(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】燃料性状検出装置
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
F02D45/00 369
F02D45/00 362
(21)【出願番号】P 2021095293
(22)【出願日】2021-06-07
【審査請求日】2023-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿崎 隆太
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-255239(JP,A)
【文献】特開2007-224724(JP,A)
【文献】特開2008-261226(JP,A)
【文献】特開2013-032768(JP,A)
【文献】特開2021-021351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されたディーゼルエンジンで用いている燃料のセタン価を検出する燃料性状検出装置であって、
前記燃料性状検出装置は、
前記ディーゼルエンジンの運転状態に基づいて、1回の燃焼
行程に対する燃料の噴射量である総噴射量を求め、1回の燃焼
行程に対して前記総噴射量を単数または複数の燃料噴射にて噴射しており、
前記ディーゼルエンジンがアイドル状態である場合に、
1回の燃焼行程に対する燃料噴射の中で主となるメイン噴射の噴射時期の進角及び遅角によるアイドル回転数の変動に対して前記アイドル状態での目標回転数である目標アイドル回転数を維持するように
前記アイドル状態での前記総噴射量を増減する、アイドル噴射量調整部と、
前記ディーゼルエンジンが前記アイドル状態である場合に
、前記メイン噴射の
前記噴射時期を
、前記アイドル噴射量調整部にて増減した前記アイドル状態での前記総噴射量と予め設定されたセタン価検出目標噴射量との差が所定範囲内となるまで進角または遅角し、前記差が前記所定範囲内となった後は微小量だけ進角させたり遅角させたりする、噴射時期変更部と、
前記ディーゼルエンジンが前記目標アイドル回転数を維持している前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量である場合における前記メイン噴射の前記噴射時期であるセタン価検出用噴射時期にセタン価が対応付けられた噴射時期・セタン価特性が記憶された記憶装置と、
前記噴射時期変更部にて前記アイドル状態での前記メイン噴射の前記噴射時期を前記微小量だけ進角させたり遅角させたりした際において前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量とほぼ一致した前記メイン噴射の前記噴射時期
を前記セタン価検出用噴射時期として、当該セタン価検出用噴射時期と前記噴射時期・セタン価特性とに基づいて燃料のセタン価を算出する、セタン価算出部と、
を有している、
燃料性状検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料性状検出装置であって、
前記燃料性状検出装置は、
前記セタン価算出部にて、
前記噴射時期変更部にて前記アイドル状態での前記メイン噴射の前記噴射時期を前記微小量だけ進角させたり遅角させたりした際において前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量とほぼ一致した前記噴射時期を複数取得し、取得した複数の前記噴射時期の平均である平均噴射時期を求め、当該平均噴射時期
を前記セタン価検出用噴射時期として、当該セタン価検出用噴射時期と前記噴射時期・セタン価特性とに基づいて燃料のセタン価を算出する、
燃料性状検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の燃料性状検出装置であって、
前記燃料性状検出装置は、
前記車両が前記アイドル状態を継続している期間をアイドル継続期間として、1度の前記アイドル継続期間に対して、前記噴射時期変更部の処理と
前記セタン価算出部の処理とを含むセタン価検出処理を1度実行し、
前記セタン価検出処理を実行した回数であるセタン価検出実行回数が、前記セタン価検出処理の許容実行回数であるセタン価検出許容回数に達した場合、以降の前記アイドル継続期間での前記セタン価検出処理の実行を中止する、
燃料性状検出装置。
【請求項4】
請求項3に記載の燃料性状検出装置であって、
前記燃料性状検出装置は、
前記車両に燃料が補給されたと判定した場合に、前記セタン価検出実行回数をリセットする、
燃料性状検出装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の燃料性状検出装置であって、
前記セタン価検出許容回数は2回以上であり、
前記燃料性状検出装置は、
前記噴射時期変更部にて、2回目以降の前記アイドル継続期間では、前回実行した前記噴射時期変更部にて求めた前記平均噴射時期から、前記噴射時期の変更を開始する、
燃料性状検出装置。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか一項に記載の燃料性状検出装置であって、
前記記憶装置には、
前記車両の運転状態に基づいたパラメータが異なる複数種類の前記噴射時期・セタン価特性が記憶されており、
前記燃料性状検出装置は、
1度の前記アイドル継続期間に対して1度実行した前記セタン価検出処理にて、
前記噴射時期変更部にて前記アイドル状態での前記メイン噴射の前記噴射時期を前記微小量だけ進角させたり遅角させたりした際において前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量とほぼ一致した前記メイン噴射の前記噴射時期
である前記セタン価検出用噴射時期と、それぞれの前記パラメータと、それぞれの前記パラメータに応じたそれぞれの前記噴射時期・セタン価特性とに基づいて求めたそれぞれのセタン価の平均を、当該アイドル継続期間にて検出されたセタン価とする、
燃料性状検出装置。
【請求項7】
請求項3~6のいずれか一項に記載の燃料性状検出装置であって、
前記燃料性状検出装置は、
前記セタン価算出部にて、前記アイドル継続期間ごとに算出したセタン価を仮セタン価として、前記仮セタン価の平均をセタン価として算出する、
燃料性状検出装置。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の燃料性状検出装置であって、
前記燃料性状検出装置は、
前記噴射時期変更部の処理と前記セタン価算出部の処理とを実行している場合は、予め設定されたセタン価検出用目標アイドル回転数を前記目標アイドル回転数とする、
燃料性状検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたディーゼルエンジンで用いている燃料のセタン価を検出する燃料性状検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ディーゼルエンジンを搭載した車両の制御装置は、ディーゼルエンジンで用いている燃料のセタン価を検出し、セタン価に応じて燃料噴射量や燃料噴射時期を制御することで安定した燃焼を実現し、エンジン性能の向上や燃費の向上等を図っている。
【0003】
例えば特許文献1には、ディーゼル機関が燃料噴射を停止して惰性回転しながら回転数を徐々に低下させている期間において所定気筒に対して検出用噴射を実行することで、惰性回転中に一瞬だけトルクを発生させ、このトルク(トルク相当量)に基づいて、燃料のセタン価を検出する燃料性状検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の燃料性状検出装置では、実際にセタン価を検出するための検出用噴射が実行されるタイミングが、ほぼ以下の(1)~(3)のタイミングに限定され、運転者によってはセタン価の検出頻度が少なくなる点が好ましくない。
(1)車両の停車中に運転者が空ぶかしした後のディーゼルエンジンの回転数の下降中。
(2)車両がマニュアルトランスミッション(MT)の場合、運転者が踏み込んでいたアクセルペダルをOFFにしてクラッチペダルを踏み込んだ後のディーゼルエンジンの回転数の下降中。
