(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】インダクタ部品
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240806BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 C
(21)【出願番号】P 2021093871
(22)【出願日】2021-06-03
【審査請求日】2023-01-30
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 由雅
(72)【発明者】
【氏名】冨永 隆一朗
(72)【発明者】
【氏名】今枝 大樹
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-019747(JP,A)
【文献】特開2009-289900(JP,A)
【文献】特開2002-175916(JP,A)
【文献】特開2003-017327(JP,A)
【文献】特開2003-309021(JP,A)
【文献】特開2018-056472(JP,A)
【文献】特開2005-072170(JP,A)
【文献】特開2001-007531(JP,A)
【文献】特開2000-124031(JP,A)
【文献】特開2006-229173(JP,A)
【文献】実開昭55-169816(JP,U)
【文献】特開2020-174169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0231402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/29、41/04
H05K 1/11、1/16、3/40-3/42、3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極および第2外部電極と
を備え、
前記素体は、互いに対向する第1主面および第2主面を有する基板と、前記第1主面上に設けられた絶縁層と、を含み、
前記コイルは、前記第1主面上に設けられ、かつ、前記絶縁層に覆われた第1コイル配線と、前記第2主面上に設けられた第2コイル配線と、前記第1主面から前記第2主面に渡って前記基板を貫通するように設けられ、かつ、前記軸に対して互いに反対側に配置された第1貫通配線および第2貫通配線と、を含み、
前記第1コイル配線と、前記第1貫通配線と、前記第2コイル配線と、前記第2貫通配線とは、この順に接続されることにより、前記螺旋状の少なくとも一部を構成し、
前記第1外部電極の少なくとも一部は、前記第1コイル配線の上方で、かつ、前記第1コイル配線から離隔するように前記絶縁層に設けられ、
前記第1主面に直交する方向からみて、前記第1外部電極は、前記第1コイル配線および前記第2コイル配線のそれぞれと重なり、かつ、前記第1外部電極と前記第1コイル配線との重なり部分の面積は、前記第1外部電極と前記第2コイル配線との重なり部分の面積よりも小さく、
前記第1コイル配線および前記第2コイル配線は、それぞれ複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、1つの第1コイル配線の第1の端部と1つの第2コイル配線の第1の端部とが重なって、前記1つの第1コイル配線と前記1つの第2コイル配線とは1組を構成し、かつ、前記組は複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、少なくとも1組の前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とのなす角度は、他の組の前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とのなす角度と異な
り、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線の少なくとも1つは、3層以上の導電体層からなる、インダクタ部品。
【請求項2】
素体と、
前記素体に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極および第2外部電極と
を備え、
前記素体は、互いに対向する第1主面および第2主面を有する基板と、前記第1主面上に設けられた絶縁層と、を含み、
前記コイルは、前記第1主面上に設けられ、かつ、前記絶縁層に覆われた第1コイル配線と、前記第2主面上に設けられた第2コイル配線と、前記第1主面から前記第2主面に渡って前記基板を貫通するように設けられ、かつ、前記軸に対して互いに反対側に配置された第1貫通配線および第2貫通配線と、を含み、
前記第1コイル配線と、前記第1貫通配線と、前記第2コイル配線と、前記第2貫通配線とは、この順に接続されることにより、前記螺旋状の少なくとも一部を構成し、
前記第1外部電極の少なくとも一部は、前記第1コイル配線の上方で、かつ、前記第1コイル配線から離隔するように前記絶縁層に設けられ、
前記第1主面に直交する方向からみて、前記第1外部電極は、前記第1コイル配線および前記第2コイル配線のそれぞれと重なり、かつ、前記第1外部電極と前記第1コイル配線との重なり部分の面積は、前記第1外部電極と前記第2コイル配線との重なり部分の面積よりも小さく、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線の少なくとも1つは、複数の導電体層からなり、
少なくとも1つの前記導電体層は、導電性樹脂から構成される、インダクタ部品。
【請求項3】
前記導電性樹脂は、空洞を有する、請求項2に記載のインダクタ部品。
【請求項4】
前記基板の材料は、ガラスである、請求項1
~3に記載のインダクタ部品。
【請求項5】
前記基板には、Si元素が含有されている、請求項4に記載のインダクタ部品。
【請求項6】
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、前記第1主面に直交する方向に延在する、請求項1から5の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項7】
前記絶縁層の厚みは、前記基板の厚みの1/3以下であり、
前記絶縁層の誘電率は、前記基板の誘電率よりも小さい、請求項1から6の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項8】
前記第1コイル配線は、一つの方向にのみ延在する、請求項1から7の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項9】
前記第2コイル配線は、一つの方向にのみ延在する、請求項1から8の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項10】
前記第1主面に直交する方向からみて、前記第1コイル配線の第1の端部と前記第2コイル配線の第1の端部とが重なり、
前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とのなす角度は、鋭角である、請求項1から9の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項11】
前記角度は、5度以上45度以下である、請求項10に記載のインダクタ部品。
【請求項12】
前記第1コイル配線は、複数存在し、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、それぞれ複数存在し、
1つの第1コイル配線と、前記1つの第1コイル配線の両端部にそれぞれ接続された1つの第1貫通配線および1つの第2貫通配線とが1組を構成し、かつ、前記組は複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線に接続された前記第1コイル配線の延在方向は、前記コイルの軸方向に直交し、かつ、前記少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、前記コイルの軸に対して線対称となるように配置されている、請求項1から11の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項13】
