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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】蓄電デバイス用弁構造体
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/317 20210101AFI20240806BHJP
   H01M 50/105 20210101ALI20240806BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240806BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20240806BHJP
   H01G 9/12 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01M50/317 101
H01M50/105
H01M50/342 101
H01G11/78
H01G9/12 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021516337
(86)(22)【出願日】2020-04-27
(86)【国際出願番号】 JP2020018048
(87)【国際公開番号】W WO2020218623
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019086458
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美帆
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102969469(CN,A)
【文献】特開平09-259842(JP,A)
【文献】特開2016-031934(JP,A)
【文献】特開2019-061850(JP,A)
【文献】特開2014-211994(JP,A)
【文献】特開2007-087922(JP,A)
【文献】特開2003-272971(JP,A)
【文献】特開平11-283611(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146803(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108291124(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101189746(CN,A)
【文献】特開2003-272969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/30-50/392
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に取り付けられる弁構造体であって、
前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、
前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構と
を備え、
前記ケーシングは、
前記通路に含まれる第1通気路を有し、前記容器の内部において発生した前記ガスが前記第1通気路に流入するように前記容器に固定される第1部分を含むとともに、
前記第1部分よりも前記容器の外部側に位置する部分に、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含み、
前記第1平面および前記第2平面は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、前記第1部分よりも幅広に構成され
前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、中央部から第1方向に向かうほど薄く形成された第1翼状部と、前記第1方向と反対の第2方向に向かうほど薄く形成された第2翼状部とを有する、
蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項2】
前記ケーシングは、
前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第2通気路を有し、前記弁機構を保持する第2部分と、
前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第3通気路を有し、前記第1平面及び前記第2平面を含む第3部分と
をさらに含む、
請求項1に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項3】
前記第3通気路は、前記第2通気路よりも前記容器の内部側に位置する、
請求項に記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項4】
前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、非円形である、
請求項1からのいずれかに記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項5】
前記第1平面及び前記第2平面は、前記第1方向及び前記第2方向に平行又は垂直である、
求項のいずれかに記載の蓄電デバイス用弁構造体。
【請求項6】
包装材料で構成されており、内部空間と、前記内部空間の周縁を画定する周縁シール部とを有する容器と、
前記容器の前記内部空間に収容された蓄電デバイス素子と、
前記周縁シール部に取り付けられた弁構造体と
を備える、蓄電デバイスであって、
前記弁構造体は、
前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、
前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構と
を含み、
前記ケーシングは、
前記通路に含まれる第1通気路を有し、前記容器の内部において発生した前記ガスが前記第1通気路に流入するように前記容器に固定される第1部分を含むとともに、
前記第1部分よりも前記容器の外部側に位置する部分に、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含み、
前記第1平面および前記第2平面は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、前記第1部分よりも幅広に構成され
前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、中央部から第1方向に向かうほど薄く形成された第1翼状部と、前記第1方向と反対の第2方向に向かうほど薄く形成された第2翼状部とを有する、
蓄電デバイス。
【請求項7】
前記第1平面及び前記第2平面は、前記周縁シール部が延びる方向に平行又は垂直である、
