大する範囲とが存在する。一方、巻線21の第2端から第1端へと電流が流れる場合、ロータ20aの機械角に対応して、回転軸23のトルクが負側に発生する。この場合、ロータ20aの機械角には、負側の回転軸23のトルクが比較的小さい範囲と、負側の回転軸23のトルクが顕著に増大する範囲とが存在する。
【0062】
制御装置70は、上述した対応情報に基づいて算出した回転軸23のトルク、クラッチ25の伝達度合い及び変速機26の変速比に基づいて、巻線21に電流が流れる場合に発生する車軸24のトルクの推定値Tqeを算出する。
【0063】
制御装置70は、昇温PWM制御の実施に先立ち、車軸24のトルクの推定値Tqeが判定トルクTqcを超えたか否かを判定する。制御装置70は、推定値Tqeが判定トルクTqcを超えたと判定した場合、伝達制御を実施する。
【0064】
図5に、制御装置70が実施する昇温制御の処理手順を示す。
【0065】
ステップS10において、肯定判定した場合、ステップS20に進む。ステップS20では、角度検出部64の検出値に基づいてロータ20aの機械角を取得する。本実施形態において、ステップS20が「角度取得部」に相当する。
【0066】
ステップS21では、取得されたロータ20aの機械角に基づいて、車軸24のトルクの推定値Tqeを算出する。本実施形態において、ステップS21が「推定部」に相当する。
【0067】
ステップS22では、推定値Tqeが判定トルクTqcを超えたか否かを判定する。ステップS22において肯定判定した場合、ステップS23に進む。一方、ステップS22において否定判定した場合、ステップS24に進む。本実施形態において、ステップS22が「トルク判定部」に相当する。
【0068】
ステップS23では、伝達制御を実施する。これにより、昇温PWM制御が実施されるのに先立ち、車軸24に発生するトルクを判定トルクTqc未満に制限する。その後、ステップS24に進む。本実施形態において、ステップS23が「伝達制御部」に相当する。
【0069】
ステップS24では、接続スイッチ61をオンするとともに、昇温PWM制御を実施する。
【0070】
図6に、昇温制御の実施中に伝達制御が行われる場合の一例を示す。
図6は、車軸24のトルクの推移を示す図である。時刻t1において、ステップS22の処理で肯定判定がなされることによりステップS23の伝達制御が行われた後、ステップS24の昇温PWM制御が行われる。つまり、昇温PWM制御の実施に先立ち、伝達制御が実施される。この場合、クラッチ25のクラッチストロークを大きくする制御、及び変速機26のギア比を小さく制御のうち少なくとも一方の制御が実施される。これにより、昇温PWM制御が実施される場合の車軸24のトルクの発生が判定トルクTqc未満に制限される。その結果、時刻t1以降において、車軸24のトルクが判定トルクTqcを超えることを抑制することができる。
【0071】
本実施形態によれば、昇温PWM制御が実施されるのに先立ち、車軸24のトルクの推定値Tqeが、判定トルクTqcを超えたか否かが判定される。そのため、駆動輪22が回転し始めるよりも前に、駆動輪22が回転することを予測し、事前に伝達制御を実施することができる。その結果、駆動輪22が回転する事態の発生を事前に抑制することができる。
【0072】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0073】
本実施形態では、制御装置70は、伝達制御の実施条件として、トルクセンサ63の車軸トルクTqrが判定トルクTqcを超えたとの条件に代えて、駆動輪22が回転し始めたとの条件を用いる。
【0074】
制御装置70は、状況認識装置65で検出された情報を取得する。制御装置70は、取得された情報に基づいて、駆動輪22が回転し始めたか否かを判定する。例えば、制御装置70は、以下のように判定すればよい。
【0075】
制御装置70は、車速センサにより検出された走行速度が走行速度閾値以上の場合、駆動輪22が回転し始めたと判定する。ここで、走行速度閾値は、例えば0又は略0である。
【0076】
制御装置70は、ナビゲーション装置により検出された現在位置の単位時間あたりの変化量が所定量以上の場合、駆動輪22が回転し始めたと判定する。ここで、所定量は、0又は略0である。