前記第2コイル配線は、複数存在し、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、それぞれ複数存在し、
1つの第2コイル配線と、前記1つの第2コイル配線の両端部にそれぞれ接続された1つの第1貫通配線および1つの第2貫通配線と、が1組を構成し、かつ、前記組は複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線に接続された前記第2コイル配線の延在方向は、前記コイルの軸方向に直交し、かつ、前記少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、前記コイルの軸に対して線対称となるように配置されている、請求項1から11の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項14】
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線の少なくとも1つは、延在方向に直交する断面の形状が円形である、請求項1から13の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項15】
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線の少なくとも1つは、複数の導電体層からなり、
少なくとも1つの前記導電体層は、銅が主成分である、請求項1から14の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項16】
前記第1主面に直交する方向からみて、前記第1コイル配線のうち、前記第1コイル配線に接続された貫通配線の前記第1コイル配線側の端面と重なる部分の上面は、凹部を有する、請求項1から15の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【請求項17】
前記第1コイル配線、前記第2コイル配線、前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、銅が主成分である、請求項1から16の何れか一つに記載のインダクタ部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インダクタ部品としては、特開平11-251146号公報(特許文献1)に記載されたものがある。インダクタ部品は、長さ、幅および高さを有する素体と、素体内に設けられ、軸方向に沿って巻き回されたコイルと、素体に設けられ、コイルに電気的に接続された第1外部電極および第2外部電極とを有する。素体は、長さ方向の両端側にある第1端面および第2端面と、幅方向の両端側にある第1側面および第2側面と、高さ方向の両端側にある底面および天面とを有する。
【0003】
第1外部電極は、第1端面の全面と、第1側面、第2側面、底面および天面のそれぞれの一部とに設けられている。第2外部電極は、第2端面の全面と、第1側面、第2側面、底面および天面のそれぞれの一部とに設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記従来のようなインダクタ部品では、第1外部電極および第2外部電極は、いわゆる5面電極であるので、第1外部電極および第2外部電極は、大きくなり、コイルと第1、第2外部電極との間の浮遊容量が増加する。
【0006】
そこで、本開示は、コイルと外部電極との間の浮遊容量を低減できるインダクタ部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本開示の一態様であるインダクタ部品は、
素体と、
前記素体に設けられ、軸に沿って螺旋状に巻回されたコイルと、
前記素体に設けられ、前記コイルに電気的に接続された第1外部電極および第2外部電極と
を備え、
前記素体は、互いに対向する第1主面および第2主面を有する基板と、前記第1主面上に設けられた絶縁層と、を含み、
前記コイルは、前記第1主面上に設けられ、かつ、前記絶縁層に覆われた第1コイル配線と、前記第2主面上に設けられた第2コイル配線と、前記第1主面から前記第2主面に渡って前記基板を貫通するように設けられ、かつ、前記軸に対して互いに反対側に配置された第1貫通配線および第2貫通配線と、を含み、
前記第1コイル配線と、前記第1貫通配線と、前記第2コイル配線と、前記第2貫通配線とは、この順に接続されることにより、前記螺旋状の少なくとも一部を構成し、
前記第1外部電極の少なくとも一部は、前記第1コイル配線の上方で、かつ、前記第1コイル配線から離隔するように前記絶縁層に設けられ、
前記第1主面に直交する方向からみて、前記第1外部電極は、前記第1コイル配線および前記第2コイル配線のそれぞれと重なり、かつ、前記第1外部電極と前記第1コイル配線との重なり部分の面積は、前記第1外部電極と前記第2コイル配線との重なり部分の面積よりも小さい。
【0008】
前記態様によれば、第1主面に直交する方向において、第1外部電極は、第2コイル配線よりも第1コイル配線に近い。そして、第1外部電極と第1コイル配線との重なり部分の面積は、第1外部電極と第2コイル配線との重なり部分の面積よりも小さい。このように、第1外部電極に近い第1コイル配線と第1外部電極との重なり部分の面積を相対的に小さくできるので、第1外部電極と第1コイル配線との間の寄生容量を小さくでき、Q値を高くできる。
【0009】
また、第1外部電極と第1コイル配線と間のリーク電流を抑制でき、インダクタ部品の信頼性を向上させることができる。
【0010】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記基板の材料は、ガラスである。
【0011】
前記実施形態によれば、基板の材料がガラスであり、ガラスは絶縁性が高いため、渦電流を抑制でき、Q値を高くできる。
【0012】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記基板には、Si元素が含有されている。
【0013】
前記実施形態によれば、基板にSiが含有されているため、基板の熱的安定性が高い。そのため、熱による素体寸法などの変動を抑制し、電気特性バラツキを小さくすることができる。
【0014】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、前記第1主面に直交する方向に延在する。
【0015】
前記実施形態によれば、第1貫通配線および第2貫通配線の長さを短くできるため、直流抵抗を抑制できる。
【0016】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記絶縁層の厚みは、前記基板の厚みの1/3以下であり、
前記絶縁層の誘電率は、前記基板の誘電率よりも小さい。
【0017】
ここで、「厚み」とは、第1主面に直交する方向の大きさの最大値である。
【0018】
前記実施形態によれば、絶縁層の厚みが基板の厚みの1/3以下であるため、インダクタ部品を小型化できる。また、絶縁層の厚みが薄くなり、外部電極と第1コイル配線との距離が短くなっても、絶縁層の誘電率が基板の誘電率よりも小さいため、外部電極と第1コイル配線との間の寄生容量を小さくでき、Q値を高くできる。
【0019】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1コイル配線は、一つの方向にのみ延在する。
【0020】
前記実施形態によれば、第1コイル配線が1方向にのみ延在しているため、フォトリソグラフィ工程で例えば変形照明を使用することにより、微細な第1コイル配線を形成でき、インダクタ部品を小型化できる。
【0021】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第2コイル配線は、一つの方向にのみ延在する。
【0022】
前記実施形態によれば、第2コイル配線が1方向にのみ延在しているため、フォトリソグラフィ工程で例えば変形照明を使用することにより、微細な第2コイル配線を形成でき、インダクタ部品を小型化できる。
【0023】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1主面に直交する方向からみて、前記第1コイル配線の第1の端部と前記第2コイル配線の第1の端部とが重なり、
前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とのなす角度は、鋭角である。
