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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】自動配達車両
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20240806BHJP
【FI】
G05D1/43
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021088582
(22)【出願日】2021-05-26
(65)【公開番号】P2022181562
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一久
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-069852(JP,A)
【文献】特開2019-008587(JP,A)
【文献】特開2018-155824(JP,A)
【文献】特開2004-326169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00 - 1/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転により配達目的地に荷物を配達することができる子機車両と、
自動運転により前記子機車両を収容して運搬することができる親機車両と、
を含み、
前記親機車両に備えられたAIシステムを用いて前記子機車両の自動運転を制御し、
前記親機車両に備えられたサイネージに、前記親機車両から降ろされた前記子機車両が、前記配達目的地に到着するまでの時間を表示する、
自動配達車両。
【請求項2】
前記子機車両の自動運転の制御において、前記親機車両に備えられたAIシステムが、前記親機車両に備えられたセンサー、前記子機車両に備えられたセンサー、及び前記子機車両に備えられた位置検出部のうちの少なくとも1つが取得したデータを用いる、
請求項1に記載の自動配達車両。
【請求項3】
前記子機車両に備えられたAIシステムを用いて前記子機車両の自動運転を制御することができ、
前記子機車両の自動運転の制御を、前記親機車両に備えられたAIシステムを用いるものから前記子機車両に備えられたAIシステムを用いるものに切り替えることができる、
請求項1又は2に記載の自動配達車両。
【請求項4】
前記子機車両に備えられたAIシステムを用いた前記子機車両の自動運転が正常に行われなくなったときに、前記子機車両の自動運転の制御を前記子機車両に備えられたAIシステムを用いた制御から前記親機車両に備えられたAIシステムを用いる制御に切り替える、
請求項3に記載の自動配達車両。
【請求項5】
前記子機車両の自動運転を制御するAIシステムが、前記親機車両のみに備えられた、
請求項1又は2に記載の自動配達車両。
【請求項6】
前記子機車両は、前記荷物を収容する収容部内に、前記荷物を殺菌する紫外線を放出する光源を備える、
請求項1又は2に記載の自動配達車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動配達車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の荷物を運送する自動運転可能な親機車両と、親機車両から受領した荷物を運送する自動運転可能な子機車両と、親機車両及び子機車両による荷物の自動配達と、配達員による荷物の手動配達とを管理する管理サーバとを備える配達システムが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の配達システムによれば、子機車両は、管理サーバ又は親機車両から指示された場所に自動運転により移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-173667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の配達システムによれば、子機車両が自動運転により移動を行うため、自動運転のために子機車両に搭載された操縦用AI(人工知能)システムやセンサーなどにトラブルが生じた場合、配達を続行することや子機車両を親機車両まで移動させて回収することができなくなる。
【0006】
本発明の目的は、自動運転可能な子機車両を有する自動配達車両であって、子機車両の自動運転機能にトラブルが生じた場合に、配達の続行や子機車両の回収ができなくなるという問題を解決することのできる自動配達車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、上記目的を達成するために、下記[1]~[5]の自動配達車両を提供する。
