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特許7533447中間転写媒体、記録媒体、加飾シート及び加飾品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】中間転写媒体、記録媒体、加飾シート及び加飾品
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20240806BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20240806BHJP
   B44C 1/17 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20240806BHJP
【FI】
B41M5/382 800
B41M5/52 400
B44C1/17 H
B32B7/06
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021512054
(86)(22)【出願日】2020-03-27
(86)【国際出願番号】 JP2020014256
(87)【国際公開番号】W WO2020203861
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】P 2019068665
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】與田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】小林 良正
(72)【発明者】
【氏名】吉野 周平
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-088316(JP,A)
【文献】特開2000-118152(JP,A)
【文献】特開2008-201089(JP,A)
【文献】特開2001-270234(JP,A)
【文献】特開平11-034590(JP,A)
【文献】特開2002-307815(JP,A)
【文献】特開2005-103775(JP,A)
【文献】特開2009-154399(JP,A)
【文献】特開2017-065234(JP,A)
【文献】特開平11-263075(JP,A)
【文献】特開2001-121831(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159870(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382
B41M 5/52
B44C 1/17
B32B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部と、を含む中間転写媒体であって、
前記転写部は、少なくとも、前記基材とは反対側の最表面に位置し、画像が形成される画像形成層と、前記画像形成層よりも前記基材側に位置する光沢層と、前記光沢層よりも前記基材側に位置する隠蔽層と、を含む積層構造を有し、
かつ、前記転写部の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、
前記隠蔽層が、着色剤を含有している、中間転写媒体。
【請求項2】
前記転写部が、前記基材に最も近くに位置する剥離層を含む、請求項1に記載の中間転写媒体。
【請求項3】
前記光沢層が、金属顔料含有層、金属蒸着層、およびパール顔料含有層から選択される1または2以上である、請求項1または2に記載の中間転写媒体。
【請求項4】
前記光沢層が、インジウム蒸着層または錫蒸着層である、請求項1~3の何れか一項に記載の中間転写媒体。
【請求項5】
前記光沢層が不連続である、請求項1~4の何れか一項に記載の中間転写媒体。
【請求項6】
記録媒体であって、
少なくとも、基材、隠蔽層、光沢層、および画像が形成される画像形成層、がこの順番で積層されており、その全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、
前記隠蔽層が、着色剤を含有しており、
前記記録媒体は、前記画像形成層に画像を形成した後で、被転写体と一体化されるものであり、
前記基材は、前記隠蔽層、前記光沢層、及び画像が形成された前記画像形成層とともに、前記被転写体と一体化される、記録媒体。
【請求項7】
前記請求項1~5の何れか一項に記載の中間転写媒体における画像形成層に画像を形成する画像形成工程を含む、加飾シートの製造方法。
【請求項8】
前記画像形成工程が、昇華型熱転写による画像形成である、請求項7に記載の加飾シー
トの製造方法。
【請求項9】
前記請求項6に記載の記録媒体における画像形成層に画像を形成する画像形成工程を含む、加飾シートの製造方法。
【請求項10】
前記画像形成工程が、昇華型熱転写による画像形成である、請求項9に記載の加飾シートの製造方法。
【請求項11】
少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に剥離可能に設けられた加飾部と、を含む加飾シートであって、
前記加飾部は、少なくとも、前記基材側から、隠蔽層、光沢層、および画像が形成された画像層がこの順番で積層された積層構造を有し、
かつ、前記加飾部の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、
前記隠蔽層が、着色剤を含有している、加飾シート。
【請求項12】
少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に設けられた加飾部と、を含む加飾シートであって、
前記加飾部は、少なくとも、前記基材側から、隠蔽層、光沢層、および画像が形成された画像層がこの順番で積層された積層構造を有し、
かつ、前記加飾シートの、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、
前記隠蔽層が、着色剤を含有しており、
前記加飾シートは、被転写体と一体化されるものであり、
前記基材は、前記隠蔽層、前記光沢層、及び前記画像層とともに、前記被転写体と一体化される、加飾シート。
【請求項13】
前記加飾部の前記基材とは反対側の表面に接着層が位置する、請求項11または12に記載の加飾シート。
【請求項14】
前記接着層が、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤の何れか一方または双方を含む、請求項13に記載の加飾シート。
【請求項15】
前記接着層が、粘着層またはヒートシール層である、請求項13または14に記載の加飾シート。
【請求項16】
前記基材の一部または全部が分離可能である、請求項11に記載の加飾シート。
【請求項17】
被転写体と、前記請求項11~16の何れか一項に記載の加飾シートとを一体化させる一体化工程を含む、加飾品の製造方法。
【請求項18】
前記一体化工程が、被転写体における所定の部分に、前記請求項11に記載の加飾シートにおける加飾部を転写する転写工程である、請求項17に記載の加飾品の製造方法。
【請求項19】
