(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】圧電振動デバイス及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20240806BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20240806BHJP
H03H 9/19 20060101ALI20240806BHJP
【FI】
H03H9/02 A
H03H3/02 C
H03H9/19 D
(21)【出願番号】P 2021552111
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2020029024
(87)【国際公開番号】W WO2021075124
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-01-27
(31)【優先権主張番号】P 2019189144
(32)【優先日】2019-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】大西 学
【審査官】志津木 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-205761(JP,A)
【文献】特開2014-030126(JP,A)
【文献】特開平11-136076(JP,A)
【文献】特開平09-098049(JP,A)
【文献】特開2018-032944(JP,A)
【文献】特開2011-082870(JP,A)
【文献】特開2012-195630(JP,A)
【文献】特開2017-212509(JP,A)
【文献】特開2000-103010(JP,A)
【文献】特開2006-339661(JP,A)
【文献】特開2010-187054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H3/007-3/10
H03H9/00-9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1,第2励振電極を含む振動部及び前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子用金属膜を有する圧電振動板と、
前記圧電振動板の両主面にそれぞれ形成された前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材と、
を備え、
前記第1実装端子用金属膜は、前記圧電振動板の前記振動部を挟む両端部の一方の端部に形成され、
前記第2実装端子用金属膜は、前記両端部の他方の端部に形成され、
前記第1,第2封止部材は、樹脂製の第1,第2フィルムであり、
前記第1,第2封止部材の両端部は、前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部にそれぞれ接合され、
前記第1,第2封止部材の前記両端部の一方の端部の外表面を覆うように、前記第1実装端子用金属膜に接続された第1実装端子が形成され、
前記第1,第2封止部材の前記両端部の他方の端部の外表面を覆うように、前記第2実装端子用金属膜に接続された第2実装端子が形成され、
前記圧電振動板は、前記振動部に連結部を介して連結された外枠部を有し、前記外枠部は、該外枠部よりも薄肉の前記振動部の外周を、間隔を空けて取り囲んでおり、
前記第1,第2実装端子用金属膜は、前記外枠部にそれぞれ形成されており、
前記第1,第2封止部材は、前記振動部の前記第1,第2励振電極を封止するように、前記外枠部にそれぞれ接合されており、
前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1実装端子用金属膜に接続されて、前記第1実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第1封止部材が接合される第1封止パターンが形成され、
前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2実装端子用金属膜に接続されて、前記第2実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第2封止部材が接合される第2封止パターンが形成されており、
前記第1封止パターンと前記第2封止パターンそれぞれの延出部の幅は、前記外枠部の幅よりも狭く、これにより、前記延出部の幅方向両側に無電極領域が設けられている、
圧電振動デバイス。
【請求項2】
前記第1実装端子は、前記第1,第2フィルムの前記一方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の一方の端部の外表面の全面を覆うように形成され、前記第2実装端子は、前記第1,第2フィルムの前記他方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部の外表面の全面を覆うように形成されている、
請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項3】
前記圧電振動板は、前記振動部に連結部を介して連結された外枠部を有し、前記外枠部は、該外枠部よりも薄肉の前記振動部の外周を、間隔を空けて取り囲んでおり、
前記第1,第2実装端子用金属膜は、前記外枠部にそれぞれ形成されており、
前記第1,第2フィルムは、前記振動部の前記第1,第2励振電極を封止するように、前記外枠部にそれぞれ接合されている、
請求項1に記載の圧電振動デバイス。
【請求項4】
前記第1,第2実装端子用金属膜は、前記外枠部の両主面及び端面に亘ってそれぞれ形成されており、
前記第1,第2フィルムは、前記外枠部の前記両主面に形成されている前記第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接合されている、
請求項3に記載の圧電振動デバイス。
【請求項5】
前記第1,第2実装端子用金属膜は、前記外枠部の両主面及び端面に亘ってそれぞれ形成されており、
前記第1,第2フィルムは、前記外枠部の前記両主面に形成されている前記第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接合されている、
請求項4に記載の圧電振動デバイス。
【請求項6】
前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1実装端子用金属膜に接続されて、前記第1実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り
囲み、かつ、前記第1フィルムが接合される第1封止パターンが形成され、前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2実装端子用金属膜に接続されて、前記第2実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第2フィルムが接合される第2封止パターンが形成されている、
請求項3に記載の圧電振動デバイス。
【請求項7】
前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1実装端子用金属膜に接続されて、前記第1実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第1フィルムが接合される第1封止パターンが形成され、前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2実装端子用金属膜に接続されて、前記第2実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第2フィルムが接合される第2封止パターンが形成されている、
請求項4に記載の圧電振動デバイス。
【請求項8】
前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1実装端子用金属膜に接続されて、前記第1実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第1フィルムが接合される第1封止パターンが形成され、前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2実装端子用金属膜に接続されて、前記第2実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第2フィルムが接合される第2封止パターンが形成されている、