【0008】
[1]自動運転により配達目的地に荷物を配達することができる子機車両と、自動運転により前記子機車両を収容して運搬することができる親機車両と、を含み、前記親機車両に備えられたAIシステムを用いて前記子機車両の自動運転を制御することができる、自動配達車両。
[2]前記子機車両の自動運転の制御において、前記親機車両に備えられたAIシステムが、前記親機車両に備えられたセンサー、前記子機車両に備えられたセンサー、及び前記子機車両に備えられた位置検出部のうちの少なくとも1つが取得したデータを用いる、上記[1]に記載の自動配達車両。
[3]前記子機車両に備えられたAIシステムを用いて前記子機車両の自動運転を制御することができ、前記子機車両の自動運転の制御を、前記親機車両に備えられたAIシステムを用いるものから前記子機車両に備えられたAIシステムを用いるものに切り替えることができる、上記[1]又は[2]に記載の自動配達車両。
[4]前記子機車両に備えられたAIシステムを用いた前記子機車両の自動運転が正常に行われなくなったときに、前記子機車両の自動運転の制御を前記子機車両に備えられたAIシステムを用いた制御から前記親機車両に備えられたAIシステムを用いる制御に切り替える、上記[3]に記載の自動配達車両。
[5]前記子機車両の自動運転を制御するAIシステムが、前記親機車両のみに備えられた、上記[1]又は[2]に記載の自動配達車両。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、自動運転可能な子機車両を有する自動配達車両であって、子機車両の自動運転機能にトラブルが生じた場合に、配達の続行や子機車両の回収ができなくなるという問題を解決することのできる自動配達車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る子機車両の構成を概略的に示すブロック図である。図1(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る親機車両の構成を概略的に示すブロック図である。
図2図2は、本発明の第1の実施の形態に係る自動配達車両による自動配達の様子を示すイメージ図である。
図3図3は、子機車両が親機車両の元を出発してから配達目的地に到着するまでの流れの一例を示すフローチャートである。
図4図4は、配達目的地に到着した子機車両が受取人(顧客)に荷物を受け渡すまでの流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、顧客に荷物を受け渡した子機車両が親機車両に回収されるまでの流れの一例を示すフローチャートである。
図6図6(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る子機車両の構成を概略的に示すブロック図である。図6(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る親機車両の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔第1の実施の形態〕
(自動配達車両の構成)
本発明の第1の実施の形態に係る自動配達車両は、自動運転により配達目的地に荷物を配達することができる子機車両1と、自動運転により子機車両1を収容して運搬することができる親機車両2と、を含み、親機車両2に備えられたAIシステムを用いて子機車両1の自動運転を制御することができる。
【0012】
第1の実施の形態においては、親機車両2と子機車両1は、それぞれ自身が備えるAIシステムを用いた制御による自動運転を行う。また、親機車両2は自身の自動運転の制御に用いるAIシステムに加えて、子機車両1の自動運転の制御に用いるAIシステムを備える。そして、子機車両1の自動運転の制御を、自身が備えるAIシステムを用いるものから親機車両2が備えるAIシステムを用いるものに切り替えることができる。
【0013】
子機車両1に備えられたAIシステムを用いた子機車両1の自動運転が正常に行われなくなったときに、子機車両1の自動運転の制御を子機車両1に備えられたAIシステムを用いた制御から親機車両2に備えられたAIシステムを用いる制御に切り替えることにより、子機車両1の自動運転を再開することができる。
【0014】
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る子機車両1の構成を概略的に示すブロック図である。図1(b)は、本発明の第1の実施の形態に係る親機車両2の構成を概略的に示すブロック図である。
