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特許7533457多芯ケーブル用コア電線及び多芯ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】多芯ケーブル用コア電線及び多芯ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/02 20060101AFI20240806BHJP
   H01B 7/04 20060101ALI20240806BHJP
   H01B 7/295 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H01B7/02 Z
H01B7/04
H01B7/295
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021524841
(86)(22)【出願日】2020-06-01
(86)【国際出願番号】 JP2020021671
(87)【国際公開番号】W WO2020246442
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】P 2019103449
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】松村 友多佳
(72)【発明者】
【氏名】田中 成幸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 太郎
(72)【発明者】
【氏名】小堀 孝哉
(72)【発明者】
【氏名】大嶋 拓実
(72)【発明者】
【氏名】八木澤 丈
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-025203(JP,A)
【文献】特開2018-032515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/02
H01B 7/04
H01B 7/295
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素線を撚り合わせた導体と、この導体の外周を被覆する絶縁層とを備える多芯ケーブル用コア電線であって、
上記絶縁層の主成分がポリエチレン系樹脂であり、
上記ポリエチレン系樹脂が、第1成分及び第2成分を含み、
上記第1成分が、高密度ポリエチレンであり、
上記第2成分が、
エチレン及びカルボニル基を有するαオレフィンの共重合体と、
超低密度ポリエチレンと
からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第1成分の含有割合が10質量%以上60質量%以下であり、
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第2成分の含有割合が20質量%以上80質量%以下であり、
上記エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体が、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体及びエチレン-酢酸ビニル共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である多芯ケーブル用コア電線。
【請求項2】
上記エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体が、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体である請求項1に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項3】
上記ポリエチレン系樹脂が、さらに第3成分を含み、
上記第3成分が、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は請求項2に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項4】
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第3成分の含有割合が5質量%以上45質量%以下である請求項3に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項5】
上記絶縁層が、さらに難燃剤を含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項6】
上記導体の横断面の平均面積が1.0mm以上3.0mm以下である請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項7】
上記素線の平均径が40μm以上100μm以下、上記複数の素線の本数が196本以上2450本以下である請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項8】
上記導体が、複数の素線を撚り合わせた撚素線をさらに撚り合わせた撚撚線である請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線。
【請求項9】
複数のコア電線を撚り合わせた芯線と、この芯線の周囲に配設されるシース層とを備える多芯ケーブルであって、
上記複数のコア電線の少なくとも1本が請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の多芯ケーブル用コア電線である多芯ケーブル。
