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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】二酸化炭素回収システム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/62 20060101AFI20240806BHJP
   B65F 5/00 20060101ALI20240806BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20240806BHJP
   B01D 53/82 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
B01D53/62
B65F5/00 101
B01D53/78 ZAB
B01D53/82
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021164015
(22)【出願日】2021-10-05
(65)【公開番号】P2023054967
(43)【公開日】2023-04-17
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 宏石
(72)【発明者】
【氏名】横山 大樹
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/018160(WO,A1)
【文献】特開平04-174233(JP,A)
【文献】特開2009-257639(JP,A)
【文献】特開2020-071621(JP,A)
【文献】特開2013-024547(JP,A)
【文献】特開2018-048749(JP,A)
【文献】特開2012-008713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の二酸化炭素を捕集または分離して回収する二酸化炭素回収装置と、スマートシティの中に建てられた複数の建物(以下、建物群と称する)と、前記建物群から排出される空気を建物排気として前記二酸化炭素回収装置へ送る流路と、を備え、前記建物排気中の二酸化炭素を前記二酸化炭素回収装置で回収する前記スマートシティの二酸化炭素回収システムであって、
前記二酸化炭素回収装置で回収された前記二酸化炭素を貯蔵する二酸化炭素貯蔵設備と、
記建物群から前記流路を通して前記二酸化炭素回収装置に流入させる前記建物排気の流入量を調整可能な流量調整機構と、
前記流量調整機構を制御して前記流入量を調整するコントロールユニットと、を備えている
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記コントロールユニットは、
前記建物排気中の二酸化炭素濃度の検出値または前記二酸化炭素濃度の推定値を取得し、
取得した前記検出値または前記推定値に基づいて、前記流量調整機構を制御する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化炭素回収システムであって、
記建物群に出入りする人の人数、または、前記建物群に出入りする人のスケジュールを検出する検出機器を備え、
前記コントロールユニットは、
記人数または前記スケジュールを取得し、
取得した前記人数または前記スケジュールに基づいて、前記流入量を調整する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項4】
請求項3に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記コントロールユニットは、
記建物群内に居る人、または、前記建物群内にいる予定の人が多いほど、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項5】
請求項3に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記コントロールユニットは、
記建物群内に居る人、または、前記建物群内に居る予定の人が多い時間帯は、前記建物群内に居る人、または、前記建物群内に居る予定の人が少ない時間帯よりも、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項6】
請求項3から5のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記コントロールユニットは、
記建物群内に人が居ない場合、または、前記建物群内に人が居る予定がない場合は、前記建物排気の前記二酸化炭素回収装置への流入を停止する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項7】
請求項3に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記コントロールユニットは、
記人数または前記スケジュールに基づいて、前記建物群内に居る人、または、前記建物群内にいる予定の人が多いほど、前記建物排気中の二酸化炭素濃度が高くなると推定し、
推定した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項8】
請求項1または2に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記建物排気中の二酸化炭素濃度を検出するCOセンサを備え、
前記コントロールユニットは、
前記COセンサで検出した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくする
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記流量調整機構は、
記建物群と前記二酸化炭素回収装置との間に設けられたバルブ機構であり、
前記コントロールユニットは、
前記バルブ機構の動作を制御することにより、前記流入量を調整する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか一項に記載の二酸化炭素回収システムであって、
前記流量調整機構は、
記建物群と前記二酸化炭素回収装置との間に設けられた送風機器であり、
前記コントロールユニットは、
前記送風機器の出力を制御することにより、前記流入量を調整する
ことを特徴とする二酸化炭素回収システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、大気中に排出される二酸化炭素(CO)を回収して貯留する二酸化炭素回収システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、火力発電所等で用いられる酸素燃焼プラント、および、その運転方法に関する発明が記載されている。この特許文献1に記載された酸素燃焼プラントは、酸素、燃焼排ガス、および、燃料を燃焼させる燃焼装置と、生成された燃焼排ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収装置と、回収した二酸化炭素を別の場所に移送するパイプラインと、パイプラインに接続して二酸化炭素をパイプラインに送る二酸化炭素押出ラインと、パイプラインに接続してパイプラインから酸素燃焼プラントに二酸化炭素を送る二酸化炭素取入ラインとを有している。二酸化炭素押出ラインおよび二酸化炭素取入ラインには、それぞれ、開閉弁が設けられている。そして、特許文献1に記載された酸素燃焼プラントでは、酸素燃焼プラントの稼働状態や酸素燃焼プラント内の酸素濃度等に応じて、二酸化炭素押出ラインおよび二酸化炭素取入ラインに設けられた各開閉弁の動作がそれぞれ制御される。そのため、特許文献1に記載された酸素燃焼プラントによれば、酸素燃焼プラントの起動に要する時間を短縮することができ、更に、二酸化炭素の排出量を低減することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-38667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1に記載された発明は、具体的には、蒸気タービンを用いて発電を行う火力発電所あるいは発電プラント(酸素燃焼プラント)等を対象にしている。そのような発電プラントで、燃料および空気(酸素)の燃焼に伴って発生する二酸化炭素は、二酸化炭素回収装置によって回収され、所定の貯留設備に貯留される。したがって、大気中に排出される二酸化炭素の量が削減される。
