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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20240806BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20240806BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20240806BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L58/27
B60L58/26
H02J7/00 S
H02J7/00 P
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021115574
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012112
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三澤 崇弘
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-75297(JP,A)
【文献】特開2021-34271(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0351374(US,A1)
【文献】特開2017-99234(JP,A)
【文献】国際公開第2019/111872(WO,A1)
【文献】特開2019-140827(JP,A)
【文献】特開2004-88985(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00-3/12,50/00-58/40
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と、
前記蓄電装置の温度を調整するように構成された温度調整装置と、
車両外部の外部電源から電力を受けるインレットと、
前記インレットと前記蓄電装置との間の充電経路に設けられる第1のリレー部と、
第1の分岐経路に設けられる第2のリレー部と、
第2の分岐経路に設けられる第3のリレー部とを備え、
前記第1の分岐経路は、前記充電経路のうち前記インレットと前記第1のリレー部との間の第1の分岐から分岐され、前記第1の分岐と前記温度調整装置とを電気的に接続するように構成され、
前記第2の分岐経路は、前記充電経路のうち前記第1のリレー部と前記蓄電装置との間の第2の分岐から分岐され、前記第2の分岐と前記温度調整装置とを電気的に接続するように構成され、さらに、
前記温度調整装置、前記第1のリレー部、前記第2のリレー部および前記第3のリレー部を制御する制御装置を備え、
前記制御装置は、
前記外部電源が前記インレットに接続されている場合に、前記第1のリレー部を閉状態に制御することによって前記外部電源により前記蓄電装置を充電する外部充電を実行し、
前記外部充電の実行中に前記温度調整装置を駆動する場合に、前記充電経路のうち前記第1の分岐と前記第2の分岐との間の電路における部品の温度が第1のしきい温度よりも高いとき、前記第3のリレー部を開状態に制御するとともに前記第2のリレー部を閉状態に制御する、車両。
【請求項2】
前記制御装置は、前記外部充電の実行中に前記温度調整装置を駆動する場合に、
前記第3のリレー部を開状態に制御するとともに前記第2のリレー部を閉状態に制御した後に、前記電路における部品の温度が前記第1のしきい温度よりも低く、かつ、前記第1の分岐経路における部品の温度が第2のしきい温度よりも高いとき、前記第2のリレー部を開状態に制御するとともに前記第3のリレー部を閉状態に制御する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置は、前記外部充電の実行中に前記温度調整装置を駆動する場合に、前記インレットの温度が第3のしきい温度よりも高いとき、前記外部電源から前記インレットへの給電電力を低減するための処理を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記制御装置は、前記外部電源が前記インレットに接続されてから前記外部充電が開始される前に前記温度調整装置を駆動する場合に、前記インレットの温度が第3のしきい温度よりも高いとき、前記第1のリレー部および前記第2のリレー部を開状態に制御するとともに前記第3のリレー部を閉状態に制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両。
【請求項5】
前記充電経路において前記第2の分岐と前記蓄電装置との間に設けられる第4のリレー部をさらに備え、
前記制御装置は、
前記車両の走行用システムの起動命令を受けると、前記第4のリレー部を閉状態に制御し、
前記第4のリレー部を閉状態に制御している間に前記温度調整装置を駆動する場合に、前記第1のリレー部および前記第2のリレー部を開状態に制御するとともに前記第3のリレー部を閉状態に制御する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記温度調整装置は、前記蓄電装置を加熱する加熱装置を含み、
前記制御装置は、前記蓄電装置の温度が低いほど、前記加熱装置から発生する熱量が大きくなるように前記加熱装置を制御する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記温度調整装置は、前記蓄電装置を冷却する冷却装置を含み、
前記制御装置は、前記蓄電装置の温度が高いほど、前記冷却装置の冷却能力が高くなるように前記冷却装置を制御する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関し、特に、蓄電装置を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-75297号公報(特許文献1)は、蓄電装置と、インレットと、温度調整装置とを備える車両を開示する。この車両は、車両外部に設けられる外部電源により蓄電装置を充電する外部充電を実行可能に構成される。インレットは、外部電源から電力を受ける。温度調整装置は、蓄電装置の温度を調整する。温度調整装置は、外部電源から、インレットと蓄電装置との間の充電経路に供給される電力を用いて作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-75297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電装置の温度を調整する温度調整装置が、外部電源から充電経路に供給される電力を用いて作動する場合、充電経路において温度調整装置の作動電力が蓄電装置への充電電力に重畳されると、充電経路を構成する電路における部品が過熱する場合がある。特許文献1においては、このような問題が検討されていない。
【0005】
