(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両用乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20240806BHJP
B60R 21/055 20060101ALI20240806BHJP
B60R 21/08 20060101ALI20240806BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20240806BHJP
B60N 2/888 20180101ALI20240806BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/055
B60R21/08 F
B60R21/08 P
A47C7/38
B60N2/888
(21)【出願番号】P 2021112656
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大鉢 次郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】堀田 昌志
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-203369(JP,A)
【文献】特開2006-008105(JP,A)
【文献】特開2019-137307(JP,A)
【文献】特開2010-234910(JP,A)
【文献】米国特許第08985622(US,B1)
【文献】特開2020-100227(JP,A)
【文献】特開2018-167623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/80
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の衝突が検知又は予知されることによって作動したインフレータから噴出されたガスにより、乗員の頭部の側方を通ってシート前方側へ展開し、前記乗員の頭部の側方に配置される前後チャンバと、該前後チャンバのシート前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、前記乗員の顔のシート前方側に配置される先端チャンバと、を有するエアバッグ本体と、
前記乗員の頭部をシート後方側から支持する本体部と、該本体部の少なくとも前記側方側に設けられ、前記前後チャンバの展開完了時までにシート前方側へ突出し、前記前後チャンバと前記乗員の頭部との間に介在するサイド部と、を有するヘッドレストと、
を備え
、
前記サイド部は、前記車両の速度が所定値以上とされたときに、シート前方側へ突出する構成とされている車両用乗員保護装置。
【請求項2】
前記サイド部は、前記
本体部にシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられている請求項1に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項3】
車両の衝突が検知又は予知されることによって作動したインフレータから噴出されたガスにより、乗員の頭部の側方を通ってシート前方側へ展開し、前記乗員の頭部の側方に配置される前後チャンバと、該前後チャンバのシート前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、前記乗員の顔のシート前方側に配置される先端チャンバと、を有するエアバッグ本体と、
前記乗員の頭部をシート後方側から支持する本体部と、該本体部の少なくとも前記側方側に設けられ、前記前後チャンバの展開完了時までにシート前方側へ突出し、前記前後チャンバと前記乗員の頭部との間に介在するサイド部と、を有するヘッドレストと、
を備え、
前記サイド部は、前記
本体部にシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられており、展開する前記エアバッグ本体に押されることによって、シート前方側へ突出する構成とされている車両用乗員保護装置。
【請求項4】
前記サイド部は、前記本体部
の前記側方側とは反対側にもシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられており、
展開する前記エアバッグ本体に押されることによって、シート前方側へ突出する一方のサイド部に連動して、他方のサイド部もシート前方側へ突出する構成とされている請求項
3に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項5】
前記サイド部は、
サイド部本体と、該サイド部本体に対して出入可能に構成された延長部と、を有している請求項1
~請求項4の何れか1項に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項6】
車両の衝突が検知又は予知されることによって作動したインフレータから噴出されたガスにより、乗員の頭部の側方を通ってシート前方側へ展開し、前記乗員の頭部の側方に配置される前後チャンバと、該前後チャンバのシート前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、前記乗員の顔のシート前方側に配置される先端チャンバと、を有するエアバッグ本体と、