【0005】
ところで、地球温暖化の一因とされている二酸化炭素は、上記のような発電プラントや、大規模な製造プラントなどの他に、例えば、一般の住宅、商店、飲食店、事務所、あるいは、中小規模の工場などの家屋や建物からも排出される。それら一般の家屋や建物から排出される空気(または、排気)を、上記の特許文献1に記載されているような二酸化炭素回収装置に送り、二酸化炭素回収装置で空気から二酸化炭素を分離して回収することにより、二酸化炭素の排出量を削減することができる。ひいては、地球温暖化の抑制に多少とも寄与することができる。但し、各建物からそれぞれ排出される二酸化炭素の量は一定ではなく、時間や時間帯あるいは時節等に応じて刻々と変化する。そのため、各建物から排出される空気(排気)を、一律に、二酸化炭素回収装置に送り込むと、効率よく二酸化炭素を回収できないおそれがある。
【0006】
この発明は、上記のような技術的課題に着目して考え出されたものであり、一般の家屋や建物から排出される空気(排気)中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することが可能な二酸化炭素回収システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、この発明は、空気中の二酸化炭素を捕集または分離して回収する二酸化炭素回収装置と、スマートシティの中に建てられた複数の建物(以下、建物群と称する)と、前記建物群から排出される空気を建物排気として前記二酸化炭素回収装置へ送る流路と、を備え、前記建物排気中の二酸化炭素を前記二酸化炭素回収装置で回収する前記スマートシティの二酸化炭素回収システムであって、前記二酸化炭素回収装置で回収された前記二酸化炭素を貯蔵する二酸化炭素貯蔵設備と、前記建物群から前記流路を通して前記二酸化炭素回収装置に流入させる前記建物排気の流入量を調整可能な流量調整機構と、前記流量調整機構を制御して前記流入量を調整するコントロールユニットと、を備えていることを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物排気中の二酸化炭素濃度の検出値または前記二酸化炭素濃度の推定値を取得し、取得した前記検出値または前記推定値に基づいて、前記流量調整機構を制御するように構成してもよい。
【0009】
また、この発明は、前記建物群に出入りする人の人数、または、前記建物群に出入りする人のスケジュールを検出する検出機器を備えていてもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記人数または前記スケジュールを取得し、取得した前記人数または前記スケジュールに基づいて、前記流入量を調整するように構成してもよい。
【0010】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物群内に居る人、または、前記建物群内にいる予定の人が多いほど、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0011】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物群内に居る人、または、前記建物群内に居る予定の人が多い時間帯は、前記建物群内に居る人、または、前記建物群内に居る予定の人が少ない時間帯よりも、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0012】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記建物群内に人が居ない場合、または、前記建物群内に人が居る予定がない場合は、前記建物排気の前記二酸化炭素回収装置への流入を停止する(すなわち、前記流入量を0にする)ように構成してもよい。
【0013】
また、この発明における前記コントロールユニットは、前記人数または前記スケジュールに基づいて、前記建物群内に居る人、または、前記建物群内にいる予定の人が多いほど、前記建物排気中の二酸化炭素濃度が高くなると推定し、推定した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0014】
また、この発明は、前記建物排気中の二酸化炭素濃度を検出するCOセンサを備えていてもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記COセンサで検出した前記二酸化炭素濃度が高いほど、前記流入量を大きくするように構成してもよい。
【0015】
また、この発明における前記流量調整機構は、前記建物群と前記二酸化炭素回収装置との間に設けられたバルブ機構であってもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記バルブ機構の動作(開度、開閉状態等)を制御することにより、前記流入量を調整するように構成してもよい。
【0016】
そして、この発明における前記流量調整機構は、前記建物群と前記二酸化炭素回収装置との間に設けられた送風機器であってもよく、この発明における前記コントロールユニットは、前記送風機器の出力を制御することにより、前記流入量を調整するように構成してもよい。

【発明の効果】
【0017】
この発明の二酸化炭素回収システムは、例えば、スマートシティのような所定の地域あるいは区域内に設置された、複数の、かつ、多数の建物(例えば、住宅、店舗、工場、病院、倉庫等)を対象にして二酸化炭素を回収する。各建物からは、建物の中に居住するまたは滞在する人の呼吸によって二酸化炭素が排出される。また、建物の中で使用する暖房機器や調理器具などから二酸化炭素が排出される。そして、この発明の二酸化炭素回収システムは、上記のように各建物から空気(排気)と共に排出される二酸化炭素を、二酸化炭素回収装置で回収する。二酸化炭素回収装置は、各建物から送り込まれる空気中の二酸化炭素を分離または捕集して回収する。その場合、各建物からそれぞれ排出される空気中の二酸化炭素の量、すなわち、排気中の二酸化炭素濃度は一定ではない。そのため、各建物からの排気を、一律に、二酸化炭素回収装置に送り込むと、二酸化炭素の回収効率が低下してしまう場合がある。例えば、排気中の二酸化炭素濃度が低い場合は、排気中の二酸化炭素濃度が高い場合と比較して、二酸化炭素回収装置を稼働するために消費するエネルギ量に対する二酸化炭素の回収量が少なくなる。すなわち、二酸化炭素回収装置における二酸化炭素の回収効率が低くなる。そこで、この発明の二酸化炭素回収システムでは、各建物と二酸化炭素回収装置との間に流量調整機構が設けられ、各建物から二酸化炭素回収装置に流入させる空気(建物排気)の流入量がそれぞれ調整される。そのため、各建物から排出される建物排気の状態(例えば、建物排気中の二酸化炭素濃度)に応じて、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を調整することができる。
【0018】