【0024】
前記実施形態によれば、コイルが密に巻回されるため、インダクタンスを向上させることができる。
【0025】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記角度は、5度以上45度以下である。
【0026】
前記実施形態によれば、コイルがより密に巻回されるため、インダクタンスをさらに向上させることができる。
【0027】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1コイル配線および前記第2コイル配線は、それぞれ複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、1つの第1コイル配線の第1の端部と1つの第2コイル配線の第1の端部とが重なって、前記1つの第1コイル配線と前記1つの第2コイル配線とは1組を構成し、かつ、前記組は複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、少なくとも1組の前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とのなす角度は、他の組の前記第1コイル配線と前記第2コイル配線とのなす角度と異なる。
【0028】
前記実施形態によれば、第1主面に直交する方向からみて、少なくとも1組の第1コイル配線と第2コイル配線とのなす角度は、他の組の第1コイル配線と第2コイル配線とのなす角度と異なる。そのため、コイル長を柔軟に変化させることができ、所望のインダクタンスを有したインダクタ部品を得やすくすることができる。
【0029】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1コイル配線は、複数存在し、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、それぞれ複数存在し、
1つの第1コイル配線と、前記1つの第1コイル配線の両端部にそれぞれ接続された1つの第1貫通配線および1つの第2貫通配線とが1組を構成し、かつ、前記組は複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線に接続された前記第1コイル配線の延在方向は、前記コイルの軸方向に直交し、かつ、前記少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、前記コイルの軸に対して線対称となるように配置されている。
【0030】
前記実施形態によれば、第1コイル配線の延在方向がコイルの軸方向に対して傾いている場合と比較して、コイルの軸方向の大きさを小さくでき、インダクタ部品を小型化できる。
【0031】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第2コイル配線は、複数存在し、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、それぞれ複数存在し、
1つの第2コイル配線と、前記1つの第2コイル配線の両端部にそれぞれ接続された1つの第1貫通配線および1つの第2貫通配線と、が1組を構成し、かつ、前記組は複数存在し、
前記第1主面に直交する方向からみて、少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線に接続された前記第2コイル配線の延在方向は、前記コイルの軸方向に直交し、かつ、前記少なくとも1組の前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、前記コイルの軸に対して線対称となるように配置されている。
【0032】
前記実施形態によれば、第2コイル配線の延在方向がコイルの軸方向に対して傾いている場合と比較して、コイルの軸方向の大きさを小さくでき、インダクタ部品を小型化できる。
【0033】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1貫通配線および前記第2貫通配線の少なくとも1つは、延在方向に直交する断面の形状が円形である。
【0034】
前記実施形態によれば、貫通配線が設けられる貫通孔をレーザで容易に形成できる。また、貫通孔をめっきで充填する際に、等方的にめっきを充填できるため、空隙が少ないめっきを形成できる。
【0035】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線の少なくとも1つは、複数の導電体層からなり、
少なくとも1つの前記導電体層は、銅が主成分である。
【0036】
前記実施形態によれば、貫通配線の少なくとも1つの導電体層は、銅が主成分である。銅は導電性が高いため、貫通配線の直流抵抗を抑制できる。
【0037】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記第1貫通配線および前記第2貫通配線の少なくとも1つは、複数の導電体層からなり、
少なくとも1つの前記導電体層は、導電性樹脂から構成される。
【0038】
前記実施形態によれば、貫通孔を導電性樹脂で容易に充填することができる。
【0039】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1主面に直交する方向からみて、前記第1コイル配線のうち、前記第1コイル配線に接続された貫通配線の前記第1コイル配線側の端面と重なる部分の上面は、凹部を有する。
【0040】
前記実施形態によれば、第1コイル配線の上面が凹部を有することにより、第1コイル配線の上面の面積が大きくなり、絶縁層との密着性を向上させることができる。
【0041】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、
前記素体は、長さ、幅および高さを有する直方体形状であり、
前記インダクタ部品の体積が、0.08mm3以下であり、
前記インダクタ部品の長辺の長さが、0.65mm以下である。
【0042】
ここで、「長辺の長さ」とは、インダクタ部品の長さ、幅および高さのうちの最も大きい値を指す。
【0043】
前記実施形態によれば、体積が小さく、長辺が短いため、部品重量を軽くできる。そのため、外部電極が小さくても、必要な実装強度を得ることができる。
【0044】
好ましくは、インダクタ部品の一実施形態では、前記第1コイル配線、前記第2コイル配線、前記第1貫通配線および前記第2貫通配線は、銅が主成分である。
【0045】
前記実施形態によれば、コイル配線および貫通配線の材料として安価で導電性が高い銅を使用することにより、インダクタ部品の量産性を向上し、Q値を高くできる。
【発明の効果】
【0046】
本開示の一態様であるインダクタ部品によれば、コイルと外部電極との間の浮遊容量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】インダクタ部品を底面側から見た模式斜視図である。
【
図2】インダクタ部品を底面側から見た模式底面図である。
【
図4A】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4B】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4C】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4D】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4E】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4F】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4G】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図4H】インダクタ部品の製造方法を説明する模式断面図である。
【
図5】インダクタ部品の第1変形例を示す底面側から見た模式底面図である。
【
図6】インダクタ部品の第2変形例を示す底面側から見た模式底面図である。
【
図7】インダクタ部品の第3変形例を示すXZ断面図である。
【
図8】インダクタ部品の第4変形例を示すXZ断面図である。
【
