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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 45/00 20060101AFI20240806BHJP
   G04B 19/04 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
G04B45/00 J
G04B19/04 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021208058
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023092823
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2022-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】水津 考
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-028363(JP,A)
【文献】特開平10-048351(JP,A)
【文献】特開2001-145309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の指針と、
円環状に構成され、前記第1の指針に固定される第1の磁性体と、
円環状に構成され、前記第1の磁性体に対向配置される第2の磁性体と、
前記第2の磁性体を固定する第1の軸体と、
前記第1の軸体と連動する第1の回転車を含む輪列機構と、
前記第1の軸体に配置され、且つ、前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体に挿通され、前記第1の磁性体を前記第1の軸体により回転可能に支持する支持部材と、を備える、
時計。
【請求項2】
記第1の指針と前記第1の軸体との少なくともいずれかが、非磁性材料で構成される、
請求項1に記載の時計。
【請求項3】
分針である第1の指針と、
円環状に構成され、前記第1の指針に固定される第1の磁性体と、
円環状に構成され、前記第1の磁性体に対向配置される第2の磁性体と、
前記第2の磁性体を固定する第1の軸体と、
前記第1の軸体と連動する第1の回転車を含む輪列機構と、を備え、
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体は、夫々径方向に磁化されて回転の周方向に分極され、
前記第1の磁性体の一方の極と、前記第2の磁性体の他方の極と、が対向配置される、
時計。
【請求項4】
前記第2の磁性体は、前記第2の磁性体が有する磁性により前記第1の磁性体を保持する、
請求項1乃至3のいずれかに記載の時計。
【請求項5】
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体は、周方向に異なる2つの極に分極している、
請求項3に記載の時計。
【請求項6】
前記支持部材は、前記第1の磁性体の回転の径方向の移動を規制する、
請求項1に記載の時計。
【請求項7】
第2の指針を備え、
前記輪列機構は、前記第2の指針が固定される第2の軸体を有する第2の回転車を含み、
前記第1の軸体と前記第2の軸体は同軸上に配置される、
請求項1に記載の時計。
【請求項8】
第3の指針を備え、
前記輪列機構は、前記第3の指針が固定される第3の軸体を有する第3の回転車を含み、
前記第1の軸体と前記第2の軸体と前記第3の軸体は同軸上に配置される、
請求項7に記載の時計。
【請求項9】
前記第1の指針は分針であり、
前記第2の指針及び前記第3の指針は、夫々時針と秒針とのいずれかであり、
前記第1の指針、前記第1の軸体、前記第2の指針、前記第2の軸体、前記第3の指針、及び前記第3の軸体の少なくともいずれかが非磁性材料で構成される、
請求項8に記載の時計。
【請求項10】
前記第1の指針及び前記第1の磁性体の裏側に配置される文字盤と、
前記文字盤の裏側に配置される耐磁板と、を備える、
請求項1乃至9のいずれかに記載の時計。
【請求項11】
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体は、前記第1の磁性体の一方の極と、前記第2の磁性体の他方の極と、が対向配置された状態で回転する、