具体的には、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報(例えば、二酸化炭素濃度の検出値、または、二酸化炭素濃度の推定値、もしくは、建物内で二酸化炭素を排出する人に関する情報等)を取得し、その建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報に基づいて、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を調整する。例えば、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物の中に居る人の人数や、人の動きに関するデータを取得し、その人数や人の動きから、建物排気中の二酸化炭素濃度を推定する。または、建物排気中の二酸化炭素濃度を、センサ等を用いて直接検出する。そして、例えば、推定または検出した建物排気中の二酸化炭素濃度が低い場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度が高い場合と比較して、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を少なくする。それにより、建物排気の状態に応じて、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0019】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、建物に出入りする人の人数および行動に関する行動データ(例えば、建物の中に居る人の人数、人の位置情報、動作・運動情報等)を検出する検出機器(例えば、カメラ、携帯情報端末、Gセンサ等)が備えられる。そして、その検出機器で検出する行動データに基づいて、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量が調整される。例えば、検出機器として、建物に出入りする人の動きを観察するカメラ(監視カメラ等)が用いられ、行動データとして、建物に出入りする人の人数が検出される。それとともに、検出された人数に基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。建物の中に居る人の人数が多いほど、その建物から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、検出機器として、建物に出入りする人が所持する携帯情報端末(例えば、携帯電話、GPS[Global Positioning System]発信器等)の位置検索機能が用いられ、行動データとして、建物に出入りする人の位置情報が検出される。それとともに、検出された人の位置情報に基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。建物の中で人に所持されている携帯情報端末の位置情報が多いほど、建物の中に居る人が多く、その建物から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、検出機器として、建物に出入りする人が所持する携帯情報端末(例えば、携帯電話、パーソナルコンピュータ、電子手帳等)のスケジュール帳機能が用いられ、行動データとして、建物に出入りする人のスケジュール(移動、行動予定等)が検出される。それとともに、検出されたスケジュールに基づいて、建物の中に居る人が多い時間帯が予測される。人が多いと予測される時間帯は、人が少ないと予測される時間帯よりも、その建物から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。そして、上記のようにして推定した建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。そのため、建物排気中の二酸化炭素濃度の推定値または予測値に基づいて、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0020】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、建物の中に居る人の人数が多いほど、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと判断され、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。あるいは、建物の中に居る人の人数が多い時間帯は、建物の中に居る人の人数が少ない時間帯よりも、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと判断され、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。あるいは、建物の中に人が居ない場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度は低いと判断され、建物排気の二酸化炭素回収装置への流入が停止される、すなわち、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量が0にされる。そのため、建物排気中の二酸化炭素濃度の推定値または予測値に則して、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0021】
また、この発明の二酸化炭素回収システムでは、上記のように建物排気中の二酸化炭素濃度を推定する代わりに、COセンサを用いて、直接、建物排気中の二酸化炭素濃度を検出してもよい。COセンサで検出した建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量が増大される。また、例えば、COセンサで検出した建物排気中の二酸化炭素濃度が所定値よりも低い場合は、建物排気の二酸化炭素回収装置への流入が停止される、すなわち、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量が0にされる。そのため、実際に検出した建物排気中の二酸化炭素濃度に則して、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0022】
なお、この発明の二酸化炭素回収システムでは、流量調整機構として、例えば、バルブ機構が設けられる。そして、バルブ機構の動作(開度、開閉状態)を制御することにより、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。あるいは、流量調整機構として、例えば、送風機器が設けられる。そして、送風機器の出力(送風量)を制御することにより、二酸化炭素回収装置に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。
【0023】
したがって、この発明の二酸化炭素回収システムによれば、二酸化炭素回収装置における二酸化炭素の回収効率を考慮し、その回収効率がよい状態で、二酸化炭素回収装置を稼働させることができる。そのため、各建物から排出される建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】この発明の二酸化炭素回収システムの構成を説明するための図であって、所定の地域(スマートシティ)内に設置された複数の建物から排出される空気(建物排気)、および、建物排気中から回収される二酸化炭素(CO)の流通系統、ならびに、二酸化炭素回収装置(CO回収装置)に送り込む建物排気の流入量を調整するための制御系統等を示す模式的なブロック図である。
図2】この発明の二酸化炭素回収システムの構成の他の例を説明するための図であって、二酸化炭素回収装置(CO回収装置)を複数の建物ごとに設置した例を示す模式的なブロック図である。
図3】この発明の二酸化炭素回収システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、建物排気中の二酸化炭素濃度を考慮した所定時間に対応して、二酸化炭素回収装置に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の内容を示すフローチャートである。
図4】この発明の二酸化炭素回収システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、建物排気中の二酸化炭素濃度を推定するために、建物に出入りする人の行動データを取得するとともに、取得した行動データをコントローラに送信する制御の内容を示すフローチャートである。
図5】この発明の二酸化炭素回収システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、建物排気中の二酸化炭素濃度を検出するとともに、検出した二酸化炭素濃度のデータをコントローラに送信する制御の内容を示すフローチャートである。