請求項に記載の蓄電デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用弁構造体、及びこれを備える蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、パウチ型のリチウム二次電池を開示している。この電池では、電池素子を収容する袋の周縁に沿って形成される周縁シール部に、ガス抜きのための弁構造体が挟まれるようにして取り付けられている。この弁構造体は、袋内において発生したガスを排出することで、袋の形状が変形するのを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-31934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような弁構造体の周縁シール部への取り付けは、典型的には、袋を構成する包装材料で弁構造体を挟み、包装材料とともに弁構造体をヒートシールすることにより行われる。また、典型的には、弁構造体は、冶具に含まれる把持具等により把持された状態で、ヒートシールを行う加工位置まで搬送され、ヒートシール中、加工位置に固定される。しかしながら、特許文献1の弁構造体において、周縁シール部から袋の外部に突出する部分は、円柱状である。これでは、弁構造体をしっかりと把持することが難しくなるため、例えば、弁構造体を加工位置まで搬送したり、加工位置に固定したりすることが難しくなり得、ひいては、弁構造体の容器への取り付けが難しくなり得る。
【0005】
本発明は、容器への取り付けが容易な蓄電デバイス用弁構造体、及びこれを備える蓄電デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のA1観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、容器に取り付けられる弁構造体であって、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構とを備える。前記ケーシングは、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含む。
【0007】
本発明のA2観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、A1観点に係る弁構造体であって、前記ケーシングは、前記通路に含まれる第1通気路を有し、前記容器の内部において発生した前記ガスが前記第1通気路に流入するように前記容器に固定される第1部分を含む。
【0008】
本発明のA3観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、A2観点に係る弁構造体であって、前記ケーシングは、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第2通気路を有し、前記弁機構を保持する第2部分と、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第3通気路を有し、前記第1平面及び前記第2平面を含む第3部分とをさらに含む。
【0009】
本発明のA4観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、A3観点に係る弁構造体であって、前記第3通気路は、前記第2通気路よりも前記容器の内部側に位置する。
【0010】
本発明のA5観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、A2観点からA4観点のいずれかに係る弁構造体であって、前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、非円形である。
【0011】
本発明のA6観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、A2観点からA5観点のいずれかに係る弁構造体であって、前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、中央部から第1方向に向かうほど薄く形成された第1翼状部と、前記第1方向と反対の第2方向に向かうほど薄く形成された第2翼状部とを有する。
【0012】
本発明のA7観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、A6観点に係る弁構造体であって、前記第1平面及び前記第2平面は、前記第1方向及び前記第2方向に平行又は垂直である。
【0013】
本発明のA8観点に係る蓄電デバイスは、包装材料で構成されており、内部空間と、前記内部空間の周縁を画定する周縁シール部とを有する容器と、前記容器の内部空間に収容された蓄電デバイス素子と、前記周縁シール部に取り付けられた弁構造体とを備える。前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構とを含む。前記ケーシングは、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含む。
【0014】
本発明のA9観点に係る蓄電デバイスは、A8観点に係る蓄電デバイスであって、前記第1平面及び前記第2平面は、前記周縁シール部が延びる方向に平行又は垂直である。
【0015】
本発明のB1観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、容器に取り付けられる弁構造体であって、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構とを備える。前記ケーシングは、前記通路に含まれる第1通気路を有し、前記容器の内部において発生した前記ガスが前記第1通気路に流入するように前記容器に固定される第1部分と、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第2通気路を有し、前記弁機構を保持する第2部分と、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第3通気路を有し、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含む第3部分とを含む。前記第2部分は、前記第2通気路の延びる方向に沿って視たときに、互いに平行な一対の平面を有さない。
【0016】
本発明のB2観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、B1観点に係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、中央部から第1方向に向かうほど薄く形成された第1翼状部と、前記第1方向と反対の第2方向に向かうほど薄く形成された第2翼状部とを有する。
【0017】
本発明のB3観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、容器に取り付けられる弁構造体であって、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構とを備える。前記ケーシングは、前記通路に含まれる第1通気路を有し、前記容器の内部において発生した前記ガスが前記第1通気路に流入するように前記容器に固定される第1部分を含むとともに、前記第1部分よりも前記容器の外部側に位置する部分に、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含む。前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、中央部から第1方向に向かうほど薄く形成された第1翼状部と、前記第1方向と反対の第2方向に向かうほど薄く形成された第2翼状部とを有する。
