(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】乗用型苗移植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
A01C11/02 350G
(21)【出願番号】P 2021137051
(22)【出願日】2021-08-25
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092794
【氏名又は名称】松田 正道
(72)【発明者】
【氏名】今泉 大介
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-073138(JP,A)
【文献】特開平07-170818(JP,A)
【文献】特開2012-085611(JP,A)
【文献】特開2012-090585(JP,A)
【文献】特開2009-131152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0176914(US,A1)
【文献】特開2020-099258(JP,A)
【文献】特開2007-236256(JP,A)
【文献】特開2009-240224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/00 - 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)の前部に予備苗載装置(38)を装備し、後部に苗植付部(4)を装着した乗用型苗移植機において、予備苗載装置(38)の側方に空の苗箱(N)を機体前部に向けてスライド移動させるリターンレール(70)を設け、機体前部からの操作で予備苗載装置(38)に載置した空の苗箱(N)をリターンレール(70)に移載する空箱操作具(73)を設けたことを特徴とする乗用型苗移植機。
【請求項2】
空箱操作具(73)の前端に把持部(74)を設け、該把持部(74)の空箱操作具(73)を回動させる操作により予備苗載装置(38)の予備苗載台(38c)に設けた貫通部(77)を下方から上方に向けて通り抜けて予備苗載台(38c)に載置した空の苗箱(N)をリターンレール(70)に移載する苗箱移載体(78)を空箱操作具(73)に設けたことを特徴とする請求項1に記載の乗用型苗移植機。
【請求項3】
空箱操作具(73)の前端に把持部(74)を設け、該把持部(74)の空箱操作具(73)を機体前方に移動させる操作によりリターンレール(70)上の空の苗箱(N)を機体前方に移動させる苗箱送り体(79)を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の乗用型苗移植機。
【請求項4】
予備苗載装置(38)の複数の予備苗載台(38a,38b,38c)を上下に配置した状態から複数の予備苗載台(38a,38b,38c)を機体前後方向に平面上に配置した状態に切り換えた時に、複数の予備苗載台(38a,38b,38c)の各々の側部に設けた分割リターンレール(70a,70b,70c)が前後方向に連通してリターンレール(70)となって苗箱(N)を後部から前部に向けてスライド移動可能となり、複数の予備苗載台(38a,38b,38c)の各々の側部に設けた空箱操作体(73a,73b,73c)を連結して空箱操作具(73)となることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の乗用型苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車体に苗植付部を装着した乗用型苗移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水田圃場を走行しながら苗を植え付ける乗用型苗移植機(乗用型苗植機)において、走行車体の前部側方に予備苗載台を設けたものがある。(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗用型苗植機の前部を畦や道路に着けて、畦又は道路から乗用型苗植機へ育苗した苗箱を供給する作業及び乗用型苗植機から空の苗箱を取り出す作業は、作業性及び作業効率が悪いものであった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業性及び作業効率を向上させることができる乗用型苗植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、走行車体2の前部に予備苗載装置38を装備し、後部に苗植付部4を装着した乗用型苗移植機において、予備苗載装置38の側方に空の苗箱Nを機体前部に向けてスライド移動させるリターンレール70を設け、機体前部からの操作で予備苗載装置38に載置した空の苗箱Nをリターンレール70に移載する空箱操作具73を設けた乗用型苗移植機である。
【0007】
請求項1記載の発明によれば、予備苗載装置38の側方に空の苗箱Nを機体前部に向けてスライド移動させるリターンレール70を設け、機体前部からの操作で予備苗載装置38に載置した空の苗箱Nをリターンレール70に移載する空箱操作具73を設けたので、畦又は道路からの乗用型苗移植機1への育苗した苗箱Nの供給及び乗用型苗移植機1から空の苗箱Nの取り出しが作業性及び作業効率良く行なえる。
【0008】
請求項2記載の発明は、空箱操作具73の前端に把持部74を設け、該把持部74の空箱操作具73を回動させる操作により予備苗載装置38の予備苗載台38cに設けた貫通部77を下方から上方に向けて通り抜けて予備苗載台38cに載置した空の苗箱Nをリターンレール70に移載する苗箱移載体78を空箱操作具73に設けた請求項1に記載の乗用型苗移植機である。