【0015】
図1(a)に示されるように、子機車両1は、子機車両1の周囲の状況を認識するためのセンサー10と、角速度、加速度などの子機車両1の状態を検出する状態検出部11と、子機車両1の位置を検出する位置検出部12と、地図情報を有する地図システム13と、子機車両1の走行をどのように制御するかを決定するAIシステム14と、子機車両1の駆動や制動などの走行のための動作を実行する走行用装置16と、AIシステム14の決定した制御内容に基づいて走行用装置16の制御を実行する制御実行部15と、基地局(管理サーバー)や親機車両2と通信を行うための通信部17とを備える。
【0016】
図1(b)に示されるように、親機車両2は、親機車両2の周囲の状況を認識するためのセンサー20と、角速度、加速度などの親機車両2の状態を検出する状態検出部21と、親機車両2の位置を検出する位置検出部22と、地図情報を有する地図システム23と、センサー20、状態検出部21、位置検出部22、地図システム23からデータを取得して、親機車両2の走行をどのように制御するかを決定する親機車両用AIシステム24と、親機車両2の駆動や制動などの走行のための動作を実行する走行用装置26と、親機車両用AIシステム24の決定した制御内容に基づいて走行用装置26の制御を実行する制御実行部25と、基地局や子機車両1と通信を行うための通信部27とを備える。
【0017】
また、親機車両2は、子機車両1のセンサー10、状態検出部11、位置検出部12、親機車両2の地図システム23からデータを取得して、子機車両1の走行をどのように制御するかを決定する子機車両用AIシステム28と、子機車両用AIシステム28の決定した制御内容に基づいて子機車両1の走行用装置16の制御を実行する制御実行部29とを備える。
【0018】
図1(a)の実線で表される矢印は、子機車両1が備えるAIシステム14を用いて子機車両1の自動運転を制御するときの信号の流れを示している。また、図1(a)、(b)の点線で表される矢印は、親機車両2が備える子機車両用AIシステム28を用いて子機車両1の自動運転を制御するときの信号の流れを示している。
【0019】
子機車両1のセンサー10、親機車両2のセンサー20は、例えば、カメラ、LiDAR(ライダー)、ミリ波センサー、赤外線センサーなどである。
【0020】
親機車両2の親機車両用AIシステム24は、親機車両2のセンサー20から取得したデータに基づいて、親機車両2の周囲の状況(例えば、車両周辺の道路状況、人間や障害物の位置、動きなど)を認識することができる(パーセプション)。子機車両1のAIシステム14は、子機車両1のセンサー10から取得したデータに基づいて、子機車両1の周囲の状況を認識することができる。また、親機車両2の子機車両用AIシステム28は、子機車両1のセンサー10や親機車両2のセンサー20から取得したデータに基づいて、子機車両1の周囲の状況を認識することができる。
【0021】
また、親機車両2の子機車両用AIシステム28は、街頭カメラ、インターフォン付属のカメラ、セキュリティカメラなどの車両外部のカメラから取得したデータに基づいて、子機車両1の周囲の状況を認識してもよい。
【0022】
子機車両1の状態検出部11、親機車両2の状態検出部21は、例えば、舵角センサー、車速センサー、ジャイロセンサーなどである。子機車両1の位置検出部12、親機車両2の位置検出部22は、例えば、GPS(Global Positioning System)などのGNSS(Global Navigation Satellite System)である。親機車両2の地図システム23は、例えば、高精度三次元地図システムである。
【0023】
親機車両2の親機車両用AIシステム24は、親機車両2の状態検出部21、位置検出部22、地図システム23から取得したデータに基づいて、親機車両2の位置を推定することができる(ローカライゼーション)。子機車両1のAIシステム14は、子機車両1の状態検出部11、位置検出部12、地図システム13から取得したデータに基づいて、子機車両1の位置を推定することができる。また、親機車両2の子機車両用AIシステム28は、子機車両1の状態検出部11、位置検出部12、親機車両2の地図システム23から取得したデータや、親機車両2のセンサー20、位置検出部22、地図システム23から取得したデータに基づいて、子機車両1の位置を推定することができる。
【0024】
子機車両1の走行用装置16、親機車両2の走行用装置26は、例えば、モーター、ブレーキ、パワーステアリングなどである。
【0025】