前記一体化工程が、被転写体における所定の部位に、前記請求項12に記載の加飾シートを貼り合わせる工程である、請求項17に記載の加飾品の製造方法。
【請求項20】
前記被転写体における所定の部分が透明である、請求項18または19に記載の加飾品の製造方法。
【請求項21】
前記請求項11~16の何れか一項に記載の加飾シートと一体化されている、加飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中間転写媒体、記録媒体、加飾シートの製造方法、加飾シート、加飾品の製造方法、および加飾品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱転写画像を有する印画物を製造する手段として、色材層を備えた熱転写シートと、受容層を備えた熱転写受像シートとを組み合わせ、熱転写シートにエネルギーを印加して熱転写受像シートの受容層に熱転写画像を形成する熱転写方法が知られている。また、熱転写受像シートの受容層に画像が形成された印画物ではなく、任意の被転写体に熱転写画像を形成する場合には、画像形成層を含む転写部を備える中間転写媒体を用い、この中間転写媒体の画像形成層に一旦画像を形成して画像層とし、この画像層を含む転写部を被転写体に転写することで、被転写体へ画像を形成する方法も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭62-238791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、印画物の多様化に伴い、ガラスなどに代表される透明な被転写体へ画像を形成して加飾することが行われているが、未だ開発途上である。特に透明な被転写体に光沢感のある画像を形成する場合にあっては、印刷工程が煩雑となり改良の余地があった。
【0005】
本開示は、光沢感のある画像を簡便に形成可能であり、透明な被転写体にも使用可能な中間転写媒体、記録媒体、加飾シートの製造方法、加飾シート、加飾品の製造方法、および加飾品を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本開示の中間転写媒体は、少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部と、を含む中間転写媒体であって、前記転写部は、少なくとも、前記基材とは反対側の最表面に位置し、画像が形成される画像形成層と、前記画像形成層よりも前記基材側に位置する光沢層と、前記光沢層よりも前記基材側に位置する隠蔽層と、を含む積層構造を有し、かつ、前記転写部の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、前記隠蔽層が、着色剤を含有している
【0007】
上記課題を解決するための本開示の記録媒体は、少なくとも、基材、隠蔽層、光沢層、および画像が形成される画像形成層、がこの順番で積層されており、その全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、前記隠蔽層が、着色剤を含有しており、前記記録媒体は、前記画像形成層に画像を形成した後で、被転写体と一体化されるものであり、前記基材は、前記隠蔽層、前記光沢層、及び画像が形成された前記画像形成層とともに、前記被転写体と一体化される
【0008】
上記課題を解決するための本開示の加飾シートの製造方法は、本開示の中間転写媒体における画像形成層に画像を形成する画像形成工程を含む。
【0009】
上記課題を解決するための本開示の加飾シートの製造方法は、本開示の記録媒体における画像形成層に画像を形成する画像形成工程を含む。
【0010】
上記課題を解決するための本開示の加飾シートは、少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に剥離可能に設けられた加飾部と、を含む加飾シートであって、前記加飾部は、少なくとも、前記基材側から、隠蔽層、光沢層、および画像が形成された画像層がこの順番で積層された積層構造を有し、かつ、前記加飾部の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、前記隠蔽層が、着色剤を含有している
【0011】
上記課題を解決するための本開示の加飾シートは、少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に設けられた加飾部と、を含む加飾シートであって、前記加飾部は、少なくとも、前記基材側から、隠蔽層、光沢層、および画像が形成された画像層がこの順番で積層された積層構造を有し、かつ、前記加飾部の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、前記隠蔽層が、着色剤を含有しており、前記加飾シートは、被転写体と一体化されるものであり、前記基材は、前記隠蔽層、前記光沢層、及び前記画像層とともに、前記被転写体と一体化される
【0012】
上記課題を解決するための本開示の加飾品の製造方法は、被転写体と、本開示の加飾シートとを一体化させる一体化工程を含む。
【0013】
上記課題を解決するための本開示の加飾品は、本開示の加飾シートと一体化されている。
【発明の効果】
【0014】
本開示の中間転写媒体、記録媒体、加飾シートの製造方法、加飾シート、加飾品の製造方法、および加飾品によれば、たとえば透明な被転写体に対しても、光沢感のある画像を簡便に、かつオンデマンドで形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の第1の実施形態にかかる中間転写媒体の一例を示す概略断面図である。
図2】本開示の第2の実施形態にかかる中間転写媒体の一例を示す概略断面図である。
図3】本開示の第3の実施形態にかかる加飾シートの一例を示す概略断面図である。
図4】本開示の第4の実施形態にかかる加飾シートの一例を示す概略断面図である。
図5】本開示の第5の実施形態にかかる加飾シートの一例を示す概略断面図である。
図6】本開示の第6の実施形態にかかる加飾品の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に例示する実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各層の厚み、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0017】
(1)中間転写媒体
以下、本開示の実施形態にかかる中間転写媒体について説明する。
【0018】
図1は、本開示の第1の実施形態にかかる中間転写媒体の一例を示す概略断面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態にかかる中間転写媒体1は、基材10と、この基材10の一方の面(図1では上面)に剥離可能に設けられた転写部20と、を含んでいる。そして、転写部20は、基材10とは反対側の最表面(図1では最上面)に位置し、画像が形成される画像形成層21と、この画像形成層21よりも基材10側(図1では、画像形成層21の下側)に位置する光沢層22と、を含む積層構造を有している。そしてさらに、本実施形態にかかる中間転写媒体1を構成する転写部20の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であることに特徴を有している。
