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特許7533463貼り合わせ用粘着シート、多層体および多層体の製造方法
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  • 特許-貼り合わせ用粘着シート、多層体および多層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】貼り合わせ用粘着シート、多層体および多層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/25 20180101AFI20240806BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240806BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 183/04 20060101ALI20240806BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240806BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20240806BHJP
   C09J 7/50 20180101ALI20240806BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240806BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
C09J7/25
C09J7/38
C09J201/00
C09J133/00
C09J175/04
C09J183/04
C09D5/00 D
C09D201/00
C09J7/50
B32B27/00 M
B32B27/36 102
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021539225
(86)(22)【出願日】2020-08-04
(86)【国際出願番号】 JP2020029875
(87)【国際公開番号】W WO2021029283
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019146993
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】武田 聖英
(72)【発明者】
【氏名】冨田 恵介
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-052270(JP,A)
【文献】特開2018-152187(JP,A)
【文献】特開平08-166581(JP,A)
【文献】特開2000-147202(JP,A)
【文献】特開2001-264534(JP,A)
【文献】国際公開第2006/082887(WO,A1)
【文献】特開2003-277703(JP,A)
【文献】特開2003-203387(JP,A)
【文献】特開2009-263568(JP,A)
【文献】特開2011-198976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 7/25
C09J 7/38
C09J 201/00
C09J 133/00
C09J 175/04
C09J 183/04
C09D 5/00
C09D 201/00
C09J 7/50
B32B 27/00
B32B 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートを含む基材と、
前記基材上に設けられた粘着層とを含み、
前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が160℃以上であり、
素子を保護するシートであって、使用時には素子から剥離される保護シート用である、
貼り合わせ用粘着シート。
【請求項2】
前記基材に含まれるポリカーボネートが、ビスフェノールAP型ポリカーボネート100~10質量%とビスフェノールA型ポリカーボネート0~90質量%とを含み、ただし、ビスフェノールAP型ポリカーボネートとビスフェノールA型ポリカーボネートの合計が100質量%を超えることはない、請求項1に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項3】
前記基材が、該基材に含まれる樹脂成分100質量部中、ポリアリレートを10~90質量部含む、請求項1または2に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項4】
前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が200℃以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項5】
前記粘着層が、アクリル粘着剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項6】
前記粘着層が、シリコーン粘着剤を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項7】
前記粘着層が、ウレタン粘着剤を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項8】
前記基材の面内レタデーションであるReが100nm以下である、請求項1~7のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項9】
前記基材のヘイズが0%以上1.5%以下である、請求項1~8のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項10】
前記基材の厚みが30μm以上200μm以下である、請求項1~9のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項11】
前記粘着層の厚みが10μm以上70μm以下である、請求項1~10のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項12】
前記シートを、前記粘着層側で、ポリカーボネート製鏡面フィルムにラミネートして、JIS Z0237に準拠した180°の方向に、152mm/分の条件下で剥離させる剥離試験において、0.001~3N/25mmの剥離力を示す、請求項1~11のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項13】
前記基材と前記粘着層の間に、プライマー層を有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シート。
【請求項14】
樹脂成形体の表面の少なくとも一部に、請求項1~13のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シートが、前記粘着層側で粘着している、多層体。
【請求項15】
前記樹脂成形体が樹脂シートである、請求項14に記載の多層体。
【請求項16】
前記樹脂成形体が、ポリカーボネートを含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項17】
前記樹脂成形体が、ポリイミドを含む、請求項14または15に記載の多層体。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に記載の貼り合わせ用粘着シートを、樹脂成形体に貼り付けることを含む、多層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り合わせ用粘着シート、多層体および多層体の製造方法に関する。特に、ポリカーボネートを含む基材を用いた、貼り合わせ用粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、粘着シートの基材として、ポリプロピレンやポリエチレンなどのポリオレフィンを用いたものが知られている。しかしながら、ポリオレフィンシートは、耐熱性の点で問題がある。一方、耐熱性を向上させるためには、ポリエチレンテレフタレートなども考えられる。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートは、湿熱性や成形性の観点から、改良が求められる。そこで、粘着シートの基材として、ポリカーボネートを用いることが検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、粘着シートを含む積層体であって、前面板は、ポリカーボネート系樹脂を主成分樹脂とするB層と、ポリカーボネート系樹脂とは異なる熱可塑性樹脂を主成分とするA層とを備えており、A層の合計厚みが10μm~250μmであり、前記A層および前記B層の合計厚み(T)に対する前記A層1層の厚み(A)の比((A)/(T))が0.05~0.40であり、温度85℃、湿度85%RH環境下に120時間、前面板と粘着シートの積層体を暴露した時の、前面板と粘着シートの内部応力(σ)が0.47MPa以下であることを特徴とする積層体が開示されている。
