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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04664 20160101AFI20240806BHJP
   H01M 8/249 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/04955 20160101ALI20240806BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/249
H01M8/0432
H01M8/04955
H01M8/04746
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021198683
(22)【出願日】2021-12-07
(65)【公開番号】P2023084484
(43)【公開日】2023-06-19
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江川 稔弘
(72)【発明者】
【氏名】奥村 真己人
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 敦雄
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 久也
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-136205(JP,A)
【文献】特開2016-110954(JP,A)
【文献】特開2007-188667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00-8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の燃料電池ユニットと、
冷却器と、
制御器と、
を備えており、
夫々の前記燃料電池ユニットは、
燃料電池スタックと、
前記冷却器から前記燃料電池スタックへ冷媒を送る供給路と、
前記燃料電池スタックを通過した前記冷媒を前記冷却器へ戻す復路と、
前記復路と前記供給路を接続しており、前記復路の前記冷媒を前記供給路へ戻す環流路と、
前記復路を流れる前記冷媒の流れ先を前記冷却器と前記環流路のいずれかに設定する切換弁と、
前記供給路と前記環流路の合流点の上流側で前記供給路の前記冷媒の温度を計測する第1温度センサと、
前記合流点の下流側で前記供給路の前記冷媒の温度を計測する第2温度センサと、
前記復路の前記冷媒の温度を計測する第3温度センサと、
を備えており、
前記制御器は、複数の前記燃料電池ユニットの前記第1温度センサの計測値が異なっていたら、前記第1温度センサの異常を通知する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記制御器は、複数の前記第1温度センサの計測値が一致していた場合、夫々の前記燃料電池ユニットにおいて前記環流路に前記冷媒が流れないように前記切換弁を制御し、前記第1温度センサと前記第2温度センサの計測値が異なっていたら、前記第2温度センサの異常を通知する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御器は、夫々の前記燃料電池ユニット内の前記第1温度センサと前記第2温度センサの計測値が一致していた場合、夫々の前記燃料電池ユニットにおいて、前記第2温度センサの計測値と前記燃料電池スタックの出力から前記燃料電池スタック出口における前記冷媒の推定温度を算出し、前記第3温度センサの計測値と前記推定温度が異なっていたら、前記第3温度センサの異常を通知する、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御器は、夫々の前記燃料電池ユニットにおいて、前記第2温度センサまたは前記第3温度センサの計測値をチェックしている間、前記燃料電池スタックへ前記冷媒を送るポンプを最大出力で駆動する、請求項1から3のいずれか1項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御器は、複数の前記燃料電池ユニットの前記第1温度センサの計測値が一致していた場合、
(1)特定の前記燃料電池ユニットを停止し、
(2)目標出力を実現するように残りの前記燃料電池ユニットを稼働し、
(3)特定の前記燃料電池ユニットの前記第1温度センサと前記第2温度センサと前記第3温度センサの計測値を比較し、他の2個の計測値と異なる計測値を出力した温度センサの異常を通知する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、複数の燃料電池スタックを備えている燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に、複数の燃料電池スタックを備える燃料電池システムが開示されている。燃料電池スタックは発電中に発熱するため、燃料電池システムは複数の燃料電池スタックを冷却する冷却器を備える。特許文献1の燃料電池システムは、複数の燃料電池スタックに対して1個の共通の冷却器を備えている。1個の冷却器から供給される冷媒が複数の燃料電池スタックに分配される。特許文献2の燃料電池システムは、燃料電池スタックの数と同数の冷却器を備えており、夫々の冷却器が対応する燃料電池スタックを冷却する。
