(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】磁気式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240806BHJP
【FI】
G01D5/245 110X
(21)【出願番号】P 2021539237
(86)(22)【出願日】2020-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2020030068
(87)【国際公開番号】W WO2021029305
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-07-10
(31)【優先権主張番号】P 2019148028
(32)【優先日】2019-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】増井 隆一
(72)【発明者】
【氏名】石澤 尚大
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第6529692(JP,B1)
【文献】特開2011-027719(JP,A)
【文献】実開平05-055020(JP,U)
【文献】特開2004-184319(JP,A)
【文献】国際公開第2017/017806(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0080162(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12- 5/252
G01B 7/00- 7/34
H05K 9/00
H02K 11/00-11/40
H02K 5/00- 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動部(12)を構成する回転体(14)が回転することに伴って回転する永久磁石(42)と、前記永久磁石の磁界変化を検出する磁気センサ(44)とを有する磁気式エンコーダ(10)において、
前記回転体を通す挿通孔(54)が形成された第1壁部を含む第1部材(48)と、
前記第1壁部との間に前記永久磁石及び前記磁気センサを挟む第2壁部(56)を含む第2部材(52)と、
を備え、
前記第1部材及び前記第2部材が、最大で3.0重量%の炭素を含有する軟鋼からな
り、
前記第1部材及び前記第2部材の保磁力が3Oe以下である磁気式エンコーダ。
【請求項2】
請求項1記載のエンコーダにおいて、前記第1部材及び前記第2部材が冷間圧延軟鋼板からなる磁気式エンコーダ。
【請求項3】
請求項1記載のエンコーダにおいて、前記第1部材及び前記第2部材が熱間圧延軟鋼板からなる磁気式エンコーダ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載のエンコーダにおいて、前記第1部材及び前記第2部材の厚みが0.5~2mmである磁気式エンコーダ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のエンコーダにおいて、前記回転体と、前記挿通孔を形成する前記第1壁部との間のクリアランスが3mm以内である磁気式エンコーダ。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のエンコーダにおいて、前記第1部材と前記第2部材との間に、前記永久磁石及び前記磁気センサを収容するケーシング(72)が設けられた磁気式エンコーダ。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載のエンコーダにおいて、前記第1部材又は前記第2部材の一方が、一端が開口端である筒状部材からなり、且つ残余の一方が、前記開口端を閉塞する閉塞部材である磁気式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の回転角を検出するための磁気式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、磁気式エンコーダは、永久磁石と磁気センサを有し、回転体の位置や回転角を検出する装置として広汎に用いられている。特開2019-15536号公報に記載されるように、永久磁石は、モータの回転軸に固定された回転体が回転することに伴って回転する。この回転により、該永久磁石よる磁界が変化する。磁気センサは、この磁界変化を検出する。その結果として、回転軸の回転角(ないし回転量)が求められる。