【0077】
制御装置70は、回転速度センサにより検出された回転速度が回転速度閾値以上の場合、駆動輪22が回転し始めたと判定する。ここで、回転速度閾値は、例えば0又は略0である。
【0078】
図7に、制御装置70が実施する昇温制御の処理手順を示す。
【0079】
ステップS10において、肯定判定した場合、ステップS30に進む。ステップS30では、接続スイッチ61をオンするとともに、昇温PWM制御を実施する。
【0080】
ステップS31では、状況認識装置65の情報を取得する。ステップS32では、取得された状況認識装置65の検出値に基づいて、駆動輪22が回転し始めたか否かを判定する。本実施形態において、ステップS31及びステップS32が「回転判定部」に相当する。
【0081】
ステップS32において肯定判定した場合、ステップS33に進む。ステップS33では、伝達制御を実施する。これにより、昇温PWM制御が実施された場合において、車軸24に発生するトルクを判定トルクTqc未満とする。ステップS32において否定判定した場合、本処理を終了する。なお、本実施形態において、ステップS33が「伝達制御部」に相当する。
【0082】
図8に、昇温制御の実施中に伝達制御が行われる場合の一例を示す。
図8は、車軸24のトルクの推移を示す図である。時刻t1において、昇温PWM制御が実施されることに伴い、車軸24のトルクが漸増する。時刻t2において、車軸24のトルクが判定トルクTqcを超え、駆動輪22が回転し始める。そのため、ステップS32の処理で肯定判定され、伝達制御が実施される。これにより、車軸24のトルクが判定トルクTqc未満とされる。
【0083】
本実施形態によれば、駆動輪22が実際に回転していることを判定してから車軸24のトルクを低下させるため、トルク低下が必要な場合に車軸24のトルクを的確に低下させることができる。
【0084】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、周辺認識装置66の情報に基づいて、判定トルクTqcが設定される。
【0085】
制御装置70は、周辺認識装置66の周辺情報を取得する。制御装置70は、取得された周辺情報に基づいて、駆動輪22と路面との間の摩擦係数を算出する。例えば、制御装置70は、温度センサの検出値に基づいて路面の凍結を認識したり、雨検出センサ及び雪検出センサの検出情報により降雨や降雪を認識したり、カメラ装置の撮影画像により路上の落ち葉等を認識した場合、摩擦係数を小さく算出する。制御装置70は、算出された摩擦係数が小さいほど、判定トルクTqcを小さく設定する。
【0086】
図9に、制御装置70が実施する昇温制御の処理手順を示す。
【0087】
ステップS10の後、ステップS40に進み、周辺認識装置66の周辺情報を取得する。ステップS41では、取得された周辺情報に基づいて、駆動輪22と路面との間の摩擦係数を算出する。算出した摩擦係数が小さいほど、判定トルクTqcを小さく設定する。その後、ステップS11に進む。本実施形態において、ステップS13、ステップS40及びステップS41が「トルク判定部」に相当する。
【0088】
本実施形態によれば、摩擦係数に応じて適正な判定トルクTqcを設定することができる。
【0089】
<第5実施形態>
以下、第5実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、周辺認識装置66の情報に基づいて、判定トルクTqcが設定される。
【0090】
制御装置70は、勾配検出装置67の勾配情報を取得する。制御装置70は、取得された勾配情報及び車両10の進行方向に基づいて、判定トルクTqcを設定する。詳しくは、制御装置70は、制御装置70は、路面の勾配が車両10の進行方向に対して上り勾配であると判定する場合、車両10付近の路面勾配が小さいほど、判定トルクTqcを小さく設定する。一方、制御装置70は、路面の勾配が車両10の進行方向に対して下り勾配であると判定する場合、路面の勾配が車両10の進行方向に対して上り勾配であると判定する場合よりも、判定トルクTqcを小さく設定する。この場合、制御装置70は、車両10付近の路面勾配が大きいほど、判定トルクTqcを小さく設定する。ここで、車両10の進行方向とは、巻線21に電流が流れることにより駆動輪22が回転する方向である。