(3)車両がオートマチックトランスミッション(AT)の場合、運転者が踏み込んでいたアクセルペダルをOFFにしてトルコン状態(直結(ロックアップ)ではなく、トルクコンバータを介して動力が伝達されている状態)のディーゼルエンジンの回転数の下降中。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、ディーゼルエンジンで用いる燃料のセタン価をより高い頻度で検出することで、セタン価に応じてエンジン性能や燃費等をより向上させることができる、燃料性状検出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、車両に搭載されたディーゼルエンジンで用いている燃料のセタン価を検出する燃料性状検出装置である。前記燃料性状検出装置は、前記ディーゼルエンジンの運転状態に基づいて、1回の燃焼行程に対する燃料の噴射量である総噴射量を求め、1回の燃焼行程に対して前記総噴射量を単数または複数の燃料噴射にて噴射しており、前記ディーゼルエンジンがアイドル状態である場合に、1回の燃焼行程に対する燃料噴射の中で主となるメイン噴射の噴射時期の進角及び遅角によるアイドル回転数の変動に対して前記アイドル状態での目標回転数である目標アイドル回転数を維持するように前記アイドル状態での前記総噴射量を増減する、アイドル噴射量調整部と、前記ディーゼルエンジンが前記アイドル状態である場合に、前記メイン噴射の前記噴射時期を、前記アイドル噴射量調整部にて増減した前記アイドル状態での前記総噴射量と予め設定されたセタン価検出目標噴射量との差が所定範囲内となるまで進角または遅角し、前記差が前記所定範囲内となった後は微小量だけ進角させたり遅角させたりする、噴射時期変更部と、前記ディーゼルエンジンが前記目標アイドル回転数を維持している前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量である場合における前記メイン噴射の前記噴射時期であるセタン価検出用噴射時期にセタン価が対応付けられた噴射時期・セタン価特性が記憶された記憶装置と、前記噴射時期変更部にて前記アイドル状態での前記メイン噴射の前記噴射時期を前記微小量だけ進角させたり遅角させたりした際において前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量とほぼ一致した前記メイン噴射の前記噴射時期を前記セタン価検出用噴射時期として、当該セタン価検出用噴射時期と前記噴射時期・セタン価特性とに基づいて燃料のセタン価を算出する、セタン価算出部と、を有している、燃料性状検出装置である。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る燃料性状検出装置であって、前記燃料性状検出装置は、前記セタン価算出部にて、前記噴射時期変更部にて前記アイドル状態での前記メイン噴射の前記噴射時期を前記微小量だけ進角させたり遅角させたりした際において前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量とほぼ一致した前記噴射時期を複数取得し、取得した複数の前記噴射時期の平均である平均噴射時期を求め、当該平均噴射時期を前記セタン価検出用噴射時期として、当該セタン価検出用噴射時期と前記噴射時期・セタン価特性とに基づいて燃料のセタン価を算出する、燃料性状検出装置である。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る燃料性状検出装置であって、前記燃料性状検出装置は、前記車両が前記アイドル状態を継続している期間をアイドル継続期間として、1度の前記アイドル継続期間に対して、前記噴射時期変更部の処理と前記セタン価算出部の処理とを含むセタン価検出処理を1度実行し、前記セタン価検出処理を実行した回数であるセタン価検出実行回数が、前記セタン価検出処理の許容実行回数であるセタン価検出許容回数に達した場合、以降の前記アイドル継続期間での前記セタン価検出処理の実行を中止する、燃料性状検出装置である。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第3の発明に係る燃料性状検出装置であって、前記燃料性状検出装置は、前記車両に燃料が補給されたと判定した場合に、前記セタン価検出実行回数をリセットする、燃料性状検出装置である。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第3の発明または第4の発明に係る燃料性状検出装置であって、前記セタン価検出許容回数は2回以上であり、前記燃料性状検出装置は、前記噴射時期変更部にて、2回目以降の前記アイドル継続期間では、前回実行した前記噴射時期変更部にて求めた前記平均噴射時期から、前記噴射時期の変更を開始する、燃料性状検出装置である。
【0012】
次に、本発明の第6の発明は、上記第3の発明~第5の発明のいずれか1つに係る燃料性状検出装置であって、前記記憶装置には、前記車両の運転状態に基づいたパラメータが異なる複数種類の前記噴射時期・セタン価特性が記憶されている。そして前記燃料性状検出装置は、1度の前記アイドル継続期間に対して1度実行した前記セタン価検出処理にて、前記噴射時期変更部にて前記アイドル状態での前記メイン噴射の前記噴射時期を前記微小量だけ進角させたり遅角させたりした際において前記アイドル状態での前記総噴射量が前記セタン価検出目標噴射量とほぼ一致した前記メイン噴射の前記噴射時期である前記セタン価検出用噴射時期と、それぞれの前記パラメータと、それぞれの前記パラメータに応じたそれぞれの前記噴射時期・セタン価特性とに基づいて求めたそれぞれのセタン価の平均を、当該アイドル継続期間にて検出されたセタン価とする、燃料性状検出装置である。
【0013】
次に、本発明の第7の発明は、上記第3の発明~第6の発明のいずれか1つに係る燃料性状検出装置であって、前記燃料性状検出装置は、前記セタン価算出部にて、前記アイドル継続期間ごとに算出したセタン価を仮セタン価として、前記仮セタン価の平均をセタン価として算出する、燃料性状検出装置である。
【0014】
次に、本発明の第8の発明は、上記第1の発明~第7の発明のいずれか1つに係る燃料性状検出装置であって、前記燃料性状検出装置は、前記噴射時期変更部の処理と前記セタン価算出部の処理とを実行している場合は、予め設定されたセタン価検出用目標アイドル回転数を前記目標アイドル回転数とする、燃料性状検出装置である。
【発明の効果】
【0015】
目標アイドル回転数を維持するために燃焼行程で発生させるべきトルクは、決まった値のトルクである。この決まった値のトルクを発生させる際、総噴射量がセタン価検出目標噴射量である場合、メイン噴射の噴射時期はセタン価に応じた異なる噴射時期となる。従って、第1の発明によれば、制御装置は、適切にセタン価を求めることができる。また、単純にディーゼルエンジンがアイドル状態である場合にセタン価の検出を実行するので、運転者が踏み込んでいたアクセルペダルを離したディーゼルエンジンの回転数の下降中と比較して、単純なアイドル状態は非常に頻度が高くなる。従って、ディーゼルエンジンで用いる燃料のセタン価をより高い頻度で検出することが可能となり、セタン価に応じてエンジン性能や燃費等をより向上させることができる。
【0016】
第2の発明によれば、制御装置は、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致した噴射時期を複数取得して、その平均である平均噴射時期に基づいてセタン価を求めるので、求めたセタン価の誤差を、より小さくすることができる。
【0017】
第3の発明によれば、制御装置は、1回のアイドル継続期間中にセタン価検出処理を1回実行する。また制御装置は、セタン価検出処理の実行回数がセタン価検出許容回数に達した場合、以降はアイドル継続期間が発生してもセタン価検出処理の実行を中止する。例えば車両の運転者が、給油所にてそれまで使用していた燃料とはセタン価が異なる燃料を給油した場合、給油した燃料が燃料タンクからインジェクタまで到達するまでには、ある程度の時間がかかる。例えばセタン価検出許容回数が3回の場合、最初のアイドル継続期間で3回のセタン価検出を実施してしまうと、給油した燃料がまだインジェクタに到達していない可能性があるので好ましくない。また給油後の燃料タンク内の燃料のセタン価は、新たな給油を行わない限り変わることは無い。従って、セタン価検出処理の実行回数がセタン価検出許容回数に達した場合、それ以上セタン価検出処理を実行しなくてもよい。
【0018】
車両の燃料タンク内の燃料のセタン価は、新たな燃料が給油されない限り、変わることはない。第4の発明によれば、制御装置は、燃料が補給されたと判定した場合にセタン価検出実行回数をリセットすることで、適切なタイミングでセタン価を検出することができる。
【0019】
第5の発明によれば、制御装置は、2回目以降のアイドル継続期間でのセタン価検出処理に要する時間を、より短くすることができる。
【0020】
第6の発明によれば、制御装置は、1回のアイドル継続期間において、求めたセタン価の誤差を、より小さくすることができる。
【0021】
第7の発明によれば、制御装置は、セタン価検出許容回数(例えば3回)のアイドル継続期間にて、求めたセタン価の誤差を、より小さくすることができる。
【0022】