【0020】
本実施形態にかかる中間転写媒体1によれば、転写部20の最表面に位置する画像形成層21に、所望の画像を、たとえばオンデマンドで形成した後に、画像が形成された画像形成層21と光沢層22を含む転写部20全体を、被転写体に転写することで、被転写体に、光沢感を有する所望の画像を簡便に形成できる。
【0021】
以下に本実施形態にかかる中間転写媒体1の各構成について説明する。
【0022】
・基材
基材10は、この上に設けられる転写部20やその他の各種機能を有する層を支持する。したがって、この機能を有するものであれば特に限定されることはなく、従来の中間転写媒体において用いられている基材から適宜選択して用いることができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトンもしくはポリエーテルサルホン等の耐熱性の高いポリエステル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリエチレン誘導体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリメチルペンテンまたはアイオノマー等のプラスチックの延伸または未延伸フィルムを例示できる。また、これらの材料を2種以上積層した複合フィルムも使用することもできる。
【0023】
基材10の厚さは、その強度および耐熱性等が適切になるように材料に応じて適宜選択できるが、通常は1μm以上100μm以下が好ましい。
【0024】
・転写部
本実施形態にかかる中間転写媒体1は、上記基材10上に、光沢層22と画像形成層21との積層構造を有する転写部20が設けられており、この転写部20全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であることに特徴を有している。最終的に被転写体に転写される転写部20全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率を40%以下とすることにより、画像形成層21に形成された画像への被転写体の地模様の影響や外光の影響を抑えることができ、光沢層22が本来有する光沢感が低減されることなく、所望の意匠性を被転写体に付与できる。このような観点から、転写部20全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率は、30%以下が好ましく、20%以下がより好ましい。
【0025】
ここで、本明細書における「380nmから780nmまでの波長域での最大透過率」は、紫外可視分光光度計(UV-3100PC (株)島津製作所)に積分球付属装置(ISR-3100 (株)島津製作所)を取り付けた装置により測定した値である。より具体的には、被転写体として厚さ5mmの透明ガラス板(GB300 アズワン(株))を用意し、この被転写体上に中間転写媒体1から転写部20を転写し、当該転写部20が転写された被転写体を、当該装置の試料光束側に設置し、対照光束側にブランクとして、前記被転写体と同一の透明ガラス板を設置して、380nmから780nmにおける透過率を測定した際の最大値である。
【0026】
なお、本実施形態にかかる中間転写媒体1における転写部20は、画像形成層21と光沢層22とを含むが、画像形成層21は透明な場合も多く、その場合には、光沢層22の透過率が転写部20全体の透過率と言える。
【0027】
・画像形成層
転写部20を構成する画像形成層21は、最終的に被転写体に付与したい所望の画像を形成するための層である。したがって、本実施形態にかかる中間転写媒体1における画像形成層21は、まだ画像が形成されていない状態である。なお、本明細書においては、画像が形成された後の画像形成層21のことを画像層と呼ぶ。そして、前記のとおり、画像形成層21は、画像を形成するための層であるが故に、転写部20において基材10とは反対側の最表面に位置している。
【0028】
画像形成層21については、種々の手段により所望の画像を形成可能な層であれば特に限定されることはなく、画像を形成する手段などに応じて適宜設計できる。たとえば、昇華型の熱転写シートを用いて画像を形成する場合にあっては、昇華性染料を受容可能な受容層を画像形成層21とすればよい。一方で熱溶融型の熱転写シートを用いて画像を形成する場合には、熱溶融インキを定着可能な、各種紙や各種プラスチックフィルムを画像形成層21とすればよい。なお、いずれの場合でも、画像形成層21の下側に位置する光沢層22の光沢感を画像に反映させるためには、画像形成層21は透明、または半透明であることが好ましい。
【0029】
画像形成層21の形成方法についても特に限定されることはなく、たとえば各種樹脂材料を適当な溶媒に分散、あるいは溶解した画像形成層用塗工液を調製し、この塗工液を後述する光沢層22上に塗布乾燥することで形成してもよい。一方で、各種樹脂材料からなるシートを各種接着剤を用いて光沢層22上に貼布してもよい。
【0030】
画像形成層21の厚さは、たとえば1μm以上10μm以下である。
【0031】
・光沢層
転写部20を構成する光沢層22は、上記画像形成層21に形成された画像に光沢感を付与し、転写部20が転写された被転写体に光沢感のある加飾を施すための層である。光沢層22は、転写部20において上記画像形成層21よりも基材10側に位置している。また、光沢層22は、上記で説明したように、当該光沢層22を含む転写部20全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下となるような透過率であることが必要であり、画像形成層21が透明の場合には、当該光沢層の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であることが必要となる。
【0032】
光沢層22としては、たとえば、金属顔料含有層、金属蒸着層、さらにはパール顔料含有層などが挙げられる。金属顔料含有層を構成する金属顔料の材質としては、アルミニウム、ニッケル、錫、クロム、インジウムなどが挙げられ、これら金属顔料を含有せしめる樹脂としては、ビニル樹脂やポリエステルなどが挙げられる。金属蒸着層を構成する金属としては、インジウムや錫などが挙げられる。また、パール顔料含有層を構成するパール顔料の原料としては、酸化チタン被覆シリカ、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母、酸化鉄被覆雲母チタン、紺青被覆雲母チタン、紺青-酸化鉄被覆雲母チタン、酸化クロム被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、有機顔料被覆雲母チタン、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆合成雲母などの酸化物被覆雲母;酸化チタン被覆ガラス粉末、酸化鉄被覆ガラス粉末などの酸化物被覆ガラス粉末;酸化チタン被覆アルミニウム粉末などの酸化物被覆金属粒子;塩基性炭酸鉛、砒酸水素鉛、酸化塩化ビスマスなどの鱗片状箔片;魚鱗粉、貝殻片、真珠片などが挙げられ、これを含有せしめる樹脂としては、ビニル樹脂やポリエステルなどが挙げられる。