【0003】
なお、説明を簡単にするため、以下では、「燃料電池」を「FC」と略記する。すなわち、「燃料電池システム」は「FCシステム」と略記し、「燃料電池ユニット」は「FCユニット」と表記し、「燃料電池スタック」は「FCスタック」と略記する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-93349号公報
【文献】特開2020-136205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
FCスタックの温度を適切な温度範囲に保持するため、FCシステムは、夫々のFCスタックに供給される冷媒の温度、及び、各FCスタックを通過した冷媒の温度を計測する温度センサを備える。温度センサが故障するとFCスタックを適切に冷却できなくなる。本明細書は、複数のFCユニット(FCスタック)を備えるFCシステムに関し、各FCユニットが備える温度センサをチェックする技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示するFCシステムは、複数のFCユニットと、冷却器と、制御器を備える。各FCユニットは、FCスタックと、冷媒が流れる供給路/復路/環流路と、切換弁と、第1-第3温度センサを備える。供給路は、冷却器からFCスタックへ冷媒を送る。復路は、FCスタックを通過した冷媒を冷却器へ戻す。環流路は、復路と供給路を接続しており、復路の冷媒を供給路へ戻す。切換弁は、復路を流れる冷媒の流れ先を冷却器と環流路のいずれかに設定する。第1温度センサは、供給路と環流路の合流点の上流側で供給路の冷媒の温度を計測する。第2温度センサは、合流点の下流側で供給路の冷媒の温度を計測する。第3温度センサは、復路の冷媒の温度を計測する。制御器は、複数の冷却器の第1温度センサの計測値が異なっていたら、第1温度センサの異常を通知する。「異常を通知する」とは、第1温度センサで異常が発生したことを示す信号を、他のコンピュータあるいは表示装置に送信することを意味する。
【0007】
制御器は、複数のFCユニットの第1温度センサの計測値が一致していた場合、夫々のFCユニットに対して次の処理を行う。すなわち制御器は、環流路に冷媒が流れないように切換弁を制御し、第1温度センサと第2温度センサの計測値が異なっていたら、第2温度センサの異常を通知する。さらに制御器は、夫々のFCユニットの第1温度センサと第2温度センサの計測値が一致していた場合、夫々のFCユニットで次の処理を行う。すなわち制御器は、第2温度センサの計測値とFCスタックの出力からFCスタック出口における冷媒の推定温度を算出する。制御器は、第3温度センサの計測値と推定温度が異なっていたら、第3温度センサの異常を通知する。
【0008】
以上の処理により、各FCユニットが備える第1-第3温度センサをチェックすることができる。本明細書が開示する技術の詳細とさらなる改良は以下の「発明を実施するための形態」にて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例の燃料電池システムのブロック図である。
図2】温度センサチェック処理のフローチャートである。
図3】温度センサチェック処理のフローチャートである(図2の続き)。
図4】変形例の温度センサチェック処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して実施例のFCシステム2を説明する。先に述べたように、「FC」は燃料電池の略記である。図1に、FCシステム2のブロック図を示す。制御器7と各種のデバイス(FCスタック11、昇圧コンバータ12、ポンプ24、切換弁25、温度センサ31-33など)は、通信線で接続されているが、通信線の図示は省略してある。
【0011】
FCシステム2は、3個のFCスタック11で発電する電源であり、システム出力端3から他のデバイスへ電力を供給することができる。
【0012】
FCシステム2は、3個のFCユニット10a-10cと、冷却器4と、制御器7を備える。3個のFCユニット10a-10cは同じ構造を有している。3個のFCユニット10a-10cを区別なく表す場合はFCユニット10と表記する場合がある。
【0013】
夫々のFCユニット10はFCスタック11と冷媒回路20を備えている。夫々のFCスタック11が発電する。夫々のFCユニット10において、冷媒回路20は冷却器4から冷たい冷媒を受け取り、FCスタック11を冷却する。冷媒回路20はFCスタック11を通過した冷媒を冷却器4へ戻す。冷却器4は、冷媒の熱を大気へ放出するラジエータである。
【0014】
夫々のFCスタック11には昇圧コンバータ12が付随している。FCスタック11の電力出力端に昇圧コンバータ12が接続されており、昇圧コンバータ12の出力端はシステム出力端3に接続されている。昇圧コンバータ12は、FCスタック11が生成した直流電力を昇圧してシステム出力端3に供給する。複数のFCスタック11が生成した電力は、システム出力端3から他のデバイスへ供給される。複数のFCスタック11の出力電圧が相違しても、昇圧コンバータ12の出力電圧を揃えることで、複数のFCスタック11の出力を加算してシステム出力端3から出力することができる。交流駆動のデバイスへ電力を供給する場合にはデバイスとシステム出力端3の間にインバータが接続される。