前記乗員の頭部をシート後方側から支持する本体部と、該本体部の少なくとも前記側方側に設けられ、前記前後チャンバの展開完了時までにシート前方側へ突出し、前記前後チャンバと前記乗員の頭部との間に介在するサイド部と、を有するヘッドレストと、
を備え、
前記サイド部は、
サイド部本体と、該サイド部本体に対して出入可能に構成された延長部と、を有している車両用乗員保護装置。
【請求項7】
前記サイド部は、
前記車両の衝突が検知又は予知されたときに、シート前方側へ突出する構成とされている請求項
6に記載の車両用乗員保護装置。
【請求項8】
前記サイド部がシート前方側へ突出している状態で、前記車両の衝突が検知又は予知されたときには、プリクラッシュシートベルト装置が作動する構成とされている請求項1~請求項7の何れか1項に記載の車両用乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の前面衝突時に、シートバックの一方の側部から前方へ展開し、乗員の上半身(頭部を含む)の側方に配置されるエアバッグ本体部と、そのエアバッグ本体部からシート幅方向内側へ展開し、乗員の顔面前方に配置されるエアバッグ突出部と、を備えたサイドエアバッグ装置は、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シートバックの側部にエアバッグ装置が搭載されている場合、車両の前面衝突時に、乗員の頭部が、そのエアバッグ装置が搭載されている側部側に寄っていると、エアバッグの展開時に、そのエアバッグが乗員の頭部に引っ掛かるおそれがあり、エアバッグの展開が遅れるおそれがある。このように、乗員の頭部の側方を通ってエアバッグが展開するエアバッグ装置には、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、乗員の頭部の側方を通って展開するエアバッグ装置であっても、そのエアバッグ本体がスムーズに展開される車両用乗員保護装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様の車両用乗員保護装置は、車両の衝突が検知又は予知されることによって作動したインフレータから噴出されたガスにより、乗員の頭部の側方を通ってシート前方側へ展開し、前記乗員の頭部の側方に配置される前後チャンバと、該前後チャンバのシート前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、前記乗員の顔のシート前方側に配置される先端チャンバと、を有するエアバッグ本体と、前記乗員の頭部をシート後方側から支持する本体部と、該本体部の少なくとも前記側方側に設けられ、前記前後チャンバの展開完了時までにシート前方側へ突出し、前記前後チャンバと前記乗員の頭部との間に介在するサイド部と、を有するヘッドレストと、を備えている。
【0007】
第1の態様の発明によれば、車両の衝突が検知又は予知されると、作動したインフレータから噴出されたガスにより、エアバッグ本体の前後チャンバが乗員の頭部の側方を通ってシート前方側へ展開する。このとき、ヘッドレストのサイド部が、エアバッグ本体の前後チャンバの展開完了時までにシート前方側へ突出し、その前後チャンバと乗員の頭部との間に介在する。したがって、例えば乗員の頭部が上記の側方側に寄っていても、エアバッグ本体は、乗員の頭部に引っ掛かるおそれがなく、スムーズに展開される。
【0008】
また、本発明に係る第2の態様の車両用乗員保護装置は、第1の態様の車両用乗員保護装置であって、前記サイド部は、前記車両の速度が所定値以上とされたときに、シート前方側へ突出する構成とされている。
【0009】
第2の態様の発明によれば、車両の速度が所定値以上とされたときに、サイド部がシート前方側へ突出する。したがって、エアバッグ本体が展開するよりも前に、サイド部が乗員の頭部の側方に確実に配置され、乗員の頭部の横ずれが予め矯正される。
【0010】
また、本発明に係る第3の態様の車両用乗員保護装置は、第1の態様の車両用乗員保護装置であって、前記サイド部は、前記車両の衝突が検知又は予知されたときに、シート前方側へ突出する構成とされている。
【0011】
第3の態様の発明によれば、車両の衝突が検知又は予知されたときに、サイド部がシート前方側へ突出する。したがって、エアバッグ本体が展開するよりも前に、サイド部が乗員の頭部の側方に確実に配置され、乗員の頭部の横ずれが予め矯正される。
【0012】
また、本発明に係る第4の態様の車両用乗員保護装置は、第1~第3の何れか1つの態様の車両用乗員保護装置であって、前記サイド部は、前記本体部にシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられている。
【0013】
第4の態様の発明によれば、サイド部が、本体部にシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられている。したがって、サイド部が、例えばシート前後方向にスライドして突出する場合に比べて、ヘッドレストの構成が簡略化される。
【0014】
また、本発明に係る第5の態様の車両用乗員保護装置は、第1の態様の車両用乗員保護装置であって、前記サイド部は、前記本体部にシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられており、展開する前記エアバッグ本体に押されることによって、シート前方側へ突出する構成とされている。