子機車両1のAIシステム14、制御実行部15は、例えば、子機車両1に搭載されたECU(エレクトロニックコントロールユニット)に含まれる。また、親機車両2の親機車両用AIシステム24、制御実行部25、子機車両用AIシステム28、制御実行部29は、例えば、親機車両2に搭載されたECUに含まれる。
【0026】
子機車両1の通信部17、親機車両2の通信部27は、例えば、5G、Wi-Fiによって通信を行うことができる。例えば、子機車両1のセンサー10、状態検出部11、位置検出部12から親機車両2の子機車両用AIシステム28へのデータ送信や、親機車両2の制御実行部29による子機車両1の走行用装置16の制御は、子機車両1の通信部17と親機車両2の通信部27の間の無線通信を介して行われる。
【0027】
子機車両1は、配達する荷物を収容するための荷物収容部を備える。この荷物収容部から荷物を出し入れするための蓋などの開閉部は、施錠することができ、後述するように個人認証により適切な人物のみが荷物を受け取れるようにすることができる。
【0028】
子機車両1の荷物収容部内には、温度管理のための保冷材や保冷材を設置してもよい。保冷材や保冷材は、例えば、子機車両1が親機車両2から出発するときに設置される。これにより、子機車両1が親機車両2から出発した後も、数時間の荷物の温度管理を行うことができる。
【0029】
子機車両1の荷物収容部内には、収容された荷物を殺菌するための光源、例えば、UV-C光を発するLEDなどの発光素子、を備えていてもよい。また、親機車両2が、搭載した子機車両1の表面を殺菌するための光源を備えていてもよい。
【0030】
子機車両1は、スピーカーを備えていてもよい。このスピーカーを用いることにより、荷物を受け取りに来た顧客に音声によるメッセージを送ること、犬などの動物に襲われたときに、動物の苦手な音などを発すること、盗難のおそれがあるときに警告を発することなどができる。
【0031】
親機車両2に搭載される子機車両1は1台でもよいが、通常、効率的に荷物を配達するため、複数の子機車両1が親機車両2に搭載される。また、親機車両2には、配達を補助する配達作業員が乗り込む空間が備えられていてもよい。
【0032】
子機車両1は、車輪により地上を走行するものに限られず、例えば、水上や空中を走行するものであってもよい。
【0033】
(自動配達車両の動作)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る自動配達車両による自動配達の様子を示すイメージ図である。例えば、基地局から配達目的地30の住所や配達時間などの情報を受信した親機車両2は、配達目的地30にある程度近い地点まで自動運転により移動し、配達する荷物を載せた子機車両1を降ろす。親機車両2から降ろされた子機車両1は、自動運転により配達目的地30まで移動し、荷物の配達を行う。
【0034】
以下に、本実施の形態に係る自動配達車両による荷物の配達の流れの一例を図3~5のフローチャートを用いて説明する。
【0035】
図3は、子機車両1が親機車両2の元を出発してから配達目的地に到着するまでの流れの一例を示すフローチャートである。
【0036】
まず、子機車両1を搭載した親機車両2が配達目的地の近くの待機地点に到着した後、親機車両2から降ろされた子機車両1が、配達目的地に向けて自動運転による配送を開始する(ステップA1)。
【0037】
このステップA1における子機車両1の自動運転は、子機車両1が備えるAIシステム14を用いて制御される。例えば、基地局や親機車両2からの配達目的地の位置や配達時刻などの指示を通信部17で受信し、指示に基づいてAIシステム14が自動運転を制御する。
【0038】
なお、親機車両2が停車した後、そこから発車するまでの予想時間(子機車両1が配達目的地に到着するまでの時間)を親機車両2に備えられたサイネージに表示してもよい。
【0039】
ステップA1において子機車両1がAIシステム14を用いた制御による自動運転を開始した後、問題が生じない場合は、そのまま子機車両1が配達目的地に到着するまで自動運転を続行する(ステップA2)。
【0040】
一方、子機車両1がAIシステム14を用いた制御による自動運転を開始した後、自動運転が正常に行われなくなった場合、親機車両2の子機車両用AIシステム28の制御により、センサー10としてのカメラからの画像データ又は位置検出部12としてのGPSからの位置データを子機車両1から親機車両2に送信する(ステップA2、A3)。
【0041】
ここで、自身の制御による子機車両1の自動運転が正常に行われなくなるのは、AIシステム14や制御実行部15の故障などが発生している場合であり、例えば、移動中を示す状態信号を送信中にGPS位置情報が移動しない、又は、停止中を示す状態信号を送信中にGPS位置情報が変化する場合に、自動運転が正常に行われていないことを判定することができる。