【請求項10】
車載用ケーブルである請求項9に記載の多芯ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多芯ケーブル用コア電線及び多芯ケーブルに関する。
本出願は、2019年6月3日出願の日本出願第2019-103449号に基づく優先権を主張し、上記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動パーキングブレーキ(EPB:Electronic Parking Brake)用などの車載用多芯ケーブルに用いられるコア電線として、導体と導体を覆う樹脂製の2層の絶縁層とを有し、この絶縁層の一方の層がエチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体を含み、他方の層がポリオレフィン又はフッ素樹脂を含むコア電線が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-032515号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示の多芯ケーブル用コア電線は、
複数の素線を撚り合わせた導体と、この導体の外周を被覆する絶縁層とを備える多芯ケーブル用コア電線であって、
上記絶縁層、第1成分及び第2成分を含み、
上記第1成分が、高密度ポリエチレンであり、
上記第2成分が、
エチレン及びカルボニル基を有するαオレフィンの共重合体と、
超低密度ポリエチレンと
からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第1成分の含有割合が10質量%以上60質量%以下であり、
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第2成分の含有割合が20質量%以上80質量%以下である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本開示の第1実施形態に係る多芯ケーブル用コア電線を示す模式的断面図である。
図2図2は、本開示の第2実施形態に係る多芯ケーブルを示す模式的断面図である。
図3図3は、本開示の多芯ケーブルの製造装置を示す模式図である。
図4図4は、本開示の第3実施形態に係る多芯ケーブルを示す模式的断面図である。
図5図5は、実施例での屈曲試験を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[本開示が解決しようとする課題]
車載用多芯ケーブルは少なくとも一部のコア電線がシース層から露出された状態で使用されるため、コア電線には高い耐摩耗性が求められる。また、車載用多芯ケーブルは、車内での取り回しやアクチュエーターの駆動等に伴って複雑に屈曲され、さらに、使用環境によっては0℃以下の低温に晒される場合があるため、低温での耐屈曲性が求められる。
【0007】
本開示は、このような事情に基づいてなされたものであり、耐摩耗性及び低温での耐屈曲性に優れた多芯ケーブル用コア電線及びそれを用いた多芯ケーブルを提供することを課題とする。
【0008】
[本開示の効果]
本開示の一態様に係る多芯ケーブル用コア電線は、耐摩耗性及び低温での耐屈曲性に優れる。
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の一態様に係る多芯ケーブル用コア電線は、
複数の素線を撚り合わせた導体と、この導体の外周を被覆する絶縁層とを備える多芯ケーブル用コア電線であって、
上記絶縁層が、第1成分及び第2成分を含み、
上記第1成分が、高密度ポリエチレンであり、
上記第2成分が、
エチレン及びカルボニル基を有するαオレフィンの共重合体と、
超低密度ポリエチレンと
からなる群から選択される少なくとも1種であり、
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第1成分の含有割合が10質量%以上60質量%以下であり、
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第2成分の含有割合が20質量%以上80質量%以下である。
【0011】
当該多芯ケーブル用コア電線は、絶縁層の主成分として第1成分及び第2成分を含むポリエチレン樹脂を用い、かつ第1成分及び第2成分の含有割合を上記範囲とすることにより、耐摩耗性に優れ、かつ低温での耐屈曲性にも優れる。なお、本明細書において「低温」とは、-45℃以上0℃以下の温度範囲を意味する。
【0012】
ここで、「主成分」とは、絶縁層を構成する物質のうち最も含有率が高いものをいい、好ましくは含有率が50質量%以上であるものをいう。「高密度ポリエチレン」とは、密度が0.935g/cm以上のポリエチレンをいう。「超低密度ポリエチレン」とは、密度が0.855g/cm以上0.910g/cm未満のポリエチレンをいう。
【0013】
上記エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体が、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体であることが好ましい。エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体を用いることにより、低温での耐屈曲性をより向上できる。
【0014】
上記ポリエチレン系樹脂がさらに第3成分を含み、この第3成分が直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記ポリエチレン樹脂が上記第3成分を含むことにより、耐摩耗性及び低温での耐屈曲性をより向上できる。