第8の発明によれば、制御装置は、通常のアイドル回転数とは異なるアイドル回転数であって、セタン価検出用に特化したセタン価検出用アイドル回転数を目標アイドル回転数にすることで、より適切にセタン価を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】内燃機関システム全体の概略構成の例を説明する図である。
【
図2】燃料性状検出装置(制御装置)による[全体処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【
図3】
図2に示すフローチャートの「アイドル状態」、「検出モード」、「総噴射量」、「取得回数」、「検出終了フラグ」等の動作の例を説明する図である。
【
図4】
図2及び
図3における「検出モード」について説明する図である。
【
図5】
図2に示すフローチャートの[検出モード1――>2の処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図6】
図2に示すフローチャートの[検出モード=2の処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図7】
図2に示すフローチャートの[検出モード=4の処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図8】
図2に示すフローチャートの[検出モード4――>5の処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図9】[噴射時期・セタン価特性(1)]の例を説明する図である。
【
図10】[噴射時期・セタン価特性(2)]の例を説明する図である。
【
図11】[噴射時期・セタン価特性(3)]の例を説明する図である。
【
図12】[アイドル状態での総噴射量の増減処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図13】[燃料噴射処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図14】[検出実行回数の初期化処理]の詳細を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
●[内燃機関システム1の概略構成の例(
図1)]
以下に本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。まず
図1を用いて、内燃機関システム1の概略構成の例について説明する。本実施の形態の説明では、内燃機関の例として、車両に搭載されたディーゼルエンジンである内燃機関10(
図1)を用いて説明する。なお以降に説明する制御装置50は、車両に搭載されたディーゼルエンジンで用いる燃料のセタン価を検出する燃料性状検出装置に相当している。
【0025】
以下、システム全体について、吸気側から排気側に向かって順に説明する。吸気管11Aの流入側には、エアクリーナ(図示省略)、吸気流量検出装置21(例えば、吸気流量センサ)が設けられている。吸気流量検出装置21は、内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また吸気流量検出装置21には、吸気温度検出装置28A(例えば、吸気温度センサ)、大気圧検出装置23(例えば、大気圧センサ)が設けられている。吸気温度検出装置28Aは、吸気流量検出装置21を通過する吸気の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。大気圧検出装置23は、周囲の大気圧に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0026】
吸気管11Aの流出側はコンプレッサ35の流入側に接続され、コンプレッサ35の流出側は吸気管11Bの流入側に接続されている。ターボ過給機30のコンプレッサ35は、排気ガスのエネルギーによって回転駆動されるタービン36にて回転駆動され、吸気管11Aから流入された吸気を吸気管11Bに圧送することで過給する。
【0027】
コンプレッサ35の上流側となる吸気管11Aには、コンプレッサ上流圧力検出装置24A(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ上流圧力検出装置24Aは、吸気管11A内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。コンプレッサ35の下流側となる吸気管11B(吸気管11Bにおけるコンプレッサ35とインタークーラ16との間の位置)には、コンプレッサ下流圧力検出装置24B(例えば圧力センサ)が設けられている。コンプレッサ下流圧力検出装置24Bは、吸気管11B内の吸気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0028】
吸気管11Bには、上流側にインタークーラ16が配置され、インタークーラ16よりも下流側にスロットル装置47が配置されている。インタークーラ16は、コンプレッサ下流圧力検出装置24Bよりも下流側に配置されている。インタークーラ16とスロットル装置47との間には、吸気温度検出装置28B(例えば、吸気温度センサ)が設けられている。吸気温度検出装置28Bは、インタークーラ16にて温度が低下された吸気の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0029】
スロットル装置47は、制御装置50からの制御信号に基づいて吸気管11Bの開度を調整するスロットルバルブ47Vを駆動し、吸気流量を調整可能である。制御装置50は、運転状態に応じて求めた目標スロットル開度に基づいて、スロットル装置47に制御信号を出力してスロットルバルブ47Vの開度を調整可能である。
【0030】
アクセルペダル踏込量検出装置25は、例えばアクセルペダル踏込角度センサであり、アクセルペダルに設けられている。制御装置50は、アクセルペダル踏込量検出装置25からの検出信号に基づいて、運転者によるアクセルペダルの踏込量を検出することが可能である。またイグニッション検出装置25Sは、例えばイグニッションスイッチセンサであり、イグニッションスイッチに設けられている。制御装置50は、運転者によってイグニッションスイッチがONまたはOFFに操作されたことを検出することが可能である。
【0031】
吸気管11Bの流出側は吸気マニホルド11Cの流入側に接続されており、吸気マニホルド11Cの流出側は内燃機関10の流入側に接続されている。また吸気管11Bにおけるスロットル装置47よりも下流側には(吸気マニホルド11Cには)、吸気マニホルド圧力検出装置24C(例えば圧力センサ)が設けられており、EGR配管13の流出側が接続されている。吸気マニホルド圧力検出装置24Cは、吸気マニホルド11Cに流入する直前の吸気の圧力(過給圧)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。またEGR配管13の流出側(吸気管11Bとの接続部)からは、EGR配管13の流入側(排気管12Bとの接続部)から流入してきたEGRガスが、吸気管11B内に吐出される。EGR配管13は、排気経路に一方端が接続され、吸気経路に他方端が接続されている。
【0032】
内燃機関10は複数のシリンダ45A~45D(気筒)を有しており、インジェクタ43A~43Dが、それぞれのシリンダに設けられている。インジェクタ43A~43Dには、コモンレール41と燃料配管42A~42Dを介して燃料が供給されており、インジェクタ43A~43Dは、制御装置50からの制御信号によって駆動され、それぞれのシリンダ45A~45D内に燃料を噴射する。コモンレール41には、燃料圧力検出装置73が設けられており、燃料ポンプ72によって目標燃料圧力に調整された燃料が充填されている。制御装置50は、燃料圧力検出装置73を用いて検出した燃料圧力が目標燃料圧力に近づくように燃料ポンプ72を制御する。またコモンレール41には、燃料温度検出装置73Bが設けられている。燃料温度検出装置73Bは、例えば温度センサであり、コモンレール41内の燃料の温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0033】
内燃機関10には、クランク角度検出装置22A、カム角度検出装置22B、クーラント温度検出装置28C等が設けられている。クランク角度検出装置22Aは、例えば回転センサであり、内燃機関10のクランクシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。カム角度検出装置22Bは、例えば(気筒判別用の)回転センサであり、内燃機関10のカムシャフトの回転角度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。制御装置50は、クランク角度検出装置22Aとカム角度検出装置22Bからの検出信号に基づいて、各シリンダの行程及びクランク回転角度等を検出することができる。またクーラント温度検出装置28Cは、例えば温度センサであり、内燃機関10内に循環されている冷却用クーラントの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0034】