図6】この発明の二酸化炭素回収システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、受信した各種情報(行動データ、CO濃度等)に基づいて二酸化炭素回収装置に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の内容を示すフローチャートである。
図7】この発明の二酸化炭素回収システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、受信した各種情報(行動データ、CO濃度等)をデータベースに保存する制御の内容を示すフローチャートである。
図8】この発明の二酸化炭素回収システムによって実行される制御の一例を説明するための図であって、データベースの各種情報(行動データ、CO濃度等)に基づいて二酸化炭素回収装置に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の実施形態を、図を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は、この発明を具体化した場合の一例に過ぎず、この発明を限定するものではない。
【0026】
この発明の実施形態における二酸化炭素回収システムは、例えば、スマートシティのような所定の地域あるいは区域内に建てられた複数の建物を対象にしている。そして、それら複数の建物から排出される空気中の二酸化炭素を分離または捕集して回収する。
【0027】
図1に示すように、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、複数の建物2から排出される空気を、建物排気として、流路3を通して、二酸化炭素回収装置(CO回収装置)4に送り込む。そして、二酸化炭素回収装置4で、建物排気中の二酸化炭素(CO)を分離または捕集して回収する。回収された二酸化炭素は、所定の二酸化炭素貯蔵設備(COタンク)5に送られて貯蔵される。なお、図1では、二酸化炭素回収システム1が、いわゆるスマートシティ6の中に建てられた複数(多数)の建物2から排出される二酸化炭素を、集中的に、二酸化炭素回収装置4で回収するイメージを示している。そして、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を調整する流量調整機構7、および、流量調整機構7の動作を制御するコントロールユニット8を備えている。更に、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度を検出するためのCOセンサ9を備えていてもよい。また、建物2の中に居住する人、あるいは、建物2に出入りする人の人数および行動に関する行動データを検出するための検出機器10を利用することもできる。
【0028】
建物2は、具体的には、住宅、商店、飲食店、工場、病院、倉庫など、所定の地域あるいは区域内に建てられた家屋や建築物である。例えば、一般家庭の住宅、あるいは、店舗や事務所などの比較的小規模または中規模の建物2であっても、建物2に居住するまたは滞在する人の呼吸によって二酸化炭素が排出される。また、建物2の中で使用する暖房機器や調理器具などからも二酸化炭素が排出される。この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、上記のような、比較的小規模または中規模の建物2を対象にして、二酸化炭素を回収する。
【0029】
流路3は、建物2から排出される建物排気を二酸化炭素回収装置4に流通させる。流路3は、建物2と二酸化炭素回収装置4とをつなぐパイプライン(図示せず)を形成している。例えば、流路3は、建物2の排気口(図示せず)と、二酸化炭素回収装置4の流入口(図示せず)とを連通する通気管によって構成されている。図1に示す実施形態では、流路3は、建物排気、すなわち、気相の二酸化炭素を含む空気を流通させる。
【0030】
二酸化炭素回収装置4は、空気中または排気中の二酸化炭素を捕集して回収する。この発明の実施形態における二酸化炭素回収装置4は、上記のように、建物2から流路3を通って送り込まれる建物排気中の二酸化炭素を捕集して回収する。二酸化炭素回収装置4は、後述するコントロールユニット8に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0031】
二酸化炭素回収装置4における二酸化炭素の回収は、例えば、特開2021-8852号公報に記載されているような「物理吸着法」、「物理吸収法」、「化学吸収法」、および、「深冷分離法」など、周知の、種々の方法・技術を適用して行うことができる。「物理吸着法」では、例えば、活性炭やゼオライトなどの固体吸着剤と排ガスとを接触させることによって二酸化炭素を固体吸着剤に吸着させ、二酸化炭素が吸着した固体吸着剤を加熱または減圧することにより、固体吸着剤から二酸化炭素を脱離させて回収する。「物理吸収法」では、例えば、メタノールやエタノールなど、二酸化炭素を溶解させることが可能な吸収液と排ガスとを接触させて高圧・低温の下で物理的に二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱または減圧することにより、吸収液から二酸化炭素を回収する。「化学吸収法」では、例えば、アミンのように、二酸化炭素を選択的に溶解させることが可能な吸収液と排ガスとを接触させ、その際に生じる化学反応によって二酸化炭素を吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱することにより、吸収液から二酸化炭素を解離させて回収する。「深冷分離法」では、排ガスを圧縮および冷却することによって二酸化炭素を液化させ、液化させたCOを選択的に蒸留させることにより、二酸化炭素を回収する。
【0032】
二酸化炭素貯蔵設備5は、上記のように、二酸化炭素回収装置4で回収された二酸化炭素を貯蔵する。この二酸化炭素貯蔵設備5と、上記の二酸化炭素回収装置4との間は、流路11によって連通されている。例えば、流路11は、二酸化炭素回収装置4の流出口(図示せず)と、二酸化炭素貯蔵設備5の流入口(図示せず)とを連通する配管によって構成されている。流路11は、二酸化炭素回収装置4で分離・回収された後の、液相の二酸化炭素を流通させる。なお、流路11は、二酸化炭素回収装置4における二酸化炭素の回収方法に応じて、気相の二酸化炭素を流通させてもよい。二酸化炭素貯蔵設備5は、後述するコントロールユニット8に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。例えば、二酸化炭素の貯蔵量、あるいは、設備の貯蔵可能残量等に関するデータが、二酸化炭素貯蔵設備5からコントロールユニット8に送信される。貯蔵可能残量に余裕がない場合には、コントロールユニット8は、流量調整機構7を制御して、建物2から二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を抑制する。
【0033】
この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、複数の建物2が建てられた地域または地区の一例として、いわゆるスマートシティ6を想定することもできる。スマートシティ6は、例えば、「都市が抱える諸問題に対して、ICT[Information and Communication Technology]等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画・設備・管理・運営)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」(国土交通省)のように定義される都市または地域である。そのようなスマートシティ6は、近年、実証実験や実用化に向けた開発が進められている。スマートシティ6の中で日常的に排出される二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素を、例えば燃料として有効利用することも想定される。それにより、スマートシティ6の中で二酸化炭素を循環させ、実質的に、二酸化炭素の排出量を削減または抑制することができる。
【0034】