【0042】
ステップA3において子機車両1から親機車両2に画像データ又は位置データが送信された場合、その画像データ又は位置データを親機車両2が受信できるか否かの判定を行う(ステップA4)。
【0043】
ステップA4において子機車両1からの画像データ又は位置データを親機車両2が受信できた場合、それらのデータや地図システム23に含まれる地図データに基づいて子機車両用AIシステム28が子機車両1をどのように操作するかを判断し、親機車両2の制御実行部29から子機車両1に操作信号が送信され(ステップA5)、子機車両1が親機車両2に向かって移動を開始する(ステップA6)。
【0044】
次に、親機車両2のセンサー20としてのカメラが子機車両1を認識できるか否かの判定を行う(ステップA7)。なお、ステップA4において子機車両1のカメラからの画像データを親機車両2が受信できなかった場合は、ステップA5、A6を省いてステップA7の判定に移る。
【0045】
ステップA7において親機車両2のカメラが所定の時間を経過しても子機車両1を認識できなかった場合は、子機車両1又は親機車両2の故障を基地局に連絡し(ステップA8)、基地局が別便の手配や顧客(荷物の受取人)への遅配の連絡などを行う(ステップA9)。
【0046】
ステップA7において親機車両2のカメラが子機車両1を認識できない理由が子機車両1にある場合、例えば、親機車両2のカメラなどが正常に動作しているのに子機車両1が所定の時間を経過しても親機車両2のカメラの認識範囲内に現れない場合、ステップA8において子機車両1の故障を基地局に連絡する。また、ステップA7において親機車両2のカメラが子機車両1を認識できない理由が親機車両2にある場合、例えば、親機車両2のカメラなどが正常に動作していない場合、ステップA8において親機車両2の故障を基地局に連絡する。
【0047】
ステップA7において親機車両2のカメラが子機車両1を認識できた場合は、親機車両2から子機車両1に操作信号が送信され(ステップA10)、その操作信号に従って子機車両1が正常に動作するか否かを親機車両2のカメラを用いて判定する(ステップA11)。
【0048】
ステップA11において子機車両1が操作信号に従って正常に動作しなかった場合は、子機車両1の故障を基地局に連絡し(ステップA12)、基地局が別便の手配や顧客への遅配の連絡などを行う(ステップA9)。
【0049】
ステップA11において子機車両1が操作信号に従って正常に動作した場合は、親機車両2から子機車両1に操作信号が送信され(ステップA13)、親機車両2の子機車両用AIシステム28を用いた制御により、子機車両1が自動運転による荷物の配送を再開する(ステップA14)。
【0050】
通常、親機車両2の子機車両用AIシステム28を用いて子機車両1の自動運転を制御するときには、子機車両1のAIシステム14を用いて子機車両1の自動運転を制御するときよりも、子機車両1の周囲の状況の認識から走行用装置16の制御までに係る時間が僅かに長くなるため、子機車両1の走行速度を低下させてもよい。
【0051】
ステップA14において子機車両1が荷物の配送を再開した後、子機車両1の位置が親機車両2のカメラの認識範囲内にある間は、子機車両1の位置の認識に親機車両2のカメラを用いて、子機車両1の位置が親機車両2のカメラの認識範囲内から外れたときには、子機車両1のセンサー10としてのカメラ、又は子機車両1の位置検出部12としてのGPSと親機車両2の地図システム23を用いる(ステップA15、A16)。
【0052】
その後、到着予定時刻として予め設定された時刻を経過しても子機車両1が配達目的地に到着しない場合は、子機車両1にトラブルが生じたものとして子機車両1の故障を基地局に連絡し(ステップA17、A18、A12)、基地局が別便の手配や顧客への遅配の連絡などを行う(ステップA9)。
【0053】
一方、到着予定時刻を経過する前に子機車両1が配達目的地に到着した場合は、親機車両2又は子機車両1が子機車両1の到着を基地局に連絡する(ステップA17、A19)。
【0054】
子機車両1が配達目的地に到着した後、親機車両2は次の配達目的地へ向けて出発する。次の目的地では、他の子機車両1が同様に荷物の配達を行う。
【0055】
図4は、配達目的地に到着した子機車両1が受取人(顧客)に荷物を受け渡すまでの流れの一例を示すフローチャートである。
【0056】
まず、上記のステップA19において子機車両1が配達目的地に到着したことの連絡を受けた基地局が、顧客(荷物の受取人)に荷物が到着したことを電子メールなどにより連絡する。