【0003】
このような構成において、永久磁石や磁気センサが外部磁界の影響を受けると、検出値が実際の回転角と異なる値となる。すなわち、回転角の検出結果の精度が低下する。特開2015-1511号公報には、これを回避するべく、磁気式エンコーダを覆うエンコーダカバーの内部に磁気シールド部材を設け、該部材によって外部磁界を遮断することが提案されている。なお、特開2015-1511号公報では、磁気シールド部材の素材として冷間圧延鋼板やパーマロイが例示されている。
【発明の概要】
【0004】
近時、磁気式エンコーダによる回転体の回転角の検出精度を、外部からの磁界が影響する環境下において、一層向上させることが要請されている。
【0005】
本発明の主たる目的は、外部からの磁界の影響を低減し得る磁気式エンコーダを提供することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、検出精度が一層向上した磁気式エンコーダを提供することにある。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、回転駆動部を構成する回転体が回転することに伴って回転する永久磁石と、前記永久磁石の磁界変化を検出する磁気センサとを有する磁気式エンコーダにおいて、
前記回転体を通す挿通孔が形成された第1壁部を含む第1部材と、
前記第1壁部との間に前記永久磁石及び前記磁気センサを挟む第2壁部を含む第2部材と、
を備え、
前記第1部材及び前記第2部材が、最大で3.0重量%の炭素を含有する軟鋼からなる磁気式エンコーダが提供される。
【0008】
本発明によれば、永久磁石及び磁気センサを間に挟む第1壁部、第2壁部をそれぞれ含む第1部材、第2部材が、最大で3.0重量%の炭素を含有する軟鋼からなる。これら第1部材及び第2部材が磁気遮断部として機能するので、例えば、磁気式エンコーダが設けられるモータに発生した磁界や、その他の機器に発生した外部磁界が第1部材及び第2部材によって遮断される。
【0009】
すなわち、この場合、永久磁石及び磁気センサに外部磁界の影響が及ぶことが抑制される。従って、磁気センサによって検出される磁界の大部分が、永久磁石による磁界となる。
【0010】
このように、上記の構成によれば、外部磁界等を遮断した状況下で、永久磁石による磁界変化を磁気センサにて検出することができる。従って、永久磁石の磁界変化に基づく回転体の回転角を精度よく求めることができる。すなわち、回転体の回転角に関する検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る磁気式エンコーダが設けられたモータ(回転駆動部)の概略全体正面図である。
【
図3】
図1の磁気式エンコーダを構成する筒状部材の概略展開図である。
【
図4】
図3から側板部を屈曲させて得られる筒状部材の概略斜視図である。
【
図5】内部ケーシングを省略した磁気式エンコーダが設けられたモータの概略縦断面図である。
【
図6】別の実施の形態に係る磁気式エンコーダが設けられたモータの概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る磁気式エンコーダにつき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下における「下」及び「上」は、
図1及び
図2における下方、上方に対応するが、これは説明を簡略化して理解を容易にするための便宜的なものであり、磁気式エンコーダを使用する際の姿勢を特定するものではない。また、以下では、磁気式エンコーダを単に「エンコーダ」と表記することもある。
【0013】
図1及び
図2は、それぞれ、本実施の形態に係るエンコーダ10が設けられたモータ12(回転駆動部)の概略全体正面図、
図1中のII-II線矢視断面図である。エンコーダ10は、モータ12の回転軸14(回転体)の回転角を検出する機能を営む。
【0014】
先ず、モータ12につき概略説明する。モータ12は、ボトムカバー16とトップカバー18に挟まれるステータ20と、該ステータ20の中空内部に収容されたロータ22(