流量調整機構7は、建物2から流路3を通して二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を調整する。具体的には、流量調整機構7は、建物2と二酸化炭素回収装置4との間、すなわち、流路3の途中に設けられた“バルブ機構”によって構成されている。この場合、流量調整機構7は、“バルブ機構”として、例えば、弁の開度に応じて流量を変化させる流量制御弁、あるいは、弁体の位置に応じて流路3を連通状態または遮断状態にする開閉弁などを用いることができる。また、“バルブ機構”として、例えば、一般的な換気扇の排出口に設けられるシャッタも、一種の“バルブ機構”、または、“バルブ機構”に準ずる機構として用いることができる。したがって、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、流量調整機構7として、上記のような“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態、あるいは、シャッタの開閉状態を制御することにより、二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を調整する。
【0035】
また、流量調整機構7は、建物2と二酸化炭素回収装置4との間、すなわち、流路3の途中に設けられた“送風機器”によって構成することもできる。“送風機器”は、出力に応じて、送風量、すなわち、流路3を流通させる建物排気の流入量を変化させる。したがって、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、流量調整機構7として、上記のような“送風機器”の出力を制御することにより、二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を調整する。なお、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、流量調整機構7として、上記のような“バルブ機構”および“送風機器”を併用してもよい。流量調整機構7は、後述するコントロールユニット8に対して、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、データ通信が可能なように接続されている。
【0036】
コントロールユニット8は、例えば、サーバコンピュータあるいはマイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置であり、この二酸化炭素回収システム1における制御系統の主要部分を構成している。したがって、コントロールユニット8は、流量調整機構7の動作を制御して、建物2から二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を調整する。コントロールユニット8は、例えば、公衆通信回線、あるいは、専用の通信回線等を介して、外部のサーバ(図示せず)や、インターネット上のウェブサイトなどと接続されている。そして、コントロールユニット8には、例えば、COセンサ9、および、所定の検出機器10などから各種データが入力される。
【0037】
なお、COセンサ9は、例えば、建物2の排気口付近や、建物2と流量調整機構7との間の流路3に設置されている。COセンサ9は、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度を直接検出する。
【0038】
また、検出機器10は、建物2に出入りする人の人数および行動に関する行動データを検出する。この検出機構10としては、例えば、建物2に対する人の出入りを観察するカメラ(監視カメラ)、または、建物2に出入りする人を感知する人感センサなどが用いられる。そのようなカメラや人感センサ等を利用して、建物2に出入りする人の行動データとして、建物2に出入りする人の人数が検出される。あるいは、建物2の中に居る人の人数が検出される。そして、検出された人数に基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定される。建物2の中に居る人の人数が多いほど、その建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、検出機器10として、携帯電話、パーソナルコンピュータ、あるいは、電子手帳など、建物2に出入りする人が所持する携帯情報端末(図示せず)が用いられる。検出機器10は、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、例えば、上記のような携帯情報端末のスケジュール帳機能を利用して、建物2に出入りする人の人数および行動に関する行動データを取得する。具体的には、建物2に出入りする人の行動データとして、建物2に出入りする人のスケジュール(移動予定、行動予定等)が検出される。また、検出されたスケジュールに基づいて、建物2の中に居る人が多い時間帯が予測される。人が多いと予測される時間帯は、人が少ないと予測される時間帯よりも、その建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定される。あるいは、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度が高くなると予測される。
【0039】
また、コントロールユニット8は、入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントロールユニット8は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上述した流量調整機構7の動作を制御するように構成されている。例えば、コントロールユニット8は、流量調整機構7として“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態を制御する。あるいは、コントロールユニット8は、流量調整機構7として“送風機器”の出力を制御する。それにより、コントロールユニット8は、建物2から二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量を調整する。
【0040】
より具体的には、コントロールユニット8は、例えば、時間計測部(時計、または、タイマ)21、制御情報取得部22、流入量算出部23、および、流入量制御部24を有している。
【0041】
時間計測部21は、時計またはタイマ(図示せず)などから、時刻、制御時間、および、経過時間など、制御に適用する時間に関するデータを取得する。例えば、時間計測部21は、建物2の中に居る人の人数が多い(または、少ない)時間帯を判定するために、時間に関するデータを取得する。あるいは、建物排気中の二酸化炭素濃度が高い(または、低い)時間帯を判定するために、時間に関するデータを取得する。また、時間計測部21は、制御の実行間隔やタイミングを設定するために、時間に関するデータを取得する。
【0042】
制御情報取得部22は、制御に適用する各種データ、特に、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報を取得する。例えば、COセンサ9で検出する建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータを取得する。また、例えば、携帯情報端末などの検出機器10で検出する建物2の中に居る人の人数および行動に関する行動データを取得する。あるいは、例えば、建物2に対する人の出入りを観察するカメラやセンサ等(図示せず)で検出する建物2の中に居る人の人数に関するデータを取得する。
【0043】
流入量算出部23は、上記の時間計測部21および制御情報取得部22で取得した各種データに基づいて、建物2から二酸化炭素回収装置4に流入させるべき建物排気の流入量を算出する。例えば、建物排気中の二酸化炭素濃度が低い場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度が高い場合と比較して、二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量が低下される。あるいは、建物2の中に居る人の人数が多い場合は、建物2の中に居る人の人数が少ない場合と比較して、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと推定され、二酸化炭素回収装置4に流入させる建物排気の流入量が増大される。