本開示は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、外部充電を実行可能な車両において、外部充電中に、蓄電装置の温度を調整しつつ、充電経路を構成する電路における部品を保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車両は、蓄電装置と、温度調整装置と、インレットと、第1のリレー部と、第2のリレー部と、第3のリレー部と、制御装置とを備える。温度調整装置は、蓄電装置の温度を調整するように構成される。インレットは、車両外部の外部電源から電力を受ける。第1のリレー部は、インレットと蓄電装置との間の充電経路に設けられる。第2のリレー部は、第1の分岐経路に設けられる。第1の分岐経路は、充電経路のうちインレットと第1のリレー部との間の第1の分岐から分岐され、第1の分岐と温度調整装置とを電気的に接続するように構成される。第3のリレー部は、第2の分岐経路に設けられる。第2の分岐経路は、充電経路のうち第1のリレー部と蓄電装置との間の第2の分岐から分岐され、第2の分岐と温度調整装置とを電気的に接続するように構成される。制御装置は、温度調整装置、第1のリレー部、第2のリレー部および第3のリレー部を制御する。制御装置は、外部電源がインレットに接続されている場合に、第1のリレー部を閉状態に制御することによって外部電源により蓄電装置を充電する外部充電を実行する。そして、制御装置は、外部充電の実行中に温度調整装置を駆動する場合に、充電経路のうち第1の分岐と第2の分岐との間の電路における部品の温度が第1のしきい温度よりも高いとき、第3のリレー部を開状態に制御するとともに第2のリレー部を閉状態に制御する。
【0007】
上記の構成とすることにより、上記電路における部品の温度が第1のしきい温度よりも高い場合、外部充電の実行中に外部電源からの給電電力の一部が第1の分岐経路を経由して温度調整装置へ作動電力として供給される。これにより、上記電路に供給される電力は、第1の分岐経路を経由して温度調整装置へ供給される電力の分だけ減少する。その結果、蓄電装置の温度を調整しつつ、上記電路における部品が過熱することを抑制することができる。
【0008】
制御装置は、外部充電の実行中に温度調整装置を駆動する場合に、第3のリレー部を開状態に制御するとともに第2のリレー部を閉状態に制御した後に、電路における部品の温度が第1のしきい温度よりも低く、かつ、第1の分岐経路における部品の温度が第2のしきい温度よりも高いとき、第2のリレー部を開状態に制御するとともに第3のリレー部を閉状態に制御してもよい。
【0009】
上記の構成とすることにより、外部充電の実行中に、第1の分岐経路に電力が供給されなくなり、第1の分岐経路へ供給されていた電力が上記電路に再び供給される。そして、この電力の大きさと同等の大きさの電力が、上記電路および第3のリレー部を経由して温度調整装置へ作動電力として供給される。その結果、蓄電装置の温度を調整しつつ、第1の分岐経路における部品が過熱することを抑制することができる。
【0010】
制御装置は、外部充電の実行中に温度調整装置を駆動する場合に、インレットの温度が第3のしきい温度よりも高いとき、外部電源からインレットへの給電電力を低減するための処理を実行してもよい。
【0011】
上記の構成とすることにより、外部充電の実行中にインレットに供給される電力が低減される。その結果、蓄電装置の温度調整、および、上記電路における部品を保護に加えて、インレットを過熱から保護することができる。
【0012】
制御装置は、外部電源がインレットに接続されてから外部充電が開始される前に温度調整装置を駆動する場合に、インレットの温度が第3のしきい温度よりも高いとき、第1のリレー部および第2のリレー部を開状態に制御するとともに第3のリレー部を閉状態に制御してもよい。
【0013】
上記の構成とすることにより、外部電源からインレットへの給電が遮断された状況下で、蓄電装置から温度調整装置へ第2の分岐経路を通じて作動電力が供給される。その結果、外部充電開始前に、インレットを過熱から保護しつつ蓄電装置の温度を調整することができる。
【0014】
車両は、充電経路において第2の分岐と蓄電装置との間に設けられる第4のリレー部をさらに備えていてもよい。そして、制御装置は、車両の走行用システムの起動命令を受けると、第4のリレー部を閉状態に制御し、第4のリレー部を閉状態に制御している間に温度調整装置を駆動する場合に、第1のリレー部および第2のリレー部を開状態に制御するとともに第3のリレー部を閉状態に制御してもよい。
【0015】
上記の構成とすることにより、車両の走行用システム起動中、蓄電装置とインレットとが電気的に遮断された状況下で、第2の分岐経路を通じて蓄電装置から温度調整装置へ作動電力が供給される。その結果、車両の走行中のような、外部電源がインレットに接続されていない場合であっても、温度調整装置が蓄電装置の温度を調整することができる。
【0016】
温度調整装置は、蓄電装置を加熱する加熱装置を含んでいてもよい。制御装置は、蓄電装置の温度が低いほど、加熱装置から発生する熱量が大きくなるように加熱装置を制御してもよい。
【0017】
上記の構成とすることにより、蓄電装置を効果的に昇温することができる。その結果、上記電路における部品に加えて蓄電装置を適切に保護することができる。
【0018】
温度調整装置は、蓄電装置を冷却する冷却装置を含んでいてもよい。制御装置は、蓄電装置の温度が高いほど、冷却装置の冷却能力が高くなるように冷却装置を制御してもよい。
【0019】
上記の構成とすることにより、蓄電装置を効果的に冷却することができる。その結果、上記電路における部品に加えて蓄電装置を適切に保護することができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、外部充電を実行可能な車両において、外部充電中に、蓄電装置の温度を調整しつつ、充電経路を構成する電路における部品を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施の形態に従う車両を備える給電システムを概略的に示す図である。
図2】車両および電力スタンドの詳細な構成を示す図である。
図3】温調ユニットによるバッテリの温度調整機構を示す図である。
図4】外部充電に伴ってECUにより実行される処理の手順の一例を示す図である。
図5】外部充電に伴ってECUにより実行される処理の手順の一例を示す図である。
図6】車両の走行用システム起動中のバッテリの温度調整に伴う処理の手順の一例を示すフローチャートである。
図7】外部充電中にECUにより実行される処理の手順の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明を繰り返さない。
【0023】
図1は、本実施の形態に従う車両を備える給電システム10を概略的に示す図である。給電システム10は、車両100と、電力スタンド200とを備える。車両100は、車両100の外部に設けられる電力スタンド200によりバッテリ101(後述)を充電する外部充電を実行可能に構成される。
【0024】
本実施の形態では、車両100は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)である。車両100は、電力スタンド200によって外部充電可能な車両であればEVに限定されるものではない。車両100は、例えば、内燃機関(図示せず)がさらに搭載されるハイブリッド自動車(HV:Hybrid Vehicle)、または燃料電池車(FCV:Fuel Cell Vehicle)などであってもよい。車両100は、電動車両の充電規格の一つであるChaoJi規格に適合するように構成される。