【0033】
光沢層22の形成方法についても特に限定されることはなく、たとえば金属顔料含有層やパール顔料含有層の場合には、各種顔料および各種樹脂材料を適当な溶媒に分散、あるいは溶解した光沢層用塗工液を調製し、この塗工液を基材10上に塗布乾燥することで形成してもよい。金属蒸着層の場合には、各種蒸着法によって、基材10上に各種金属蒸着してもよい。
【0034】
光沢層22の厚さについては、転写部20全体の可視光透過率などを考慮しつつ適宜設計可能であるが、金属顔料含有層の場合には0.1μm以上10μm以下程度が好ましく、金属蒸着層の場合には10nm以上500nm以下程度が好ましく、パール顔料含有層の場合には0.3μm以上10μm以下程度が好ましい。
【0035】
図示はしないが、光沢層22は、必ずしも全面に連続して設けられている必要はなく、所望する意匠や画像形成層21に形成される画像に応じて、不連続に、つまり部分的に設けられていてもよい。
【0036】
図2は、本開示の第2の実施形態にかかる中間転写媒体の一例を示す概略断面図である。
【0037】
図2に示す第2の実施形態にかかる中間転写媒体1は、画像形成層21および光沢層22に加え、隠蔽層23および剥離層24が転写部20に含まれている点において、図1に示す第1の実施形態にかかる中間転写媒体1と異なっている。このように、本開示の実施形態にかかる中間転写媒体1における転写部20は、画像形成層21と光沢層22のみから構成する必要はなく、図2に示すように、隠蔽層23や剥離層24を含んでもよく、これ以外の各種機能層を含んでもよい。なお、画像形成層21および光沢層22以外の層が含まれる場合であっても、転写部20全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率は40%以下であることが必要である。
【0038】
・隠蔽層
転写部20の一部となる隠蔽層23は、転写部20全体の隠蔽性を向上せしめるための層である。転写部20における隠蔽層23の位置については特に限定されることはないが、画像形成層21に形成された画像と光沢層22とにより所望の意匠性を発揮せしめることから、画像形成層21と光沢層22の間に隠蔽層が位置することはなく、したがって、光沢層22よりも基材側に位置することが必要となる。
【0039】
隠蔽層23としては、所望の隠蔽性を有する層であれば特に限定されることはなく、たとえば樹脂と着色剤とが含まれていてもよい。この場合の樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、あるいはポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミ、セルロース樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂などを挙げることができる。また、着色剤としては、公知の着色剤、たとえば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、ブラックダイヤモンド、チタンブラック、酸化鉄、鉄黄、群青などを挙げることができる。
【0040】
・剥離層
転写部20の一部となる剥離層24は、転写部20を被転写体に転写する際に、当該転写部の剥離性を向上せしめるための層である。したがって、転写部20における剥離層24は、図2に示すように、転写部20の画像形成層21とは反対側の表面、つまり基材10と接する面に位置することが必要となる。
【0041】
剥離層24としては、たとえば、ワックス類、シリコーンワックス、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、フッ素樹脂、フッ素変性樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、熱架橋性エポキシ-アミノ樹脂及び熱架橋性アルキッド-アミノ樹脂等を含有していてもよく、これらのうちの1種の樹脂を単独で含有していてもよく、2種以上の樹脂を含有していてもよい。
【0042】
剥離層24は、転写後には最表面に位置することから保護層としての機能を持たせてもよい。
【0043】
剥離層24の形成方法についても特に限定はないが、上記の樹脂を適当な溶媒に分散、あるいは溶解した剥離層用塗工液を調製し、この塗工液を、たとえば基材10上に塗布・乾燥して形成できる。剥離層24の厚みについても特に限定はないが、0.5μm以上5μm以下としてもよい。
【0044】
(2)記録媒体
以下、本開示の実施形態にかかる記録媒体について説明する。
【0045】
本開示の実施形態にかかる記録媒体は、少なくとも、基材、光沢層、および画像が形成される画像形成層、がこの順番で積層されており、その全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下である。記録媒体を構成する基材、光沢層および画像形成層のそれぞれについては、前記中間転写媒体1におけるそれぞれと同様であるため、ここでの説明は省略する。本開示の実施形態にかかる記録媒体は、基材、光沢層および画像形成層以外の層が含まれていてもよい。具体的には、前記中間転写媒体1と同様である。
【0046】
本開示の実施形態にかかる記録媒体は、画像形成層に画像が形成されることで加飾シートとなる。したがって、光沢層および画像形成層は基材から剥離不可能であり、そのままの状態にて被転写体と一体化される点において前記中間転写媒体と異なっているが、その作用効果は、前記中間転写媒体1と同じである。
【0047】
(3)加飾シート
次に、本開示の実施形態にかかる加飾シートについて説明する。
【0048】
図3は、本開示の第3の実施形態にかかる加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0049】
図3に示すように、本実施形態にかかる加飾シート2は、基材10と、この基材10の一方の面(図3では上面)に剥離可能に設けられた加飾部30と、を含んでいる。そして、加飾部30は、画像が形成された画像層31と、光沢層22と、を含む積層構造である。そしてさらに、本実施形態にかかる加飾シート2を構成する加飾部30の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であることに特徴を有している。
【0050】
本実施形態にかかる加飾シート2によれば、所望の画像が形成された画像層31と光沢層22とを含む加飾部全体を、被転写体に転写することで、被転写体に光沢感を有する所望の画像を簡便に形成できる。
【0051】
ここで、図1図3とを比較すれば分かるように、本実施形態にかかる加飾シート2は、図1に示す第1の実施形態にかかる中間転写媒体1の画像形成層21に画像が形成されることで、当該画像形成層21が画像層31となったものである。したがって、本実施形態にかかる加飾シート2を構成する基材10および光沢層22は、第1の実施形態にかかる中間転写媒体1と同じであるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
・加飾部