【0015】
ここで、「直鎖状低密度ポリエチレン」とは、密度が0.910g/cm以上0.930g/cm未満であって、エチレンとαオレフィンとを共重合して得られるポリエチレンをいう。「低密度ポリエチレン」とは、密度が0.910g/cm以上0.930g/cm未満であって、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるポリエチレンをいう。
【0016】
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第3成分の含有割合が5質量%以上45質量%以下であることが好ましい。上記第3成分の含有割合を上記範囲とすることにより、耐摩耗性及び低温での耐屈曲性をより向上できる。
【0017】
上記絶縁層が、さらに難燃剤を含むことが好ましい。絶縁層が難燃剤を含むことにより、当該多芯ケーブル用コア電線の難燃性を向上できる。
【0018】
上記導体の横断面の平均面積が1.0mm以上3.0mm以下であることが好ましい。導体の横断面の平均面積を上記範囲とすることで、当該多芯ケーブル用コア電線を車載用の多芯ケーブルに好適に用いることができる。
【0019】
上記素線の平均径が40μm以上100μm以下であることが好ましく、複数の素線の本数が196本以上2450本以下であることが好ましい。素線の平均径及び本数を上記範囲とすることにより、耐摩耗性及び耐屈曲性の向上効果を促進することができる。
【0020】
上記導体が、複数の素線を撚り合わせた撚素線をさらに撚り合わせた撚撚線であることが好ましい。導体として素線を撚り合わせた撚素線をさらに撚り合わせた撚撚線を用いることで、耐摩耗性及び耐屈曲性の向上効果を促進することができる。
【0021】
本開示の別の態様に係る多芯ケーブルは、複数のコア電線を撚り合わせた芯線と、この芯線の周囲に配設されるシース層とを備える多芯ケーブルであって、上記複数のコア電線の少なくとも1本が上記多芯ケーブルである。
【0022】
当該多芯ケーブルは、芯線を構成するコア電線として上述の当該多芯ケーブル用コア電線を有するため、耐摩耗性に優れ、かつ低温での耐屈曲性にも優れる。
【0023】
当該多芯ケーブルは、芯線が撚りコア電線を含むことで、用途を拡張することができる。
【0024】
当該多芯ケーブルは、車載用ケーブルとして好適に用いられる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の各実施形態に係る多芯ケーブル用コア電線及び多芯ケーブルについて、必要に応じて図面を参照しつつ詳説する。
【0026】
〔第1実施形態〕
図1の多芯ケーブル用コア電線1は、複数の素線を撚り合わせた導体2と、この導体2の外周を被覆する絶縁層3とを備える。
【0027】
当該多芯ケーブル用コア電線1の横断面形状は特に限定されないが、例えば円形とされる。当該多芯ケーブル用コア電線1の横断面形状を円形とする場合、その平均外径は用途により異なるが、例えば1mm以上10mm以下とできる。上記多芯ケーブル用コア電線の横断面の平均外径の測定方法としては特に限定されないが、例えば多芯ケーブル用コア電線の任意の3点の外径を、ノギスを用いて測定したときの平均値を平均外径としてもよい。
【0028】
<導体>
導体2は、複数の素線を一定のピッチで撚り合せて構成される。この素線としては、特に限定されないが、例えば銅線、銅合金線、アルミニウム線、アルミニウム合金線等が挙げられる。また、導体2は、複数の素線を撚り合せた撚素線を用い、複数の撚素線をさらに撚り合せた撚撚線であるとよい。撚り合せる撚素線は同じ本数の素線を撚ったものが好ましい。
【0029】
素線の平均径の下限としては、40μmが好ましく、50μmがより好ましく、60μmがさらに好ましい。一方、素線の平均径の上限としては、100μmが好ましく、90μmがより好ましい。素線の平均径が上記下限より小さい、又は上記上限を超えると、当該多芯ケーブル用コア電線1の耐屈曲性向上効果が十分に発揮されないおそれがある。上記素線の平均径の測定方法としては特に限定されないが、例えば素線の任意の3点の平均径を、両端が円柱のマイクロメータを用いて測定したときの平均値を平均径としてもよい。
【0030】
素線の数は多芯ケーブルの用途や素線の径等にあわせて適宜設計されるが、下限としては、196本が好ましく、294本がより好ましい。一方、素線の数の上限としては、2450本が好ましく、2000本がより好ましい。また、撚撚線の例としては、28本の素線を撚り合せた7本の撚素線をさらに撚り合せた196本の素線を有する撚撚線、42本の素線を撚り合せた7本の撚素線をさらに撚り合せた294本の素線を有する撚撚線、20本の素線を撚り合せた19本の撚素線をさらに撚り合せた380本の素線を有する撚撚線、32本の素線を撚り合せた7本の撚素線をさらに撚り合せた224本の素線を有する7本の撚撚線をさらに撚り合せた1568本の素線を有する撚撚撚線、50本の素線を撚り合せた7本の撚素線をさらに撚り合せた350本の素線を有する7本の撚撚線をさらに撚り合せた2450本の素線を有する撚撚撚線等を挙げることができる。
【0031】
導体2の横断面における平均面積(素線間の空隙も含む)の下限としては、1.0mmが好ましく、1.5mmがより好ましく、1.8mmがさらに好ましく、2.0mmがさらに好ましい。一方、導体2の横断面における平均面積の上限としては、3.0mmが好ましく、2.8mmがより好ましい。導体2の横断面における平均面積を上記範囲とすることで、当該多芯ケーブル用コア電線1を車載用の多芯ケーブルに好適に用いることができる。上記導体の横断面における平均面積の算出方法としては特に限定されないが、例えば導体の任意の3点を、導体の撚り構造を押しつぶさないように注意しながらノギスを用いて外径を測定したときの平均値を平均外径とし、この平均外径から算出される面積を平均面積としてもよい。