【0025】
車両100は、バッテリ101と、インレット102とを備える。バッテリ101は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池などの二次電池である。電気二重層キャパシタなどの蓄電素子がバッテリ101に代えて蓄電装置として採用されてもよい。バッテリ101は、走行用の電力を蓄えるための高圧バッテリである(例えば200V程度)。
【0026】
インレット102は、電力スタンド200から供給される電力(給電電力)を受ける。インレット102は、電力スタンド200のコネクタ202と接続するように構成される。
【0027】
電力スタンド200は、車両100と同様に、ChaoJi規格に適合するように構成される。電力スタンド200は、電源201と、充電ケーブル203と、コネクタ202とを備える。電源201は、充電ケーブル203およびコネクタ202を通じて車両100へ電力を供給する。これにより、電力スタンド200からの給電電力がインレット102を通じてバッテリ101に供給される(車両100の外部充電が実行される)。
【0028】
図2は、車両100および電力スタンド200の詳細な構成を示す図である。図2を参照して、車両100は、バッテリ101およびインレット102に加えて、温調ユニット170と、リレー部110,115,120,125とを備える。車両100は、PCU(Power Control Unit)103と、モータ104と、温度センサ130,132,136と、電流センサ135,137とをさらに備える。車両100は、通信装置178と、ECU(Electrical Control Unit)180と、スタートスイッチ139とをさらに備える。
【0029】
インレット102からECU180へ接続検知線190が延びている。接続検知線190は、インレット102とコネクタ202との接続の有無をECU180が検知するために設けられる。
【0030】
温調ユニット170は、ヒータおよび冷却装置を含む(いずれも図示せず)。温調ユニット170は、バッテリ101を加熱または冷却することによってバッテリ101の温度を調整する。温調ユニット170は、電力スタンド200またはバッテリ101から電力を受けて作動する。
【0031】
図3は、温調ユニット170によるバッテリ101の温度調整機構179を示す図である。図3を参照して、温度調整機構179は、温調ユニット170に加えて、水路177を含む。水路177は、水路177内の水を介して温調ユニット170がバッテリ101を間接的に加熱または冷却するために設けられる。水路177内の水は、水路177に設けられる電動ウォータポンプ(図示せず)により図中の白矢印の方向に循環される。このように、バッテリ101が水路177内の水を介して間接的に加熱または冷却される結果、バッテリ101における温度ムラの発生が抑制され、バッテリ101全体の温度が均一に調整される。
【0032】
一般的に、バッテリ101の温度が低下するほど、バッテリ101において電流が流れにくくなるため、バッテリ101の充電速度が低下する。そのため、バッテリ101の温度が所定のしきい範囲内(後述)に調整された後に外部充電が開始されることが、外部充電に要する時間短縮の観点から好ましい。また、バッテリ101の温度の過度な上昇は、バッテリ101保護の観点から好ましくない。そこで、温調ユニット170のような、バッテリ101の温度を調整する温度調整装置が車両100に搭載される。
【0033】
再び図2を参照して、リレー部110は、リレー110A,110Bを含む。リレー部110は、インレット102とバッテリ101との間の充電経路140に設けられる。ここで、充電経路140は、例えばワイヤーハーネスとしての電力線対145,147,162を含んで構成される。リレー部110の一方端および他方端は、それぞれ、コネクタ(図示せず)を介して電力線対145および147に接続される。
【0034】
リレー部115は、リレー115A,115Bを含む。リレー部115は、リレー部110と同様に充電経路140に設けられる。リレー部115は、充電経路140において分岐B2(後述)とバッテリ101との間に設けられる。リレー部115の一方端および他方端は、それぞれ、コネクタ(図示せず)を介して電力線対147および162に接続される。
【0035】
分岐経路150は、充電経路140のうちインレット102とリレー部110との間の電力線対145の分岐B1から分岐される。分岐経路150は、分岐B1と温調ユニット170とを電気的に接続するように構成される。
【0036】
リレー部120は、リレー120A,120Bを含む。リレー部120は、分岐経路150に設けられる。リレー部120の一方端および他方端は、コネクタ(図示せず)を介して分岐経路150の電力線対150Aおよび150Bにそれぞれ接続される。電力線対150Aおよび150Bは、ワイヤーハーネスである。
【0037】
分岐経路152は、充電経路140のうちリレー部110とリレー部115との間の電力線対147の分岐B2から分岐される。分岐経路152は、分岐B2と温調ユニット170とを電気的に接続するように構成される。
【0038】
リレー部125は、リレー125A,125Bを含む。リレー部125は、分岐経路152に設けられる。リレー部125の一方端および他方端は、コネクタ(図示せず)を介して分岐経路152の電力線対152Aおよび152Bにそれぞれ接続される。分岐経路150および分岐経路152は、接続点P1,P2において接続される。電力線対152Aおよび152Bは、ワイヤーハーネスである。
【0039】
PCU103は、バッテリ101から供給される直流電力を交流電力に変換する。PCU103は、例えば、インバータおよびコンバータを含んで構成される。
【0040】
モータ104は、例えば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。モータ104は、バッテリ101からPCU103を通じて供給される電力を受けて回転することにより車両100の走行駆動力を発生する。これにより、車両100が走行する。
【0041】
温度センサ130は、充電経路140のうち分岐B1,B2の間の電路175における部品(電路175の構成部品)の温度を検出する。電路175における部品は、例えば、リレー110A,110B、電力線対145B,147A、または、リレー部110の一方端および他方端をそれぞれ電力線対145Bおよび147Aに接続するコネクタなどである。温度センサ130は、これらの部品のうちいずれの温度を検出してもよい。温度センサ130の検出値は、ECU180へ出力される。
【0042】
電流センサ135は、電路175における部品を流れる電流を検出する。電流センサ135の検出値は、ECU180へ出力される。
【0043】
温度センサ136は、分岐経路150における部品(分岐経路150の構成部品)の温度を検出する。分岐経路150における部品は、例えば、リレー120A,120B、電力線対150A,150B、または、リレー部120の一方端および他方端をそれぞれ電力線対150Aおよび150Bに接続するコネクタなどである。温度センサ136は、これらの部品のうちいずれの温度を検出してもよい。温度センサ130の検出値は、ECU180へ出力される。
【0044】
電流センサ137は、分岐経路150における部品を流れる電流を検出する。電流センサ137の検出値は、ECU180へ出力される。