図9】インダクタ部品の第2実施形態を示す底面側から見た模式底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本開示の一態様であるインダクタ部品を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は一部模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0049】
<第1実施形態>
第1実施形態に係るインダクタ部品1について、以下に説明する。
図1は、インダクタ部品1を底面側から見た模式斜視図である。
図2は、インダクタ部品1を底面側から見た模式底面図である。
図3は、
図2のA-A断面図である。なお、
図2では、便宜上、素体の絶縁層を省略して描き、外部電極の一部(底面部分)を二点鎖線で描いている。
【0050】
1.概要構成
インダクタ部品1の概要構成について説明する。インダクタ部品1は、例えば、高周波信号伝送回路に用いられる表面実装型のインダクタ部品である。
図1と
図2と
図3に示すように、インダクタ部品1は、素体10と、素体10に設けられ、軸AXに沿って螺旋状に巻き回されたコイル110と、素体10に設けられ、コイル110に電気的に接続された第1外部電極121および第2外部電極122とを備える。コイル110の軸AXは、コイル110の内径部の中心を通る直線である。コイル110の軸AXは、軸AXに直交する方向の寸法を有さない。
【0051】
素体10は、長さ、幅および高さを有する。素体10は、長さ方向の両端側にある第1端面100e1および第2端面100e2と、幅方向の両端側にある第1側面100s1および第2側面100s2と、高さ方向の両端側にある底面100bおよび天面100tとを有する。つまり、素体10の外面100は、第1端面100e1および第2端面100e2と、第1側面100s1および第2側面100s2と、底面100bおよび天面100tとを含む。
【0052】
なお、図面に示すように、以下では、説明の便宜上、素体10の長さ方向(長手方向)であって、第1端面100e1から第2端面100e2に向かう方向をX方向とする。また、素体10の幅方向であって、第1側面100s1から第2側面100s2に向かう方向をY方向とする。また、素体10の高さ方向であって、底面100bから天面100tに向かう方向をZ向とする。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する方向であって、X,Y,Zの順に並べたとき、右手系を構成する。
【0053】
この明細書では、素体10の第1端面100e1、第2端面100e2、第1側面100s1、第2側面100s2、底面100bおよび天面100tを含む「素体の外面100」は、単に素体10の外周側を向く面という意味ではなく、素体10の外側と内側との境界となる面である。また、「素体10の外面100の上方」とは、重力方向に規定される鉛直上方のような絶対的な一方向ではなく、外面100を基準に、当該外面100を境界とする外側と内側とのうち、外側に向かう方向を指す。したがって、「外面100の上方」とは外面100の向きによって定まる相対的な方向である。また、ある要素に対して「上方(above)」には、当該要素とは離れた上方、すなわち当該要素上の他の物体を介した上側の位置や間隔を空けた上側の位置だけではなく、当該要素と接する直上の位置(on)も含む。
【0054】
素体10は、基板21と、基板21上に設けられた絶縁層22とを含む。基板21は、Z方向に互いに対向する底面21bおよび天面21tを有する。絶縁層22は、基板21の底面21b上に設けられている。底面21bは、特許請求の範囲に記載の「第1主面」の一例に相当し、天面21tは、特許請求の範囲に記載の「第2主面」の一例に相当する。
【0055】
コイル110は、底面21b上に設けられ、かつ、絶縁層22に覆われた底面配線11bと、天面21t上に設けられた天面配線11tと、底面21bから天面21tに渡って基板21を貫通するように設けられ、かつ、軸AXに対して互いに反対側に配置された第1貫通配線13および第2貫通配線14とを含む。底面配線11bは、特許請求の範囲に記載の「第1コイル配線」の一例に相当し、天面配線11tは、特許請求の範囲に記載の「第2コイル配線」の一例に相当する。底面配線11bと、第1貫通配線13と、天面配線11tと、第2貫通配線14とは、この順に接続されることにより、螺旋状の少なくとも一部を構成する。
【0056】
第1外部電極121の少なくとも一部は、底面配線11bの上方で、かつ、底面配線11bから離隔するように絶縁層22に設けられている。
図2に示すように、底面21bに直交する方向からみて、第1外部電極121は、底面配線11bおよび天面配線11tのそれぞれと重なり、かつ、第1外部電極121と底面配線11bとの重なり部分の面積は、第1外部電極121と天面配線11tとの重なり部分の面積よりも小さい。
図2では、第1外部電極121と底面配線11bとの重なり部分を、実線の斜線にて示し、第1外部電極121と天面配線11tとの重なり部分を、破線の斜線にて示している。
【0057】
上記構成によれば、底面21bに直交する方向において、第1外部電極121は、天面配線11tよりも底面配線11bに近い。そして、第1外部電極121と底面配線11bとの重なり部分の面積は、第1外部電極121と天面配線11tとの重なり部分の面積よりも小さい。このように、第1外部電極121に近い底面配線11bと第1外部電極121との重なり部分の面積を相対的に小さくできるので、第1外部電極121と底面配線11bとの間の寄生容量を小さくでき、Q値を高くできる。また、第1外部電極121と底面配線11bと間のリーク電流を抑制でき、インダクタ部品1の信頼性を向上させることができる。
【0058】
また、第2外部電極122についても、第1外部電極121と同様の構成であり、上述の第1外部電極121と同様の作用効果を有する。
【0059】
つまり、第2外部電極122の少なくとも一部は、底面配線11bの上方で、かつ、底面配線11bから離隔するように絶縁層22に設けられている。底面21bに直交する方向からみて、第2外部電極122は、底面配線11bおよび天面配線11tのそれぞれと重なり、かつ、第2外部電極122と底面配線11bとの重なり部分(
図2の実線の斜線にて示す)の面積は、第2外部電極122と天面配線11tとの重なり部分(
図2の破線の斜線にて示す)の面積よりも小さい。したがって、第2外部電極122と底面配線11bとの間の寄生容量を小さくでき、Q値を高くできる。また、第2外部電極122と底面配線11bと間のリーク電流を抑制でき、インダクタ部品1の信頼性を向上させることができる。
【0060】
なお、第1外部電極121および第2外部電極122のうちの少なくとも第1外部電極121において、底面配線11bとの重なり面積が、天面配線11tとの重なり面積よりも小さくてもよい。
【0061】
2.各部構成
(インダクタ部品1)
インダクタ部品1の体積は、0.08mm3以下であり、かつ、インダクタ部品1の長辺の大きさは、0.65mm以下である。インダクタ部品1の長辺の大きさは、インダクタ部品1の長さ、幅および高さのうちの最も大きい値をいい、この実施形態では、X方向の長さをいう。上記構成によれば、インダクタ部品1の体積が小さく、かつ、インダクタ部品1の長辺も短いので、インダクタ部品1の重量が軽くなる。このため、外部電極121,122が小さくても、必要な実装強度を得ることができる。
【0062】
具体的に述べると、インダクタ部品1のサイズ(長さ(X方向)×幅(Y方向)×高さ(Z方向))は、0.6mm×0.3mm×0.3mm、0.4mm×0.2mm×0.2mm、0.25mm×0.125mm×0.120mmなどである。また、幅と高さは等しくなくてもよく、例えば、0.4mm×0.2mm×0.3mmなどであってもよい。
【0063】
(素体10)
素体10は、Z方向の両端側にある底面21bおよび天面21tを有する基板21と、基板21の底面21bおよび天面21tのそれぞれを覆う絶縁層22とを備える。なお、絶縁層22は、底面21bおよび天面21tのうちの底面21bのみに設けられていてもよい。
【0064】
基板21の材料は、好ましくは、ガラスであり、これによれば、ガラスは絶縁性が高いため、渦電流を抑制でき、Q値を高くできる。基板21には、好ましくは、Si元素が含有され、これによれば、基板21の熱的安定性が高く、このため、熱による素体10寸法などの変動を抑制し、電気特性バラツキを小さくすることができる。
