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特許7533425表面性能評価装置、表面性能評価方法及び表面性能評価プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】表面性能評価装置、表面性能評価方法及び表面性能評価プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 13/00 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01N13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021181371
(22)【出願日】2021-11-05
(65)【公開番号】P2023069483
(43)【公開日】2023-05-18
【審査請求日】2023-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】矢野 正雄
(72)【発明者】
【氏名】庄司 哲也
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-078477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に液体を散布している動画であり、かつ撮像部が撮像した撮像画像を取得する取得部と、
前記被検体において散布された液体が拡散する拡散度合いを、前記取得部において取得された前記撮像画像に基づいて、前記液体が拡散した方向毎の度数分布として定量化し、更に前記度数分布に従って前記被検体の垂直/水平成分比を算出する定量化部と、
前記垂直/水平成分比を基に前記被検体の表面性能を評価する評価部と、
を備える表面性能評価装置。
【請求項2】
記評価部は、前記垂直/水平成分比が閾値を超えるか否かによって表面性能を評価する請求項1に記載の表面性能評価装置。
【請求項3】
前記撮像画像は、前記被検体を真横から撮像した動画である請求項2に記載の表面性能評価装置。
【請求項4】
被検体に液体を散布している動画であり、かつ撮像部が撮像した撮像画像を取得し、
前記被検体において散布された液体が拡散する拡散度合いを、取得された前記撮像画像に基づいて、前記液体が拡散した方向毎の度数分布として定量化し、更に前記度数分布に従って前記被検体の垂直/水平成分比を算出し、
前記垂直/水平成分比を基に前記被検体の表面性能を評価する、
処理をコンピュータが実行する表面性能評価方法。
【請求項5】
被検体に液体を散布している動画であり、かつ撮像部が撮像した撮像画像を取得し、
前記被検体において散布された液体が拡散する拡散度合いを、取得された前記撮像画像に基づいて、前記液体が拡散した方向毎の度数分布として定量化し、更に前記度数分布に従って前記被検体の垂直/水平成分比を算出し、
前記垂直/水平成分比を基に前記被検体の表面性能を評価する、
処理をコンピュータに実行させるための表面性能評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性能評価装置、表面性能評価方法及び表面性能評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、基板ガラス表面のぬれ性試験方法が開示されている。当該試験は、基板ガラスに付着した液体の接触角を画像解析により評価する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】JIS R 3257:1999基板ガラス表面のぬれ性試験方法
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1の評価方法では、ぬれ性などの表面性能の評価に時間が掛かったり評価者によるばらつきが生じたりするため、データ駆動型材料開発に向いていなかった。データ駆動型材料開発では、高速で評価者に依存しない表面性能の定量値を取得することが必要である。
【0005】
本発明は、液体に暴露されている被検体から拡散する液体の拡散度合いを定量化することにより、評価者に依存しない表面性能を取得可能な表面性能評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の表面性能評価装置は、被検体に液体を散布している動画であり、かつ撮像部が撮像した撮像画像を取得する取得部と、前記被検体において散布された液体が拡散する拡散度合いを、前記取得部において取得された前記撮像画像に基づいて定量化する定量化部と、前記定量化部において定量化された指数を基に前記被検体の表面性能を評価する評価部と、を備えている。
【0007】
請求項1に記載の表面性能評価装置は、取得部が被検体に液体を散布している動画を撮像画像として取得すると、定量化部が当該撮像画像に基づいて液体の拡散度合いを定量化し、評価部が定量化された指数を基に被検体の表面性能を評価する。当該表面性能評価装置によれば、液体に暴露されている被検体から拡散する液体の拡散度合いを定量化することにより、評価者に依存しない表面性能を取得することができる。
【0008】