【0018】
本発明のB4観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、B3観点に係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記ケーシングは、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第2通気路を有し、前記弁機構を保持する第2部分と、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第3通気路を有し、前記第1平面及び前記第2平面を含む第3部分とをさらに含む。
【0019】
本発明のB5観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、B1、B2又はB4観点に係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記第3通気路は、前記第2通気路よりも前記容器の内部側に位置する。
【0020】
本発明のB6観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、B1からB5観点のいずれかに係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、非円形である。
【0021】
本発明のB7観点に係る蓄電デバイス用弁構造体は、B2からB4観点のいずれかに係る蓄電デバイス用弁構造体であって、前記第1平面及び前記第2平面は、前記第1方向及び前記第2方向に平行又は垂直である。
【0022】
本発明のB8観点に係る蓄電デバイスは、包装材料で構成されており、内部空間と、前記内部空間の周縁を画定する周縁シール部とを有する容器と、前記容器の内部空間に収容された蓄電デバイス素子と、前記周縁シール部に取り付けられた弁構造体とを備える。前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構とを含む。前記ケーシングは、前記通路に含まれる第1通気路を有し、前記容器の内部において発生した前記ガスが前記第1通気路に流入するように前記容器に固定される第1部分と、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第2通気路を有し、前記弁機構を保持する第2部分と、前記通路に含まれ、前記第1通気路よりも前記容器の外部側に位置する第3通気路を有し、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含む第3部分とを含む。前記第2部分は、前記第2通気路の延びる方向に沿って視たときに、互いに平行な一対の平面を有さない。
【0023】
本発明のB9観点に係る蓄電デバイスは、包装材料で構成されており、内部空間と、前記内部空間の周縁を画定する周縁シール部とを有する容器と、前記容器の内部空間に収容された蓄電デバイス素子と、前記周縁シール部に取り付けられた弁構造体とを備える。前記弁構造体は、前記容器の内部において発生したガスを前記容器の外部へ排出する通路が形成されたケーシングと、前記ケーシングに保持され、前記容器の内部において発生した前記ガスに起因して前記容器の内圧が上昇した場合に、前記ガスを前記通路を介して前記容器の外部側へ通過させる弁機構とを含む。前記ケーシングは、前記通路に含まれる第1通気路を有し、前記容器の内部において発生した前記ガスが前記第1通気路に流入するように前記容器に固定される第1部分を含むとともに、前記第1部分よりも前記容器の外部側に位置する部分に、第1平面と、前記第1平面に対し平行な第2平面とを含む。前記第1部分は、前記第1通気路の延びる方向に沿って視たときに、中央部から第1方向に向かうほど薄く形成された第1翼状部と、前記第1方向と反対の第2方向に向かうほど薄く形成された第2翼状部とを有する。
【0024】
本発明のB10観点に係る蓄電デバイスは、B8又はB9観点に係る蓄電デバイスであって、前記第1平面及び前記第2平面は、前記周縁シール部が延びる方向に平行又は垂直である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、蓄電デバイス用弁構造体のケーシングは、互いに平行な一対の平面(第1平面及び第2平面)を含む。このような一対の平面は、弁構造体を把持し易くし、それにより、例えば、弁構造体を加工位置まで容易に搬送したり、加工位置に容易に固定したりすることが可能になる。その結果、弁構造体の容器への取り付けを容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス用弁構造体を備える蓄電デバイスの平面図。
図2図1のII-II断面図。
図3】弁構造体の平面図。
図4】弁構造体を後面側から視た図。
図5】弁構造体を前面側から視た図。
図6図4のVI-VI断面図。
図7図3のVII-VII断面図。
図8A】弁構造体の容器への取り付け方法を説明する図。
図8B】弁構造体の容器への取り付け方法を説明する別の図。
図8C】弁構造体の容器への取り付け方法を説明するさらに別の図。
図9A】ある変形例に係る弁構造体の断面図。
図9B】ある変形例に係る弁構造体に含まれる破壊弁を示す図。
図10】別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。
図11】さらに別の変形例に係る弁構造体の平面図。
図12A】さらに別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。
図12B】さらに別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。
図12C】さらに別の変形例に係る弁構造体を後面側から視た図。
図13A】さらに別の変形例に係る弁構造体の断面図。
図13B】さらに別の変形例に係る弁構造体の断面図。
図14】弁構造体の第1部分の周辺の拡大平面図。
図15図14のXV-XV断面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る蓄電デバイス用弁構造体、及びこれを備える蓄電デバイスについて説明する。
【0028】
<1.蓄電デバイスの全体構成>
図1に、本実施形態に係る蓄電デバイス1の平面図を示す。図2は、図1のII-II断面図である。これらの図では、本来外部から視認できない部位が、参考のため、部分的に点線で示されている。以下では、説明の便宜のため、特に断らない限り、図1の上下方向を「前後」と称し、左右方向を「左右」と称し、図2の上下方向を「上下」と称する。ただし、蓄電デバイス1の使用時の向きは、これに限定されない。
【0029】
蓄電デバイス1は、収容体101と、これに収容された蓄電デバイス素子400とを備える。収容体101は、容器100と、容器100に取り付けられたタブ300及びタブフィルム310とを備える。蓄電デバイス素子400は、容器100の内部空間S1に収容される。
【0030】