請求項3に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計に関する。
【背景技術】
【0002】
腕時計などの時計は、ケースの内部に、各種部品を備える時計モジュールが収容される。時計モジュールは、文字盤、分針や時針等の指針、輪列機構、駆動源等を備える。輪列機構はいわゆる四番車、二番車、筒車等の複数の歯車部材を備え、これらの四番車、二番車、及び筒車の軸にそれぞれ、指針である秒針、分針、及び時針が設けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような指針の支持構造において、時計が落下などによる衝撃を受けた場合、針のアンバランスにより発生する回転モーメントが、四番車、二番車、筒車の軸を介して輪列機構及び駆動源で構成されるムーブメントに伝わることによるムーブメントの破損や、指針の指し示す位置がずれることによる時刻表示ずれの原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-258459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたもので、衝撃により、ムーブメントが破損することを防止でき、時刻表示ずれることも防止できる時計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態は、
第1の指針と、
円環状に構成され、前記第1の指針に固定される第1の磁性体と、
円環状に構成され、前記第1の磁性体に対向配置される第2の磁性体と、
前記第2の磁性体固定る第1の軸体と、
前記第1の軸体と連動する第1の回転車を含む輪列機構と、
前記第1の軸体に配置され、且つ、前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体に挿通され、前記第1の磁性体を前記第1の軸体により回転可能に支持する支持部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衝撃によりムーブメントが破損することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る時計の構成を示す平面図。
図2】同時計の構成を示す断面図。
図3】同時計の指針及び輪列機構の構成を示す説明図。
図4】同時計の磁性体の構成を示す説明図。
図5】他の実施形態に係る時計の指針及び輪列機構の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態にかかる時計10の構成について、図1乃至図4を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る時計の構成を示す平面図であり、図2は時計の構成を示す断面図である。図3は時計の指針及び輪列機構の構成を示す説明図であり、図4は時計の磁性体の構成を示す説明図である。なお、各図において、適宜構成を拡大、縮小、省略して概略的に示す。
【0010】
図1及び図2に示すように、時計10は、例えば腕時計であり、外郭を構成するケース11と、ケース11内に設けられた時計モジュール13と、時計モジュール13の表側を覆う時計ガラス15と、時計モジュール13の裏側を覆う裏蓋16と、ケース11の外周に配された1または複数のスイッチ17と、を備える。
【0011】
ケース11は、円環状の第1ケース11aと、第1ケース11aの外側に配置された第2ケース11bと、を備える。
【0012】
第1ケース11aは円環状に構成され、内部に時計モジュール13等を収容する円形の収容空間を有する。
【0013】
第1ケース11aの上部開口には時計モジュール13の文字盤20が配置される。文字盤20の外周部分であって、第1ケース11aの内周縁に、補強部材18aや見切り部材18bが配置される。また、第1ケース11aの裏面側の面には溝が形成され、この溝に裏蓋16との間を気密にする防水リング11dが装着される。
【0014】
第2ケース11bは第1ケース11aの外周に設けられる。第2ケース11bは、ビス11c等の接続部材によって第1ケース11aに固定されている。
【0015】