本実施形態にかかる加飾シート2を構成する加飾部30は、光沢層22と画像層31との積層構造を有し、加飾部30全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であることを特徴としている。なお、本実施形態における加飾部30は、光沢層22が画像層31よりも基材10側に位置している。当該特徴を有する加飾部30によれば、加飾部30を被転写体に転写した際に、外光の影響を抑えることができ、光沢層22が本来有する光沢感が低減されることなく、所望の意匠性を被転写体に付与できる。
【0053】
ここで、加飾部30の「380nmから780nmまでの波長域での最大透過率」については、前記中間転写媒体1の転写部20における「380nmから780nmまでの波長域での最大透過率」と同義であり、試料光束側に測定対象である加飾シートを設置して測定できる。
【0054】
・画像層
加飾部30を構成する画像層31は、すでに画像が形成されている層である。当該画像層31は、たとえば図1に示す第1の実施形態にかかる中間転写媒体1における画像形成層21に画像を形成することで得られる。したがって、中間転写媒体における画像形成層21が受容層の場合には、昇華型熱転写シートを用いて画像を形成することで得られ、一方で熱溶融インキを定着可能な層の場合には、熱溶融型熱転写シートを用いて画像を形成することで得られる。なお、画像層31は、必ずしも昇華型熱転写シートや熱溶融型熱転写シートを用いて形成されていなくてもよく、所望の画像が形成されている層であればよい。
【0055】
図4は、本開示の第4の実施形態にかかる加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0056】
本実施形態にかかる加飾シート2は、図2に示す本開示の第2の実施形態にかかる中間転写媒体1の画像形成層21に画像を形成することで、当該画像形成層21を画像層31としたものである。なお、本実施形態にかかる加飾シート2における加飾部30においても、光沢層22が画像層31よりも基材10側に位置している。本実施形態にかかる加飾シート2を構成する各層については、上記で説明済みであり、ここでの説明は省略する。
【0057】
図5は、本開示の第5の実施形態にかかる加飾シートの一例を示す概略断面図である。
【0058】
本実施形態にかかる加飾シート2は、図4に示す本開示の第4の実施形態にかかる加飾シート2における加飾部30の表面(図5では上面)に接着層50が設けられている点に特徴を有している。このように、加飾部30の表面に接着層50を設けることにより、加飾部30を被転写体と一体化する際の密着性を向上できる。特に、加飾部30を構成する画像層31自体に密着性能がない場合、および密着性能が低い場合には有効である。
【0059】
なお、本実施形態にかかる加飾シート2における加飾部30においても、光沢層22が画像層31よりも基材10側に位置している。また、本実施形態にかかる加飾シート2を構成する各層のうち、接着層50以外の各層については、上記で説明済みであり、ここでの説明は省略する。
【0060】
・接着層
本実施形態にかかる加飾シート2における接着層50は限定されない。従来から加飾シート2の加飾部30を被転写体に接着・固定する際に用いられている各種接着層を適宜使用できる。接着層50は、接着性を有する成分を含有してもよい。接着性を有する成分としては、アクリル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、ポリエステル、エポキシ樹脂、ポリイミド、合成ゴム等を例示できる。接着層50は、接着性を有する成分として、複数の成分を含有してもよい。接着層50は、接着フィルムや、接着シートでもよい。接着層16の厚みは、1μm以上1000μm以下が好ましい。
【0061】
接着層50は、常時粘着性を有している、いわゆる粘着層でもよい。粘着層の成分は特に限定されない。粘着層としては、たとえば、アクリル樹脂、ビニル樹脂、ポリエステル、ウレタン樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂等を例示できる。粘着層の厚みについても特に限定はなく、たとえば、5μm以上20μm以下が一般的であり、好ましくは8μm以上10μm以下である。
【0062】
接着層50が粘着層である場合において、粘着層の形成方法についても特に限定されることはない。たとえば、上記樹脂を適当な溶媒に分散、あるいは溶解した粘着層用塗工液を調整し、この塗工液を、加飾部30上に塗布・乾燥して形成できる。一方で、いわゆるマウントフィルムや両面テープと呼ばれている粘着シートを加飾部30上に貼り合わせることで、粘着層としてもよい。
【0063】
接着層50は、熱により粘着性を発現する、いわゆるヒートシール層でもよい。ヒートシール層には、被転写体との接着性が良好な材料を用いることが好ましく、具体的には、エチルセルロース、酢酪酸セルロース等のセルロース誘導体、ポリスチレン、ポリα-メチルスチレン等のスチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート等のアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール等のビニル樹脂、ポリエステル、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等を例示できる。
【0064】
接着層50がヒートシール層である場合において、ヒートシール層の形成方法についても特に限定されることはない。たとえば、上記の樹脂を適当な溶媒に分散、あるいは溶解したヒートシール層用塗工液を調製し、この塗工液を、加飾部30上に塗布・乾燥して形成できる。一方で、基材上にヒートシール層が積層されたヒートシール層転写シートを準備し、この転写シートを用いて加飾部30上にヒートシール層を転写して形成してもよい。ヒートシール層の厚みも特に限定されないが、たとえば0.1μm以上20μm以下が好ましい。
【0065】
なお、接着層50は、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤の何れか一方または双方を含んでもよい。紫外線吸収剤や紫外線散乱剤を含むことにより、接着層50に紫外線遮断性能を付与できる。
【0066】
紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の種類は限定されない。紫外線吸収材としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、ヒドロキシフェニルトリアジン等を例示できる。紫外線散乱剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム等を例示できる。これらの中でも、ベンゾトリアゾールが特に好ましい。
【0067】
紫外線吸収剤や紫外線散乱剤の含有量は特に限定されない。たとえば、接着層50の質量に対して0.1質量%以上15質量%以下としてもよく、0.5質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0068】
次に、上記で説明した本開示の実施形態にかかる加飾シートの変形例について説明する。