【0009】
請求項3記載の発明は、空箱操作具73の前端に把持部74を設け、該把持部74の空箱操作具73を機体前方に移動させる操作によりリターンレール70上の空の苗箱Nを機体前方に移動させる苗箱送り体79を設けた請求項1または請求項2に記載の乗用型苗移植機である。
【0010】
請求項4記載の発明は、予備苗載装置38の複数の予備苗載台38a,38b,38cを上下に配置した状態から複数の予備苗載台38a,38b,38cを機体前後方向に平面上に配置した状態に切り換えた時に、複数の予備苗載台38a,38b,38cの各々の側部に設けた分割リターンレール70a,70b,70cが前後方向に連通してリターンレール70となって苗箱Nを後部から前部に向けてスライド移動可能となり、複数の予備苗載台38a,38b,38cの各々の側部に設けた空箱操作体73a,73b,73cを連結して空箱操作具73となる請求項1~3のいずれか1項に記載の乗用型苗移植機である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明における実施形態を示す乗用型田植機の側面図である。
【
図2】本発明における実施形態を示す乗用型田植機の要部の平面図である。
【
図3】本発明における実施形態を示す乗用型田植機の要部の側面図である。
【
図4】本発明における実施形態を示す乗用型田植機の要部の作用説明用正面図である。
【
図5】本発明における実施形態を示す乗用型田植機の要部の作用説明用正面図である。
【
図6】本発明における実施形態を示す乗用型田植機の要部の作用説明用斜視図である。
【
図7】本発明における実施形態を示す乗用型田植機の要部の作用説明用斜視図である。
【
図8】本発明における他の実施形態を示す乗用型田植機の要部の作用説明用斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づき、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0013】
<全体構成>
図1は、本発明の乗用型苗移植機の典型例である施肥装置を装着した乗用型田植機1の側面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。なお、乗用型苗移植機の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向と後進方向をそれぞれ前、後という。
【0014】
<走行車体2>
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0015】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置及びHST23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケースに伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構によって施肥装置5へ伝動される。
【0016】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0017】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。リンクベースフレーム42と縦リンク43との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、昇降リンク装置3が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0018】
<苗植付部4>
苗植付部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給する苗送りベルトにより苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51aに供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52を備えている。
【0019】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56,56がそれぞれ設けられている。これらフロート55,56,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植付けられる。
【0020】
各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0021】
苗植付部4には、整地装置の一例である整地ロータ27が取り付けられている。
【0022】
<施肥装置5>
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63まで導き、施肥ガイド63の前側に設けた作溝体64によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。
【0023】
ブロア用電動モータで駆動するブロアで発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0024】
<予備苗載装置38>
走行車体2の前部左右両側には、支持フレーム49に支持された補給用の苗を載せておく一対の予備苗載装置38,38が設けられている。
【0025】
予備苗載装置38はそれぞれ移動リンク部材39で上下三段に構成され、最上段の第1予備苗載台38a、中段の第2予備苗載台38b及び下段の第3予備苗載台38cからなっている。