【0015】
第5の態様の発明によれば、サイド部が、本体部にシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられ、展開するエアバッグ本体に押されることによって、シート前方側へ突出する。したがって、ヘッドレストに、サイド部をシート前方側へ突出させるための突出機構を設ける必要がなく、ヘッドレストの構成が簡略化される。
【0016】
また、本発明に係る第6の態様の車両用乗員保護装置は、第5の態様の車両用乗員保護装置であって、前記サイド部は、前記本体部の前記側方側とは反対側にもシート上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられており、展開する前記エアバッグ本体に押されることによって、シート前方側へ突出する一方のサイド部に連動して、他方のサイド部もシート前方側へ突出する構成とされている。
【0017】
第6の態様の発明によれば、本体部の両側にサイド部が回動可能に設けられており、一方のサイド部が、展開するエアバッグ本体に押されてシート前方側へ突出する動作に連動して、他方のサイド部が、シート前方側へ突出する。したがって、乗員の頭部の横ずれが確実に矯正されるとともに、各サイド部に突出機構を設ける場合に比べて、ヘッドレストの構成が簡略化される。
【0018】
また、本発明に係る第7の態様の車両用乗員保護装置は、第1~第6の何れか1つの態様の車両用乗員保護装置であって、前記サイド部は、サイド部本体と、該サイド部本体に対して出入可能に構成された延長部と、を有している。
【0019】
第7の態様の発明によれば、サイド部が、サイド部本体と、そのサイド部本体に対して出入可能に構成された延長部と、を有している。つまり、サイド部は、その長さが変更可能に構成されている。したがって、延長部が突出したサイド部により、乗員の視界がより前方側へ向けられ、結果的に乗員の頭部の横ずれが矯正される。
【0020】
また、本発明に係る第8の態様の車両用乗員保護装置は、第1~第7の何れか1つの態様の車両用乗員保護装置であって、前記サイド部がシート前方側へ突出している状態で、前記車両の衝突が検知又は予知されたときには、プリクラッシュシートベルト装置が作動する構成とされている。
【0021】
第8の態様の発明によれば、サイド部がシート前方側へ突出している状態で、車両の衝突が検知又は予知されたときには、プリクラッシュシートベルト装置が作動する。つまり、乗員の頭部がヘッドレストの本体部へ向けて押し付けられる。したがって、乗員の頭部の横ずれが確実に矯正され、乗員の頭部は、ヘッドレストの本体部のシート幅方向中央部に配置される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、乗員の頭部の側方を通って展開するエアバッグ装置であっても、そのエアバッグ本体をスムーズに展開させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレスト及びエアバッグ本体を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレストの作動前を示す拡大平面図である。
【
図3】第1実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレストの作動後を示す拡大平面図である。
【
図4】(A)第1実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するプリクラッシュシートベルト装置の作動前を示す平面図である。(B)第1実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するプリクラッシュシートベルト装置の作動後を示す平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレストの変形例を示す要部拡大平面図である。
【
図6】第2実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレストの作動前を示す拡大平面図である。
【
図7】第2実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレストの作動後を示す拡大平面図である。
【
図8】(A)第3実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレストのサイド部の突出状態を示す平面図である。(B)第3実施形態に係る車両用乗員保護装置を構成するヘッドレストのサイド部の収納状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPをシート上方向、矢印FRをシート前方向、矢印RHをシート右方向とする。したがって、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車両用シートにおける上下、前後、左右を示すものとする。また、左右方向は、シート幅方向と同義である。
【0025】
また、本実施形態に係る車両用乗員保護装置10は、車両12の後席としての車両用シート16のヘッドレスト20に設けられている。したがって、本実施形態に係る車両用シート16は、後席として説明するが、本実施形態に係る車両用乗員保護装置10は、車両12の前席としての車両用シート(図示省略)のヘッドレストに設けられていてもよい。