請求項4に記載の圧電振動デバイス。
【請求項9】
前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1実装端子用金属膜に接続されて、前記第1実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第1フィルムが接合される第1封止パターンが形成され、前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2実装端子用金属膜に接続されて、前記第2実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第2フィルムが接合される第2封止パターンが形成されている、
請求項8に記載の圧電振動デバイス。
【請求項10】
前記第1,第2実装端子は、導電性ペーストを熱硬化させて形成されている、
請求項1ないし9のいずれか一項に記載の圧電振動デバイス。
【請求項11】
前記第1,第2フィルムが、耐熱樹脂製のフィルムである、
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の圧電振動デバイス。
【請求項12】
前記第1,第2フィルムは、少なくとも片面に熱可塑性の接着層を備えている、
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の圧電振動デバイス。
【請求項13】
前記圧電振動板が、水晶振動板である、
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の圧電振動デバイス。
【請求項14】
第1,第2励振電極を含む振動部及び前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子用金属膜を有する圧電振動板を製造するために圧電ウェハを予め準備し、
前記圧電ウェハに、圧電基板の外形を複数形成する外形形成工程と、
前記外形形成工程で形成された複数の前記圧電基板の両主面に前記第1,第2励振電極をそれぞれ形成すると共に、前記圧電基板に前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続される前記第1,第2実装端子用金属膜を形成して圧電振動板とする圧電振動板形成工程と、
前記圧電振動板形成工程で形成された複数の前記圧電振動板の両主面の前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面に第1,第2封止部材をそれぞれ接合する工程であって、前記第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材を樹脂製のフィルムとする接合工程と、
前記接合工程で前記第1,第2封止部材が接合された複数の前記圧電振動板を、一方向に沿って分割する分割工程と、
前記分割工程で分割された複数の圧電振動板の両端部を導電性ペーストに浸漬して、前記第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接続された第1,第2実装端子をそれぞれ形成する実装端子形成工程と、
前記実装端子形成工程で前記第1,第2実装端子が形成された各圧電振動板を個片化する個片化工程とを含み、
前記圧電振動板形成工程では、前記第1実装端子用金属膜を、前記圧電基板の前記振動部を挟む両端部の一方の端部に形成し、前記第2実装端子用金属膜を、前記圧電基板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部に形成し、
前記接合工程では、前記フィルムの両端部を、前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部に接合し、
前記実装端子形成工程では、前記第1実装端子を、前記フィルムの前記両端部の一方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の一方の端部の外表面を覆うように形成し、前記第2実装端子を、前記フィルムの前記両端部の他方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部の外表面を覆うように形成する、
圧電振動デバイスの製造方法。
【請求項15】
前記接合工程では、前記第1,第2封止部材を前記樹脂製の第1,第2フィルムとし、前記第1,第2フィルムの両端部を、前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部に接合し、
前記実装端子形成工程では、前記第1実装端子を、前記第1,第2フィルムの前記両端部の一方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の一方の端部の外表面を覆うように形成し、前記第2実装端子を、前記第1,第2フィルムの前記両端部の他方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部の外表面を覆うように形成する、
請求項14に記載の圧電振動デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動子等の圧電振動デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイス、例えば、圧電振動子として、表面実装型の水晶振動子が広く用いられている。この表面実装型の水晶振動子は、例えば、特許文献1に記載されているように、セラミックからなる上面が開口した箱形のベース内の保持電極に、水晶振動片の両面の励振電極から導出された電極を、導電性接着剤によって固着することによって、水晶振動片をベース内に収納して搭載する。このようにして水晶振動片を搭載したベースの開口に、蓋体を接合して気密に封止するようにしている。また、ベースの外底面には、当該水晶振動子を表面実装するための実装端子が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような圧電振動子の多くは、セラミック製のベースに、金属製あるいはガラス製の蓋体が接合されてパッケージが構成されているので、パッケージが高価となり、圧電振動子が高価なものとなっている。
【0005】
また、圧電振動子では、サイズを大きくすることなく、振動特性を向上させることが望まれる。
【0006】
本発明は、上記のような点に鑑みて為されたものであって、安価であって、かつ、サイズを大きくすることなく、振動特性を向上させた圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記目的を達成するために、次のように構成している。
【0008】
(1)本発明に係る圧電振動デバイスは、第1,第2励振電極を含む振動部及び前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子用金属膜を有する圧電振動板と、前記圧電振動板の両主面にそれぞれ形成された前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材とを備え、前記第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材は、樹脂製のフィルムであり、前記第1実装端子用金属膜は、前記圧電振動板の前記振動部を挟む両端部の一方の端部に形成され、前記第2実装端子用金属膜は、前記両端部の他方の端部に形成され、前記フィルムの両端部は、前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部に接合され、前記フィルムの前記両端部の一方の端部の外表面を覆うように、前記第1実装端子用金属膜に接続された第1実装端子が形成され、前記フィルムの前記両端部の他方の端部の外表面を覆うように、前記第2実装端子用金属膜に接続された第2実装端子が形成されている。
【0009】
本発明に係る圧電振動デバイスによれば、振動部の第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子用金属膜は、圧電振動板の振動部を挟む両端部にそれぞれ形成されると共に、この第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接続された第1,第2実装端子は、圧電振動板に接合される第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材を構成する樹脂製のフィルムの外表面を覆うように形成されるので、振動部を大きくするために、該振動部を挟む第1,第2実装端子用金属膜のサイズを小さくしても、圧電振動板に接合されるフィルムの外表面に形成される第1,第2実装端子のサイズを、実装に必要なサイズにすることができる。