【0015】
夫々のFCスタック11では燃料ガス(水素ガス)と空気(酸素)が反応して電力が生成される。制御器7が、夫々のFCスタック11に供給する燃料ガスと空気の量を制御することで、所望の電力が得られる。夫々のFCスタック11に燃料ガスと空気を供給するデバイスは図示を省略した。
【0016】
夫々のFCスタック11は発電中に温度が上昇する。FCシステム2は、FCスタック11と同数の冷媒回路20を備えており、夫々の冷媒回路20が対応するFCスタック11を個別に冷却することができる。
【0017】
FCシステム2は、複数の冷媒回路20(複数のFCユニット10a-10c)を備えているが、複数の冷媒回路20は、一つの冷却器4を共有する。冷却器4には共通供給路5と共通復路6が連結されており、共通供給路5が複数の冷媒回路20へ冷媒を供給し、共通復路6は、複数の冷媒回路20から出た冷媒(FCスタック11を通過した冷媒)を冷却器4へ戻す。
【0018】
複数のFCユニット10は同じ構造の冷媒回路20を備えている。夫々の冷媒回路20は、供給路21、復路22、環流路23、ポンプ24、切換弁25、流体継手26、温度センサ31-33を備えている。供給路21は、冷却器4から対応するFCスタック11へ冷媒を供給する。復路22は、FCスタック11を通過した冷媒を冷却器4に戻す。供給路21は共通供給路5を介して冷却器4と連通しており、復路22は共通復路6を介して冷却器4と連通している。先に述べたように、FCスタック11を通過した冷媒の熱は、冷却器4で大気に放出され、再びFCスタック11へ送られる。
【0019】
環流路23は供給路21と復路22を連結している。環流路23は、復路22の冷媒(FCスタック11を通過した冷媒)を供給路21へ戻す。環流路23と復路22の連結箇所に切換弁25が配置されている。切換弁25は、復路22を流れる冷媒の流れ先を冷却器4と環流路23のいずれかに設定する。切換弁25は制御器7によって制御される。環流路23と供給路21は流体継手26で連結されている。
【0020】
供給路21にポンプ24が配置されている。ポンプ24が、冷媒をFCスタック11へ圧送する。制御器7がポンプ24を制御する。ポンプ24の出力を調整することで、FCスタック11に送られる冷媒の流量(すなわち、冷却能力)が調整される。
【0021】
供給路21には2個の温度センサ(第1温度センサ31と第2温度センサ32)が配置されている。第1温度センサ31は、環流路23と供給路21の合流点(流体継手26)の上流側に配置されており、第2温度センサ32は、合流点(流体継手26)の下流側に配置されている。別言すれば、第1温度センサ31は、合流点(流体継手26)と冷却器4の間で供給路21に配置されており、第2温度センサ32は、合流点(流体継手26)とFCスタック11の間で供給路21に配置されている。第1温度センサ31は、冷却器4から供給される冷媒の温度を計測する。第2温度センサ32は、FCスタック11に流れ込む冷媒の温度を供給する。第1温度センサ31と第2温度センサ32の間に合流点(流体継手26)が位置する。FCスタック11を通過した冷媒が環流路23を通じて供給路21に流れ込む場合、第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値が相違し得る。
【0022】
復路22には第3温度センサ33が配置されている。第3温度センサ33は、復路22を流れる冷媒の温度(すなわち、FCスタック11を通過した冷媒の温度)を計測する。第3温度センサ33の計測値は、FCスタック11の温度の近似値として扱われる。
【0023】
制御器7は、第3温度センサ33の計測値(FCスタック11の近似温度)が所定の許容温度範囲内となるようにポンプ24の出力を調整する。また、制御器7は、第2温度センサ32の計測値(FCスタック11に流れ込む冷媒の温度)が低い場合は、FCスタック11を通過した冷媒が再びFCスタック11に戻るように、切換弁25を制御し、復路22の冷媒の流れ先を環流路23に設定する。FCスタック11を通過した冷媒を再びFCスタック11に戻すことで、FCスタック11の温度が極度に下がらないようにすることができる。
【0024】
先に述べたように、3個のFCユニット10a-10cは同じ構造を有しているため、他のFCユニット10b、10cの説明は省略する。
【0025】
FCシステム2の制御器7は、各FCユニット10の温度センサ31-33が正常であるか否か、定期的にチェックする。制御器7には、ディスプレイ8と上位制御器9が接続されており、いずれかの温度センサで異常が生じると、温度センサ異常を通知する信号をディスプレイ8と上位制御器9へ送信する。
【0026】