【0045】
温度センサ132は、バッテリ101の温度を検出し、その検出値をECU180へ出力する。
【0046】
通信装置178は、電力スタンド200の通信装置210(後述)と無線通信する。具体的には、通信装置178は、ECU180から伝達された情報を通信装置210に送信したり、通信装置210から受信した情報をECU180に伝達したりする。
【0047】
ECU180は、CPU(Central Processing Unit)181とメモリ182とを含む。CPU181は、メモリ182に記憶された情報と、各センサからの情報とに従って各種演算を実行する。メモリ182は、ROM(Read Only Memory)183とRAM(Random Access Memory)184とを含む。ROM183は、CPU181により実行されるプログラムを格納する。RAM184は、CPU181により参照されるデータなどを一時的に格納する。ECU180の制御は、ソフトウェア処理により実現されるが、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0048】
ECU180は、温調ユニット170と、リレー部110,115,120,125と、PCU103と、通信装置178とを制御する。ECU180は、例えば、温度センサ130,136の検出値に従ってリレー部110,115,120,125を制御したり、温度センサ132の検出値に従って温調ユニット170を制御したり、通信装置178を通じて電力スタンド200の制御装置206(後述)と通信したりする。
【0049】
ECU180は、電力スタンド200のコネクタ202がインレット102に電気的に接続されている場合に、リレー部110,115を閉状態に制御することによって、電力スタンド200によりバッテリ101を充電する外部充電を実行する。
【0050】
また、ECU180は、バッテリ101の温度を管理するために熱管理モード(後述)の要求を電力スタンド200へ出力するか否かを、温度センサ132の検出値に従って判定する。
【0051】
スタートスイッチ139は、ユーザによる車両100の走行用システムの起動操作および停止操作を受ける。具体的には、スタートスイッチ139に対するオン操作が行なわれると、走行用システムの起動命令がスタートスイッチ139からECU180に出力される。ECU130は、当該起動命令を受けると、車両100の走行用システムを停止状態から起動状態へ切り替え、リレー部115を閉状態に制御する。これにより、車両100がReady-ON状態(走行可能状態)に切り替わる。
【0052】
他方、スタートスイッチ139に対するオフ操作が行なわれると、走行用システムの停止命令がスタートスイッチ139からECU180へ出力される。ECU180は、当該停止命令を受けると、車両100の走行用システムを起動状態から停止状態へと切り替え、リレー部115を開状態に制御する。このように、スタートスイッチ139に対する操作に応じて車両100の状態がReady-ON状態とReady-OFF状態との間で切り替わる。
【0053】
電力スタンド200は、電源201、コネクタ202および充電ケーブル203に加えて、充電装置204と、通信装置210と、制御装置206とを備える。
【0054】
コネクタ202から制御装置206へ接続検知線220が延びている。接続検知線220には、プルアップ電源(図示せず)が接続されている。以下に説明されるように、接続検知線220は、インレット102とコネクタ202との接続の有無をECU180が検知するために設けられる。
【0055】
コネクタ202がインレット102に接続(挿入)されると、接続検知線190,220が電気的に接続される。その結果、接続検知線220の上記プルアップ電源と接続検知線190とが電気的に接続されるため、接続検知線190の電圧が変化する。そのため、ECU180は、接続検知線190の電圧値の変化(例えば、当該電圧値がローレベルまたはハイレベルの一方から他方に変化したか否か)に従って、コネクタ202がインレット102に接続されているか否かを検知できる。コネクタ202がインレット102に接続されると、ECU180は、車両100の走行用システムを自動的に停止する。
【0056】
充電装置204は、電源201から供給される交流電力または直流電力を、車両100のバッテリ101用の電圧レベルの直流電力に変換する。変換後の直流電力(給電電力)は、充電ケーブル203およびコネクタ202を介して車両100のインレット102に供給される。充電装置204は、MOSFET、IGBT,バイポーラトランジスタ等のスイッチング素子を含む回路であり、スイッチング素子のオンオフを切り替えることにより給電電力の大きさを調整することができる。
【0057】
通信装置210は、車両100の通信装置178との間で情報および信号を送受信する。通信装置210は、車両100のECU180により通信装置178を通じて送信される要求信号(例えば、充電開始要求、給電電力の低減要求、充電停止要求または熱管理モード要求)を受信する。
【0058】
制御装置206は、ECU180からの要求信号などに基づいて充電装置204および通信装置210を制御する。制御装置206は、例えば、通信装置178および通信装置210を通じてECU180から給電電力の低減要求を受けると、充電装置204の出力電力(給電電力)が低減されるように充電装置204を制御する。また、制御装置206は、ECU180から充電開始(停止)要求を受けると、充電装置204を起動(停止)することによってインレット102への給電を開始(停止)する。
【0059】
また、制御装置206は、ECU180から熱管理モードの要求を受ける。熱管理モードは、コネクタ202とインレット102とが接続されている場合の電力スタンド200の動作モードの一つである。より詳細には、熱管理モードは、給電システム10の充電ケーブル203、コネクタ202、インレット102およびバッテリ101などの温度管理のための、電力スタンド200の動作モードである。
【0060】
熱管理モードの一例として、バッテリ101用の熱管理モードについて説明する。外部充電開始前にバッテリ101の温度がしきい範囲(後述)を外れている場合、ECU180は、当該温度をしきい範囲内にするために、バッテリ101用の熱管理モードの要求を電力スタンド200の制御装置206へ出力する。以下、バッテリ101用の熱管理モードを「バッテリ温度調整モード」とも称する。
【0061】
バッテリ温度調整モード中、バッテリ101が電力スタンド200から電気的に遮断された(バッテリ101が充電されない)状況下で、電力スタンド200からインレット102を通じて温調ユニット170へ電力が供給される。電力スタンド200の制御装置206は、電力スタンド200からインレット102への給電電力が温調ユニット170の作動電力に相当する電力になるように充電装置204を制御する。ここで、典型的に、温調ユニット170の作動電力は、外部充電中のバッテリ101の充電電力よりも小さい。そのため、バッテリ温度調整モード中の給電電力(温調ユニット170の作動電力)は、外部充電中の給電電力よりも小さい。電力スタンド200のバッテリ温度調整モードに伴うECU180による制御の詳細については後述する。
【0062】