【0065】
基板21は、好ましくは、単層ガラス板である。これによれば、素体10の強度を確保することができる。また、単層ガラス板の場合、誘電損が小さいことから高周波でのQ値を高くすることができる。また、焼結体のような焼結工程がないので焼結時の素体10の変形が抑制できることからパターンズレを抑制でき、インダクタンス公差の小さいインダクタ部品を提供できる。
【0066】
単層ガラス板の材料としては、製造方法の観点からは、FoturanII(SchottAG社登録商標)に代表される感光性を有するガラス板が好ましい。特に、単層ガラス板は、セリウム酸化物(セリア:CeO2)を含有していることが好ましく、この場合、セリウム酸化物が増感剤となって、フォトリソグラフィによる加工がより容易となる。
【0067】
ただし、単層ガラス板は、ドリル、サンドブラストなどの機械加工、フォトレジスト・メタルマスクなどを用いたドライ/ウェットエッチング加工、レーザ加工などによって加工できることから、感光性を有さないガラス板であってもよい。また、単層ガラス板は、ガラスペーストを焼結させたものであってもよいし、フロート法などの公知の方法よって形成されていてもよい。
【0068】
単層ガラス板は、ガラス体の内部に一体化した内部導体など、配線(コイル110の一部)を取り込んでいない単層の板状部材である。特に、単層ガラス板は、ガラス体としての外側と内側との境界としての外面を有する。単層ガラス板に形成された貫通孔Vもガラス体の外側と内側との境界であるため、素体10の外面100に含まれる。
【0069】
単層ガラス板は、基本的にはアモルファス状態であるが、結晶化部を有していてもよい。例えば上記FoturanIIの場合、アモルファス状態のガラスの誘電率が6.4であるのに対し、結晶化させることで、誘電率を5.8に減少できる。これによって、結晶化部付近の、導体間(配線間)の浮遊容量を減少させることができる。
【0070】
絶縁層22は、配線(底面配線11b、天面配線11t)を覆うことで、配線を外力から保護し、配線の損傷を防止する役割や、配線の絶縁性を向上する役割を有する部材である。絶縁層22は、例えば絶縁性及び薄膜化に優れた珪素やハフニウムなどの酸化物、窒化物、酸窒化物などの無機膜とすることが好ましい。ただし、絶縁層22はより形成が容易なエポキシ、ポリイミドなどの樹脂膜であってもよい。特に、絶縁層22は、低誘電率の材料で構成されることが好ましく、これにより、コイル110と外部電極121,122との間に絶縁層22が存在する場合、コイル110と外部電極121,122との間に形成される浮遊容量を低減することができる。
【0071】
絶縁層22は、例えば、ABF GX-92(味の素ファインテクノ株式会社社製)などの樹脂フィルムをラミネートするか、ペースト状の樹脂を塗布、熱硬化するなどによって形成できる。
【0072】
好ましくは、絶縁層22の厚みは、基板21の厚みの1/3以下であり、絶縁層22の誘電率は、基板21の誘電率よりも小さい。厚みとは、底面21bに直交する方向の大きさの最大値である。これによれば、絶縁層22の厚みが薄くなり、インダクタ部品1を小型化できる。また、絶縁層22の厚みが薄くなり、第1と第2外部電極121,122と底面配線11bとの距離が短くなっても、絶縁層22の誘電率が基板21の誘電率よりも小さいため、第1と第2外部電極121,122と底面配線11bとの間の寄生容量を小さくでき、Q値を高くできる。
【0073】
なお、素体10は、焼結体を含んでいてもよく、つまり、基板21は、焼結体であってもよく、素体10の強度を確保することができる。また、焼結体にフェライトなどを用いることで、インダクタンスの取得効率を高くすることができる。
【0074】
素体10は、さらに、底面21b側の絶縁層22上の一部を覆う絶縁膜を備えていてもよい。つまり、絶縁膜は、絶縁層22上に設けられた第1外部電極121および第2外部電極122の間に少なくとも位置し、第1外部電極121と第2外部電極122の短絡をより確実に防止することができる。絶縁膜の材料は、例えば、絶縁層22と同じ材料である。
【0075】
(コイル110)
コイル110は、基板21の底面21bの上方に配置され絶縁層22に覆われた底面配線11bと、基板21の天面21tの上方に配置され絶縁層22に覆われた天面配線11tと、基板21を底面21bおよび天面21tに渡って貫通し、互いに軸AXに対して反対側に配置された一対の貫通配線13,14とを備える。底面配線11b、第1貫通配線13、天面配線11tおよび第2貫通配線14は、順に接続されて軸AX方向に巻き回されたコイル110の少なくとも一部を構成する。
【0076】
上記構成によれば、コイル110は、いわゆるヘリカル形状のコイル110であるので、軸AXに直交する断面において、底面配線11b、天面配線11tおよび貫通配線13.14がコイル110の巻き回し方向に沿って並走する領域を低減でき、コイル110における浮遊容量を低減できる。
【0077】
ここで、ヘリカル形状とは、コイル全体のターン数は1ターンより大きく、かつ、軸に直交する断面におけるコイルのターン数は1ターン未満である形状をいう。1ターン以上とは、軸に直交する断面において、コイルの配線が、軸方向からみて径方向に隣り合って巻回方向に並走する部分を有する状態をいい、1ターン未満とは、軸に直交する断面において、コイルの配線が、軸方向からみて径方向に隣り合って巻回方向に並走する部分を有さない状態をいう。なお、配線の並走する部分は、配線の巻回方向に延在する延在部分のみならず、延在部分の端部に接続され延在部分の幅よりも大きな幅を有するパッド部をも含む。
【0078】
底面配線11bは、一つの方向にのみ延在する。具体的に述べると、底面配線11bは、ややX方向に傾いてY方向に延伸している。複数の底面配線11bは、X方向に沿って平行に配置されている。ここで、フォトリソグラフィ工程において、例えば輪帯照明、ダイポール照明などの変形照明を使用すると、特定方向のパターン解像性を高めて、より微細なパターンを形成することができる。上記構成によれば、底面配線11bが1方向にのみ延在しているため、フォトリソグラフィ工程で例えば変形照明を使用することにより、微細な底面配線11bを形成でき、インダクタ部品1を小型化できる。
【0079】
天面配線11tは、一つの方向にのみ延在する。具体的に述べると、天面配線11tは、Y方向に延びる形状である。複数の天面配線11tは、X方向に沿って平行に配置されている。上記構成によれば、天面配線11tが1方向にのみ延在しているため、フォトリソグラフィ工程で例えば変形照明を使用することにより、微細な天面配線11tを形成でき、インダクタ部品1を小型化できる。
【0080】
第1貫通配線13は、素体10の貫通孔V内で、軸AXに対して第1側面100s1側に配置され、第2貫通配線14は、素体10の貫通孔V内で、軸AXに対して第2側面100s2側に配置されている。第1貫通配線13および第2貫通配線14は、それぞれ、底面21bおよび天面21t(底面100bおよび天面100t)に直交する方向に延伸している。これによれば、第1貫通配線13および第2貫通配線14の長さを短くできるため、直流抵抗(Rdc)を抑制できる。複数の第1貫通配線13および複数の第2貫通配線14は、それぞれ、X方向に沿って平行に配置されている。
【0081】
底面配線11bおよび天面配線11tは、銅、銀,金又はこれらの合金などの良導体材料からなる。底面配線11bおよび天面配線11tは、めっき、蒸着、スパッタリングなどによって形成された金属膜であってもよいし、導体ペーストを塗布、焼結させた金属焼結体であってもよい。また、底面配線11bおよび天面配線11tは、複数の金属層が積層された多層構造であってもよい。底面配線11bおよび天面配線11tの厚みは、5μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0082】
