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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 5/06 20060101AFI20240806BHJP
   F16H 61/00 20060101ALI20240806BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H05K5/06 E
F16H61/00
B60R16/02 610C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021108946
(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公開番号】P2023006376
(43)【公開日】2023-01-18
【審査請求日】2023-10-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】星野 高志
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆志
(72)【発明者】
【氏名】松尾 洋介
(72)【発明者】
【氏名】神野 晋司
(72)【発明者】
【氏名】渥美 敬介
(72)【発明者】
【氏名】横田 裕樹
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-169687(JP,A)
【文献】特開2020-163382(JP,A)
【文献】特開2007-335775(JP,A)
【文献】国際公開第2021/095453(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/00- 5/06
F16H 59/00-61/12;61/16-61/24;
61/66-61/70;63/40-63/50
B60R 16/00-17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度変動する被液雰囲気に配置される電子制御装置であって、
被液雰囲気から隔離した密閉空間を形成する筐体(7)と、
前記密閉空間に配置された制御部(13)と、
前記筐体に設けられ、前記密閉空間から外部空間を臨む通気部(25,26)と、
前記筐体において前記通気部の周縁部に接合され、前記通気部を介した液体の通過を阻止し且つ気体の通過を許容する防水機能を有する呼吸フィルタ(31)と、
前記呼吸フィルタの前記筐体に対する接合部を押圧するゴム部材からなる押圧部(40,71)と、を備え、
前記呼吸フィルタは、面方向が天地方向に沿うように設けられ、
前記呼吸フィルタと前記押圧部との間の内部空間を天方向となる外部空間と連通させる空気孔(43)を備えた電子制御装置。
【請求項2】
温度変動する被液雰囲気に配置される電子制御装置であって、
被液雰囲気から隔離した密閉空間を形成する筐体(7)と、
前記密閉空間に配置された制御部(13)と、
前記筐体に設けられ、前記密閉空間から外部空間を臨む通気部(25,26)と、
前記筐体において前記通気部の周縁部に接合され、前記通気部を介した液体の通過を阻止し且つ気体の通過を許容する防水機能を有する呼吸フィルタ(31)と、
前記呼吸フィルタの前記筐体に対する接合部を押圧するゴム部材からなる押圧部(40,71)と、を備え、
前記呼吸フィルタは、面方向が天地方向に沿うように設けられ、
前記呼吸フィルタと前記押圧部との間の内部空間を地方向となる外部空間に臨ませる開口部(52)を備えた電子制御装置。
【請求項3】
温度変動する被液雰囲気に配置される電子制御装置であって、
被液雰囲気から隔離した密閉空間を形成する筐体(7)と、
前記密閉空間に配置された制御部(13)と、
前記筐体に設けられ、前記密閉空間から外部空間を臨む通気部(25,26)と、
前記筐体において前記通気部の周縁部に接合され、前記通気部を介した液体の通過を阻止し且つ気体の通過を許容する防水機能を有する呼吸フィルタ(31)と、
前記呼吸フィルタの前記筐体に対する接合部を押圧するゴム部材からなる押圧部(40,71)と、を備え、
前記押圧部は、バンド部(61)を有しており、前記筐体を構成する部位の外周に装着されている電子制御装置。
【請求項4】
前記筐体に装着され、その装着状態で前記押圧部を圧縮状態となるように押圧するカバー(46)を備えた請求項1又は2に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記押圧部に形成された取付け孔(45)と
前記筐体に設けられたボス部(35)と、を備え、
前記押圧部は、前記取付け孔に前記ボス部が挿入されることで位置決めされている請求項1から4の何れか一項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記呼吸フィルタと前記押圧部との間の内部空間を地方向となる外部空間に臨ませる開口部(52)を備えた請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項7】