容器100は、包装材料110及び120から構成される。平面視における容器100の外周部分においては、包装材料110及び120がヒートシールされ、互いに融着しており、これにより、周縁シール部130が形成されている。そして、この周縁シール部130により、外部空間から遮断された容器100の内部空間S1が形成される。周縁シール部130は、容器100の内部空間S1の周縁を画定する。なお、ここでいうヒートシールの態様には、熱源からの加熱溶着、超音波溶着等の態様が想定される。いずれにせよ、周縁シール部130とは、包装材料110及び120が融着され、一体化している部分を意味する。
【0031】
包装材料110及び120は、例えば、樹脂成形品又はフィルムから構成される。ここでいう樹脂成形品とは、射出成形や圧空成形、真空成形、ブロー成形等の方法により製造することができ、意匠性や機能性を付与するためにインモールド成形を行ってもよい。樹脂の種類は、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロン、ABS等とすることができる。また、ここでいうフィルムとは、例えば、インフレーション法やTダイ法等の方法により製造することができるプラスチックフィルムや、これらのプラスチックフィルムを金属箔に積層したものである。また、ここでいうフィルムは、延伸されたものであってもなくてもよく、単層のフィルムであっても積層フィルムであってもよい。また、ここでいう積層フィルムは、コーティング法により製造されてもよいし、複数枚のフィルムが接着剤等により接着されたものでもよいし、多層押出法により製造されてもよい。
【0032】
以上のとおり、包装材料110及び120は様々に構成することができるが、本実施形態では、ラミネートフィルムから構成される。ラミネートフィルムは、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層を積層した積層体とすることができる。基材層は、包装材料110及び120の基材として機能し、典型的には、容器100の外層側を形成し、絶縁性を有する樹脂層である。バリア層は、包装材料110及び120の強度向上の他、蓄電デバイス1内に少なくとも水分等が侵入することを防止する機能を有し、典型的には、アルミニウム合金等からなる金属層である。熱融着性樹脂層は、典型的には、ポリオレフィン等の熱融着可能な樹脂からなり、容器100の最内層を形成する。
【0033】
容器100の形状は、特に限定されず、例えば、袋状(パウチ状)とすることができる。ここでいう袋状には、三方シールタイプ、四方シールタイプ、ピロータイプ、ガセットタイプ等が考えられる。ただし、本実施形態の容器100は、図2のような形状を有し、トレイ状に成形された包装材料110と、同じくトレイ状に成形され、包装材料110の上から重ね合わされた包装材料120とを、平面視における外周部分に沿ってヒートシールすることにより製造される。包装材料110は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部114と、フランジ部114の内縁に連続し、そこから下方に膨出する成形部112とを含む。同様に、包装材料120は、平面視における外周部分に相当する角環状のフランジ部124と、フランジ部124の内縁に連続し、そこから上方に膨出する成形部122とを含む。包装材料110及び包装材料120は、それぞれの成形部112及び122が互いに反対方向に膨出するように重ね合わされる。この状態で、包装材料110のフランジ部114と、包装材料120のフランジ部124とが、一体化するようにヒートシールされ、周縁シール部130を構成する。周縁シール部130は、容器100の外周全体に亘って延び、角環状に形成される。なお、包装材料110及び包装材料120の一方は、シート状であってもよい。
【0034】
蓄電デバイス素子400は、例えば、リチウムイオン電池(二次電池)やキャパシタ等の蓄電部材であり、電解液を含む。蓄電デバイス素子400に異常が生じると、容器100の内部空間S1内にガスが発生し得る。容器100内には、一次電池及び二次電池のいずれが収容されてもよいが、好ましくは、二次電池が収容される。容器100内に収容される二次電池の種類は、特に限定されず、例えば、リチウムイオン電池の他、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシタ等が挙げられる。蓄電デバイス素子400がキャパシタである場合には、キャパシタにおける化学反応に起因して容器100の内部空間S1内にガスが発生し得る。また、蓄電デバイス1が全固体電池である場合、蓄電デバイス素子400は、ガスを発生し得る固体電解質を含み得る。例えば、固体電解質が硫化物系である場合、硫化水素のガスが発生し得る。
【0035】
タブ300は、蓄電デバイス素子400における電力の入出力に用いられる金属端子である。タブ300は、容器100の周縁シール部130の左右方向の端部に分かれて配置されており、一方が正極側の端子を構成し、他方が負極側の端子を構成する。各タブ300の左右方向の一方の端部は、容器100の内部空間S1において蓄電デバイス素子400の電極(正極又は負極)に電気的に接続されており、他方の端部は、周縁シール部130から外側に突出している。以上の蓄電デバイス1の形態は、例えば、蓄電デバイス1を多数直列接続して高電圧で使用する電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両で使用するのに特に好ましい。なお、正極及び負極の端子を構成する2つのタブ300の取付け位置は特に限定されず、例えば、周縁シール部130の同じ1つの辺に配置されていてもよい。
【0036】
タブ300を構成する金属材料は、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅等である。蓄電デバイス素子400がリチウムイオン電池である場合、正極に接続されるタブ300は、典型的には、アルミニウム等によって構成され、負極に接続されるタブ300は、典型的には、銅、ニッケル等によって構成される。
【0037】
左側のタブ300は、周縁シール部130のうち左端部において、タブフィルム310を介して包装材料110及び120に挟まれている。右側のタブ300も、周縁シール部130のうち右端部において、タブフィルム310を介して包装材料110及び120に挟まれている。
【0038】
タブフィルム310は、いわゆる接着性フィルムであり、包装材料110及び120と、タブ300(金属)との両方に接着するように構成されている。タブフィルム310を介することによって、タブ300と、包装材料110及び120の最内層(熱融着性樹脂層)とが異素材であっても、両者を固定することができる。
【0039】
蓄電デバイス1の動作に伴い、容器100の内部空間S1でガスが発生すると、内部空間S1内の圧力が徐々に上昇してゆく。内部空間S1内の圧力が過剰に上昇すると、容器100が破裂し、蓄電デバイス1が破壊される虞がある。収容体101は、このような事態を防止するための機構として、弁構造体200を備える。弁構造体200は、内部空間S1内の圧力を調整するためのガス抜き弁であり、容器100の周縁シール部130に取り付けられている。以下、弁構造体200の構成について、詳細に説明する。
【0040】
<2.弁構造体の構成>
図3は、弁構造体200の平面図である。同図に示すとおり、弁構造体200は、ケーシング201を有し、ケーシング201は、第1部分10、第2部分20及び第3部分30を含む。本実施形態では、これらの部分10~30は、第1部分10、第3部分30、第2部分20の順に、容器100の内部から外部に向かう方向(後ろ側から前側へ向かう方向)に連続して配置される。図4は、弁構造体200を第1部分10側から(後ろ側から)視た図であり、図5は、弁構造体200を第2部分20側から(前側から)視た図である。