【0091】
図10に、制御装置70が実施する昇温制御の処理手順を示す。
【0092】
ステップS10の後、ステップS50に進み、勾配検出装置67の勾配情報を取得する。ステップS51では、取得された勾配情報に基づいて、判定トルクTqcを設定する。その後、ステップS11に進む。本実施形態において、ステップS13、ステップS50及びステップS51が「トルク判定部」に相当する。
【0093】
本実施形態によれば、勾配情報に応じて適正な判定トルクTqcを設定することができる。
【0094】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0095】
・車両10は、動力伝達機構として、クラッチ25及び変速機26に代えて、トルクコンバータ90を備えてもよい。
図11に示すように、トルクコンバータ90は、回転軸23側に連結された入力羽根車91と、車軸24側に連結された出力羽根車92と、入力羽根車91及び出力羽根車92を収容する筐体93とを備えている。筐体93内には、粘性流体(例えば、作動油)が貯留されている。回転軸23からのトルクは、トルクコンバータ90を介して車軸24に伝達される。
【0096】
トルクコンバータ90は、粘性流体の温度を調節可能に構成される。例えば、トルクコンバータ90には、粘性流体を加温するヒータが設けられている。制御装置70によりヒータの出力が調節され、粘性流体の温度が調節可能とされる。トルクコンバータ90は、入力羽根車91及び出力羽根車92のうち少なくとも一方の羽根の角度を調節可能に構成される。例えば、トルクコンバータ90には、羽根の角度を変更するアクチュエータが設けられている。制御装置70によりアクチュエータが制御され、入力羽根車91及び出力羽根車92のうち少なくとも一方の羽根の角度が調節可能とされる。トルクコンバータ90において、粘性流体の温度や羽根の角度が調節されることにより、回転軸23の回転速度と車軸24の回転速度との比である変速比が調節される。
【0097】
制御装置70は、伝達制御として、トルクコンバータ90を制御することにより、車軸24のトルクを低下する。具体的には、例えば、制御装置70は、伝達制御として、ヒータに供給する電力を大きくする。これにより、粘性流体の温度を高くして、粘性流体の粘性を低下させる。その結果、車軸24のトルクが低下する。また、例えば、制御装置70は、伝達制御として、羽根の角度を調整して車軸24のトルクを低下すべく、アクチュエータを制御する。これにより、車軸24のトルクが低下する。なお、トルクコンバータ90が「変更部」に相当する。
【0098】
・インバータ30を構成するスイッチとしては、IGBTに限らず、例えば、ボディダイオードを内蔵するNチャネルMOSFETであってもよい。
【0099】
・接続経路としては、組電池40の中間端子Bと中性点Oとを電気的に接続するものに限らず、組電池40の中間端子Bと、各相巻線21U~21Wのうち少なくとも1つの巻線21の第1端とを電気的に接続するものであってもよい。例えば、
図12に示すように、車両10は、接続経路100と、接続スイッチ101と、電流センサ102とを備えている。接続経路100は、組電池40の中間端子BとU相巻線21Uの第1端とを電気的に接続する。接続スイッチ101は、接続経路100上に設けられている。電流センサ102は、接続経路100に流れる電流を検出する。電流センサ102の検出値は、制御装置70に入力される。
【0100】
制御装置70は、昇温要求があると判定した場合、接続スイッチ101をオンする。制御装置70は、接続スイッチ101をオンした後、V,W相上,下アームスイッチQVH,QVL,QWH,QWLをオンオフさせる昇温PWM制御を実施する。これにより、各相巻線21U~21W、インバータ30及び接続経路100を介して、第1蓄電池41及び第2蓄電池42の間に電流が流れる。
【0101】