【0026】
また、車両用乗員保護装置10を構成するエアバッグ装置30は、後述するように、窓としてのサイドウインド14(
図7参照)とヘッドレスト20のサイド部24(
図2等参照)との間を通って前方側へ展開する。したがって、このエアバッグ装置30は、カーテンエアバッグ装置が設けられていない車両に適用され、後述する前後チャンバ34がカーテンエアバッグとして機能する。
【0027】
更に、本実施形態における「窓」には、サイドウインド14が閉じている状態のときだけではなく、開いている状態のときも含まれる。また、
図1に示される本実施形態における「乗員P」とは、一例として、人体ダミーAM50に相当する乗員である。
【0028】
<第1実施形態>
まず、第1実施形態に係る車両用乗員保護装置10について説明する。
図1に示されるように、車両用乗員保護装置10を備えた車両用シート16は、乗員Pが着座する(乗員Pの臀部及び大腿部を支持する)シートクッション(図示省略)と、乗員Pの背部を支持するシートバック18と、乗員Pの頭部Phを支持するヘッドレスト20と、を有している。
【0029】
ヘッドレスト20は、シートバック18の上端部におけるシート幅方向中央部に昇降可能に設けられたブロック状の本体部22と、本体部22のシート幅方向外側端部(両側部)に上下方向を軸方向としてシート幅方向内側端部(基端部)が回動可能に取り付けられたブロック状のサイド部24と、を有している。
【0030】
すなわち、サイド部24のシート幅方向内側端部における上下方向両端部には、本体部22側へ張り出す略半円板形状の張出部24Aが一体に形成されており、その上下一対の張出部24Aが、本体部22のシート幅方向外側端部の上端部及び下端部に配置され、上下方向を軸方向とする回転軸25(
図2参照)によって回動可能に支持されている。
【0031】
なお、
図2に示されるように、平面視で、本体部22は、シート幅方向を長手方向とする略矩形状に形成されており、サイド部24は、
図2に示される回動前の姿勢において、斜面を後方側へ向けた略直角三角形状に形成されている。また、以下において、左右のサイド部24を区別して説明するときには、「L」、「R」の英字を付与する。
【0032】
図1及び後述する第2実施形態の
図6、
図7に示されるように、ヘッドレスト20の本体部22の後方側には、樹脂製で筐体状のケース部26が一体的に設けられている。このケース部26は、本体部22と共に表皮材(図示省略)によって被覆されるようになっており、ケース部26における左右の外側壁26L、26Rのうちの一方(図示のものは右側の外側壁26R)は、展開するエアバッグ本体32によって破断されるようになっている。
【0033】
ケース部26の内部には、所定の空間部Sが形成されている。そして、その空間部Sには、エアバッグ装置30のエアバッグ本体32とインフレータ28とがシート幅方向に並んで収納されている。すなわち、図示のケース部26では、左側にインフレータ28が配置され、右側に蛇腹状に折り畳まれたエアバッグ本体32が収納されている。
【0034】
図1、
図7に示されるように、エアバッグ装置30は、インフレータ28からガスが噴出されることによって、車両用シート16に着座した乗員Pの頭部Phの後方側(図示のものは右側方後側)からサイド部24R(乗員Pの頭部Ph)の側方を通って前方側へ展開するエアバッグ本体32を有している。
【0035】
エアバッグ本体32は、乗員Pの頭部Phの側方に配置される(サイドウインド14とサイド部24Rとの間に配置される)前後チャンバ34と、前後チャンバ34の前方側端部からシート幅方向内側へ展開し、乗員Pの顔の前方側に配置される先端チャンバ36と、を有している。そして、このエアバッグ本体32は、前後チャンバ34の上端部における所定位置と、先端チャンバ36の上端部における所定位置と、を連結する紐状のテザー38を有している。
【0036】
つまり、このエアバッグ本体32は、平面視で略「V」字状に折り曲げられて乗員Pの頭部Ph及び胸部の少なくとも一部を拘束するようになっている。なお、テザー38は、少なくとも前後チャンバ34の上端部と先端チャンバ36の上端部とを連結するように設けられていればよく、例えば前後チャンバ34の下端部における所定位置と先端チャンバ36の下端部における所定位置とを更に連結するように設けられていてもよい。
【0037】
インフレータ28は、略円筒状に形成されており、その軸心部がシート幅方向に沿って配置されるように、その外周部が、リテーナ(図示省略)を介して、筐体状に形成された反力板(図示省略)に支持されている。反力板は、例えばシートバックフレーム(図示省略)にブラケット(図示省略)を介して固定されており、前方側へ展開するエアバッグ本体32からインフレータ28を介して伝達される反力を受け止められる構成になっている。なお、反力板及びリテーナも空間部Sに配置されている。
【0038】
インフレータ28は、車両12に設けられたエアバッグECU(図示省略)と電気的に接続されており、車両12に設けられた衝突検知センサー又は衝突予知センサー等の検出装置(図示省略)とエアバッグECUとが電気的に接続されている。したがって、インフレータ28は、検出装置によって車両12の前面衝突が検知又は予知されると、エアバッグECUを介して作動し、ガスを瞬時に噴出するようになっている。そして、そのインフレータ28の噴出口にエアバッグ本体32の接続部31が嵌められて接続されている。