また、特許文献2には、23℃における対ガラス180°粘着力をPとし、80℃における対ガラス180°粘着力をQとした場合、Q/Pで表される値が1以上である粘着シートについて開示されている。さらに、前記粘着シートと、前記粘着シートの少なくとも一方の面上にポリカーボネート基材とを有する積層体についても開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/158827号
【文献】特開2017-200975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、ポリカーボネートを含む基材と、基材上に設けられた粘着層とを含む粘着シートは検討されている。しかしながら、近年、粘着シートの需要が増大しており、さらに新たな材料の提供が求められている。特に、最近では高温処理に対応できるような耐熱性に優れた貼り合わせ用粘着シートの需要が増加している。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリカーボネートを含む基材と、基材上に設けられた粘着層とを含む粘着シートであって、高温処理に対応できる貼り合わせ用粘着シート、ならびに、前記粘着シートを用いた多層体および多層体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題のもと、本発明者らが検討を行った結果、基材のガラス転移温度が160℃以上となるように調整することにより、上記課題を解決しうることを見出した。具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリカーボネートを含む基材と、
前記基材上に設けられた粘着層とを含み、
前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が160℃以上である、貼り合わせ用粘着シート。
<2>前記基材に含まれるポリカーボネートが、ビスフェノールAP型ポリカーボネート100~10質量%とビスフェノールA型ポリカーボネート0~90質量%とを含み、ただし、ビスフェノールAP型ポリカーボネートとビスフェノールA型ポリカーボネートの合計が100質量%を超えることはない、<1>に記載の貼り合わせ用粘着シート。
<3>前記基材が、該基材に含まれる樹脂成分100質量部中、ポリアリレートを10~90質量部含む、<1>または<2>に記載の貼り合わせ用粘着シート。
<4>前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が200℃以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<5>前記粘着層が、アクリル粘着剤を含む、<1>~<4>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<6>前記粘着層が、シリコーン粘着剤を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<7>前記粘着層が、ウレタン粘着剤を含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<8>前記基材の面内レタデーションであるReが100nm以下である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<9>前記基材のヘイズが1.5%以下である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<10>前記基材の厚みが30μm以上200μm以下である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<11>前記粘着層の厚みが10μm以上70μm以下である、<1>~<10>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<12>前記シートを、前記粘着層側で、ポリカーボネート製鏡面フィルムにラミネートして、JIS Z0237に準拠した180°の方向に、152mm/分の条件下で剥離させる剥離試験において、0.001~3N/25mmの剥離力を示す、<1>~<11>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<13>前記基材と前記粘着層の間に、プライマー層を有する、<1>~<12>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シート。
<14>樹脂成形体の表面の少なくとも一部に、<1>~<13>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シートが、前記粘着層側で粘着している、多層体。
<15>前記樹脂成形体が樹脂シートである、<14>に記載の多層体。
<16>前記樹脂成形体が、ポリカーボネートを含む、<14>または<15>に記載の多層体。
<17>前記樹脂成形体が、ポリイミドを含む、<14>または<15>に記載の多層体。
<18><1>~<13>のいずれか1つに記載の貼り合わせ用粘着シートを、樹脂成形体に貼り付けることを含む、多層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高温処理に対応できる貼り合わせ用粘着シート、ならびに、前記粘着シートを用いた多層体および多層体の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の貼り合わせ用粘着シートの層構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
本明細書において、「シート」とは、薄く、その厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、「フィルム」を含むものとする。また、本明細書における「シート」は、単層であっても多層であってもよい。
本明細書において、(メタ)アクリレートの用語は、アクリレート、および、メタクリレートをそれぞれ包含し得るものである。
【0010】
[貼り合わせ用粘着シート]
本発明の貼り合わせ用粘着シート(以下、「シート」、「粘着シート」ということがある)は、ポリカーボネートを含む基材と、前記基材上に設けられた粘着層とを含み、前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が160℃以上であることを特徴とする。このような構成とすることにより、高温処理に対応できる貼り合わせ用粘着シートを提供可能になる。さらに、他部材(例えば、後述する樹脂成形体)との貼り付け性と再剥離性両方に優れ、かつ、透明性に優れた貼り合わせ用粘着シートとすることができる。このように、ガラス転移温度が160℃以上である基材に粘着層を設けることにより得られた貼り合わせ用粘着シートは、高温処理が要求される製品や、検査時に高温処理などの信頼性試験が要求される製品に対する保護フィルムとして使用できる。
【0011】
本発明の粘着シートは、基材上に設けられた粘着層を必須の構成要素とする。本発明の好ましい実施形態としては、図1に示すように、本発明の粘着シート10としては、粘着層12とプライマー層16と基材20とを有する粘着シートが例示される。
本発明では、粘着層12、プライマー層16、基材20は、それぞれ1層であってもよいし、2層以上であってもよい。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、本発明の粘着シートに含まれる粘着層の少なくとも一層は、基材の表面に設けられていてもよいし、基材と前記粘着層の間に、プライマー層や他の層が設けられていてもよい。本発明の粘着シートにおいて、粘着層は、プライマー層における基材側とは反対側の表面に設けられていることが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい実施形態において、プライマー層は、通常、基材と粘着層の間に設ける。プライマー層を有することにより、基材に含まれるポリカーボネート由来の不純物などが、粘着層へ侵入し、粘着性を低下させたり、基材層を劣化・分解させたり、泡などを発生することがあるがこれを効果的に抑制できる。
プライマー層は、基材と粘着層との間に配置されることが好ましく、プライマー層の一方の面が基材の表面に、他方の面が粘着層の表面に接するように設けられていることがより好ましい。しかしながら、プライマー層と基材との間、および/または、プライマー層と粘着層との間に、他の層が設けられていてもよい。
【0014】
本発明の粘着シートにおける他の層としては、ハードコート層、紫外線吸収層、帯電防止層、反射防止層、アンチブロック層、インデックスマッチング層、印刷コート層および剥離層が例示される。
【0015】
以下、基材、粘着層、プライマー層、ハードコート層の詳細について述べる。
【0016】
<基材>
本発明の粘着シートにおいては基材がポリカーボネートを含み、示差走査熱量測定によって測定した基材のガラス転移温度が160℃以上である。ガラス転移温度を前記下限値以上とすることにより、優れた耐熱性を有する貼り合わせ用粘着シートが得られる。
前記基材のガラス転移温度は、160℃以上であることが好ましく、161℃以上であることがより好ましい。また、前記基材のガラス転移温度は、200℃以下であることが好ましく、190℃以下であることがより好ましく、180℃以下であることがさらに好ましい。ガラス転移温度は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される(以下、ガラス転移温度について同じ)。