図2参照)とを有する。周知の通り、ステータ20には通電に伴って磁気を帯びる図示しない電磁コイルが設けられる。その一方で、ロータ22には図示しない永久磁石が設けられる。なお、ステータ20は、4面の外壁によって略四角柱形状をなす。また、該ステータ20の中空内部は、長手方向に直交する方向の断面が略真円となるように、円柱体が刳り抜かれたような形状をなす。
【0015】
ボトムカバー16及びトップカバー18には、それぞれ、大径な第1収容凹部24、第2収容凹部26と、該第1収容凹部24、該第2収容凹部26に連なる第1貫通孔28、第2貫通孔30とが形成される。第1貫通孔28、第2貫通孔30は第1収容凹部24、第2収容凹部26に比して小径に設定され、さらに、第2貫通孔30は第1貫通孔28に比して大径に設定されている。そして、第1収容凹部24、第2収容凹部26には、第1ベアリング32、第2ベアリング34が個別に収容される。
【0016】
ロータ22には、回転体としての回転軸14が設けられる。回転軸14の下端部及び上端部は、それぞれ、ロータ22の下端面及び上端面から露呈するとともに、ボトムカバー16、トップカバー18に向かうように延在する。この中の下端部は、第1ベアリング32及び第1貫通孔28に通されてボトムカバー16から露呈する。なお、回転軸14は中実であってもよいし、中空であってもよい。
【0017】
一方、上端部は、第2ベアリング34及び第2貫通孔30を貫通し、その端部はトップカバー18から外部に露呈する。上端部の最先端は、後述する内室40に進入している。
【0018】
次に、本実施の形態に係るエンコーダ10につき説明する。該エンコーダ10は、回転軸14の最先端に設けられたホルダ62と、該ホルダ62の上端面に形成された保持用凹部66に嵌合された検出用の永久磁石42と、センサ基板70に保持されて該永久磁石42の一部に対向するように配設された磁気センサ44と、これら永久磁石42及び磁気センサ44を収容する内室40を画成するハウジング46とを備える。
【0019】
ハウジング46は、略正方形をなす壁部(第1壁部)を有する第1部材としての閉塞部材48と、短尺な四角筒形状に近似され且つ隅角部にスリット50が形成された筒状部材52(第2部材)とが組み合わされることで構成される。すなわち、この場合、筒状部材52の下端は開口端である。この開口端が閉塞部材48で閉塞されることにより、筒状部材52の内部に内室40が形成される。
【0020】
閉塞部材48には、その厚み方向に沿って挿通孔54が形成される。回転軸14の最先端は、該挿通孔54に通されて内室40に進入する。回転軸14と挿通孔54を形成する壁部との間のクリアランスCLは、3mm以内であることが好ましい。クリアランスCLが3mmを超える場合、モータ12で発生した磁界がクリアランスCLを通過して内室40に進入する懸念があるからである。換言すれば、この場合、内室40の外部の磁気を閉塞部材48によって遮断することが容易ではない。
【0021】
筒状部材52の概略展開図である
図3に示すように、筒状部材52は、天板部56(第2壁部)と、該天板部56に対して個別に連なる5個の側板部58とを有する。
図2に示すように、永久磁石42及び磁気センサ44は、閉塞部材48(第1壁部)と、天板部56(第2壁部)との間に挟まれるように配設される。
【0022】
筒状部材52を得るには、後述するような軟鋼からなる板材に対して打ち抜き加工を行うことで、
図3に示す形状の中間成形体を得、次に、側板部58を、天板部56に対して略直交するように略90°折曲させる。これにより、
図4に示すように、側板部58同士の間にスリット50が形成された筒状部材52が得られる。
【0023】
折曲された短尺な2個の側板部58同士の間には、窓部60が形成される。この窓部60には、磁気センサ44と演算部を電気的に接続するための信号線が通される。なお、演算部及び信号線は図示していない。
【0024】