【0069】
・加飾シートの変形例(1)
本開示の加飾シートにおいては、加飾シートを構成する基材の一部または全部が分離可能であってもよい。これにより、基材が厚い状態にて加飾シートを製造するとともに、加飾シートを被転写体と一体化する際には、基材のない状態または基材が薄い状態とできる。基材を分離可能とするための具体的な手段については、特に限定されない。たとえば、基材を積層構造としつつ、積層構造を構成する層間の密着力を調整してもよく、積層構造を構成する層に表面処理を施すことで、任意の層間を分離界面とできる。
【0070】
・加飾シートの変形例(2)
本開示の加飾シートは、少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に設けられた加飾部と、を含む加飾シートであって、前記加飾部は、少なくとも、画像が形成された画像層と、光沢層と、を含む積層構造を有し、かつ、前記加飾シートの、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であってもよい。上記で説明した加飾シートは、加飾部が基材から転写可能に設けられており、この加飾部のみを被転写体に転写することを前提としていたが、これに限定されることはなく、加飾シート全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下とすることにより、加飾シート全体を被転写体と一体化しても、上記と同様の作用効果を発揮できる。つまり、この加飾シートは、上記で説明した本開示の記録媒体における画像形成層に画像が形成されたものといえる。
【0071】
この場合にあっても加飾シートの構成自体は上記で説明した種々の構成を採用できる。
【0072】
また、この場合における加飾シートと被転写体との一体化の方法についても特に限定されることはなく、上記で説明した各種接着層や、マウントフィルムや両面テープなどの粘着シートを使用できる。
【0073】
加飾シートの全体を被転写体と一体化する際には、加飾シートにおける基材側において被転写体と一体化してもよく、加飾シートにおける加飾部側において被転写体と一体化してもよい。
【0074】
加飾シートにおける基材側において被転写体と一体化する場合、被転写体は自由に選択できる。この場合において加飾シートの加飾部は加飾シート側から認識される。
【0075】
一方で、加飾シートにおける加飾部側において被転写体と一体化する場合、被転写体としてはアクリル板、アクリルブロックやガラスなど、透明なものが選択される。この場合において加飾シートの加飾部は透明な被転写体側から、被転写体を通して認識されるため、加飾部の画像に奥行き感や光沢感が与えられ、高い意匠性を付与できる。なお、本開示において、透明とは、380nm以上700nm以下の波長光域における平均透過率が、50%以上であることを意味する。
【0076】
(4)加飾品
次に、本開示の実施形態にかかる加飾品について説明する。
【0077】
図6は、本開示の第6の実施形態にかかる加飾品の一例を示す概略断面図である。
【0078】
図6に示すように、加飾品3は、加飾対象となる被転写体70上に、本開示の第5の実施形態にかかる加飾シート2における加飾部30が接着層50としてのヒートシール層を介して一体化されている。このタイプの加飾品3は、画像層31が光沢層22よりも被転写体70側に位置することから、図中の矢印で示すように、被転写体70を通して画像層31および光沢層22が視認されることとなる。したがって、この場合の被転写体70は透明であることが好ましい。この加飾品3によれば、加飾部30の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であるため、被転写体70とは反対側から侵入する外光に影響を受けることなく、被転写体70側から画像層31に形成された所望の画像と光沢層22による光沢感を視認できる。
【0079】
被転写体70としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル等からできた物品を挙げることができる。被転写体70がガラスなど強度のある材質の場合には、画像視認面の耐久性を向上できる点で好ましい。
【0080】
(5)加飾シートの製造方法
次に、本開示の実施形態にかかる加飾シートの製造方法について説明する。
【0081】
本開示の実施形態にかかる加飾シートの製造方法は、上記で説明した本開示の実施形態にかかる中間転写媒体における画像形成層に画像を形成する画像形成工程を含む、ことを特徴としている。ここで画像形成層に画像を形成する方法については特に限定されることはなく、上記で説明したように昇華型の熱転写シートや熱溶融型の熱転写シートを用いてもよく、その他の画像形成方法を用いてもよい。中でも、所望の意匠の再現性の観点からは昇華型熱転写シートを用いることが好ましい。
【0082】
(6)加飾品の製造方法
次に、本開示の実施形態にかかる加飾品の製造方法について説明する。
【0083】
本開示の実施形態にかかる加飾品の製造方法は、上記で説明した本開示の実施形態にかかる加飾シートまたはその変形例を用い、被転写体と加飾シートとを一体化させる一体化工程を含むことを特徴としている。
【0084】
一体化工程については特に限定されない。たとえば、被転写体における所定の部位に加飾シートの加飾部を転写する転写工程でもよい。一方で、被転写体における所定の部位に、加飾シートを貼り合わせる工程でもよい転写工程については特に限定されることはなく、従来公知の転写工程を採用可能である。また、貼り合わせる工程についても特に限定されることはなく、上記で説明した接着層、マウントフィルム、両面テープなどを用いて貼り合わせてもよい。
【0085】
本開示の中間転写媒体は、少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に剥離可能に設けられた転写部と、を含む中間転写媒体であって、前記転写部は、少なくとも、前記基材とは反対側の最表面に位置し、画像が形成される画像形成層と、前記画像形成層よりも基材側に位置する光沢層と、を含む積層構造を有し、かつ、前記転写部の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、下記(i)~(v)の1つまたは複数を満たし、複数を満たす場合には下記(i)~(v)の何れを組み合わせてもよい。
(i)前記転写部が、前記基材に最も近くに位置する剥離層を含む。
(ii)前記転写部が、前記光沢層よりも基材側に位置する隠蔽層を含む。
(iii)前記光沢層が、金属顔料含有層、金属蒸着層、およびパール顔料含有層から選択される1または2以上である。
(iv)前記光沢層が、インジウム蒸着層または錫蒸着層である。
(v)前記光沢層が不連続である。
【0086】
本開示の記録媒体は、少なくとも、基材、光沢層、および画像が形成される画像形成層、がこの順番で積層されており、その全体の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、下記(i)を満たしてもよい。
(i)前記基材の一部または全部が分離可能である。
【0087】