基材のガラス転移温度を上記範囲とする手段としては、用いるポリカーボネートの種類を選択する、他の樹脂を添加する等が例示される。具体的には、ビスフェノールAP型ポリカーボネート等のガラス転移温度の高いポリカーボネートを添加することや、ポリアリレート等のガラス転移温度の高い他の樹脂を添加すること等が挙げられる。これらの詳細は後述する。
【0017】
本発明で用いる基材は、面内レタデーション(Re)が100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、60nm以下であることがさらに好ましく、45nm以下であることが一層好ましく、40nm以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、液晶部材用途への適用も期待されるとともに、高温処理時の収縮も低減される。また、下限値は、低ければ低いほど望ましいが、0.1nm以上が実際的である。
【0018】
基材のヘイズについては、1.5%以下であることが好ましく、1.2%以下であることがより好ましく、1.0%以下であることがさらに好ましい。下限値は特に制限されず、0%が理想であるが、0.01%以上、さらには、0.1%以上でも、十分に性能要求を満たすものである。
なお、本明細書においてヘイズは、後述する実施例に記載の方法に基づき測定した値を採用する。
【0019】
基材の厚みは、特に制限はないが、30μm以上であることが好ましく、35μm以上であることがより好ましく、40μm以上であることがさらに好ましく、50μmであることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、粘着シートとしての材料強度(引張強度など)がより向上する傾向にある。また、基材の厚みは、200μm以下であることが好ましく、150μm以下であることがより好ましく、120μm以下であってもよい。前記上限値以下とすることにより、基材の剛性によって、貼り付け時に容易に剥がれやすくなるという問題をより効果的に抑制できる。
【0020】
次に、本発明の基材の材料について説明する。
本発明で用いる基材は、ポリカーボネートを含む。
基材に含まれるポリカーボネートの種類としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合を含む-[O-R-OC(=O)]-単位(Rが、炭化水素基、具体的には、脂肪族基、芳香族基、または、脂肪族基と芳香族基の双方を含むもの、さらに直鎖構造あるいは分岐構造を持つもの)を含むものであれば、特に限定されないが、芳香族ポリカーボネートが好ましく、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネートがより好ましい。このようなポリカーボネートを用いることにより、より優れた耐熱性と靱性が達成される。ビスフェノール骨格を有するポリカーボネートは、全構成単位の90モル%以上がビスフェノール骨格を有する構成単位であることが好ましい。
【0021】
また、ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)は、10,000以上であることが好ましく、より好ましくは、12,000以上であり、さらに好ましくは15,000以上であり、一層好ましくは20,000以上である。前記下限値以上とすることにより、基材の耐久性がより向上する傾向にある。前記ポリカーボネートの粘度平均分子量(Mv)の上限値は、45,000以下であることが好ましく、より好ましくは40,000以下であり、さらに好ましくは34,000以下である。前記上限値以下とすることにより、基材の成形加工性がより向上する傾向にある。
粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4×Mv0.83、から算出される値を意味する。
2種以上のポリカーボネートを用いる場合は、混合物の粘度平均分子量とする(以下、各種物性について同様に考える)。
【0022】
本発明で用いる基材は、ポリカーボネートのみからなっていてもよいし、他の樹脂成分を含んでいてもよい。他の樹脂としては、ポリアリレートが例示される。
基材における樹脂成分の総量は、全体の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であってもよい。樹脂成分は、ポリカーボネートを1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、ポリカーボネート以外の他の樹脂成分(例えば、ポリアリレート)を含む場合、前記他の樹脂成分も1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。また、樹脂成分以外の成分としては、後述する添加剤が挙げられる。
【0023】
本発明で用いる基材の第一の実施形態は、ポリカーボネートが、ビスフェノールAP型ポリカーボネート100~10質量%とビスフェノールA型ポリカーボネート0~90質量%とを含む(ただし、ビスフェノールAP型ポリカーボネートとビスフェノールA型ポリカーボネートの合計が100質量%を超えることはない)形態である。基材の第一の実施形態においては、ビスフェノールAP型ポリカーボネート20~90質量%とビスフェノールA型ポリカーボネート10~80質量%とを含むことが好ましく、ビスフェノールAP型ポリカーボネート30~80質量%とビスフェノールA型ポリカーボネート20~70質量%とを含むことがより好ましい。このような形態とすることにより、耐熱性に優れるほか、得られるシートの面内レタデーションを低下させることが可能となる。
本実施形態において、基材に対するポリカーボネートの総量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上である。
ビスフェノールAP型ポリカーボネートとビスフェノールA型ポリカーボネートは、それぞれ1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
以下、ビスフェノールAP型ポリカーボネートとビスフェノールA型ポリカーボネートについて詳細に説明する。
【0024】
<<ビスフェノールAP型ポリカーボネート>>
ビスフェノールAP型ポリカーボネートは、ビスフェノールAPおよびその誘導体由来のカーボネート単位を有する樹脂をいい、下記式(A-1)で表される構成単位を有していることが好ましい。式中の*は結合位置を表す。
【化1】
式(A-1)中、R~Rは、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~9(好ましくは1~3)のアルキル基、炭素数6~12(好ましくは6~10)のアリール基、炭素数1~5(好ましくは1~3)のアルコキシ基、炭素数2~5(好ましくは2または3)のアルケニル基または炭素数7~17(好ましくは7~11)のアラルキル基を表す。lは0~5の整数を表す。mおよびnはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。*は結合位置を表す。
【0025】
式(A-1)で表される構成単位は、下記式(A-2)で表される構成単位であることが好ましい。式中の*は結合位置を表す。
【化2】
、R、R、R、l、m、nは、式(A-1)で定義したものと同義である。
【0026】
式(A-2)で表される構成単位は、下記式(A-3)で表される構成単位であることが好ましい。式中の*は結合位置を表す。
【化3】
【0027】
ビスフェノールAP型ポリカーボネートにおける、式(A-1)で表される構成単位の含有量は、全構成単位中、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。上限値は特に限定されず、100モル%が式(A-1)で表される構成単位であってもよい。ビスフェノールAP由来の構成単位は1種のみでも、2種以上で構成されていてもよい。ビスフェノールAP型ポリカーボネートとして特に好ましくは、実質的に全量が式(A-1)の構成単位で構成された樹脂が挙げられる。ここでの実質的に全量とは、具体的には、99.0モル%以上を指し、99.5モル%以上が好ましく、99.9モル%以上がより好ましい。
ビスフェノールAP型ポリカーボネートは、ビスフェノールAPおよびその誘導体由来のカーボネート単位とは異なる他の構成単位を有していてもよい。このような他の構成単位を構成するジヒドロキシ化合物としては、例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0028】
ビスフェノールAP型ポリカーボネートの製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0029】
本発明において、ビスフェノールAP型ポリカーボネートの粘度平均分子量は10,000~28,000であることが好ましい。下限値としては、11,000以上であることがより好ましく、12,000以上であることがさらに好ましく、13,000以上であることが一層好ましい。上限としては、25,000以下であることがより好ましく、23,000以下であることがさらに好ましく、20,500以下であることが一層好ましい。上記粘度平均分子量とすることにより、得られる基材、さらには、粘着シートの透明性を維持しつつ、優れた耐熱性を付与することが可能となる。このようなビスフェノールAP型ポリカ-ボネートを用いることにより、ポリカーボネート成分全体の粘度平均分子量を所望の範囲としやすくなる。
