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特許7533490車両搬送計画装置、管理サーバ及び車両搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-08-05
(45)【発行日】2024-08-14
(54)【発明の名称】車両搬送計画装置、管理サーバ及び車両搬送装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/13 20060101AFI20240806BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240806BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240806BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240806BHJP
   G16Y 40/60 20200101ALI20240806BHJP
【FI】
G08G1/13
G01C21/34
G08G1/00 X
G16Y10/40
G16Y40/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022003219
(22)【出願日】2022-01-12
(65)【公開番号】P2023102619
(43)【公開日】2023-07-25
【審査請求日】2023-11-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【弁理士】
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】前田 岩夫
(72)【発明者】
【氏名】菅野 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 紀尚
(72)【発明者】
【氏名】中村 裕
(72)【発明者】
【氏名】竺原 慶和
(72)【発明者】
【氏名】西川 裕己
(72)【発明者】
【氏名】間庭 佑太
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-280030(JP,A)
【文献】特開2000-180195(JP,A)
【文献】特開2001-101577(JP,A)
【文献】特開2017-126165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
G01C 23/00-25/00
G16Y 10/40
G16Y 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関を搭載した車両の乗員に、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアでの該車両の搬送を提案する搬送提案部と、
前記乗員が前記車両の搬送を希望した場合に、該車両を搬送するための車両搬送装置の手配を要求する搬送手配部と
を備える車両搬送計画装置であって、
前記車両は、外部電源によって充電可能なバッテリを搭載したプラグインハイブリッド車両であり、
前記搬送提案部は、前記バッテリのSOCに基づいて、前記車両の搬送を提案するか否かを決定する、車両搬送計画装置
【請求項2】
内燃機関を搭載した車両の乗員に、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアでの該車両の搬送を提案する搬送提案部と、
前記乗員が前記車両の搬送を希望した場合に、該車両を搬送するための車両搬送装置の手配を要求する搬送手配部と、
を備え、
前記搬送手配部は、前記車両搬送装置の手配を要求するときに、前記車両の搬送を管理する管理サーバに該車両搬送装置の走行に関する前記乗員の嗜好情報を送信する、車両搬送計画装置。
【請求項3】
前記搬送提案部は、前記車両において予め設定された該車両の走行ルートに基づいて、該車両の搬送を提案するか否かを決定する、請求項1又は請求項2に記載の車両搬送計画装置。
【請求項4】
前記搬送提案部は、前記車両の現在位置から前記所定エリアの境界までの距離が所定距離まで低下したときに、該車両の搬送を提案する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両搬送計画装置。
【請求項5】
前記搬送提案部は、前記車両が前記所定エリアの周囲の所定位置を通過したときに、該車両の搬送を提案する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の車両搬送計画装置。
【請求項6】