【0057】
連絡を受けた顧客は、基地局からの連絡に返信する形で受取時刻の指定を行う(ステップB1)。このとき、受取時刻を指定する代わりに即時受取を指定することもできる。なお、所定の時間を過ぎても顧客による受取時刻の指定が行われない場合は、子機車両1は親機車両2の待機する場所に帰還し、親機車両2に回収される。
【0058】
ステップB1において設定された受取指定時刻の数分前、例えば3分前になったときに、子機車両1のカメラを起動し、基地局との通信を開始する(ステップB2、B3)。このときの基地局との通信には、配達目的地で用いられているWi-Fiなどを利用してもよい。
【0059】
そして、受取指定時刻の数分後、例えば3分後まで、顧客(受取人)が子機車両1のカメラの認識範囲内に現れるか否かの判定を行う(ステップB4)。ステップB4において受取指定時刻の設定時間後までに顧客が現れたとの判定がされなかった場合、ステップB1の顧客による受取時刻の指定に戻る。
【0060】
ステップB4において受取指定時刻の数分後までに顧客が現れたとの判定がされた場合、基地局による顧客の個人認証が行われる(ステップB5)。この個人認証には、例えば、子機車両1のカメラを用いた画像認証、子機車両1のマイクを用いた声紋認証などが用いられる。
【0061】
このとき、子機車両1に備えられたサイネージやスピーカーを用いて、カメラの前に立つこと、声を発することなど促すアナウンスを発することができる。
【0062】
ステップB5における個人認証が通らない場合、例えば、顧客以外の人物や動物が受取操作を試みた場合などには、荷物収容部のロックを開錠しないようにするとともに、基地局を介して警察やガードマンを呼ぶこともできる。
【0063】
ステップB5における個人認証が通った場合は、子機車両1の荷物収容部の開閉部のロックが解除され、顧客が荷物を取り出すことができるようになる(ステップB6、B7)。
【0064】
その後、基地局により子機車両1から荷物が取り出されたことの確認が行われる。この確認は、例えば、子機車両1の荷物収容部の開閉ボタンが押されたこと、顧客の動作(ジェスチャー)の子機車両1のカメラによる認識、顧客の声による受取メッセージ(声紋)の子機車両1のマイクによる認識などが用いられる。また、子機車両1に備えられたサイネージに表示されるデジタルコードなどを顧客がスマートフォンやウェアラブルデバイスで読み取って受取確認を行ってもよい。
【0065】
図5は、顧客に荷物を受け渡した子機車両1が親機車両2に回収されるまでの流れの一例を示すフローチャートである。
【0066】
まず、親機車両2が子機車両1を降ろした配達目的地の近くの待機地点に到着した後、自身が備えるAIシステム14を用いた制御による子機車両1の自動運転が可能か否かの判定を行う(ステップC1)。
【0067】
ステップC1において可能と判定された場合は、子機車両1は、自身が備えるAIシステム14を用いた制御により、親機車両2の待機地点に向けて自動運転による帰還を開始する(ステップC1、C2)。
【0068】
ステップC2において子機車両1がAIシステム14を用いた制御による自動運転を開始した後、問題が生じない場合は、そのまま子機車両1が親機車両2の待機地点に到着するまで自動運転を続行する(ステップC3)。
【0069】
一方、子機車両1がAIシステム14を用いた制御による自動運転を開始した後、自動運転が正常に行われなくなった場合、親機車両2の子機車両用AIシステム28の制御により、センサー10としてのカメラからの画像データ又は位置検出部12としてのGPSからの位置データを子機車両1から親機車両2に送信する(ステップC4)。
【0070】
また、ステップC1において自身が備えるAIシステム14を用いた制御により子機車両1が自動運転できないと判定された場合も、ステップC4の子機車両1のカメラから親機車両2への画像データの送信に移る。
【0071】
ステップC4において子機車両1から親機車両2に画像データ又は位置データが送信された場合、その画像データ又は位置データを親機車両2が受信できるか否かの判定を行う(ステップC5)。
【0072】
ステップC5において子機車両1からの画像データ又は位置データを親機車両2が受信できた場合、それらのデータや地図システム23に含まれる地図データに基づいて子機車両用AIシステム28が子機車両1をどのように操作するかを判断し、親機車両2の制御実行部29から子機車両1に操作信号が送信され(ステップC6)、子機車両1が移動を開始する(ステップC7)。
【0073】