【0030】
ビスフェノールAP型ポリカーボネートのガラス転移温度(Tg)は、172℃以上であることが好ましく、175℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましい。上限としては、210℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることがさらに好ましい。このようなビスフェノールAP型ポリカ-ボネートを用いることにより、ポリカーボネート成分全体のガラス転移温度を所望の範囲としやすくなる。
【0031】
<<ビスフェノールA型ポリカーボネート>>
ビスフェノールA型ポリカーボネートは、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート単位を有する樹脂をいう。
ビスフェノールA型ポリカーボネートにおける、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート単位の含有量は、全構成単位中、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。上限値は特に限定されず、100モル%がビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート単位であってもよい。ビスフェノールA型ポリカーボネートとして特に好ましくは実質的に全量がビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート単位で構成された樹脂である。ここでの実質的に全量とは、具体的には、99.0モル%以上を指し、99.5モル%以上が好ましく、99.9モル%以上がより好ましい。
ビスフェノールA型ポリカーボネートは、ビスフェノールAおよびその誘導体由来のカーボネート単位以外の他の構成単位を有していてもよい。このような他の構成単位を構成するジヒドロキシ化合物としては、例えば、特開2018-154819号公報の段落0014に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物を挙げることができ、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0032】
ビスフェノールA型ポリカーボネートの製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。その例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。
【0033】
本発明において、ビスフェノールA型ポリカーボネートの粘度平均分子量は10,000~45,000であることが好ましい。下限値としては、10,200以上であることがより好ましく、10,500以上であることがさらに好ましく、10,750以上であることが一層好ましい。上記下限値以上とすることにより、基材の耐久性が向上する傾向にある。上限としては、43,000以下であることがより好ましく、40,000以下であることがさらに好ましく、35,000以下であることが一層好ましい。上記上限値以下とすることにより、成形加工性が向上する傾向にある。
【0034】
本発明で用いる基材の第二の実施形態は、基材に含まれる樹脂成分100質量部中、ポリアリレートを10~90質量部含む形態である。このような形態とすることにより、優れた降伏強度を示す基材が得られる。基材の第二の実施形態においては、基材に含まれる樹脂成分100質量部中、ポリアリレートを20~80質量部含むことが好ましく、基材に含まれる樹脂成分100質量部中、ポリアリレートを25~75質量部含むことがより好ましい。
基材の第二の実施形態においては、ポリカーボネートと、ポリアリレートは、それぞれ1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
基材の第二の実施形態において、基材におけるポリカーボネートとポリアリレートの合計が、基材の好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上を占める。
【0035】
<<ポリカーボネート>>
第二の実施形態において、ポリカーボネートは、いずれのポリカーボネートであってもよいが、ビスフェノールA型ポリカーボネートを含むことが好ましい。ビスフェノールA型ポリカーボネートは、基材の第一の実施形態で述べたビスフェノールA型ポリカーボネートと同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0036】
<<ポリアリレート>>
本発明で用いるポリアリレートは、芳香族ジカルボン酸由来の構成単位とビスフェノール由来の構成単位とから構成される芳香族ポリエステルであることが好ましい。
芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、3,3’-ジフェニルジカルボン酸、4,4’-ジフェニルエーテルジカルボン酸等が挙げられ、テレフタル酸およびイソフタル酸がより好ましい。
ビスフェノールとしては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは、2種以上混合して使用してもよい。
【0037】
より具体的には、ポリアリレートは、下記式(B-1)で表される構成単位および/または下記式(B-2)で表される構成単位を含むことが好ましい。式中の*は結合位置を表す。
式(B-1)
【化4】
式(B-1)中、Xは下記構造を表す。
【化5】
およびRは、アルキル基または水素原子であり、少なくとも一方がメチル基であることが好ましく、両方がメチル基であることがより好ましい。
式(B-1)で表される構成単位は、例えば、ビスフェノールAおよびその誘導体の少なくとも1種と、テレフタル酸およびイソフタル酸、ならびに、それらの誘導体の少なくとも1種とから形成される。テレフタル酸とイソフタル酸のモル比率は、40~60:60~40であることが好ましい。
【0038】
式(B-2)
【化6】
式(B-2)中、Rは、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、炭素数1~9(好ましくは1~3)のアルキル基、炭素数6~12(好ましくは6~10)のアリール基、炭素数1~5(好ましくは1~3)のアルコキシ基、炭素数2~5(好ましくは2または3)のアルケニル基または炭素数7~17(好ましくは7~11)のアラルキル基を表す。qは1~5の整数を表す。
は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~9(好ましくは1~3)のアルキル基が好ましく、水素原子またはメチル基がより好ましい。
【0039】
式(B-2)で表される構成単位は、式(B-3)で表される構成単位であることが好ましい。
式(B-3)
【化7】
式(B-3)中、Rは式(B-2)におけるRと同義であり、好ましい範囲も同様である。
式(B-3)で表される構成単位は、例えば、ビスフェノールTMCおよびその誘導体の少なくとも1種と、テレフタル酸およびイソフタル酸、ならびに、それらの誘導体の少なくとも1種とから形成される。テレフタル酸とイソフタル酸のモル比率は、40~60:60~40であることが好ましい。
【0040】
本発明で用いるポリアリレートの第一の実施形態は、式(B-1)で表される構成単位を、両末端を除く全構成単位の90モル%以上含む形態である。
本発明で用いるポリアリレートの第二の実施形態は、式(B-1)で表される構成単位と式(B-2)で表される構成単位を、モル比で、90~40:10~60の割合で含む形態であり、90~51:10~49の割合で含むことがより好ましく、85~55:15~45の割合で含むことがより好ましい。式(B-1)で表される構成単位と式(B-2)で表される構成単位は、同じポリアリレートに含まれていてもよいし、式(B-1)で表される構成単位を含むポリアリレートと、式(B-2)で表される構成単位を含むポリアリレートのブレンド物であってもよい。また、第二の実施形態においては、本発明で用いるポリアリレートが、式(B-1)で表される構成単位と式(B-2)で表される構成単位を、合計で、両末端を除く全構成単位の90モル%以上含むことがより好ましい。
【0041】
ポリアリレートの重量平均分子量は、25,000以上であることが好ましく、30,000以上であることがより好ましく、35,000以上であることがさらに好ましく、37,000以上であることが一層好ましく、40,000以上であってもよい。また、前記ポリアリレートの重量平均分子量の上限値は、80,000以下であることが好ましく、60,000以下であることがより好ましく、50,000以下であることがさらに好ましい。
【0042】
ポリアリレートの重量平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより、以下のようにして行った。
