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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 20/13 20160101AFI20240806BHJP
   B60W 30/188 20120101ALI20240806BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240806BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20240806BHJP
   B60W 10/06 20060101ALI20240806BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20240806BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20240806BHJP
   B60L 50/16 20190101ALI20240806BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240806BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240806BHJP
【FI】
B60W20/13
B60W30/188
B60W60/00
B60K6/48 ZHV
B60W10/06 900
B60W10/26 900
B60W10/10 900
B60L50/16
B60L50/60
B60L58/12
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021208696
(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公開番号】P2023093212
(43)【公開日】2023-07-04
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】早島 尚希
(72)【発明者】
【氏名】小林 寛英
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 義明
(72)【発明者】
【氏名】南川 幸毅
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-086772(JP,A)
【文献】特開2020-104761(JP,A)
【文献】特開2008-279980(JP,A)
【文献】特開平11-346402(JP,A)
【文献】特開2017-047821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 20/13
B60W 30/188
B60W 60/00
B60K 6/48
B60W 10/06
B60W 10/26
B60W 10/10
B60L 50/16
B60L 50/60
B60L 58/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動力源として用いられるエンジンと、少なくとも発電機として機能する回転機と、蓄電装置と、を備えている車両に関し、
加減速操作を必要とすることなく、予め定められた目標走行状態で走行するように求められた要求駆動トルクに従って前記駆動力源のトルクを自動的に制御する自動運転を行なう自動運転制御部と、
前記エンジンを前記駆動力源として用いて走行するエンジン走行時に、前記エンジンにより前記回転機を回転駆動して発電させて前記蓄電装置を充電するとともに、前記回転機の発電電力を制御して前記蓄電装置に対する充電量を制御する一方、前記充電量に応じて前記エンジンのトルクを増大させる充電制御部と、
を有する車両の制御装置において、
前記充電制御部は、前記自動運転中の場合には、該自動運転における前記要求駆動トルクが小さい時は該要求駆動トルクが大きい時に比較して前記充電量が小さくなるように、該要求駆動トルクに応じて前記充電量を可変設定し、
前記車両は、前記自動運転とは別に運転者の加減速操作に従って前記駆動力源のトルクが制御される手動運転が可能で、
前記充電制御部は、前記手動運転中の場合には予め定められた基本充電量で前記蓄電装置に対する充電制御を実施し、前記自動運転中の場合は、前記基本充電量以下の範囲で前記充電量を前記要求駆動トルクに応じて可変設定する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記充電制御部は、車速が予め定められた充電制限判定車速以下であることを条件として、前記自動運転中の場合に前記充電量を前記要求駆動トルクに応じて可変設定し、前記車速が前記充電制限判定車速よりも高車速の場合には、前記自動運転中であっても前記基本充電量で充電制御を実施する
ことを特徴とする請求項に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
前記充電制御部は、前記蓄電装置の充電状態値が予め定められた充電制限判定値以上であることを条件として、前記自動運転中の場合に前記充電量を前記要求駆動トルクに応じて可変設定し、前記充電状態値が前記充電制限判定値よりも低い場合には、前記自動運転中であっても前記基本充電量で充電制御を実施する
ことを特徴とする請求項またはに記載の車両の制御装置。
【請求項4】
前記駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路にはトルクコンバータが設けられており、
前記自動運転制御部は、低車速時に前記トルクコンバータの入出力回転差に基づいてクリープトルクを発生させて前記自動運転を行なう
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両の制御装置に係り、特に、エンジンにより回転機を回転駆動して発電させて蓄電装置を充電する充電制御部を有する車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 駆動力源として用いられるエンジンと、少なくとも発電機として機能する回転機と、蓄電装置と、を備えている車両に関し、(b) 加減速操作を必要とすることなく、予め定められた目標走行状態で走行するように求められた要求駆動トルクに従って前記駆動力源のトルクを自動的に制御する自動運転を行なう自動運転制御部と、(c) 前記エンジンを前記駆動力源として用いて走行するエンジン走行時に、前記エンジンにより前記回転機を回転駆動して発電させて前記蓄電装置を充電するとともに、前記回転機の発電電力を制御して前記蓄電装置に対する充電量を制御する一方、前記充電量に応じて前記エンジンのトルクを増大させる充電制御部と、を有する車両の制御装置が知られている。