なお、底面配線11bおよび天面配線11tは、セミアディティブ法によって形成することが好ましく、これにより、低電気抵抗、高精度及び高アスペクトな底面配線11bおよび天面配線11tを形成することができる。例えば、底面配線11bおよび天面配線11tは、次のように形成することができる。まず、個片化された素体10の外面100全体に、スパッタリング法又は無電解めっきによって、チタンの層及び銅の層をこの順に形成してシード層とし、当該シード層上にパターニングされたフォトレジストを形成する。次に、フォトレジストの開口部におけるシード層上に電解めっきで銅の層を形成する。その後に、フォトレジスト及びシード層をウェットエッチング又はドライエッチングで除去する。これにより、任意の形状にパターニングされた底面配線11bおよび天面配線11tを素体10の外面100上に形成することができる。
【0083】
第1貫通配線13および第2貫通配線14は、素体10に予め形成された貫通孔V内に、底面配線11bおよび天面配線11tで例示した材料、製法を用いて形成することができる。
【0084】
好ましくは、底面配線11b、天面配線11t、第1貫通配線13および第2貫通配線14は、銅が主成分である。これによれば、配線の材料として安価で導電性が高い銅を使用することにより、インダクタ部品1の量産性を向上し、Q値を高くできる。
【0085】
好ましくは、
図2に示すように、底面21bに直交する方向からみて、底面配線11bの第1の端部と天面配線11tの第1の端部とが重なり、底面配線11bと天面配線11tとのなす角度θは、鋭角である。角度θとは、底面21bに直交する方向からみて、底面配線11bの幅の中心線(
図2の一点鎖線)と天面配線11tの幅の中心線(
図2の一点鎖線)との間の角度である。
【0086】
上記構成によれば、コイル110が密に巻回されるため、インダクタンスを向上させることができる。なお、全ての底面配線11bおよび天面配線11tの少なくとも1組の底面配線11bおよび天面配線11tにおいて、角度θが、鋭角であればよい。
【0087】
好ましくは、少なくとも1組の底面配線11bおよび天面配線11tにおいて、角度θは、5度以上45度以下である。これによれば、コイル110がより密に巻回されるため、インダクタンスをさらに向上させることができる。
【0088】
好ましくは、
図2に示すように、天面配線11tは、複数存在し、第1貫通配線13および第2貫通配線14は、それぞれ複数存在する。1つの天面配線11tと、1つの天面配線11tの両端部にそれぞれ接続された1つの第1貫通配線13および1つの第2貫通配線14と、が1組を構成し、かつ、組は複数存在する。底面21bに直交する方向からみて、少なくとも1組の第1貫通配線13および第2貫通配線14に接続された天面配線11tの延在方向は、コイル110の軸AX方向に直交し、かつ、少なくとも1組の第1貫通配線13および第2貫通配線14は、コイル110の軸AXに対して線対称となるように配置されている。
【0089】
上記構成によれば、天面配線11tの延在方向がコイル110の軸AX方向に対して傾いている場合と比較して、コイル110の軸AX方向の大きさを小さくでき、インダクタ部品1を小型化できる。なお、好ましくは、半分以上の組の第1貫通配線13および第2貫通配線14が、コイル110の軸AXに対して線対称となるように配置され、さらに好ましくは、全ての組の第1貫通配線13および第2貫通配線14が、コイル110の軸AXに対して線対称となるように配置され、コイル110の軸AX方向の大きさをより小さくできる。
【0090】
好ましくは、第1貫通配線13および第2貫通配線14の少なくとも1つは、延在方向に直交する断面の形状が円形である。上記構成によれば、貫通配線が設けられる貫通孔Vをレーザで容易に形成できる。また、貫通孔Vをめっきで充填する際に、等方的にめっきを充填できるため、空隙が少ないめっきを形成できる。なお、全ての第1貫通配線13および第2貫通配線14の断面の形状が円形であれば、貫通孔Vをより容易に形成できる。
【0091】
好ましくは、コイル110の軸AXは、素体10の底面100bに対して平行である。具体的に述べると、軸AXは、X方向に対して平行である。これによれば、素体10の底面100bを実装基板に対向してインダクタ部品1を実装する場合、実装基板によるコイル110の磁束の妨げを少なくでき、インダクタンスの取得効率を向上できる。
【0092】
(第1外部電極121および第2外部電極122)
第1外部電極121は、素体10の外面100から露出するように、素体10のX方向の中心に対して第1端面100e1側に設けられている。第2外部電極122は、素体10の外面100から露出するように、素体10のX方向の中心に対して第2端面100e2側に設けられている。
【0093】
第1外部電極121は、コイル110の第1端に接続され、第2外部電極122は、コイル110の第2端に接続される。第1外部電極121および第2外部電極122は、それぞれ、単層の導電体材料から構成され、または、複数層の導電材料から構成されていてもよい。単層の導電材料の場合、例えば、コイル110と同じ材料から構成され、複数層の導電材料の場合、例えば、コイル110と同じ材料の下地層と、下地層を覆うめっき層とから構成される。
【0094】
第1外部電極121は、第1端面100e1および底面100bに連続して設けられている。上記構成によれば、第1外部電極121は、いわゆるL字形状の電極であるので、インダクタ部品1を実装基板に実装する際、第1外部電極121にはんだフィレットを形成することができる。これにより、インダクタ部品1の実装強度を向上でき、また、インダクタ部品1の実装姿勢をより安定化できる。
【0095】
第1外部電極121は、第1端面100e1に設けられた第1端面部分121eと、底面100bに設けられた第1底面部分121bとを有する。第1端面部分121eと第1底面部分121bは、接続されている。第1端面部分121eは、第1端面100e1から露出するように第1端面100e1に埋め込まれている。第1底面部分121bは、底面100bから突出するように底面100b上に配置されている。第1端面部分121eは、コイル110の第2貫通配線14に接続されている。
【0096】
第1端面部分121eは、Z方向に沿って順に接続された第1部分121e1、第2部分121e2および第3部分121e3を有する。第1部分121e1は、底面100bにおいて第1底面部分121bに接続される。第2部分121e2は、素体10内において第2貫通配線14に接続される。X方向のうちの第1端面100e1側から見たとき、第1部分121e1、第2部分121e2および第3部分121e3は、長方形である。第1部分121e1のY方向の大きさと、第2部分121e2のY方向の大きさと第3部分121e3のY方向の大きさとは、互いに異なる。
【0097】
第2外部電極122は、第2端面100e2および底面100bに連続して設けられている。上記構成によれば、第2外部電極122は、いわゆるL字形状の電極であるので、インダクタ部品1を実装基板に実装する際、第2外部電極122にはんだフィレットを形成することができる。これにより、インダクタ部品1の実装強度を向上でき、また、インダクタ部品1の実装姿勢をより安定化できる。
【0098】
第2外部電極122は、第2端面100e2に設けられた第2端面部分122eと、底面100bに設けられた第2底面部分122bとを有する。第2端面部分122eと第2底面部分122bは、接続されている。第2端面部分122eは、コイル110の第1貫通配線13に接続されている。第2端面部分122eは、第2端面100e2から露出するように第2端面100e2に埋め込まれている。第2底面部分122bは、底面100bから突出するように底面100b上に配置されている。
【0099】
第2端面部分122eは、Z方向に沿って順に接続された第1部分122e1、第2部分122e2および第3部分122e3を有する。第1部分122e1は、底面100bにおいて第2底面部分122bに接続される。第2部分122e2は、素体10内において第1貫通配線13に接続される。X方向のうちの第2端面100e2側から見たとき、第1部分122e1、第2部分122e2および第3部分122e3は、長方形である。第1部分122e1のY方向の大きさと、第2部分122e2のY方向の大きさと第3部分122e3のY方向の大きさとは、互いに異なる。
【0100】
(第1外部電極121の重なり面積と第2外部電極122の重なり面積)
図2に示すように、底面21bに直交する方向からみて、第1外部電極121と底面配線11bとの重なり部分(
図2の実線の斜線にて示す)の面積は、第1外部電極121と天面配線11tとの重なり部分(