ゲル浸透クロマトグラフィー装置には、LC-20AD system(島津製作所社製)を用い、カラムとして、LF-804(Shodex社製)を接続して用いた。カラム温度は40℃とした。検出器はRID-10A(島津製作所社製)のRI検出器を用いた。溶離液として、クロロホルムを用い、検量線は、東ソー社製の標準ポリスチレンを使用して作成した。
上記ゲル浸透クロマトグラフィー装置、カラム、および、検出器が入手困難な場合、同等の性能を有する他の装置等を用いて測定する。
【0043】
ポリアリレートの示差走査熱量計で測定したガラス転移温度は、160℃超であることが好ましく、170℃以上であることがより好ましく、180℃以上であることがさらに好ましく、190℃以上であることが一層好ましい。また、前記ガラス転移温度の上限値は、250℃以下であることが好ましく、さらには、240℃以下、230℃以下、220℃以下、200℃以下であってもよい。上記下限値以上とすることにより、得られる基材の耐熱性をより向上させることができ、上記上限値以下とすることにより、溶融粘度をより適正な範囲とすることができる。
【0044】
基材は、また、上記樹脂成分の他、添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤および着色剤からなる群から選択された少なくとも1種が例示される。さらに、帯電防止剤、近赤外線遮蔽剤、光拡散剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を基材に添加してもよい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。中でも本発明においては、リン系酸化防止剤およびフェノール系酸化防止剤(より好ましくはヒンダードフェノール系酸化防止剤)が好ましい。リン系酸化防止剤は、基材の色相に優れることから特に好ましい。リン系酸化防止剤としては、特開2018-178075号公報の段落0098~0106の記載を参酌でき、この内容は本明細書に組み込まれる。
基材における添加剤の総量は、0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましい。
【0045】
次に、基材の層構成について説明する。
基材は、単層であってもよいが、多層であってもよい。多層とする場合、例えば、ポリカーボネート(PC)の層に、アクリル樹脂、例えば、ポリ(メタ)クリル酸メチル樹脂(PMMA:ポリアクリル酸メチルおよび/またはポリメタクリル酸メチル)等のアクリル系樹脂層を積層させたもの、ポリカーボネート(PC)の層に、さらに、ポリカーボネート(PC)の層を積層させたもの等が挙げられる。本発明で用いる基材は、単層が好ましい。
【0046】
<粘着層>
本発明のシートは、上述の通り、基材上に設けられた粘着層を含む。
粘着層の種類は、特に制限はないが、アクリル粘着剤、シリコーン粘着剤およびウレタン粘着剤の少なくとも1種を含むことが好ましい。これらの粘着剤を用いることにより、より高い粘着性と、例えば、プライマー層に対する適度な密着性を実現できる。
また、粘着層は、再剥離性を有していてもよく、再剥離性を有する粘着層は、一度、貼り付け材から剥離させても再度、粘着させることができる。
【0047】
アクリル粘着剤は、アクリル系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、DIC社製のファインタック(CT-3088、CT-3850、CT-6030、CT-5020、CT-5030)、クイックマスター(SPS-900-IV、クイックマスターSPS-1040NT-25)、および、トーヨーケム社製の粘着剤オリパイン等が挙げられる。
シリコーン粘着剤は、シリコーン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、信越化学工業社製のKR-3704(主剤)とCAT-PL-50T(白金触媒)とにより製造されるポリマー等が挙げられる。
ウレタン粘着剤は、ウレタン系高分子を含む粘着剤であり、具体例として、トーヨーケム社製の粘着剤オリパイン等が挙げられる。
本明細書では、高分子とは、数平均分子量が1000以上の化合物をいい、好ましくは2000以上の化合物を意味する。
【0048】
粘着層としては、上記の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、特開2017-200975号公報の段落0026~00053に記載の粘着剤層、特開2013-020130号公報の段落0056~0060に記載の粘着層、国際公開第2016/158827号の粘着シート、特開2016-182791号公報の段落の0031~0032の粘着層、特開2015-147837号公報の段落0057~0084のゴム系粘着剤層を採用することもでき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0049】
粘着層の厚みは、特に制限はないが、10μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましく、35μm以上であることがさらに好ましく、40μm以上であってもよい。また、粘着層の厚みは、70μm以下であることが好ましく、60μm以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、より適切な粘着特性および粘着強度が達成される。
【0050】
次に、粘着層の剥離力について述べる。
本発明では、ポリカーボネートを含む基材と、前記基材上に設けられた粘着層とを含み、前記基材の示差走査熱量測定によって測定したガラス転移温度が160℃以上である、貼り合わせ用粘着シートを、前記粘着層側で、厚さ0.1(mm)のポリカーボネート製鏡面フィルムにラミネートして、JIS Z0237に準拠した、180°の方向に、152mm/分の条件下で剥離させる剥離試験において、0.001~4.5N/25mmの剥離力を示すことが好ましい。前記下限値以上とすることにより、粘着強度がより向上する傾向にある。剥離力は、0.005N/25mm以上であることがより好ましく、0.01N/25mm以上であることがさらに好ましい。また、前記剥離力は、3N/25mm以下であることがより好ましく、1N/25mm以下であることがさらに好ましく、0.8N/25mm以下であることが一層好ましく、0.7N/25mm以下であることがより一層好ましく、0.5N/25mm以下であることがさらに一層好ましく、0.2N/25mm以下であってもよい。剥離力を、3N/25mm以下、さらには1N/25mm以下とすることにより、再剥離性にも優れた粘着シートが得られる。
剥離力は、後述する実施例に記載の方法に従って測定される。
【0051】
剥離力は、粘着層の組成によって制御が可能となる。例えば、シリコーン系粘着層の場合、構成されるポリオルガノシロキサンの主鎖構造、末端構造、分岐構造および分子量などによって剥離力の調整が可能となる。また、ウレタン系粘着層の場合、構成されるポリオールとポリイソシアネートの主鎖構造や分子量、およびそれらの比率などによって剥離力の調整が可能となる。また、アクリル系粘着層の場合、構成されるアクリル含有樹脂のモノマー構造や分子量、共重合比率、およびポリイソシアネートの主鎖構造や分子量、さらにはアクリル含有樹脂とポリイソシアネートの比率などよって剥離力の調整が可能となる。
また、粘着力の異なる粘着剤を組み合わせることによっても、任意の剥離力を有する粘着層を形成させることが可能となる。
【0052】
<プライマー層>
本発明の粘着シートは、上述の通り、プライマー層を有していてもよい。プライマー層は基材層と粘着層の間に設けられており、粘着層と基材層の接着性を高める効果を有する。また、粘着層形成時に使用される溶剤による基材へのケミカルクラックなどを抑制することが可能となる。
プライマー層は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含むことが好ましい。ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることにより、より耐熱性に優れた粘着シートが得られる。
【0053】
<<ウレタン(メタ)アクリレート樹脂>>
(環状骨格の分子構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂)
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂としては、環状骨格の分子構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。より具体的には、環状骨格を有する、イソシアネート化合物とアクリレート化合物との重合体が、好ましいウレタン(メタ)アクリレートの具体例として挙げられる。なお、環状骨格の分子構造を有していてもよいウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、好ましくは、紫外線硬化型である。
【0054】
イソシアネート化合物としては、例えば、メチル基等のアルキル基である置換基を有していてもよい芳香族イソシアネートであって、好ましくは合計炭素数6~16の芳香族イソシアネート、さらに好ましくは炭素数7~14の芳香族イソシアネート、特に好ましくは炭素数8~12の芳香族イソシアネートが用いられる。
上述のイソシアネートとしては、芳香族イソシアネートであることが好ましいものの、脂肪族系、脂環式系等のイソシアネートも用いられる。
【0055】