【0044】
流入量制御部24は、上記の流入量算出部23で算出した建物排気の流入量に基づいて、流量調整機構7を制御する。すなわち、流入量算出部23で算出した建物排気の流入量を実現するように、流量調整機構7の動作を制御する。例えば、流入量制御部24は、流量調整機構7として“バルブ機構”における弁の開度や開閉状態を制御する。あるいは、流入量制御部24は、流量調整機構7として“送風機器”の出力を制御する。
【0045】
なお、図1では一つのコントロールユニット8が設けられたイメージを示しているが、この発明の実施形態におけるコントロールユニット8は、例えば、制御内容や制御対象ごとに、複数のコントロールユニット8が設けられていてもよい。あるいは、上記のような複数の流量調整機構7にそれぞれ設けられたコンピュータ(図示せず)と、所定の場所や施設に設置されたメインのサーバ(図示せず)とを統合したものを、総合的に、コントロールユニット8としてもよい。
【0046】
また、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、図2に示すように、二酸化炭素回収装置を複数の建物2ごとに設置してもよい。図2では、二酸化炭素回収システム1が、いわゆるスマートシティ6の中に建てられた複数(多数)の建物2から排出される二酸化炭素を、それら複数の建物2ごとに、個別に、二酸化炭素回収装置31で回収するイメージを示している。なお、図2に示す二酸化炭素回収システム1において、上述の図1で示した二酸化炭素回収システム1と構成や機能が同じ構成要素については、図1で用いた参照符号と同じ参照符号を付けてある。
【0047】
二酸化炭素回収装置31は、前述の二酸化炭素回収装置4と同様に機能する。そして、この図2に示す実施形態では、建物2と二酸化炭素回収装置31とをつなぐ流路32の途中に、流量調整機構7が設けられている。この場合も、流路32は、前述の流路3と同様に、建物排気、すなわち、気相の二酸化炭素を含む空気を流通させる。一方、それぞれの二酸化炭素回収装置31と二酸化炭素貯蔵設備5とを連通する流路33は、いずれも、二酸化炭素回収装置31で分離・回収された後の、液相の二酸化炭素を流通させる。なお、流路33は、二酸化炭素回収装置31における二酸化炭素の回収方法に応じて、気相の二酸化炭素を流通させてもよい。
【0048】
前述したように、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することを主な目的にしている。そのために、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1は、例えば、以下の図3から図8の各フローチャートに示す制御を実行するように構成されている。
【0049】
図3のフローチャートは、建物排気中の二酸化炭素濃度を考慮した所定時間(あるいは、時間帯)に対応して、二酸化炭素回収装置4,31に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の例を示している。図3に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS11では、所定時刻になったか否かが判断される。この場合の所定時刻は、建物2の中の空気中の二酸化炭素濃度、すなわち、建物排気中の二酸化炭素濃度が変化する時刻(または、時間帯)、もしくは、建物排気中の二酸化炭素濃度が変化することを想定した時刻(または、時間帯)である。例えば、建物2が商店や飲食店などの店舗であれば、所定時刻として、店舗の開店時間になったか否か、あるいは、店舗の営業時間(時間帯)になったか否かが判断される。店舗の営業時間内である場合は、建物2の中に滞在する人(客)の人数が増えて、建物排気中の二酸化炭素濃度が増大すると推定できる。また、建物2が住宅であれば、所定時刻として、その建物2の住人の(平均的な)出勤時間または登校時間になったか否か、あるいは、建物2の住人の(平均的な)帰宅時間になったか否かが判断される。住人の出勤時間または登校時間が過ぎている場合は、建物2の中に居る人の人数が減って、または、建物2の中に人が居なくなり、建物排気中の二酸化炭素濃度が低下すると推定できる。
【0050】
未だ、所定時刻になっていない、例えば、未だ、店舗の開店時間になっていない、あるいは、未だ、住人の出勤時間になっていないことにより、このステップS11で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図3のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。それに対して、所定時刻になった、例えば、店舗の営業時間(時間帯)になった、あるいは、住人の出勤時間になったことにより、ステップS11で肯定的に判断された場合には、ステップS12へ進む。
【0051】
ステップS12では、所定時刻に対応した建物排気の流入量となるように、流量調整機構7が制御される。具体的には、“バルブ機構”の開度が制御される。あるいは、“送風機器”の出力が制御される。例えば、所定時刻として、店舗の営業時間(時間帯)になった場合は、上記のように、建物排気中の二酸化炭素濃度が増大すると推定できる。そのため、店舗の営業時間(時間帯)外の場合と比較して、建物排気の流入量が増大するように、流量調整機構7が制御される。あるいは、所定時刻として、住人の出勤時間になった場合は、上記のように、建物排気中の二酸化炭素濃度が低下すると推定できる。そのため、住人の出勤時間前の場合と比較して、建物排気の流入量が減少するように、流量調整機構7が制御される。
【0052】
また、例えば、住宅が留守になる日中の時間帯や、業務時間外の深夜の事業所などで、建物2の中に人が居なくなり、人の呼吸によって排出される二酸化炭素の量がほぼ0になると推定できる時間帯では、建物排気の二酸化炭素回収装置4,31への流入を停止する、すなわち、建物排気の流入量が0になるように、流量調整機構7が制御される。
【0053】
このステップS12で、流量調整機構7が制御されて、建物排気の流入量が調整される(流入量が増大または減少させられる、もしくは、流入量が0にされる)と、その後、この図3のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0054】
上記のように、図3のフローチャートで示す制御では、建物排気中の二酸化炭素濃度が変化することを想定した所定時刻(あるいは、時間帯)に対応して、二酸化炭素回収装置4,31に送り込む建物排気の流入量が調整される。それにより、建物2の中に居る人の人数が多いほど、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと判断され、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が増大される。あるいは、建物2の中に居る人の人数が多い時間帯は、建物2の中に居る人の人数が少ない時間帯よりも、建物排気中の二酸化炭素濃度が高いと判断され、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が増大される。あるいは、建物2の中に人が居ない場合は、建物排気中の二酸化炭素濃度は低いと判断され、建物排気の二酸化炭素回収装置4,31への流入が停止される、すなわち、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が0にされる。したがって、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、二酸化炭素濃度が高い状態の建物排気が、より多く、二酸化炭素回収装置4,31に流入させられる。二酸化炭素濃度が低い状態の建物排気は、二酸化炭素回収装置4,31への流入が抑制される。そのため、建物排気中の二酸化炭素濃度に応じた適切な流入量で、建物排気を二酸化炭素回収装置4,31に送り込むことができ、効率よく、建物排気から二酸化炭素を回収することができる。
【0055】