ここで、閉塞部材48及び筒状部材52は、最大で3.0重量%の炭素を含有する軟鋼からなる。軟鋼は成形加工を施すことが容易であり、このため、筒状部材52等を容易に得ることができるからである。この種の軟鋼の好適な例としては、冷間圧延軟鋼板や熱間圧延軟鋼板が挙げられる。冷間圧延軟鋼板としてはSPCC、SPCD、SPCE、SPCF、SPCGが例示され、熱間圧延軟鋼板としてはSPHC、SPHD、SPHE、SPHFが例示される。なお、SPCC、SPCD、SPCE、SPCF、SPCGはJIS G 3141に規定される材料記号であり、SPHC、SPHD、SPHE、SPHFはJIS G 3131に規定される材料記号である。JISが日本工業規格を表すことは勿論である。
【0025】
とりわけ、SPCCが好ましい。何故なら、SPCCは安価であり、且つ入手が容易であるからである。すなわち、SPCCを採用する場合、ハウジング46を低コストで作製することができる。
【0026】
一般的に、磁気遮断部を構成する素材としては、透磁率が大きく磁化され易いものが選定される。これに対し、上記した軟鋼の比透磁率はいずれも5000未満であり、パーマロイや純鉄、ケイ素鉄等の磁性材料に比して著しく小さい。すなわち、軟鋼は、磁束を吸収する能力に乏しく、磁化され難い。しかしながら、本実施の形態では、軟鋼からなるハウジング46が、外部の磁気を遮断して該磁気が内室40に到達することを妨げる磁気遮断部として機能する。
【0027】
筒状部材52及び閉塞部材48、換言すれば、ハウジング46は、その保磁力が3Oe以下であることが好ましい。すなわち、ハウジング46は、外部の磁界が除去された際に磁気(磁力)を容易に喪失する軟磁性体である。筒状部材52及び閉塞部材48の保磁力を3Oe以下とするには、SPCCのような軟鋼に対して磁気焼鈍を施せばよい。素材(軟鋼板)から成形加工等を経て得られたハウジング46の金属組織中では、金属粒が粗大化したり、粒径の不均一化が生じたりしている。しかしながら、磁気焼鈍を施すことにより、金属粒が微細化し且つ粒径が略均等に揃う。これにより、加工等に起因する残留歪が除去されるとともに、保磁力が3Oe以下に低下する。
【0028】
筒状部材52及び閉塞部材48の厚みTは、0.5~2mmに設定することが好ましい。0.5mm未満では、薄肉であることから磁気が筒状部材52や閉塞部材48を通過し易くなる。すなわち、この場合、外部の磁気を遮断することが容易でなくなる。また、2mmを超えると、ハウジング46が厚肉となるために重量が大となる。さらに、筒状部材52及び閉塞部材48の厚みTが0.5~2mmであれば、このような厚肉の筒状部材52や閉塞部材48を磁気が通過することが困難となる。従って、これら筒状部材52及び閉塞部材48がハウジング46外の磁界を十分に遮断することが可能である。
【0029】
内室40に進入した回転軸14の上端部の最先端には、略円板形状をなすホルダ62が設けられる。具体的には、ホルダ62の下端面に円環状凸部64が突出形成されるとともに、該円環状凸部64の円形状の中空内部に回転軸14の上端部が嵌合される。その一方で、ホルダ62の上端面には有底の保持用凹部66が形成される。検出用の永久磁石42は、この保持用凹部66に嵌合されることでホルダ62に保持される。
【0030】
内室40にはセンサ基板70が収容されるとともに、該センサ基板70に前記磁気センサ44が設けられる。前記したように、磁気センサ44は永久磁石42の一部に対向している。磁気センサ44は、前記演算部に対し、前記信号線を介して電気的に接続されており、該信号線を介して前記演算部に検出信号を送る。
【0031】
内室40には、角筒形状をなし且つ樹脂からなる内部ケーシング72が収容される。ホルダ62、永久磁石42、センサ基板70及び磁気センサ44は、内部ケーシング72の中空内部に収容されている。換言すれば、ホルダ62、永久磁石42、センサ基板70及び磁気センサ44は、内部ケーシング72に囲繞されている。内部ケーシング72には、窓部60に連なる図示しない連通孔が形成されており、磁気センサ44と演算部を接続する前記信号線は、連通孔及び窓部60から内室40の外部に引き出される。
【0032】
エンコーダ10の製造過程につき若干説明する。筒状部材52を作製するに際しては、上記したように、軟鋼(例えば、SPCC)からなる板材を用いて打ち抜き加工を行い、
図3に示す形状の中間成形体を得る。次に、側板部58を、天板部56に対して略直交するように略90°折曲させて筒状部材52とする。素材がSPCCである場合、打ち抜き加工や折曲を行うことが特に容易である。閉塞部材48も同様に、軟鋼からなる板材を素材として用いる打ち抜き加工によって得られる。