【0032】
<絶縁層>
絶縁層3は、ポリエチレン系樹脂を主成分とする組成物により形成され、導体2の外周に積層されることで導体2を被覆する。絶縁層3の平均厚みとしては、特に限定されないが、例えば0.1mm以上5mm以下とされる。ここで「平均厚み」とは、任意の十点において測定した厚みの平均値をいう。なお、以下において他の部材等に対して「平均厚み」という場合にも同様に定義される。
【0033】
絶縁層3の主成分は、ポリエチレン系樹脂である。ポリエチレン系樹脂としては、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)などが挙げられる。
【0034】
(第1成分)
上記第1成分は、高密度ポリエチレンである。上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第1成分の含有割合の下限としては、10質量%であり、15質量%が好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、60質量%であり、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。上記含有割合が上記下限より小さいと、耐摩耗性が不十分となるおそれがある。逆に、上記含有割合が上記上限を超えると、低温での耐屈曲性が不十分となるおそれがある。
【0035】
(第2成分)
上記第2成分は、エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体及び超低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である。エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体としては、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)などが挙げられる。これらの中でも、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体は、低温での耐屈曲性に優れるため好ましい。エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体としては、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン-アクリル酸メチル共重合体(EMA)、エチレン-アクリル酸ブチル共重合体(EBA)などが挙げられる。エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体は、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第2成分の含有割合の下限としては、20質量%であり、30質量%が好ましく、40質量%がより好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、80質量%であり、70質量%が好ましい。上記含有割合が上記下限より小さいと、低温での耐屈曲性が不十分となるおそれがある。逆に、上記含有割合が上記上限を超えると、耐摩耗性が不十分となるおそれがある。
【0037】
上記第2成分は、エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体又は超低密度ポリエチレンを単独で用いてもよいし、これら2種を混合して用いてもよい。エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体及び超低密度ポリエチレンを混合して用いる場合、超低密度ポリエチレンに対するエチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体の質量比(エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体/超低密度ポリエチレン)については特に限定されない。
【0038】
(第3成分)
絶縁層3は、さらに第3成分を含有していてもよい。上記第3成分は、直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種である。上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第3成分の含有割合の下限としては、5質量%であり、10質量%が好ましい。一方、上記含有割合の上限としては、45質量%であり、40質量%が好ましい。
【0039】
上記第3成分は、直鎖状低密度ポリエチレン又は低密度ポリエチレンを単独で用いてもよいし、これら2種を混合して用いてもよい。直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを混合して用いる場合、低密度ポリエチレンに対する直鎖状低密度ポリエチレンの質量比(直鎖状低密度ポリエチレン/低密度ポリエチレン)については特に限定されない。
【0040】
絶縁層3における上記ポリエチレン系樹脂の含有量の下限としては、50質量%が好ましく、70質量%がより好ましい。一方、上記含有量の上限としては、100質量%が好ましく、90質量%がより好ましい。上記含有量が上記下限より小さいと、耐摩耗性及び低温での耐屈曲性が不十分となるおそれがある。
【0041】