内燃機関を搭載した車両の乗員が、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアでの該車両の搬送を希望した場合に、前記車両から前記車両を搬送するための車両搬送装置の走行に関する前記乗員の嗜好情報を受信していたときは、前記車両の搬送を車両搬送装置に指示するとともに、前記車両搬送装置に対して、前記乗員の嗜好情報を反映させた走行を実施するように指示する、管理サーバ。
【請求項7】
内燃機関を搭載した車両の乗員が、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアでの該車両の搬送を希望した場合に、該所定エリアにおいて搬送時の走行に関する前記乗員の嗜好情報を反映させた自律走行によって該車両を搬送するように構成された、車両搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搬送計画装置、管理サーバ及び車両搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気汚染を低減すべく、交通量の多い都市部のような場所において、車両に搭載された内燃機関の駆動が禁止又は制限される機関制限エリアが設定されてきている。特許文献1には、プラグインハイブリッド車両が機関制限エリアを走行するときに、内燃機関を停止して電動機のみによって走行用の動力を出力することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-104755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電動機に電力を供給するバッテリのSOCが不足しているようなときには、プラグインハイブリッド車両による機関制限エリアの走行が困難となる。また、機関制限エリアに目的地が存在しているような場合には、車両が駆動源として内燃機関のみを搭載していたとしても、機関制限エリア内での車両の移動が強く望まれる。
【0005】
そこで、本発明の目的は、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアにおいて、内燃機関を搭載した車両の移動を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)内燃機関を搭載した車両の乗員に、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアでの該車両の搬送を提案する搬送提案部と、前記乗員が前記車両の搬送を希望した場合に、該車両を搬送するための車両搬送装置の手配を要求する搬送手配部とを備える、車両搬送計画装置。
【0008】
(2)前記搬送提案部は、前記車両において予め設定された該車両の走行ルートに基づいて、該車両の搬送を提案するか否かを決定する、上記(1)に記載の車両搬送計画装置。
【0009】
(3)前記搬送提案部は、前記車両の現在位置から前記所定エリアの境界までの距離が所定距離まで低下したときに、該車両の搬送を提案する、上記(1)又は(2)に記載の車両搬送計画装置。
【0010】
(4)前記搬送提案部は、前記車両が前記所定エリアの周囲の所定位置を通過したときに、該車両の搬送を提案する、上記(1)又は(2)に記載の車両搬送計画装置。
【0011】
(5)前記車両は、外部電源によって充電可能なバッテリを搭載したプラグインハイブリッド車両であり、前記搬送提案部は、前記バッテリのSOCに基づいて、前記車両の搬送を提案するか否かを決定する、上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の車両搬送計画装置。
【0012】
(6)前記搬送手配部は、前記車両搬送装置の手配を要求するときに、前記車両の搬送を管理する管理サーバに該車両搬送装置の走行に関する前記乗員の嗜好情報を送信する、上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の車両搬送計画装置。
【0013】
(7)内燃機関を搭載した車両の乗員が、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアでの該車両の搬送を希望した場合に、該車両の搬送を車両搬送装置に指示する、管理サーバ。
【0014】
(8)内燃機関を搭載した車両の乗員が、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアでの該車両の搬送を希望した場合に、該所定エリアにおいて自律走行によって該車両を搬送するように構成された、車両搬送装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、内燃機関の駆動が禁止又は制限される所定エリアにおいて、内燃機関を搭載した車両の移動が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る車両搬送計画装置が設けられた車両の構成を概略的に示す図である。