【0033】
さらに、これら筒状部材52及び閉塞部材48に対して磁気焼鈍を施す。磁気焼鈍の処理条件は、筒状部材52及び閉塞部材48の保磁力が3Oe以下となるように設定することが好ましい。なお、代表的な炭素鋼であるS45Cでは、保磁力は約41Oe程度と比較的大きい。また、炭素量が0.5重量%である低炭素鋼に焼鈍を施しても、保磁力は約8Oeである。このことから、ハウジング46の保磁力が、一般的な炭素鋼に比して小さいことが分かる。
【0034】
次に、磁気焼鈍が施された筒状部材52内に内部ケーシング72を収容し、さらに、該内部ケーシング72の中空内部にセンサ基板70及び磁気センサ44を収容する。その一方で、トップカバー18の上端面に閉塞部材48を配設し、挿通孔54に回転軸14の上端部の最先端を通した後、永久磁石42を保持したホルダ62を該最先端に取り付ける。勿論、この際には、ホルダ62の下端面に設けられた円環状凸部64の中空内部に、回転軸14の上端部を嵌合する。
【0035】
次に、筒状部材52を閉塞部材48に被せ、ねじ等の図示しない連結部材を介して筒状部材52と閉塞部材48を接合する。これにより、エンコーダ10が構成される。
【0036】
本実施の形態に係るエンコーダ10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、その作用効果について説明する。
【0037】
エンコーダ10は、回転軸14の回転角を検出する。すなわち、ステータ20を構成する電磁コイルに通電がなされると、これに伴ってステータ20に交番磁界が生じる。この交番磁界と、ロータ22中の永久磁石によって生じた磁界との間で反発と引き合いが起こることにより、ロータ22と回転軸14が一体的に回転する。なお、回転軸14とボトムカバー16、トップカバー18との間には第1ベアリング32、第2ベアリング34が介装されているので、ボトムカバー16やトップカバー18、ステータ20が追従回転することはない。
【0038】
回転軸14が回転することに伴い、その上端部の最先端に設けられたホルダ62が回転し、同時に、該ホルダ62に保持された検出用の永久磁石42が回転する。この永久磁石42は、周回方向に沿って複数個のN極とS極が交互に現れるように配置されている。従って、永久磁石42が回転すると、磁気センサ44に対し、N極とS極が交互に対向する。このため、磁気センサ44の近傍では、永久磁石42による磁界が変化する。この磁界変化に伴い、磁気センサ44から前記信号線を介して前記演算部に送信される検出信号が変化する。
【0039】
演算部は、検出信号の変化に基づいて磁界が変化したことを認識し、変化の回数や度合いから、回転軸14の回転角を演算によって求める。これにより、回転軸14の回転角が検出される。
【0040】
ここで、モータ12では、上記したように電磁コイル及び永久磁石によって磁界が生じる。しかしながら、この磁界は、閉塞部材48によって遮られる。すなわち、閉塞部材48により、モータ12に発生した磁界が内室40内の永久磁石42や磁気センサ44に影響を及ぼすことが有効に防止される。
【0041】
また、外部磁界を発生させる機器(別のモータや電磁コイル等)がハウジング46の近傍に配置された状況下でエンコーダ10を用いることが想定されるが、この場合には、筒状部材52が外部磁界を遮る。換言すれば、筒状部材52により、ハウジング46外で発生した外部磁界が内室40内の永久磁石42や磁気センサ44に影響を及ぼすことが有効に防止される。
【0042】
また、筒状部材52及び閉塞部材48の厚みTを0.5~2mmに設定することによっても、モータ12に発生した磁界や外部磁界が内室40に対して有効に遮断される。さらに、挿通孔54を形成する壁部と、回転軸14との間のクリアランスCLを3mm以下に設定すると、モータ12に発生した磁界が挿通孔54を介して内室40に進入することが防止される。
【0043】
以上のことが相俟って、永久磁石42や磁気センサ44が、モータ12に発生した磁界や外部磁界の影響を受けることが十分に抑制される。従って、磁気センサ44による検出信号の大部分が、検出用の永久磁石42によって生じた磁界に基づくものとなる。演算部が、検出信号に基づいて回転軸14の回転角を検出することから、回転軸14の回転角を精度よく求めることができる。すなわち、回転角の検出精度が良好となる。