特許文献1に記載のハイブリッド式電動車両はその一例で、電動機および発電機として機能するモータジェネレータを回転機として備えているとともに、自動運転中の時は手動運転の時に比較して充電制御を開始したり終了したりする際の充電量の変化率、すなわちエンジントルクの変化率を小さくし、エンジントルクの急な変化による車速変動を抑制するようになっている。すなわち、充電制御に伴う駆動力変動をエンジンのトルク制御で完全に補償(相殺)することは難しく、充電量の変化率を小さくして駆動力変動による違和感を軽減するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-86772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、充電量の変化率を小さくしても目標とする充電量は手動運転の時と同じであるため、依然としてエンジントルクを増大させる際に駆動力変動が生じてドライバビリティ(乗り心地など)が悪化する可能性があった。すなわち、自動運転では運転者が加減速操作しないため、僅かな駆動力変動でも運転者に違和感を生じさせ易い一方、要求駆動トルクが小さい低速走行時には充電制御に伴うエンジントルクの増加幅が相対的に大きくなるため、駆動力変動を生じる可能性が高いとともに、低車速ではロードノイズが小さいため駆動力変動が吸収され難く、駆動力変動によるドライバビリティの悪化が問題になる。
【0005】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、自動運転中の充電制御で駆動力変動によりドライバビリティが悪化することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 駆動力源として用いられるエンジンと、少なくとも発電機として機能する回転機と、蓄電装置と、を備えている車両に関し、(b) 加減速操作を必要とすることなく、予め定められた目標走行状態で走行するように求められた要求駆動トルクに従って前記駆動力源のトルクを自動的に制御する自動運転を行なう自動運転制御部と、(c) 前記エンジンを前記駆動力源として用いて走行するエンジン走行時に、前記エンジンにより前記回転機を回転駆動して発電させて前記蓄電装置を充電するとともに、前記回転機の発電電力を制御して前記蓄電装置に対する充電量を制御する一方、前記充電量に応じて前記エンジンのトルクを増大させる充電制御部と、を有する車両の制御装置において、(d) 前記充電制御部は、前記自動運転中の場合には、その自動運転における前記要求駆動トルクが小さい時はその要求駆動トルクが大きい時に比較して前記充電量が小さくなるように、その要求駆動トルクに応じて前記充電量を可変設定し、(e) 前記車両は、前記自動運転とは別に運転者の加減速操作に従って前記駆動力源のトルクが制御される手動運転が可能で、(f) 前記充電制御部は、前記手動運転中の場合には予め定められた基本充電量で前記蓄電装置に対する充電制御を実施し、前記自動運転中の場合は、前記基本充電量以下の範囲で前記充電量を前記要求駆動トルクに応じて可変設定することを特徴とする。
上記要求駆動トルクは駆動輪に関するもので、要求駆動力や要求駆動パワーも実質的に同じである。また、その要求駆動トルク等に応じて求められる駆動力源のトルクやパワー等に置き替えることもできる。
【0008】
発明は、第発明の車両の制御装置において、前記充電制御部は、車速が予め定められた充電制限判定車速以下であることを条件として、前記自動運転中の場合に前記充電量を前記要求駆動トルクに応じて可変設定し、前記車速が前記充電制限判定車速よりも高車速の場合には、前記自動運転中であっても前記基本充電量で充電制御を実施することを特徴とする。
【0009】
発明は、第発明または第発明の車両の制御装置において、前記充電制御部は、前記蓄電装置の充電状態値が予め定められた充電制限判定値以上であることを条件として、前記自動運転中の場合に前記充電量を前記要求駆動トルクに応じて可変設定し、前記充電状態値が前記充電制限判定値よりも低い場合には、前記自動運転中であっても前記基本充電量で充電制御を実施することを特徴とする。
【0010】
発明は、第1発明~第発明の何れかの車両の制御装置において、(a) 前記駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路にはトルクコンバータが設けられており、(b) 前記自動運転制御部は、低車速時に前記トルクコンバータの入出力回転差に基づいてクリープトルクを発生させて前記自動運転を行なうことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような車両の制御装置においては、自動運転中の充電制御の際の充電量が、要求駆動トルクが小さい時は要求駆動トルクが大きい時に比較して小さくされるため、充電制御に伴う駆動力変動の影響が大きい要求駆動トルクが小さい場合、充電制御に伴うエンジントルクの増加幅が小さくなって駆動力変動が軽減され、ロードノイズが小さい低速走行時においても、駆動力変動によるドライバビリティの悪化が抑制される。一方、自動運転中であっても充電制御に伴う駆動力変動の影響が比較的小さくなる要求駆動トルクが大きい場合には充電量が大きくされ、蓄電装置を速やかに充電できるため、要求駆動トルクが小さい時のドライバビリティの悪化を抑制しつつ所定の充電性能を確保できる。
また、運転者の加減速操作に従って駆動力源のトルクが制御される手動運転が可能で、その手動運転中の場合は予め定められた基本充電量で充電制御が行なわれる一方、自動運転中の場合は基本充電量以下の範囲で充電量が要求駆動トルクに応じて可変設定されるため、駆動力変動が問題になり難い手動運転中の充電性能を適切に維持しつつ、自動運転中の充電制御に起因するドライバビリティの悪化を適切に抑制することができる。
【0013】
発明では、車速が予め定められた充電制限判定車速以下であることを条件として、自動運転中の充電量が要求駆動トルクに応じて可変設定されるため、ロードノイズが小さい低速走行時の駆動力変動によるドライバビリティの悪化が適切に抑制される一方、ロードノイズが大きくて駆動力変動が認識され難い比較的高車速の場合は、自動運転中であっても手動運転の時と同じ基本充電量で充電制御が実施されるため、充電量の制限を必要最小限に抑制できる。
【0014】
発明では、蓄電装置の充電状態値が予め定められた充電制限判定値以上であることを条件として、自動運転中の充電量が要求駆動トルクに応じて可変設定されるため、充電制限判定値以上の状態で充電制御が開始された場合に、要求駆動トルクが小さい時の駆動力変動によるドライバビリティの悪化が抑制される。すなわち、蓄電装置の充電状態値が充電制限判定値よりも低い場合は、要求駆動トルクが小さい自動運転中であっても手動運転の時と同じ基本充電量で充電制御が実施され、蓄電装置を速やかに充電して蓄電残量不足になることが適切に防止されるため、蓄電残量不足になることを回避しつつ、充電制限判定値以上の状態で充電制御が開始された場合に要求駆動トルクが小さい時の充電制御に起因する駆動力変動によるドライバビリティの悪化を適切に抑制できる。
【0015】