図2図2は、車両の搬送を実現する車両搬送システムを概略的に示す図である。
図3図3は、管理サーバの構成を概略的に示す図である。
図4図4は、車両搬送装置を用いて車両を搬送するときの一連の流れを概略的に示すシーケンス図である。
図5図5は、車両搬送装置が車両を搬送するときの走行ルートの一例を示す図である。
図6図6は、ECUのプロセッサの機能ブロック図である。
図7図7は、第一実施形態における搬送提案処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図8図8は、車両の乗員に車両の搬送を提案する提案画面の一例を示す図である。
図9図9は、車両の乗員の嗜好を設定する設定画面の一例を示す図である。
図10図10は、本発明の第二実施形態に係る車両搬送計画装置が設けられた車両の構成を概略的に示す図である。
図11図11は、第二実施形態における搬送提案処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0018】
<第一実施形態>
最初に、図1図9を参照して、本発明の第一実施形態について説明する。図1は、本発明の第一実施形態に係る車両搬送計画装置が設けられた車両1の構成を概略的に示す図である。車両1は、内燃機関2、通信装置3、GNSS受信機4、地図データベース5、ナビゲーション装置6、ヒューマンマシンインタフェース(HMI:Human Machine Interface)7及び電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)10を備える。内燃機関2、通信装置3、GNSS受信機4、地図データベース5、ナビゲーション装置6及びHMI7は、CAN(Controller Area Network)等の規格に準拠した車内ネットワーク等を介してECU10に通信可能に接続されている。
【0019】
内燃機関2は、例えばガソリンエンジン又はディーゼルエンジンであり、燃料と空気との混合気を気筒内で燃焼させて動力を出力する。内燃機関2は、車両1の駆動力(走行用の動力)を出力し、車両1の駆動源として機能する。ECU10は内燃機関2の各種制御を実行する。
【0020】
通信装置3は、車両1の外部と通信可能であり、車両1と車両1の外部との通信を可能とする。例えば、通信装置3は、車両1と車両1の外部との広域通信を可能とする広域通信機(例えばデータ通信モジュール(DCM:Data Communication Module))を含む。ECU10は通信装置3を用いて車両1の外部と通信する。
【0021】
GNSS受信機4は、複数(例えば3つ以上)の測位衛星から得られる測位情報に基づいて、車両1の現在位置(例えば車両1の緯度及び経度)を検出する。具体的には、GNSS受信機4は、複数の測位衛星を捕捉し、測位衛星から発信された電波を受信する。そして、GNSS受信機4は、電波の発信時刻と受信時刻との差に基づいて測位衛星までの距離を算出し、測位衛星までの距離及び測位衛星の位置(軌道情報)に基づいて車両1の現在位置を検出する。GNSS受信機4の出力、すなわちGNSS受信機4によって検出された車両1の現在位置はECU10に送信される。
【0022】
地図データベース5は地図情報を記憶している。ECU10は地図データベース5から地図情報を取得する。なお、地図データベースが車両1の外部(例えばサーバ等)に設けられ、ECU10は車両1の外部から地図情報を取得してもよい。
【0023】
ナビゲーション装置6は、GNSS受信機4によって検出された車両1の現在位置、地図データベース5の地図情報、車両1の乗員(例えばドライバ)による入力等に基づいて、目的地までの車両1の走行ルートを設定する。ナビゲーション装置6によって設定された走行ルートはECU10に送信される。
【0024】
HMI7は車両1と車両1の乗員(例えばドライバ)との間で情報の授受を行う。HMI7は、車両1の乗員に情報を出力する出力部(例えば、ディスプレイ、スピーカ、振動ユニット等)と、車両1の乗員によって情報が入力される入力部(例えば、タッチパネル、操作ボタン、操作スイッチ、マイクロフォン等)とを有する。ECU10の出力はHMI7を介して車両1の乗員に通知され、車両1の乗員からの入力はHMI7を介してECU10に送信される。HMI7は、入力装置、出力装置又は入出力装置の一例である。なお、車両1の乗員の携帯端末(スマートフォン、タブレット端末等)が、有線又は無線によってECU10と通信可能に接続され、HMI7として機能してもよい。また、HMI7はナビゲーション装置6と一体であってもよい。