本開示の加飾シートの製造方法は、本開示の中間転写媒体における画像形成層に画像を形成する画像形成工程を含み、下記(i)を組み合わせてもよい。
(i)前記画像形成工程が、昇華型熱転写による画像形成である。
【0088】
本開示の加飾シートの製造方法は、本開示の記録媒体における画像形成層に画像を形成する画像形成工程を含み、下記(i)を組み合わせてもよい。
(i)前記画像形成工程が、昇華型熱転写による画像形成である。
【0089】
本開示の加飾シートは、少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に剥離可能に設けられた加飾部と、を含む加飾シートであって、前記加飾部は、少なくとも、画像が形成された画像層と、光沢層と、を含む積層構造を有し、かつ、前記加飾部の、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であるか、または、少なくとも、基材と、前記基材の一方の面に設けられた加飾部と、を含む加飾シートであって、前記加飾部は、少なくとも、画像が形成された画像層と、光沢層と、を含む積層構造を有し、かつ、前記加飾シートの、380nmから780nmまでの波長域での最大透過率が40%以下であり、下記(i)~(v)の1つまたは複数を満たし、複数を満たす場合には下記(i)~(v)の何れを組み合わせてもよい。
(i)前記光沢層が、前記画像層よりも基材側に位置する。
(ii)前記加飾部の前記基材とは反対側の表面に接着層が位置する。
(iii)前記接着層が、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤の何れか一方または双方を含む。
(iv)前記接着層が、粘着層またはヒートシール層である。
(v)前記基材の一部または全部が分離可能である。
【0090】
本開示の加飾品の製造方法は、被転写体と、本開示の加飾シートとを一体化させる一体化工程を含み、下記(i)~(iii)の1つまたは複数を満たし、複数を満たす場合には下記(i)~(iii)の何れを組み合わせてもよい。
(i)前記一体化工程が、被転写体における所定の部分に、本開示の加飾シートにおける加飾部を転写する転写工程である。
(ii)前記一体化工程が、被転写体における所定の部位に、本開示の加飾シートを貼り合わせる工程である。
(iii)前記被転写体における所定の部分が透明である。
【実施例
【0091】
以下、実施例と比較例を挙げて本開示の実施形態にかかる中間転写媒体および加飾シートについて説明する。なお、文中の「部」は特に断りのない限り質量基準である。なお、固形分比率の記載がある成分の配合量は、固形分に換算する前の質量を示している。
【0092】
(実施例1)
基材として、厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
【0093】
次いで、上記基材上に下記組成の剥離層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み1μmの剥離層を形成した。
<剥離層用塗工液>
・アクリル樹脂 29部
(ダイヤナール(登録商標)BR-87 三菱ケミカル(株))
・ポリエステル 1部
(バイロン(登録商標)200 東洋紡(株))
・メチルエチルケトン 35部
・トルエン 35部
【0094】
次いで、上記剥離層上に真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着して、厚み100nmの光沢層(アルミ蒸着層)を形成した。
【0095】
次いで上記光沢層上に下記組成の受容層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み2μmの画像形成層(受容層)を形成して、実施例1の中間転写媒体を得た。
<受容層用塗工液>
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 17.6部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株))
・シリコーンオイル 2.4部
(X-22-3000T 信越化学工業(株))
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 40部
【0096】
(実施例2)
光沢層(アルミ蒸着層)の厚みを300nmとした以外はすべて実施例1と同様にして、実施例2の中間転写媒体を得た。
【0097】
(実施例3)
基材として、厚さ16μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを準備した。
【0098】
次いで、上記基材上に上記組成の剥離層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み1μmの剥離層を形成した。
【0099】
次いで、上記剥離層上に下記組成の隠蔽層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み2μmの隠蔽層を形成した。
<隠蔽層用塗工液>
・カーボンブラック 20部
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 20部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株))
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0100】
次いで、上記隠蔽層上に真空蒸着法によりアルミニウムを蒸着して、厚み100nmの光沢層(アルミ蒸着層)を形成した。
【0101】
次いで上記光沢層上に上記組成の受容層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み2μmの画像形成層(受容層)を形成して、実施例3の中間転写媒体を得た。
【0102】
(実施例4)
実施例1の光沢層(アルミ蒸着層)の代わりに、錫を真空蒸着して厚み200nmの光沢層(錫蒸着層)を形成した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例4の中間転写媒体を得た。
【0103】
(実施例5)
実施例1の光沢層(アルミ蒸着層)の代わりに、インジウムを真空蒸着して厚み200nmの光沢層(インジウム蒸着層)を形成した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例5の中間転写媒体を得た。
【0104】
(実施例6)
実施例1の光沢層(アルミ蒸着層)の代わりに、下記アルミ顔料層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み2μmの光沢層(アルミ顔料層)を形成した以外はすべて実施例1と同様にして、実施例6の中間転写媒体を得た。
<アルミ顔料層用塗工液>
・アルミ顔料 20部
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 20部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株))
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0105】