【0044】
典型的には、磁気焼鈍を施していないハウジングを用いて構成されたエンコーダにおいて求められた角度誤差と、磁気焼鈍を施して保磁力が3Oe以下となったハウジング46を用いて構成されたエンコーダ10において求められた角度誤差とを対比すると、後者は前者の略1/2である。このことから、ハウジング46が磁気遮断部として有効に機能していることが明らかである。なお、角度誤差は、検出回転角から実回転角を差し引いた値として算出される。
【0045】
このように、永久磁石42及び磁気センサ44を、磁気焼鈍を施したハウジング46の内室40に収容した本実施の形態によれば、該ハウジング46が磁気遮断部として機能するので、回転軸14の回転角に関する検出精度を向上させることができる。
【0046】
また、内室40内に内部ケーシング72を配置するようにしているので、該内部ケーシング72によって永久磁石42及び磁気センサ44が埃等の異物から保護される。このため、異物が第2ベアリング34に噛み込むこと等が回避される。
【0047】
回転角の検出が終了した後、電磁コイルへの通電が停止される。その結果、ロータ22及び回転軸14の回転が停止する。これに伴い、モータ12による磁界が消失する。閉塞部材48が、その保磁力が3Oe以下と小さい場合、モータ12を構成するステータ20による磁界が消失すると、その分の磁気を速やかに喪失する。このため、閉塞部材48に大きな磁気が残留することは困難である。従って、次回の回転角の検出時に、閉塞部材48に残留した磁気の影響が永久磁石42や磁気センサ44に及ぶことを可及的に抑制することができる。
【0048】
筒状部材52も同様に、保磁力が3Oe以下と小さい場合には、外部磁界が消失したときには速やかに磁気を喪失する。すなわち、この場合、筒状部材52に磁気が残留することは困難である。従って、次回の回転角の検出時に、永久磁石42や磁気センサ44が、筒状部材52に残留した磁気の影響を受けることが回避される。
【0049】
以上のように、ハウジング46の保磁力を小さくすることにより、次回の回転角の検出時に回転角を精度よく求めることができる。
【0050】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
例えば、筒状部材52を深絞り成形によって作製するようにしてもよい。この場合、筒状部材52を、スリット50が形成されていないものとして得ることも可能である。
【0052】
そして、筒状部材52を第1部材とし、且つ閉塞部材48を第2部材としてもよい。この場合、筒状部材52の開口端を
図1及び
図2の上方に向ければよい。
【0053】
また、樹脂製の内部ケーシング72を設けることは必須ではなく、
図5に示すように、内部ケーシング72を省略してエンコーダ90を構成するようにしてもよい。
【0054】
さらに、この実施の形態では、第2部材として筒状部材52を用いた場合を例示しているが、
図6に示すように、第2部材として、平板形状の第2壁部のみを有する平板部材100を用いてエンコーダ102を構成するようにしてもよい。この場合、樹脂からなり且つ四角筒形状のケーシング104と、該ケーシング104の開口端を閉塞する閉塞部材48によって内室106を形成し、該内室106内に永久磁石42及び磁気センサ44を収容すればよい。
【0055】
この場合、閉塞部材48と平板部材100が磁気遮断部として機能する。すなわち、この実施の形態においても、
図1~
図5に示したエンコーダ10、90と同様の効果が得られる。
【0056】
いずれの実施の形態においても、回転軸14の下端部に対し、ギアやプーリ等の回転部材を介して間接的に、又は、直接、別の回転体(回転部材)を連結するようにしてもよい。この場合、モータ12の回転軸14の回転角を検出することにより、回転体の回転角を間接的に求めることができる。
【符号の説明】
【0057】
10、90、102…磁気式エンコーダ 12…モータ
14…回転軸 20…ステータ
22…ロータ 40、106…内室
42…永久磁石 44…磁気センサ
46…ハウジング 48…閉塞部材
50…スリット 52…筒状部材
54…挿通孔 62…ホルダ
70…センサ基板 72…内部ケーシング
100…平板部材 104…ケーシング
CL…クリアランス