温調ユニット170が、電力スタンド200からインレット102を通じて充電経路140に供給される電力を用いて作動する場合、電路175において温調ユニット170の作動電力がバッテリ101への充電電力に重畳されると、電路175における部品が過熱することがある。電路175における部品が加熱されると、当該部品を保護することができない。
【0063】
そこで、本実施の形態に従う車両100は、上記問題に対処するための構成を備える。具体的には、ECU180は、電力スタンド200がインレット102に電気的に接続されている場合に、リレー部110,115を閉状態に制御することによって電力スタンド200によりバッテリ101を充電する外部充電を実行する。そして、ECU180は、外部充電の実行中に温調ユニット170を駆動する場合に、電路175における部品の温度がしきい温度(後述)よりも高い場合に、リレー部125を開状態に制御するとともにリレー部120を閉状態に制御する。
【0064】
上記の構成とすることにより、電路175における部品の温度が当該しきい温度よりも高い場合、外部充電の実行中に電力スタンド200からの給電電力の一部が分岐経路150を経由して温調ユニット170へ作動電力として供給される。これにより、電路175に供給される電力は、分岐経路150を経由して温調ユニット170へ供給される電力の分だけ減少する(電路175において温調ユニット170の作動電力がバッテリ101の充電電力に重畳されなくなる)。その結果、電路175における部品が過熱することを抑制することができる。したがって、外部充電中に、バッテリ101の温度を調整しつつ(温調ユニット170を駆動しつつ)電路175における部品を保護することができる。以下、ECU180による具体的な制御について説明する。
【0065】
図4および図5は、外部充電に伴ってECU180により実行される処理の手順の一例を示す図である。具体的には、図4および図5の処理は、それぞれ、外部充電開始前および外部充電中にECU180により実行される処理に相当する。図4および図5のフローチャートの一連の処理は、電力スタンド200のコネクタ202が車両100のインレット102に接続されると開始される。
【0066】
図4を参照して、ECU180は、リレー部110,115,120,125を開状態に制御し(ステップS102)、温度センサ132の検出値に従ってバッテリ101の温度TBを取得する(ステップS105)。
【0067】
次いで、ステップS115において、ECU180は、温度TBが所定のしきい範囲内であるか否かを判定する。当該しきい範囲は、バッテリ101の充電速度が過度に低下することを防止したり、バッテリ101を過熱から保護したりするために適宜予め定められる。温度TBがしきい範囲内である場合(ステップS115においてYES)、ECU180は、電力スタンド200の制御装置206へ熱管理モード(バッテリ温度調整モード)オフの要求を出力し(ステップS140)、ステップS142へ処理を進める。
【0068】
他方、温度TBがしきい範囲内でない場合(ステップS115においてNO)、ECU180は、電力スタンド200の制御装置206へ熱管理モード(バッテリ温度調整モード)オンの要求を出力する(ステップS120)。制御装置206は、当該要求に応答して、給電電力がバッテリ温度調整モード用の電力になるように充電装置204を制御する。バッテリ温度調整モード用の電力は、温調ユニット170の作動電力に相当する電力であり、外部充電中の充電電力よりも小さい。その後、ECU180は、ステップS125へ処理を進める。
【0069】
ステップS125において、ECU180は、インレット102の温度TIがしきい温度TH1以上であるか否かを判定する。しきい温度TH1は、インレット102を過熱から保護するために適宜予め定められる。温度TIがしきい温度TH1未満である場合(ステップS125においてNO)、ECU180は、リレー部115,120を開状態に制御するとともにリレー部110,125を閉状態に制御する(ステップS135)。これにより、電力スタンド200からインレット102およびリレー部110,125を経由して温調ユニット170へ作動電力が供給される。その結果、外部充電開始前に、バッテリ101の電力を消費することなくバッテリ101の温度を調整することができる。
【0070】
他方、温度TIがしきい温度TH1以上である場合(ステップS125においてYES)、ECU180は、リレー部110,120を開状態に制御するとともにリレー部115,125を閉状態に制御する(ステップS130)。これにより、電力スタンド200からインレット102への給電が遮断された状況下で、バッテリ101から分岐経路152を通じて温調ユニット170へ作動電力が供給されるようになる。したがって、外部充電開始前に、インレット102を過熱から保護しつつバッテリ101の温度を調整することができる。その結果、外部充電中のバッテリ101の充電速度の低下を抑制することができる。
【0071】
ステップS130またはS135の後、ECU180は、温調ユニット170を駆動し(ステップS137)、ステップS115へ処理を戻す。これにより、電力スタンド200のバッテリ温度調整モード中、温度TBがしきい範囲内に入るまで(ステップS115においてYESに処理が分岐されるまで)、リレー部110,115,125の制御に伴って温調ユニット170が駆動される(ステップS115~S137の処理が繰り返される)。その後、温度TBがしきい範囲内に入ると(ステップS115においてYES)、バッテリ温度調整モードオフの要求(ステップS140)に伴って、電力スタンド200のバッテリ温度調整モードが解除される。
【0072】
次いで、ECU180は、リレー部120を開状態に制御するとともにリレー部110,115,125を閉状態に制御し(ステップS142)、制御装置206へ充電開始要求を出力する(ステップS145)。
【0073】
これにより、電力スタンド200からインレット102への給電電力が充電経路140を通じてバッテリ101へ供給されるため、外部充電が開始される。また、リレー部125が閉状態に制御されることによって、給電電力の一部がインレット102、リレー部110,125を通じて温調ユニット170へ作動電力として供給されるようになるため、温調ユニット170は、当該作動電力を受けて作動可能な状態になる。即ち、ECU180は、リレー部125を閉状態に制御することによって、外部充電中も、温調ユニット170を駆動してバッテリ101の温度TBを調整することができる。
【0074】
なお、外部充電中、温調ユニット170が作動する(駆動される)か否かに関わらず、給電電力の大きさは、給電電力の低減要求がECU180から出力されない限り一定である。ステップS145の後、ECU180は、図5のステップS205へ処理を進める。
【0075】
図5を参照して、ECU180は、充電経路140における電路175における部品の温度TCを、温度センサ130の検出値に従って取得する(ステップS205)。
【0076】
ステップS210において、ECU180は、温度TCがしきい温度TH2以上であるか否かを判定する(ステップS210)。しきい温度TH2は、電路175における部品を過熱から保護するために適宜予め定められる。温度TCがしきい温度TH2未満である場合(ステップS210においてNO)、ECU180は、ステップS225へ処理を進める。
【0077】