【0041】
図6は、図4のVI-VI断面図であり、図7は、図3のVII-VII断面図である。図6及び図7に示す通り、本実施形態の弁構造体200は、繰り返しのガス抜きが可能な逆止弁であり、特にボールスプリング型の逆止弁である。弁構造体200は、内部空間S1内の圧力に応じて、開状態と閉状態との間を切り替わるリリーフ弁である。ケーシング201の内部には、通路L1が形成されている。通路L1は、容器100の内部空間S1に面する入口O1と、外部空間に面する出口O2とを有する。通路L1は、弁構造体200の開状態において、容器100の内部空間S1を外部空間に連通させ、内部空間S1において発生したガスを容器100の外部へ排出することができる。弁構造体200は、内部空間S1で発生したガスにより内部空間S1内の圧力が上昇した場合に、開状態となる。一方、弁構造体200は、閉状態において、内部空間S1を外部空間から密閉する。
【0042】
第1部分10は、弁構造体200を容器100に取り付けるための部位である。第1部分10は、容器100の成形時に、包装材料110及び120とともにヒートシールされる。このヒートシールにより、第1部分10の外周面と、包装材料110及び120とが融着して接合され、第1部分10は、包装材料110及び120に挟まれる態様で、周縁シール部130に固定される(図2参照)。
【0043】
第3部分30は、周縁シール部130の外側に配置されており、包装材料110及び120に挟まれていない(図1及び図2参照)。また、第3部分30よりもさらに外側に配置される第2部分20も、周縁シール部130の外側に配置されており、包装材料110及び120に挟まれていない。その結果、第1部分10を容器100にヒートシールにより取り付ける時の熱で、第2部分20に保持される、後述される弁機構を構成する各種部品が変形等により破壊される虞が低減される。
【0044】
第1部分10、第2部分20及び第3部分30は、互いに同軸に、前後方向に平行(略平行である場合を含む。以下、同様。)に延びる。ここで、これらの部分10~30に共通する中心軸を、参照符号C1で表す。第1部分10は、第1通気路A1を有し、第2部分20は、第2通気路A2を有し、第3部分30は、第3通気路A3を有する。これらの通気路A1~A3も、中心軸C1を中心軸として、互いに同軸に、前後方向に平行に延びる。本実施形態では、入口O1及び出口O2は、ケーシング201の外周面ではなく、前後方向の端面に配置されており、特に、前後方向に直線状に延びる中心軸C1は、入口O1及び出口O2の中心を通る。これに限定されないが、通気路A1~A3の中心軸C1に直交する断面は、円形である。通気路A1~A3は、互いに連通しており、全体として通路L1を構成する。第3通気路A3は、第1通気路A1よりも容器100の外部側に配置され、第3通気路A3よりもさらに容器100の外部側に、第2通気路A2が配置される。言い換えると、第3通気路A3は、第2通気路A2よりも容器100の内部側に配置され、第3通気路A3よりもさらに容器100の内部側に、第1通気路A1が配置される。
【0045】
図4及び図5に示す通り、第2部分20の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱形状である。一方、図4に示す通り、第3部分30の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱の一部を切り欠いたような形状を有する。より具体的には、第3部分30の外形は、概ね、中心軸C1を中心軸とする円柱を、中心軸C1から一定の距離を空けた平面で切り欠くとともに、中心軸C1に対し当該平面と対称な位置にある平面でさらに切り欠いたような形状を有する。よって、第3部分30は、一対の平面D1及びD2を有する。以下、D1で示される平面を第1平面と呼び、D2で示される平面を第2平面と呼ぶことがある。第1平面D1及び第2平面D2は、互いに平行(略平行である場合を含む。以下、同様。)である。第1平面D1及び第2平面D2は、中心軸C1の延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。また、本実施形態では、第1平面D1及び第2平面D2は、周縁シール部130が延びる方向に平行(略平行な場合を含む。以下、同様。)である。第3部分30の外周面は、第1平面D1及び第2平面D2と、これらの平面D1及びD2を連結する湾曲面D3及びD4とにより構成される。湾曲面D3及びD4は、各々、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、中心軸C1を中心とする円弧状であり、第2部分20の外形に重なる。以上のような第2部分20は、一対の平面D1及びD2が形成されるように円筒形の部材の外周面を切削することにより、成形することができる。
【0046】
第1部分10は、図4に示す通り、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、その外形が非円形である。より具体的には、第1部分10は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、その左右方向の中央部から左に向かうほど薄く形成された第1翼状部41と、右に向かうほど薄く形成された第2翼状部42とを有する。よって、本実施形態では、第1部分10は、蓄電デバイス1の幅方向(左右方向)の中央部に近づくほど厚くなり、蓄電デバイス1の幅方向(左右方向)の端部に近づくほど薄くなる。
【0047】
本実施形態では、翼状部41及び42により、第1部分10の外周面は、包装材料110に覆われる下側半分においても、包装材料120に覆われる上側半分においても、それぞれ滑らかな湾曲面を描いている。また、翼状部41及び42により、例えば第1部分10が円筒状に形成されている場合と比べ、周縁シール部130のうち第1部分10が挟まれていない部分から周縁シール部130のうち第1部分10が挟まれている部分へ移行する位置において、蓄電デバイス1の上下方向の厚みの変化が滑らかになる。その結果、周縁シール部130において第1部分10が取り付けられている位置の周辺部分において、包装材料110及び120に無理な力が加わらないため、第1部分10を周縁シール部130に強固に固定することができる。
【0048】
以上のとおり、本実施形態では、第1部分10、第2部分20及び第3部分30の外形は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、それぞれの部分に割り当てられている役割に応じて、いずれも異なる形状を有する。
【0049】
第2部分20は、弁機構を保持する。当該弁機構は、容器100の内部空間S1において発生したガスに起因して内部空間S1内の圧力が上昇した場合に、第1通気路A1及び第3通気路A3を通過したガスを第2通気路A2を介して容器100の外部側へ通過させる。すなわち、第2部分20には、弁構造体200のガス抜き弁としての機能を発揮するための主な構造を有する部分が保持される。本実施形態では、第2部分20の内部の第2通気路A2内に、弁機構としてのバネ212、ボール213及びバルブシート214が収容される。第2通気路A2内には、第3部分30に連続する挿入部215も収容されている。これらの部212~215は、第2通気路A2内において出口O2から入口O1に向かって、この順に配置されている。なお、本実施形態では、第2部分20、バルブシート214及び挿入部215が別部品として構成されているが、これらの少なくとも一部を一体的に構成してもよい。また、本実施形態では、図6及び図7に示す通り、挿入部215は、第3部分30及び第1部分10と一体的に構成されているが、これらの少なくとも一部が別部品として構成されてもよい。