発明では、駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路にトルクコンバータが設けられており、自動運転制御部は、低車速時にトルクコンバータの入出力回転差に基づいてクリープトルクを発生させて自動運転を行なうため、その低車速のクリープ走行時に充電制御が開始されると、エンジントルクの増加に伴って、回転機の発電に拘らずエンジン回転速度が上昇する可能性がある。そして、そのエンジン回転速度の上昇に伴うトルクコンバータの入出力回転差の拡大によってクリープトルクが増加し、そのクリープトルクの増加に起因する駆動力変動でドライバビリティが悪化したり、エンジン回転速度の上昇過渡時に共振領域を通過してこもり音が発生したりする場合がある。これに対し、クリープ走行は一般に要求駆動トルクが低い状況下で行なわれるため、要求駆動トルクに応じた充電量の可変設定で充電量が小さくされると、その充電制御に伴うエンジントルクの増加幅が小さくなり、エンジントルクの増加に起因するエンジン回転速度の上昇幅が減少する。これにより、エンジン回転速度の上昇に伴うトルクコンバータの入出力回転差の拡大によるクリープトルクの増加が減少し、そのクリープトルクの増加に起因する駆動力変動によるドライバビリティの悪化が抑制されるとともに、エンジン回転速度の上昇過渡時のこもり音の発生が回避乃至は抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施例である制御装置を有するハイブリッド式電動車両の駆動系統を説明する概略構成図で、各種制御の為の制御機能および制御系統の要部を併せて示した図である。
図2図1のハイブリッド式電動車両の電子制御装置が機能的に備えている充電制御部が、自動運転であるオートクルーズ走行時か否かによって充電量を変更する部分の作動を説明するフローチャートである。
図3図2のステップS4で要求駆動トルクTrdemに応じて充電量Pchを求める際に用いられる充電量補正係数αが定められたデータマップの一例である。
図4】自動運転であるオートクルーズ走行時に図2のフローチャートに従って充電量Pchを設定して充電制御が行なわれた場合の各部の作動状態の変化を説明するタイムチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、例えば充電制御の際に用いられる回転機として、電動機としても機能するモータジェネレータを採用し、その回転機をエンジンと共に駆動力源として用いることができるハイブリッド式電動車両に好適に適用される。充電制御で用いられる回転機とは別に、エンジンと共に駆動力源として用いられる回転機を追加して設けることも可能である。その回転機は、少なくとも電動機として機能すれば良いが、発電機としても機能するモータジェネレータを用いることもできる。駆動力源と駆動輪との間の動力伝達経路には、必要に応じてトルクコンバータ等の流体式伝動装置や自動変速機などが設けられる。流体式伝動装置の替わりに、遊星歯車装置および差動制御用回転機を有する電気式差動部や、摩擦係合式の発進クラッチ等が設けられても良い。差動制御用回転機を、充電制御を行なう回転機として用いることも可能である。
【0018】
自動運転制御部による自動運転の際の目標走行状態は、例えば目標車速や目標加速度、目標車間距離、目標制動力などである。自動運転制御部は、例えば運転者が設定した目標車速で走行するのに必要な要求駆動トルクを算出し、その要求駆動トルクが得られるように駆動力源を制御することにより、略一定の目標車速で定速走行する定速走行制御や、先行車両との間の車間距離が目標車間距離に維持されるように追従走行するのに必要な要求駆動トルクを算出し、その要求駆動トルクが得られるように駆動力源を制御することにより、略一定の目標車間距離で追従走行する追従走行制御などを実行するものである。要求駆動トルクは、例えば目標車速と実車速との差などに基づいてフィードバック制御やフィードフォワード制御を用いて算出できる。自動運転制御部は、上記要求駆動トルクが得られるように、駆動力源のトルクを制御したり、自動変速機の前進ギヤ段を変速したりする。駆動力源のトルク制御は、エンジンブレーキや回転機の回生制御等による負トルクを含んで制御することが望ましい。自動運転制御部は、少なくともエンジン等の駆動力源のトルクを自動制御するように構成されるが、自動ブレーキシステムの制動力を自動制御したり、自動操舵システムのステアリング角等を自動制御したりすることも可能である。
【0019】
充電制御部は、例えば蓄電装置の充電状態値SOC(State Of Charge)が許容下限値SOCmin よりも少なくなった場合や放電量が大きくなる低温時など、予め定められた充電要求時には、蓄電装置を強制的に充電するため、エンジン走行時にエンジンにより回転機を回転駆動して発電させて蓄電装置を充電する。充電制御部が、自動運転の際に要求駆動トルクに応じて充電量を可変設定する態様は、要求駆動トルクが小さくなるに従って充電量が連続的に小さくなるように連続的に変化させることが望ましいが、2段階または3段階以上の多段階で変化させても良い。強制的な充電制御とは別に、充電状態値SOCが予め定められた許容下限値SOCmin および許容上限値SOCmax の範囲内に保持されるように、車両減速時や制動時等に回転機を回生制御して発電させて蓄電装置を充電することもできる。
【0020】
充電制御部は、例えば手動運転中の場合には予め定められた基本充電量で充電制御を実施するように構成される。基本充電量は一定値でも良いが、目標充電状態値SOCt と現在の蓄電装置の充電状態値SOCとの差ΔSOC等に基づいて設定されても良い。この基本充電量についても、要求駆動トルク等に基づいて可変設定されても良い。充電制御部は、例えば自動運転中であっても車速が予め定められた充電制限判定車速より高い場合は、手動運転中と同じ基本充電量で充電制御が行なわれるように構成されるが、自動運転中は車速に関係無く要求駆動トルクに応じて充電量が可変設定されても良い。また、自動運転中であっても蓄電装置の充電状態値SOCが予め定められた充電制限判定値よりも低い場合は、手動運転中と同じ基本充電量で充電制御が行なわれるように構成されるが、自動運転中は充電状態値SOCに関係無く要求駆動トルクに応じて充電量が可変設定されても良い。
【実施例
【0021】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比や角度、形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0022】
図1は、本発明の一実施例である車両の制御装置として電子制御装置100を有するハイブリッド式電動車両10(以下、単に電動車両10という。)の駆動系統の概略構成図で、電動車両10における各種制御のための制御機能および制御系統の要部を併せて示した図である。図1において、電動車両10は、走行用の駆動力源としてエンジン12および回転機MGを備えているパラレル型のハイブリッド式電動車両である。また、電動車両10は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられた動力伝達装置16を備えている。駆動輪14は左右の後輪で、電動車両10はFR型の後輪駆動車両である。