他方、温度TCがしきい温度TH2以上である場合(ステップS210においてYES)、ECU180は、リレー部125を開状態に制御するとともにリレー部120を閉状態に制御する(ステップS215)。これにより、外部充電の実行中に電力スタンド200からの給電電力の一部が分岐経路150を経由して温調ユニット170へ作動電力として供給される。そのため、電路175に供給される電力は、分岐経路150を経由して温調ユニット170へ供給される電力の分だけ減少する。その結果、外部充電中に、バッテリ101の温度を調整しつつ(温調ユニット170を駆動しつつ)、電路175における部品の過熱を抑制することができる。
【0078】
ステップS225において、ECU180は、インレット102の温度TIがしきい温度TH1以上であるか否かを判定する。温度TIがしきい温度TH1以上である場合(ステップS225においてYES)、ECU180は、ステップS235へ処理を進める。他方、温度TIがしきい温度TH1未満である場合(ステップS225においてNO)、ECU180は、通常の大きさの給電電力の要求を出力し(ステップS232)、ステップS240へ処理を進める。「通常の大きさの給電電力」とは、後述の「給電電力を低減するための処理」が実行されない場合の大きさの給電電力である。
【0079】
ステップS235において、ECU180は、電力スタンド200からインレット102への給電電力を低減するための処理を実行する。「給電電力を低減するための処理」は、ステップS232の「通常の大きさの給電電力」よりも低減された給電電力の要求(給電電力を0に低減するための要求を含む)を、電力スタンド200の制御装置206へ出力する処理である。電力スタンド200の制御装置206は、当該要求に応答して、給電電力が低減されるように充電装置204を制御する。なお、「給電電力を低減するための処理」は、リレー部110,115を開状態にするための処理(制御)であってもよい。これにより、電力スタンド200からインレット102へ電力供給が停止するため、給電電力が0に低減される。
【0080】
このように、「給電電力を低減するための処理」が実行されることによって、インレット102への給電電力が低減されるため、インレット102を過熱から保護することができる。ECU180は、ステップS235の後、ステップS240へ処理を進める。
【0081】
ステップS240において、ECU180は、バッテリ101のSOC(State of Charge)が上限に到達したか否かを判定する。ECU180は、バッテリ101の電流、電圧、温度等に基づいて、公知の手法を用いてバッテリ101のSOCを算出する。当該上限は、例えば、バッテリ101の満充電判定のために適宜予め設定される。ECU180は、バッテリのSOCに代えて、バッテリのOCV(Open Circuit Voltage)が上限に到達したか否かを判定してもよい。
【0082】
バッテリ101のSOCが上限に到達していない場合(ステップS240においてNO)、ECU180は、ステップS205へ処理を戻す。これにより、SOCが上限に到達するまで(ステップS240においてYESに処理が分岐するまで)、ステップS205~S240の処理が繰り返される。なお、ステップS235において「給電電力を低減するための処理」が実行された後に、ステップS240においてNOに処理が分岐してステップS232の処理が実行される場合、給電電力は、低減後の給電電力(ステップS235)から「通常の大きさの給電電力」(ステップS232)に戻る。
【0083】
他方、バッテリ101のSOCが上限に到達した場合(ステップS240においてYES)、ECU180は、リレー部110,115,120,125を開状態に制御し(ステップS242)、電力スタンド200の制御装置206に充電停止要求を出力する(ステップS245)。これにより、外部充電が終了され、一連の処理が終了する。
【0084】
図5のフローチャートの処理において、ステップS225,S232,235の処理は、ステップS210,S215の処理の後に実行されるものとしたが、ステップS210,S215の処理の前に実行されてもよい。
【0085】
本実施の形態では、走行用システムの起動中(例えば車両100の走行中)にも、温調ユニット170によるバッテリ101の熱管理(温度調整)が行われる。
【0086】
具体的には、車両100の走行用システム起動中(リレー部115が閉状態に制御されている間)には、リレー部110は開状態に制御される。そして、バッテリ101の温度TBが前述のしきい範囲内でない場合、ECU180は、リレー部125を閉状態に制御するとともにリレー部120を開状態に制御する。これにより、バッテリ101から分岐経路152を通じて温調ユニット170へ作動電力が供給されるようになるため、温調ユニット170が作動可能な状態になる。また、バッテリ電圧がインレット102へ出力されることを防止できる。そして、ECU180は、バッテリ101の温度TBがしきい範囲内に入るように温調ユニット170を駆動する。その結果、車両100の走行中のような、電力スタンド200がインレット102に接続されていない場合であっても、ECU180は、温調ユニット170を駆動することによってバッテリ101の温度を調整することができる。
【0087】
図6は、車両100の走行用システム起動中のバッテリ101の温度調整に伴う処理の手順の一例を示すフローチャートである。このフローチャートは、車両100の走行用システム起動中に所定時間ごとに実行される。
【0088】
図6を参照して、ECU180は、温度センサ132の検出値に従ってバッテリ101の温度TBを取得する(ステップS255)。
【0089】
次いで、ECU180は、バッテリ101の温度TBが前述のしきい範囲内であるか否かを判定する(ステップS260)。温度TBがしきい範囲内である場合(ステップS260においてYES)、ECU180は、リレー部110,120,125を開状態に制御する(ステップS275)。これにより、バッテリ101からインレット102および温調ユニット170に電力が供給されることを防止できる。ステップS260の後、リターンへ処理が移行する。
【0090】
他方、温度TBがしきい範囲内でない場合(ステップS260においてNO)、ECU180は、リレー部110,120を開状態に制御するとともにリレー部125を閉状態に制御する(ステップS265)。これにより、車両100の走行用システム起動中に、バッテリ101とインレット102とが電気的に遮断された状況下で、バッテリ101から温調ユニット170へ分岐経路152を通じて作動電力が供給される。そのため、車両100の走行用システム起動中、温調ユニット170が作動可能な状態になる。そして、温調ユニット170は、当該作動電力を受けて作動する(駆動される)(ステップS270)。その後、リターンに処理が移行する。
【0091】
このように、車両100の走行用システム起動中にも、ECU180は、リレー部110,115,120,125を制御することによって温調ユニット170を駆動できるため、バッテリ101の温度を適切に調整することができる。
【0092】
以上のように、本実施の形態に従うECU180は、外部充電の実行中に温調ユニット170を駆動する場合に、電路175における部品の温度がしきい温度TH2よりも高いとき(図5のステップS210においてYES)、リレー部125を開状態に制御するとともにリレー部120を閉状態に制御する(ステップS215)。