次に、親機車両2のセンサー20としてのカメラが子機車両1を認識できるか否かの判定を行う(ステップC8)。なお、ステップC5において子機車両1のカメラからの画像データを親機車両2が受信できなかった場合は、ステップA5、A6を省いてステップC8の判定に移る。
【0074】
ステップC8において親機車両2のカメラが所定の時間を経過しても子機車両1を認識できなかった場合は、子機車両1又は親機車両2の故障を基地局に連絡し(ステップC9)、親機車両2に故障がない場合には、親機車両2は他の子機車両1を回収するために次の配達目的地へ向けて出発する。
【0075】
ステップC8において親機車両2のカメラが子機車両1を認識できた場合は、親機車両2から子機車両1に操作信号が送信され(ステップC10)、その操作信号に従って子機車両1が正常に動作するか否かを親機車両2のカメラを用いて判定する(ステップC11)。
【0076】
ステップC11において子機車両1が操作信号に従って正常に動作しなかった場合は、子機車両1の故障を基地局に連絡し(ステップC12)、親機車両2は他の子機車両1を回収するために次の配達目的地へ向けて出発する。
【0077】
ステップC11において子機車両1が操作信号に従って正常に動作した場合は、親機車両2から子機車両1に操作信号が送信され(ステップC13)、親機車両2の子機車両用AIシステム28を用いた制御により、子機車両1が自動運転による親機車両2の待機地点への帰還を再開する(ステップC14)。
【0078】
ステップC14において子機車両1が帰還を再開した後、子機車両1の位置が親機車両2のカメラの認識範囲内にある間は、子機車両1の位置の認識に親機車両2のカメラを用いて、子機車両1の位置が親機車両2のカメラの認識範囲内から外れたときには、子機車両1のセンサー10としてのカメラ、又は子機車両1の位置検出部12としてのGPSと親機車両2の地図システム23を用いる(ステップC15、C16)。
【0079】
その後、到着予定時刻として予め設定された時刻を経過しても子機車両1が親機車両2の待機地点に到着しない場合は、子機車両1にトラブルが生じたものとして子機車両1の故障を基地局に連絡し(ステップC17、C18、A12)、親機車両2は他の子機車両1を回収するために次の配達目的地へ向けて出発する。
【0080】
一方、到着予定時刻を経過する前に子機車両1が親機車両2の待機地点に到着した場合は、親機車両2又は子機車両1が子機車両1の到着を基地局に連絡する(ステップC17、C19)。
【0081】
親機車両2は、帰還した子機車両1を回収した後、他の子機車両1を回収するために次の配達目的地へ向けて出発する。
【0082】
なお、上述のように、図3~5で示した自動配達車両による荷物の配達の流れは一例であり、これに限定されるものではない。例えば、親機車両2は、配達目的地の近くで子機車両1を降ろした後、荷物の配達を終えた子機車両1を回収するまでその場で待機していてもよく、また、1つの場所で複数の子機車両1を降ろして複数の荷物の配達を同時進行で行ってもよい。
【0083】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態によれば、子機車両1が自身の備えるAIシステム14による自動運転を続行できなくなった場合であっても、親機車両2が備える子機車両用AIシステム28により子機車両1の自動運転を再開することができるため、配達の続行や子機車両1の回収を行うことができる。
【0084】
〔第2の実施の形態〕
本発明の第2の実施の形態は、子機車両1がAIシステムなどを搭載しない点において第1の実施の形態と異なる。第1の実施の形態と同様の点については、説明を省略又は簡略化する場合がある。
【0085】
(自動配達車両の構成)
第2の実施の形態においては、親機車両2と子機車両100は、ともに親機車両2が備えるAIシステムを用いた制御による自動運転を行う。
【0086】
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る子機車両100の構成を概略的に示すブロック図である。図6(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る親機車両2の構成を概略的に示すブロック図である。
【0087】
図6(a)に示されるように、子機車両100は、子機車両100の周囲の状況を認識するためのセンサー10と、角速度、加速度などの子機車両1の状態を検出する状態検出部11と、子機車両1の位置を検出する位置検出部12と、子機車両1の駆動や制動などの走行のための動作を実行する走行用装置16と、基地局(管理サーバー)や親機車両2と通信を行うための通信部17とを備える。
【0088】