時計モジュール13は、第1ケース11aの収容空間に収容される。時計モジュール13は、文字盤20と、耐磁板50と、第1の指針である分針21と、第2の指針である時針22と、動力伝達部としての輪列機構23と、駆動源24と、を備える。また、時計モジュール13は、駆動方式によって、電池、ICやアンテナ等の電子部品を搭載した回路基板、などの時計の動作に必要な各種部品をさらに備える。
【0016】
文字盤20は、円板形状に構成され、第1ケース11aの収容空間内の上部に配置される。文字盤20は中心部分に、輪列機構23の一部を構成する第1の軸体41や第2の軸体45が挿入される貫通孔20aを有する。文字盤20の表面外周部分には、各種の時字14cが設けられた見切り部材18bが配置されている。
【0017】
分針21は、所定の幅及び長さに構成された第1針体31と、第1の磁性体としての従動磁石32と、を備える。
【0018】
第1針体31は、例えば細長い板状に構成され、回転の基端部に貫通孔である第1針孔31aを有する。第1針体31の第1針孔31aに、円環形状の従動磁石32が固定される。第1針体31は、収容空間内の文字盤20上において、回転軸C1を中心に回転可能に設けられる。
【0019】
第1針体31は、輪列機構23を介して駆動源24に接続され、その長手方向が表示する時刻に対応する方向を向くように回転運動する。
【0020】
図4に示すように従動磁石32は、例えば中心部に軸孔32aを有する円環形状に構成される。従動磁石32は例えばサマリウムコバルトなどの強磁性体で構成される。従動磁石32は径方向に磁化され、周方向において異なる2つの極を有する。例えば中心を通る径方向の分極ラインL1を境に、一方側がS極、他方側がN極に分極されている。従動磁石32は、軸孔32aに輪列機構23の一部である支持部材46が挿入され、支持部材46によって、回転可能に、支持される。
【0021】
輪列機構23は、駆動源24と分針21や時針22の配置に応じて適宜配置される複数の歯車部材を備える。一例として輪列機構23は、少なくとも、分針21に係合する第1の軸体41を有する第1の回転車としての分針用歯車42と、分針用歯車42に設けられる第2の磁性体としての駆動磁石43と、時針22に係合する第2の軸体45を有する第2の回転車としての時針用歯車44と、支持部材としての支持部材46と、を備える。輪列機構23は駆動源24とともに、針21,22を運針するムーブメントを構成する。
【0022】
分針用歯車42はいわゆる二番車と呼ばれる歯車部材であり、その回転中心に、回転軸C1に沿って延びる第1の軸体41を有する。分針用歯車42は、駆動源24によって回転することで、分針21を回転させる。
【0023】
第1の軸体41は、所定の第1方向に延びるロッド状の部材であり、分針用歯車42の回転中心に固定される。なお、他の部材との配置関係によって、第1の軸体41は中心部に他の軸部材が挿入可能な貫通孔を有する筒状に構成されていてもよい。なお、第1の軸体41は、分針用歯車42に一体に設けられていてもよく、あるいは別部材で構成されていてもよい。また第1の軸体41は、分針用歯車42に対して固定されていてもよく、分針用歯車42に固定されずに連動する構成であってもよい。
【0024】
第1の軸体41の先端部分には、支持部材46が挿入固定される孔部41aが形成される。孔部41aは例えば第1の軸体41の先端側、すなわち時計10の表側に向けて開口する有底の凹部である。孔部41aに支持部材46が挿入され、固定される。
【0025】
支持部材46は、第1の軸体41よりも小径の軸部材である。支持部材46は第1の軸体41の孔部41aに挿入固定され、第1の軸体41と同軸に支持される。
【0026】
支持部材46は、第1の軸体41に固定されるとともに、従動磁石32を固定する。支持部材46は、従動磁石32の軸孔32a及び駆動磁石43の軸孔43aに配置される。支持部材46は、従動磁石32を回転可能に支持するとともに、従動磁石32の回転の径方向の移動を規制する。
【0027】
支持部材46は、例えば外周面の所定箇所に、外周方向に突出する鍔状の規制部材46aを有する。規制部材46aは所定の厚みを有する突起であり、従動磁石32と駆動磁石43の間に介在することで、従動磁石32と駆動磁石43の軸方向の隙間を規定する。例えば規制部材46aの厚み寸法は、磁性により必要な保持力を確保できる寸法に設定される。
【0028】