【0093】
よって、電路175における部品の温度がしきい温度TH2よりも高い場合、外部充電の実行中に電力スタンド200からの給電電力の一部が分岐経路150を経由して温調ユニット170へ作動電力として供給される。これにより、電路175に供給される電力は、分岐経路150を経由して温調ユニット170へ供給される電力の分だけ減少する(電路175において温調ユニット170の作動電力がバッテリ101の充電電力に重畳されなくなる)。その結果、バッテリ101の温度を調整しつつ、電路175における部品が過熱することを抑制することができる。
【0094】
このような利点は、バッテリ101が比較的小容量で外部充電中の給電電力が小さい車両ほど特に顕著である。以下、外部充電中の給電電力がPW1である第1の車両(例えば小型のEV)と、外部充電中の給電電力がPW2である第2の車両(例えば大型のEV)とが比較されるケースを想定する(PW1<PW2)。このケースでは、給電電力のうち分岐経路150に供給される電力が、いずれの車両においてもPW3であるものとする(PW3<PW1,PW2)。
【0095】
図5のステップS215の処理が実行されると、第1の車両の電路175に供給される電力は、給電電力の(PW3/PW1)×100(=A1)[%]の電力の分だけ減少する。他方、第2の車両の電路175に供給される電力は、給電電力の(PW3/PW2)×100(=A2)%の電力の分だけ減少する。ここで、PW1<PW2であるため、A1>A2[%]である。言い換えれば、第1の車両の電路175における部品の電力減少割合は、第2の車両の当該割合よりも大きい。
【0096】
このように、外部充電中の給電電力が小さい車両ほど、本実施の形態の利点をより顕著に享受できる。即ち、電路175における部品をより効果的に保護することができる。
【0097】
ところで、本実施の形態において、ステップS215の前に分岐経路152を通じて温調ユニット170に供給される作動電力と、ステップS215の後に分岐経路150を通じて温調ユニット170に供給される作動電力とは、実質的に同じである。そのため、外部充電中に電力線対162を通じてバッテリ101に供給される電力は、ステップS215の前後のいずれにおいても、分岐経路150または152を通じて温調ユニット170に供給される作動電力が給電電力から差し引かれた電力に相当する。即ち、外部充電中にバッテリ101に供給される電力は、ステップS215の前後にわたって変化しない。したがって、本実施の形態によれば、外部充電中のバッテリ101の充電速度を低下させることなく、電路175における部品を保護することができる。
【0098】
[変形例1]
上述の実施の形態では、ECU180は、外部充電の実行中に温調ユニット170を駆動する場合に、電路175における部品の温度TCがしきい温度TH2よりも高いとき、リレー部125を開状態に制御するとともにリレー部120を閉状態に制御する(図5のステップS215)。そして、ECU180は、インレット102の温度TIがしきい温度TH1よりも高いか否かに従って処理を分岐させるものとした(ステップS225)。
【0099】
本変形例では、ステップS215に相当する処理の後に、ECU180は、電路175における部品の温度TCがしきい温度TH2よりも低く、かつ、分岐経路150における部品の温度がしきい温度(後述)よりも高い場合に、リレー部120を開状態に制御するとともにリレー部125を閉状態に制御する。これにより、バッテリ101の温度を調整しつつ、分岐経路150における部品が過熱することを抑制することができる。以下、この点について詳しく説明する。
【0100】
図7は、外部充電中にECU180により実行される処理の手順の一例を示す図である。このフローチャートの処理は、図5のフローチャートの処理に代えて実行される。
【0101】
図7のフローチャートにおいて、ステップS305,S310,S335,S340,S342およびS345の処理は、図5のステップS205,S210,S235,S240,S242およびS245の処理とそれぞれ同様である。図7のフローチャートの処理は、ステップS307,S326,S330,S331,S337,S338の処理が追加されている点において、図5のフローチャートの処理と異なる。
【0102】
図7を参照して、ステップS305の処理が実行されると、ECU180は、分岐経路150における部品の温度TBR1を、温度センサ136の検出値に従って取得する(ステップS307)。
【0103】
次いで、ステップS310において、ECU180は、電路175における部品の温度TCがしきい温度TH2以上であるか否かに従って処理を分岐させる。温度TCがしきい温度TH2以上である場合(ステップS310においてYES)、ECU180は、ステップS326へ処理を進める。他方、温度TCがしきい温度TH2未満である場合(ステップS310においてNO)、ECU180は、ステップS330へ処理を進める。
【0104】
ステップS326において、ECU180は、温度TBR1がしきい温度TH3以上であるか否かを判定する。しきい温度TH3は、分岐経路150における部品を過熱から保護するために適宜予め定められる。温度TBR1がしきい温度TH3未満である場合(ステップS326においてNO)、ECU180は、リレー部125を開状態に制御するとともにリレー部120を閉状態に制御する(ステップS331)。これにより、図5のステップS215の処理が実行された場合と同様に、外部充電の実行中に電力スタンド200からの給電電力の一部が分岐経路150を経由して温調ユニット170へ作動電力として供給される。ステップS331の後、ECU180は、ステップS340へ処理を進める。
【0105】
他方、温度TBR1がしきい温度TH3以上である場合(ステップS326においてYES)、ECU180は、給電電力を低減するための処理を実行する(ステップS335)。これにより、電路175および分岐経路152の両方における電力が低減されるため、電路175および分岐経路152における部品を過熱から保護することができる。ステップS335の後、ECU180は、ステップS340へ処理を進める。
【0106】
ステップS330において、ステップS326と同様に、温度TBR1がしきい温度TH3以上であるか否かに従って処理を分岐させる。温度TBR1がしきい温度TH3以上である場合(ステップS330においてYES)、ECU180は、リレー部120を開状態に制御するとともにリレー部125を閉状態に制御する(ステップS337)。これにより、給電電力の一部が、分岐経路150に電力が供給されることなく、リレー部110,125を経由して温調ユニット170へ作動電力として供給される。
【0107】
ステップS337の処理は、ステップS331の処理の後に、ステップS340においてNOに分岐して時間経過に伴って温度TCがしきい温度TH2未満に低下(ステップS310の処理がNOに分岐)した場合に有益である。この場合、分岐経路150に電力が供給されなくなり、分岐経路150に供給されていた電力が電路175に再び供給される。そして、この電力の大きさと同等の大きさの電力が、電路175およびリレー部125を経由して温調ユニット170へ作動電力として供給される。その結果、バッテリ101の温度を調整しつつ、分岐経路150における部品が過熱することを抑制することができる。