内燃機関10の排気側には排気マニホルド12Aの流入側が接続され、排気マニホルド12Aの流出側には排気管12Bの流入側が接続されている。排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。
【0035】
排気管12Bの上流側には、EGR配管13の流入側が接続されている。EGR配管13は、EGR流路に相当しており、排気管12Bと吸気管11Bとを連通し、排気管12Bの排気ガスの一部をEGRガスとして吸気管11Bに還流させる(排気ガスの一部をEGRガスとして吸気に戻す)ことが可能である。またEGR配管13には、EGRクーラ15、EGR弁14が設けられている。制御装置50は、EGR弁14の開度を調整することで、EGR配管13内を流れるEGRガスの流量を調整可能である。
【0036】
また排気管12Bにおける上流側には(排気マニホルド12Aには)、排気マニホルド圧力検出装置26C(例えば圧力センサ)が設けられている。排気マニホルド圧力検出装置26Cは、排気マニホルド12A内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0037】
排気管12Bには、排気温度検出装置29が設けられている。排気温度検出装置29は、例えば排気温度センサであり、排気温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0038】
排気管12Bの流出側はタービン36の流入側に接続され、タービン36の流出側は排気管12Cの流入側に接続されている。タービン36には、タービン36へ導く排気ガスの流速を制御可能な(タービンへと排気ガスを導く流路の閉度に関連する閉度関連量を調整可能な)可変ノズル33が設けられており、可変ノズル33(過給圧調整装置に相当)は、ノズル駆動装置31によって閉度(開度)が調整される。制御装置50は、ノズル閉度検出装置32(例えば、ノズル閉度センサ)からの検出信号と目標ノズル閉度(開度)に基づいて、ノズル駆動装置31に制御信号を出力して可変ノズル33の閉度(開度)を調整することで過給圧を調整可能である。なおタービン36は、排気経路に接続されたEGR配管13よりも排気の下流側に配置されている。
【0039】
タービン36の上流側となる排気管12Bには、タービン上流圧力検出装置26A(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン上流圧力検出装置26Aは、排気管12B内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。タービン36の下流側となる排気管12Cには、タービン下流圧力検出装置26B(例えば圧力センサ)が設けられている。タービン下流圧力検出装置26Bは、排気管12C内の排気の圧力に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0040】
排気管12Cの流出側には排気浄化装置61が接続されている。例えば内燃機関10がディーゼルエンジンの場合、排気浄化装置61には、酸化触媒、微粒子捕集フィルタ、選択式還元触媒等が含まれている。
【0041】
車速検出装置27は、例えば車両速度検出センサであり、車両の車輪等に設けられている。車速検出装置27は、車両の車輪の回転速度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また燃料残量検出装置27Bは、例えば液面高さセンサであり、燃料タンク(図示省略)内の燃料の残量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
【0042】
制御装置50は、CPU51、RAM52、記憶装置53、タイマ54等を有している。制御装置50(CPU51)は、上述した種々の検出装置からの検出信号が入力され、上述した種々のアクチュエータへの制御信号を出力する。なお、制御装置50の入出力は、上記の検出装置やアクチュエータに限定されるものではない。また、各部の温度や圧力等はセンサを搭載せずに推定計算により算出しても良い。制御装置50は、上記の検出装置を含めた各種の検出装置からの検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出可能であり、運転状態に基づいて上記のアクチュエータを含む各種のアクチュエータを制御する。記憶装置53は、例えばFlash-ROM等の記憶装置であり、内燃機関の制御や自己診断等を実行するためのプログラムやデータ等が記憶されている。また制御装置50(CPU51)は、アイドル噴射量調整部51A、噴射時期変更部51B、セタン価算出部51C等を有しているが、これらの詳細については後述する。
【0043】
制御装置50は、以下に説明する処理手順の例にて、燃料のセタン価を検出する。なお以下に説明するセタン価の検出の処理は、信号待ちなどにて車両がアイドル状態になる毎に実行されるので、非常に高い頻度で実行される。
【0044】
一般的に、総噴射量(1回の燃焼行程に対する燃料の噴射量)が同じ場合、燃料のセタン価が高くなるほど出力トルクが上昇し、メイン噴射の噴射時期を進角させてメイン燃焼の発生を圧縮上死点に近付けるほど出力トルクが上昇する。燃料のセタン価が低い場合、総噴射量を、予め設定したセタン価検出目標噴射量にすると、目標アイドル回転数を維持させるためには、トルク発生の主となるメイン噴射の噴射時期を進角しなければならない。また燃料のセタン価が高い場合、総噴射量を、予め設定したセタン価検出目標噴射量にすると、目標アイドル回転数を維持させるためには、トルク発生の主となるメイン噴射の噴射時期を遅角しなければならない。つまり、同じ総噴射量で、同じ目標アイドル回転数を維持している場合、セタン価に応じてメイン噴射の噴射時期が変わる。以下の制御装置の処理では、これを利用して燃料のセタン価を求める。なおディーゼルエンジンの場合、一般的には、1回の燃焼行程にて、単数または複数のパイロット噴射、メイン噴射、(必要に応じて)アフター噴射及びポスト噴射、の各噴射が実行され、各噴射の噴射量の総量が総噴射量であり、総噴射量が各噴射に分割されて噴射される。しかし、総噴射量を分割せず、1回の燃焼行程に対して1回のメイン噴射のみで総噴射量を噴射してもよい。つまり、制御装置50は、1回の燃焼行程に対して、総噴射量を、単数または複数の燃料噴射にて噴射する。
【0045】
●[制御装置50の処理手順(
図2~
図14)]
次に
図2~
図14に示すフローチャート等を用いて、制御装置50の処理手順の例を説明する。まず
図2に示すフローチャートを用いて、[全体処理]について説明する。なお
図3に示す[検出実行回数=3(セタン価検出許容回数)回目の場合の動作例]は、時刻(横軸)に対する回転数や検出モード等の動作の例を示している。また
図4に示す[検出モード]は、
図2に示すフローチャートで用いている「検出モード」の各値が、どのような状態を示すものであるか、を示している。
【0046】
●[全体処理(
図2)]
制御装置50(CPU51)は、例えば所定時間間隔(数[ms]~数10[ms]間隔であり、所定タイミング毎)にて、
図2に示す[全体処理]を起動し、ステップS010に処理を進める。なお制御装置50は、図示省略した別の処理にて、内燃機関10の回転数(エンジン回転数)やアイドル状態を含む種々の運転状態を取得している。なお以降の説明において、「セタン価検出処理」とは、
図3の例に示すように、1回のアイドル継続期間(アイドル状態を継続している期間)に対して、(後述する)噴射時期変更部の処理と(後述する)セタン価算出部の処理とを含む、
図2に示す[全体処理]を指す。
【0047】
ステップS010にて制御装置50は、運転状態がアイドル状態、かつ、暖機完了であるか否かを判定する。制御装置50は、アイドル状態かつ暖機完了である場合(Yes)はステップS015へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS750へ処理を進める。
【0048】
ステップS750へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードに「0」を設定して(
図3、
図4参照)ステップS760へ処理を進める。
【0049】
ステップS760にて制御装置50は、検出実行中フラグ(
図3参照)をOFFに設定し、検出終了フラグ(
図3参照)をOFFに設定し、取得回数(
図3参照)を0(ゼロ)に初期化し、
図2に示す処理を終了する。なお、取得回数は、