【0010】
これによって、圧電振動デバイスのサイズを大きくすることなく、振動部を大きくして振動特性を向上させることができると共に、当該圧電振動デバイスの実装に必要な第1,第2実装端子の接合領域を確保することができる。
【0011】
また、当該圧電振動デバイスは、圧電振動板に接合される樹脂製のフィルムの外表面に、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口した箱形のベース内に圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0012】
更に、圧電振動板の両主面の少なくとも一方の主面に、樹脂製のフィルムが接合されて第1,第2励振電極の少なくとも一方の励振電極を封止するので、金属製あるいはセラミック製やガラス製の蓋体で封止する構成に比べて、コストを低減することができる。
【0013】
(2)本発明の好ましい実施態様では、前記第1,第2封止部材は、前記樹脂製の第1,第2フィルムであり、前記第1,第2フィルムの両端部は、前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部にそれぞれ接合され、前記第1,第2フィルムの前記両端部の一方の端部の外表面を覆うように、前記第1実装端子用金属膜に接続された第1実装端子が形成され、前記第1,第2フィルムの前記両端部の他方の端部の外表面を覆うように、前記第2実装端子用金属膜に接続された第2実装端子が形成されている。
【0014】
この実施態様によれば、圧電振動板の両主面にそれぞれ接合される第1,第2フィルムの両端部の一方の端部の外表面を覆うように第1実装端子が形成され、第1,第2フィルムの両端部の他方の端部の外表面を覆うように第2実装端子が形成されている、すなわち、圧電振動板の両主面のいずれの主面側のフィルムにもその両端部に、第1,第2実装端子がそれぞれ形成されているので、当該圧電振動デバイスを、回路基板等に実装する場合に、両主面のいずれの主面でも実装することができる。
【0015】
また、圧電振動板の両主面に、樹脂製の第1,第2フィルムをそれぞれ接合して第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように封止するので、封止用の金属製あるいはセラミック製やガラス製の蓋体が不要となり、コストを一層低減することができる。
【0016】
(3)本発明の一実施態様では、前記第1実装端子は、前記第1,第2フィルムの前記一方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の一方の端部の外表面の全面を覆うように形成され、前記第2実装端子は、前記第1,第2フィルムの前記他方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部の外表面の全面を覆うように形成されている。
【0017】
この実施態様によれば、第1,第2実装端子は、第1,第2フィルム及び圧電振動板の各端部の外表面の全面を覆うように形成されるので、例えば、第1,第2フィルムが接合された圧電振動板の各端部を、導電性ペーストに浸漬させて熱硬化させることによって、第1,第2実装端子を、第1,第2フィルムが接合された圧電振動板の各端部の外表面の全面を覆うように形成することができる。これによって、例えば、スパッタリングや蒸着によって第1,第2実装端子を形成するのに比べて、製造コストを低減することができる。
【0018】
(4)本発明の他の実施態様では、前記圧電振動板は、前記振動部に連結部を介して連結された外枠部を有し、前記外枠部は、該外枠部よりも薄肉の前記振動部の外周を、間隔を空けて取り囲んでおり、前記第1,第2実装端子用金属膜は、前記外枠部にそれぞれ形成されており、前記第1,第2フィルムは、前記振動部の前記第1,第2励振電極を封止するように、前記外枠部にそれぞれ接合されている。
【0019】
この実施態様によれば、振動部の外周を取り囲む外枠部に、第1,第2フィルムの周端部をそれぞれ接合することによって、外枠部より薄肉の振動部に第1,第2フィルムが接触することなく、振動部を封止することができる。
【0020】
(5)本発明の一実施態様では、前記第1,第2実装端子用金属膜は、前記外枠部の両主面及び端面に亘ってそれぞれ形成されており、前記第1,第2フィルムは、前記外枠部の前記両主面に形成されている前記第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接合されている。
【0021】
この実施態様によれば、第1,第2実装端子用金属膜は、第1,第2フィルムがそれぞれ接合される圧電振動板の外枠部の両主面だけでなく、外枠部の端面にも形成されているので、この端面の第1,第2実装端子用金属膜を、第1,第2実装端子とそれぞれ電気的に接続することができる。また、第1,第2フィルムは、外枠部の両主面に形成されている第1,第2実装端子用金属膜に接合されるので、圧電振動板を構成する圧電基板自体である外枠部に第1,第2フィルムを接合するのに比べて、強固に接合することができる。
【0022】
(6)本発明の他の実施態様では、前記外枠部の両主面の一方の主面には、前記第1実装端子用金属膜に接続されて、前記第1実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第1フィルムが接合される第1封止パターンが形成され、前記外枠部の前記両主面の他方の主面には、前記第2実装端子用金属膜に接続されて、前記第2実装端子用金属膜と共に前記振動部を取り囲み、かつ、前記第2フィルムが接合される第2封止パターンが形成されている。
【0023】
この実施態様によれば、第1,第2フィルムが接合される外枠部の両主面の第1,第2封止パターンは、第1,第2実装端子用金属膜と共に、振動部をそれぞれ取り囲むように形成されているので、第1,第2フィルムの周端部を、振動部を取り囲むように形成されている第1,第2封止パターン及び第1,第2実装端子用金属膜に強固に接合して、振動部を封止することができる。
【0024】
(7)本発明の更に他の実施態様では、前記第1,第2実装端子は、導電性ペーストを熱硬化させて形成されている。
【0025】
この実施態様によると、第1,第2実装端子は、封止部材であるフィルムが接合された圧電振動板の両端部の各端部を、導電性ペーストにそれぞれ浸漬して熱硬化させて形成するので、例えば、スパッタリングや蒸着によって形成するのに比べて、製造コストを低減することができる。
【0026】
(8)本発明の更に他の実施態様では、前記フィルム又は前記第1,第2フィルムが、耐熱樹脂製のフィルムである。
【0027】
この実施態様によれば、圧電振動板の励振電極を覆うように封止するフィルムは、耐熱樹脂製のフィルムであるので、当該圧電振動デバイスを実装するための半田リフロー処理の際にフィルムが変形等することがない。
【0028】
(9)本発明の一実施態様では、前記フィルム又は前記第1,第2フィルムは、少なくとも片面に熱可塑性の接着層を備えている。
【0029】
この実施態様によれば、フィルムの熱可塑性の接着層を備える面を、圧電振動板に重ねるようにして加熱圧着して、フィルムを圧電振動板に接合することができる。
【0030】
(10)本発明の他の実施態様では、前記圧電振動板が、水晶振動板である。
【0031】
この実施態様によれば、圧電振動板として水晶振動板を用いるので、周波数温度特性の良好な圧電振動デバイスとなる。
【0032】