【0026】
第2予備苗載台38bは支持フレーム49に固定されている。そして、第2予備苗載台38bを中心とし、その上下に第1予備苗載台38aと第3予備苗載台38cが配置される全体として上下三段に配置される状態と、移動リンク部材39を回動させて、第2予備苗載台38bを中心とし、その前後に第1予備苗載台38aと第3予備苗載台38cがそれぞれ配置され、全体として第1,第2,第3予備苗載台38a,38b,38cが同一平面上に配置する状態に切り換えることができる。
【0027】
また、上下三段からなる第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cを前後に一段の平面状にする切り換えは、苗トレイを載せたまま行うことができる。
【0028】
また第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cを上下三段又は同一平面上に並べ替えるときには移動リンク部材39の作動を電動モータで行う。このときには電動モータの作動スイッチはオペレーター側とオペレーターとは別の苗移植機周りの場所に居る補助者側の2個所に設けると作業性がよい。
【0029】
そして、第1予備苗載台38a、第2予備苗載台38b及び第3予備苗載台38cのそれぞれの外側部には、杆体で構成した苗箱Nを縦方向に載置してスライド移動させる分割リターンレールとしての第1リターンレール70a,第2リターンレール70b,第3リターンレール70cが設けられている。なお、第1リターンレール70a,第2リターンレール70b,第3リターンレール70cをあわせてリターンレール70という。
【0030】
第1リターンレール70a,第2リターンレール70b,第3リターンレール70cは、苗箱Nを横長で立てた状態で載置できる構成としている。
【0031】
そして、
図2及び
図3に示すように、第1予備苗載台38a、第2予備苗載台38b及び第3予備苗載台38cを前後方向に並べて同一平面上に配置した状態(田植作業は、この前後方向に並べて同一平面上に配置した状態で行う)では、第1リターンレール70a,第2リターンレール70b,第3リターンレール70cは、前後方向に連通した状態となり、苗箱Nを横長で立てて第1リターンレール70a,第2リターンレール70b,第3リターンレール70c後端から前端までスライド移動することができる。
【0032】
また、第1リターンレール70a,第2リターンレール70b,第3リターンレール70cの各底部に基部を固着した支持杆71a,71b,71cに円筒状の案内部72a,72b,72cを設け、該案内部72a,72b,72cを貫通して機体前後方向にスライド移動自在及び回動自在に支持された空箱操作具73を設けている。
【0033】
空箱操作具73は、杆体にて構成され、第1リターンレール70aの案内部72aに案内される空箱操作体としての前空箱操作杆73aと、第2リターンレール70bの案内部72bに案内される空箱操作体としての中空箱操作杆73bと第3リターンレール70cの案内部72cに案内される空箱操作体としての後空箱操作杆73cの3分割構成となっている。
【0034】
空箱操作具73の前空箱操作杆73aの前端には、空箱操作具73を機体前後方向にスライド移動及び回動操作する把持部74が設けられており、前空箱操作杆73aの後端には、貫通孔75aを有する係合片75が設けられている。
【0035】
中空箱操作杆73bの前端には、前空箱操作杆73a後端の係合片75の貫通孔75aに貫通して係合する係合ピン部76が設けられており、中空箱操作杆73bの後端には、貫通孔75aを有する係合片75が設けられている。
【0036】
後空箱操作杆73cの前端には、中空箱操作杆73b後端の係合片75の貫通孔75aに貫通して係合する係合ピン部76が設けられており、後空箱操作杆73cの中途部には、第3予備苗載台38cの機体内方側から切り欠いた構成の2つの貫通部としての溝部77,77をそれぞれ通り抜ける苗箱移載体としての苗箱起こし杆78,78の基部が固着され、後空箱操作杆73cの後端には、苗箱Nの後端に接当して機体前方に押すことができる苗箱送り体としての苗箱送り杆79が設けられている。
【0037】
なお、第3リターンレール70cは、苗箱起こし杆78,78が回転できるように苗箱起こし杆78,78が通る部分を切り離して3分割構成としている。
【0038】
<田植作業>
電動モータの作動スイッチを操作して、左右予備苗載装置38を第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cが同一平面上に配置する状態に切り換える。その時、第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70cは、前後方向に連通した状態となり、苗箱Nを横長で立てて第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70c後端から前端までスライド移動することができる状態となっている。また、空箱操作具73は、前空箱操作杆73a、中空箱操作杆73bと後空箱操作杆73cの各係合片75の貫通孔75aに係合ピン部76を貫通して係合して連結した状態とする。
【0039】
乗用型田植機1の座席31に着座した作業者は、機体を操縦して乗用型田植機1の前部を畦又は道路に着ける。
【0040】
畦又は道路にいる作業者は、畦又は道路に置いてある育苗した苗箱Nを同一平面上に配置した前方にある第1予備苗載台38aに載置して機体後方に押して移動させ後方にある第3予備苗載台38cまでスライド移動させる。
【0041】