図3の例に示すように、アイドル継続期間において、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致したときの検出用メイン噴射時期を取得した回数である。
【0050】
ステップS015へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出実行回数がセタン価検出許容回数未満であるか否かを判定する。制御装置50は、検出実行回数がセタン価検出許容回数未満である場合(Yes)はステップS020へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS750へ処理を進める。なお検出実行回数は、2[回]以上であり、例えば3[回]等に設定されており、
図3に示すように、1回のアイドル継続期間においてセタン価の検出を実行した場合にカウントアップされる。制御装置50は、セタン価検出実行回数(検出実行回数)が、セタン価検出処理の許容実行回数であるセタン価検出許容回数に達した場合、以降のアイドル継続期間でのセタン価検出処理の実行を中止する。
【0051】
ステップS020へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードが「0」であるか否かを判定する。制御装置50は、検出モードが「0」である場合(Yes)はステップS050へ処理を進め、検出モードが「0」でない場合(No)はステップS120へ処理を進める。
【0052】
ステップS050へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードに「1」を設定して(
図3、
図4参照)
図2に示す処理を終了する。
【0053】
ステップS120に処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードが「1」であるか否かを判定する。制御装置50は、検出モードが「1」である場合(Yes)はステップS125へ処理を進め、検出モードが「1」でない場合(No)はステップS220へ処理を進める。
【0054】
ステップS125にて制御装置50は、|第1所定時間内の回転数変動|が第1許容回転数以下であるか否かを判定する。制御装置50は、|第1所定時間内の回転数変動|が第1許容回転数以下である場合(Yes)はステップS150へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図2に示す処理を終了する。制御装置50は、例えばアイドル状態で回転数が安定して|100[ms]期間内の回転数変動量|が20[rpm]以下となった場合に、ステップS150へ処理を進める。なお「第1所定時間」、「第1許容回転数」は、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等にて適切な値が決められる。
【0055】
ステップS150へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードに「2」を設定して(
図3、
図4参照)ステップS160へ処理を進める。
【0056】
ステップS160にて制御装置50は、[検出モード1――>2の処理]を実行し、
図2に示す処理を終了する。なお[検出モード1――>2の処理]の詳細については後述する。
【0057】
ステップS220へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードが「2」であるか否かを判定する。制御装置50は、検出モードが「2」である場合(Yes)はステップS225へ処理を進め、検出モードが「2」でない場合(No)はステップS320へ処理を進める。
【0058】
ステップS225へ処理を進めた場合、制御装置50は、|セタン価検出目標噴射量-総噴射量|が第1許容噴射量以下であるか否かを判定する。制御装置50は、|セタン価検出目標噴射量-総噴射量|が第1許容噴射量以下である場合(Yes)はステップS250Bへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS260Aへ処理を進める。なお「セタン価検出目標噴射量」はセタン価検出用として予め設定された噴射量である。また「総噴射量」は後述する
図12に示す処理に示すように、アイドル状態時においてエンジン回転数が目標アイドル回転数(例えば約700[rpm]程度)に近づくように増減した噴射量(1回の燃焼
行程で噴射するパイロット噴射やメイン噴射の噴射量の総量)である。また「第1許容噴射量」は、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等にて適切な値が決められる。制御装置50は、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致した場合にステップS250Bへ処理を進める。
【0059】
ステップS250Bへ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードに「3」を設定して(
図3、
図4参照)に示す処理を終了する。
【0060】
ステップS260Aへ処理を進めた場合、制御装置50は、[検出モード=2の処理]を実行し、
図2に示す処理を終了する。なお[検出モード=2の処理]の詳細については後述する。
【0061】
ステップS320へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードが「3」であるか否かを判定する。制御装置50は、検出モードが「3」である場合(Yes)はステップS325へ処理を進め、検出モードが「3」でない場合(No)はステップS420へ処理を進める。
【0062】
ステップS325へ処理を進めた場合、制御装置50は、|第2所定時間内の回転数変動|が第2許容回転数以下であるか否かを判定する。制御装置50は、|第2所定時間内の回転数変動|が第2許容回転数以下である場合(Yes)はステップS350へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図2に示す処理を終了する。制御装置50は、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致した後、アイドル状態で回転数が安定して|100[ms]期間内の回転数変動量|が10[rpm]以下となった場合に、ステップS350へ処理を進める。なお「第2所定時間」、「第2許容回転数」は、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等にて適切な値が決められ、例えば第1許容回転数≧第2許容回転数に設定されている。
【0063】
ステップS350へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードに「4」を設定して(
図3、
図4参照)
図2に示す処理を終了する。
【0064】
ステップS420へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードが「4」であるか否かを判定する。制御装置50は、検出モードが「4」である場合(Yes)はステップS460へ処理を進め、検出モードが「4」でない場合(No)は
図2に示す処理を終了する。
【0065】
ステップS460へ処理を進めた場合、制御装置50は、[検出モード=4の処理]を実行し、ステップS530へ処理を進める。なお[検出モード=4の処理]の詳細については後述する。
【0066】
ステップS530へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出終了フラグがONであるか否かを判定する。制御装置50は、検出終了フラグがONである場合(Yes)はステップS550へ処理を進め、検出終了フラグがONでない場合(No)は
図2に示す処理を終了する。なお「検出終了フラグ」は、
図3に示すように、1回のアイドル継続期間において、セタン価の検出処理を実行し、当該処理を終了して最終セタン価を求めた際にONとされるフラグである。
【0067】
ステップS550へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出モードに「5」を設定して(
図3、
図4参照)ステップS560へ処理を進める。
【0068】
ステップS560へ処理を進めた場合、制御装置50は、[検出モード4――>5の処理]を実行し、
図2に示す処理を終了する。なお[検出モード4――>5の処理]の詳細については後述する。
【0069】
●[検出モード1――>2の処理(
図5)]
次に
図5を用いて、
図2に示すフローチャートのステップS160の[検出モード1――>2の処理]の詳細を説明する。
図2に示すフローチャートのステップS160の処理を実行する際、制御装置50は、