図4のフローチャートは、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報から、建物排気中の二酸化炭素濃度を推定するために、建物2に出入りする人の行動データを取得する制御の例を示している。この図4のフローチャートで示す制御は、例えば、携帯情報端末などの検出機器10で実行される。あるいは、監視カメラなどの検出機器10に備えられた(または、連動する)マイクロコンピュータ(図示せず)で実行される。図4に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS21では、(建物2の中に居る、あるいは、建物2に住む)人の行動に変化が起きたか否かが判断される。具体的には、検出機器10によって建物2に出入りする人の行動データが検出され、その行動データを基に、人の行動に変化が起きたか否かが判断される。例えば、検出機器10として携帯情報端末の位置検索機能を用いて、行動データとして、携帯情報端末を所持している人の位置情報が検出される。それとともに、その携帯情報端末を所持している人の位置情報が建物2の中に入った場合に、人の行動に変化が起きたと判断される。あるいは、携帯情報端末を所持している人が建物2の中から外に出た場合に、人の行動に変化が起きたと判断される。また、例えば、検出機器10として建物2に設置された監視カメラの撮像情報から、行動データとして、建物2に出入りする人(または、建物2の中に居る人)の人数が検出される。それとともに、建物2の中に居る人の人数が変化した場合に、人の行動に変化が起きたと判断される。
【0056】
未だ、人の行動に変化が起きていない、例えば、未だ、建物2の中で携帯情報端末を所持している人の人数が変化していない、あるいは、未だ、(監視カメラの撮像情報によって判定された)建物2の中に居る人の人数が変化していないことにより、このステップS21で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図4のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。それに対して、人の行動に変化が起きた、例えば、建物2の中で携帯情報端末を所持している人の人数が変化した、あるいは、(監視カメラの撮像情報によって判定された)建物2の中に居る人の人数が変化したことにより、ステップS21で肯定的に判断された場合には、ステップS22へ進む。
【0057】
ステップS22では、上記のようにしてステップS21で検出された人の行動データが、コントロールユニット8に送信される。例えば、検出機器10として携帯情報端末を所持している人の位置情報に基づく人の行動データが、コントロールユニット8の制御情報取得部22に送信される。あるいは、検出機器10として建物2に設置された監視カメラの撮像情報に基づく人の行動データが、コントロールユニット8の制御情報取得部22に送信される。
【0058】
このステップS22で、建物2に出入りする人の行動データがコントロールユニット8に送信されると、その後、この図4のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0059】
図5のフローチャートは、建物排気中の二酸化炭素濃度に関連する情報として、建物排気中の二酸化炭素濃度を、直接、検出する制御の例を示している。この図5のフローチャートで示す制御は、例えば、COセンサ9に備えられた(または、COセンサ9に連動する)マイクロコンピュータ(図示せず)で実行される。図5に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS31では、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度(または、建物2の中の二酸化炭素濃度)が変化したか否か、もしくは、COセンサ9により、建物排気中の二酸化炭素濃度(または、建物2の中の二酸化炭素濃度)が、新たに検出されたか否かが判断される。具体的には、今回、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度が、前回、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度(前回値)と比較して、所定値以上変化しているか否かが判断される。または、二酸化炭素濃度の前回値がない場合は、COセンサ9によって、初回の建物排気中の二酸化炭素濃度が検出されたか否かが判断される。
【0060】
未だ、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度に所定値以上の変化が起きていないこと、または、未だ、COセンサ9によって初回の建物排気中の二酸化炭素濃度が検出されていないことにより、このステップS31で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図5のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。それに対して、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度に所定値以上の変化が起きたこと、または、COセンサ9によって初回の建物排気中の二酸化炭素濃度が検出されたことにより、ステップS31で肯定的に判断された場合には、ステップS32へ進む。
【0061】
ステップS32では、上記のようにしてステップS31で検出された建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータが、コントロールユニット8に送信される。具体的には、建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータが、コントロールユニット8の制御情報取得部22に送信される。
【0062】
このステップS32で、建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータがコントロールユニット8に送信されると、その後、この図5のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0063】
図6のフローチャートは、上記の図4図5のフローチャートで示した制御で検出された各種データに基づいて、二酸化炭素回収装置4,31に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の例を示している。この図6のフローチャートで示す制御は、コントロールユニット8で実行される。図6に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS41では、各種情報を受信したか否かが判断される。具体的には、コントロールユニット8の制御情報取得部22で、検出機器10によって検出した建物2に出入りする人の行動データを受信したか否か、または、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータを受信したか否かが判断される。
【0064】
未だ、検出機器10によって検出した人の行動データを受信していないこと、または、未だ、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータを受信していないことにより、このステップS41で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図6のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。それに対して、検出機器10によって検出した人の行動データを受信したこと、または、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度に関するデータを受信したことにより、ステップS41で肯定的に判断された場合には、ステップS42へ進む。
【0065】