【0050】
バルブシート214は、バネ212により外側から付勢される弁体としてのボール213を受け取り、このとき、弁構造体200の閉状態が形成される。バネ212は、図6及び図7の例では、コイルばねであるが、これに限定されず、例えば、板バネとすることもできる。
【0051】
第1部分10は、容器100の内部空間S1において発生したガスが第1通気路A1に流入するように、周縁シール部130に固定される。すなわち、第1部分10の内部の第1通気路A1は、容器100の内部空間S1に連通している。よって、内部空間S1内の圧力、すなわち、第1通気路A1及びこれに連通する第3通気路A3内の圧力が所定の圧力に達すると、内部空間S1から流れ出し、第1通気路A1及び第3通気路A3を通過したガスが、ボール213を出口O2側に押圧する。ボール213が押圧され、バルブシート214から離れると、バネ212が変形して、ボール213が出口O2側へ移動し、弁構造体200の開状態が形成される。この開状態において、内部空間S1内で発生したガスは、ボール213とバルブシート214との間に形成された隙間を介して出口O2に向かって流れ出し、出口O2を介して外部空間へ排出される。このようにして、内部空間S1内のガスが通路L1を介して排出されると、ボール213を出口O2側に押圧する力が弱まり、これよりもバネ212がボール213を入口O1側に付勢する力が大きくなる。その結果、バネ212の形状が復元し、再度、弁構造体200の閉状態が形成される。
【0052】
弁構造体200は、閉状態において、容器100の内部空間S1内への大気の進入を防止することができる。一方、開状態においても、内部空間S1内への大気の進入は生じ難い。開状態においては、内部空間S1内の圧力が外部空間内の圧力よりも高い又は同等の状態が維持されるためである。よって、弁構造体200は、容器100内への大気の進入を効果的に防止し、これに含まれる水分等による蓄電デバイス素子400の劣化を防止することができる。
【0053】
弁構造体200の各部を構成する材料は、特に限定されない。好ましい例を挙げると、ボール213をフッ素樹脂製とし、バルブシート214をフッ素ゴム製とすることができる。さらに、バネ212をステンレス等の金属製とし、第1部分10、第2部分20、第3部分30及び挿入部215を、アルミニウム合金、ステンレス、鋼板、チタン等の金属製とすることができる。また、第1部分10は、包装材料110及び120の最内層と直に接着する材料から構成してもよい。例えば、第1部分10は、包装材料110及び120の最内層と同じ熱融着性を備えた材料、例えば、ポリオレフィン等の樹脂から構成することができる。仮に耐熱性等の理由で、第1部分10を以上のような材料で構成することができない場合、例えば、第1部分10が金属製の場合、第1部分10と包装材料110及び120の最内層との両方に接着可能なフィルムを介してこれらを接着することができる。
【0054】
バルブシート214とケーシング201との固定方法は、特に限定されず、例えば、ケーシング201にゴム製のバルブシート214を焼き付けることもできる。しかし、バルブシート214と、挿入部215とは、接着剤により接着することもできる。ここでの接着剤の材料も特に限定されないが、好ましくは、硬化タイプの接着剤を使用することができる。バルブシート214をフッ素ゴム製とし、挿入部215をアルミニウム等の金属製とする場合の好ましい例としては、酸変性ポリオレフィン及びエポキシ樹脂から構成することができる。このような接着剤は、例えば、変性シリコン樹脂製の接着剤が使用される場合に比べて、電解液による接着性能の劣化を抑制することができる点で優れる。また、弁構造体200の開封防止の観点から、その他の様々な箇所にも、適宜接着剤を塗布することができる。例えば、第2部分20の後ろ側の端面と、第3部分30の前側の端面との間に接着剤を塗布することができる。
【0055】
より一般的に述べると、ここでいう硬化タイプの接着剤としては、ポリオレフィン、酸変性ポリオレフィン等のポリオレフィン骨格を含む樹脂と、イソシアネート基を有する化合物、オキサゾリン基を有する化合物、及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことが好ましく、酸変性ポリオレフィンと、イソシアネート基を有する化合物及びエポキシ基を有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含むことが特に好ましい。接着剤により形成される接着層を構成する樹脂がポリオレフィン骨格を含むことは、例えば、赤外分光法、ガスクロマトグラフィー質量分析法等により分析可能である。また、接着層を構成する樹脂を赤外分光法で分析すると、無水マレイン酸に由来するピークが検出されることが好ましい。例えば、赤外分光法にて無水マレイン酸変性ポリオレフィンを測定すると、波数1760cm-1付近と波数1780cm-1付近に無水マレイン酸由来のピークが検出される。接着層が無水マレイン酸変性ポリオレフィンより構成された層である場合、赤外分光法にて測定すると、無水マレイン酸由来のピークが検出される。ただし、酸変性度が低いとピークが小さくなり検出されない場合がある。その場合は核磁気共鳴分光法にて分析可能である。
【0056】
ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;エチレン-αオレフィン共重合体;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等のポリプロピレン;プロピレン-αオレフィン共重合体;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらの中でも、ポリプロピレンが好ましい。共重合体である場合のポリオレフィン樹脂は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
また、ポリオレフィンは、環状ポリオレフィンであってもよい。環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、スチレン、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。また、環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。
【0058】
酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを酸成分でブロック重合又はグラフト重合することにより変性したポリマーである。酸変性されるポリオレフィンとしては、前記のポリオレフィンや、前記のポリオレフィンにアクリル酸若しくはメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、又は、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。また、酸変性に使用される酸成分としては、例えば、マレイン酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその無水物が挙げられる。