図5に示すステップSM110へ処理を進める。
【0070】
ステップSM110へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出実行中フラグをONに設定し、ステップSM120へ処理を進める。なお「検出実行中フラグ」は、
図3の例に示すように、アイドル継続期間において、セタン価検出処理の実行中であることを示すフラグである。
【0071】
ステップSM120にて制御装置50は、検出実行回数が0(ゼロ:今回が初めてのセタン価検出処理)であるか否かを判定する。セタン価検出処理は、
図3の例に示すように、車両がアイドル状態を継続している期間をアイドル継続期間として、1度のアイドル継続期間に対して、セタン価検出処理(検出モード=2の時の検出用メイン噴射時期の変更と検出モード=4、5の時のセタン価の算出とを含む)を1度だけ実行される。そしてセタン価検出処理は、セタン価検出許容回数(例えば3[回])まで実行され(
図2のステップS015参照)、この実行回数が「検出実行回数」に記憶される。制御装置50は、検出実行回数が0(ゼロ)である場合(Yes)はステップSM130Aへ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSM130Bへ処理を進める。
【0072】
ステップSM130Aへ処理を進めた場合、制御装置50は、検出用メイン噴射時期に、予め設定した検出用最進角時期を初期値として設定し、
図5に示す処理を終了して
図2のステップS160の下に処理を戻し、
図2の処理を終了する。
【0073】
なお「検出用メイン噴射時期」は、セタン価検出処理の実行中における、メイン噴射の噴射時期(噴射開始時期)であり、
図3の例に示すように、セタン価検出処理の実行を開始して検出モードが「1――>2」となった際、一旦進角される。そして「検出用メイン噴射時期」は、検出モードが「2」の期間では徐々に遅角されていく。そして「検出用メイン噴射時期」は、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致して検出モードが「3」に変更されると、徐々に遅角されていくことが停止される。また検出用最遅角時期は、燃料のセタン価が想定している最も低いセタン価であり、かつ、総噴射量がセタン価目標噴射量とほぼ一致した場合に、エンジン回転数を目標アイドル回転数に維持可能となるメイン噴射の噴射時期である。
【0074】
ステップSM130Bへ処理を進めた場合、制御装置50は、検出用メイン噴射時期に、(前回のセタン価検出処理の検出用メイン噴射時期の最終値)+所定進角時期(適宜設定され、例えば数[°CA]の進角時期)を初期値として設定し、
図5に示す処理を終了して
図2のステップS160の下に処理を戻し、
図2の処理を終了する。検出実行回数が0(ゼロ)でない場合(2回目以降のセタン価検出処理の場合)は、前回のセタン価検出処理の検出用メイン噴射時期の最終値から(前回のセタン価検出処理の検出用メイン噴射時期の最終値よりも少し進角させた噴射時期から)検出用メイン噴射時期を徐々に遅角させる動作を開始させることで、検出実行回数が0(ゼロ)の場合よりも、検出モード「2」の期間(
図3参照)をより短くすることができる。
【0075】
●[検出モード=2の処理(
図6)]
次に
図6を用いて、
図2に示すフローチャートのステップS260Aの[検出モード=2の処理]の詳細を説明する。
図2に示すフローチャートのステップS260Aの処理を実行する際、制御装置50は、
図6に示すステップSM210へ処理を進める。
【0076】
ステップSM210へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出用メイン噴射時期の値を微小角度Δθ1(微小クランク角度Δθ1)だけ遅角した値へと更新し、
図6に示す処理を終了して
図2のステップS260Aの下に処理を戻し、
図2の処理を終了する。この
図6に示す処理により、制御装置50は、
図3の例に示すように、検出モード=2の場合、検出用メイン噴射時期の値を徐々に遅角させていく。
【0077】
●[検出モード=4の処理(
図7)]
次に
図7を用いて、
図2に示すフローチャートのステップS460の[検出モード=4の処理]の詳細を説明する。
図2に示すフローチャートのステップS460の処理を実行する際、制御装置50は、
図7に示すステップSM410へ処理を進める。
【0078】
ステップSM410へ処理を進めた場合、制御装置50は、待ち時間が所定待ち時間以上であるか否かを判定する。なお「待ち時間」は、
図7のステップSM450Bにて初期化して起動した待ち時間タイマにて計測した時間であり、前回のステップSM450Bを実施してからの経過時間である。なお所定待ち時間には、例えば数10[ms]程度の適切な時間が設定されている。制御装置50は、待ち時間が所定待ち時間以上である場合(Yes)はステップSM420へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図7に示す処理を終了して
図2のステップS530へ処理を戻す。
【0079】
ステップSM420へ処理を進めた場合、制御装置50は、|セタン価検出目標噴射量-総噴射量|が第2許容噴射量以下であるか否かを判定する。制御装置50は、|セタン価検出目標噴射量-総噴射量|が第2許容噴射量以下である場合(Yes)はステップSM430へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSM450Bへ処理を進める。
【0080】
ステップSM430へ処理を進めた場合、制御装置50は、取得回数(N)を+1だけカウントアップして更新し、検出用メイン噴射時期を第(N)噴射時期に記憶し、ステップSM440へ処理を進める。例えば取得回数は1から10(所定取得回数)までカウントアップされ、制御装置50は、取得回数に対応させて第1噴射時期~第10噴射時期を記憶する。例えば制御装置50は、取得回数=1の場合、そのときの検出用メイン噴射時期を第1噴射時期に記憶し、取得回数=10の場合、そのときの検出用メイン噴射時期を第10噴射時期に記憶する。
【0081】
ステップSM440にて制御装置50は、取得回数(N)が所定取得回数以上であるか否かを判定する。なお所定取得回数は、例えば10[回]程度に設定されている。制御装置50は、取得回数(N)が所定取得回数以上である場合(Yes)はステップSM450Aに処理を進め、取得回数(N)が所定取得回数未満である場合(No)はステップSM450Bへ処理を進める。このように制御装置50は、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致した噴射時期(検出用メイン噴射時期)を複数取得(所定取得回数まで取得)する。
【0082】
ステップSM450Aへ処理を進めた場合、制御装置50は、検出実行中フラグをOFFに設定し、検出終了フラグをONに設定し、
図7に示す処理を終了して
図2に示すステップS530へ処理を戻す。なお「検出終了フラグ」は、
図3の例に示すように、今回のアイドル継続期間において、セタン価検出処理を実行済であることを示すフラグである。
【0083】
ステップSM450Bへ処理を進めた場合、制御装置50は、検出用メイン噴射時期に微小角度ΔθA(微小クランク角度ΔθA)を加算または減算し、現在の検出用メイン噴射時期を微小角度ΔθAだけ進角または遅角させる。なお微小角度ΔθAは、
図6のステップSM210の微小角度Δθ1よりも非常に小さな角度であり、後述する[アイドル状態での総噴射量の増減処理](
図12参照)にて増減された総噴射量が、セタン価検出目標噴射量とほぼ一致した状態になりやすくする(ほぼ一致した状態となる確率を上げる)。そして制御装置50は、待ち時間タイマを初期化して起動し(待ち時間の計測を開始し)、
図7に示す処理を終了して
図2に示すステップS530へ処理を戻す。
【0084】
図2に示すステップS225、ステップS260A(
図6参照)、ステップS460(
図7参照)、の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、ディーゼルエンジンがアイドル状態である場合に、アイドル噴射量調整部51A(
図1参照)にて増減した総噴射量が、予め設定されたセタン価検出目標噴射量に近づくように、1回の燃焼
行程に対して分割した複数の燃料噴射の中で主となるメイン噴射の噴射時期を変更する、噴射時期変更部51B(
図1参照)に相当している。
【0085】
●[検出モード4――>5の処理(
図8)]
次に
図8を用いて、
図2に示すフローチャートのステップS560の[検出モード4――>5の処理]の詳細を説明する。
図2に示すフローチャートのステップS560の処理を実行する際、制御装置50は、