【0025】
ECU10は車両1の各種制御を実行する。図1に示されるように、ECU10は、通信インターフェース11、メモリ12及びプロセッサ13を備える。通信インターフェース11及びメモリ12は信号線を介してプロセッサ13に接続されている。なお、本実施形態では、一つのECU10が設けられているが、機能毎に複数のECUが設けられていてもよい。
【0026】
通信インターフェース11は、ECU10を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。ECU10は通信インターフェース11を介して他の車載機器に接続される。通信インターフェース11はECU10の通信部の一例である。
【0027】
メモリ12は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ12は、プロセッサ13によって各種処理が実行されるときに使用されるコンピュータプログラム、データ等を記憶する。メモリ12はECU10の記憶部の一例である。
【0028】
プロセッサ13は、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。なお、プロセッサ13は、論理演算ユニット又は数値演算ユニットのような演算回路を更に有していてもよい。
【0029】
ところで、大気汚染を低減すべく、交通量の多い都市部のような場所において、車両に搭載された内燃機関の駆動が禁止又は制限されるエリア(以下、「機関制限エリア」とも称する)が設定されてきている。機関制限エリアは、予め定められた境界によって囲まれた範囲であり、機関制限エリアの例として、LEZ(Low Emission Zone)、ULEZ(Ultra Low Emission Zone)、ZEZ(Zero Emission Zone)等が挙げられる。
【0030】
機関制限エリアでは、原則として、内燃機関を駆動することなく走行可能な車両(例えば、プラグインハイブリッド車両(PHEV)、電気自動車(BEV)又は燃料電池車(FCEV))のみの通行が許可され、機関制限エリアにおいて内燃機関が駆動された場合には、車両の乗員に罰金等が課される。
【0031】
しかしながら、車両1のように駆動源として内燃機関2のみが搭載されていたとしても、機関制限エリアに目的地が存在しているような場合には、機関制限エリア内での車両1の移動が強く望まれる。そこで、本実施形態では、車両1の乗員の希望に応じて、車両搬送装置によって車両1を搬送することで、機関制限エリアにおける車両1の移動を可能とする。
【0032】
図2は、車両1の搬送を実現する車両搬送システム100を概略的に示す図である。車両搬送システム100は、管理サーバ20と、少なくとも一つの車両搬送装置30とを備える。管理サーバ20は、マクロセル又はスモールセルのような無線基地局40と、インターネット網又はキャリア網のような通信ネットワーク50とを介して、車両搬送装置30及び車両1と通信可能である。
【0033】
車両搬送装置30は、自走式の車両搬送装置であり、自律走行によって車両1を搬送するための公知の構成(例えば、米国特許第10590669号明細書、特開2018-204373号公報等参照)を有する。例えば、車両搬送装置30は、車両1の前方又は後方から車両1の底部と路面との間の空間に潜り込み、車両1の4つのタイヤを持ち上げることによって車両1を支持して搬送する。
【0034】
図2に示されるように、車両搬送装置30は、駆動輪31を駆動する駆動モータ32を有し、駆動モータ32は車両搬送装置30の駆動力(走行用の動力)を出力する。すなわち、車両搬送装置30は、電動車両であり、内燃機関を駆動することなく車両1を搬送することができる。また、車両搬送装置30は、無線基地局40と通信可能な通信モジュール33を有し、通信モジュール33を用いて管理サーバ20と通信する。
【0035】
車両搬送装置30は管理サーバ20からの搬送指示に従って車両1を搬送する。例えば、車両搬送装置30は、所定の待機場所から機関制限エリアの境界付近まで移動し、機関制限エリアの境界付近から機関制限エリア内の目的地まで車両1を搬送する。車両搬送装置30の待機場所は、例えば、機関制限エリアの境界付近の機関制限エリアの内側又は外側に設けられる。なお、車両搬送装置30の待機場所は複数の地点に設けられていてもよい。また、車両搬送装置30の待機場所は複数の車両搬送装置30を収容するように構成されていてもよい。
【0036】