【0059】
酸変性ポリオレフィンは、酸変性環状ポリオレフィンであってもよい。酸変性環状ポリオレフィンとは、環状ポリオレフィンを構成するモノマーの一部を、酸成分に代えて共重合することにより、または環状ポリオレフィンに対して酸成分をブロック重合又はグラフト重合することにより得られるポリマーである。酸変性される環状ポリオレフィンについては、前記と同様である。また、酸変性に使用される酸成分としては、前記のポリオレフィンの変性に使用される酸成分と同様である。
【0060】
好ましい酸変性ポリオレフィンとしては、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリオレフィン、カルボン酸またはその無水物で変性されたポリプロピレン、無水マレイン酸変性ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンが挙げられる。
【0061】
また、第1部分10の表面には、特に耐電解液性の観点から、腐食防止剤のコーティングを施し、腐食防止被膜層を形成することが好ましい。なお、これは、特に第1部分10をアルミニウム等の金属製とする場合に当てはまるが、第1部分10をその他の材料から構成する場合にも当てはまり得る。このようなコーティングは、第1部分10を腐食防止剤の液体中に浸漬した後、第1部分10の表面に付着した腐食防止剤を乾燥させる、焼き付ける、又は電気的に付着させることにより施すことができる。これにより、第1部分10の外側表面、及び第1通気路A1に面する内側表面に腐食防止被膜層を形成することができ、放出されたガスによる外側表面の腐食、及び第1通気路A1を通り抜けるガスによる内側表面の腐食を防止することができる。また、特に耐電解液性の観点から、第1部分10だけでなく、第3部分30、第2部分20及び挿入部215の表面にも、同様のコーティングを施し、腐食防止被膜層を形成してもよい。ただし、電解液による第1部分10と包装材料110及び120との接着性能の劣化を抑制する観点からは、このようなコーティングは、特に第1部分10に施すことが有意義である。腐食防止剤の材料は、特に限定されないが、耐酸性のものが好ましく、腐食防止被膜層は、リン酸クロメート処理等により形成することができる。なお、本段落でいう耐電解液性とは、例えば、腐食防止被膜層が形成される部分が金属製の場合、金属自体の耐食性を意味し得る。或いは、ここでいう耐電解液性とは、第1部分10が金属製であり、第1部分10と包装材料110及び120の最内層との間にフィルムが介在する場合には、第1部分10の金属表面とフィルムとの界面とが電解液により剥がれるのを防止する性質を意味し得る。
【0062】
<3.弁構造体の取り付け方法>
次に、弁構造体200の容器100への取り付け方法について説明する。まず、図示されない固定具により、包装材料110及び120を両者が対面した状態に固定する。また、冶具500の把持具501により、弁構造体200を把持する(図8A参照)。このとき、把持具501が第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2にしっかりと接触し、把持具501により第3部分30がしっかりと挟み込まれるような態様で、弁構造体200が把持される。なお、図8A図8Cにおいては、弁構造体200の取り付けの説明に焦点を当てるべく、包装材料110及び120の成形部112及び122を特に図示していないが、成形部112及び122は、弁構造体200の取り付け前、取り付け中又は取り付け後に適宜形成される。
【0063】
以上の状態で、冶具500が駆動され、把持具501により把持された弁構造体200が移動し、第1部分10が、互いに対面する包装材料110及び120の隙間に進入させられる(図8B参照)。このとき、弁構造体200は、第3部分30が同隙間に入り込まないように移動させられる。よって、第1部分10は、包装材料110及び120の外周部分に挟まれる。また、このとき、弁構造体200は、包装材料110及び120において周縁シール部130となる部分と、第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2とが平行になるように移動させられる。
【0064】
以上の状態で、一対の加熱されたシールバー600が、包装材料110及び120の外周部分を外側から挟み込む(図8C参照)。その結果、包装材料110及び120の外周部分が、シールバー600からの熱を受けて融着し、周縁シール部130が形成される。以上により、弁構造体200のうち第1部分10のみが、包装材料110及び120に挟み込まれるようにして、弁構造体200が周縁シール部130に固定される。このとき、第1部分10に含まれる翼状部41及び42は、それぞれの先鋭な端部を結ぶ線が、周縁シール部130の延びる方向(左右方向)に対して傾くことなく固定される。その後、一対のシールバー600が所定の位置に退避するとともに、把持具501が弁構造体200を解放し、所定の位置に退避する。
【0065】
以上の工程では、把持具501は、一対の平行な第1平面D1及び第2平面D2により、弁構造体200をしっかりと把持することができる。そのため、包装材料110及び120に対し弁構造体200を所望の位置まで正確に搬送することができる。また、ヒートシール加工中、包装材料110及び120に対し弁構造体200を所望の位置にしっかりと固定することができる。すなわち、弁構造体200を容器100に対し正確に位置合わせすることができる。なお、ここでいう位置合わせには、弁構造体200の中心軸C1周りの位相を調整することが含まれる。すなわち、容器100の周縁シール部130に対する第1部分10の中心軸C1周りの角度を正確に調整することができる。以上の構成によれば、弁構造体200の容器100への取り付けを容易にすることができる。
【0066】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0067】
<4-1>
上記実施形態の弁構造体200は、ボールスプリング型であったが、これに限定されず、例えば、ポペット型、ダックビル型、アンブレラ型、ダイヤフラム型等とすることができる。また、上記実施形態の弁構造体200は、繰り返しのガス抜きが可能な逆止弁であったが、1回限りのガス抜きが可能な破壊弁であってもよい。また、逆止弁及び破壊弁の両方を含んでいてもよい。また、上記実施形態の弁構造体200に含まれる弁体は、球状のボール213であったが、このような形状に限定されず、弁体としての機能を果たす限り、様々な形状を採用することができる。例えば、弁体は、半球状や長球状、扁球状であってもよい。弁体が半球状である場合、球面側がバルブシート214に受け取られ、球面と反対側の平らな面の中央部から、球面と反対側に柱状の部材が延びていてもよい。このとき、柱状の部材をバネ212の内側で受け取るように構成することにより、ケーシング211内での弁体の位置を安定させることができる。
【0068】