図8に示すステップSM510へ処理を進める。
【0086】
ステップSM510へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出実行回数(M)を+1だけカウントアップして更新し、ステップSM520へ処理を進める。例えば検出実行回数は1から3(セタン価検出許容回数)までカウントアップされ、
図3の例に示す検出モード=1~5にて実行されるセタン価検出処理を実行した回数を示している。
【0087】
ステップSM520にて制御装置50は、
図7に示すステップSM430にて記憶した第1噴射時期~第(N)噴射時期に記憶されている検出用メイン噴射時期を平均化した平均噴射時期を算出し、ステップSM530へ処理を進める。
【0088】
ステップSM530にて制御装置50は、平均噴射時期と、記憶装置53に記憶されている噴射時期・セタン価特性(1)~噴射時期・セタン価特性(k)とに基づいて仮セタン価(1)~仮セタン価(k)を算出し、ステップSM540へ処理を進める。
【0089】
記憶装置53には、例えば
図9に示す[噴射時期・セタン価特性(1)]、
図10に示す[噴射時期・セタン価特性(2)]、
図11に示す[噴射時期・セタン価特性(3)]等が記憶されている。記憶装置53には、ディーゼルエンジンが目標アイドル回転数を維持しているアイドル状態である場合、かつ、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致した場合において、メイン噴射の噴射時期に応じてセタン価を求めることが可能な噴射時期・セタン価特性であって、車両の運転状態に基づいたパラメータ(この場合、外気温(吸気温)、クーラント温度、燃料温度など)が異なる複数種類の噴射時期・セタン価特性が記憶されている。
【0090】
図9の例に示す[噴射時期・セタン価特性(1)]は、横軸がセタン価、縦軸がアイドル維持噴射量に設定され、平均噴射時期が、θw、θx、θy、θz、の場合のそれぞれの特性h1w、h1x、h1y、h1zが設定されている。例えば平均噴射時期=θxであった場合、制御装置50は、平均噴射時期θxの特性h1xと、アイドル維持噴射量=セタン価検出目標噴射量の直線Lとの交点に相当するセタン価W1を、仮セタン価(1)の値として算出する。
【0091】
図10の例に示す[噴射時期・セタン価特性(2)]は、横軸が平均噴射時期、縦軸がセタン価に設定され、外気温が、Tx、Ty、Tz、の場合のそれぞれの特性h2x、h2y、h2z、が設定されている。なお「外気温」は、
図1に示す吸気温度検出装置28Aで検出した外気の温度である。例えば平均噴射時期=θx、かつ、外気温=Txであった場合、制御装置50は、外気温Txの特性h2xにおける平均噴射時期=θxに対応するセタン価W2を、仮セタン価(2)の値として算出する。
【0092】
図11の例に示す[噴射時期・セタン価特性(3)]は、(噴射時期・(外気温・クーラント温度)-セタン価特性)と、(噴射時期・(燃料温度)-補正セタン価特性)と、を有している。制御装置50は、「(噴射時期・(外気温・クーラント温度)-セタン価特性)から求めたセタン価」+「(噴射時期・(燃料温度)-補正セタン価特性)から求めた補正セタン価」にて、仮セタン価(3)を求める。
【0093】
(噴射時期・(外気温・クーラント温度)-セタン価特性)は、平均噴射時期と外気温に応じたセタン価が設定された特性が、クーラント温度ごとに設定されている。なお「クーラント温度」は、
図1に示すクーラント温度検出装置28Cで検出したクーラント(エンジン冷却水)の温度である。例えば平均噴射時期=θ2、外気温=T3、クーラント温度=Taであった場合、制御装置50は、クーラント温度=Taの特性の、平均噴射時期=θ2、外気温=T3に対応するセタン価Wa23を、まず求める。
【0094】
また(噴射時期・(燃料温度)-補正セタン価特性)は、平均噴射時期と燃料温度に応じた補正セタン価が設定されている。なお「燃料温度」は、
図1に示す燃料温度検出装置73Bで検出した燃料の温度である。例えば平均噴射時期=θ2、燃料温度=Tn3であった場合、制御装置50は、平均噴射時=θ2、燃料温度=Tn3に対応する補正セタン価H23を求める。そして制御装置50は、セタン価Wa23+補正セタン価H23を、仮セタン価(3)の値として算出する。
【0095】
ステップSM540に処理を進めた場合、制御装置50は、ステップSM530にて求めた仮セタン価(1)~仮セタン価(k)を平均化し、今回の検出実行回数=Mに対応する第M回目セタン価として記憶し、ステップSM550へ処理を進める。上記の例において、今回の検出実行回数=3の場合、制御装置50は、仮セタン価(1)、仮セタン価(2)、仮セタン価(3)を平均化し、平均化した値を第3回目セタン価として記憶する。
【0096】
ステップSM550にて制御装置50は、第1回目セタン価~第M回目セタン価を平均化した最終セタン価を算出して記憶し、ステップSM560へ処理を進める。制御装置50は、検出したセタン価に応じた処理を実行する場合、この最終セタン価の値を用いる。制御装置50は、今回の検出実行回数=1の場合では第1回目セタン価を最終セタン価として記憶し、今回の検出実行回数=2の場合では第1回目セタン価と第2回目セタン価を平均化した値を最終セタン価として記憶し、今回の検出実行回数=3の場合では第1回目セタン価と第2回目セタン価と第3回目セタン価とを平均化した値を最終セタン価として記憶する。
【0097】
ステップSM560にて制御装置50は、検出実行回数がセタン価検出許容回数以上であるか否かを判定する。例えばセタン価検出許容回数は、3[回]程度の値に設定されている。制御装置50は、検出実行回数がセタン価検出許容回数以上である場合(Yes)はステップSM570へ処理を進め、検出実行回数がセタン価検出許容回数未満である場合(No)は
図8に示す処理を終了して
図2に示すステップS560の下へ戻り、
図2に示す処理を終了する。
【0098】
ステップSM570へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出完了フラグをONに設定し、
図8に示す処理を終了して
図2に示すステップS560の下へ戻り、
図2に示す処理を終了する。なお「検出完了フラグ」は、検出実行回数がセタン価検出許容回数に達した場合にONに設定されるフラグである(
図3参照)。
【0099】
図2に示すステップS560(
図8参照)の処理を実行している制御装置50(CPU51)は、総噴射量がセタン価検出目標噴射量とほぼ一致したメイン噴射の噴射時期に基づいて燃料のセタン価を検出する、セタン価算出部51C(
図1参照)に相当している。
【0100】
●[アイドル状態での総噴射量の増減処理(
図12)]
次に
図12を用いて、[アイドル状態での総噴射量の増減処理]の詳細について説明する。
図12に示す[アイドル状態での総噴射量の増減処理]は、既存の処理にステップSA020、SA030Bを追加した処理である。制御装置50は、所定タイミングにて、既存の処理である[アイドル状態での総噴射量の増減処理]を起動し、ステップSA010へ処理を進める。
【0101】
ステップSA010にて制御装置50は、アイドル状態であるか否かを判定する。制御装置50は、アイドル状態である場合(Yes)はステップSA020へ処理を進め、アイドル状態でない場合(No)は
図12に示す処理を終了する。
【0102】
ステップSA020へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出実行中フラグがOFFであるか否かを判定する。制御装置50は、検出実行中フラグがOFFである場合(Yes)はステップSA030Aへ処理を進め、検出実行中フラグがOFFでない場合(No)はステップSA030Bへ処理を進める。
【0103】
ステップSA030Aへ処理を進めた場合、制御装置50は、算出したアイドル回転数を目標アイドル回転数に設定してステップSA040へ処理を進める。なおステップSA030Aは既存の処理であり、アイドル回転数の算出の詳細については説明を省略する。
【0104】
ステップSA030Bへ処理を進めた場合、制御装置50は、セタン価検出用目標アイドル回転数を目標アイドル回転数に設定してステップSA040へ処理を進める。なお、セタン価検出用目標アイドル回転数は、セタン価検出用として最適なアイドル回転数であり、実際の車両を用いた実験やシミュレーション等にて決定される。なお、ステップSA020、SA030Bを省略してセタン価検出専用のセタン価検出用目標アイドル回転数の設定を省略してもよい。
【0105】
ステップSA040へ処理を進めた場合、制御装置50は、エンジン回転数が目標アイドル回転数に近づくように総噴射量を増減し、
図12に示す処理を終了する。このステップSA040の総噴射量の増減にて、