【0023】
エンジン12は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。エンジン12は、スロットルアクチュエータや燃料噴射装置、点火装置等を含むエンジン制御機器50が電子制御装置100によって制御されることにより、エンジン12の出力トルクであるエンジントルクTe が制御される。回転機MGは、電力から機械的な動力を発生させる電動機としての機能および機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有するモータジェネレータで、例えば三相交流同期モータ等であり、インバータ52を介してバッテリ54に接続されている。回転機MGは、電子制御装置100によってインバータ52が制御されることにより、回転機MGのトルクであるMGトルクTmgや回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmgが制御される。回転機MGは、エンジン12に替えて或いはエンジン12に加えて、インバータ52を介してバッテリ54から供給される電力により走行用の駆動力を発生する。回転機MGはまた、エンジン12の動力や駆動輪14側から入力される被駆動力により回転駆動される際に、発電機として機能するように回生制御されることにより発電を行うとともに、駆動輪14に連結されている場合には回生ブレーキを発生する。回転機MGの発電により発生させられた電力は、インバータ52を介してバッテリ54に蓄積される。バッテリ54は、回転機MGに対して電力を授受する蓄電装置である。
【0024】
動力伝達装置16は、車体に取り付けられる非回転部材であるケース18内において、エンジン12側からK0クラッチ20、トルクコンバータ22、および自動変速機24を直列に備えており、K0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に回転機MGが連結されている。K0クラッチ20は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路におけるエンジン12と回転機MGとの間に設けられたクラッチで、回転機MGとエンジン12との間を接続遮断するエンジン断接装置である。トルクコンバータ22は、回転機MGと自動変速機24との間に設けられ、流体である作動油OIL を介して動力伝達する流体式伝動装置であり、K0クラッチ20を介してエンジン12に連結されている。自動変速機24は、トルクコンバータ22に連結されており、トルクコンバータ22と駆動輪14との間の動力伝達経路に介在させられている。動力伝達装置16は、自動変速機24の出力回転部材である変速機出力軸26に連結されたプロペラシャフト28、プロペラシャフト28に連結されたディファレンシャルギヤ30、ディファレンシャルギヤ30に連結された一対のドライブシャフト32等を備えている。また、動力伝達装置16は、エンジン12とK0クラッチ20とを連結するエンジン連結軸34、K0クラッチ20とトルクコンバータ22とを連結するMG連結軸36等を備えており、MG連結軸36に回転機MGのロータが連結されている。
【0025】
K0クラッチ20は、例えばアクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチにより構成される湿式または乾式(本実施例では湿式)の摩擦係合装置である。K0クラッチ20は、油圧制御回路56から供給される調圧されたK0油圧PRk0によりK0クラッチ20のトルク容量であるK0トルクTk0が変化させられることで、係合状態や開放状態などの制御状態が切り替えられる。K0クラッチ20の入力側部材は、エンジン連結軸34と連結されており、エンジン連結軸34と一体的に回転させられる。K0クラッチ20の出力側部材は、MG連結軸36と連結されており、MG連結軸36と一体的に回転させられる。K0クラッチ20の係合状態では、エンジン連結軸34を介して回転機MGのロータおよびポンプ翼車22aとエンジン12とが一体的に回転させられる。一方で、K0クラッチ20の開放状態では、回転機MGのロータおよびポンプ翼車22aとエンジン12との間の動力伝達が遮断される。
【0026】
回転機MGは、ケース18内において、MG連結軸36に動力伝達可能に連結されている。回転機MGは、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路、特にはK0クラッチ20とトルクコンバータ22との間の動力伝達経路に動力伝達可能に連結されている。つまり、回転機MGは、K0クラッチ20を介することなくトルクコンバータ22や自動変速機24と動力伝達可能に連結されている。トルクコンバータ22および自動変速機24は、各々、エンジン12および回転機MGの駆動力源からの駆動力を駆動輪14へ伝達する。
【0027】
トルクコンバータ22は、MG連結軸36と連結されたポンプ翼車22a、および自動変速機24の入力回転部材である変速機入力軸38と連結されたタービン翼車22bを備えている。ポンプ翼車22aは、K0クラッチ20を介してエンジン12と連結されていると共に、直接的に回転機MGと連結されている。ポンプ翼車22aはトルクコンバータ22の入力部材であり、タービン翼車22bはトルクコンバータ22の出力部材である。MG連結軸36は、トルクコンバータ22の入力回転部材でもある。変速機入力軸38は、タービン翼車22bによって回転駆動されるタービン軸と一体的に形成されたトルクコンバータ22の出力回転部材でもある。トルクコンバータ22は、ポンプ翼車22aとタービン翼車22bとを連結するLUクラッチ40を備えている。LUクラッチ40は、トルクコンバータ22の入出力回転部材を連結する直結クラッチ、すなわち公知のロックアップクラッチである。
【0028】
LUクラッチ40は、油圧制御回路56から供給される調圧されたLU油圧PRluによりLUクラッチ40のトルク容量であるLUクラッチトルクTluが変化させられることで、作動状態つまり制御状態が切り替えられる。LUクラッチ40の制御状態としては、LUクラッチ40が開放された状態である完全開放状態、LUクラッチ40が滑りを伴って係合された状態であるスリップ状態、およびLUクラッチ40が係合された状態である完全係合状態がある。LUクラッチ40が完全開放状態とされることにより、トルクコンバータ22はトルク増幅作用が得られるトルクコンバータ状態とされる。また、LUクラッチ40が完全係合状態とされることにより、トルクコンバータ22はポンプ翼車22aおよびタービン翼車22bが一体回転させられるロックアップ状態とされる。
【0029】