【0039】
上記したように、エアバッグ本体32は、ケース部26の空間部S内に蛇腹状に(所定の長さで交互に複数)折り畳まれた状態で収納されている。したがって、
図7に示されるように、このエアバッグ本体32は、インフレータ28から噴出されたガスにより、蛇腹状がほどけながら、サイドウインド14とサイド部24R(乗員Pの頭部Phの側方)との間を通って前方側へ展開するようになっている。
【0040】
また、ケース部26の右側の外側壁26Rは、エアバッグ本体32の展開に伴い、例えば上下方向に沿った直線状に破断されるようになっている。なお、破断される箇所は、外側壁26Rの後端部であることが好ましい。換言すれば、外側壁26Rの後端部に、破断され易くなる脆弱部等を形成しておくことが好ましい。
【0041】
図2、
図3に示されるように、ヘッドレスト20は、サイド部24を前方側へ回動させる方向へ付勢する付勢部材としての圧縮コイルバネ46と、圧縮コイルバネ46の付勢力に抗してサイド部24を前方側へ回動しないようにロックするロック機構40と、ロック機構40のロックを解除するロック解除機構50と、を有している。
【0042】
具体的に説明すると、ロック機構40は、本体部22の内部に設けられている。ロック機構40は、サイド部24を回動可能に支持する回転軸25に嵌められて、例えば下側の張出部24Aに固定され、サイド部24と一体に回転する円筒状の回転部材42と、回転部材42の回転を阻止する係止部44と、を有している。
【0043】
回転部材42の外周面には、径方向外側(シート幅方向内側)へ所定の長さで突出し、その突出方向が長手方向となる平面視略矩形状の突出部42Aが一体に形成されており、圧縮コイルバネ46の一端部としての後端部46Aが、その突出部42Aの先端に取り付けられている。なお、圧縮コイルバネ46の他端部としての前端部46Bは、本体部22の前壁22Aの内面に取り付けられている。また、回転部材42の外周面には、平面視で略三角形状に凹んだ被係止部としての凹部42Bが形成されている。
【0044】
係止部44は、平面視略「L」字状に形成されており、略90度に屈曲された屈曲部44Cよりも一端部44B側(シート幅方向内側)の所定の部位が、上下方向を軸方向とする回転軸45によって回動可能に支持されている。そして、係止部44の他端部としての前端部に、凹部42Bに挿入可能な平面視略三角形状の爪部44Aが一体に形成されている。また、係止部44は、トーションバネ(図示省略)等の付勢部材によって、常に爪部44Aが前方側へ向かうように(凹部42Bに挿入される方向へ)付勢されている。
【0045】
本体部22の後壁22Bには、ロック解除機構50としてのソレノイド52が設けられている。ソレノイド52には、通電及び非通電により前後方向へ出入可能な円柱状のロッド52Aが設けられており、そのロッド52Aが最も引っ込んだ状態で、ロッド52Aの先端部(前端部)が、係止部44の一端部44B(回転軸45よりもシート幅方向内側端部)における後面に近接配置されている。
【0046】
したがって、通電によりソレノイド52が駆動し、ロッド52Aが前方側へ突出して係止部44の一端部44Bを前方側へ押圧すると、係止部44の爪部44Aが、回転軸45を中心に後方側へ回動し、凹部42Bから外れる構成になっている。なお、ソレノイド52は、上記した検出装置と電気的に接続されており、検出装置が車両12の前面衝突を検知又は予知すると、通電されて作動するようになっている。
【0047】
以上のような構成とされたロック機構40及びロック解除機構50は、次のような態様を採る。まず、サイド部24が、回動しないように(
図2に示される姿勢を維持するように)ロックされる。すなわち、回転部材42と一体に回動するサイド部24を圧縮コイルバネ46の付勢力に抗して後方側へ回動させる。
【0048】
すると、回転部材42の凹部42Bに、トーションバネ等によって前方側へ付勢されている係止部44の爪部44Aが挿入され、サイド部24が、その姿勢を維持するようにロックされる。換言すれば、圧縮コイルバネ46の付勢力によって回転部材42と共にサイド部24が前方側へ回動するのが、係止部44によって阻止される。なお、サイド部24がロック機構40によってロックされたとき、本体部22の前面とサイド部24の前面とは面一になる。そのため、乗員Pは、頭部Phを本体部22からサイド部24へずらすことが容易になっている。
【0049】
一方、サイド部24に対するロックを解除するには、ソレノイド52を駆動させる。ソレノイド52は、上記した検出装置と電気的に接続されているため、その検出装置による車両12の衝突検知又は衝突予知がトリガーとなって通電されることにより、ロッド52Aを前方側へ突出させる。
【0050】
ロッド52Aが前方側へ突出すると、係止部44の一端部44Bが前方側へ押されるため、爪部44Aが回転軸45を中心に後方側へ回動し、凹部42Bから外れる。これにより、回転部材42と一体に回動するサイド部24が、圧縮コイルバネ46の付勢力によって前方側へ回動して突出し、乗員Pの頭部Phの側方に配置される(前後チャンバ34と乗員Pの頭部Phとの間に介在する)。
【0051】