(11)本発明に係る圧電振動デバイスの製造方法は、第1,第2励振電極を含む振動部及び前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子用金属膜を有する圧電振動板を製造するために圧電ウェハを予め準備し、前記圧電ウェハに、圧電基板の外形を複数形成する外形形成工程と、前記外形形成工程で形成された複数の前記圧電基板の両主面に前記第1,第2励振電極をそれぞれ形成すると共に、前記圧電基板に前記第1,第2励振電極にそれぞれ接続される前記第1,第2実装端子用金属膜を形成して圧電振動板とする圧電振動板形成工程と、前記圧電振動板形成工程で形成された複数の前記圧電振動板の両主面の前記第1,第2励振電極をそれぞれ覆うように、前記圧電振動板の前記両主面に第1,第2封止部材をそれぞれ接合する工程であって、前記第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材を樹脂製のフィルムとする接合工程と、前記接合工程で前記第1,第2封止部材が接合された複数の前記圧電振動板を、一方向に沿って分割する分割工程と、前記分割工程で分割された複数の圧電振動板の両端部を導電性ペーストに浸漬して、前記第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接続された第1,第2実装端子をそれぞれ形成する実装端子形成工程と、前記実装端子形成工程で前記第1,第2実装端子が形成された各圧電振動板を個片化する個片化工程とを含み、前記圧電振動板形成工程では、前記第1実装端子用金属膜を、前記圧電基板の前記振動部を挟む両端部の一方の端部に形成し、前記第2実装端子用金属膜を、前記圧電基板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部に形成し、前記接合工程では、前記フィルムの両端部を、前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部に接合し、前記実装端子形成工程では、前記第1実装端子を、前記フィルムの前記両端部の一方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の一方の端部の外表面を覆うように形成し、前記第2実装端子を、前記フィルムの前記両端部の他方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部の外表面を覆うように形成する。
【0033】
本発明に係る圧電振動デバイスの製造方法によれば、圧電振動板形成工程では、圧電基板の振動部を挟む両端部に、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子用金属膜をそれぞれ形成し、実装端子形成工程では、第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を、接合工程で圧電振動板の両主面の少なくとも一方の主面に接合されたフィルムの両端部の外表面及び圧電振動板の両端部の外表面を覆うように形成するので、振動部を大きくするために、該振動部を挟む第1,第2実装端子用金属膜のサイズを小さくしても、圧電振動板に接合されるフィルムの外表面に形成される第1,第2実装端子のサイズを、実装に必要なサイズにすることができる。
【0034】
これによって、圧電振動デバイスのサイズを大きくすることなく、振動部を大きくして振動特性を向上させることができると共に、当該圧電振動デバイスの実装に必要な第1,第2実装端子の接合領域を確保することができる。
【0035】
また、当該圧電振動デバイスは、圧電振動板に接合される樹脂製のフィルムの外表面に、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口した箱形のベース内に圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0036】
更に、圧電振動板の両主面の少なくとも一方の主面に、樹脂製のフィルムが接合されて第1,第2励振電極の少なくとも一方の励振電極を封止するので、金属製あるいはセラミック製やガラス製の蓋体で封止する構成に比べて、コストを低減することができる。
【0037】
また、分割工程では、個片化工程前のマトリクス状に形成されたウェハ状態の複数の前記圧電振動板を、一方向、例えば、列方向に沿って分割するので、各列の複数の圧電振動子に分離して、列単位で取扱うことが可能となる。これによって、実装端子形成工程では、フィルムが接合された各列の複数の圧電振動板の両端部の各端部を導電性ペーストに浸漬して、前記第1,第2実装端子用金属膜に接続された第1,第2実装端子をそれぞれ形成することができるので、例えば、スパッタリングや蒸着によって実装端子を形成するのに比べて、製造コストを低減することができる。
【0038】
(12)本発明の好ましい実施態様では、前記接合工程では、前記第1,第2封止部材を前記樹脂製の第1,第2フィルムとし、前記第1,第2フィルムの両端部を、前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部に接合し、前記実装端子形成工程では、前記第1実装端子を、前記第1,第2フィルムの前記両端部の一方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の一方の端部の外表面を覆うように形成し、前記第2実装端子を、前記第1,第2フィルムの前記両端部の他方の端部の外表面及び前記圧電振動板の前記振動部を挟む前記両端部の他方の端部の外表面を覆うように形成する。
【0039】
この実施態様によれば、第1,第2実装端子は、圧電振動板の両主面に接合される第1,第2フィルムの両端部の外表面を覆うように形成される、すなわち、表裏両面の第1,第2フィルムの外表面に形成されるので、当該圧電振動デバイスを、回路基板等に実装する場合に、表裏のいずれの面でも実装することができる。
【0040】
また、圧電振動板の両主面に、樹脂製の第1,第2フィルムをそれぞれ接合して第1,第2励振電極をそれぞれ封止するので、封止用の金属製あるいはセラミック製やガラス製の蓋体が不要となり、コストを一層低減することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る圧電振動デバイスによれば、圧電振動板の振動部を挟む両端部にそれぞれ形成されている第1,第2実装端子用金属膜にそれぞれ接続される第1,第2実装端子は、圧電振動板に接合される第1,第2封止部材の少なくとも一方の封止部材を構成する樹脂製のフィルムの外表面を覆うように形成されるので、振動部を大きくするために、該振動部を挟む第1,第2実装端子用金属膜のサイズを小さくしても、圧電振動板に接合されるフィルムの外表面に形成される第1,第2実装端子のサイズを、実装に必要なサイズにすることができる。
【0042】
これによって、圧電振動デバイスのサイズを大きくすることなく、振動部を大きくして振動特性を向上させることができると共に、当該圧電振動デバイスの実装に必要な第1,第2実装端子の接合領域を確保することができる。
【0043】
また、当該圧電振動デバイスは、圧電振動板に接合される樹脂製のフィルムの外表面に、第1,第2励振電極にそれぞれ接続された第1,第2実装端子を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口した箱形のベース内に圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0044】
更に、圧電振動板の両主面の少なくとも一方の主面に、樹脂製のフィルムが接合されて第1,第2励振電極の少なくとも一方の励振電極を封止するので、金属製あるいはセラミック製やガラス製の蓋体で封止する構成に比べて、コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】
図1は本発明の一実施形態に係る水晶振動子の概略斜視図である。
【
図2】
図2は
図1の水晶振動子を構成する水晶振動板の概略斜視図である。
【
図9】
図9は他の水晶振動子を示す概略斜視図である。
【
図15】
図15は本発明の他の実施形態に係る水晶振動子の概略斜視図である。
【
図16】
図16は本発明の更に他の実施形態に係る水晶振動子を構成する水晶振動板の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。この実施形態では、圧電振動デバイスとして水晶振動子に適用して説明する。
【0047】
図1は、本発明の一実施形態に係る水晶振動子の概略斜視図である。
【0048】
この実施形態の水晶振動子1は、ATカットの水晶振動板2と、この水晶振動板2の両主面の全面にそれぞれ接合される第1,第2封止部材としての第1,第2樹脂フィルム3,4とを備えている。この実施形態の第1,第2樹脂フィルム3,4は、透明である。
【0049】
先ず、水晶振動子1を構成する水晶振動板2について説明する。
【0050】
図2は、
図1の水晶振動板2の概略斜視図であり、
図3は、その概略平面図であり、
図4は、
図3のA-A線に沿う概略断面図であり、
図5は、その概略底面図である。
【0051】
この実施形態の水晶振動板2は、矩形の水晶板を水晶の結晶軸であるX軸の周りに35°15´回転させて加工したATカットの水晶板であり、回転した新たな軸をY´軸及びZ´軸という。ATカットの水晶板では、その表裏の両主面が、XZ´平面である。このXZ´平面において、平面視矩形の水晶振動板2の短辺方向がX軸方向となり、水晶振動板2の長辺方向がZ´軸方向となる。
【0052】