管理サーバ20は、車両搬送装置30を用いた車両1の搬送を管理する。図3は、管理サーバ20の構成を概略的に示す図である。管理サーバ20は、通信インターフェース21、ストレージ装置22、メモリ23及びプロセッサ24を備える。通信インターフェース21、ストレージ装置22及びメモリ23は、信号線を介してプロセッサ24に接続されている。なお、管理サーバ20は、キーボード及びマウスのような入力装置、ディスプレイのような出力装置等を更に備えていてもよい。また、管理サーバ20は複数のコンピュータから構成されていてもよい。
【0037】
通信インターフェース21は、管理サーバ20を通信ネットワーク50に接続するためのインターフェース回路を有する。管理サーバ20は通信ネットワーク50を介して車両1及び車両搬送装置30と通信する。通信インターフェース21は管理サーバ20の通信部の一例である。
【0038】
ストレージ装置22は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SDD)又は光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。ストレージ装置22は、各種データを記憶し、例えば、車両搬送装置30の情報(識別情報、位置情報等)、プロセッサ24が各種処理を実行するためのコンピュータプログラム等を記憶する。ストレージ装置22は管理サーバ20の記憶部の一例である。
【0039】
メモリ23は不揮発性の半導体メモリ(例えばRAM)を有する。メモリ23は、例えばプロセッサ24によって各種処理が実行されるときに使用される各種データ等を一時的に記憶する。メモリ23は管理サーバ20の記憶部の別の一例である。
【0040】
プロセッサ24は、一つ又は複数のCPU及びその周辺回路を有し、各種処理を実行する。なお、プロセッサ24は、論理演算ユニット、数値演算ユニット又はグラフィック処理ユニットのような他の演算回路を更に有していてもよい。プロセッサ24は管理サーバ20の制御部の一例である。
【0041】
図4は、車両搬送装置30を用いて車両1を搬送するときの一連の流れを概略的に示すシーケンス図である。このシーケンス図において、車両1と管理サーバ20との間の通信及び車両搬送装置30と管理サーバ20との間の通信は無線基地局40及び通信ネットワーク50を介して行われる。
【0042】
車両1の機関制限エリアへの進入が予測される場合、車両1において車両1の乗員に車両1の搬送が提案される(ステップS1)。車両1の乗員が車両1の搬送を希望した場合には、車両1から管理サーバ20に搬送要求が送信される(ステップS2)。
【0043】
車両1から管理サーバ20に搬送要求が送信されると、管理サーバ20は搬送計画を作成する(ステップS3)。搬送計画には、例えば、ピックアップ地点、ピックアップ時刻等が含まれる。ピックアップ地点は、車両1が車両搬送装置30に積載される地点、すなわち車両搬送の開始地点を意味する。ピックアップ時刻は、車両搬送装置30のピックアップ地点への到着予定時刻を意味する。なお、車両搬送システム100が複数の車両搬送装置30を備えている場合には、管理サーバ20は、搬送計画を作成するときに、複数の車両搬送装置30の中から車両1を搬送するための一台の車両搬送装置30を選択する。
【0044】
管理サーバ20によって作成された搬送計画は管理サーバ20から車両1に送信される(ステップS4)。車両1は、HMI7を介して、管理サーバ20から送信された搬送計画を車両1の乗員に表示する(ステップS5)。車両1の乗員が搬送計画を承認すると、車両1から管理サーバ20に承認通知が送信される(ステップS6)。
【0045】
管理サーバ20は、車両1から承認通知を受信すると、搬送指示を車両搬送装置30に送信する(ステップS7)。搬送指示には、例えば、ピックアップ地点、ピックアップ時刻、ピックアップ地点への移動開始時刻、車両搬送装置30の現在位置(例えば待機場所)からピックアップ地点までの走行ルート等が含まれる。
【0046】
車両搬送装置30は、管理サーバ20から搬送指示を受信すると、搬送指示に基づいて車両1の搬送を実施する(ステップS8)。
【0047】
図5は、車両搬送装置30が車両1を搬送するときの走行ルート(搬送ルート)の一例を示す図である。図5の例では、機関制限エリアの境界の外側にピックアップ地点が設定され、機関制限エリア内にドロップオフ地点が設定されている。ドロップオフ地点は、車両1が車両搬送装置30から降ろされる地点、すなわち車両搬送の終了地点を意味する。ドロップオフ地点は、例えば、HMI7、車両1の乗員の携帯端末等を介して、車両1の搬送が開始されるときに車両1の乗員によって設定される。また、ピックアップ地点からドロップオフ地点までの走行ルートは車両搬送装置30又は管理サーバ20によって設定される。
【0048】