自動変速機24は、例えば1組または複数組の遊星歯車装置と、複数の係合装置CBと、を備えている、公知の遊星歯車式の自動変速機である。係合装置CBは、例えば油圧アクチュエータにより押圧される多板式或いは単板式のクラッチやブレーキ、油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成される、油圧式の摩擦係合装置である。係合装置CBは、各々、油圧制御回路56から供給される調圧されたCB油圧PRcbによりそれぞれのトルク容量であるCBトルクTcbが変化させられることで、係合状態や開放状態などの制御状態が切り替えられる。
【0030】
自動変速機24は、係合装置CBのうちの何れかの係合装置が係合させられることによって、変速比γ(=AT入力回転速度Ni /AT出力回転速度No )が異なる複数の前進ギヤ段および後進ギヤ段を形成することができる有段変速機である。自動変速機24は、電子制御装置100によって、運転者のアクセル操作や車速V等の運転状態に応じて形成されるギヤ段が切り替えられる、すなわち複数のギヤ段が選択的に形成される。また、複数の係合装置CBが総て開放されると、動力伝達を遮断するニュートラルになる。AT入力回転速度Ni は、変速機入力軸38の回転速度であり、自動変速機24の入力回転速度である。AT入力回転速度Ni は、トルクコンバータ22の出力回転部材の回転速度でもあり、トルクコンバータ22の出力回転速度であるタービン回転速度Nt と同値である。AT出力回転速度No は、変速機出力軸26の回転速度であり、自動変速機24の出力回転速度である。
【0031】
動力伝達装置16において、エンジン12から出力される動力は、K0クラッチ20が係合させられた場合に、エンジン連結軸34から、K0クラッチ20、MG連結軸36、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、およびドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。また、回転機MGから出力される動力は、K0クラッチ20の制御状態に拘わらず、MG連結軸36から、トルクコンバータ22、自動変速機24、プロペラシャフト28、ディファレンシャルギヤ30、およびドライブシャフト32等を順次介して駆動輪14へ伝達される。
【0032】
電動車両10は、機械式のオイルポンプであるMOP58、電動式のオイルポンプであるEOP60、ポンプ用モータ62等を備えている。MOP58は、ポンプ翼車22aに連結されており、駆動力源(エンジン12、回転機MG)により回転駆動されて動力伝達装置16にて用いられる作動油OIL を吐出する。ポンプ用モータ62は、EOP60を回転駆動するためのEOP60専用の電動機である。EOP60は、ポンプ用モータ62により回転駆動されて作動油OIL を吐出するもので、電動車両10の停止時を含めた任意のタイミングで作動油OIL を吐出することができる。MOP58やEOP60が吐出した作動油OIL は、油圧制御回路56へ供給される。油圧制御回路56は、MOP58および/またはEOP60が吐出した作動油OIL を元にして各々調圧した、CB油圧PRcb、K0油圧PRk0、LU油圧PRluなどを出力する。作動油OIL は、トルクコンバータ22に供給されて動力伝達に用いられる他、各部の潤滑や冷却にも用いられる。作動油OIL は、ケース18の下部に設けられたオイルパン等の油溜に蓄積されるとともに、MOP58および/またはEOP60により汲み上げられて油圧制御回路56へ供給される。
【0033】
電動車両10は、各種の制御を実行する制御装置として電子制御装置100を備えている。電子制御装置100は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより電動車両10の各種制御を実行する。電子制御装置100は、必要に応じてエンジン制御用、MG制御用、油圧制御用等の各コンピュータを含んで構成される。
【0034】
電子制御装置100には、電動車両10に備えられた各種センサ等(例えばエンジン回転速度センサ70、タービン回転速度センサ72、出力回転速度センサ74、MG回転速度センサ76、アクセル開度センサ78、スロットル弁開度センサ80、バッテリセンサ82、レバーポジションセンサ84、ミリ波レーダー等の車間距離センサ86、オートクルーズ設定スイッチ88など)による検出値に基づく各種信号等(例えばエンジン12の回転速度であるエンジン回転速度Ne 、AT入力回転速度Ni と同値であるタービン回転速度Nt 、車速Vに対応するAT出力回転速度No 、回転機MGの回転速度であるMG回転速度Nmg、運転者の駆動要求量であるアクセルペダル等のアクセル操作部材79の操作量を表すアクセル開度θacc 、電子スロットル弁の開度であるスロットル弁開度θth、バッテリ54のバッテリ温度THbat やバッテリ充放電電流Ibat やバッテリ電圧Vbat 、シフトレバー64の操作ポジションPOSsh、先行車両までの車間距離Dis、オートクルーズ情報Icruiを表す信号など)が、それぞれ供給される。
【0035】
シフトレバー64は運転席の近傍に配置され、自動変速機24の動力伝達状態であるシフトレンジを切り替えるために運転者によって操作されるシフト操作部材で、複数の操作ポジションPOSshを備えている。操作ポジションPOSshとして、例えばP、R、N、Dの複数のポジションが設けられている。Pポジションは、自動変速機24が動力伝達を遮断するニュートラル状態とされ且つ機械的に変速機出力軸26の回転が阻止される駐車用のP(パーキング)レンジを選択する操作ポジションである。ニュートラル状態は、例えば自動変速機24の総ての係合装置CBが開放された状態である。Rポジションは、自動変速機24が後進ギヤ段とされる後進走行用のR(リバース)レンジを選択する操作ポジションである。Nポジションは、Pポジションと同様に自動変速機24がニュートラル状態とされるN(ニュートラル)レンジを選択する操作ポジションである。Dポジションは、例えば自動変速機24の複数の前進ギヤ段を車速Vやアクセル開度θacc 等の運転状態に応じて自動的に切り替えて走行する前進走行用のD(ドライブ)レンジを選択する操作ポジションである。シフトレバー64は、P、R、N、Dの各操作ポジションPOSshに位置決め保持されるものでも良いが、所定のホームポジションへ自動的に戻される自動復帰型でも良い。また、シフト操作部材として、上記各シフトレンジを選択する押釦スイッチ等が用いられても良い。
【0036】
オートクルーズ設定スイッチ88は、運転者の加減速操作を必要とすることなく予め定められた目標走行状態で走行するように駆動力源であるエンジン12および回転機MGを自動的に制御する自動運転として、定速走行および追従走行を行うオートクルーズ走行を選択するスイッチである。すなわち、本実施例の電動車両10は、アクセル操作部材79等による運転者の加減速操作に従ってエンジン12や回転機MGが制御される手動運転の他に、それ等のエンジン12や回転機MGを目標車速Vt 等に従って自動的に制御するオートクルーズ走行が可能である。オートクルーズ設定スイッチ88は、オートクルーズ走行を選択する他、目標車速Vt の設定、その目標車速Vt の増減、追従走行時の目標車間距離Dt の設定などを行う装置で、例えばステアリングホイール等に配設され、その目標車速Vt 、目標車間距離Dt 等を表すオートクルーズ情報Icruiが電子制御装置100に供給される。