図6(b)に示されるように、親機車両2は、親機車両2の周囲の状況を認識するためのセンサー20と、角速度、加速度などの親機車両2の状態を検出する状態検出部21と、親機車両2の位置を検出する位置検出部22と、地図情報を有する地図システム23と、センサー20、状態検出部21、位置検出部22、地図システム23からデータを取得して、親機車両2の走行をどのように制御するかを決定する親機車両用AIシステム24と、親機車両2の駆動や制動などの走行のための動作を実行する走行用装置26と、親機車両用AIシステム24の決定した制御内容に基づいて走行用装置26の制御を実行する制御実行部25と、基地局や子機車両1と通信を行うための通信部27とを備える。
【0089】
また、親機車両2は、子機車両100のセンサー10、状態検出部11、位置検出部12、親機車両2の地図システム23からデータを取得して、子機車両100の走行をどのように制御するかを決定する子機車両用AIシステム28と、子機車両用AIシステム28の決定した制御内容に基づいて子機車両100の走行用装置16の制御を実行する制御実行部29とを備える。
【0090】
子機車両用AIシステム28は、子機車両100のセンサー10や親機車両2のセンサー20から取得したデータに基づいて、子機車両100の周囲の状況を認識することができる(パーセプション)。また、子機車両用AIシステム28は、子機車両100の状態検出部11、位置検出部12、親機車両2の地図システム23から取得したデータや、親機車両2のセンサー20、位置検出部22、地図システム23から取得したデータに基づいて、子機車両100の自己位置を推定することができる(ローカライゼーション)。
【0091】
(自動配達車両の動作)
本実施の形態に係る子機車両100は、第1の実施の形態に係る子機車両1と異なり、自動運転を制御するためのAIシステムを自身に備えず、親機車両2の子機車両用AIシステム28により自動運転を制御される。このため、子機車両100は、親機車両2の子機車両用AIシステム28により自動運転を制御されている状態の第1の実施の形態に係る子機車両1と同様の動作を行う。
【0092】
一例として、本実施の形態に係る自動配達車両による荷物の配達の流れは、図3~5で示した流れから子機車両1のAIシステム14による自動運転に関するステップ(ステップA1、A2、C1~C3など)を省いたものとなる。
【0093】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態によれば、子機車両100が自動運転を制御するためのAIシステムなどを自身に備えないため、子機車両100の自動運転機能にトラブルが生じることによる配達の続行や子機車両100の回収ができなくなるという問題を避けることができる。子機車両100と親機車両2の形態の違いから、親機車両2に備えられたAIシステムの方が子機車両100に備えられたAIシステムよりも衝撃などによる故障率が低く、親機車両2に備えられたAIシステムを使用することによりトラブルの発生を抑えることができる。
【0094】
また、子機車両100がAIシステムを含む高精度かつ複雑な自動運転システムを自身に備えないため、第1の実施の形態に係る子機車両1のような自動運転システムを備えた子機車両と比較して、製造コストやメンテナンスコストが大幅に抑えられる。特に、親機車両2に搭載される子機車両100の台数が増えるほど、コストダウンの効果は大きくなる。また、親機車両2の子機車両用AIシステム28により自動運転が制御される子機車両1は比較的低速で走行するため、その車輪は小径のものでよく、製造コストの低減や車体の小型化を図ることができる。
【0095】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、発明の主旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施が可能である。また、発明の主旨を逸脱しない範囲内において上記実施の形態の構成要素を任意に組み合わせることができる。
【0096】
また、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【符号の説明】
【0097】
1、100 子機車両
10 センサー
11 状態検出部
12 位置検出部
13 地図システム
14 AIシステム
15 制御実行部
16 走行用装置
17 通信部
2 親機車両
20 センサー
21 状態検出部
22 位置検出部
23 地図システム
24 親機車両用AIシステム
25 制御実行部
26 走行用装置
27 通信部
28 子機車両用AIシステム
29 制御実行部
図1
図2
図3
図4
図5
図6