本変形例でいう破壊弁は、様々に構成することができる。例えば、図9Aに示すように、弁構造体200内の通路L1を閉塞するようにケーシング201保持される、弁機構としての薄板又はフィルム250により、破壊弁を構成することができる。この破壊弁(これ以降、破壊弁に、参照符号250を付す)は、例えば、出口O2を覆うようにケーシング201にラミネートフィルムをヒートシールにより取り付けることで、構成することができる。この例では、容器100の内部空間S1内の圧力が上昇すると、破壊弁250であるラミネートフィルムが剥離することにより開弁する。別の例を挙げると、破壊弁250をアルミニウム等の金属製の薄板とし、図9Bに示すように、同薄板にその中心付近から放射状に延びる切欠き部251を形成してもよい。切欠き部251は、破壊弁250を厚み方向に貫通しておらず、他の部位に比べて薄く形成されている。この場合、破壊弁250は、容器100の内部空間S1内の圧力が上昇すると、破壊弁250がケーシング201から脱落するのではなく、破壊弁250が破断することにより開弁し得る。
【0069】
<4-2>
第3部分30の第1平面D1及び第2平面D2は、周縁シール部130が延びる方向に平行でなくてもよく、様々な方向を向くことができる。ただし、容器100への弁構造体200の取り付け時の作業性の観点からは、周縁シール部130が延びる方向(左右方向)に対し平行であるか、図10に示すように垂直(略垂直である場合を含む。以下、同様。)であることが好ましい。
【0070】
<4-3>
上記実施形態では、第3部分30は、第2部分20よりも容器100の内部側に配置されたが、図11に示すように、第2部分20よりも容器100の外部側に配置してもよい。
【0071】
<4-4>
第1部分10の形状は上述したものに限定されない。例えば、第1部分10の外形は、第1通気路A1の延びる方向に沿って視たときに、図12A及び図12Bに示すような非円形であってもよい。また、第1部分10の外形は、第1通気路A1の延びる方向に沿って視たときに、図12Cに示すように円形であってもよいし、楕円形であってもよい。楕円形である場合、その長軸が左右方向に平行(略平行である場合を含む。)に延びていることが好ましい。すなわち、第1部分10は、中心軸C1に沿って延びる円筒形状又は楕円筒形状であってもよい。
【0072】
<4-5>
第2部分20の形状は上述したものに限定されず、第2部分20の外形は、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、非円形であってもよく、例えば、楕円形であってもよいし、三角形、四角形、五角形以上の多角形であってもよい。
【0073】
<4-6>
第3部分30の形状は上述したものに限定されない。例えば、第3部分30は、互いに平行な一対の平面D1及びD2を有する限り、それ以外の部分の形状は特に問わない。例えば、湾曲面D3及びD4もそれぞれ平面状とし、第3部分30の外形を、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、四角形としてもよい。或いは、第3部分30の外形を、中心軸C1の延びる方向に沿って視たときに、正六角形状、正八角形状としてもよい。
【0074】
<4-7>
上記実施形態では、周縁シール部130に固定される第1部分10と、弁機構を保持する第2部分20と、一対の平面D1及びD2を含む第3部分30とが、通路L1の延びる方向に独立した別個の部位として形成されていた。しかしながら、この態様に限らず、例えば、図13Aに示すように、第2部分20を省略し、弁機構を第1部分10に移動させてもよい。或いは、図13Bに示すように弁機構を保持する第2部分20の外面に、一対の平面D1及びD2を形成し、第3部分30を省略してもよい。
【0075】
<4-8>
容器100への弁構造体200の固定を容易にし、その固定の強度を向上させるべく、弁構造体200の第1部分10と容器100の周縁シール部130との間に接着性部材を介在させてもよい。この態様については、上記実施形態の説明の中でも簡単に言及したが、以下により詳細に説明する。
【0076】
接着性部材は、弁構造体200の第1部分10と、周縁シール部130を構成する包装材料110及び120との両方に対し接着性を有する部材であり、例えば、図14及び図15に示すような接着性フィルム600として構成することができる。図14は、弁構造体200の第1部分10の周辺の拡大平面図であり、図15は、そのXV-XV線断面図である。第1部分10は、接着性フィルム600を介して包装材料110及び120に挟まれる。このように接着性フィルム600を介することによって、仮に第1部分10の外面と、包装材料110及び120の最内層(熱融着性樹脂層)とが異素材であっても、両者を強固に固定することができる。なお、本来であれば、図14において、接着性フィルム600の包装材料110及び120に挟まれている部分は視認できないが、同図では参考のため、同部分の位置が点線で示されている。また、同図では、内部空間S1内の様子も部分的に点線で示されている。
【0077】
接着性フィルム600は、第1部分10とともに、容器100の成形時に、周縁シール部130を構成する包装材料110及び120に挟まれた状態でヒートシール等の態様で接着される。これにより、第1部分10の外面と接着性フィルム600の最内層とが融着して接合され、包装材料110及び120の最内層と接着性フィルム600の最外層とが、融着して接合される。
【0078】
接着性フィルム600の最内層は、第1部分10と容易に接着する材料から構成されることが好ましい。同様に、接着性フィルム600の最外層は、包装材料110及び120の最内層と容易に接着する材料から構成されることが好ましい。一例として、接着性フィルム600は、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)の単層フィルムであってもよい。ただし、接着性フィルム600は、最内層と最外層との間に芯材を有する三層構造又は三層以上の構造の積層フィルムとすることが好ましい。この場合、接着性フィルム600は、例えば、PPa、芯材としてのポリエチレンナフタレート(PEN)及びPPaの積層フィルムであってもよいし、PPa、芯材としてのポリプロピレン(PP)、PPaの積層フィルムであってもよい。しかしながら、特に好ましい芯材としては、ポリアミド繊維やポリエステル繊維、カーボン繊維等の繊維を挙げることができ、このうち、特にポリアミド繊維を好ましく使用することができる。この場合、繊維の間に接着性樹脂が保持されやすく、接着性フィルム自体の耐熱性(耐熱収縮性等)をさらに高めることができ、各種工程における接着性フィルムの変形を効果的に防止することができるからである。また、上記の例においてPPaに代えて、アイオノマー樹脂、変性ポリエチレン、EVA等の金属に接着可能な樹脂も適用可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 蓄電デバイス
100 容器
110 包装材料
120 包装材料
130 周縁シール部
101 収容体
200 弁構造体
201 ケーシング
10 第1部分
20 第2部分
30 第3部分
400 蓄電デバイス素子
41 第1翼状部
42 第2翼状部
600 接着性フィルム
L1 通路
A1 第1通気路
A2 第2通気路
A3 第3通気路
D1 第1平面
D2 第2平面
O1 入口
O2 出口
S1 内部空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15