図2図3を参照し、制御器7が実施する温度センサチェック処理を説明する。制御器7は、少なくとも1個のFCスタック11が発電している間、図2、3の処理を定期的に実行する。制御器7は、温度センサチェック処理を実行している間でも、稼働しているFCユニット10に対しては、FCスタック11の温度(第3温度センサ33の計測値)が所定の許容温度範囲内となるように、ポンプ24の出力を調整する。制御器7には外部からFCシステム2の目標出力が与えられる。制御器7は、目標出力が実現されるように、複数のFCユニット10を運転する。
【0027】
図2は、3個のFCユニット10の第1温度センサ31の計測値を比較し、第1温度センサ31の異常の有無をチェックする処理のフローチャートである。
【0028】
制御器7は、全てのFCユニット10(全ての冷媒回路20)の第1温度センサ31の計測値を取得し、それらを比較する(ステップS12)。複数の第1温度センサ31は、共通の冷却器4から送られる冷媒の温度を計測する。それゆえ、複数の第1温度センサ31が全て正常であれば、複数の第1温度センサ31の計測値は一致する。いずれか1個の計測値が他の2個の計測値と相違すれば、その計測値を出力した第1温度センサ31が異常であると判断できる。制御器7は、複数の第1温度センサ31の計測値が一致する場合、複数の第1温度センサ31は正常であると判断する(ステップS13:YES)。1個の計測値が他の2個の計測値と相違する場合(ステップS13:NO)、制御器7は、故障した第1温度センサ31を特定し(ステップS14)、特定した第1温度センサ異常を通知する(ステップS15)。
【0029】
なお、制御器7は、2個の計測値の差が所定の許容差より小さい場合、「複数の計測値が一致する」と判断する。
【0030】
FCシステム2が3個以上のFCユニット10(すなわち、3個以上の第1温度センサ31)を有する場合、制御器7は、計測値の多数決により、異常の第1温度センサ31を特定することができる。すなわち、制御器7は、計測値が他の計測値から大きくずれている第1温度センサ31が異常であると判断することができる。
【0031】
FCシステム2が2個のFCユニット10(すなわち2個の第1温度センサ31)を有する場合、制御器7は、次の処理により異常な第1温度センサ31を特定する。すなわち、制御器7は、夫々のFCユニット10において、環流路23に冷媒が流れないように切換弁25を制御する。次いで、制御器7は、各FCユニット10において、第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値を比較する。環流路23に冷媒が流れていない場合、流体継手26の上流側と下流側で冷媒温度は等しい。第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値が相違する場合、制御器7は、第1温度センサ31が異常であると判断する。
【0032】
いずれかの第1温度センサ31で異常が発生した場合(ステップS13:NO)、制御器7は、温度センサチェック処理を終了し、第1温度センサ31の異常に対応したシステム運転に移行する。第1温度センサ31の異常に対応したシステム運転とは、例えば、次の通りである。制御器7は、異常な第1温度センサ31を含むFCユニット10を停止し、残りのFCユニット10で必要な電力を賄う。
【0033】
複数の第1温度センサ31の計測値が一致した場合、制御器7は、図3の処理に移行する。
【0034】
制御器7は、特定のFCユニット10にて、環流路23に冷媒が流れないように切換弁25を制御し、ポンプ24を最大出力で駆動する(ステップS22)。次いで制御器7は、特定のFCユニット10の第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値を比較する(ステップS23)。先に述べたように、環流路23に冷媒が流れないとき、流体継手26の上流と下流で冷媒温度は変わらない。従って、第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値が一致しない場合、制御器7は、第2温度センサ32が異常であると判断できる。制御器7は、第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値が一致しない場合(ステップS23:NO)、特定のFCユニット10の第2温度センサ32の異常を通知する(ステップS24)。一方、第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値が一致する場合、制御器7は、第2温度センサ32が正常であると判断する(ステップS23:YES)。ステップS23においても、第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値の差が所定の許容差より小さい場合、制御器7は、第1温度センサ31と第2温度センサ32の計測値が一致していると判断する。
【0035】
第2温度センサ32が正常であると判断した場合(ステップS23:YES)、制御器7は、FCスタック11の発熱量を推定する(ステップS25)。FCスタック11の発熱量は、FCスタック11の出力から推定することができる。制御器7は、第2温度センサ32の計測値と推定した発熱量から、FCスタック11の出口での冷媒の推定温度を算出する(ステップS26)。制御器7は、FCスタック11の推定温度と第3温度センサ33の計測値が一致する場合、第3温度センサ33も正常であると判断する(ステップS27:YES)。制御器7は、FCスタック11の推定温度と第3温度センサ33の計測値が一致しない場合、第3温度センサ33が異常であると判断し、第3温度センサ異常を通知する(ステップS27:NO、S28)。