絶縁層3の-35℃から25℃までの線膨張係数Cの下限としては、1.00×10-5-1が好ましく、5.00×10-5-1がより好ましい。一方、絶縁層3の線膨張係数Cの上限としては、1.00×10-3-1が好ましく、5.00×10-4-1がより好ましい。絶縁層3の線膨張係数Cが上記下限より小さいと、絶縁層3の強度等の機械的特性が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層3の線膨張係数Cが上記上限を超えると、低温で絶縁層3が変形し難くなるため、当該多芯ケーブル用コア電線1の低温での耐屈曲性が低下するおそれがある。「線膨張係数」とは、JIS-K7244-4(1999)に記載の動的機械特性の試験方法に準拠し、粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-220」)を用いて、引張モード、-100℃から200℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、歪0.05%の条件で、温度変化に対する薄板の寸法変化から算出される値である。
【0042】
絶縁層3の-35℃での弾性率Eの下限としては、1000MPaが好ましく、2000MPaがより好ましい。一方、絶縁層3の弾性率E1の上限としては、4000MPaが好ましく、3500MPaがより好ましい。絶縁層3の弾性率Eが上記下限より小さいと、絶縁層3の強度等の機械的特性が不十分となるおそれがある。逆に、絶縁層3の弾性率Eが上記上限を超えると、低温で絶縁層3が変形し難くなるため、当該多芯ケーブル用コア電線1の低温での耐屈曲性が低下するおそれがある。「弾性率」とは、JIS-K7244-4(1999)に記載の動的機械特性の試験方法に準拠し、粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-220」)を用いて、引張モード、-100℃から200℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、歪0.05%の条件で測定した貯蔵弾性率の値である。
【0043】
絶縁層3の25℃での弾性率Eの下限としては、200MPaが好ましく、250MPaがより好ましい。一方、絶縁層3の弾性率Eの上限としては、2000MPaが好ましく、1750MPaがより好ましい。絶縁層3の弾性率Eが上記下限より小さいと、耐摩耗性が悪くなるおそれがある。逆に、絶縁層3の弾性率Eが上記上限を超えると、ケーブルの曲げ剛性が大きくなり、導体の十分な屈曲性能が得られないおそれがある。
【0044】
絶縁層3の-35℃から25℃までの線膨張係数Cと-35℃での弾性率Eとの積C×Eの下限としては、0.10MPaK-1であり、0.15MPaK-1が好ましい。一方、上記積C×Eの上限としては、0.90MPaK-1であり、0.80MPaK-1が好ましく、0.70MPaK-1がより好ましい。上記積C×Eが上記下限より小さいと、絶縁層3の強度等の機械的特性が不十分となるおそれがある。逆に、上記積C×Eが上記上限を超えると、低温で絶縁層3が変形し難くなるため、当該多芯ケーブル用コア電線1の低温での耐屈曲性が低下するおそれがある。なお、上記積C×Eは、ポリエチレン系樹脂の種類、含有割合等により調整することができる。
【0045】
上記ポリエチレン系樹脂の融点の下限としては、80℃が好ましく、85℃がより好ましく、90℃がさらに好ましい。一方、上記融点の上限としては、130℃が好ましく、120℃がより好ましく、110℃がさらに好ましい。上記融点が上記下限より小さいと、使用環境よりも融点が低くなり、室温以上の温度域での耐摩耗性、強度等の十分な機械特性が得られないおそれがある。逆に、上記融点が上記上限を超えると、疲労破壊しやすくなり、割れが生じて十分な屈曲性能が得られないおそれがある。なお、多芯ケーブル用コア電線においては、上記ポリエチレン系樹脂は上記第1成分及び上記第2成分の少なくとも2種の混合物であることから、その混合物の融点が上記融点の範囲内であればよい。例えば、2種のポリエチレン系樹脂を混合する場合、一方のポリエチレン系樹脂の融点が上記融点の範囲内であるが、他方のポリエチレン系樹脂の融点が130℃超である場合でも、これらの混合物の融点が上記融点の範囲内であればよい。この場合、上記融点の範囲内である一方のポリエチレン系樹脂が、全ポリエチレン系樹脂における主成分(50質量%以上)であれば、その混合物の融点が上記融点の範囲内にあるとすることができる。
【0046】
絶縁層3は、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、反射付与剤、隠蔽剤、加工安定剤、可塑剤等の添加剤を含有していてもよい。また、絶縁層3は、上記ポリエチレン系樹脂以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、例えばスチレン-エチレン/ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、エチレン-四フッ化エチレン共重合体(ETFE)などが挙げられる。
【0047】
その他の樹脂の含有量の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。また、絶縁層3は、その他の樹脂を実質的に含有しなくてもよい。
【0048】
上記難燃剤としては、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン系難燃剤、金属水酸化物、窒素系難燃剤、リン系難燃剤等のノンハロゲン系難燃剤などが挙げられる。難燃剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