請求項2に記載の表面性能評価装置は、請求項1に記載の表面性能評価装置において、前記定量化部は、所定時間中に前記液体が拡散した方向毎の度数分布に基づいて前記指数を算出し、前記評価部は、前記指数が閾値を超えるか否かによって表面性能を評価する。
【0009】
請求項2に記載の表面性能評価装置では、定量化部による定量化により算出された指数が、閾値を超えるか否かによって評価部が表面性能を評価する。当該表面性能評価装置における指数は、所定時間中に液体が拡散した方向毎の度数分布に基づいて算出される。すなわち、当該表面性能評価装置によれば、所定時間中の度数分布に基づいて定量化することで、連続した期間の表面性能を取得することができる。
【0010】
請求項3に記載の表面性能評価装置は、請求項2に記載の表面性能評価装置において、前記撮像画像は、前記被検体を真横から撮像した動画である。
【0011】
請求項3に記載の表面性能評価装置では、被検体を真横から撮像することで、被検体上における液体の拡散方向と、撮像画像上における液体の移動方向と、を揃えることができる。そのため、当該表面性能評価装置によれば、液体の拡散状態をレーダーチャートにした場合における、レーダーチャートと撮像画像との見た目の相関を図ることができる。
【0012】
請求項4に記載の表面性能評価方法は、被検体に液体を散布している動画であり、かつ撮像部が撮像した撮像画像を取得し、前記被検体において散布された液体が拡散する拡散度合いを、取得された前記撮像画像に基づいて定量化し、定量化された指数を基に前記被検体の表面性能を評価する、処理をコンピュータが実行する。
【0013】
請求項4に記載の表面性能評価方法は、コンピュータが被検体に液体を散布している動画を撮像画像として取得すると、当該撮像画像に基づいて液体の拡散度合いを定量化し、この定量化された指数を基に被検体の表面性能を評価する。当該表面性能評価方法によれば、液体に暴露されている被検体から拡散する液体の拡散度合いを定量化することにより、評価者に依存しない表面性能を取得することができる。
【0014】
請求項5に記載の表面性能評価プログラムは、被検体に液体を散布している動画であり、かつ撮像部が撮像した撮像画像を取得し、前記被検体において散布された液体が拡散する拡散度合いを、取得された前記撮像画像に基づいて定量化し、定量化された指数を基に前記被検体の表面性能を評価する、処理をコンピュータに実行させる。
【0015】
請求項5に記載の表面性能評価プログラムは、コンピュータに次の処理を実行させる。コンピュータが被検体に液体を散布している動画を撮像画像として取得すると、当該撮像画像に基づいて液体の拡散度合いを定量化し、この定量化された指数を基に被検体の表面性能を評価する。当該表面性能評価プログラムによれば、液体に暴露されている被検体から拡散する液体の拡散度合いを定量化することにより、評価者に依存しない表面性能を取得することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、液体に暴露されている被検体から拡散する液体の拡散度合いを定量化することにより、評価者に依存しない表面性能を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る評価システムの概略構成を示す図である。
図2】第1の実施形態の評価システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態のROMの構成を示すブロック図である。
図4】第1の実施形態のストレージの構成を示すブロック図である。
図5】第1の実施形態のCPUの機能構成を示すブロック図である。
図6】第1の実施形態の定量化処理の流れを示すフローチャートである。
図7】第1の実施形態における被検体の撮像画像の例である。
図8A】第1の実施形態における色調変換した撮像画像であって、吸着性が高い評価の場合の例である。
図8B】第1の実施形態における色調変換した撮像画像であって、吸着性が低い評価の場合の例である。
図9A】第1の実施形態における油滴の拡散度合いを示すレーダーチャートであって、吸着性が高い評価の場合の例である。
図9B】第1の実施形態における油滴の拡散度合いを示すレーダーチャートであって、吸着性が低い評価の場合の例である。
図10】第1の実施形態の評価処理の流れを示すフローチャートである。
図11】フレーム数と垂直/水平成分比との関係を示す図である。
図12】第2の実施形態に係る評価システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
(構成)
図1に第1の実施形態の評価システム10を示す。本実施形態の評価システム10は、被検体である壁面Cに液体である油滴Dを散布した場合における壁面Cの表面性能を評価する装置である。本実施形態において評価される表面性能は、壁面Cに対する油滴Dの吸着性である。この吸着性は、親油性、撥油性、防油性、親水性、表面性能、防水性等を総合的に加味した性能である。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態の評価システム10は、表面性能評価装置としての処理装置20と、撮像部としてのカメラ22と、表示部としてのモニタ24とを含んで構成されている。カメラ22は、壁面Cを撮像可能にする配置で固定されている。