なお、ソレノイド52は、車両12に設けられた速度センサー(図示省略)とも電気的に接続されており、車両12の速度が所定値以上とされたときにも作動してロック機構40のロックを解除するようになっている。つまり、ロック解除機構50としてのソレノイド52は、前後チャンバ34の展開完了時までには駆動するようになっている。また、車両12の速度が所定値以上とされたときに、サイド部24が前方側へ回動されていないときには、警告音や表示等による警報が発生するように構成されていてもよい。
【0052】
また、
図4(A)に示されるように、車両用シート16には、公知のプリクラッシュシートベルト装置54が設けられている。プリクラッシュシートベルト装置54は、車両12に設けられた制御装置(図示省略)と電気的に接続されており、その制御装置は、検出装置と電気的に接続されている。そして、プリクラッシュシートベルト装置54は、サイド部24が前方側へ突出している状態で、車両12の前面衝突が検出装置によって検知又は予知されたときに、制御装置を介して作動するように構成されている。
【0053】
すなわち、プリクラッシュシートベルト装置54は、車両12の前面衝突が検知又は予知されると、
図4(B)に白抜きの矢印で示されるように、シートベルト56をリトラクター(図示省略)で強制的に巻き取って引っ張り、より素早く乗員Pをシートバック18に拘束できる構成になっている。これにより、乗員Pの頭部Phが、ヘッドレスト20の本体部22の前壁22Aへ向けて押し付けられるようになっている。
【0054】
以上のような構成とされた第1実施形態に係る車両用乗員保護装置10において、次にその作用について説明する。
【0055】
車両12が前面衝突することを検出装置が検知又は予知すると、インフレータ28が作動し、エアバッグ本体32の内部へガスを瞬時に噴出する。エアバッグ本体32の内部へガスが噴出されると、展開するエアバッグ本体32によってケース部26の外側壁26Rが破断され、エアバッグ本体32がサイドウインド14に沿って(乗員Pの頭部Phの側方を通って)前方側へ展開するが、その展開に先行してサイド部24が前方側へ突出する。
【0056】
すなわち、車両12が前面衝突することを検出装置が検知又は予知すると、インフレータ28の作動前又は作動と同時に、ロック解除機構50が作動する。具体的には、ソレノイド52へ通電され、ロッド52Aが前方側へ突出し、係止部44の一端部44Bを前方側へ押圧する。これにより、係止部44の爪部44Aが回転軸45を中心に後方側へ回動し、凹部42Bから外れる。
【0057】
すると、回転部材42と一体に回動するサイド部24が、圧縮コイルバネ46の付勢力によって前方側へ回動して突出し、乗員Pの頭部Phの側方に配置される。つまり、ヘッドレスト20のサイド部24Rが、エアバッグ本体32の前後チャンバ34の展開完了時までに前方側へ突出し、その前後チャンバ34と乗員Pの頭部Phとの間に介在する。
【0058】
したがって、エアバッグ本体32の展開時に、例えば乗員Pの頭部Phがサイドウインド14側に寄っていても(サイド部24R側にずれていても)、その頭部Phの位置がサイド部24Rによって予め矯正される(頭部Phが本体部22におけるシート幅方向中央部側に強制的に移動させられる)。
【0059】
このように、サイド部24は、乗員Pの頭部Phの側方に確実に配置されるため、乗員Pの頭部Phの横ずれを確実に矯正することができる。よって、エアバッグ本体32は、乗員Pの頭部Phに引っ掛かるおそれがなく、サイドウインド14に沿って容易かつスムーズに展開することができる。すなわち、本実施形態によれば、エアバッグ本体32の展開性能を充分に確保することができる。
【0060】
そして、完全に展開されたエアバッグ本体32(前後チャンバ34及び先端チャンバ36)により、車両用シート16に着座している乗員Pの頭部Ph及び少なくとも胸部の一部が拘束される。したがって、その乗員Pの頭部Ph及び少なくとも胸部の一部が慣性力によって前方へ移動するのをエアバッグ本体32(前後チャンバ34及び先端チャンバ36)によって抑制することができる。
【0061】
また、上記したように、車両12の前面衝突が検知又は予知されたときに、サイド部24Rは、エアバッグ本体32の前後チャンバ34の展開完了時までに前方側へ突出して、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在する。そのため、エアバッグ本体32が展開するときに、乗員Pの顔がエアバッグ本体32によって傷付くおそれがない。換言すれば、乗員Pの頭部Phの側方を通って展開するエアバッグ本体32の展開時に、サイド部24Rによって、乗員Pの顔を保護することができる。
【0062】
また、サイド部24は、本体部22に上下方向を軸方向として回動可能に取り付けられている。したがって、サイド部24が、例えば前後方向にスライドして突出する構成とされている場合に比べて、サイド部24の突出機構(ヘッドレスト20の構成)を簡略化することができ、ヘッドレスト20における製造コストの増加を抑制することができる。
【0063】
更に、サイド部24が前方側へ突出している状態で、車両12の前面衝突が検知又は予知されたときには、プリクラッシュシートベルト装置54が作動する。つまり、強制的に巻き取られたシートベルト56により、乗員Pの頭部Phが、ヘッドレスト20の本体部22へ向けて押し付けられる。したがって、乗員Pの頭部Phの横ずれを確実に矯正することができるとともに、乗員Pの頭部Phは、確実にヘッドレスト20の本体部22のシート幅方向中央部に配置される。よって、車両12が前面衝突したときの乗員保護性能を向上させることができる。