臭素系難燃剤としては、例えばデカブロモジフェニルエタン等が挙げられる。塩素系難燃剤としては、例えば塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェノール、パークロルペンタシクロデカン等が挙げられる。金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。窒素系難燃剤としては、例えばメラミンシアヌレート、トリアジン、イソシアヌレート、尿素、グアニジン等が挙げられる。リン系難燃剤としては、例えばホスフィン酸金属塩、ホスファフェナントレン、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム、リン酸エステル、ポリホスファゼン等が挙げられる。
【0050】
絶縁層3における難燃剤の含有量の下限としては、樹脂成分100質量部に対し、10質量部が好ましく、50質量部がより好ましい。一方、難燃剤の含有量の上限としては、200質量部が好ましく、130質量部がより好ましい。難燃剤の含有量が上記下限より小さいと、難燃効果を十分に付与できないおそれがある。逆に、難燃剤の含有量が上記上限を超えると、絶縁層3の押出成型性を損なうおそれ、及び伸びや引張強さ等の機械特性を損なうおそれがある。
【0051】
絶縁層3は、樹脂成分が架橋されていることが好ましい。絶縁層3の樹脂成分を架橋する方法としては、電離放射線を照射する方法、有機過酸化物等の熱架橋剤を用いる方法、シランカップリング剤を添加してシラングラフト反応をさせる方法等が挙げられる。
【0052】
<多芯ケーブル用コア電線の製造方法>
当該多芯ケーブル用コア電線1は、複数の素線を撚り合せる工程(撚り合せ工程)と、複数の素線を撚り合せた導体2の外周を被覆する絶縁層3を形成する工程(絶縁層形成工程)とを主に備える製造方法により得ることができる。
【0053】
導体2の外周への絶縁層3の被覆方法としては、例えば絶縁層3を形成する組成物を導体2の外周へ押出す方法が挙げられる。
【0054】
また、当該多芯ケーブル用コア電線1の製造方法では、絶縁層3の樹脂成分を架橋する工程(架橋工程)をさらに備えるとよい。この架橋工程は、絶縁層3を形成する組成物の導体2への被覆前に行ってもよく、被覆後(絶縁層3の形成後)に行ってもよい。
【0055】
上記架橋は、組成物への電離放射線の照射により行うことができる。電離放射線としては、例えばγ線、電子線、X線、中性子線、高エネルギーイオン線等を用いることができる。また、電離放射線の照射線量の下限としては、10kGyが好ましく、30kGyがより好ましい。一方、電離放射線の照射線量の上限としては、300kGyが好ましく、240kGyがより好ましい。照射線量が上記下限より小さいと、架橋反応が十分進行しないおそれがある。逆に、照射線量が上記上限を超えると、樹脂成分の分解が生じるおそれがある。
【0056】
〔第2実施形態〕
図2に示す多芯ケーブル10は、複数の図1の当該多芯ケーブル用コア電線1を撚り合せた芯線4と、この芯線4の周囲に配設されるシース層5とを備える多芯ケーブルである。上記シース層5は、内側シース層5a(介在)と外側シース層5b(外被)とを有する。当該多芯ケーブル10は、車載用の多芯ケーブルとして好適に使用できる。具体的な用途としては、例えば電動パーキングブレーキ(EPB)用、インホイールモーター用などが挙げられる。
【0057】
当該多芯ケーブル10の外径は、用途により適宜設計されるが、外径の下限としては、6mmが好ましく、8mmがより好ましい。一方、多芯ケーブル10の外径の上限としては、16mmが好ましく、14mmがより好ましく、12mmがさらに好ましく、10mmが特に好ましい。
【0058】
<芯線>
芯線4は、2本の同径の当該多芯ケーブル用コア電線1の対撚りにより構成される。この多芯ケーブル用コア電線1は、上述のように導体2及び絶縁層3を有する。
【0059】
<シース層>
シース層5は、芯線4の外側に積層される内側シース層5aと、内側シース層5aの外周に積層される外側シース層5bとの二層構造である。
【0060】
内側シース層5aの主成分としては、柔軟性を有する合成樹脂であれば特に限定されず、例えばポリエチレンやEVA等のポリオレフィン、ポリウレタンエラストマー、ポリエステルエラストマー等が挙げられる。これらは2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
内側シース層5aの最小厚さ(芯線4と内側シース層5aの外周との最小距離)の下限としては、0.3mmが好ましく、0.4mmがより好ましい。一方、内側シース層5aの最小厚さの上限としては、0.9mmが好ましく、0.8mmがより好ましい。また、内側シース層5aの外径の下限としては、6.0mmが好ましく、7.3mmがより好ましい。一方、内側シース層5aの外径の上限としては、10mmが好ましく、9.3mmがより好ましい。
【0062】
外側シース層5bの主成分としては、難燃性及び耐摩耗性に優れた合成樹脂であれば特に限定されず、例えばポリウレタン等が挙げられる。
【0063】
外側シース層5bの平均厚さとしては、0.3mm以上0.7mm以下が好ましい。
【0064】
内側シース層5a及び外側シース層5bは、それぞれ樹脂成分が架橋されていることが好ましい。内側シース層5a及び外側シース層5bの架橋方法は、絶縁層3の架橋方法と同様とすることができる。
【0065】
また、内側シース層5a及び外側シース層5bは、絶縁層3で例示した添加剤を含有してもよい。
【0066】