【0037】
電子制御装置100からは、電動車両10に備えられた各装置(例えばエンジン制御機器50、インバータ52、油圧制御回路56、ポンプ用モータ62など)に各種指令信号(例えばエンジン12を制御するためのエンジン制御指令信号Se 、回転機MGを制御するためのMG制御指令信号Smg、係合装置CBを制御するためのCB油圧制御指令信号Scb、K0クラッチ20を制御するためのK0油圧制御指令信号Sk0、LUクラッチ40を制御するためのLU油圧制御指令信号Slu、EOP60を制御するためのEOP制御指令信号Seop など)が、それぞれ出力される。油圧制御回路56には、CB油圧制御指令信号Scb、K0油圧制御指令信号Sk0、およびLU油圧制御指令信号Sluに従って油路を切り替えたり油圧を制御したりする複数のソレノイドバルブが設けられている。
【0038】
本実施例の電動車両10はまた、前記オートクルーズ走行に関連して自動ブレーキシステム90を備えている。自動ブレーキシステム90は、駆動輪14および図示しない従動輪(非駆動輪)に設けられた各ホイールブレーキ92のブレーキ力すなわちブレーキ油圧を、電子制御装置100から供給される自動ブレーキ制御指令信号Sbrに従って電気的に制御する。ホイールブレーキ92にはまた、図示しないブレーキペダルが足踏み操作されることにより、ブレーキマスターシリンダを介してブレーキ油圧が供給されるようになっており、そのブレーキ油圧すなわちブレーキ操作力に応じたブレーキ力を機械的に発生する。
【0039】
電子制御装置100は、電動車両10における各種制御を実現する為に、ハイブリッド制御部102、変速制御部104、自動運転制御部106、および充電制御部108を機能的に備えている。
【0040】
ハイブリッド制御部102は、エンジン12および回転機MGの作動を協調して制御する機能を有し、エンジン12を制御するエンジン制御部102a、および回転機MGを制御するMG制御部102bを備えている。ハイブリッド制御部102は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc および車速Vを適用することで、運転者による電動車両10に対する駆動要求量を算出する。駆動要求量は、例えば駆動輪14における要求駆動トルクTrdem等である。ハイブリッド制御部102は、伝達損失、補機負荷、自動変速機24の変速比γ、トルクコンバータ22のトルク比、バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout 等を考慮して、例えば上記要求駆動トルクTrdemを実現するために必要なトルクコンバータ22の入力トルクである要求TC入力トルクTtcdem を求め、その要求TC入力トルクTtcdem が得られるように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Se を出力するとともに、回転機MGを制御するMG制御指令信号Smgを出力する。バッテリ54の充電可能電力Winや放電可能電力Wout は、例えばバッテリ温度THbat およびバッテリ54の充電状態値SOC[%]に基づいて電子制御装置100により算出される。バッテリ54の充電状態値SOCは、バッテリ54の充電状態すなわち蓄電残量を示す値であり、例えばバッテリ充放電電流Ibat およびバッテリ電圧Vbat などに基づいて算出できる。
【0041】
ハイブリッド制御部102は、回転機MGの出力のみで要求TC入力トルクTtcdem を賄える場合には、バッテリ54からの電力のみで回転機MGを駆動して走行するモータ走行モードであるBEV(Battery Electric Vehicle)モードとする。BEVモードでは、K0クラッチ20を開放状態としてエンジン12を停止させ、回転機MGのみを駆動力源として用いて走行するBEV走行を行う。このBEVモードにおいては、要求TC入力トルクTtcdem を実現するようにMGトルクTmgを制御する。一方で、ハイブリッド制御部102は、少なくともエンジン12の出力を用いないと要求TC入力トルクTtcdem を賄えない場合には、エンジン走行モードであるHEV(Hybrid Electric Vehicle )モードとする。HEVモードでは、K0クラッチ20を係合状態として少なくともエンジン12を駆動力源として用いて走行するエンジン走行すなわちHEV走行を行う。このHEVモードにおいては、要求TC入力トルクTtcdem の全部または一部を実現するようにエンジントルクTe を制御し、要求TC入力トルクTtcdem に対してエンジントルクTe では不足するトルク分を補うようにMGトルクTmgを制御する。他方で、ハイブリッド制御部102は、回転機MGの出力のみで要求TC入力トルクTtcdem を賄える場合であっても、エンジン12等の暖機が必要な場合などには、HEVモードを成立させる。このように、ハイブリッド制御部102は、要求TC入力トルクTtcdem 等に基づいて、HEV走行中にエンジン12を自動停止したり、そのエンジン停止後にエンジン12を再始動したり、BEV走行中にエンジン12を始動したり、停車中にエンジン12を自動停止したり、エンジン12を始動したりして、BEVモードとHEVモードとを切り替える。
【0042】
変速制御部104は、Dレンジが選択された場合に、例えば車速Vやアクセル開度θacc 等の運転状態を変数として予め定められた変速マップ等を用いて自動変速機24の変速判断を行い、必要に応じて自動変速機24の複数の前進ギヤ段を自動的に切り替えるためのCB油圧制御指令信号Scbを油圧制御回路56へ出力する自動変速制御を実行する。また、シフトレバー64または運転席の近傍に設けられたマニュアル変速操作部材が運転者によって操作され、変速指示信号が供給された場合には、その変速指示に従って自動変速機24の前進ギヤ段を切り替えるマニュアル変速制御を実行する。変速制御部104はまた、シフトレバー64が操作されて操作ポジションPOSshが切り替えられた場合に、その切り替えられた操作ポジションPOSshに応じて自動変速機24のシフトレンジを切り替えるガレージ制御を実行する。
【0043】