この水晶振動板2は、平面視が略矩形の振動部21と、この振動部21の周囲を、貫通部22を挟んで取り囲む外枠部23と、振動部21と外枠部23とを連結する連結部24とを備えている。振動部21、外枠部23及び連結部24は、一体的に形成されている。振動部21及び連結部24は、外枠部23に比べて薄く形成されている。すなわち、振動部21は、外枠部23に比べて薄肉である。
【0053】
振動部21の表裏の両主面には、一対の第1,第2励振電極25,26がそれぞれ形成されている。平面視矩形の水晶振動板2の長辺方向の両端部の外枠部23には、第1,第2励振電極25,26にそれぞれ電気的に接続された第1,第2実装端子用金属膜17,18が、水晶振動板2の短辺方向に沿ってそれぞれ形成されている。この第1,第2実装端子用金属膜17,18は、水晶振動板2の長辺方向の両端部に、振動部21を挟むように形成されている。
【0054】
なお、水晶振動板2の長辺方向の両端部は、水晶振動板2の長辺方向の一端から他端までの長さを4等分したうちの前記一端または前記他端からそれぞれ1/4までの各部分いい、好ましくは、前記一端から前記他端までの長さを6等分したうちの前記一端または前記他端からそれぞれ1/6までの各部分をいう。これら各部分の少なくとも一部に、第1,第2実装端子用金属膜17,18がそれぞれ形成されていればよい。
【0055】
また、水晶振動板2の両主面にそれぞれ接合される第1,第2樹脂フィルム3,4の両端部は、水晶振動板2の長辺方向の前記両端部にそれぞれ接合される。
【0056】
図3に示されるように、水晶振動板2の両主面の一方の主面の第1実装端子用金属膜17は、後述の第1封止パターン201に連設されていると共に、第2実装端子用金属膜18に比べて、幅方向(
図3の左右方向)に広く形成されている。
【0057】
第1実装端子用金属膜17に比べて幅(
図3の左右方向)の狭い第2実装端子用金属膜18は、平面視矩形の水晶振動板2の一方(
図3の右方)の短辺の周縁に沿って延びており、前記短辺に沿って延びる各端部が、対向する各長辺の周縁の一部に沿うように屈曲されて延びている。この第2実装端子用金属膜18は、第1封止パターン201の後述の第2延出部201bを囲むように形成されている。
【0058】
図5に示されるように、水晶振動板2の両主面の他方の主面の第2実装端子用金属膜18は、後述の第2封止パターン202に連設されていると共に、第1実装端子用金属膜17に比べて、幅方向(
図5の左右方向)に広く形成されている。
【0059】
第2実装端子用金属膜18に比べて幅(
図5の左右方向)の狭い第1実装端子用金属膜17は、平面視矩形の水晶振動板2の他方(
図5の左方)の短辺の周縁に沿って延びており、前記短辺に沿って延びる各端部が、対向する各長辺の周縁の一部に沿うように屈曲されて延びている。この第1実装端子用金属膜17は、第2封止パターン202の後述の第2延出部202bを囲むように形成されている。
【0060】
水晶振動板2の第1実装端子用金属膜17及び第2実装端子用金属膜18は、水晶振動板2の両主面、水晶振動板2の対向する長辺側の各端面及び水晶振動板2の対向する短辺側の各端面に亘ってそれぞれ形成されている。
【0061】
この第1,第2実装端子用金属膜17,18が、後述のように、
図1の平面視矩形の水晶振動子1の長辺方向の両端部の外表面に形成される第1,第2実装端子27,28にそれぞれ電気的に接続される。第1,第2実装端子27,28は、当該水晶振動子1を、回路基板等に実装するための端子である。
【0062】
この実施形態では、平面視が略矩形の振動部21を、その一つの角部に設けた一箇所の連結部24によって外枠部23に連結しているので、2箇所以上で連結する構成に比べて、振動部21に作用する応力を低減することができる。
【0063】
また、この実施形態では、連結部24は、外枠部23の内周のうちX軸方向に沿う一辺から突出し、かつ、Z´軸方向に沿って形成されている。水晶振動板2のZ´軸方向の両端部に形成された
図1の第1,第2実装端子27,28は、半田等によって回路基板等に直接接合される。このため、水晶振動子の長辺方向(Z´軸方向)に収縮応力が働き、当該応力が振動部に伝搬することにより水晶振動子の発振周波数が変化し易くなることが考えられる。
【0064】
これに対して、この実施形態では、前記収縮応力に沿う方向に連結部24が形成されているため、当該収縮応力が振動部21に伝搬するのを抑制することができる。その結果、水晶振動子1を回路基板に実装した際の発振周波数の変化を抑制することができる。
【0065】
第1樹脂フィルム3が接合される水晶振動板2の両主面の一方の主面には、
図3に示すように、第1封止パターン201が、第1実装端子用金属膜17と共に、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されている。この第1封止パターン201は、第1実装端子用金属膜17に連なって水晶振動板2の長辺方向(Z´軸方向)に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201a,201aと、水晶振動板2の短辺方向(X軸方向)に沿って延出して各第1延出部201a,201aの延出端を接続する第2延出部201bとを備えている。各第1延出部201a,201aと第2延出部201bとの接続部の外周側は、水晶振動板2の対向する各長辺の一部の周縁に沿ってそれぞれ延びる第2実装端子用金属膜18と一定の間隔を保つように形成されている。第2延出部201bは、第1励振電極25から引出された第1引出し電極203に接続されている。
【0066】
したがって、水晶振動板2の長辺方向の両端部の一方の端部の第1実装端子用金属膜17は、第1封止パターン201及び第1引出し電極203を介して第1励振電極25に電気的に接続されている。
【0067】
第1樹脂フィルム3が接合される水晶振動板2の両主面の一方の主面には、第2実装端子用金属膜18に比べて幅広の第1実装端子用金属膜17が、第1封止パターン201と共に、振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されているので、この矩形環状の領域に、第1樹脂フィルム3を強固に接合することができる。
【0068】
また、第2実装端子用金属膜18が、上記のように第1封止パターン201の第2延出部201bを囲むように、平面視矩形の水晶振動板2の一方(
図3の右方)の短辺の周縁及び各長辺の一部の周縁に沿って形成されているので、第1樹脂フィルム3が、前記短辺の周縁及び各長辺の一部の周縁に強固に接合されることになる。これによって、後述のように、第1樹脂フィルム3が接合された水晶振動板2の前記短辺側の端部を、導電性ペーストに浸漬させた場合に、導電性ペーストが、第2実装端子用金属膜18によって堰き止められて、第1封止パターン201の第2延出部201bまで浸入するのを防止することができる。
【0069】
水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部201bと第2実装端子用金属膜18との間には、電極が形成されていない無電極領域が設けられて、第1封止パターン201と第2実装端子用金属膜18との絶縁が図られている。
【0070】
第2樹脂フィルム4が接合される水晶振動板2の両主面の他方の主面には、
図5に示すように、第2封止パターン202が、第2実装端子用金属膜18と共に、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されている。この第2封止パターン202は、第2実装端子用金属膜18に連なって水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202a,202aと、水晶振動板2の短辺方向に沿って延出して、各第1延出部202a,202aの延出端を接続する第2延出部202bとを備えている。各第1延出部202a,202aと第2延出部202bとの接続部の外周側は、水晶振動板2の対向する各長辺の一部の周縁に沿ってそれぞれ延びる第1実装端子用金属膜17と一定の間隔を保つように形成されている。
【0071】
水晶振動板2の長辺方向の両端部の他方の端部の第2実装端子用金属膜18は、第2励振電極26から引出された第2引出し電極204に接続されている、すなわち、第2実装端子用金属膜18は、第2励振電極26に電気的に接続されている。
【0072】
第2樹脂フィルム4が接合される水晶振動板2の両主面の他方の主面には、第1実装端子用金属膜17に比べて幅広の第2実装端子用金属膜18が、第2封止パターン202と共に、振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されているので、この矩形環状の領域に、第2樹脂フィルム4を強固に接合することができる。
【0073】