前記呼吸フィルタは円形状であり、
前記押圧部の前面は半円状である請求項2又は6に記載の電子制御装置。
【請求項8】
前記カバーは、前記押圧部と一体に構成されている請求項4に記載の電子制御装置。
【請求項9】
前記押圧部は、前記ゴム部材としてフッ素ゴムを用いる請求項1から8のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【請求項10】
車両のエンジンルームの内部、又は前記エンジンルーム近傍の車室外の場所に設けられるトランスミッションケース(1)の内部に配置される請求項1から9のいずれか一項に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両には各種車両機器を制御するための電子制御装置が多数搭載されているがエンジンルームのような被水雰囲気に配置される電子制御装置がある。このように被水雰囲気に配置される電子制御装置では、電子制御装置の筐体内部に水が浸入しないように液密な密閉構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-169687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子制御装置の筐体内部を液密な密閉構造とするには、筐体内部に配置されているプリント配線基板を樹脂封止することが考えられるが、樹脂封止する構成はコストが上昇するため、筐体内部を液密構造により密閉空間とし、その密閉空間にプリント配線基板を配置することでコストの低減を図るようにしている。
【0005】
ところが、エンジンルームはエンジンが始動した以降のエンジン動作状態で高温となるので、電子制御装置の筐体内部を密閉空間とした場合、温度変動により密閉空間の内部圧力が大きく変動する。このため、電子制御装置の筐体や液密構造部に過度の圧力が作用し、筐体や液密構造部にクラック等が発生する等して密閉状態が維持されなくなるおそれがある。
このような事情から、電子制御装置の筐体に通気窓を設け、その通気窓に呼吸フィルタを設けるようにしている。呼吸フィルタは、筐体内の密閉空間と外部空間との間で水などの液体の通過を阻止し且つ気体の通過を許容する防水機能を有する。
【0006】
しかしながら、呼吸フィルタは例えば粘着剤を用いて筐体に添着されているので、呼吸フィルタに付着した薬品が少量でも残留した場合、粘着材の耐化学液体性が比較的低いために粘着強度が低下する。このため、振動や気圧差ストレスによって、呼吸フィルタが剥がれて防水性が損なわれるおそれがある。その様な呼吸フィルタが剥がれた状態で、車両が水溜まりを走行したり、車両の下側を洗車した場合には、電子制御装置内に水が浸入してしまうおそれがある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、液密な筐体内部の圧力変動を呼吸フィルタにより抑制する構成において、呼吸フィルタの剥がれによって筐体の液密性(防水性)が損なわれてしまうことを防止できる電子制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1から3記載の発明は、温度変動する被液雰囲気から隔離した密閉空間を形成する筐体(7)には密閉空間から外部空間を臨む通気部(25,26)が設けられている。筐体において通気部の周縁部には、通気部を介した液体の通過を阻止し且つ気体の通過を許容する防水機能を有する呼吸フィルタ(31)が接合されている。
ここで、ゴム部材からなる押圧部(40,71)により呼吸フィルタの筐体に対する接合部が押圧されている。これにより、呼吸フィルタが剥がれて液密性が損なわれてしまうことを防止できる。また請求項1記載の発明によれば、呼吸フィルタは、面方向が天地方向に沿うように設けられ、呼吸フィルタと押圧部との間の内部空間を天方向となる外部空間と連通させる空気孔(43)を備えている。請求項2記載の発明によれば、呼吸フィルタは、面方向が天地方向に沿うように設けられ、呼吸フィルタと押圧部との間の内部空間を地方向となる外部空間に臨ませる開口部(52)を備えている。請求項3記載の発明によれば、押圧部は、バンド部(61)を有しており、筐体を構成する部位の外周に装着されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る押圧部及びカバーの装着状態を示す延出部の斜視図
図2】押圧部及びカバーを取り外して示す延出部の斜視図
図3】オイルパンの内部を模式的に示す断面図
図4】TCUの断面図
図5】TCUの斜視図
図6】押圧部の正面図
図7図6のA-A断面図
図8】カバーの斜視図
図9】水の流れを示す延出部の斜視図
図10】水の流れを示す押圧部の側面図