【0020】
図2に示されるように、処理装置20は、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、ストレージ20D、通信I/F(Inter Face)20E及び入出力I/F20Fを含んで構成されている。CPU20A、ROM20B、RAM20C、ストレージ20D、通信I/F20E及び入出力I/F20Fは、バス20Gを介して相互に通信可能に接続されている。
【0021】
CPU20Aは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU20Aは、ROM20B又はストレージ20Dからプログラムを読み出し、RAM20Cを作業領域としてプログラムを実行する。
【0022】
ROM20Bは、各種プログラム及び各種データを記憶している。図3に示されるように、本実施形態のROM20Bは、表面性能評価プログラム100、及び設定データ110を記憶している。表面性能評価プログラム100は、後述する解析処理を実行するプログラムである。設定データ110は、解析処理において積算時間となるフレーム数及び閾値等の値が規定されたデータである。なお、表面性能評価プログラム100及び設定データ110は、ストレージ20Dに記憶されていてもよい。
【0023】
図2に示されるように、RAM20Cは、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0024】
ストレージ20Dは、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、各種プログラム及び各種データを記憶している。図4に示されるように、本実施形態のストレージ20Dは、動画データ120、及び評価結果データ130を記憶している。動画データ120には、カメラ22により撮像された撮像画像Mである動画の画像データが記憶されている。評価結果データ130には、壁面Cの表面性能の評価結果についてのデータが記憶されている。なお、動画データ120及び評価結果データ130は、ROM20Bに記憶されていてもよい。
【0025】
図2に示されるように、通信I/F20Eは、外部の装置と接続するためのインタフェースである。
【0026】
入出力I/F20Fは、カメラ22及びモニタ24と通信するためのインタフェースである。なお、カメラ22及びモニタ24は、バス20Gに対して直接接続されていてもよい。
【0027】
図5に示されるように、本実施形態の処理装置20では、CPU20Aが、表面性能評価プログラム100を実行することで、取得部200、定量化部210、評価部220及び出力部230として機能する。
【0028】
取得部200は、カメラ22により撮像された撮像画像Mを取得する機能を有している。具体的に、取得部200は、撮像画像Mとしてカメラ22から壁面Cに油滴Dが散布されている動画を取得する。
【0029】
定量化部210は、壁面Cに散布された油滴Dが拡散する拡散度合いを定量化する機能を有している。定量化部210は、撮像画像Mにおいて拡散された油滴Dをベクトル化し、当該ベクトル化した情報に基づいて所定フレーム中に油滴Dが拡散した方向毎の度数分布であるヒストグラムを得る。そして、定量化部210は、ヒストグラムからレーダーチャートを作成し、当該レーダーチャートの情報から壁面Cの垂直/水平成分比を評価指数として算出する。ここで、垂直/水平成分比とは、壁面C上の油滴Dにおける、壁面Cに沿って移動した部位(つまり、水平成分)の頻度に対する、壁面Cから遠ざかる方向又は近づく方向に移動した部位(つまり、垂直成分)の頻度の比率である。
【0030】
評価部220は、定量化部210において定量化された評価指数を基に壁面Cの表面性能を評価する機能を有している。評価部220は、評価指数が閾値を超えた場合に吸着性を「低吸着性」と判定し、評価指数が閾値以下の場合に吸着性を「高吸着性」と判定する。
【0031】
出力部230は、定量化部210においてベクトル化された油滴Dの撮像画像Mをモニタ24に出力する機能を有している。
【0032】
(制御の流れ)
本実施形態の処理装置20において実行される解析処理の流れについて、図6及び図10のフローチャートを用いて説明する。処理装置20における処理は、CPU20Aが、上述した取得部200、定量化部210、評価部220及び出力部230として機能することにより実現される。解析処理は、取得処理、定量化処理及び評価処理を含む。
【0033】
処理装置20において解析処理が開始されると、CPU20Aは、取得処理を実行し、カメラ22から壁面Cを撮像した撮像画像Mの取得を開始する。この撮像画像Mは、壁面Cに散布された油滴Dが壁面Cを拡散する動画である。
【0034】
なお、本実施形態における解析処理に際し、壁面Cは床面に対して45度傾けて配置されており、カメラ22は、壁面Cに対して真横から撮像している。また、油滴Dは、壁面Cに対して垂直方向に散布される。すなわち、図7に示されるように、撮像画像Mにおいて、壁面Cは左上から右下にかけての水平方向Hに沿って配置されており、油滴Dは右上から垂直方向Vに沿って壁面Cに散布される。