図3の例に示す検出モード=1~5の場合における総噴射量の増減が行なわれる。なおステップSA040は既存の処理であり、総噴射量の増減の詳細については説明を省略する。
【0106】
図12に示す処理を実行している制御装置50(CPU51)は、ディーゼルエンジンがアイドル状態である場合に、アイドル状態での目標回転数である目標アイドル回転数を維持するように総噴射量を増減する、アイドル噴射量調整部51A(
図1参照)に相当している。
【0107】
●[燃料噴射処理(
図13)]
次に
図13を用いて、[燃料噴射処理]の詳細について説明する。
図13に示す[燃料噴射処理]は、既存の処理にステップSB020、SB030を追加した処理である。制御装置50は、所定タイミングにて、既存の処理である[燃料噴射処理]を起動し、ステップSB010へ処理を進める。
【0108】
ステップSB010にて制御装置50は、既存の処理にて、内燃機関の運転状態、総噴射量等に基づいて、メイン噴射を含む各噴射の噴射量、噴射時期などを算出し、ステップSB020へ処理を進める。なお各噴射には、パイロット噴射、メイン噴射、必要に応じてアフター噴射やポスト噴射などがあり、各噴射の噴射量及び噴射時期の算出は既存の処理であるので説明を省略する。なお、総噴射量を分割せず、1回のメイン噴射のみで総噴射量を噴射するようにしてもよい。
【0109】
ステップSB020にて制御装置50は、検出実行中フラグがONであるか否かを判定する。制御装置50は、検出実行中フラグがONである場合(Yes)はステップSB030へ処理を進め、検出実行中フラグがONでない場合(No)はステップSB040へ処理を進める。
【0110】
ステップSB030へ処理を進めた場合、制御装置50は、ステップSB010にて求めた噴射時期のうち、メイン噴射に対応する噴射時期であるメイン噴射時期を、検出用メイン噴射時期に書き替えてステップSB040へ処理を進める。なお、ステップSB030にて制御装置50は、総噴射量をパイロット噴射やメイン噴射等に分割することをやめて、1回のメイン噴射のみで総噴射量を噴射するように設定してもよい。1回のメイン噴射のみとした場合、メイン噴射時期の精度が向上し、セタン価の検出精度をより向上させることができる。ステップSB020、SB030にて、
図3の例に示す検出実行中フラグ=ONの期間において、
図3に示す「検出用メイン噴射時期」にて、メイン噴射の噴射時期が制御される。
【0111】
ステップSB040へ処理を進めた場合、制御装置50は、メイン噴射を含む各噴射に対応する噴射量、噴射時期を用いて、メイン噴射を含む各噴射の噴射量、噴射時期を制御し、
図13に示す処理を終了する。
【0112】
●[検出実行回数の初期化処理(
図14)]
次に
図14を用いて、[検出実行回数の初期化処理]の詳細について説明する。セタン価の検出は、燃料が補給された際に数回(例えば3回程度)実行すれば充分であるので、制御装置50は、燃料が補給されたことを検出した場合に検出実行回数を0(ゼロ)に初期化(リセット)する。なお「検出実行回数」は、
図3に示すセタン価検出処理(アイドル継続期間中に実行する検出モード=1~5に関連するセタン価の検出処理)を実行した回数である。また、燃料が補給された後、燃料タンクからインジェクタまでの燃料経路には、しばらくの間は補給前の燃料が残っているので、この燃料が補給後の燃料に置き換わるまでを考慮し、燃料補給後、数回(例えば3回程度)は、セタン価検出処理を実行することが好ましい。制御装置50は、例えば数[ms]~数10[ms]の所定時間間隔にて、
図14に示す[検出実行回数の初期化処理]を起動し、起動した場合はステップSD010へ処理を進める。
【0113】
ステップSD010にて制御装置50は、イグニッション検出装置25Sからの検出信号に基づいて、イグニッションスイッチがON――>OFFに操作されたか否かを判定する。制御装置50は、イグニッションスイッチがON――>OFFに操作されたと判定した場合(Yes)はステップSD080へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSD020へ処理を進める。
【0114】
ステップSD080へ処理を進めた場合、制御装置50は、現在の燃料残量(燃料残量検出装置27Bからの検出信号に基づいて検出)を前回の燃料残量として記憶し、
図14に示す処理を終了する。なお「前回の燃料残量」は、イグニッションスイッチをOFFにしても喪失されない不揮発性記憶装置に記憶される。
【0115】
ステップSD020へ処理を進めた場合、制御装置50は、イグニッション検出装置25Sからの検出信号に基づいて、イグニッションスイッチがOFF――>ONに操作されたか否かを判定する。制御装置50は、イグニッションスイッチがOFF――>ONに操作された場合(Yes)はステップSD030へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図14に示す処理を終了する。
【0116】
ステップSD030へ処理を進めた場合、制御装置50は、燃料残量検出装置27Bからの検出信号に基づいて検出した現在の燃料残量と、記憶されている前回の燃料残量との差分が、所定燃料量以上であるか否かを判定する。制御装置50は、現在の燃料残量と前回の燃料残量との差分が所定燃料量以上である場合(Yes)はステップSD040へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図14に示す処理を終了する。
【0117】
ステップSD040へ処理を進めた場合、制御装置50は、検出実行回数を0(ゼロ)に初期化(リセット)して
図14に示す処理を終了する。
【0118】
以上、
図14の例に示す[検出実行回数の初期化処理]では、燃料の補給の有無を、燃料の残量に基づいて判定したが、燃料の残量を検出する代わりに、燃料キャップに検出装置を取り付けて燃料キャップの開け閉めを検出して燃料の補給の有無を判定するようにしてもよい。
【0119】
本発明の燃料性状検出装置(制御装置50)は、本実施の形態で説明した構成、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0120】
本実施の形態の説明では、求めた平均噴射時期からセタン価を算出するために、
図9に示す噴射時期・セタン価特性(1)、
図10に示す噴射時期・セタン価特性(2)、
図11に示す噴射時期・セタン価特性(3)、を用いる例を説明したが、噴射時期・セタン価特性は、これらに限定されるものではない。
【0121】
また本実施の形態の説明では、1回のセタン価検出処理にて検出用メイン噴射時期を複数回取得して平均噴射時期を求める例を説明したが、複数回の平均を求めることなく、メイン噴射時期を1回取得するだけにしてもよい。また本実施の形態の説明では、セタン価検出処理を複数回実行して平均化して最終セタン価を求める例を説明したが、平均化せずに最後に求めたセタン価を最終セタン価としてもよい。
【0122】
また本実施の形態の説明では、検出実行回数の初期化を、燃料の補給を検出した際に実行する例を説明したが、イグニッションスイッチをOFF――>ONするごとに検出実行回数を初期化するようにしてもよい。
【0123】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(より小さい)(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0124】
1 内燃機関システム
10 内燃機関
11A、11B 吸気管
11C 吸気マニホルド
12A 排気マニホルド
12B、12C 排気管
13 EGR配管
14 EGR弁
15 EGRクーラ
16 インタークーラ
21 吸気流量検出装置
22A クランク角度検出装置
22B カム角度検出装置
23 大気圧検出装置
24A コンプレッサ上流圧力検出装置
24B コンプレッサ下流圧力検出装置
24C 吸気マニホルド圧力検出装置
25 アクセルペダル踏込量検出装置
25S イグニッション検出装置
26A タービン上流圧力検出装置
26B タービン下流圧力検出装置
26C 排気マニホルド圧力検出装置
27 車速検出装置
27B 燃料残量検出装置
28A、28B 吸気温度検出装置
28C クーラント温度検出装置
29 排気温度検出装置
30 ターボ過給機
31 ノズル駆動装置
32 ノズル閉度検出装置
33 可変ノズル(過給圧調整装置)
35 コンプレッサ
36 タービン
41 コモンレール
43A~43D インジェクタ
45A~45D シリンダ
47 スロットル装置
47S スロットル開度検出手段
47V スロットルバルブ
50 制御装置(燃料性状検出装置)
51 CPU
51A アイドル噴射量調整部
51B 噴射時期変更部
51C セタン価算出部
53 記憶装置
61 排気浄化装置
72 燃料ポンプ
73 燃料圧力検出装置
73B 燃料温度検出装置