(実施例7)
実施例3の光沢層(アルミ蒸着層)の代わりに、上記アルミ顔料層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み2μmの光沢層(アルミ顔料層)を形成した以外はすべて実施例3と同様にして、実施例7の中間転写媒体を得た。
【0106】
(実施例8)
実施例3の光沢層(アルミ蒸着層)の代わりに、下記パール顔料層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み4μmの光沢層(パール顔料層)を形成した以外はすべて実施例3と同様にして、実施例8の中間転写媒体を得た。
<パール顔料層用塗工液>
・シルバーパール顔料(粒子径:5~25μm) 30部
(イリオジン(登録商標)123 ブライトラスターサテン メルク(株))
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 10部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株))
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0107】
(実施例9)
実施例6の光沢層(アルミ蒸着層)の代わりに、下記光輝顔料層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み2μmの光沢層(光輝顔料層)を形成し、隠蔽層として実施例6のアルミ顔料層用塗工液を塗布・乾燥して、厚み2μmの隠蔽層を形成した以外はすべて実施例3と同様にして、実施例9の中間転写媒体を得た。
<光輝顔料層用塗工液>
・光輝顔料(平均粒子径:18μm 粒子厚:1μm 銀被覆フレーク)
20部
(メタシャイン(登録商標)ST1018PSR1 日本板硝子(株))
・塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体 20部
(ソルバイン(登録商標)CNL 日信化学工業(株))
・メチルエチルケトン 30部
・トルエン 30部
【0108】
(実施例10)
剥離層を設けなかった以外はすべて実施例9と同様にして、実施例10の記録媒体を得た。
【0109】
(比較例1)
実施例1の光沢層(アルミ蒸着層)の代わりに、酸化チタンを真空蒸着して、厚み50nmの高屈折率透明層(酸化チタン蒸着層)を形成した以外はすべて実施例1と同様にして、比較例の中間転写媒体を得た。
【0110】
(透過率の測定)
紫外可視分光光度計(UV-3100PC (株)島津製作所)に積分球付属装置(ISR-3100 (株)島津製作所)を取り付けた装置を用い、実施例および比較例の中間転写媒体の転写部の380nmから780nmにおける透過率を測定した。また、実施例の記録媒体については、記録媒体全体の380nmから780nmにおける透過率を測定した。具体的には、被転写体として厚さ5mmの透明ガラス板(GB300 アズワン(株))を用意し、この被転写体上に実施例および比較例の中間転写媒体から転写部を転写し、当該転写部が転写された被転写体を、当該装置の試料光束側に設置し、対照光束側にブランクとして、前記被転写体と同一の透明ガラス板を設置して、380nmから780nmにおける透過率を測定した。
【0111】
(画像層の形成)
実施例および比較例の中間転写媒体および記録媒体と、熱転写インクリボン(昇華型プリンタDS620(大日本印刷(株))専用のインクリボン)とを組合せ、下記プリンタにより、各中間転写媒体および記録媒体の受容層上にグレー画像(画像階調:128/256)を形成した。
<プリンタ>
サーマルヘッド:KEE-57-12GAN2-STA(京セラ(株))
発熱体平均抵抗値:3303(Ω)
主走査方向印字密度:300(dpi)
副走査方向印字密度:300(dpi)
ライン周期:3.0(msec./line)
印字開始温度:35(℃)
パルスDuty比:85(%)
印画電圧:18.0(V)
【0112】
(ヒートシール層転写シートの作成)
基材として、厚さ5μmの易接着層付きのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、この基材の易接着層側に、下記組成の離型層用塗工液を、乾燥時の厚みが0.2μmになるように塗布・乾燥し離型層を形成した。次いで、離型層上に、下記組成のヒートシール層用塗工液を乾燥時の厚みが1μmになるように塗布・乾燥し、ヒートシール層を形成することで、基材上に、離型層、ヒートシール層がこの順で設けられたヒートシール層転写シートを得た。
<離型層用塗工液>
・ポリビニルアルコール(PVA-110 (株)クラレ) 10部
・水 70部
・イソプロピルアルコール 20部
<ヒートシール層用塗工液>
・ポリエステル(Tg:60℃、Mn:10000) 20部
(バイロン(登録商標)GK250 東洋紡(株))
・メチルエチルケトン 40部
・トルエン 40部
【0113】
(加飾シートの製造)
次いで、上記のプリンタを用い、55/255階調(エネルギー階調)のエネルギーで、実施例および比較例の中間転写媒体および記録媒体における画像層上に、上記ヒートシール層転写シートのヒートシール層を転写することで実施例および比較例の加飾シートを得た。
【0114】
(加飾品の製造)
次いで、被転写体として厚さ5mmの透明ガラス板(GB300 アズワン(株))を準備し、その一方の面上に、上記実施例および比較例の加飾シートにおける加飾部、具体的には、剥離層と隠蔽層と光沢層と画像層からなる積層構造を有する加飾部を、上記ヒートシール層を介して下記転写条件にて転写することで、実施例および比較例の加飾品を得た。なお、実施例10は、基材と隠蔽層と光沢層と画像層からなる積層構造を有する加飾シートを、上記ヒートシール層を介して一体化した。
<転写条件>
転写装置:カード用ラミネーター(SIP社)
転写温度:180℃
転写速度:2inch/sec.
【0115】
(画像鮮明性の評価)
実施例の加飾品について、それぞれ目視にて、被転写体である透明ガラス板越しに画像の見え方を評価した。
<評価基準>
A ・・・光沢感、高輝度感がある。
B ・・・光沢感、高輝度感がやや劣る。
C ・・・光沢感、高輝度感がやや劣る。粒状感がある。
NG・・・光沢感、高輝度感が乏しい。
【0116】
(バックライト隠蔽性の評価)
実施例および比較例の加飾品について、当該加飾品における加飾部側表面から10cm離れたところに20W蛍光灯を設置した上で、それぞれ目視にて、被転写体である透明ガラス板越しに画像の見え方を評価した。
<評価基準>
A ・・・蛍光灯の光を殆ど通さず、画像が鮮明である。
B ・・・蛍光灯の光を少し通すが、画像は認識できる。
NG・・・透過する蛍光灯の光によって画像が認識しにくい。
【0117】
画像鮮明性およびバックライト隠蔽性の評価結果を以下の表1に示す。
【0118】
【表1】
【符号の説明】
【0119】
1…中間転写媒体
2…加飾シート
3…加飾品
10…基材
20…転写部
21…画像形成層
22…光沢層
23…隠蔽層
24…剥離層
30…加飾部
31…画像層
50…接着層(ヒートシール層)
70…被転写体
図1
図2
図3
図4
図5
図6