図11】第2実施形態に係る延出部の斜視図
図12】延出部の断面図
図13】押圧部の装着方法を示す延出部の斜視図
図14】第3実施形態に係る延出部の断面図
図15】押圧部の装着方法を示す延出部の斜視図
図16】第4実施形態に係るカバーの斜視図(その1)
図17】カバーの斜視図(その2)
図18】その他の実施形態に係る押圧部の正面図(その1)
図19】押圧部の正面図(その2)
図20】押圧部の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
車両に適用した第1実施形態について図1から図10を参照して説明する。
車両のエンジンルーム内、もしくはエンジンルーム近傍の車室外の場所には、図3に概略的に示すトランスミッションケース1が設けられている。トランスミッションケース1の内底部にはオイルパン2が設けられており、そのオイルパン2にATF(Automatic Transmission Fluid)3が貯留されている。オイルパン2にはバルブボディ4が配置されており、バルブボディ4の大部分はATF3に浸漬している。
【0011】
バルブボディ4の内部には図示しない油圧制御経路が形成されており、その油圧制御経路を切り替えることでトランスミッションのシフトポジションが切り替えられる。以下、トランスミッションケースをT/Mケースと称する。また、エンジンルームの内部や、その近傍の車室外の空間や、T/Mケース1の内部が被液雰囲気に相当する。
バルブボディ4上にはTCU(Transmission Control Unit)5がボルト6により固定されている。TCU5は、バルブボディ4の油圧制御経路を電気的に切り替える機能を有する駆動回路を含み、このTCU5が電子制御装置に相当する。
【0012】
図4及び図5に示すように、TCU5の筐体7は矩形容器形状の金属ベース8に樹脂ケース9を複数のねじ10により固定して構成されている。金属ベース8と樹脂ケース9との密着部位にはフッ素ゴムからなるシール部材11が介在されており、これにより筐体7の内部に液密な密閉空間が形成されている。
【0013】
樹脂ケース9の内面には複数の取付けボス12が形成されており、その取付けボス12にプリント配線基板13がねじ14により固定されている。プリント配線基板13は、搭載された各種電子部品15と共に制御部を構成している。
【0014】
金属ベース8には凸部16が一体形成されており、その凸部16の上面に塗布された熱硬化性接着剤17を介してプリント配線基板13の下面側が接着固定されている。熱硬化性接着剤17は、TCU5の組み立て後に硬化処理が行われる。また、熱硬化性接着剤は伝熱性に優れた材質からなり、プリント配線基板13に搭載された電子部品15で発生した熱は、熱硬化性接着剤17及び凸部16を介して金属ベース8に伝達されることで外部空間に放熱される。
【0015】
プリント配線基板13には負荷側コネクタ端子18が接続されており、その先端が樹脂ケース9から外部に突出することで負荷側コネクタ19が構成されている。負荷側コネクタ19は、TCU5とバルブボディ4の電気回路とを接続するために設けられている。
【0016】
樹脂ケース9の端部には延出部20が一体形成されている。延出部20は、車両の天方向となる方向に延設されており、T/Mケース1に形成された孔21を貫通して外部空間に突出している。孔21の内周と延出部20の外周との間には、それらの間を液密とするシール部材22が介在している。外部空間とは、エンジンルーム内の空間、もしくはエンジンルーム近傍の車室外の空間を意味する。
プリント配線基板13には車両側コネクタ端子23が接続されており、その車両側コネクタ端子23が延出部20の内部を貫通してT/Mケース1の外部空間に突出することで車両側コネクタ24が構成されている。車両側コネクタ24は、図示しないトランスミッションECUと繋がるコネクタが接続されることでTCU5とトランスミッションECUとを電気的に接続し、トランスミッションECUからの指示信号がTCU5に入力されると共に、TCU5側の信号がトランスミッションECUに出力される。
【0017】
延出部20の内部には通気孔25が形成されており、この通気孔25によりTCU5の筐体7の内部に形成された密閉空間とTCU5の外部空間とが連通されている。通気孔25において外部空間を臨む部位には通気孔25よりも径大な通気窓26が形成されている。通気孔25及び通気窓26が通気部に相当する。
【0018】
図1に示すように延出部20の外周には第1環状鍔部27及び第2環状鍔部28がそれぞれ形成されており、それらの間に装着部29が設けられている。装着部29の正面となる部位には平面状の装着面30が形成されており、その装着面30に通気窓26が位置している。通気窓26の周縁部には呼吸フィルタ31が粘着剤を用いて添着されている。呼吸フィルタ31は、面方向が車両の天地方向に沿うように設けられており、通気窓26を介した液体の通過を阻止し且つ気体の通過を許容する防水機能を有する。呼吸フィルタ31が通気窓26の周縁部に添着された部位が接合部に相当する。本実施形態では、呼吸フィルタ31は車両の天地方向に沿って設けられている。