車両搬送装置30によって車両1が搬送される間、車両1の内燃機関2は停止される。このため、図5に示されるような走行ルートに沿って車両1を搬送することによって、車両1の乗員は車両1に乗車したまま機関制限エリア内の所望の目的地まで移動することができる。なお、機関制限エリアの先に目的地が存在するような場合には、機関制限エリアの境界付近にドロップオフ地点が設定され、車両搬送装置30の走行ルートが機関制限エリアを横切るように設定されてもよい。
【0049】
本実施形態では、車両1のECU10が車両搬送計画装置として機能し、上述したような車両搬送の提案は車両1のECU10によって行われる。図6は、ECU10のプロセッサ13の機能ブロック図である。本実施形態では、プロセッサ13は搬送提案部15及び搬送手配部16を有する。搬送提案部15及び搬送手配部16は、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムをECU10のプロセッサ13が実行することによって実現される機能モジュールである。なお、搬送提案部15及び搬送手配部16は、プロセッサ13に設けられた専用の演算回路によって実現されてもよい。
【0050】
搬送提案部15は機関制限エリアでの車両1の搬送を車両1の乗員に提案する。例えば、搬送提案部15は、車両1において予め設定された車両1の走行ルートに基づいて、車両1の搬送を提案するか否かを決定する。このことによって、車両1が機関制限エリアに接近する前に車両1の乗員に車両搬送の要否を確認することができるため、車両搬送を円滑に実施することができる。例えば、搬送提案部15は、車両1の走行ルートに機関制限エリアが含まれる場合には車両1の搬送を提案し、車両1の走行ルートに機関制限エリアが含まれない場合には車両1の搬送を提案しない。
【0051】
一方、車両1の走行ルートが設定されていない場合であっても、車両1が機関制限エリア近傍を走行しているときには、車両1の乗員が車両搬送を希望する可能性が高い。このため、搬送提案部15は、車両1の現在位置から機関制限エリアの境界までの距離が所定距離まで低下したときに、車両1の搬送を提案してもよい。このことによって、車両1の走行ルートが設定されていない場合であっても、適切なタイミングで車両搬送を提案することができる。
【0052】
搬送手配部16は、車両1の乗員が車両搬送の提案を承認した場合、すなわち車両1の乗員が車両1の搬送を希望した場合に、車両1を搬送するための車両搬送装置30の手配を要求する。この結果、管理サーバ20は車両1の搬送を車両搬送装置30に指示し、車両搬送装置30は機関制限エリアにおいて自律走行によって車両1を搬送する。したがって、機関制限エリアにおいて、内燃機関2を搭載した車両1の移動が可能となる。
【0053】
以下、図7を参照して、車両1から車両搬送の手配が要求されるときの制御フローについて詳細に説明する。図7は、第一実施形態における搬送提案処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムに従ってECU10のプロセッサ13によって実行される。
【0054】
最初に、ステップS101において、搬送提案部15は、車両1の走行ルートが設定されているか否かを判定する。車両1の走行ルートが設定されていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS102に進む。
【0055】
ステップS102では、搬送提案部15は、車両1の走行ルートに機関制限エリアが含まれるか否かを判定する。例えば、機関制限エリアの位置情報が地図データベース5の地図情報に記憶されており、搬送提案部15は車両1の走行ルートと機関制限エリアの範囲とを照合することによってこの判定を行う。ステップS102において車両1の走行ルートに機関制限エリアが含まれていないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS102において車両1の走行ルートに機関制限エリアが含まれていると判定された場合、本制御ルーチンはステップS103に進む。
【0056】
ステップS103では、搬送提案部15は、HMI7を介して、機関制限エリアでの車両1の搬送を車両1の乗員に提案する。例えば、搬送提案部15は、図8に示されるような提案画面をHMI7のディスプレイに表示する。この提案画面の例では、車両1の現在位置と機関制限エリアとの位置関係が視覚的に示され、車両1の乗員は提案画面上で車両搬送の要否を選択する。
【0057】
次いで、ステップS104において、搬送手配部16は、車両1の乗員によって車両搬送の提案が承認されたか否か、すなわち、車両1の乗員が車両1の搬送を希望するか否かを判定する。車両搬送の提案が車両1の乗員によって否認されたと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、車両搬送の提案が車両1の乗員によって承認されたと判定された場合、本制御ルーチンはステップS105に進む。