支持部材46の、規制部材46aの裏側の部位、換言すると、第1の軸体41の先端面と規制部材46aとの間の部位には、駆動磁石43が圧入固定される。一方、規制部材46aの表側の部位、換言すると規制部材46aよりも先端側の部位には、従動磁石32が、回転可能に取付けられる。すなわち、規制部材46aは、従動磁石32を、駆動磁石43に対して所定の間隔で、回転可能に、支持するとともに、従動磁石32の径方向の位置を規制する。
【0029】
図4に示すように駆動磁石43は、例えば中心部に軸孔43aを有する円環形状に構成され、従動磁石32と同軸に配置される。従動磁石32は例えばサマリウムコバルトなどの強磁性体で構成される。駆動磁石43は、軸方向において、規制部材46aを挟んで従動磁石32の裏側に対向配置される。
【0030】
駆動磁石43は径方向に磁化され、周方向に異なる2つの極を有する。例えば中心を通る径方向の分極ラインL1を境に、一方側がS極、他方側がN極に分極されている。駆動磁石43は、第1の軸体41に圧入固定され、第1の軸体41とともに回転する。駆動磁石43の軸孔43aには、輪列機構23の一部である支持部材46が配置される。例えば駆動磁石43は嵌合や接着により支持部材46に対して固定されていてもよい。
【0031】
駆動磁石43は、従動磁石32と対向配置され、互いのS極とN極同士が引き合う回転位置に、従動磁石32を保持する。したがって、静止状態では、磁石のS極とN極同士が引き合う回転方向に従動磁石32及び分針21が保持されるとともに、時計の通常運針時には分針用歯車42の回転に同期して分針21が回転する。
【0032】
時針22は、所定の幅及び長さに構成された第2針体47を備える。例えば第2針体47は第1針体31よりも短い所定形状に構成される。
【0033】
第2針体47は、例えば細長い板状に構成され、回転の基端部に第2針孔47aを有する。第2針体47の第2針孔47aに、輪列機構23の一部である第2の軸体が固定される。第2針体47は、収容空間内の文字盤20上において、回転可能に設けられる。第2針体47は、輪列機構23を介して駆動源24に接続され、長手方向が時刻に対応する方向を向くように回転運動する。
【0034】
時針用歯車44はいわゆる筒車と呼ばれる歯車部材であり、その回転中心に、回転軸C1に沿って延びる第2の軸体45を一体に有する。時針用歯車44は、駆動源24によって回転することで、時針22を回転させる。
【0035】
第2の軸体45は、所定の第1方向に延びる中空のロッド状部材である。第2の軸体45は中心部に第1の軸体41が挿入可能な貫通孔45aを有する筒状に構成される。第2の軸体45は、第1の軸体41の外周に回転可能に装着される。第2の軸体45は、時針用歯車44の軸心部に一体に設けられ、あるいは固定される。
【0036】
第2の軸体45の先端部分に、第2針体47が圧入固定される。すなわち、第2針体47は、第2の軸体45の回転に伴い回転する。
例えば、分針21、第1の軸体41、時針22、第2の軸体45は、非磁性材料で構成される。
耐磁板50は、文字盤20に対して、第1の指針である分針21と第2の指針である時針22とは反対側に隣接して配置され、駆動磁石43及び従動磁石32からの磁束の影響が、時計モジュール13に及ぶ影響を低減させる。耐磁板50は、文字盤20の貫通孔20aを中心に円板形状に構成されている。耐磁板は、例えば、SPCC(Cold-reduced carbon steel sheets and strips 冷間圧延鋼板及び鋼帯)等により形成されている。
なお、耐磁板50は、磁界を集めやすいものであればよく、耐磁板50を形成する材料はSPCCに限定されない。例えばパーマロイ等で形成されていてもよい。
【0037】
駆動源24は、1または複数の駆動機構を備える。駆動機構として時計10の駆動方式に応じて、モータやゼンマイ機構等、各種の駆動機構を用いることができる。輪列機構23によって動力伝達することで、1つの駆動機構を用いて、複数の針21、22を駆動する構成であってもよく、あるいは針21,22毎にそれぞれ駆動機構を備える構成としてもよい。
【0038】
時計ガラス15は、いわゆる風防であり、透明な円板形状に構成される。時計ガラス15は第1ケース11aの上部開口の内周縁において見切り部材18b上に支持され、文字盤20の表側を覆う。時計ガラス15は、例えば、第1ケース11aの内周縁に、パッキン19を介して、装着される。
【0039】
スイッチ17は、操作者が押し込み操作を行うことで時計モジュール13のモード切替や時刻修正などを行う。
【0040】