また、第1実装端子用金属膜17が、上記のように第2封止パターン202の第2延出部202bを囲むように、平面視矩形の水晶振動板2の他方(
図5の左方)の短辺の周縁及び各長辺の一部の周縁に沿って形成されているので、第2樹脂フィルム4が、前記短辺の周縁及び各長辺の一部の周縁に強固に接合されることになる。これによって、後述のように、第2樹脂フィルム4が接合された水晶振動板2の前記短辺側の端部を、導電性ペーストに浸漬させた場合に、導電性ペーストが、第1実装端子用金属膜17によって堰き止められて、第2封止パターン202の第2延出部202bまで浸入するのを防止することができる。
【0074】
水晶振動板2の短辺方向に沿って延出する第2延出部202bと第1実装端子用金属膜17との間には、電極が形成されていない無電極領域が設けられて、第2封止パターン202と第1実装端子用金属膜17との絶縁が図られている。
【0075】
図3に示されるように、第1封止パターン201の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部201a,201aの幅は、前記長辺方向に沿って延びる外枠部23の幅より狭く、第1延出部201a,201aの幅方向(
図3の上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域が設けられている。
【0076】
この第1延出部201a,201aの両側の無電極領域の内、外側の無電極領域は、第1実装端子用金属膜17まで延びていると共に、第2実装端子用金属膜18と第2延出部201bとの間の無電極領域に連なっている。これによって、第1封止パターン201の第1延出部201a,201a、及び、第2延出部201bの外側は、略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。この無電極領域は、第1実装端子用金属膜17側から水晶振動板2の長辺方向に沿って延びる一方の第1延出部201aに沿って延出し、その延出端から第2延出部201bに沿って延出し、その延出端から他方の第1延出部201aに沿って第1実装端子用金属膜17側へ延出している。
【0077】
第1実装端子用金属膜17の幅方向の内側には、無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部201a,201aの内側の無電極領域に連なっている。第2延出部201bの幅方向の内側には、連結部24の第1引出し電極203を除いて無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部201a,201aの内側の無電極領域に連なっている。これによって、第1実装端子用金属膜17、第1延出部201a,201a、及び、第2延出部201bの幅方向の内側は、連結部24の第1引出し電極203を除いて平面視で矩形環状の無電極領域となっている。
【0078】
図5に示されるように、第2封止パターン202の、水晶振動板2の長辺方向に沿ってそれぞれ延出する第1延出部202a,202aの幅は、前記長辺方向に沿って延びる外枠部23の幅より狭く、第1延出部202a,202aの幅方向(
図5の上下方向)の両側には、電極が形成されていない無電極領域が設けられている。
【0079】
この第1延出部202a,202aの両側の無電極領域の内、外側の無電極領域は、第2実装端子用金属膜18まで延びていると共に、第1実装端子用金属膜17と第2延出部202bとの間の無電極領域に連なっている。これによって、第2封止パターン202の第1延出部202a,202a、及び、第2延出部202bの外側は、略等しい幅の無電極領域によって囲まれている。この無電極領域は、第2実装端子用金属膜18側から水晶振動板2の長辺方向に沿って延びる一方の第1延出部202aに沿って延出し、その延出端から第2延出部202bに沿って延出し、その延出端から他方の第1延出部202aに沿って第1実装端子用金属膜18側へ延出している。
【0080】
第2実装端子用金属膜18の幅方向の内側には、連結部24の第2引出し電極204を除いて無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部202a,202aの内側の無電極領域に連なっている。第2延出部202bの幅方向の内側には、無電極領域が形成されており、この無電極領域は、第1延出部202a,202aの内側の無電極領域に連なっている。これによって、第2実装端子用金属膜18、第1延出部202a,202a、及び、第2延出部202bの幅方向の内側は、連結部24の第2引出し電極204を除いて平面視で矩形環状の無電極領域となっている。
【0081】
上記のように第1,第2封止パターン201,202の第1延出部201a,201a;202a,202aを、外枠部23の幅よりも狭くし、第1延出部201a,201a;202a,202aの幅方向の両側には、無電極領域を設けていると共に、第1,第2実装用金属膜17,18及び第2延出部201b,202bの幅方向の内側には、無電極領域を設けている。前記無電極領域は、スパッタリング時に外枠部23の側面に回り込んだ第1,第2封止パターン201,202を、フォトリソグラフィー技術によりパターニングし、これをメタルエッチングで除去することによって形成される。これにより、第1,第2封止パターン201,202が外枠部23の側面に回り込むことによる短絡を防止することができる。
【0082】
上記のような構成を有する水晶振動板2の両主面に第1,第2樹脂フィルム3,4が接合され、後述のようにして第1,第2実装端子27,28が形成されて上記
図1の水晶振動子1を得る。
【0083】
次に、
図1に示される水晶振動子1について説明する。
【0084】
図6は、
図1の水晶振動子1の概略平面図であり、
図7は、
図6のB-B線に沿う概略断面図であり、
図8は、水晶振動子1の概略底面図である。なお、
図7及び後述の
図13D~
図13Fでは、説明の便宜上、樹脂フィルム等の厚みを誇張して示している。
【0085】
この水晶振動子1は、上記の水晶振動板2と同様の直方体であって、平面視矩形である。この実施形態の水晶振動子1は、平面視で、例えば、1.2mm×1.0mmで、厚みは0.2mmであり、小型化及び低背化を図っている。
【0086】
なお、水晶振動子1のサイズは、上記に限定されるものではなく、これとは異なるサイズであっても適用可能である。
【0087】
上記の水晶振動板2の両主面にそれぞれ接合されて、水晶振動板2の振動部21を覆うように封止する第1,第2樹脂フィルム3,4は、矩形のフィルムである。この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4は、平面視矩形の水晶振動板2と同じサイズであり、水晶振動板2の薄肉の振動部21を覆うように、水晶振動板2の外枠部23に接合される。
【0088】
このように第1,第2樹脂フィルム3,4を、薄肉の振動部21を覆うように、外枠部23に接合することによって、振動部21を封止する内部空間が形成される。
【0089】
この実施形態では、平面視矩形の水晶振動板2の両主面に第1,第2樹脂フィルム3,4をそれぞれ接合した後、第1,第2樹脂フィルム3,4が接合された水晶振動板2の長辺方向の両端部に、第1,第2樹脂フィルム3,4及び水晶振動板2の外表面の略全面を覆うように導電性ペーストを塗布して熱硬化させて第1,第2実装端子27,28を形成する。
【0090】
すなわち、第1実装端子27は、水晶振動板2の長辺方向の両端部の一方の端部に接合されている第1樹脂フィルム3の接合面とは反対側の面(
図7では上面)、及び、薄い第1樹脂フィルム3の端面に形成されると共に、第2樹脂フィルム4の接合面とは反対側の面(
図7では下面)、及び、薄い第2樹脂フィルム4の端面に形成される。
【0091】
更に、第1実装端子27は、水晶振動板2の長辺方向の両端部の一方の端部における、対向する長辺側の各端面、及び、対向する短辺側の一方の端面に形成される。水晶振動板2の長辺方向の両端部の一方の端部には、上記のように、第1実装端子用金属膜17が、水晶振動板2の両主面、及び、対向する長辺側の各端面、及び、対向する短辺側の一方の端面に亘って形成されているので、第1実装端子27は、水晶振動板2の対向する長辺側の各端面、及び、対向する短辺側の一方の端面に形成されている第1実装端子用金属膜17上に形成され、第1実装端子用金属膜17に電気的に接続される。
【0092】
同様に、第2実装端子28は、水晶振動板2の長辺方向の両端部の他方の端部に接合されている第1樹脂フィルム3の接合面とは反対側の面(
図7では上面)、及び、薄い第1樹脂フィルム3の端面に形成されると共に、第2樹脂フィルム4の接合面とは反対側の面(