図2の破線の斜線にて示す)の面積よりも小さい。具体的に述べると、第1底面部分121bと底面配線11bとの重なり部分の面積は、第1底面部分121bと天面配線11tとの重なり部分の面積よりも小さい。これにより、第1底面部分121bと底面配線11bとの間の寄生容量を小さくできる。
【0101】
第1外部電極121と底面配線11bおよび天面配線11tとの重なり部分とは、第1外部電極121のうちのコイル110(第2貫通配線14)に直接接続される部分(第2部分121e2)と底面配線11bおよび天面配線11tとの重なり部分を除く。これは、第2部分121e2が底面配線11bに重なったとしても、第2部分121e2は底面配線11bとほぼ同電位となるため、第2部分121e2と底面配線11bとの間の寄生容量はそもそも小さくなるからである。
【0102】
また、第2外部電極122についても、第1外部電極121と同様の構成であり、底面21bに直交する方向からみて、第2外部電極122と底面配線11bとの重なり部分(
図2の実線の斜線にて示す)の面積は、第2外部電極122と天面配線11tとの重なり部分(
図2の破線の斜線にて示す)の面積よりも小さい。具体的に述べると、第2底面部分122bと底面配線11bとの重なり部分の面積は、第2底面部分122bと天面配線11tとの重なり部分の面積よりも小さい。これにより、第2底面部分122bと底面配線11bとの間の寄生容量を小さくできる。
【0103】
第2外部電極122と底面配線11bおよび天面配線11tとの重なり部分とは、第2外部電極122のうちのコイル110(第1貫通配線13)に直接接続される部分(第2部分122e2)と底面配線11bおよび天面配線11tとの重なり部分を除く。これは、第2部分122e2が底面配線11bに重なったとしても、第2部分122e2は底面配線11bとほぼ同電位となるため、第2部分122e2と底面配線11bとの間の寄生容量はそもそも小さくなるからである。
【0104】
(インダクタ部品1の製造方法)
次に、
図4Aから
図4Hを用いてインダクタ部品1の製造方法を説明する。
図4Aから
図4Hは、
図2のB-B断面に対応した図である。
【0105】
図4Aに示すように、基板21となるガラス基板1021を準備する。ガラス基板1021は、単層ガラス板である。ガラス基板1021の所定位置に複数の貫通孔Vを設ける。このとき、ガラス基板1021をレーザ加工により開口するが、または、ドライもしくはウェットエッチング加工、または、ドリルなどの機械加工により開口してもよい。
【0106】
図4Bに示すように、ガラス基板1021の全面に図示しないシード層を設け、シード層上に電解めっきで銅の層を形成し、ガラス基板1021の天面および底面のシード層および銅層をウェットエッチング又はドライエッチングで除去する。これにより、ガラス基板1021の貫通孔V内に第2貫通配線14となる貫通導体層1014を形成する。また、第1端面部分121eの第3部分121e3の下地となる第3下地層1121e3を形成する。このとき、図示しないが、同様に、貫通孔V内に第1貫通配線13となる貫通導体層を形成し、また、第2端面部分122eの第3部分122e3の下地となる第3下地層を形成する。
【0107】
なお、銅層の除去において、CMP加工や機械加工を用いてもよい。また、貫通孔V内において、部分的にめっきしてから空隙部に導電樹脂を充填してもよい。
【0108】
図4Cに示すように、ガラス基板1021の全面に図示しないシード層を設け、シード層上にパターニングされたフォトレジストを形成する。次に、フォトレジストの開口部におけるシード層上に電解めっきで銅の層を形成する。その後に、フォトレジスト及びシード層をウェットエッチング又はドライエッチングで除去する。これにより、任意の形状にパターニングされた底面配線11bとなる底面導体層1011bおよび天面配線11tとなる天面導体層1011tを形成する。また、第1端面部分121eの第2部分121e2の下地となる第2下地層1121e2を形成する。このとき、図示しないが、同様に、第2端面部分122eの第2部分122e2の下地となる第2下地層を形成する。
【0109】
図4Dに示すように、ガラス基板1021の天面および底面に導体層を覆うように、絶縁層22となる絶縁樹脂層1022を塗布し硬化する。
図4Eに示すように、底面側の絶縁樹脂層1022の第2下地層1121e2上にレーザ加工を用いて孔1022aを設ける。
【0110】
図4Fに示すように、底面側の絶縁樹脂層1022上に図示しないシード層を設け、シード層上にパターニングされたフォトレジストを形成する。次に、フォトレジストの開口部におけるシード層上に電解めっきで銅の層を形成する。その後に、フォトレジスト及びシード層をウェットエッチング又はドライエッチングで除去する。これにより、任意の形状にパターニングされた第1底面部分121bの下地となる第1底面下地層1121bおよび第2底面部分122bの下地となる第2底面下地層1122bを形成する。また、第1端面部分121eの第1部分121e1の下地となる第1下地層1121e1を孔1022a内に形成する。このとき、図示しないが、同様に、第2端面部分122eの第1部分122e1の下地となる第1下地層を底面側の絶縁樹脂層1022の孔内に形成する。
【0111】
図4Gに示すように、カット線Cにて個片化して、
図4Hに示すように、各下地層を覆うようにバレルめっきにてめっき層1121,1122を形成する。つまり、第1底面下地層1121b、第1下地層1121e1、第2下地層1121e2および第3下地層1121e3をめっき層1121により覆って第1外部電極121を形成する。また、第2底面下地層1122bと、第2底面下地層1122bに接続される第1下地層、第2下地層および第3下地層とを、めっき層1122により覆って、第2外部電極122を形成する。これにより、インダクタ部品1を製造する。
【0112】
めっき層1121,1122は、例えば、Ni/Snの2層から構成される。なお、めっき層1121,1122は、例えば、Cu/Ni/AuやCu/Ni/Pd/Auなどの複数層から構成されてもよい。また、外部電極として、めっき層を設けないで下地層のみとしてもよく、防錆やはんだ濡れ性、エレクトロマイグレーション耐性などから適便最適な材料を選択すればよい。
【0113】
なお、上記製造方法では、素体としてガラス基板を用いたが、素体として焼結材料を用いてもよい。この場合、1ターン以下のインダクタ配線を導電性ペーストで印刷により形成する。ここで、導電性ペーストとして、AgやCuなど導電率の良い材料を選択する。
【0114】
次に、ガラスやフェライトなどの絶縁ペーストを印刷し、これを繰り返す。上記絶縁ペーストにインダクタ配線の接続部に開口する開口部を形成し、この開口部に導電性ペーストを充填することで、各層間のインダクタ配線の接続部を電気的に接続することができる。
【0115】
その後、高温で熱処理して絶縁ペーストを焼結させてから、個片化し、外部端子を形成して、インダクタ部品を製造する。絶縁ペーストにガラスなどの絶縁性の高いものを用いると、高周波でもQの高いインダクタ部品を得ることができる。絶縁ペーストにフェライトを用いると、インダクタンスの高いインダクタ部品を得ることができる。
【0116】
3.変形例
(第1変形例)
図5は、インダクタ部品の第1変形例を示す底面100b(底面21b)側から見た模式底面図である。
【0117】
図5に示すように、第1変形例のインダクタ部品では、底面配線11bおよび天面配線11tは、それぞれ複数存在する。底面21bに直交する方向からみて、1つの底面配線11bの第1の端部と1つの天面配線11tの第1の端部とが重なって、1つの底面配線11bと1つの天面配線11tとは1組を構成し、かつ、組は複数存在する。底面21bに直交する方向からみて、少なくとも1組の底面配線11bと天面配線11tとのなす角度は、他の組の底面配線11bと天面配線11tとのなす角度と異なる。具体的に述べると、第1の組の底面配線11bと天面配線11tとのなす第1の角度θ1は、第2の組の底面配線11bと天面配線11tとのなす第2の角度θ2と異なる。ここで、上記角度を変化させると、コイル110長が変化し、インダクタンスが変化する。
【0118】
上記構成によれば、第1の角度θ1は、第2の角度θ2と異なるため、コイル110長を柔軟に変化させることができ、所望のインダクタンスを有したインダクタ部品を得やすくすることができる。なお、全ての組の底面配線11bと天面配線11tとのなす角度が互いに異なっていてもよい。
【0119】