【0058】
ステップS105では、搬送手配部16は、車両1を搬送するための車両搬送装置30の手配を管理サーバ20に要求する。具体的には、搬送手配部16は、通信ネットワーク50を介して、搬送要求を管理サーバ20に送信する。搬送要求には、例えば、車両1の現在位置、車両1の識別情報(例えば、ナンバープレートの番号、車種、色等)等が含まれる。ステップS105の後、本制御ルーチンは終了する。
【0059】
一方、ステップS101において車両1の走行ルートが設定されていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS106に進む。ステップS106では、搬送提案部15は、車両1の現在位置から機関制限エリアの境界までの距離が所定距離まで低下したか否かを判定する。例えば、機関制限エリアの位置情報が地図データベース5の地図情報に記憶されており、搬送提案部15は、GNSS受信機4によって検出された車両1の現在位置と機関制限エリアの境界までの距離を算出することによってこの判定を行う。
【0060】
ステップS106において車両1の現在位置から機関制限エリアの境界までの距離が所定距離まで低下していないと判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS106において車両1の現在位置から機関制限エリアの境界までの距離が所定距離まで低下したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS103に進む。この場合、上述したように、ステップS103~S105が実行され、車両1の乗員の希望に応じて、車両搬送装置30の手配が要求される。
【0061】
なお、ステップS102において、搬送提案部15は、車両1の走行ルートと機関制限エリアの境界との間の距離が所定距離以下であるか否かを判定してもよい。すなわち、搬送提案部15は、車両1の走行ルートと機関制限エリアの境界との間の距離が所定距離以下である場合に車両1の搬送を提案してもよい。
【0062】
また、ステップS106において、搬送提案部15は、車両1が機関制限エリアの周囲の所定位置を通過したか否かを判定してもよい。すなわち、搬送提案部15は、車両1が機関制限エリアの周囲の所定位置を通過したときに、車両1の搬送を提案してもよい。この場合、所定位置は、例えば、機関制限エリアに向かう道路上に設定される。
【0063】
また、搬送手配部16は、車両搬送装置30の手配を要求するときに、車両搬送装置30の走行に関する車両1の乗員の嗜好情報を管理サーバ20に送信してもよい。このことによって、車両1が車両搬送装置30によって搬送されるときの走行状態に車両1の乗員の嗜好を反映することができ、車両搬送の満足度をより一層高めることができる。
【0064】
この場合、例えば、車両1の乗員によって車両搬送の提案が承認された後に、搬送手配部16は、図9に示されるような設定画面をHMI7のディスプレイに表示する。この設定画面の例では、車両搬送時の加減速度の設定が三段階(小さい方から順に小、中、大)に示され、車両1の乗員は設定画面上で車両搬送時の加減速度の所望の設定を選択する。例えば、三段階の設定に対応する加減速度の上限値が予め定められており、選択された設定に応じた加減速度の上限値が管理サーバ20から車両搬送装置30に搬送指示として送信される。この場合、車両搬送装置30は、車両搬送装置30の加減速度の上限値が設定値に達しないように車両1を搬送する。
【0065】
なお、設定画面において、車両搬送時の優先事項として乗り心地及び搬送速度のいずれか一方が車両1の乗員によって選択されてもよい。この場合、優先事項として乗り心地が選択されたときには、優先事項として搬送速度が選択されたときと比べて、車両搬送時の加減速度又は速度が小さくされる。
【0066】
<第二実施形態>
第二実施形態に係る車両搬送計画装置及び車両搬送システムは、以下に説明する点を除いて、基本的に第一実施形態に係る車両搬送計画装置及び車両搬送システムと同様である。このため、以下、本発明の第二実施形態について、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0067】
図10は、本発明の第二実施形態に係る車両搬送計画装置が設けられた車両1’の構成を概略的に示す図である。車両1’は、内燃機関2、通信装置3、GNSS受信機4、地図データベース5、ナビゲーション装置6及びHMI7に加えて、モータ8及びバッテリ9を備える。モータ8は、CAN等の規格に準拠した車内ネットワーク等を介してECU10に通信可能に接続されている。
【0068】