【0108】
他方、温度TBR1がしきい温度TH3未満である場合(ステップS330においてNO)、ECU180は、リレー部125を開状態に制御するとともにリレー部120を閉状態に制御する(ステップS338)。これにより、インレット102から分岐経路150を経由して温調ユニット170へ作動電力が供給される。あるいは、ステップS338において、図7の例とは異なり、ECU180は、ステップS337と同様に、リレー部120を開状態に制御するとともにリレー部125を閉状態に制御してもよい。これにより、インレット102、リレー部110,125を経由して温調ユニット170へ作動電力が供給される。ステップS338において、ECU180がこれらのいずれの制御を実行するかに関わらず、温調ユニット170は、バッテリ101の温度を調整するように作動できる。
【0109】
なお、ステップS335において、給電電力を低減するための処理が実行された後、ステップS340を経由して、ステップS331,337,338のいずれかの処理が実行されるとき、図示されないが、図5のステップS232の場合と同様に、ECU180は、通常の大きさの給電電力の要求を出力する。電力スタンド200の制御装置206は、当該要求に応答して、給電電力の大きさが通常の大きさになるように充電装置204を制御する。これにより、給電電力は、低減後の給電電力(ステップS335)から前述の「通常の大きさの給電電力」に戻る。
【0110】
以上のように、本変形例において、ECU180は、電路175における部品の温度TCがしきい温度TH2以上であり(ステップS310においてYES)、かつ、分岐経路150における部品の温度TBR1がしきい温度TH3よりも高い場合(ステップS326においてNO)に、リレー部125を開状態に制御するとともにリレー部120を閉状態に制御する(ステップS331)。さらに、ECU180は、ステップS331(およびS340)の処理の後、電路175における部品の温度TCがしきい温度TH2よりも低く(ステップS310においてNO)、かつ、分岐経路150における部品の温度TBR1がしきい温度TH3よりも高いとき(ステップS330においてYES)、リレー部120を開状態に制御するとともにリレー部125を閉状態に制御する(ステップS337)。
【0111】
これにより、給電電力の一部が、分岐経路150に電力が供給されることなく、リレー部110,125を経由して温調ユニット170へ作動電力として供給される。その結果、バッテリ101の温度を調整しつつ、分岐経路150における部品が過熱することを抑制することができる。
【0112】
[変形例2]
上述の実施の形態およびその変形例1において、ECU180は、バッテリ101の温度に従って温調ユニット170を調整してもよい。例えば、ECU180は、バッテリ101の温度が低いほど、温調ユニット170のヒータから発生する熱量が大きくなるように当該ヒータを制御してもよい。これにより、バッテリ101を効果的に昇温することができる。
【0113】
あるいは、ECU180は、バッテリ101の温度が高いほど、温調ユニット170の冷却装置の冷却能力が高くなるように当該冷却装置を制御してもよい。これにより、バッテリ101を効果的に冷却することができる。
【0114】
上記のように温調ユニット170が制御されることによって、電路175における部品に加えてバッテリ101を適切に保護することができる。
【0115】
[変形例3]
上述の実施の形態およびその変形例1,2において、ECU180は、温度センサ130の検出値に従って電路175における部品の温度を取得するものとした。これに対して、ECU180は、温度センサ130の検出値に代えて、電流センサ135の検出値に従って電路175における部品の温度TCを取得(推定)してもよい。
【0116】
具体的には、当該部品の温度上昇量は、当該部品における発熱量に関係しており、当該発熱量は、電路175の電流値の二乗値に関係している。よって、ECU180は、当該部品の初期温度および比熱、ならびに電流センサ135の検出値などに従って当該部品の温度TCを取得(推定)することができる。より具体的には、ECU180は、電流センサ135の検出値の二乗値(当該部品の発熱量)と、当該部品の比熱とに従って、当該検出値のサンプリング周期ごとの当該部品の温度上昇量を算出する。そして、ECU180は、当該周期ごとの温度上昇量の積算値と、当該部品の初期温度とに従って、当該部品の温度TCを取得することができる。当該部品の初期温度および比熱は、実験などにより適宜予め定められる。
【0117】
同様に、ECU180は、温度センサ136の検出値に代えて、電流センサ137の検出値に従って分岐経路150の温度TBR1を取得してもよい。
【0118】
このように、ECU180が電流センサ135または137の検出値に従って電路175または分岐経路150における部品の温度を取得する場合、温度センサ130または136は、必ずしも設けられていなくてもよい。
【0119】
[その他の変形例]
上述の実施の形態およびその変形例1~3では、図3に示されるように、温度調整機構179において、水路177が設けられた。そして、温調ユニット170は、水路177内の水を介して間接的にバッテリ101の温度を調整するものとした。これに対して、温度調整機構179において、水路177は、必ずしも設けられていなくてもよい。即ち、温調ユニット170は、水路177内の水を介さずに直接的にバッテリ101の温度を調整してもよい。具体的には、温調ユニット170のヒータは、バッテリ101を直接的に加熱してもよいし、温調ユニット170の冷却装置は、空冷式の冷却装置であってもよい。
【0120】
また、リレー部120は、リレー120A,120Bのいずれか一方のみを含んで構成されていてもよい。同様に、リレー部125も、リレー125A,125Bのいずれか一方のみを含んで構成されていてもよい。このようにリレー部120,125が1つのリレーのみを含んで構成される場合であっても、ECU180は、リレー部120,125の開閉状態を切り替えることによって分岐経路150,152における通電の有無をそれぞれ切り替えることができる。したがって、リレー部120を構成するリレーの数、および、リレー部125を構成するリレーの数を2つから1つに削減することができる。
【0121】
なお、上記において、リレー部110,120,125,115は、それぞれ、本開示における、「第1のリレー部」、「第2のリレー部」、「第3のリレー部」および「第4のリレー部」の一実施例を形成する。
【0122】
また、しきい温度TH2,TH3,TH1は、それぞれ、本開示における、「第1のしきい温度」、「第2のしきい温度」および「第3のしきい温度」の一実施例を形成する。
【0123】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0124】
10 給電システム、100 車両、101 バッテリ、102 インレット、110,115,120,125 リレー部、130,132,136 温度センサ、135,137 電流センサ、140 充電経路、150,152 分岐経路、170 温調ユニット、175 電路、200 電力スタンド、204 充電装置、206 制御装置、B1,B2 分岐。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7