(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(アクリル酸ヒドロキシプロピル:HPA)等が挙げられる。
また、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシ基とを有する化合物、例えば、ヒドロキシ基を有する単官能性(メタ)アクリル系化合物を用いることもできる。
【0056】
上述のイソシアネート化合物と(メタ)アクリレート化合物との重合体、すなわち、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)とペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との重合体、XDIとジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)との重合体、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)とPETAとの重合体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とPETAとの重合体、XDIと(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(HPA)との重合体、等が挙げられる。
【0057】
また、環状骨格を含むウレタン(メタ)アクリレートとして、上述のイソシアネート化合物と(メタ)アクリレート化合物に加え、ポリオール化合物を構成単位として含む重合体も挙げられる。ポリオール化合物(多価アルコール)は1分子中に2個以上のヒドロキシ基を有する化合物が例示される。
【0058】
上述のウレタン(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例としては、トリシクロジデカンジメタノール(TCDDM)とIPDIとPETAとの重合体、TCDDMとH12MDIとPETAとの重合体、これらの重合体のうちPETAの代わりに、あるいはPETAとともにDPPAを構成単位として含む重合体、キシリレンジイソシアネート(XDI)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(HPA)との重合体、等が挙げられる。
【0059】
イソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシ基とを有する化合物とに加え、ポリオール化合物を構成単位として含むウレタン(メタ)アクリレートは、下記式(I)で表される成分を少なくとも含むことが好ましい。
(A)-O(O=)CHN-A-HNC(=O)O-A-O(O=)CNH-A-NH-(=O)O-(A) ・・・(I)
式(I)において、
は、上述のポリオール化合物に由来のアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、上述のイソシアネート化合物由来のアルキレン基であり、
は、それぞれ独立して、上述の(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシ基とを有する化合物に由来のアルキル基である。
【0060】
上述の樹脂成分に含まれるウレタン(メタ)アクリレートの好ましい具体例として、エチレングリコール、ペンタエリスリトールトリアクリレート、および、イソホロンジイソシアネートに由来の構成単位を含む以下の化合物が挙げられる。下記式中、nの値は0~10であり、好ましくは1~5であり、より好ましくは1~3である。
【化8】
【0061】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂において、(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシ基とを有する化合物に由来する構成単位と、イソシアネートに由来する構成単位との比率は、99:1~30:70(質量比)であることが好ましく、より好ましくは97:3~60:40であり、さらに好ましくは95:5~80:20である。
【0062】
((メタ)アクリレートを含むウレタン(メタ)アクリレート)
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例として、ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレート(ウレタン(メタ)アクリレート以外のものをいい、分子量1000以下の(メタ)アクリレートが好ましい、以下、同じ。)とを含むものが挙げられる。このようなウレタン(メタ)アクリレート樹脂のより好ましい具体例として、6官能ウレタン(メタ)アクリレートと2官能(メタ)アクリレートとの混合物を含むものが挙げられる。
【0063】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂において、ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレートとの比率は、99:1~30:70(質量比)であることが好ましく、より好ましくは97:3~60:40であり、さらに好ましくは95:5~80:20である。
【0064】
上述のように、ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレートの混合物によりプライマー層を形成すると、基材との密着性、および、プライマー層の曲げ性が向上する。
【0065】
本発明では、ウレタン(メタ)アクリレートは、ウレタンアクリレートが好ましい。
【0066】
プライマー層を形成する材料、すなわちプライマー塗料には、ウレタン(メタ)アクリレートと(メタ)アクリレート以外の樹脂成分、例えば、エポキシ(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレート、樹脂成分以外の成分として、帯電防止剤、紫外線吸収剤(紫外線遮蔽剤)、近赤外線遮蔽剤、シリカや金属粒子等を始めとする光拡散剤等を添加してもよい。これらの総量はプライマー塗料の固形分(プライマー層となる成分)の5質量%以下であることが好ましい。
【0067】
さらに、プライマー塗料には、レベリング剤、光重合開始剤のいずれかが含まれていてもよい。また、プライマー塗料には溶媒が含まれていてもよい。プライマー塗料の溶媒は、基材の樹脂成分に影響を及ぼさないものが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが特に好ましい。
プライマー塗料にレベリング剤を添加することにより、乾燥過程の塗膜表面に配向性をもたせ、塗膜の表面張力を均一化かつ低下させ、浮きまだらやハジキを防止し、被塗物への濡れ性を向上させることができる。レベリング剤として、例えば、シリコーン系界面活性剤、アクリル系界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が好適に用いられる。
【0068】
プライマー塗料においては、プライマー塗料の固形分(プライマー層となる成分)の質量を基準として、樹脂成分が80質量%以上含まれることが好ましく、より好ましくは、樹脂成分が90質量%以上含まれ、さらに好ましくは、樹脂成分が95質量%以上含まれる。そして樹脂成分においては、ウレタン(メタ)アクリレートが80質量%以上含まれることが好ましい。
【0069】
プライマー層としては、上記の他、特開2016-182791号公報の段落0012~0019、0029~0030の記載、特開2015-147837号公報の段落0051~0056の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0070】
プライマー層の厚みは、特に制限はないが、2μm以上であることが好ましく、2.5μm以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、粘着層塗布時に基材が溶媒にて白化してしまうことをより効果的に抑制できる。また、プライマー層の厚みは、10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、折り曲げ時などにクラックを発生しにくくできる。
【0071】
<ハードコート層>
本発明の粘着シートは、上述のとおり、ハードコート層を有していてもよい。ハードコート層を設けることにより、粘着シートの表面硬度が向上する傾向にある。ハードコート層の厚さは、特に制限されないが、好ましくは1~10μmであり、より好ましくは2~8μm、さらに好ましくは3~7μmである。
ハードコート層は、好ましくは、基材の表面のうちプライマー層が積層されていない表面に形成される。
ハードコート層は、基材等の表面に施すハードコート処理により形成されることが好ましい。すなわち、熱硬化または活性エネルギー線による硬化が可能なハードコート材料を塗布後、硬化させることにより、ハードコート層を積層することが好ましい。
活性エネルギー線を用いて硬化させる塗料の一例としては、1官能あるいは多官能の(メタ)アクリレートモノマーあるいはオリゴマーなどの単独あるいは複数からなる樹脂組成物、より好ましくは、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを含む樹脂組成物等が挙げられる。これらの樹脂組成物には、硬化触媒として光重合開始剤が加えられることが好ましい。