図7では下面)、及び、薄い第2樹脂フィルム4の端面に形成される。
【0093】
更に、第2実装端子28は、水晶振動板2の長辺方向の両端部の他方の端部における、対向する長辺側の各端面、及び、対向する短辺側の他方の端面に形成される。水晶振動板2の長辺方向の両端部の他方の端部には、上記のように、第2実装端子用金属膜18が、水晶振動板2の両主面、及び、対向する長辺側の各端面、及び、対向する短辺側の他方の端面に亘って形成されているので、第2実装端子28は、水晶振動板2の対向する長辺側の各端面、及び、対向する短辺側の他方の端面に形成されている第2実装端子用金属膜18上に形成され、第2実装端子用金属膜18に電気的に接続される。
【0094】
このように水晶振動板2の第1,第2実装端子用金属膜17,18に電気的に接続されている第1,第2実装端子27,28を、水晶振動板2に接合された第1,第2樹脂フィルム3,4の外表面に形成するので、例えば、水晶振動板に第1,第2実装端子を形成する構成に比べて、振動部のサイズを大きくすることができる。
【0095】
図9は、水晶振動板2´に第1,第2実装端子27´,28´を形成した水晶振動子1´の概略斜視図であり、
図10は、
図9の水晶振動子1´の概略平面図であり、
図11は、
図10のA-A線に沿う概略断面図であり、
図12は、
図9の水晶振動子1´の概略底面図である。
【0096】
【0097】
図9~
図12に示される水晶振動子1´の水晶振動板2´は、本実施形態と同様に、振動部21´と、この振動部21´の周囲を、貫通部22´を挟んで取り囲む外枠部23´と、振動部21´と外枠部23´とを連結する連結部24´とを備えている。振動部21´の表裏の両主面には、一対の第1,第2励振電極25´,26´がそれぞれ形成されている。水晶振動板2´の表裏の両主面には、第1,第2封止パターン201´,202´が形成されている。
【0098】
この水晶振動子1´では、水晶振動板2´の長辺方向の両端部に第1,第2実装端子27´,28´が形成され、この第1,第2実装端子27´,28´の実装に必要な接合領域が露出するように、第1,第2樹脂フィルム3´,4´の、水晶振動板2´の長辺方向に沿う長さが短く形成されている。また、第1,第2樹脂フィルム3´,4´によって封止される振動部21´の前記長辺方向に沿う長さが短くなっている。
【0099】
これに対して本実施形態では、第1,第2実装端子27,28を、水晶振動板2ではなく、該水晶振動板2に接合された第1,第2樹脂フィルム3,4の外表面に形成している。これによって、
図7に示されるように、水晶振動板2に形成する第1,第2実装端子用金属膜17,18の、水晶振動板2の長辺方向に沿う長さを、
図11の第1,第2実装端子27´,28´に比べて短くすることができると共に、その分、第1,第2実装端子用金属膜17,18に挟まれた振動部21の前記長辺方向に沿う長さを、
図11の振動部21´に比べて長くすることができる。
【0100】
これによって、水晶振動子1のサイズを大きくすることなく、振動部21を、水晶振動板2の長辺方向に沿って長くして振動特性を向上させることができると共に、当該水晶振動子1の実装に必要な第1,第2実装端子27,28の接合領域を確保することができる。
【0101】
この実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4は、耐熱性の樹脂フィルム、例えば、ポリイミド樹脂製のフィルムであり、300℃程度の耐熱性を有している。このポリイミド樹脂製の第1,第2樹脂フィルム3,4は、透明であるが、後述の加熱圧着の条件によっては、不透明となる場合がある。なお、この第1,第2樹脂フィルム3,4は、透明、不透明、あるいは、半透明であってもよい。
【0102】
第1,第2樹脂フィルム3,4は、ポリイミド樹脂に限らず、スーパーエンジニアリングプラスチックに分類されるような樹脂、例えば、ポリアミド樹脂やポリエーテルエーテルケトン樹脂等を用いてもよい。
【0103】
第1,第2樹脂フィルム3,4は、表裏両面の全面に熱可塑性の接着層が形成されている。この第1,第2樹脂フィルム3,4は、その矩形の周端部が、水晶振動板2の両主面の外枠部23に、振動部21を封止するように、例えば、熱プレスによってそれぞれ加熱圧着される。
【0104】
このように第1,第2樹脂フィルム3,4は、耐熱性の樹脂フィルムであるので、当該水晶振動子1を、回路基板等に半田実装する場合の半田リフロー処理の高温に耐えることができ、第1,第2樹脂フィルム3,4が変形等することがない。
【0105】
水晶振動板2の第1,第2励振電極25,26、第1,第2引出し電極203,204、第1,第2封止パターン201,202、及び、第1,第2実装端子用金属膜17,18は、例えば、TiまたはCrからなる下地層上に、例えば、Auが積層され、更に、例えば、Ti、CrまたはNiが積層形成されて構成されている。
【0106】
この実施形態では、下地層はTiであり、その上に、Au、Tiが積層形成されている。このように最上層がTiであることによって、Auが最上層である場合に比べて、ポリイミド樹脂との接合強度が向上する。
【0107】
矩形の第1,第2樹脂フィルム3,4が接合される第1,第2実装端子用金属膜17,18及び第1,第2封止パターン201,202の上層は、上記のように、Ti、CrまたはNi(またはこれらの酸化物)から構成されるので、Au等に比べて、第1,第2樹脂フィルム3,4との接合強度を高めることができる。
【0108】
次に、この実施形態の水晶振動子1の製造方法について説明する。
【0109】
【0110】
先ず、
図13Aに示される加工前の水晶ウェハ(ATカット水晶板)5を準備する。この水晶ウェハ5に対して、フォトリソグラフィー技術およびエッチング技術を用いて、例えば、ウェットエッチングを行って、
図13Bに示すように、複数の水晶基板部分2a及びそれらを支持するフレーム部分(図示せず)等の外形を形成し、更に、水晶基板部分2aに、外枠部23aや、外枠部23aよりも薄肉の振動部21a等の外形を形成する、すなわち、外形形成工程を行う。
【0111】
なお、複数の水晶基板部分2aは、フレーム部分等によって、
図13Bの紙面に垂直方向である列方向、及び、
図13Bの左右方向である行方向に沿ってマトリクス状に連結支持されている。
【0112】
次に、
図13Cに示すように、スパッタリング技術または蒸着技術、およびフォトリソグラフィー技術によって、水晶基板部分2aの所定の位置に、第1,第2励振電極25a,26a及び第1,第2実装端子用金属膜17a,18a等を形成して水晶振動板2bとする水晶振動板形成工程を実施する。
【0113】
次に、
図13Dに示されるように、マトリクス状に連結支持されている複数の水晶振動板2bの両主面の全面を、連続した樹脂フィルム3a,4aでそれぞれ覆うように、樹脂フィルム3a,4aを加熱圧着し、各水晶振動板2bの各振動部21aを封止する接合工程を行う。
【0114】
この樹脂フィルム3a,4aによる各振動部21aの封止は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0115】
次に、樹脂フィルム3a,4aが接合されたマトリクス状の複数の水晶振動板2bを、
図13Eに示すように、一方向である列方向(
図13Eの紙面に垂直方向)のみに沿って分割する分割工程を行う。この分割工程では、連続する樹脂フィルム3a,4aを、水晶振動板2bと同様に列方向に切断して不要部分を除去する。
【0116】
図14は、この水晶振動板2bの列方向の分割の例を示す平面図であり、この
図14では、簡略化して3行2列の6個の水晶振動板2bの部分を示している。
【0117】
この
図14の上下方向である列方向に分割して、破線Lで囲まれた列単位の複数、例えば、3個の水晶振動板2b毎に分離する。これによって、複数の水晶振動板2bを、列単位で取扱うことが可能となる。
【0118】
なお、本発明の他の実施形態として、複数の水晶振動板を、列方向ではなく、行方向に分割して、行単位で取扱うようにしてもよい。
【0119】
次に、分割した各列の複数の水晶振動板2bの両端部の各端部を、例えば、銀ペーストや銅ペーストなどの導電性ペーストにそれぞれ浸漬して熱硬化させて、第1,第2実装端子27,28をそれぞれ形成する実装端子形成工程を行い、更に、第1,第2実装端子27,28が形成された各水晶振動板2bを個片化する個片化工程を行うことによって、
図13Fに示されるように、複数の水晶振動子1が得られる。この実施形態では、導電性ペーストとして、銀ペーストを使用している。この銀ペーストは、導電フィラーとして、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)等を含有している。この銀ペーストのバインター樹脂としては、エポキシ樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0120】