(第2変形例)
図6は、インダクタ部品の第2変形例を示す底面100b(底面21b)側から見た模式底面図である。
【0120】
図6に示すように、第2変形例のインダクタ部品では、底面配線11bは、複数存在し、第1貫通配線13および第2貫通配線14は、それぞれ複数存在する。1つの底面配線11bと、1つの底面配線11bの両端部にそれぞれ接続された1つの第1貫通配線13および1つの第2貫通配線14とが1組を構成し、かつ、組は複数存在する。底面21bに直交する方向からみて、少なくとも1組の第1貫通配線13および第2貫通配線14に接続された底面配線11bの延在方向は、コイル110の軸AX方向に直交し、かつ、少なくとも1組の第1貫通配線13および第2貫通配線14は、コイル110の軸AXに対して線対称となるように配置されている。具体的に述べると、底面配線11bは、
図2と異なり、Y方向に延びる形状であり、天面配線11tは、
図2と異なり、ややX方向に傾いてY方向に延伸している。
【0121】
上記構成によれば、底面配線11bの延在方向がコイル110の軸AX方向に対して傾いている場合と比較して、コイル110の軸AX方向の大きさを小さくでき、インダクタ部品を小型化できる。
【0122】
なお、好ましくは、半分以上の組の第1貫通配線13および第2貫通配線14が、コイル110の軸AXに対して線対称となるように配置され、さらに好ましくは、全ての組の第1貫通配線13および第2貫通配線14が、コイル110の軸AXに対して線対称となるように配置され、コイル110の軸AX方向の大きさをより小さくできる。
【0123】
(第3変形例)
図7は、インダクタ部品の第3変形例を示すXZ断面図である。
【0124】
図7に示すように、第3変形例のインダクタ部品では、第1貫通配線13は、複数の導電体層131~134からなり、少なくとも1つの導電体層は、銅が主成分である。
【0125】
具体的に述べると、第1貫通配線13は、4層の導電体層131~134からなる。第1導電体層131、第2導電体層132、第3導電体層133および第4導電体層134は、この順で、径方向外側から内側に向かって配置されている。第1導電体層131、第2導電体層132および第3導電体層133は、それぞれ、円環状に形成され、第4導電体層134は、円柱状に形成されている。第1導電体層131は、チタンが主成分であり、第2導電体層132および第3導電体層133は、銅が主成分であり、第4導電体層134は、銀および銅を含む。第1導電体層131、第2導電体層132、第3導電体層133および第4導電体層134は、この順で、めっきなどにより貫通孔V内に形成される。
【0126】
上記構成によれば、少なくとも1つの導電体層は、銅が主成分であるので、銅は導電性が高く、第1貫通配線13の直流抵抗を抑制できる。なお、第1貫通配線13および第2貫通配線14の少なくとも1つが、複数の導電体層からなり、少なくとも1つの導電体層は、銅が主成分であればよい。
【0127】
他の変形例として、少なくとも1つの導電体層は、導電性樹脂から構成されていてもよい。具体的に述べると、第4導電体層134は、導電性樹脂から構成されていてもよい。第4導電体層134は、導体ペーストの塗布などにより貫通孔V内に形成される。これによれば、貫通孔Vを導電性樹脂で容易に充填することができる。
【0128】
なお、少なくとも1つの導電体層は、空洞Sを有していてもよい。好ましくは、最も径方向内側に位置する導電体層は、空洞Sを有する。具体的に述べると、第4導電体層134は、空洞Sを有する。これによれば、空洞Sにより応力を緩和することができる。
【0129】
(第4変形例)
図8は、インダクタ部品の第4変形例を示すXZ断面図である。
【0130】
図8に示すように、第4変形例のインダクタ部品では、底面21bに直交する方向からみて、底面配線11bのうち、底面配線11bに接続された第1貫通配線13の底面配線11b側の端面13bと重なる部分の上面11b1は、凹部を有する。これによれば、底面配線11bの上面11b1が凹部を有することにより、底面配線11bの上面11b1の面積が大きくなり、絶縁層22との密着性を向上させることができる。なお、底面配線11bのうち第2貫通配線14の端面と重なる部分の上面が、同様に、凹部を有していてもよい。
【0131】
同様に、天面21tに直交する方向からみて、天面配線11tのうち、天面配線11tに接続された第1貫通配線13の天面配線11t側の端面13tと重なる部分の上面11t1は、凹部を有する。これによれば、天面配線11tの上面11t1が凹部を有することにより、天面配線11tの上面11t1の面積が大きくなり、絶縁層22との密着性を向上させることができる。なお、天面配線11tのうち第2貫通配線14の端面と重なる部分の上面が、同様に、凹部を有していてもよい。
【0132】
底面配線11bの上面11b1および天面配線11tの上面11t1に凹部を形成する方法として、例えば、
図4Bにおいて、銅層を除去しないで、
図4Cに示すように、底面導体層1011bおよび天面導体層1011tを形成することで、貫通孔Vに対応する底面導体層1011bおよび天面導体層1011tの上面の形状を、凹形状とすることができる。
【0133】
<第2実施形態>
図9は、インダクタ部品の第2実施形態を示す底面側から見た模式底面図である。
図9では、便宜上、素体の絶縁層を省略して描き、外部電極の一部(底面部分)を二点鎖線で描いている。第2実施形態は、第1実施形態とは、コイルの軸の位置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0134】
図9に示すように、第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、コイル110の軸AXは、X方向に対して垂直である。具体的に述べると、軸AXは、Y方向に対して平行である。これによれば、第1外部電極121および第2外部電極122によるコイル110の磁束の妨げを少なくでき、インダクタンスの取得効率を向上できる。
【0135】
第2実施形態のインダクタ部品1Aでは、第1実施形態と同様に、底面21bに直交する方向からみて、第1外部電極121と底面配線11bとの重なり部分(
図9の実線の斜線にて示す)の面積は、第1外部電極121と天面配線11tとの重なり部分(
図9の破線の斜線にて示す)の面積よりも小さい。これにより、第1外部電極121(第1底面部分121b)と底面配線11bとの間の寄生容量を小さくできる。
【0136】
また、底面21bに直交する方向からみて、第2外部電極122と底面配線11bとの重なり部分(
図9の実線の斜線にて示す)の面積は、第2外部電極122と天面配線11tとの重なり部分(
図9の破線の斜線にて示す)の面積よりも小さい。これにより、第2外部電極122(第2底面部分122b)と底面配線11bとの間の寄生容量を小さくできる。
【0137】
なお、図示しないが、コイル110の軸AXは、素体10の底面100bに対して垂直であってもよく、これによれば、第1外部電極121および第2外部電極122によるコイル110の磁束の妨げを少なくでき、インダクタンスの取得効率を向上できる。
【0138】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されず、本開示の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、第1と第2実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1,1A インダクタ部品
10 素体
11b 底面配線(第1コイル配線)
11b1 上面
11t 天面配線(第2コイル配線)
11t1 上面
13 第1貫通配線
13b,13t 端面
14 第2貫通配線
21 基板
21b 底面(第1主面)
21t 天面(第2主面)
22 絶縁層
100 外面
100b 底面
100t 天面
100s1 第1側面
100s2 第2側面
100e1 第1端面
100e2 第2端面
110 コイル
121 第1外部電極
121b 第1底面部分
121e 第1端面部分
121e1 第1部分
121e2 第2部分
121e3 第3部分
122 第2外部電極
122b 第2底面部分
122e 第2端面部分
122e1 第1部分
122e2 第2部分
122e3 第3部分
AX 軸
V 貫通孔
θ,θ1,θ2 底面配線と天面配線のなす角度