また、熱硬化型樹脂塗料としてはポリオルガノシロキサン系、架橋型アクリル系などのものが挙げられる。この様な樹脂組成物は、アクリル樹脂またはポリカーボネート用ハードコート剤として市販されているものもあり、塗装ラインとの適正を加味し、適宜選択すればよい。
ハードコート層としては、特開2013-020130号公報の段落0045~0055の記載、特開2018-103518号公報の段落0073~0076の記載、特開2017-213771号公報の段落0062~0082の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0072】
[粘着シートの製造方法]
粘着シートの製造においては、まず、基材が形成されることが好ましい。基材の製造においては、ポリカーボネートを含む基材成形用の樹脂組成物を公知の手法でシート状(フィルム状)に加工する。具体的には、押出成形、キャスト成形により成形することができる。本発明では、特に、溶剤を含まないポリカーボネートを含む基材成形用の樹脂組成物を溶融し押出成形して、基材とすることが好ましい。押出成形の例としては、樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から押出し、得られる半溶融状のシートをロールで挟圧しながら、冷却、固化してシートを形成する方法が挙げられる。また、市販品のポリカーボネートフィルムを用いてもよい。
【0073】
粘着シートは、上述のポリカーボネートを含む基材を用いて、例えば、以下のように、プライマー層形成工程と、粘着層形成工程とを含む製法により製造可能である。
プライマー層形成工程においては、基材の表面上に、プライマー塗料(プライマー液)を塗布し、硬化させて、プライマー層を形成する。
また、粘着層形成工程においては、形成されたプライマー層における、基材と接している側とは反対側の表面上に、粘着剤を塗布して硬化させて粘着層を形成する。
プライマー塗料または粘着剤を硬化させる手法としては、光硬化、および熱硬化などの手法が採用され得る。
【0074】
[多層体]
本発明の多層体は、樹脂成形体の表面の少なくとも一部に、本発明の粘着シートが、前記粘着層側で粘着していることを特徴とする。ここで、樹脂成形体とは、樹脂から成形されるものであり、本発明の粘着シートが貼り合わされる被粘着体を意味する。樹脂成形体の形状は特に定めるものではなく、部品であっても、完成品であってよく、また、表面が平滑であっても、凹凸やさらに複雑な形状を有していてもよい。本発明では、樹脂成形体が樹脂シートである形態が例示される。
樹脂成形体は、耐熱性や透明性に優れた材料が好ましい。樹脂成形体は、Tgが160℃以上の非晶性樹脂が好ましく、ポリカーボネート、ポリアリレート、シクロオレフィンまたはポリイミドを含むことが好ましく、ポリカーボネートまたはポリイミドを含むことがより好ましい。
【0075】
本発明の多層体の製造方法は、本発明の貼り合わせ用粘着シートを、樹脂成形体に貼り付けることを含む。
樹脂成形体と粘着シートの貼り合わせ方法としては、公知の方法が使用可能である。例えば、そのまま手作業で貼り付けを行う他、ロールラミネーター法、水張り法、などが挙げられる。
【0076】
<用途>
本発明の粘着シートや多層体は、携帯電話端末、スマートフォン、携帯型電子遊具、携帯情報端末、タブレット機器、モバイルパソコン、ウェアラブル端末などの画像表示装置、液晶テレビ、液晶モニター、デスクトップパソコン、カーナビゲーション、自動車計器など設置型ディスプレイデバイス等の各種素子の構成材料として用いることができる。
特に、前記液晶部材の透明導電膜や各種素子の基板材料や保護材料として好適に用いることができる。
本発明の粘着シートや多層体には、種々の加工方法で加工することもできる。例えば、金型を用いて加熱・加圧する方法のほか、圧空成型法、真空成型法、ロールホーミング法などを成形方法として例示することができる。本発明の粘着シートや多層体を加工することで、曲面を有する素子へ利用することが可能となる。
【0077】
本発明は、上記の他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、国際公開第2016/158827号、特開2017-200975号公報、特開2015-147837号公報の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0079】
[基材]
<原料>
・ビスフェノールAPを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(FPC-0220、三菱ガス化学社製、粘度平均分子量20,200)
・ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(H-4000F、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、粘度平均分子量16,000)
・ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(H-7000F、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、粘度平均分子量14,000)
・ビスフェノールAを出発原料とする界面重合法により得られた芳香族ポリカーボネート樹脂(S-3000F、三菱エンジニアリングプラスチックス社製、粘度平均分子量21,000)
【0080】
・ビスフェノールAを出発原料とする芳香族ポリアリレート(U-パウダー Lタイプ、ユニチカ社製、ジカルボン酸成分:テレフタル酸/イソフタル酸=50/50モル%、ビスフェノール成分:ビスフェノールA=100モル%、重量平均分子量40,800)
【0081】
・ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、リン系酸化防止剤、ADEKA社製、アデカスタブPEP-36
・3,9-ビス[2-{3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}1,1-ジメチルエチル]-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、リン系酸化防止剤、ADEKA社製、アデカスタブAO-80
【0082】
<基材シート1、2の製造>
FPC-0220(45質量部)とH-4000F(55質量部)にPEP-36(0.005質量部)、AO-80(0.03質量部)を計量して加え、タンブラーにて15分間混合した後、ベント付二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30α)により、シリンダー温度320℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。
上記で得られたペレットを、バレル直径32mm、スクリューのL/D=31.5のベント付き二軸押出機(日本製鋼所社製、TEX30α)からなるTダイ溶融押出機を用いて、吐出量10kg/h、スクリュー回転数63rpmの条件で溶融状に押し出し、第一ロール(鏡面ゴムロール、温度50℃)と第二ロール(剛体鏡面ロール、温度130℃)で圧着した後、冷却固化し、シートを作製した。シリンダー・ダイヘッド温度は300℃で行った。その際、吐出量とロール引取速度を調整することにより、それぞれ50μm厚みのシート(基材シート1)と100μm厚みのシート(基材シート2)を得た。
【0083】
<基材シート3の製造>
上記、基材シート1の製造において、FPC-0220(45質量部)とH-4000F(55質量部)に代えて、U-パウダー Lタイプ(50質量部)、H-7000F(50質量部)に変更した以外は、基材シート1の製造と同様にして、50μm厚のシート(基材シート3)を作製した。
【0084】
<基材シート4の製造>
上記、基材シート1の製造において、FPC-0220(45質量部)とH-4000F(55質量部)に代えて、S-3000F(100質量部)に変更した以外は、基材シート1の製造と同様にして、50μm厚のシート(基材シート4)を作製した。
【0085】
<基材のガラス転移温度(Tg)の測定>
基材のガラス転移温度(Tg)は、下記のDSCの測定条件のとおりに、昇温、降温を2サイクル行い、2サイクル目の昇温時のガラス転移温度を測定した。
低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を開始ガラス転移温度とし、高温側のベースラインを低温側に延長した直線と、変曲点の接線の交点を終了ガラス転移温度とし、開始ガラス転移温度と終了ガラス転移温度の中間地点をガラス転移温度(Tg)とした。測定開始温度:30℃、昇温速度:10℃/分、到達温度:250℃、降温速度:20℃/分とした。
測定装置は、示差走査熱量計(DSC、日立ハイテクサイエンス社製、「DSC7020」)を使用した。
【0086】
<基材のレタデーション(Re)の測定>
エリプソメーターを用いて、基材シートの面内方向における最大の屈折率を与える方向の屈折率n、および、面内方向におけるnの方向に対して垂直な方向の屈折率nを測定した。これらのn、nからレタデーション(Re)(単位:nm)を算出した。基材シートを50×50mmサイズに5枚切り出し、それぞれのReを測定した。得られたReの平均値を基材のレタデーション(Re)とした。
<<測定条件>>