【0064】
また、車両12の速度が所定値以上とされたときにも、ロック解除機構50(ソレノイド52)が作動して、サイド部24が前方側へ突出する。つまり、エアバッグ本体32が展開するよりも前に、サイド部24が、乗員Pの頭部Phの側方に配置された状態となる。したがって、乗員Pの頭部Phの横ずれを予め矯正することができ(乗員Pの頭部Phを本体部22のシート幅方向中央部に戻すことが確実にでき)、車両12が前面衝突したときの乗員保護性能を向上させることができる。
【0065】
(変形例)
なお、回転部材42を介してサイド部24を前方側へ回動させるように付勢する付勢部材は、圧縮コイルバネ46に限定されるものではなく、例えば
図5に示されるような渦巻バネ48であってもよい。渦巻バネ48は、例えば中心部分を回転軸25に嵌め、一端部をサイド部24に固定し、他端部を本体部22に設けた係止ピン58に固定すればよい。
【0066】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る車両用乗員保護装置10について説明する。なお、上記第1実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0067】
図6、
図7に示されるように、この第2実施形態では、サイド部24Rが、展開するエアバッグ本体32に押されることによって、前方側へ突出する構成とされている点だけが、上記第1実施形態と異なっている。そして、展開するエアバッグ本体32に押されることによって、前方側へ突出する右側(一方)のサイド部24Rに連動して、左側(他方)のサイド部24Lも前方側へ突出する構成とされている。
【0068】
すなわち、この第2実施形態には、一方(右側)のサイド部24Rの回動に連動して他方(左側)のサイド部24Lを回動させるようにする連動機構60が設けられている。連動機構60は、例えば所定の長さのワイヤー62と、そのワイヤー62が巻き掛けられる複数の回転自在なプーリー64、66、68と、を含んで構成されている。
【0069】
具体的に説明すると、右側のサイド部24Rの内部における先端部近傍には、ワイヤー62の一端部62Aが固定されている。そして、そのワイヤー62は、本体部22の内部で、かつ側面視で回転軸25よりも後方側に左右方向に間隔を空けて設けられた左右一対の第1プーリー64及び第2プーリー66に順に巻き掛けられている。
【0070】
そして更に、そのワイヤー62は、本体部22の内部における左側端部で、かつ側面視で回転軸25よりも前方側に設けられた第3プーリー68に巻き掛けられており、ワイヤー62の他端部62Bが、左側のサイド部24Lの内部における先端部近傍に固定されている。
【0071】
このような構成によれば、
図7に示されるように、展開するエアバッグ本体32に押されて右側のサイド部24Rが回転軸25を中心に前方側へ回動すると、それに伴ってワイヤー62の一端部62Aが前方側へ引っ張られる。すると、ワイヤー62の他端部62Bが後方側へ引っ張られ、左側のサイド部24Lが回転軸25を中心にして前方側へ回動する。したがって、乗員Pの頭部Phの位置が、左右のサイド部24によって矯正される(本体部22側へ強制的に移動させられる)。
【0072】
また、エアバッグ本体32は、インフレータ28から噴出されたガスにより、ケース部26から前方側へ展開する際、右側のサイド部24Rを押しながら展開するため、乗員Pの頭部Phに引っ掛かるおそれがない。よって、エアバッグ本体32は、サイドウインド14に沿って容易かつスムーズに展開することができる。
【0073】
そして、先端チャンバ36の先端部(後端部)とサイド部24Lの先端部とが近接又は接触配置されるため(エアバッグ本体32とサイド部24Lとで頭部Phの周りを360°囲むことができるため)、乗員Pの頭部Phをより一層保護することができる。つまり、車両12が前面衝突したときの乗員保護性能をより一層向上させることができる。
【0074】
また、この第2実施形態によれば、右側のサイド部24Rが、展開するエアバッグ本体32に押されることによって前方側へ突出し、その展開されたエアバッグ本体32の内圧によって、その位置が保持される。更に言えば、右側のサイド部24Rが、展開するエアバッグ本体32に押されて前方側へ突出する動作に連動して、左側のサイド部24Lも前方側へ突出し、その展開されたエアバッグ本体32の内圧によって、サイド部24Rの位置が保持されることにより、連動機構60を介して、サイド部24Lの位置も保持される。
【0075】
したがって、乗員Pの頭部Phの横ずれを左右のサイド部24によって確実に矯正できるとともに、ヘッドレスト20に、各サイド部24を前方側へ突出させるための突出機構を設ける必要がない。つまり、ヘッドレスト20に、そのような突出機構を設ける場合に比べて、ヘッドレスト20の構成を簡略化することができ、ヘッドレスト20における製造コストの増加を抑制することができる。
【0076】
<第3実施形態>
最後に、第3実施形態に係る車両用乗員保護装置10について説明する。なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と同等の部位には同じ符号を付して詳細な説明(共通する作用も含む)は適宜省略する。