実装端子形成工程では、
図13E,
図13Fに示されるように、水晶振動板2bの両端部の各端部を、導電性ペーストにそれぞれ浸漬して熱硬化させて、第1,第2実装端子27,28をそれぞれ形成するので、第1,第2実装端子27,28は、上記のように水晶振動板2の第1,第2実装端子用金属膜17,18にそれぞれ電気的に接続される。これにより、第1,第2樹脂フィルム3,4が接合された水晶振動板2bの長辺方向の各端部が、導電フィラーとバインダー樹脂の混合層からなる第1,第2実装端子27,28によって被覆される。
【0121】
このように第1,第2樹脂フィルム3,4が接合された水晶振動板2bの長辺方向の各端部を、導電性ペーストに浸漬させて熱硬化させることによって、第1,第2実装端子27,28を形成することができるので、例えば、スパッタリングや蒸着によって第1,第2実装端子27,28を形成するのに比べて、製造コストを低減することができる。
【0122】
なお、上記分割工程では、一方向に沿って分割したが、本発明の他の実施形態として、分割工程では、一方向、及び、該一方向に直交する他方向の二方向に沿って分割する、すなわち、個片化するようにしてもよい。
【0123】
上記のように本実施形態によれば、水晶振動子1のサイズを大きくすることなく、振動部21を、水晶振動板2の長辺方向に長くして振動特性を向上させることができると共に、当該水晶振動子1の実装に必要な第1,第2実装端子27,28の接合領域を確保することができる。
【0124】
また、水晶振動子1は、水晶振動板2に接合される第1,第2樹脂フィルム3,4の外表面に、第1,第2励振電極25,26にそれぞれ接続された第1,第2実装端子27,28を有するので、従来のように、実装端子を有する上面が開口したセラミック等の絶縁材料からなる箱形のベース内に圧電振動片を収納搭載する必要がなく、高価なベースが不要になる。
【0125】
更に、水晶振動板2の両主面に、第1,第2樹脂フィルム3,4が接合されて第1,第2励振電極25,26を封止するので、封止用の金属製あるいはセラミック製やガラス製の蓋体が不要になる。
【0126】
これによって、水晶振動子1のコストを低減することができ、水晶振動子1を、安価に提供することができる。
【0127】
また、箱形のベース内に、圧電振動片を搭載して蓋体で封止する従来例に比べて、薄型化(低背化)を図ることができる。
【0128】
本実施形態の水晶振動子1では、第1,第2樹脂フィルム3,4によって振動部21を封止しているので、ベースに金属製あるいはセラミック製やガラス製の蓋体を接合して気密に封止する従来例に比べて気密性が劣り、水晶振動子1の共振周波数の経年変化が生じ易い。
【0129】
しかし、例えば、近距離無線通信用途のうちBLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)等では、周波数偏差等の規格が比較的緩やかであるので、かかる用途では、樹脂フィルムで封止した安価な水晶振動子1を使用することが可能である。
【0130】
上記実施形態では、水晶振動板2のZ´軸方向に振動部21の長さを長くしたが、本発明の他の実施形態として、
図15に示すように、水晶振動板2のX軸方向に振動部21の長さを長くしてもよい。この場合、第1,第2実装端子27,28は、水晶振動板2のX軸方向の両端に形成するのが好ましい。また、上記実施形態では、連結部24は平面視が略矩形の振動部21の一つの角部に一箇所、設けられていたが、連結部24の形成位置や形成数はこの限りではない。さらに連結部24の幅は一定でなくてもよい。
【0131】
また、貫通部を有することなく、振動部を薄く、その周辺部を厚くした逆メサ型の水晶振動板に適用してもよい。
【0132】
上記実施形態では、水晶振動板2の両主面に、第1,第2樹脂フィルム3,4を接合して、振動部21を封止したが、水晶振動板2の一方の主面のみに樹脂フィルムを接合し、他方の主面には、従来の蓋体を接合して振動部21を封止してもよい。
【0133】
上記実施形態では、第1,第2実装端子用金属膜17,18は、水晶振動板2の両主面、水晶振動板2の対向する長辺側及び短辺側の各端面に亘ってそれぞれ形成したが、第1,第2実装端子用金属膜17,18は、第1,第2実装端子27,28にそれぞれ電気的に接続できればよく、水晶振動板2の前記両主面、水晶振動板2の対向する長辺側の前記端面、及び、短辺側の前記端面の少なくともいずれかの面に形成してもよい。
【0134】
上記実施形態では、第1,第2樹脂フィルム3,4は、水晶振動板2の両主面の全面を覆うサイズであったが、第1,第2樹脂フィルム3,4は、その両端部が、水晶振動板2の長辺方向の両端部にそれぞれ接合できるサイズであればよい。
【0135】
上記実施形態では、水晶振動板2の両主面の一方の主面には、
図3に示すように、第1封止パターン201が、第1実装端子用金属膜17と共に、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成され、水晶振動板2の両主面の他方の主面には、
図5に示すように、第2封止パターン202が、第2実装端子用金属膜18と共に、略矩形の振動部21を取り囲むように矩形環状に形成されたが、矩形環状の第1,第2封止パターン201,202を省略してもよい。
【0136】
図16及び
図17は、第1,第2封止パターン201,202を省略した水晶振動板2
1の概略平面図及び概略底面図であり、上記実施形態の
図3及び
図5にそれぞれ対応する図である。
【0137】
この水晶振動板21では、第1,第2実装端子用金属膜171,181は、対向する各短辺の周縁部の一部に、水晶振動板21の両主面に亘ってそれぞれ形成されている。
【0138】
一方の短辺の周縁部の一部に形成された第1実装端子用金属膜17
1は、
図16に示されるように、引き回し電極205及び第1引出し電極203を介して第1励振電極25に電気的に接続されている。
【0139】
他方の短辺の周縁部の一部に形成された第2実装端子用金属膜18
1は、
図17に示されるように、第2引出し電極204が延長されて第2励振電極26に電気的に接続されている。
【0140】
その他の構成は、上記実施形態と同様である。
【0141】
なお、矩形環状の第1,第2封止パターン201,202を省略した水晶振動板21では、樹脂フィルムとして、感光性の樹脂フィルムを使用してもよい。
【0142】
例えば、上記
図13Dに示されるように、複数の水晶振動板2
1がマトリクス状に配列支持された水晶ウェハを準備し、この水晶ウェハの両主面に、感光性の樹脂フィルムをそれぞれ貼り付け、感光性の樹脂フィルムを、露光及び現像して、水晶振動板2
1の第1,第2励振電極をそれぞれ覆うと共に、不要部分を除去するパターニング及び、硬化を行う。その後、ウェハ状の複数の水晶振動板2
1を、上記のように列方向に沿って分割し、導電性ペーストに浸漬して熱硬化させ、各水晶振動板2
1に個片化するようにしてもよい。
【0143】
本発明の更に他の実施形態として、
図18に示されるように、第1,第2実装端子27,28上に、例えば、半田付け性を向上させるなどの目的で、金属膜29を形成してもよい。
【0144】
この金属膜29は、1層であってもよく、複数層であってもよい。1層タイプの金属膜29としては、例えば、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、あるいは、金(Au)などが好ましく、2層タイプの金属膜29としては、Ni-Sn、Ni-Au、あるいは、Ni-Cuなどが好ましく、3層タイプの金属膜29としては、Cu-Ni-Sn、Cu-Ni-Auなどが好ましい。
【0145】
水晶振動板は、平面視略矩形であればよく、上記のような平面視矩形に限らず、例えば、水晶振動板の角部を面取りした形状、あるいは、水晶振動板の周縁部を厚み方向に切欠き、切欠き部に電極が被着されてなるキャスタレーション等が形成された形状であってもよい。
【0146】
本発明は、水晶振動子等の圧電振動子に限らず、圧電発振器等の他の圧電振動デバイスに適用してもよい。
【符号の説明】
【0147】
1,12 水晶振動子
2,21 水晶振動板
3 第1樹脂フィルム
4 第2樹脂フィルム
5 水晶ウェハ
17 第1実装端子用金属膜
18 第2実装端子用金属膜
21 振動部
23 外枠部
24 連結部
25 第1励振電極
26 第2励振電極
27 第1実装端子
28 第2実装端子
201 第1封止パターン
202 第2封止パターン