【0035】
そして、CPU20Aは、取得処理と共に定量化処理及び評価処理を実行する。定量化処理では、CPU20Aは、壁面Cに衝突した油滴Dを撮像した撮像画像Mを基に、油滴Dの水平成分(水平方向H)の移動頻度に対する垂直成分(垂直方向Vを含む方向)の移動頻度を垂直/水平成分比として定量化する。さらに、評価処理において、垂直/水平成分比を基に吸着性を評価する。
【0036】
まず、図6の定量化処理について説明する。
図6のステップS100において、CPU20Aは取得した撮像画像Mの最初のフレームから油滴D上の点を特徴点として抽出する。
【0037】
ステップS101において、CPU20Aは撮像画像Mの現在のフレームと次のフレームとの間における油滴Dの移動をベクトル化する。これにより、CPU20Aは、油滴Dにおける各特徴点の移動方向と移動距離を抽出する。
【0038】
ステップS103において、CPU20Aはベクトル化した撮像画像Mをモニタ24に表示させる。図8A及び図8Bは、図7に示した撮像画像Mにおいて、壁面Cに衝突した油滴Dが移動する様子をベクトル化した例である。図8A及び図8Bにおける撮像画像M上の矢印により、各特徴点のベクトルが示されている。
【0039】
なお、CPU20Aは、ステップS101において得られたベクトルを色調変換し、ステップS103において、油滴Dの各特徴点の移動方向及び距離を撮像画像Mに対して色相及び明度で示してもよい。この場合、CPU20Aは、油滴Dの各特徴点のベクトルをhsv形式の色相と明度に変換する。すなわち、油滴Dが移動する方向を0~360度の範囲で表される色相に置き換えて、油滴Dが移動する距離を0~100%の範囲で表される明度に置き換える。
【0040】
ステップS104において、CPU20Aはベクトル化した油滴Dの特徴点の動きを所定フレーム間積算した場合の方向別のヒストグラムを作成する。
【0041】
ステップS105において、CPU20Aはヒストグラムに基づいてレーダーチャートを作成する。これにより、図9A及び図9Bに示されるような、レーダーチャートが作成される。各図においては、45度-225度の方向が壁面Cにおける水平方向Hに対応し、135度-315度の方向が壁面Cに対する垂直方向Vに対応する。
【0042】
ステップS106において、CPU20Aは、評価指数として垂直/水平成分比を算出する。そして、ステップS100に戻る。
【0043】
以上、CPU20Aは解析処理の実行中はステップS100~ステップS106の定量化処理を繰り返す。
【0044】
次に、図10の評価処理について説明する。
図10のステップS200において、CPU20Aは評価指数としての垂直/水平成分比が1.1を超えているか否かを判定する。垂直/水平成分比が1.1を超えていると判定した場合(ステップS200でYの場合)、ステップS201に進む。一方、CPU20Aは垂直/水平成分比が1.1を超えていない、つまり、1.1以下であると判定した場合(ステップS200でNの場合)、ステップS202に進む。
【0045】
ステップS201において、CPU20Aは表面性能が「低吸着性」であると判定し、当該判定結果を評価結果データ130に記憶する。そして、評価処理は終了する。
【0046】
ステップS202において、CPU20Aは表面性能が「高吸着性」であると判定し、当該判定結果を評価結果データ130に記憶する。そして、評価処理は終了する。
【0047】
(実施形態のまとめ)
本実施形態の処理装置20は、取得部200が壁面Cに油滴Dを散布している動画を撮像画像Mとして取得すると、定量化部210が撮像画像Mに基づいて油滴Dの拡散度合いを定量化し、評価部220が定量化された指数を基に被検体の吸着性を評価する。具体的に、壁面Cに散布した油滴Dが壁面Cの上を拡散すると、カメラ22が撮像した壁面Cの撮像画像Mを基に、定量化部210は撮像画像Mに写る油滴Dの動きをベクトル化し、撮像フレーム間における方向別のヒストグラムを作成する。さらに、定量化部210は、ヒストグラムに基づいてレーダーチャートを作成し、レーダーチャートの垂直/水平成分比を評価指数として算出する。そして、評価部220は、垂直/水平成分比が閾値である1.1を超えているか否かで吸着性の良否を判定する。
【0048】
図9Aは吸着性が高吸着性と判定された例であるが、油滴Dの壁面Cからの跳ね返りが少なく、垂直/水平成分比が1.1を下回っている。図8Aは、図9Aの例において、垂直/水平成分比の算出の基となった撮像画像Mにおける1つのフレームをベクトル化し、モニタ24に表示させた例である。図8Aに示されるように、油滴Dは、右下略2/3が水平方向Hのベクトルで占められており、左上略1/3においてのみ垂直方向Vの成分を有するベクトルが存在する。このことから、油滴Dが水平方向Hに広く拡散され、壁面Cに対して吸着され易い状況が視覚でも観察できる。
【0049】
図9Bは吸着性が低吸着性と判定された例であるが、油滴Dの壁面Cからの跳ね返りが多く、垂直/水平成分比が1.1を超えている。図8Bは、図9Bの例において、垂直/水平成分比の算出の基となった撮像画像Mにおける1つのフレームをベクトル化し、モニタ24に表示させた例である。図8Bに示されるように、油滴Dは、壁面C付近に水平方向Hのベクトルが存在するものの、壁面Cから離れた位置では垂直方向Vの成分を有するベクトルが占めている。このことから、油滴Dが水平方向Hに拡散されておらず、壁面Cに対して吸着され難い状況が視覚でも観察できる。