自動運転制御部106は、自動運転としてオートクルーズ走行を実行するもので、オートクルーズ設定スイッチ88で設定された目標車速Vt で走行するのに必要な要求駆動トルクTrdemを算出するとともに、伝達損失や補機負荷、自動変速機24の変速比γ、トルクコンバータ22のトルク比等を考慮して、上記要求駆動トルクTrdemを実現するために必要な要求TC入力トルクTtcdem を求める。そして、その要求TC入力トルクTtcdem が得られるように、エンジン12を制御するエンジン制御指令信号Se を出力するとともに、回転機MGを制御するMG制御指令信号Smgを出力する。また、必要に応じて自動変速機24の前進ギヤ段を変速する。ここでの要求駆動トルクTrdemは、例えば目標車速Vt と実車速Vとの差などに基づいてフィードバック制御やフィードフォワード制御等によって求められる。また、先行車両に対して目標車間距離Dtを保持しつつ追従走行する場合には、車間距離Disが目標車間距離Dt となる状態で追従走行するのに必要な要求駆動トルクTrdemを算出し、その要求駆動トルクTrdemが得られるようにエンジントルクTe やMGトルクTmg、前進ギヤ段を制御する。先行車両の停車時や極低車速時には、LUクラッチ40を開放した状態でエンジン12をアイドルトルクTidle等で作動させることにより、トルクコンバータ22の入出力回転差ΔNtc(=Nmg-Nt )に基づいてクリープトルクを発生させ、自動ブレーキシステム90によるホイールブレーキ92のブレーキ力の制御と協調して電動車両10をクリープ走行させる。一方、先行車両の減速時など要求駆動トルクTrdemが負(マイナス)の場合は、エンジンブレーキや回転機MGによる回生ブレーキを発生させたり、必要な場合は自動ブレーキシステム90によって制御されるホイールブレーキ92のブレーキ力と合わせて負の要求駆動トルクTrdemが得られるようにする。
【0044】
充電制御部108は、例えば車両の減速時や制動時等に回転機MGを回生制御してバッテリ54を充電する際の制御を行うもので、充電状態値SOCが充放電効率等に基づいて予め定められた許容下限値SOCmin と許容上限値SOCmax との範囲内に保持されるように制御する。そして、充電状態値SOCが許容下限値SOCmin を下回った場合には、BEVモードを禁止してHEVモードのみで走行するとともに、そのHEVモードでの走行時すなわちエンジン12のみを駆動力源として用いて走行するエンジン走行時に、エンジン12によって回転駆動される回転機MGを回生制御してバッテリ54を強制的に充電する充電制御を実行する。具体的には、エンジン12により回転機MGを回転駆動する一方、インバータ52に対してMG制御指令信号Smgを出力することにより、回転機MGの回生制御で発電させてバッテリ54を充電するとともに、その回転機MGの発電電力(回生トルク)を制御してバッテリ54に対する充電量Pchを制御する。また、充電制御に起因して生じる駆動力変動が抑制されるように、充電量Pchすなわち回転機MGの回生トルクに相当する充電補償トルクTcom だけエンジントルクTe を増大させる。この強制的な充電制御は、充電状態値SOCが例えば許容下限値SOCmin よりも十分に高い目標充電状態値SOCt になるまで行なわれる。
【0045】
ここで、エンジントルクTe の制御には応答遅れがあるなど、充電制御に伴う駆動力変動をエンジントルクTe の増大制御で確実に防止することは困難である。特に、オートクルーズ走行時には運転者が加減速操作しないため、僅かな駆動力変動でも運転者に違和感を生じさせ易い。また、要求駆動トルクTrdemが小さい低車速の場合、充電制御に伴うエンジントルクTe の増加幅(充電補償トルクTcom )が相対的に大きくなるため、駆動力変動を生じる可能性が高いとともに、低車速ではロードノイズが小さいため駆動力変動が吸収され難く、駆動力変動によるドライバビリティの悪化が問題になる。
【0046】
また、本実施例では、オートクルーズ走行時におけるHEVモードでも、追従走行時や発進時等に、LUクラッチ40を開放した状態でエンジン12をアイドルトルクTidle等で作動させることにより、トルクコンバータ22の入出力回転差ΔNtcに基づいてクリープトルクを発生させ、自動ブレーキシステム90によるブレーキ力の制御と協調して電動車両10をクリープ走行させる場合がある。そのクリープ走行時に充電制御が開始されると、エンジントルクTe の増加に伴って、回転機MGの発電(回生トルク)に拘らずエンジン回転速度Ne が上昇する可能性がある。そして、そのエンジン回転速度Ne の上昇により、トルクコンバータ22の入出力回転差ΔNtcが拡大してクリープトルクが増加し、そのクリープトルクの増加に起因する駆動力変動でドライバビリティが悪化したり、エンジン回転速度Ne の上昇過渡時に共振領域を通過してこもり音が発生したりする可能性がある。
【0047】
これに対し、本実施例では図2のフローチャートに示すように、クルーズコントロールが作動中か否か、すなわち自動運転制御部106によるオートクルーズ走行を実行中か否かを判断し、オートクルーズ走行を実行中の場合は、要求駆動トルクTrdemに応じて充電量Pchを小さくして充電を制限するようになっている。図2のフローチャートは、例えばバッテリ54の充電状態値SOCが許容下限値SOCmin よりも少なくなった場合、或いは放電量が大きくなる低温時など、予め定められた充電要求時に実行が開始され、充電状態値SOCが目標充電状態値SOCt に達した場合等の予め定められた充電制御終了条件を満たすまで繰返し実行される。
【0048】
図2のステップS1では、基本充電量PBchを設定する。基本充電量PBchは一定値でも良いが、本実施例では目標充電状態値SOCt と現在の充電状態値SOCとの差ΔSOC(=SOCt -SOC)に基づいて、差ΔSOCが大きい場合には小さい場合に比較して基本充電量PBchが大きくなるように、予め定められたマップや演算式に従って設定される。バッテリ54の充放電に影響する他の車両状態や充電要求の度合等を考慮して基本充電量PBchが設定されても良い。ステップS2では、クルーズコントロールが作動中か否か、すなわち自動運転制御部106によるオートクルーズ走行を実行中か否かを判断し、クルーズコントロールが作動中でない場合すなわち手動運転による走行時には、ステップS5で基本充電量PBchがそのまま充電量Pchとされ、その充電量Pchで充電制御が実施される。このように手動運転による走行時には、基本充電量PBchをそのまま充電量Pchとして用いて充電制御が実施されるため、手動運転の際に充電制御が運転者に与えるドライバビリティ等の影響を考慮して基本充電量PBchが定められる。
【0049】
ステップS2の判断がYES(肯定)の場合、すなわちクルーズコントロールが作動中のオートクルーズ走行時には、ステップS3を実行する。ステップS3では、車速Vが予め定められた充電制限実施条件を満たすか否かを判断する。具体的には、車速Vが予め定められた充電制限判定車速Vs 以下の場合には、充電制限実施条件を満たすと判断し、ステップS4で充電を制限するが、V>Vs の場合は、ステップS5で基本充電量PBchをそのまま充電量Pchとする。充電制限判定車速Vs は、ロードノイズが小さくて充電制御に伴って生じる僅かな駆動力変動が問題になるような低車速で、例えば40km/時程度以下の車速範囲で予め実験等によって設定される。この充電制限実施条件は、充電の制限を必要最小限に抑制するためのもので、車速Vによる制限の代わりに、或いは加えて、車速V以外の条件が定められても良い。なお、上記ステップS3をステップS2の前に行なうことも可能である。
【0050】