なお、シース層5と芯線4との間に抑巻部材として、紙等のテープ部材を巻き付けてもよい。
【0067】
<多芯ケーブルの製造方法>
当該多芯ケーブル10は、複数の多芯ケーブル用コア電線1を撚り合せる工程(撚り合せ工程)と、複数の多芯ケーブル用コア電線1を撚り合せた芯線4の外側にシース層を被覆する工程(シース層被覆工程)とを備える製造方法により得ることができる。
【0068】
上記多芯ケーブルの製造方法は、図3に示す多芯ケーブル製造装置を用いて行うことができる。この多芯ケーブル製造装置は、複数のコア電線サプライリール102と、撚り合せ部103と、内側シース層被覆部104と、外側シース層被覆部105と、冷却部106と、ケーブル巻付リール107とを主に備える。
【0069】
(撚り合せ工程)
撚り合せ工程では、複数のコア電線サプライリール102に巻き付けられた多芯ケーブル用コア電線1をそれぞれ撚り合せ部103に供給し、撚り合せ部103で複数の多芯ケーブル用コア電線1を撚り合せて芯線4を形成する。
【0070】
(シース層被覆工程)
シース層被覆工程では、内側シース層被覆部104により、撚り合せ部103で形成された芯線4の外側に貯留部104aに貯留された内側シース層形成用の樹脂組成物を押し出す。これにより、芯線4の外側に内側シース層5aが被覆される。
【0071】
内側シース層5aの被覆後、外側シース層被覆部105により、内側シース層5aの外周に貯留部105aに貯留された外側シース層形成用の樹脂組成物を押し出す。これにより、内側シース層5aの外周に外側シース層5bが被覆される。
【0072】
外側シース層5bの被覆後、芯線4を冷却部106で冷却することでシース層5が硬化し、当該多芯ケーブル10が得られる。この当該多芯ケーブル10は、ケーブル巻付リール107で巻取回収される。
【0073】
当該多芯ケーブルの製造方法は、シース層5の樹脂成分を架橋する工程(架橋工程)をさらに備えるとよい。この架橋工程は、シース層5を形成する組成物の芯線4への被覆前に行ってもよく、被覆後(シース層5の形成後)に行ってもよい。
【0074】
上記架橋は、多芯ケーブル用コア電線1の絶縁層3と同様の組成物への電離放射線の照射により行うことができる。電離放射線の照射線量の下限としては、50kGyが好ましく、100kGyがより好ましい。一方、電離放射線の照射線量の上限としては、300kGyが好ましく、240kGyがより好ましい。照射線量が上記下限より小さいと、架橋反応が十分進行しないおそれがある。逆に、照射線量が上記上限を超えると、樹脂成分の分解が生じるおそれがある。
【0075】
〔第3実施形態〕
図4に示す多芯ケーブル11は、複数の図1の当該多芯ケーブル用コア電線を撚り合せた芯線14と、この芯線14の周囲に配設されるシース層5とを備える多芯ケーブルである。当該多芯ケーブル11は、図2の多芯ケーブル10と異なり、径の異なる複数の当該多芯ケーブル用コア電線を撚り合せた芯線14を備える。当該多芯ケーブル11は、電動パーキングブレーキ(EPB)の信号ケーブルとしての用途に加え、アンチロック・ブレーキシステム(ABS)の動作を制御する電気信号を送信する用途にも好適に使用できる。なお、上記シース層5は、図2の多芯ケーブル10のシース層5と同じであるため、同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
<芯線>
芯線14は、同径の2本の第1コア電線1aと、この第1コア電線1aよりも径が小さく、かつ同径の2本の第2コア電線1bとを撚り合せて構成される。具体的には、芯線14は、上記2本の第1コア電線1aと、上記2本の第2コア電線1bを対撚りした1本の撚コア電線とを撚り合せて構成される。当該多芯ケーブル11をパーキングブレーキ及びABSの信号ケーブルとして用いる場合、第2コア電線2bを撚り合せた撚コア電線がABS用の信号を送信する。
【0077】
第1コア電線1aは、図1の多芯ケーブル用コア電線1と同じものである。第2コア電線1bは、第1コア電線1aと横断面の寸法以外の構成は同様であり、材料も同じものが使用できる。
【0078】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0079】
当該多芯ケーブルのシース層は単層でもよく、2層以上の多層構造であってもよい。
【0080】
当該多芯ケーブルは、コア電線として本開示の多芯ケーブル用コア電線以外の電線を含んでもよい。ただし、本開示の効果を有効に発現させるためには全てのコア電線を本開示の多芯ケーブル用コア電線とすることが好ましい。また、当該多芯ケーブルのコア電線の数は2本以上であれば特に限定されず、4本、6本等とすることもできる。
【0081】
また、当該多芯ケーブル用コア電線は、導体に直接積層されるプライマー層を有していてもよい。このプライマー層としては、金属水酸化物を含有しないポリエチレン等の架橋性樹脂を架橋させたものを好適に用いることができる。このようなプライマー層を設けることにより、絶縁層及び導体の剥離性の経時低下を防止できる。
【実施例
【0082】
以下、実施例によって本開示をさらに詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0083】
[コア電線の作製]
表1に示す配合で絶縁層形成組成物を調製し、平均径80μm、72本の軟銅(銅)の素線を撚った7本の撚素線をさらに撚った導体(平均径2.4mm)の外周に絶縁層形成組成物を押出して外径3mmの絶縁層を形成し、No.1~No.13の第1コア電線を得た。なお、絶縁層に120kGyで電子線照射を行い、樹脂成分を架橋させた。
【0084】