【0050】
以上のように、本実施形態の処理装置20によれば、油滴Dに暴露されている壁面Cから拡散する油滴Dの拡散度合いを評価指数である垂直/水平成分比として定量化することにより、評価者に依存しない表面性能を取得することができる。特に、評価指数は、所定フレーム中に油滴Dが拡散した方向毎のヒストグラムに基づいて算出されるため、本実施形態によれば、連続した期間の表面性能を取得することができる。また、撮像画像Mにおける油滴Dをベクトル化することにより、目視で油滴Dの動きを観察する場合に比べて、視覚により油滴Dの動きと拡散状況を観察することができる。さらに、本実施形態によれば、人の評価によらず、壁面Cの吸着性(より具体的には親油性、撥油性、防油性、親水性、表面性能、防水性等)の微妙な違いを評価できるため、データ駆動型材料開発に向いている。
【0051】
なお、処理装置20では、ヒストグラム及びレーダーチャートを作成するための積算時間として、所定フレーム間の油滴Dのベクトルを用いている。しかし、これに限らず、評価に適した任意の時間を積算時間に設定することができる。例えば、図11に示されるように、解析処理の開始から8~13フレーム前後の積算時間を設定することにより、表面性能の良否を明瞭に判定することができる。
【0052】
また、本実施形態では、垂直/水平成分比が閾値1.1を超えるか否かで表面性能としての吸着性の良否を判定していたが、この限りではなく、解析ニーズに応じて任意の値を設定してもよい。
【0053】
さらに、本実施形態では、レーダーチャートの垂直/水平成分比を評価指数としたが、これに限らず、レーダーチャートから求められる面積などを評価指数としてもよい。この場合、面積である評価指数が予め設定した閾値を超えるか否かにより、表面性能を判定することができる。
【0054】
[第2の実施形態]
第2の実施形態は、評価システム10の構成が第1の実施形態と相違する。以下、第1の実施形態との相違点について説明する。なお、その他の構成については、第1の実施形態と同様であり、詳細な説明は省略する。
【0055】
図12に示されるように、本実施形態の評価システム10は、処理装置20と、収集装置40と、複数の端末42を含んで構成されている。処理装置20、収集装置40及び端末42は、ネットワークNを通じて相互に接続されている。本実施形態の処理装置20は、例えば、クラウドサーバとすることができる。本実施形態の収集装置40には少なくともカメラ22が接続されている。端末42は、例えば、パーソナルコンピューターである。
【0056】
本実施形態の評価システム10では、収集装置40がカメラ22により撮像された壁面Cの撮像画像Mを収集し、処理装置20に向けて当該撮像画像Mをアップロードすることにより、処理装置20が表面性能の評価を行う。一方、端末42は、処理装置20から取得した評価結果、及びベクトル化された油滴Dの撮像画像Mを表示することができる。これにより、試験場所から離れた場所において、壁面Cの評価作業を行うことができる。
【0057】
その他、本実施形態は第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0058】
[備考]
なお、上記各実施形態でCPU20Aがソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した各種処理を、CPU以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が例示される。また、上述した各処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせ等)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0059】
また、上記各実施形態において、各プログラムはコンピュータが読み取り可能な非一時的記録媒体に予め記憶(インストール)されている態様で説明した。例えば、処理装置20における表面性能評価プログラム100は、ROM20Bに予め記憶されている。しかしこれに限らず、各プログラムは、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の非一時的記録媒体に記録された形態で提供されてもよい。また、プログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0060】
上記実施形態で説明した処理の流れも、一例であり、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
20 処理装置(表面性能評価装置)
22 カメラ(撮像部)
100 表面性能評価プログラム
200 取得部
210 定量化部
220 評価部
C 壁面(被検体)
D 油滴(液体)
M 撮像画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11
図12