以上のように構成された時計01は、分針21及び輪列機構23の一部が、磁石32,43の保持力によって接続されている。また、分針21の従動磁石32は第1の軸体41の支持部材46に回転可能に支持されている。よって、外部からの衝撃による分針21の回転が第1の軸体41に伝達されることを抑えることができる。例えば、時計10に落下などで側面方向からの衝撃が加わった場合、分針21には回転方向のモーメントが発生するが、分針用歯車42には駆動磁石43と従動磁石32の互いの磁力による拘束力以上の回転トルクが加わらない。このため、分針21に衝撃が印加されたときにこの衝撃により分針21が回転しても第1の軸体41が回転することが防止されるため、外力による第1の軸体41の回転でムーブメント内部が破壊するのを防止することができる。さらに、外力による歯車の破損や、針の圧入固定部分のスリップや外れなどによるムーブメントの破損も防止できる。また、例えば駆動源24としてモータを備える場合に、モータの磁石の脱調による時刻表示ずれも防止できる。
【0041】
また、上記実施形態にかかる時計10によれば、衝撃が加わって駆動磁石43と従動磁石32の相対位置がずれた場合にも、磁力によって、駆動磁石43と従動磁石32回転方向の位置関係が元に戻るため、分針21が衝撃印加前の位置に復元して時刻表示が調整される効果が得られる。また、従動磁石32と駆動磁石43とは軸方向に対向配置されることで、互いの回転移動を妨げない。
【0042】
さらに、第1の軸体41に設けられる支持部材46によって、省スペースで、従動磁石32を回転可能に支持し、径方向の位置ずれを規制できる。また、従動磁石32と駆動磁石43の間に介在する規制部材46aによって、軸方向において従動磁石32と駆動磁石43とに隙間が生じる。即ち、従動磁石32と駆動磁石43との接触による摩擦を低減できるので、従動磁石32と駆動磁石43との接触により生じる摩擦力によって分針21の復元を妨げない構成とすることができる。
【0043】
なお、上述した実施形態は例示であり、発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
例えば、駆動磁石43と従動磁石32の配置は上記の例に限られるものではなく、指針から駆動源24に至るいずれかにおいて、磁石による保持機構が介在していればよい。
【0045】
また、上記実施形態では指針として分針と時針とを備える例を示したが、これに限られるものではなく、他に指針を備えていてもよい。例えば他の実施形態として図5に示す時計100は、第3指針としての秒針25を備えるとともに、輪列機構23の一部として、秒針25を駆動する第3の軸体48を有する第3の回転車としての秒針用歯車49を備える。また本実施形態において支持部材46は中空部を有する筒状に構成される。
【0046】
秒針用歯車49はいわゆる四番車と呼ばれる歯車部材であり、その回転中心に、回転軸C1に沿って延びる第3の軸体48を一体に有する。秒針用歯車49は、駆動源24によって回転することで、秒針25を回転させる。
【0047】
第3の軸体48は第1の軸体41及び第2の軸体45と同軸に配置される。本実施形態において、第2の軸体45の中心に配される第1の軸体41が中空部41cを有する筒状に構成され、中空部41cにロッド状の第3の軸体48が配置される。例えば、秒針25は、分針21及び時針22よりも表側に配置される。秒針25と、第3の軸体48、磁性の影響を抑えるため、秒針25を固定する際の圧入の加重に耐え得る硬度を持つ、非磁性材料を使用する。
【0048】
本実施形態において支持部材46は第3の軸体48が挿通可能な筒状に構成され、第1の軸体41の中空部に固定される。支持部材46は、従動磁石32を回転可能に保持する段差を有する規制部材46aを備える。その他の構成ついては、上記第1実施形態と同様に構成される。
【0049】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち、分針21と輪列機構23が、磁石の保持力によって接続されることにより、外部からの衝撃の伝達を抑えることができる。また、秒針25や軸体48に、非磁性材料を使用することで、磁力の影響を抑えることができ、指針を正常作動することが可能となる。
【0050】
上記実施形態においては第3の指針である秒針25と、第3の軸体48とを非磁性材料で構成したがこれに限られるものではない。また、秒針25と第3の軸体48の代わりに、あるいはこれらに加えて、他の部材を非磁性材料で構成してもよい。例えば、分針21、第1の軸体41、時針22、第2の軸体45、秒針25、及び第3の軸体48の少なくともいずれか、あるいはその他の周辺部材が非磁性材料で構成されていてもよい。