ステップS4では、オートクルーズ走行時の充電量Pchを、前記基本充電量PBch以下の範囲で要求駆動トルクTrdemに応じて可変設定する。具体的には、例えば図3に示すように、要求駆動トルクTrdemが小さくなるに従って1.0以下の範囲で連続的に小さくなる充電量補正係数αが予め定められており、実際の要求駆動トルクTrdemに応じて図3のマップや演算式から充電量補正係数αを求め、その充電量補正係数αを前記基本充電量PBchに掛け算することにより充電量Pchを算出する。これにより、要求駆動トルクTrdemが小さい時には要求駆動トルクTrdemが大きい時に比較して充電量Pchが小さくなり、その充電量Pchを用いてバッテリ54の充電制御が行なわれる。図3では、充電量補正係数αがリニアに変化しているが、曲線等の非線形に変化させても良いし、折れ線状や階段状に変化させても良いなど、種々の態様が可能である。
【0051】
因みに、図4は自動運転であるオートクルーズ走行時に図2のフローチャートに従って充電量Pchが設定され、その充電量Pchで充電制御が行なわれた場合の各部の作動状態の変化を説明するタイムチャートの一例である。図2は、目標車速Vt が例えば20~30km/時程度の一定車速で、前記ステップS4で充電量Pchが基本充電量PBch以下の範囲で要求駆動トルクTrdemに応じて可変設定された場合であり、路面勾配Φの変化等に伴う車速Vの変化に伴って要求駆動トルクTrdemが増減変化すると、それに伴って充電量Pchが増減変化させられ、その要求駆動トルクTrdemおよび充電量Pchに応じて求められるエンジントルクTe に従ってスロットル弁開度θthが制御される。
【0052】
このように本実施例の電動車両10の電子制御装置100においては、自動運転であるオートクルーズ走行時の充電量Pchが、要求駆動トルクTrdemが小さい時は要求駆動トルクTrdemが大きい時に比較して小さくされるため、充電制御に伴う駆動力変動の影響が大きい要求駆動トルクTrdemが小さい場合、充電制御に伴うエンジントルクTe の増加幅(充電補償トルクTcom)が小さくなって駆動力変動が軽減され、ロードノイズが小さい低速走行時においても、駆動力変動によるドライバビリティの悪化が抑制される。一方、オートクルーズ走行時であっても、充電制御に伴う駆動力変動の影響が比較的小さくなる要求駆動トルクTrdemが大きい場合には充電量Pchが大きくされ、バッテリ54を速やかに充電できるため、要求駆動トルクTrdemが小さい時のドライバビリティの悪化を抑制しつつ所定の充電性能を確保できる。
【0053】
また、手動運転による走行時には、予め定められた基本充電量PBchで充電制御が行なわれる一方、オートクルーズ走行時には基本充電量PBch以下の範囲で充電量Pchが要求駆動トルクTrdemに応じて可変設定されるため、駆動力変動が問題になり難い手動運転による走行時の充電性能を適切に維持しつつ、オートクルーズ走行時の充電制御に起因するドライバビリティの悪化を適切に抑制することができる。
【0054】
また、車速Vが予め定められた充電制限判定車速Vs 以下の低速走行時であることを条件として、オートクルーズ走行時の充電量Pchが要求駆動トルクTrdemに応じて可変設定されるため、ロードノイズが小さい低速走行時の駆動力変動によるドライバビリティの悪化が適切に抑制される一方、ロードノイズが大きくて駆動力変動が認識され難い比較的高車速の場合(V>Vs)は、オートクルーズ走行時であっても手動運転の時と同じ基本充電量PBchで充電制御が実施されるため、充電量Pchの制限を必要最小限に抑制できる。
【0055】
また、LUクラッチ40を開放した状態でエンジン12をアイドルトルクTidle等で作動させることによりクリープトルクを発生させて走行するクリープ走行時に、要求駆動トルクTrdemに応じて充電量Pchが可変設定されると、クリープ走行は一般に要求駆動トルクTrdemが低い状況下で行なわれるため、充電量Pchが要求駆動トルクTrdemに応じて小さくされる。このため、その充電制御に伴うエンジントルクTe の増加幅(充電補償トルクTcom)が小さくなり、エンジントルクTe の増加に起因するエンジン回転速度Ne の上昇幅が減少する。これにより、エンジン回転速度Ne の上昇に伴うトルクコンバータ22の入出力回転差ΔNtcの拡大によるクリープトルクの増加が減少し、そのクリープトルクの増加に起因する駆動力変動によるドライバビリティの悪化が抑制されるとともに、エンジン回転速度Ne の上昇過渡時のこもり音の発生が回避乃至は抑制される。
【0056】
なお、上記実施例では、図2のステップS3の充電制限実施条件として車速Vが定められていたが、充電の必要性や緊急性を考慮して充電状態値SOCに関する充電制限実施条件を、車速Vによる充電制限条件の代わりに、或いは追加して設けることもできる。具体的には、充電状態値SOCが予め定められた充電制限判定値SOCs 以上であるか否かを判断し、充電制限判定値SOCs 以上であれば、充電制限実施条件を満たすと判断してステップS4を実行し、要求駆動トルクTrdemに応じて充電量Pchを制限する一方、SOC<SOCs の場合には、充電の必要性が高いと判断してステップS5で基本充電量PBchをそのまま充電量Pchとする。この充電制限判定値SOCs は、充電状態値SOCを速やかに回復させる必要がある低充電状態値SOCの場合を除外するためのもので、許容下限値SOCmin よりも高く且つ目標充電状態値SOCt よりも低い値で、例えば40%程度以上の値が予め実験等によって設定される。
【0057】
この場合には、バッテリ54の充電状態値SOCが予め定められた充電制限判定値SOCs 以上であることを条件として、オートクルーズ走行時の充電量Pchが要求駆動トルクTrdemに応じて可変設定されるため、充電状態値SOCに関する充電要求以外の例えば低温時等による充電要求に基づいて強制充電制御が開始された場合に、要求駆動トルクTrdemが小さい時の駆動力変動によるドライバビリティの悪化が抑制される。すなわち、バッテリ54の充電状態値SOCが充電制限判定値SOCs よりも低い場合は、要求駆動トルクTrdemが小さいオートクルーズ走行時であっても手動運転の時と同じ基本充電量PBchで充電制御が実施され、バッテリ54を速やかに充電して蓄電残量不足になることが適切に防止されるため、蓄電残量不足になることを回避しつつ、充電制限判定値SOCs 以上の状態で充電制御が開始された場合に要求駆動トルクTrdemが小さい時の充電制御に起因する駆動力変動によるドライバビリティの悪化を適切に抑制できる。
【0058】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0059】
10:ハイブリッド式電動車両(車両) 12:エンジン(駆動力源) 14:駆動輪 16:動力伝達装置(動力伝達経路) 22:トルクコンバータ 54:バッテリ(蓄電装置) 100:電子制御装置(制御装置) 106:自動運転制御部 108:充電制御部 MG:回転機(駆動力源) Trdem:要求駆動トルク Pch:充電量 PBch:基本充電量
図1
図2
図3
図4