機体に搭乗している作業者は、第3予備苗載台38cまでスライド移動した苗箱Nからマット状土付苗を苗救い板で取り出して苗植付部4の苗載台51に供給する。その際に、第3予備苗載台38cに載置されている空の苗箱Nを前後方向に連通した状態の第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70cの後端部に横長に立てて載置し前方にスライド移動する。
【0042】
然しながら、苗箱Nからマット状土付苗を苗救い板で取り出して両手で持っているので、第3予備苗載台38cに載置されている空の苗箱Nを前後方向に連通した状態の第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70cの後端部に横長に立てて載置し前方にスライド移動する作業は、困難で作業性(作業効率)が悪い。
【0043】
そこで、畦又は道路にいる作業者は、機体前端に位置する空箱操作具73の把持部74を把持して、空箱操作具73を矢印(イ)方向に回動させて苗箱起こし杆78,78が第3予備苗載台38cの2つの溝部77,77をそれぞれ上方に向けて通り抜けるように作動させて、第3予備苗載台38cに載置されている空の苗箱Nを立てながら第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70cの後端部に落とし込む。
【0044】
そして、把持部74を把持したままで手前に矢印(ロ)方向に強く引いて、苗箱送り杆79で第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70cの後端部に立てた苗箱Nの後端を機体前方に(自分の方に)に押して、空の苗箱Nを第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70cの前端までスライド移動させる。
【0045】
そして、第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70c前端にスライド移動してきた空の苗箱Nを取り出して畦又は道路に置き、畦又は道路に置いてある育苗した苗箱Nを同一平面上に配置した前方にある第1予備苗載台38aに載置して機体後方に押して移動させ後方にある第3予備苗載台38cまでスライド移動させる。
【0046】
この時、空箱操作具73の苗箱起こし杆78,78は、把持部74を把持して360度回転できるので、第3予備苗載台38cに育苗した苗箱Nがあっても第3予備苗載台38c底面側に1回転して外回りで戻すことができ、次作業の効率が良い。
【0047】
このようにして、畦又は道路に置いてある育苗した苗箱Nを同一平面上に配置した第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38c、前後方向に連通した状態の第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70c及び空箱操作具73を用いて効率良く作業性良く容易に苗植付部4の苗載台51に苗供給することができる。
【0048】
そして、苗植付部4の苗載台51への苗供給作業を終えると、畦又は道路にいる作業者は、畦又は道路に置いてある育苗した苗箱Nを第1、第2、第3予備苗載台38a,38b,38cが同一平面上に配置する状態にした左右予備苗載装置38に載置する。
【0049】
また、畦又は道路に置いてある肥料袋を取り上げて施肥装置5の肥料ホッパ60に運んで、肥料を供給する。
【0050】
乗用型田植機1の座席31に着座した作業者は、各部を駆動して機体を走行させて田植作業及び施肥作業を行なう。
【0051】
田植作業中に苗植付部4の苗載台51に載置したマット状土付苗が残り少なくなると、左右予備苗載装置38に載置されている苗箱Nから苗救い板でマット状土付苗を取り出して苗植付部4の苗載台51に供給し、空の苗箱Nをリターンレール70に載置する。
【0052】
そして、苗植付部4の苗載台51のマット状土付苗が残り少なくなり、左右予備苗載装置38の予備苗も無くなると、乗用型田植機1の前部を畦又は道路に着けて、前述の要領で苗植付部4の苗載台51にマット状土付苗を供給し、左右予備苗載装置38に育苗した苗箱Nを載置し、畦又は道路にいる作業者が前後方向に連通した状態の第1、第2、第3リターンレール70a,70b,70cに載置された空の苗箱Nを前方にスライド移動させて前端から引き抜いて畦又は道路に置く。
【0053】
また、施肥装置5の肥料ホッパ60内の肥料が少なくなっていれば、肥料ホッパ60に肥料も供給する。
【0054】
<他の実施形態>
(1)
図8は、空箱操作具73の前空箱操作杆73a、中空箱操作杆73b及び後空箱操作杆73cの連結部の他の実施形態を示す。
【0055】
即ち、例えば、前空箱操作杆73aの後端に立方体の係合片75’を設け、中空箱操作杆73bの前端に前空箱操作杆73a後端の立方体の係合片75’に外篏する係合部76’を設けて、両者を分離及び係合連結自在とする。
【0056】
また、中空箱操作杆73bと後空箱操作杆73cの連結部も同様の構成とする。
【符号の説明】
【0057】
2 走行車体
4 苗植付部
38 予備苗載装置
38a 予備苗載台(第1予備苗載台)
38b 予備苗載台(第2予備苗載台)
38c 予備苗載台(第3予備苗載台)
70 リターンレール
70a 分割リターンレール(第1リターンレール)
70b 分割リターンレール(第2リターンレール)
70c 分割リターンレール(第3リターンレール)
73 空箱操作具
73a 空箱操作体(前空箱操作杆)
73b 空箱操作体(中空箱操作杆)
73c 空箱操作体(後空箱操作杆)
74 把持部
77 貫通部(溝部)
78 苗箱移載体(苗箱起こし杆)
79 苗箱送り体(苗箱送り杆)
N 苗箱