【0077】
図8に示されるように、この第3実施形態では、サイド部24が、二重構造とされている点だけが、上記第1実施形態及び第2実施形態と異なっている。すなわち、このサイド部24は、先端部が開放された略筒状のサイド部本体24Bと、スライド機構70により、サイド部本体24Bの内部に収納される収納位置とサイド部本体24Bの先端部から突出する突出位置とを取り得る延長部24Cと、を有している。
【0078】
スライド機構70は、サイド部本体24Bの内部に設けられており、例えばラック72と、ラック72に噛み合うピニオン74と、を含んで構成されている。具体的には、サイド部24が前方側へ回動した状態で、サイド部本体24Bの内部における外側端部には、ラック72が設けられており、延長部24Cの外側後端部には、ピニオン74が取り付けられている。また、延長部24Cの内部には、ピニオン74を正逆両方向に回転駆動させるモーター(図示省略)が設けられている。
【0079】
したがって、モーターが回転駆動することにより、ピニオン74が回転すると、延長部24Cがラック72に沿って前方側へ移動し、サイド部本体24Bの先端部から前方側へ突出する。そして、モーターが逆方向に回転駆動することにより、ピニオン74が逆方向に回転すると、延長部24Cがラック72に沿って後方側へ移動し、サイド部本体24Bの内部に収納される。
【0080】
このように、延長部24Cがサイド部本体24Bに対して出入可能に構成されていると、
図8(A)に示されるように、その延長部24Cが突出したサイド部24により、乗員Pの視界がより前方側へ向けられる。したがって、この第3実施形態では、特に車両12の速度が所定値以上となったときに、モーターが駆動して延長部24Cが突出するように構成されている。
【0081】
これによれば、車両12の速度が所定値以上となったときに、結果的に乗員Pの頭部Phの横ずれを矯正することができ、乗員Pの頭部Phを本体部22のシート幅方向中央部へ配置することができる。そして、このように乗員Pの頭部Phが本体部22のシート幅方向中央部に配置されていると、車両12が前面衝突したときの乗員保護性能をより一層向上させることができる。
【0082】
なお、エアバッグ本体32が展開するときには、
図8(B)に示されるように、延長部24Cは、サイド部本体24Bに収納される。すなわち、エアバッグ本体32の展開時には、上記第1実施形態及び第2実施形態と同様に、サイド部24(サイド部本体24B)が、エアバッグ本体32と乗員Pの頭部Phとの間に介在する。
【0083】
したがって、エアバッグ本体32は、乗員Pの頭部Phに引っ掛かるおそれがなく、ケース部26からサイドウインド14とサイド部24Rとの間を通って(サイドウインド14に沿って)容易かつスムーズに前方側へ展開することができる。なお、この第3実施形態において、エアバッグ本体32の展開を阻害しないようになっているのであれば、エアバッグ本体32の展開時に延長部24Cが突出した状態となっていてもよい。
【0084】
以上、本実施形態に係る車両用乗員保護装置10について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用乗員保護装置10は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、本実施形態に係る車両用乗員保護装置10は、車両12の後席の中央における車両用シート(図示省略)のヘッドレストに設けられていてもよい。
【0085】
また、インフレータ28を支持する反力板は、シートバックフレームではなく、ヘッドレストサポート(図示省略)にブラケット(図示省略)を介して固定されていてもよい。更に、サイド部24は、本体部22のシート幅方向両側部に回動可能に支持される構成に限定されるものではなく、本体部22の内部におけるシート幅方向両側部からスライドして突出する構成とされていてもよい。但し、サイド部24は、スライドさせる構成よりも、回動させる構成の方が安価で簡単に製造することができるので好ましい。
【0086】
また、サイド部24は、本体部22のシート幅方向両側部に設けられる構成に限定されるものではない。サイド部24は、少なくともエアバッグ本体32が展開する片方の側部のみに設けられる構成になっていればよい。但し、サイド部24は、本体部22のシート幅方向両側部に設けられる方が、乗員Pの頭部Phに対する保護性能を向上させる観点から好ましい。
【0087】
また、第1実施形態におけるロック機構40及びロック解除機構50は、図示の構成に限定されるものではない。同様に、第2実施形態における連動機構60も、ワイヤー62及び第1プーリー64、第2プーリー66、第3プーリー68を含む構成に限定されるものではない。更に、第3実施形態におけるスライド機構70も、ラック72とピニオン74を含む構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0088】
10 車両用乗員保護装置
12 車両
20 ヘッドレスト
22 本体部
24 サイド部
24B サイド部本体
24C 延長部
28 インフレータ
32 エアバッグ本体
34 前後チャンバ
36 先端チャンバ
54 プリクラッシュシートベルト装置
P 乗員
Ph 頭部