表1中、「HDPE」は日本ポリエチレン株式会社の「ノバテック(登録商標)HB432E」(密度0.957)、「EEA」は日本ポリエチレン株式会社の「レクスパール(登録商標)A1100」(アクリル酸エチル含有量10質量%、密度0.94)、「EVA」は三井デュポンポリケミカル製の「エバフレックス(登録商標)EV460」(酢酸ビニル含有量19質量%、密度0.94)、「VLDPE」は三井化学株式会社の「タフマー(登録商標)DF710」(密度0.87)、「LLDPE」は日本ポリエチレン株式会社の「ノバテック(登録商標)UF230」(密度0.921)、「LDPE」は日本ポリエチレン株式会社の「ノバテック(登録商標)LF280H」(密度0.928)である。
【0085】
また、表1中、「難燃剤1」は水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社の「ハイジライト(登録商標)H-31」)、「難燃剤2」は臭素系難燃剤(アルベマール株式会社の「SAYTEX(登録商標)8010」)、「難燃剤3」は三酸化アンチモン、「酸化防止剤」はBASF社の「イルガノックス(登録商標)1010」である。
【0086】
なお、表1中、「-」は該当する成分を使用しなかったことを示す。
【0087】
[多芯ケーブルの作製]
平均径80μm、60本の銅合金の素線を撚った導体(平均径0.72mm)の外周に架橋難燃ポリオレフィンを押出して外径1.4mmの絶縁層を形成したコア電線を撚り合わせて第2コア電線を得た。次に、同種の2本の上記第1コア電線と、上記第2コア電線とを撚り合わせて芯線を形成し、この芯線の周囲にシース層を押出により被覆することで、No.1~No.13の多芯ケーブルを得た。シース層としては、架橋ポリオレフィンを主成分とし、最小厚さが0.45mm、平均外径が7.4mmの内側シース層と、難燃性の架橋ポリウレタンを主成分とし、平均厚さが0.5mm、平均外径が8.4mmの外側シース層とを有するものを形成した。なお、シース層の樹脂成分の架橋は、180kGyの電子線照射により行った。
【0088】
[線膨張係数及び弾性率]
No.1~No.13の第1コア電線の絶縁層について、JIS K7244-4(1999)に記載の動的機械特性の試験方法に準拠し、粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製「DVA-220」)を用いて、引張モード、-100℃から200℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、歪0.05%の条件で、温度変化に対する薄板の寸法変化から、-35℃から25℃までの線膨張係数Cを算出した。また、JIS-K7244-4(1999)に記載の動的機械特性の試験方法に準拠し、上記粘弾性測定装置を用いて、引張モード、-100℃から200℃の温度範囲で、昇温速度5℃/分、周波数10Hz、歪0.05%の条件で測定した貯蔵弾性率から、-35℃における弾性率E及び25℃における弾性率Eを求めた。その結果を表1に示す。
【0089】
[摩耗試験]
No.1~No.13の第1コア電線の絶縁層について、ISO 6722-1(2011)に記載のスクレープ摩耗試験に準拠し、スクレープ摩耗試験装置(TAVB社製「5420-7N」)を用いて、室温で、試験荷重7N、摩耗針直径0.45mm、摩耗長さ15mm、試験速度55往復/分の条件で、摩耗針が試料を貫通するまでの摩耗針の往復回数を求め、A(750回以上)、B(750回未満)の判定を行った。その結果を表1に示す。
【0090】
[屈曲試験]
図5に示すように、水平かつ互いに平行に配置された直径60mmの2本のマンドレルA1及びマンドレルA2の間にNo.1~No.13の多芯ケーブルXを鉛直方向に通し、上端を一方のマンドレルA1の上側に当接するよう水平方向に90°屈曲させた後、他方のマンドレルA2の上側に当接するよう逆向きに90°屈曲させることを繰り返した。なお、試験条件は、多芯ケーブルXの下端に下向きに2kgの荷重を加え、温度を-35℃の条件下で、それぞれ屈曲回数速度を60回/分とし、50000回屈曲した。この試験後のコア電線の状態を確認し、A(異常なし:通電できる状態)及びB(断線:通電できなくなった状態)の判定を行った。その結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、絶縁層の主成分がポリエチレン系樹脂であり、このポリエチレン系樹脂が第1成分(高密度ポリエチレン)と第2成分(エチレンとカルボニル基を有するαオレフィンとの共重合体及び超低密度ポリエチレンからなる群から選択される少なくとも1種)とを含み、上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第1成分の含有割合が10質量%以上60質量%以下であり、上記ポリエチレン系樹脂の合計含有量に対する上記第2成分の含有割合が20質量%以上80質量%以下であるNo.2、No.3、及びNo.5~No.12の多芯ケーブルは、摩耗試験及び屈曲試験において良好な結果が得られた。以上の結果から、本開示の実施例は、耐摩耗性及び低温での耐屈曲性に優れることが示された。
【符号の説明】
【0093】
1、1a、1b 多芯ケーブル用コア電線
2 導体
3 絶縁層
4、14 芯線
5 シース層
5a 内側シース層
5b 外側シース層
10、11 多芯ケーブル
102 コア電線サプライリール
103 撚り合せ部
104 内側シース層被覆部
104a、105a 貯留部
105 外側シース層被覆部
106 冷却部
107 ケーブル巻付リール
A1、A2 マンドレル
X 多芯ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5