ステップS42では、上記のようにしてステップS41で受信した人の行動データ、または、建物排気中の二酸化炭素濃度の検出データに基づいて、流量調整機構7が制御される。例えば、人の行動データから推定される建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が増大するように、流量調整機構7が制御される。あるいは、COセンサ9によって検出された建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が増大するように、流量調整機構7が制御される。
【0066】
このステップS42で、流量調整機構7が制御され、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が調整されると、その後、この図6のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0067】
図7のフローチャートは、上記の図4図5のフローチャートで示した制御で検出された各種データに基づいて、受信した各種データをデータベースに保存する制御の例を示している。この図7のフローチャートで示す制御は、コントロールユニット8、および、コントロールユニット8と連動するデータベースで実行される。図7に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS51では、各種情報を受信したか否かが判断される。具体的には、コントロールユニット8の制御情報取得部22で、検出機器10によって検出した建物2に出入りする人の行動データを受信したか否か、または、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度の検出データを受信したか否かが判断される。
【0068】
未だ、検出機器10によって検出した人の行動データを受信していないこと、または、未だ、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度の検出データを受信していないことにより、このステップS51で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図7のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。それに対して、検出機器10によって検出した人の行動データを受信したこと、または、COセンサ9によって検出した建物排気中の二酸化炭素濃度の検出データを受信したことにより、ステップS51で肯定的に判断された場合には、ステップS52へ進む。
【0069】
ステップS52では、上記のようにしてステップS41で受信した人の行動データ、または、建物排気中の二酸化炭素濃度の検出データが、データベースに記録されて保存される。データベースは、例えば、コントロールユニット8、または、外部のサーバに設けられており、コントロールユニット8と相互にデータ通信が可能なように接続されている。
【0070】
このステップS52で、人の行動データ、または、建物排気中の二酸化炭素濃度の検出データがデータベースに保存されると、その後、この図7のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0071】
図8のフローチャートは、上記の図4図5図7のフローチャートで示した制御でデータベースに保存された各種データに基づいて、二酸化炭素回収装置4,31に送り込む建物排気の流入量を調整する制御の例を示している。この図8のフローチャートで示す制御は、コントロールユニット8、および、コントロールユニット8と連動するデータベースで実行される。図8に示すフローチャートにおいて、先ず、ステップS61では、前回、流量調整機構7の制御(流入量制御)を実行したタイミングから所定時間が経過したか否かが判断される。具体的には、コントロールユニット8の流入量算出部23および流入量制御部24で、前回、流量調整機構7の動作を制御して、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量を調整した時点から所定時間が経過したか否かが判断される。
【0072】
未だ、前回、流量調整機構7の制御を実行したタイミングから所定時間が経過していないことにより、このステップS61で否定的に判断された場合は、以降の制御を実行することなく、この図8のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。それに対して、前回、流量調整機構7の制御を実行したタイミングから所定時間が経過したことにより、ステップS61で肯定的に判断された場合には、ステップS62へ進む。
【0073】
ステップS62では、上記の図4図5図7のフローチャートで示した制御によってデータベースに保存された各種データに基づいて、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が算出され、その算出された建物排気の流入量を実現するように、流量調整機構7の動作が制御される。例えば、データベースに保存された各種データに基づいて、建物排気中の二酸化炭素濃度が推定され、その推定された建物排気中の二酸化炭素濃度が高いほど、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が多くなるように、流量調整機構7の動作が制御される。あるいは、推定された建物排気中の二酸化炭素濃度が高い時間帯は、推定された建物排気中の二酸化炭素濃度が高い時間帯と比較して、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が多くなるように、流量調整機構7の動作が制御される。あるいは、推定された建物排気中の二酸化炭素濃度が所定値未満である場合(例えば、建物2の中に人が居ないと推定される場合)は、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が0になるように、すなわち、建物排気の二酸化炭素回収装置4,31への流入を停止するように、流量調整機構7の動作が制御される。
【0074】
このステップS62で、流量調整機構7の動作が制御され、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量が調整されると、その後、この図8のフローチャートに示すルーチンを一旦終了する。
【0075】
以上のように、この発明の実施形態における二酸化炭素回収システム1では、例えば、スマートシティ6のような所定の地域あるいは区域内に設置された、複数の建物2と二酸化炭素回収装置4,31との間に流量調整機構7が設けられ、建物2から二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量がそれぞれ調整される。そのため、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素濃度に応じて、二酸化炭素回収装置4,31に流入させる建物排気の流入量を適切に調整することができる。したがって、この発明の二酸化炭素回収システム1によれば、二酸化炭素回収装置4,31における二酸化炭素の回収効率が高い状態で、その二酸化炭素回収装置4,31を稼働させることができる。そのため、建物2から排出される建物排気中の二酸化炭素を、効率よく、適切に回収することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 二酸化炭素回収システム
2 建物
3 (建物と二酸化炭素回収装置との間の)流路
4 二酸化炭素回収装置(CO回収装置)
5 二酸化炭素貯蔵設備(COタンク)
6 スマートシティ
7 流量調整機構 (バルブ機構、送風機器)
8 コントロールユニット
9 COセンサ
10 検出機器
11 (二酸化炭素回収装置と二酸化炭素貯蔵設備との間の)流路
21 (コントロールユニットの)時間計測部
22 (コントロールユニットの)制御情報取得部
23 (コントロールユニットの)流入量算出部
24 (コントロールユニットの)流入量制御部
31 二酸化炭素回収装置(CO回収装置)
32 (建物と二酸化炭素回収装置との間の)流路
33 (二酸化炭素回収装置と二酸化炭素貯蔵設備との間の)流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8