【0036】
ステップS27の判断がYESの場合、制御器7は、特定のFCユニット10の3個の温度センサ31、32、33は全て正常であると判断する。制御器7は、全てのFCユニット10に対してステップS22からステップS28までの処理を実行する(ステップS29:NO、S22)。
【0037】
なお、第2温度センサ32の異常を検知した場合(ステップS23:NO)、または、第3温度センサ33の異常を検知した場合(ステップS27:NO)、制御器7は、温度センサの異常に対応したシステム運転に移行する。例えば、制御器7は、異常な第2温度センサ32(または第3温度センサ33)を含むFCユニット10を停止し、残りのFCユニット10で必要な電力を賄う。
【0038】
図2-3の処理により、制御器7は、全てのFCユニット10の全ての温度センサをチェックすることができる。
【0039】
(変形例)図4を参照して、変形例の温度センサチェック処理を説明する。図4の処理は、図3の処理の代わりに実行される。すなわち、複数のFCユニット10の第1温度センサ31の計測値を比較する処理(図2の処理)を実行した後、図4の処理が実行される。
【0040】
制御器7は、特定のFCユニット10を停止する(ステップS32)。「FCユニット10を停止する」とは、そのFCユニット10のFCスタック11の出力を停止することを意味する。すなわち、「FCユニット10を停止する」とは、そのFCユニット10のFCスタック11への燃料と酸素の供給を停止することを意味する。このとき、制御器7は、FCシステム2に与えられている目標出力が実現されるように、他のFCユニット10(他のFCスタック11)を駆動する(ステップS33)。従って、図4の処理は、目標出力が2個のFCユニット10で賄える場合にのみ、実行可能である。
【0041】
次に制御器7は、停止したFCユニット10の温度センサ31-33の計測値を比較する(ステップS34)。FCユニット10は停止しているので、供給路21と復路22のどこでも冷媒温度は同じである。それゆえ、温度センサ31-33の計測値が一致しない場合(ステップS35:NO)、制御器7は、他の計測値から離れている計測値を出力した温度センサが異常であると判断する。制御器7は異なる計測値を出力した温度センサの異常を通知する(ステップS36)。
【0042】
全ての計測値が一致した場合(ステップS35:YES)、制御器7は、温度センサ31-33は正常であると判断する。制御器7は、全てのFCユニット10に対してステップS32-S36の処理を実行する(ステップS37:NO、S32)。
【0043】
温度センサの異常が検知された場合、制御器7は、温度センサの異常に対応したシステム運転に移行する。温度センサの異常に対応したシステム運転の例は、次の通りである。制御器7は、異常が検知された温度センサを含むFCユニット10は停止したまま、残りのFCユニット10を稼働し、所定の出力を供給する。
【0044】
図4の処理によっても、各FCユニット10の温度センサ31-33の異常の有無をチェックすることができる。
【0045】
実施例で説明した技術に関する留意点を述べる。本明細書が開示するFCシステムは、並列に接続された4個以上のFCユニットを有していてもよい。
【0046】
図4のステップS35にて、第1温度センサ31または第2温度センサ32の異常が検知された場合、制御器7は、温度センサの異常を通知するが、異常の温度センサを含むFCユニット10を停止せずに運転を続けてもよい。第1温度センサ31または第2温度センサ32の一方が故障しても、他方が正常であれば、FCユニット10のFCスタック11の温度を概ね許容温度範囲に保持できるからである。但し、第1温度センサ31と第2温度センサ32のいずれかが異常である場合、制御器7は、異常の温度センサを含むFCユニット10の最大出力を制限する。また、制御器7は、温度センサで異常が発生したことを示す信号は出力する。
【0047】
図3のステップS26の処理において、FCスタック11の発熱量と第2温度センサ32の計測値に加え、FCスタック11を流れる冷媒の流量を使ってFCスタック11の出口での冷媒の推定温度を算出してもよい。流量も使うことで、FCスタック11の出口における冷媒の推定温度を高い精度で得ることができる。流量は、ポンプ24の出力から得られる。
【0048】
図2の処理を実行せず、夫々のFCユニットごとに図4の処理を実行してもよい。図4の処理により、温度センサ31-33のいずれかの異常を検知できるからである。
【0049】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0050】
2:FCシステム 3:システム出力端 4:冷却器 5:共通供給路 6:共通復路 7:制御器 8:ディスプレイ 9:上位制御器 10、10a-10c:FCユニット 11:FCスタック 12:昇圧コンバータ 20:冷媒回路 21:供給路 22:復路 23:環流路 24:ポンプ 25:切換弁 26:流体継手 31-33:温度センサ
図1
図2
図3
図4