延出部20において第1環状鍔部27の上方となる部位が車両側コネクタ24であり、トランスミッションECU側コネクタを案内するガイド部32と、ECU側コネクタがロックされるロック部33とが形成されている。
【0019】
図2に示すように装着面30には半環状の溝部34が形成されていると共に一対のボス部35が突出形成されている。溝部34は、呼吸フィルタ31の添着時の位置合わせと位置確認のために設けられているが、省略するようにしてもよい。
装着部29において装着面30の側方となる部位には係合突部36が形成されていると共に、その係合突部36に対応して突部37が形成されている。
装着面30の下方となる部位には傾斜面部38が装着面30と連続するように形成されており、その傾斜面部38の両側となる部位に傾斜面部38に沿って溝部39が形成されている。
【0020】
装着面30にはフッ素ゴムからなる押圧部40が装着されている。図6及び図7に示すように押圧部40は、半円状の前面部41の裏側に半環状のパッキン部42を一体形成して構成されている。前面部41の頂点となる部位には車両の天方向に沿って空気孔43が形成されており、その空気孔43が前面部41に裏側と連通している。パッキン部42には取付け部44が一体に形成されており、その取付け部44に2ケの取付け孔45が形成されている。
【0021】
装着部29にはカバー46が装着されている。図8に示すようにカバー46は、矩形状の前面部47の両端に湾曲した形状の接続部48を介してスナップフィット部49を一体形成して構成されている。スナップフィット部49の高さ方向の中央部には係合孔50が形成されている。カバー46の接続部48において湾曲して凹んだ側には裏側に膨出した膨出部51が形成されており、カバー46が装着部29に装着された状態では、膨出部51の平面部分が装着面30にほぼ密着するようになっている。膨出部51の上面51aは前面部47に向かって下方に傾斜し、下面51bは前面部47から離れる方向に向かって下方に傾斜している。
【0022】
さて、図2に示すように押圧部40に設けられた取付け孔45を装着面30のボス部35に被着すると、押圧部40が装着面30に位置決め状態で装着され、その装着状態では押圧部40のパッキン部42が呼吸フィルタ31の周縁部に軽く接した状態となる。これにより、押圧部40により呼吸フィルタ31が装着面30に弱く押圧された状態となっている。
【0023】
次に、カバー46のスナップフィット部49に設けられた係合孔50を装着部29に設けられた係合突部36に係合すると、カバー46が装着部29に装着される。このとき、カバー46の前面部47が第1環状鍔部27と第2環状鍔部28との間に位置決めされる。
【0024】
一方、スナップフィット部49の高さ方向の上端部及び下端部は第1環状鍔部27と第2環状鍔部28とで挟持される。これにより、カバー46の装着部29への装着状態では、カバー46は装着部29に位置決め状態で装着される。更に突部37によりスナップフィット部49の上端部及び下端部が外側方向へと開くのを防止するよう第1環状鍔部27と第2環状鍔部28に突部37が設けられている。
【0025】
また、カバー46の前面部47が押圧部40の前面を押圧するようになるので、押圧部40は弾性的に圧縮状態となり、この圧縮状態で押圧部40のパッキン部42により呼吸フィルタ31の周縁部が装着面30に強く押圧されるようになる。係合突部36と係合孔50との係合関係を逆にしてもよい。
【0026】
ところで、上述したようにTCU5はT/Mケース1のオイルパン2に配置されているので、車両の走行時はT/Mケース1に大きな加速度が作用するので、ATF3がTCU5に飛散する。また、エンジンが始動した以降のエンジン動作状態ではオイルパン2に貯留されているATF3の温度がエンジンからの被熱で上昇するので、T/Mケース1の内部はATF3の高温蒸気雰囲気となる。このため、TCU5の温度が上昇して筐体7の内部の空気が膨張するようになる。このとき、膨張した空気は通気孔25、通気窓26及び呼吸フィルタ31を介して外部空間に排出される。
【0027】
一方、エンジンが停止してエンジンの熱が低下してT/Mケース1の内部温度が低下すると、TCU5の温度も低下して筐体7の空気が収縮するので、外部空間の空気が呼吸フィルタ31、通気窓26及び通気孔25を介してTCU5の筐体7の内部に吸入される。
以上のようにして、TCU5の筐体7や液密構造に過度の圧力が作用することを防止できる。
【0028】
しかしながら、呼吸フィルタ31は粘着剤を用いて筐体7に添着されているので、呼吸フィルタ31に付着した薬品が少量でも残留した場合、粘着材の耐化学液体性が比較的低いために粘着強度が低下する。このため、振動や気圧差ストレスによって、呼吸フィルタ31が剥がれて防水性が損なわれるおそれがある。その様な呼吸フィルタが剥がれた状態で、車両が水溜まりを走行したり、車両の下側を洗車したりした場合には、電子制御装置内に水が浸入してしまうおそれがある。