【0051】
また、上記実施形態においては、分針21の支持構造に磁石32,43による保持構造を介在させる例を示したが、これに限られるものではなく、時針、秒針、その他の指針の支持構造として、磁石による保持構造を介在する構成を適用してもよい。
【0052】
また、上記実施形態においては磁石32,43は2つに分極した構成を示したが、分極の構造は上記の例に限られるものではない。例えば、4つに等間隔で分極されていてもよい。
【0053】
分極の方向も径方向に限られるものではなく、例えば磁石32,43の厚さ方向、すなわち回転軸方向において分極させる構成であってもよい。例えば軸方向に対向する駆動磁石と従動磁石のうち、一方の磁石の対向面側がS極、他方の磁石の対向面側がN極となるように、それぞれの磁石を軸方向に分極することで、吸引力による保持が可能になる。
【0054】
また、駆動磁性体と従動磁性体が硬磁性材料で構成される例を示したが、これに限られるものではない。例えば一方を軟磁性材料で構成してもよい。
【0055】
また、従動磁石32と駆動磁石43は軸方向に対向配置される例を示したがこれに限られるものではなく、例えば一方が他方の外周に設けられ、径方向に対向配置される構成であってもよい。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[付記]
[1]
第1の指針と、
前記第1の指針に固定される第1の磁性体と、
前記第1の磁性体に対向配置される第2の磁性体と、
前記第2の磁性体に固定される第1の軸体を有する第1の回転車を含む輪列機構と、
を備える、時計。
[2]
前記第2の磁性体は、磁性により前記第1の磁性体を保持し、
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体は、円形状に構成されるとともに、回転の周方向に分極される磁石である、[1]に記載の時計。
[3]
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体は軸方向において対向配置される、[1]または[2]に記載の時計。
[4]
前記第1の磁性体及び前記第2の磁性体は、中心に孔部を有する円環状に構成され、
前記第1の軸体に設けられるとともに、前記孔部に配され、前記第1の磁性体を、前記第1の軸体に回転可能に支持するとともに、前記第1の磁性体の回転の径方向の移動を規制する支持部材を備える、[1]乃至[3]のいずれかに記載の時計。
[5]
第2の指針を備え、
前記輪列機構は、前記第2の指針が固定される第2の軸体を有する第2の回転車を含み、
前記第1の軸体と前記第2の軸体は同軸に配置される、
[1]乃至[4]のいずれかに記載の時計。
[6]
第3の指針を備え、
前記輪列機構は、前記第3の指針が固定される第3の軸体を有する第3の回転車を含み、
前記第1の軸体と前記第2の軸体と前記第3の軸体は同軸に配置される、
[5]に記載の時計。
[7]
前記第1の指針は分針であり、
前記第2の指針または前記第3の指針は時針または秒針であり、
前記第2の指針、前記第2の軸体、前記第3の指針、及び前記第3の軸体の少なくともいずれかが非磁性材料で構成される、[5]または[6]に記載の時計。
[8]
前記第1の指針及び前記第1の磁性体の裏側に配置される文字盤と、
前記文字盤の裏側に配置される耐磁板と、を備える、
[1]乃至[7]のいずれかに記載の時計。
【符号の説明】
【0057】
10、100…時計、11…ケース、11a…第1ケース、11b…第2ケース、11c…ビス、11d…防水リング、13…時計モジュール、14c…時字、15…時計ガラス、16…裏蓋、17…スイッチ、18a…補強部材、18b…見切り部材、19…パッキン、20…文字盤、21…分針、22…時針、23…輪列機構、25…秒針、31…針体、31a…針孔、32…従動磁石、32a…軸孔、41…第1の軸体、41a…孔部、41c…中空部、42…分針用歯車、43…駆動磁石、43a…軸孔、44…時針用歯車、45…第2の軸体、45a…貫通孔、46…支持部材、46a…規制部材、47…第2針体、47a…第2針孔、48…第3の軸体、49…秒針用歯車、C1…回転軸、L1…分極ライン。

図1
図2
図3
図4
図5