・第1蓄電池41及び第2蓄電池42の昇温を目的として、第1蓄電池41と第2蓄電池42との間に電流が流されたがこれに限らない。例えば、制御装置70は、第1蓄電池41及び第2蓄電池42それぞれの端子電圧の均等化を目的として、第1蓄電池41と第2蓄電池42との間に電流が流れるように、各スイッチQUH~QWLをオンオフする均等化制御を行ってもよい。
【0102】
制御装置70は、均等化制御を開始すると、監視ユニット50の検出値である第1,第2蓄電池41,42それぞれの端子電圧を取得する。制御装置70は、取得した第1蓄電池41の端子電圧と第2蓄電池42の端子電圧との差の絶対値が所定値を超えていると判定した場合、均等化要求があると判定する。制御装置70は、均等化要求が有ると判定した場合、接続スイッチ61をオンする。
【0103】
制御装置70は、接続スイッチ61をオンした後、インバータ30の各スイッチQUH~QWLをオンオフさせる均等化PWM制御を行う。制御装置70は、均等化PWM制御として、接続経路60に流す電流の指令値を設定する。ここで、制御装置70は、指令値として直流信号を設定すればよい。
【0104】
制御装置70は、均等化PWM制御として、電流センサ62の検出値IMrと、指令値との電流偏差を0にするフィードバック制御を行う。
【0105】
また、例えば、制御装置70は、端子電圧の均等化を目的とせずに、第1蓄電池41及び第2蓄電池42のうち一方から他方へとエネルギを供給することを目的としてもよい。この場合、制御装置70は、第1蓄電池41と第2蓄電池42との間に電流が流れるように、各スイッチQUH~QWLをオンオフするエネルギ調整制御を行えばよい。
【0106】
制御装置70は、エネルギ調整制御を開始すると、監視ユニット50の検出値である第1,第2蓄電池41,42それぞれの端子電圧を取得する。制御装置70は、取得した第1蓄電池41の端子電圧又は第2蓄電池42の端子電圧が所定値未満であると判定した場合、端子電圧が所定値未満である蓄電池の充電要求があると判定する。制御装置70は、充電要求が有ると判定した場合、接続スイッチ61をオンする。
【0107】
制御装置70は、接続スイッチ61をオンした後、インバータ30の各スイッチQUH~QWLをオンオフさせる充電PWM制御を行う。制御装置70は、接続経路60に流れる電流の指令値を設定する。ここで、制御装置70は、指令値として直流信号を設定すればよい。
【0108】
制御装置70は、エネルギ調整制御として、電流センサ62の検出値IMrと、指令値との電流偏差を0にするフィードバック制御を行う。
【0109】
・第1蓄電池41及び第2蓄電池42が組電池を構成していなくてもよい。
【0110】
・車両10は、第1蓄電池41に代えて第1キャパシタを備えていてもよい。また、車両10は、第2蓄電池42に代えて第2キャパシタを備えていてもよい。なお、第1キャパシタが「第1蓄電部」に相当し、第2キャパシタが「第2蓄電部」に相当する。
【0111】
・接続スイッチ61としては、リレーに限らない。接続スイッチ61として、例えば、ソース同士が接続された一対のNチャネルMOSFETや、IGBTが用いられてもよい。
【0112】
・接続スイッチ61は必須ではない。この場合、中間端子Bと中性点Oが常時電気的に接続されることとなる。
【0113】
・回転電機20及びインバータ30としては、3相のものに限らず、2相のもの、又は4相以上のものであってもよい。
【0114】
・制御装置70が搭載される移動体としては、車両10に限らず、例えば、航空機又は船舶であってもよい。例えば、移動体が航空機の場合、回転電機20は航空機の飛行動力源となり、回転電機20の駆動に伴い回転部材としてのプロペラが回転する。また、例えば、移動体が船舶の場合、回転電機20は船舶の航行動力源となり、回転電機20の駆動に伴い回転部材としてのスクリューが回転する。
【符号の説明】
【0115】
10…車両、20…回転電機、20a…ロータ、21U,21V,21W…U,V,W相巻線、22…駆動輪、23…回転軸、25…クラッチ、26…変速機、30…インバータ,41,42…第1,第2蓄電池、60…接続経路、70…制御装置、QUH,QVH,QWH,QUL,QVL,QWL…U,V,W相上,下アームスイッチ。