【0029】
このような事情から、本実施形態では、押圧部40を延出部20の装着面30に装着するようにした。押圧部40が装着面30に装着された状態では、押圧部40により呼吸フィルタ31の周縁部が装着面30に押圧されるようになるので、呼吸フィルタ31の粘着強度が低下した場合であっても、呼吸フィルタ31の装着面30に対する接合状態を維持することができる。また、押圧部40と呼吸フィルタ31との間は、押圧部40下側の開口、並びに、空気孔43により通気が可能な状態になっているので、押圧部40を設けてもTCU5と外部空間との通気は確保される。
【0030】
さらに、カバー46が装着部29に装着された状態では、カバー46により押圧部40を弾性的に圧縮した状態となるので、呼吸フィルタ31を装着面30に弾性的に押圧することができると同時に押圧部40を位置決め状態とすることができる。
【0031】
さて、延出部20はT/Mケース1の外部空間に位置しているので、車両が水溜まりを走行したり、車両の下側を洗車したりすると、カバー46の上部の僅かな隙間から水が浸入することがある。
ここで、押圧部40の上面に水が浸入した場合は、図9に示すように押圧部40の上面は下方に湾曲しているので、水は矢印で示すように押圧部40の上面を伝って終端から滴下する。押圧部40の下方には傾斜面部38が位置しているので、図10に矢印で示すように押圧部40から滴下した水は傾斜面部38を伝って排水される。
【0032】
また、押圧部40から外れた部位に水が浸入した場合は、押圧部40から外れた部位にはカバー46に設けられた膨出部51が位置しているので、水は膨出部51の上面51aに滴下するようになる。
ここで、膨出部51の上面51aは押圧部40に向かって下方に傾斜しているので、膨出部51の上面51aに滴下した水は押圧部40に向かって伝わる。上面51aの終端まで伝わった水は、膨出部51の側面を回り込んでから下面51bに伝わる。一方、下面51bは押圧部40から離れる方向に向かって下方に傾斜しているので、下面51bに伝わった水は押圧部40から離れる方向に向かって伝わり、最終的に下面51bの終端、つまり押圧部40から最も離れた部位から滴下するようになる。
【0033】
傾斜面部38の両側となる部位、つまり押圧部40から最も離れた部位には溝部39が設けられているので、図9に矢印で示すように膨出部51の下面51bの終端から滴下した水は溝部39を伝って外部に排水される。
以上のようにして、カバー46の上部の隙間から水が浸入した場合であっても、押圧部40を迂回するようにして外部に排水されるので、水が呼吸フィルタ31に付着することを極力防止することができる。
【0034】
しかしながら、カバー46の上部の隙間から浸入した水が押圧部40と呼吸フィルタ31との間に形成された内部空間に浸入することがある。このように押圧部40の内部空間に水が浸入した場合は、表面張力により水が内部空間に留まるようになるので、呼吸フィルタ31の前面が水で閉鎖されてしまう。この場合、押圧部40を円状とした場合に比較して呼吸フィルタ31の前面が水で塞がれてしまう面積をほぼ半分に抑制できるものの、呼吸フィルタ31の呼吸性能が低下してしまうことは避けられない。
【0035】
ここで、押圧部40の頂点には車両の天方向に沿った空気孔43が形成され、さらに押圧部40の前面部41の下端部と呼吸フィルタ31との間には車両の地方向を臨む開口部52が形成されている。このような工夫により、内部空間は空気孔43及び開口部52を介して外部空間に連通しているので、内部空間に浸入した水は自重により開口部52から滴下するようになる。これにより、呼吸フィルタ31の呼吸性能が低下してしまうことを防止することができる。
【0036】
このような実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
装着面30に装着された押圧部40により呼吸フィルタ31の周縁部を装着面30に押圧するようにしたので、呼吸フィルタ31の粘着強度が低下した場合であっても、呼吸フィルタ31が脱落してしまうことを防止することができる。
さらに、装着部29に装着されたカバー46により押圧部40を弾性的に圧縮した状態にしたので、押圧部40により呼吸フィルタ31を装着面30に弾性的に押圧することができると同時に押圧部40を強固な位置決め状態とすることができる。
【0037】
(第2実施形態)
第2実施形態について図11から図13を参照して説明する。この第2実施形態は、第1実施形態の押圧部40をゴムバンド形状としたことを特徴とする。
図11及び図12に示すように押圧部40には環状のバンド部61が押圧部40と同一部材により一体形成されているが、押圧部40と同一部材または異なる部材のバンド部61を押圧部40に一体化してもよい。バンド部61は、装着部29の外周よりも拡開可能な寸法に設定されている。また、バンド部61の外周寸法は、装着部29の外周寸法よりも小さく設定されている。