モータ8は、バッテリ9から供給される電力によって回転駆動され、車両1の駆動力(走行用の動力)を出力する。すなわち、第二実施形態では、内燃機関2及びモータ8が車両1’の駆動源として機能する。ECU10はインバータ等を介してモータ8を制御する。
【0069】
また、車両1’には充電ポートが設けられ、バッテリ9は外部電源によって充電可能である。したがって、車両1’はいわゆるプラグインハイブリッド車両(PHEV)である。
【0070】
車両1’がプラグインハイブリッド車両である場合、バッテリ9の充電率(SOC:State of Charge)が十分であれば、車両1’は、内燃機関2を停止してモータ8の出力のみによって機関制限エリア内を走行することができる。このため、バッテリ9のSOCが高いときには、バッテリ9のSOCが低いときと比べて、機関制限エリアでの車両1’の搬送を提案する必要性は低い。このため、本実施形態では、搬送提案部15は、バッテリ9のSOCに基づいて、車両1’の乗員に車両1’の搬送を提案するか否かを決定する。例えば、搬送提案部15は、バッテリ9のSOCが所定値未満であるときには車両1’の搬送を提案し、バッテリ9のSOCが所定値以上であるときには車両1’の搬送を提案しない。このことによって、より的確なタイミングで車両1’の搬送を提案することができ、不必要な車両搬送が実施されることを抑制することができる。
【0071】
図11は、第二実施形態における搬送提案処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。本制御ルーチンは、ECU10のメモリ12に記憶されたコンピュータプログラムに従ってECU10のプロセッサ13によって実行される。
【0072】
ステップS201及びS202は図7のステップS101及びS102と同様に実行され、ステップS202において車両1’の走行ルートに機関制限エリアが含まれると判定された場合、本制御ルーチンはステップS203に進む。
【0073】
ステップS203では、搬送提案部15は、バッテリ9のSOCが所定値以上であるか否かを判定する。搬送提案部15は、公知の手法によってバッテリ9のSOCを算出し、例えば、バッテリ9に設けられたセンサによって検出されたバッテリ9の電圧及び温度に基づいてバッテリ9のSOCを算出する。なお、搬送提案部15は、バッテリ9に設けられたセンサによって検出されたバッテリ9の入出力電流を積算することによってバッテリ9のSOCを算出してもよい。ステップS203における判定に用いられる所定値は、例えば40%~80%であり、機関制限エリアの面積等に応じて変更されてもよい。例えば、機関制限エリアの面積が大きいほど、所定値が高くされてもよい。
【0074】
ステップS203においてバッテリ9のSOCが所定値以上であると判定された場合、本制御ルーチンは終了する。一方、ステップS203においてバッテリ9のSOCが所定値未満であると判定された場合、本制御ルーチンはステップS204に進む。この場合、図7のステップS103~S105と同様にステップS204~S206が実行され、車両1の乗員の希望に応じて、車両搬送装置30の手配が要求される。
【0075】
一方、ステップS201において車両1’の走行ルートが設定されていないと判定された場合、本制御ルーチンはステップS207に進む。ステップS207は図7のステップS106と同様に実行され、ステップS207において車両1の現在位置から機関制限エリアの境界までの距離が所定距離まで低下したと判定された場合、本制御ルーチンはステップS203に進み、ステップS203~S206が上述したように実行される。
【0076】
なお、図11の制御ルーチンは図7の制御ルーチンと同様に変形可能である。
【0077】
<その他の実施形態>
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。例えば、車両1はハイブリッド車両(HEV)又はプラグインハイブリッド車両(PHEV)であってもよい。
【0078】
また、車両搬送装置30はオペレータによって手動で操作されてもよい。すなわち、車両搬送装置30は、管理サーバ20からの搬送指示に基づいて、オペレータによる手動操作によって車両1、1’を搬送してもよい。
【0079】
また、ECU10のプロセッサ13が有する各部の機能をコンピュータに実現させるコンピュータプログラムは、コンピュータによって読取り可能な記録媒体に記憶された形で提供されてもよい。コンピュータによって読取り可能な記録媒体は、例えば、磁気記録媒体、光記録媒体、又は半導体メモリである。
【符号の説明】
【0080】
1、1’ 車両
2 内燃機関
10 電子制御ユニット(ECU)
13 プロセッサ
15 搬送提案部
16 搬送手配部
20 管理サーバ
30 車両搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11