分光方式:ダブルモノクロ方式
測定波長:550nm
入射角:90°
バンド幅:0.5mm
レスポンス:2sec
異方性解析ステージの開始あおり角および終了あおり角:-50°、50°
測定間隔:5°
エリプソメーターは、日本分光社製「M-220」を用いた。
【0087】
<ヘイズの測定>
ヘイズメーターを用いて、JIS-K-7361およびJIS-K-7136に準拠して、D65光源10°視野の条件にて、基材のヘイズ(%)を測定した。
ヘイズメーターとしては、村上色彩技術研究所社製「HM-150」(商品名)を用いた。
【0088】
[プライマー塗料の調製]
6官能ウレタンアクリレート(根上工業(株)製、商品名UN-3320HC)90質量部と、2官能アクリレート(日本触媒製、商品名VEEA)10質量部、および、光重合開始剤Irgacure-184(BASF社製、現在は代替品としてIGM Resins B.V.社よりOmnirad184が販売されている)5質量部を混合し、溶媒であるプロピレングリコールモノメチルエーテルにて、固形分が30質量%となるように調製し、プライマー塗料を得た。
【0089】
[シリコーン粘着剤塗料1の調製(シリコーン1)]
シリコーン化合物(信越化学工業社製、商品名KR-3704)100質量部に、硬化のための白金触媒(信越化学工業社製、商品名、CAT-PL-50T)を0.5質量部、添加し、十分に混合して、溶媒トルエンにて固形分が40質量%となるように希釈し、シリコーン粘着剤塗料1を得た。
【0090】
[ウレタン粘着剤塗料1の調製(ウレタン1)]
主剤(トーヨーケム社製、商品名サイアバインSH-101)100質量部に、硬化剤(トーヨーケム社製、商品名T-501B)を4質量部、添加し、十分に混合して、ウレタン粘着剤溶液塗料1を得た。
【0091】
[ウレタン粘着剤塗料2の調製(ウレタン2)]
主剤(トーヨーケム社製、商品名サイアバインSH-205)100質量部に、硬化剤(トーヨーケム社製、商品名T-501B)を3質量部、添加し、十分に混合して、ウレタン粘着剤溶液塗料2を得た。
【0092】
[アクリル粘着剤塗料1の調製(アクリル1)]
主剤(DIC社製、商品名ファインタックCT-3088)100質量部に、硬化剤(DIC社製、商品名D-100K)を1.5質量部、添加し、十分に混合して、アクリル粘着剤塗料1を得た。
【0093】
[貼り付け先フィルム]
・ポリカーボネート(PC)フィルム
ビスフェノールA型ポリカーボネートを用いて作製された100μmの鏡面フィルム(FS-2000、MGCフィルシート社製)
・ポリイミド(PI)フィルム
以下の製造例で製造されたフィルム
<PIフィルムの製造>
ステンレス製半月型撹拌翼、窒素導入管、冷却管を取り付けたディーンスターク、温度計、ガラス製エンドキャップを備えた5ツ口ガラス製丸底フラスコ中で、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)を29.034g(0.056モル)、X-22-9409を18.76g(0.014モル)、γ-ブチロラクトン(三菱ケミカル社製)を50g、および触媒としてトリエチレンジアミン(東京化成工業社製)を0.039g、トリエチルアミン(関東化学社製)を3.54g、窒素雰囲気下、200rpmで撹拌して溶液を得た。この溶液に、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)を15.692g(0.070モル)とγ-ブチロラクトン(三菱ケミカル社製)を13.5g、それぞれ一括で加えた後、マントルヒーターで加熱し、約20分かけて反応系内温度を200℃まで上げた。留去される成分を捕集し、反応系内温度を200℃に3時間維持した。N,N-ジメチルアセトアミド(三菱ガス化学社製)を78.76g添加後、100℃付近で約1時間撹拌して、固形分濃度30質量%の均一なポリイミドワニスを得た。
続いて、得られたポリイミドワニスをPET基板上に塗布し、100℃で30分保持し、溶媒を揮発させることで自己支持性を有する無色透明な一次乾燥フィルムを得た。更に該フィルムをステンレス枠に固定し、230℃で窒素雰囲気下、2時間乾燥することにより溶媒を除去し、厚み40μmのPIフィルムを得た。
【0094】
[実施例1]
前記の方法で得られた基材シート1に、上記プライマー塗料1を、乾燥塗膜が3μmになる様に塗装し、熱風循環乾燥機にて100℃で2分乾燥させた。さらに、紫外線硬化装置にて、積算光量200mJ/cmになるように紫外線を照射して、基材の表面にプライマー層が形成された、プライマー処理シートを得た。
ついで、上記シリコーン粘着剤塗料1を、プライマー処理シートのプライマー層側の表面上に、バーコーターを用いて乾燥塗膜の厚さが40μmになるように塗装し、熱風循環乾燥機にて120℃で1分乾燥し、粘着層を形成した。
こうして、実施例1の粘着シートを得た。
【0095】
<剥離力>
上記で得られた粘着シートを、粘着層側で、貼り付け先PCフィルムにフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製、MP-630)を用いてラミネートし、引張試験機(島津製作所社製、オートグラフ AGS-X)にてJIS Z0237に準拠した180°方向に152mm/分の条件下で剥離させるピール試験(引張試験)を実施して剥離力(単位:N/25mm)を測定した。
試験方法は、JIS Z0237 に規定されている「粘着テープ・粘着シート試験方法」を参考にした180°剥離試験でポリカーボネート(PC)フィルムに対する粘着層の剥離力を評価した。すなわち、JIS Z0237の規格では、所定の試験板に対する粘着テープの剥離力を測定するが、実施例1等では、基材に貼り合わせて剥離力を測定した。このように、試験板の種類のみが、JIS Z023とは異なる方法で剥離力を評価した。
【0096】
<貼り付け試験>
各貼り付け先フィルムに、A4サイズにカットした粘着シートをフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製 MP-630)にてラミネートし、ラミネート後の多層体の外観を確認した。評価は、10人で行い、より多数が選んだ評価結果を採用した。
<<ラミネート条件>>
・ラミネート速度:1.8m/分
・左右ニップ圧:0.3MPa
A:外観に影響を与えることなくラミネート可能であった。
B:上記A以外、例えば、ラミネート時に外観不良が発生した等。
【0097】
<再剥離性>
各貼り付け先フィルムに、上記で得られた粘着シートをフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製、MP-630)にてラミネートし、150mm×150mmの大きさにカットし、23℃、50%相対湿度(RH)の条件にて24時間静置した後、粘着シートを剥離した際の貼り付け先フィルムの外観を確認した。評価は、10人で行い、より多数が選んだ評価結果を採用した。
A:外観に影響を与えることなく剥離可能であった。
B:やや外観に影響を与えたが、剥離可能であった。
C:上記A、B以外、例えば、剥離の際に、基材を変形させてしまい、再剥離不可となった等。
【0098】
<耐熱性試験>
貼り付け先PIフィルムに、A4サイズの実施例、比較例の粘着シートをフィルムラミネーター(エム・シー・ケー社製、MP-630)にてラミネートし、150mm×150mmの大きさにカットし、オーブン(ヤマト科学社製、DKN402)に入れて140℃、3時間静置し、取出し後、23℃の室内で30分静置した際の反りを観察した。反り量評価の判定は、水平な台の上に反りが生じた貼り付け先フィルムが下に凸となるように置き、貼り付け先フィルムを置いた台の水平面からフィルム4隅の反り量を定規にて測定し、4隅の反り量の平均値を算出した。測定は5回行い、5回の平均値として算出した。
A:反り量の平均値が1mm未満
B:反り量の平均値が1mm以上
【0099】
[実施例2]
上記実施例1において、基材シート1を基材シート2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粘着シートを得た。
【0100】
[実施例3]
上記実施例1において、シリコーン粘着剤塗料1をウレタン粘着剤塗料1に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の粘着シートを得た。
【0101】
[実施例4]
上記実施例1において、シリコーン粘着剤塗料1をアクリル粘着剤塗料1に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の粘着シートを得た。
【0102】
[実施例5]
上記実施例1において、基材シート1を基材シート3に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の粘着シートを得た。
【0103】
[実施例6]
実施例1において、シリコーン粘着剤塗料1をウレタン粘着剤2に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の粘着シートを得た。
【0104】
[比較例1]
実施例1において、基材1を基材4に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の粘着シートを得た。
【0105】
【表1】
【符号の説明】
【0106】
10 粘着シート
12 粘着層
16 プライマー層
20 基材
図1