【0038】
押圧部40を装着部29に装着するには、図13に示すようにバンド部61を拡開した状態で車両側コネクタ24を通過して装着部29に装着する。このとき、第1実施形態と同様にして、押圧部40を装着面30に装着する。この場合、バンド部61の外周寸法は装着部29の外周寸法よりも小さく設定されている。これにより、押圧部40が装着部29に装着された状態では、押圧部40の装着部29に対する位置決めと呼吸フィルタ31の装着面30に対する押圧とを同時に行うことができる。
【0039】
このような構成によれば、押圧部40にバンド部61を一体化した形状とすることにより呼吸フィルタ31を装着部29に弾性的に押圧することができるので、第1実施形態のカバー46のような別部材を設けることなく、呼吸フィルタ31の装着部29に対する接合状態を維持することができる。
【0040】
(第3実施形態)
第3実施形態について図14及び図15を参照して説明する。第3実施形態は、押圧部を装着面30にスライドにより装着することを特徴とする。
図14に示すように押圧部71はほぼ箱状をなしており、その前面には傾斜面71aが形成されている。一方、第1環状鍔部27の下面には垂下部72が一体形成されており、その裏面には押圧部71の傾斜面72aに対応する傾斜面72aが形成されている。
【0041】
押圧部71を装着面30に装着するには、図15に示すように押圧部71を垂下部72と呼吸フィルタ31との間の隙間に下方からスライドして挿入する。すると、押圧部71の傾斜面72aが垂下部72の傾斜面71a上をスライドして圧縮されるので、押圧部71は垂下部72と呼吸フィルタ31との間に弾性的に圧縮した状態で挿入される。これにより、押圧部71により呼吸フィルタ31の周縁部を装着面30に弾性的に押圧することができる。
【0042】
このような実施形態によれば、押圧部71を垂下部72と呼吸フィルタ31との間にスライドして装着することで押圧部71により呼吸フィルタ31の周縁部を装着面30に弾性的に押圧するようにしたので、呼吸フィルタ31の装着面30に対する接合状態を維持することができる。
【0043】
(第4実施形態)
第4実施形態について図16及び図17を参照して説明する。第4実施形態は、第1実施形態の押圧部40とカバー46とを一体化したことを特徴とする。
図16及び図17に示すように押圧部40とカバー46とは一体化されている。本実施形態では、押圧部40に設けられていた取付け部44は省略されているが、設けるようにしてもよい。押圧部40とカバー46とを一体化するにはゴム部材にPBT等の熱可塑性樹脂を2色成形すればよいが、押圧部40をカバー46に圧入や接着により一体化したり、3Dプリンタで製作したりするようにしてもよい。
【0044】
カバー46を装着部29に装着すると、第1実施形態と同様に、カバー46により押圧部40を弾性的に圧縮することができるので、押圧部40により呼吸フィルタ31の周縁部を装着面30に弾性的に押圧することができる。
このような実施形態によれば、押圧部40とカバー46とを一体化するようにしたので、部品点数を削減して組み付け工程の簡単化を図ることができる。
【0045】
(その他の実施形態)
押圧部40の前面部41の下端部が直線状に限定されることなく、前面部41の下端部が呼吸フィルタ31の中心において折曲した形状、例えば図18に示すように呼吸フィルタ31の中心において120°で折曲したり、図19に示すように60°で折曲したりしてもよいし、図20に示すように円状の前面部41の図示下端に切欠部41aを有した形状としてもよい。
押圧部40に形成する空気孔43は、車両の天方向から傾斜して設けるようにしてもよいし、複数設けるようにしてもよい。
【0046】
押圧部40をフッ素ゴム以外のゴム部材から形成するようにしてもよい。
呼吸フィルタ31を接着剤や両面テープ、或いは熱溶着を用いて装着面30に接合するようにしてもよい。
呼吸フィルタ31の形状は円形状に限定されることなく、矩形状や多角形状としてもよい。
エンジンルームのように被水空間に配置される電子制御装置に適用するようにしてもよい。この場合、電子制御装置の筐体に通気窓を形成し、その通気窓に呼吸フィルタを設ければよい。
車両以外の被液雰囲気に配置される電子制御装置に適用するようにしてもよい。
【0047】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0048】
図面中、1はトランスミッションケース、7は筐体、13はプリント配線基板(制御部)、25は通気孔(通気部)、26は通気窓(通気部)、31は呼吸フィルタ、35はボス部、45は取付け孔、40,71は押圧部、43は空気孔、46はカバー、52は開口部である。
図1
図2
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図20